幻獣の卵と密猟者

マスター:sagitta

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~10人
サポート
0~10人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
6日
締切
2016/03/06 22:00
完成日
2016/03/15 18:13

みんなの思い出

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オープニング


 リゼリオにほど近い小さな森。そこには豊かな生態系があり、「幻獣」と呼ばれる生き物たちが数多く暮らしていた。リアルブルーから転移してきた動物学者リン・カーソン博士はこの辺りを領有するベスティア卿の了解も取りつけてこの森を幻獣保護地区とし、幻獣たちの生態を解明し、彼らを保護するため、日夜、研究を続けていた。
 
 そんな「幻獣の森」にすむ巨大な鳥、シルバーフェザー。
 翼を広げるとおよそ3メートルにもなる猛禽類で、その名の通りの白銀の翼には、マテリアルの力が込められているらしい。巨体に似合わぬスピードで空を飛び、人間くらいの大きさの荷物を背に乗せて飛行することさえできる。
 しかし、雄々しく力強いその姿に反して、シルバーフェザーの繁殖力は高くない。繁殖期はだいたい五年から十年に一度だけ。しかも2月から3月のおよそ一ヶ月しかない。一度に産む卵の数も10個に満たず、親鳥自体の個体数も減少傾向にあることから、絶滅が心配される幻獣の一つだ。
 そんなシルバーフェザーの貴重な繁殖期が、今、訪れている。幻獣学者リンは、毎朝欠かさず森の奥に向かい、崖に張り付くようにつくられたシルバーフェザーの巣の観察を日課としていた。
「……おかしい、卵の数がひとつ、足りない」
 まるで少女のような外見に似合わず、意外にも身軽な身のこなしで崖近くの木の上に登り、双眼鏡で巣を観察していたリンが、険しい表情でつぶやく。巣の中に7つあったはずの卵が、6つになっているのだ。孵化までの期間はまだ10日ほどもあるから、知らぬ間に孵化していた、ということも考えられない。
「何か生き物に、襲われたか?」
 そうつぶやいて、リンは、すぐに首を横に振る。あの険しい崖を登って、人間の赤ん坊ほどの重さのある卵を襲えるような生き物は、この森にはいない。シルバーフェザーはこの森において、生態系の頂点にいる生き物の一つなのだ。
「……密猟者か」
 つぶやくリンの表情は怒りに満ち、噛み締めた唇からは今にも血が出そうな勢いだ。
 シルバーフェザーの卵は、非常に美味だという。めったに食べられない珍味として、一部の好事家連中にたいへんな高額で取引されているらしい。
 領主によってこの森が禁猟区に指定されてから、まだ日が浅い。細かい規定や罰則も整備されておらず、実際にはまだ建前的な規則に過ぎないのが現状だ。リンと、この森の管理を任されている猟師のゲイツには領主ベスティア卿によって密猟者への警告・追放の許可が与えられているが、そのためには密猟の現場を押さえなくてはならない。
「しかし、一体どうやって……」
 リンは首をひねる。野生の動物たちにさえ歯が立たない険しい崖だ。熟練した猟師にだって、そうやすやすと登れるものではない。まして、親鳥に気づかれず、巨大な卵を抱えて登り降りするなど、普通の人間にできることではない。
「覚醒者、か」
 リンがつぶやいた。確かに、マテリアルを自在に使いこなす覚醒者であれば、普通の人間にはできないことも可能だろう。……そして、覚醒者に対抗することができるのは、覚醒者しかない。
 慣れた身のこなしで木から降り、リンは迷わずに森の外へ歩き出す。向かう先はもちろん、ハンターオフィスだ。
「残り6つの卵、必ず守ってみせる」

リプレイ本文


「ご協力に感謝する。この森の調査・管理をしている幻獣学者のリン・カーソンだ。依頼の内容は聞き及んでいると思うが……」
 集まったハンターたちに対して、丁寧に頭を下げるリン博士。ところどころ汚れた白衣に身を包んでいながらも、彼女の凛とした雰囲気は揺るがない。しかし、整った美少女というべきその顔は今、静かな怒りを湛えていた。
「絶滅危惧種の幻獣の……密猟ですか? あまり良いものではありませんね……なにか、事情があるのかもしれませんけれど、ただの私欲なら……たっぷり反省してもらわないと」
 そう言って天央 観智(ka0896)が眉をひそめる。彼もリンと同じく転生者で、リアルブルーでは科学者だった。こちらに来てからは魔術の研究に没頭しているが、研究の対象は違えども、真実を追い求めるリンには共感できる。
「生きている以上、命をもらう事自体は悪いとは言わないけれど、ここは禁猟区だしね。一方的な欲で、それを荒らしてはいけないね」
 男装の少女、シェラリンデ(ka3332)が神妙な表情でうなずく。彼女のにぎる刀は、生き物を守るための刀だ。
「先の依頼でようやく禁猟区になったというのに……まだまだ布令が広まっていない、または、甘く見られている、か」
 悔しそうにつぶやいたのは、かつてリンとともにこの森の禁猟化に尽力したイグレーヌ・ランスター(ka3299)だ。彼女には、リンやこの森に対する思いがある。それが乱されることを、許してはおけない。
「……密猟者には今後のため、すこし痛い目を見てもらおう」
 後半は小さくつぶやく。
「何よりも、残る6つの卵を守ることが最優先事項だ」
 真剣な眼差しで、リンが言う。
「大義名分は二の次だ。ただ、私自身が、あの美しく優雅な生き物を守りたい。ただそれだけなんだ。そんな私の思いに、つきあってくれるか?」
 真っ直ぐで、不器用にさえ思えるリンの言葉。そんな彼女の姿を見て、アルスレーテ・フュラー(ka6148)が穏やかに微笑む。同名の妹と、思わず重ねて見てしまい、彼女を守り切ることを、密かに心に誓う。
「オレも、でっけー鳥見ンの、すっげー楽しみだぜ!」
 鈴こと、大伴 鈴太郎(ka6016)がはしゃいだ声で叫ぶ。ぶっきらぼうなしゃべり方だが、まだ若い少女である鈴は、持ち前の好奇心で妄想をたくましくしている。
「仲良くなれたら、背中に乗って空を……な、なんて、流石に無理だってわーってンよ! 想像するくれーいいじゃん!」
「ふふっ、りんたろーらしいですわね。まぁ、あたしも背中に乗ってニンジャみたいな登場とか、あこがれますけど……」
 卯月 瑞花(ka6019)はそう言って一旦言葉を切り、拳を握りしめた。
「とりあえず、でっかい鳥が見たい! もふもふ!」
「大きなトリさんのたまご……ふふ、ヒナが楽しみネ♪」
 パトリシア=K=ポラリス(ka5996)もそう言って、屈託なく笑う。
 みんなが口々に語り合う姿を見ながら、駆け出しハンターのムディル(ka6175)は、わくわくした気持ちを抱いていた。故郷で見た広い空と大地、その先に今立っている。見ている。それだけで心が躍る。俺の旅は、ここから始まるんだ。
「初めての依頼、成功させよう」
 自分だけに聞こえる声で、ムディルはそうつぶやいた。


「博士に教えてもらったら、幻獣さんとお友だちになれないかなぁ、って思ったの。巣立つまで見守るんだもの、少しは卵育てのお手伝いをしたいの」
 ふわふわした口調で、でも一生懸命にディーナ・フェルミ(ka5843)が、リンに伝える。
「そうだな。調査・保護を円滑にすすめるため、親鳥に餌付けをしたりして『我々に対してのみ』敵意を解いてもらえないだろうか」
 イグレーヌも論理的な根拠で、ディーナの提案に賛同する。
「親鳥だって、ヒナを守るために気が立っているでしょうし、私たちや、リン博士の安全のためにも、私たちが敵じゃないということがわかってもらいたいわね。守るつもりが、、親鳥にやられて全滅、というのでは、元も子もないわ。とはいえどうしたらいいのか……干し肉で、餌付け、なんて、そんな単純じゃないわよね」
 アルスレーテが顎に手を当てながらつぶやく。
「餌付けというより……意思の疎通が、できなくもないかもしれない」
 慎重に言葉を選びながら、リンがみんなの顔を見回しながら答える。
「意思の疎通! 是が非でも試したいです!」
 リンの言葉に食いついたのは瑞花だ。
「シルバーフェザーは極めて知的な種族だ。礼儀正しく接すれば、敵と味方をちゃんと見極めてくれるはずだ」
 リンが確信を込めて言う。
「私が、親鳥を説得に行く。みんなは、私についてきてくれ」

● 
 ずんずんと歩いて行くリンを戦闘に、一行は森の中を進んでいく。護衛をせねばと焦るアルスレーテを尻目に、勝手知ったる庭のような森をゆくリンの足取りに、躊躇は微塵もなく、ハンターたちでさえついていくのが精一杯だ。
「ここの下が、シルバーフェザーの巣のある崖だ」
 不意に立ち止まったリンが、厳かに言う。一行はいつの間にか森を抜け、開けた空間にいた。眼下には、目もくらむような光景が広がっている。岩石質の峡谷。彼らが立っているのは切り立ったがけの頂上に当たる場所だ。
「こんな険しいところに……」
 シェラリンデが、思わず息を呑んでつぶやく。
「繁殖能力にすぐれないシルバーフェザーにとって、他の生物が容易にたどり着くことができない険しいところに巣を作ることが、卵を守るための唯一の方法なんだ。そして、見晴らしのいい崖は、優れた飛翔能力をもつ親鳥には、ひどく……攻めやすい地形だ」
「貴重な幻獣を……間近で見られるのか」
 ムディルが、期待に胸を高鳴らせている。
「私の仕事は野生の幻獣が『あるがままの状態で生きる姿』を観察し、研究することだ。基本的には、幻獣との直接の接触はしないことにしている。だが、今回は……特別だ」
 リンが、ハンターたちを見回して解説する。
「私たちにあんまり慣れ過ぎると、密猟者さんに捕まりやすくなっちゃうかもって心配はあるの。リン先生、シルバーフェザーに負担にならないお友達になる方法ってありますか、なの」
 ディーナが真剣な様子でリンに尋ねる。
「博士は今後も研究を続けるのだろう? あくまでも『人間』にではなく、博士を中心にした『我々』に対してのみ、敵意を解いてもらいたいところだな」
 ディーナに続いて、そう言ったのはイグレーヌだ。
「ああ。そのように目指してみたいとは思っている。だが、産卵後の親鳥は非常に気が立っている。聞き入れてくれるかどうか……」
 リンが自信なさげにつぶやく。
「しかし、でっけー鳥はどこにいるのかな、っと」
 待ちきれない、という様子で、鈴が駈け出した。そのまま崖の端まで駆け寄って周囲を見回す。
「ちょっと、りんたろー、そんなに勝手に行ったらあぶな……」
 あわてたような瑞花の言葉が、言い終わらないうちに――。
 キーンッ。
 何かが空を切る、甲高い音。あまりにも速いそれが羽音だと気づくのには、わずかな時間を要した。
「りんたろー、後ろ!」
 驚いた声で叫んだのはパトリシアだ。
「な、なんだうわっ!」
 鈴が慌てて振り向いたときにはときすでに遅し。白銀の翼を持つ巨大な猛禽類の、鋭い足の爪が、鈴の体に迫っていた。
「くっ!」
 思わず、自らの武器に手をかけようとしたハンターたちを、鈴の強い言葉が制す。
「動くな! オレは大丈夫だ! 絶対に、手を出すんじゃねぇ!!」
 鈴の言葉の剣幕に、ハンターたちの手が止まる。そうしている間にシルバーフェザーの足が鈴の胴をがっしりとつかむ。鋭い爪が食い込み、鈴の脇腹からわずかに血がにじむ。
「大丈夫、オレは大丈夫だ……」
 マテリアルを体に集中させて、必死で耐える。
「シルバーフェザーよ。空の王者よ。我らの言葉に耳を傾け給え」
 朗々とした言葉を発したのは、リン博士だ。
「われらは敵ではない。その証拠に決してあなたに危害を加えたりしない。我らはあなたの卵を、守りに来たのだ。だから……その人を解放してくれ」
 リンが巨鳥のエメラルドのような瞳をまっすぐに見つめながら語りかける。
 シルバーフェザーに、人間の言葉が通じるわけではない。けれど、言葉に込められた感情は、きっと届くと、リンは信じていた。
 しばしのにらみ合い。重苦しい沈黙が、あたりを満たしていた。掴まれたままの鈴は痛みに耐え、取り囲んだハンターたちは息を呑んで趨勢を見守る。
 動いたのは、シルバーフェザーの方だった。リンの瞳を睨みつけたまま、翼を大きく羽ばたかせ威嚇するように、「クエーーーーッ!」とひとつ、大きく鳴いた。咆哮のような、背筋が凍る叫び。この巨大な鳥がそのまま飛びかかれば、リンの小さな体など、人形のようにバラバラにされてしまうだろう。
 だが、リンは、目を閉じることもしなかった。全身にぐっと力を入れて恐怖に耐え、歯を食いしばってシルバーフェザーの目を見つめ続けた。
 それを見届けたシルバーフェザーは、掴んでいた鈴の体をゆっくりと優しく下ろした。そして、大きく舞い上がって、ハンターたちの真上をゆっくりと旋回し、「クエーッ」と鳴いた。それは、彼らを、味方と認めた合図であった。


「巣が崖の途中にあるなら、崖の上下それぞれに手分けして野営して、見張りをしたらいいんじゃないかなぁ」
 そんなディーナの提案に賛同して、ハンターたちは卵を密猟者の手から守るため、崖の上下に分かれて万全の見張り体制を敷くことにする。密猟者が人間である以上、何らかの手段で崖を登り、または下り、巣にたどり着いて卵を奪っているのだろうから、そのルートを絶っておこうという作戦だ。
 崖上を観智、パトリシア、鈴、ムディルが交代で見張り、崖下にはリンとその護衛をかってでたアルスレーテ、そしてイグレーヌ、シェラリンデ、ディーナが詰める。瑞花だけはそのどちらにも行かず、崖上の作業を手伝った後は、木の上など、周囲の隠れられそうなところを確認していく手はずだ。観智の提案で、全員のもつトランシーバーのチャンネルをあわせていつでも連絡が取れるようにすることも忘れない。
 
「期限は約10日間、卵が全部無事にふ化するまで守り切るネ!」
 崖上組のパトリシアがそう言って、せっせと薪を集めたり、寝床を整えたりしていた。
 ふと崖の下を覗き込むと、巨大な白銀の翼が、優雅に旋回しているのが見える。それは大きくて、綺麗で……。
「アノ背中に乗って、いっしょに飛べたら、……きっと素敵ネっ」
 そう言って、微笑む。
 一方、同じく崖上で熱心に作業をしているのは瑞花だ。
「いざというときに下に降りられるように、ロープを用意して、っと。崖にアンカーを打ち込む許可は、事前にリン博士からもらっていますから……力仕事はりんたろーに任せようかしら。りんたろー、脳き……こほん、力自慢の見せ場が来ましたねっ!」
「あ? なんかよくわかんねーが、任せとけ!」
 ディーナの治療によってすっかり傷も癒えた鈴が、元気にこたえた。
 隣では、観智が持ってきた魔導バイクのライトを点検している。
「密猟者が夜間に現れたときのために、灯りの確認をしておきましょう。非常用のLEDライトも用意しておきますので、皆さん使ってくださいね」
「待ってる間、よかったらキャンディでも。疲労回復になります」
 ムディルもそう言って、初めての冒険にはやる気持ちを抑えながら、焚き火の周りに腰を下ろした。

 崖下の方でも、着々と準備が進められていた。
「ここから登ろうとする密猟者が、いたらすぐわかるように、鳴子の罠を仕掛けて、っと……。あ、そうだ、甘いものも用意してるから、後でみんなで食べよ? あまり気を詰めすぎても先は長いからね? 今のうちにリラックスしておこう?」
 万一に備えて万全の準備を図っているのはシェラリンデ。周りのメンバーに気を使うことも忘れない。
 イグレーヌも、崖下から、崖を登る密猟者を射掛けられるように、予め射角を確認しつつ待機場所を決める。
「寝袋も、夜間用のランタンも準備オーケー。後は心配なのはリン博士が無茶をし過ぎないことだけど……」
 呆れたようにそう言いながらも、アルスレーテの言葉は優しい。今回のメンバーの中でもっとっもリンのことを気にかけているのは、間違いなく彼女だ。
 そのリンはといえば、高い木の上に登り、双眼鏡を目に当てて、巣の様子を観察していた。
「卵の数は……5個だ。見ろ、ひとつは、ヒナがふ化しているぞ!」
 興奮した様子でリンが叫ぶと、木の下にいたディーナが歓声を上げる。人間の赤ん坊ほどもあるヒナはまだ生まれたばかりで、お世辞にもかわいらしいとはいえないが、生命力に満ち溢れた、みずみずしい姿だ。
「ねぇ、博士。もしよかったら……ヒナの胎教?に、音楽を聞かせてあげたいの。優しくてしあわせな気持ちになる歌を」
 ディーナの言葉に、リンは少しだけ考えた後、首を縦に振った。
「シルバーフェザーは音楽を好む、という研究もある。優しい音楽なら、きっと悪影響もないだろうし。聞かせてあげるといい」
「やったあ!」
 こうして、ディーナの歌うやさしい子守唄が、しばし崖に響き渡った。
 

 密猟者が現れたのは、夜だった。
 見張りを開始してから3日後の夜。すでに3つの卵がふ化して、残る卵はふたつだけになっていた。
 夜中の、ヒナや親鳥が寝静まった頃ならば密猟をしやすいと考えたのだろうか。崖上からロープを垂らして崖を降りようと試み――すでに、ロープがアンカーで固定されているのを見つけ、不審に思う。そのときだ。
「いらっしゃい、密猟者くん」
 観智の落ち着いた言葉とともに、灯されたライトが密猟者を照らしだした。密猟者はまだ若い男性だが、身のこなしからするとそこそこ手慣れたハンターのようだ。
「こちら観智。密猟者を発見」
 観智がトランシーバーに向かって話すと、崖の上と下、そこここで気配が動く。
「なんだこれ……聞いてねぇよ」
 密猟者があっけにとられたようにぼやく。
「禁猟にされたとはいえ、まだまだ紙切れ一枚で、見張りも何もありゃしないからどうにでもなる、楽な仕事だと思ってたのに……」
「なるほど、禁猟であることを理解したうえでやっているなら、同情の余地はありませんネ」
 起き出してきたパトリシアがニッコリと笑ってみせる。
「で、どうするンだ、密猟者さんよ。やるか? 降参するか?」
 同じく起きだした鈴がすごみ、となりのムディルもそっと剣に手を伸ばす。
 冷や汗をかきつつ崖下にそっと目をやると、イグレーヌが弓に矢をつがえ、こちらを狙っているのがわかる。万事休す。
「………ま、参った」
 密猟者の答えは、言わずもがな、だった。


「無事に、6羽のヒナが孵った。これもあなた達のおかげだ。感謝する」
 密猟者を二度と密猟をしないと誓わせた後で解放し、一段落した後。リンが改めてハンターたちに頭を下げた。
「マダマダこの森のコト、幻獣のコト、知らないヒトが多いのですネ……もっと伝えていきましょう」
 パトリシアが言うと、イグレーヌもうなずく。
「そうだな、せっかく禁猟区になったところで、周知されず、効力を持たないのではもったいない」
「ああ。なるべく広く伝えて、幻獣の大切さにももっと目を向けてもらおう。具体的に形にする暁には、ぜひ……協力してほしい」
 リンが言うと、ハンターたちは、もちろんだ、とばかりにそれぞれうなずいてみせた。
 
 ふと崖の下に目をやれば、大空を美しく舞う白銀の翼の親鳥が、まだバタバタとたどたどしい飛び方の6羽のヒナたちに飛び方を教えている。その姿はこの上もなく尊く、美しく見えたのだった。

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MVP一覧

  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミka5843
  • 金色のもふもふ
    パトリシア=K=ポラリスka5996
  • 友よいつまでも
    大伴 鈴太郎ka6016

重体一覧

参加者一覧

  • 止まらぬ探求者
    天央 観智(ka0896
    人間(蒼)|25才|男性|魔術師

  • イグレーヌ・ランスター(ka3299
    人間(紅)|18才|女性|猟撃士
  • 恋愛導師
    はるな(ka3307
    人間(蒼)|18才|女性|魔術師
  • 【魔装】花刀「菖蒲正宗」
    シェラリンデ(ka3332
    人間(紅)|18才|女性|疾影士
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • 金色のもふもふ
    パトリシア=K=ポラリス(ka5996
    人間(蒼)|19才|女性|符術師
  • 友よいつまでも
    大伴 鈴太郎(ka6016
    人間(蒼)|22才|女性|格闘士
  • 乙女ニンジャ―
    卯月 瑞花(ka6019
    人間(紅)|15才|女性|疾影士
  • お約束のツナサンド
    アルスレーテ・フュラー(ka6148
    エルフ|27才|女性|格闘士
  • 幻獣学者の同志
    ムディル(ka6175
    人間(紅)|27才|男性|霊闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/03/02 23:00:34
アイコン 相談卓
シェラリンデ(ka3332
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2016/03/06 21:34:21