ゲスト
(ka0000)
藍錆のタキプレウス
マスター:惇克

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/08/26 15:00
- 完成日
- 2014/09/02 23:52
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
夏だ!! 海だ!!!
と、いうことでね、はい、みなさんこんにちはー! おはようからお休みまでビーチの安全を見守る海岸監視員でっす!!
いやー今日も暑いね! ファッキンホットだね! こんな日は海で泳ぐのが一番!!!
だけどねー、今、監視員のお兄さんすっごい大ピンチ、超☆ヤバイ!
なぜならーーーーーーーー?
目視で確認できる距離にクソデケェカブトガニがいるからーーーーーーーーー!!!!!!
カブトガニなんだけど足がイカっていうね、イカレた歪虚がいるわけですよイカだけに。
イカだけにねなんつって!
な・ん・つ・っ・て!!?!
あ、ヤベ、気付かれたっぽい?
ちょ待ってちょっと待っコッチ来てる来てる来てるーーー!!?!
逃げてみんな超逃げてーーーーーー!!!!!!
冒険都市リゼリオにそこそこ近い海岸に、小さな海水浴場がある。
毎年のこの季節、地元の子供たちや親子連れなどで賑わっているのが常であったが、そこへと突如、歪虚が現れた。
海岸監視員が即座に発見し緊急避難を呼びかけ、海水浴客もパニックになることなく待避完了したため、人的被害はゼロに収まった。また、歪虚が水辺からは離れないという性質を持っていたのも幸いしていた。
無人となった浜辺に鎮座する歪虚。
今はまだおとなしいが、この先、歪虚がどのような行動をとるのかまったくわからない。
暴れ出す前、仲間を呼ぶ前に早急に排除する必要があると、海岸監視員はハンターズソサエティへと駆け込んだ。
リプレイ本文
●
ハンターズソサエティに血相を変えて駆け込んできた海岸監視員が、海水浴場の異変を訴える。
その場に居合わせ、そのまま歪虚退治を引き受けたハンター達は、詳しい状況を聞くと即座に対応と作戦を練り始めた。
凜々しい表情で作戦と装備の確認を行う松岡 奈加(ka0988)は、ふと、チラリと視線を横にそらして事務員と話し込んでいる監視員の様子を伺う。
監視員は水難救助の技能を持っており、それに見合う引き締まった肉体と精悍な面構えをしており、出会いを求める彼女の心を揺さぶるに十分だった。
(わぁー!! わぁーー!! 何? あの筋肉やばぁーい♪ 顔もわりかし好みだし~、活躍して、ビーチ護っちゃったりしたら、連絡先交換とか、ロマンス始まっちゃうんじゃないの?)
視線に気づいたのか、監視員は奈加へ顔を向け、はにかみながら白い歯を見せて微笑みかける。
(ヤダー……ガンバロ♪)
恋に恋する乙女のハートは、今ここに夏の太陽よりも熱く燃え上がっていた。
「なんでまた海水浴場なんだろね」
バーニング・ラブ状態の奈加の隣でウーナ(ka1439)が疑問を口にする。
近辺には港や街といった、より重要な施設があるにも関わらず、なぜ海水浴場になど出現したのか。
「水着のお姉さんが好きなのかな?」
小首を傾げ、冗談めかしたウーナに、神代 廼鴉(ka2504)が苦笑いで答えた。
「ま、それが嫌いなヤツの方が少ないだろうからなぁ」
出現理由は歪虚にしかわからないが、案外、水着美女の溢れる海水浴場で触手を振り回して、ポローンペローンイヤ~ンな読者サービス感溢れる画面を望んでいたのかもしれない。
望まれていたのかもしれない。
だがそうはならなかった。
●
現場は青い空と紺碧の海の間に広がる白砂の浜。
小さいながらも、地元の人間に愛される美しい景観。
その中に居座る異形、歪虚はカブトガニのような外殻の下から10本の触腕を伸ばし、獲物を求めて蠢かせていた。
「夏だ! 海だ! イカだ! ……え?」
狛(ka2456)は海の見える景色にはしゃぎながら、鎮座する歪虚の姿に驚き、そして
「かになのかいかなのかはっきりしてほしいっす!!」
即ツッコんだ。
全くもって如何にも(イカだけに)なツッコミに龍崎・カズマ(ka0178)が笑いを漏らす。
「ホント、あの中途半端さ。ああいうのを相手するのも、サバイバル経験なんだろうけどね」
「夏場の海に来てまで、ワケワカラン感じの相手ってのもなぁ」
やれやれといった具合に肩を竦める廼鴉。
「カブトガニってこんな浅瀬に現れるんだねー……って、歪虚ならそんなことも関係ないか」
ヴァンシュトール・H・R(ka0169)も半笑いだが、見た目の微妙さに反して、手強い敵であるだろうとの予測があった。
「でかくて硬くて動きは鈍い。典型的だけど厄介なパターンだよねコレ。とりあえずやるだけやってみようか」
ハンター達はその言葉に表情を引き締め、真剣な面持ちを見合わせ頷く。
「ところであの触手、おいしいんすかね!?」
どこまでもマイペースな狛の疑問。
「うーん、煮ても焼いても美味しくなさそうだよ、アレ」
「お腹壊しそうだしやめた方がいいよ」
ヴァンシュトールは迷うような困ったような笑みを浮かべ、ウーナが微笑みながら制止した。
●
前中後衛に分かれての行動。
前衛は囮として動き、中衛はそのアシスト、後衛は距離を保ちながら、囮に誘われて動いた触腕に攻撃を加える。
と、既に大まかな動きと布陣を決定していたハンター達の行動には迷いがなかった。
(まずは触腕を奪うことに専念、だね)
ヴァンシュトールとカズマがほぼ同時に砂を蹴って駆け出す。
カズマは攻撃を誘って触腕の限界距離を測り、仲間が戦いやすいような位置取りを把握しようとしていた。
「戦いは速さとチームワーク! 一気に叩き潰すよ!」
予備の弾倉と足場を確保し、万全の体制を整えていたウーナは後方に陣取り、歪虚へと接近する前衛を援護するために、アサルトライフルで触腕を狙い撃つ。
接近するまでが一番危険と、歪虚の手数を減らして前衛の安全を確保する。
「敵が動かないってのがラッキーっすよー」
二人の接近と銃撃に気を取られた歪虚、その反対側から祖霊の加護を得た狛が白砂の上を滑るように駆け、最短ルートを伝って歪虚の懐へと飛び込んだ。
カズマと共に囮となろうとしている狛は瞳にも加護を得て、注意深く歪虚の動きを追う。
触腕が狛の接近にも反応したが、それを廼鴉の銃弾が制止した。
(まずは触腕を減らしにいこう。甲羅に被われてる訳でも無し、ダメージは狙えるよな)
水中用アサルトライフルを構えた廼鴉は、触腕の排除と援護射撃に徹している。
奈加は突出する狛へとプロテクションを施術する。
「一応、お守りみたいなものよ♪」
後方にて前衛の支援を行う奈加は軽薄にも思える言の裏で、不測の事態に備え、すぐに対応できるようにしっかりと状況を見定めようとしていた。
ハンター達の接近と攻撃に歪虚はのそりと身体を動かし、反撃としてぞんざいに触腕を動かした。
丸太のようなそれがカズマに迫る。
横殴りの衝撃に蹈鞴を踏むが、彼はその場に踏みとどまり、不敵な笑顔を浮かべながら耐えて見せた。
(ゲソ足は早く減らさないと危ないな、まずはそっちを狙って撃ち落していこう)
前衛と後衛の間で足を止めたヴァンシュトールのリボルバーが火を噴く。
もし、再生能力があるようなら、次の一手をと彼は考えていたが、触腕についた傷が塞がることはなく、その心配はなかった。
銃撃に怯んだ触腕、歪虚へとカズマが更に距離を詰め、攻撃を誘う。
彼は敵の勢いを利用してのカウンターを狙っていた。
距離をカリキュレイトゴーグルで計り、攻撃のベクトルと真逆にナイフの刃を突きたてる、そのチャンスを伺う。
その背後を触腕が脅かすが、ウーナの放った銃弾がそれを止める。
「貸し1だよっ、今のうち!」
「おう!」
狛はクファンジャルで触腕に斬りかかりながら、本体甲羅のどこかに攻撃が通る隙間がないか探していた。
攻撃と探査とを同時に行うとなると、どうしても隙が生じるが、狛はそれを承知しており、触腕や尻尾への対処は、遠距離専門の後衛を信じ全て任せていた。
廼鴉がその信頼に応え、狛を狙っていた触腕を撃ち抜き援護する。
状況を見て少しの前進をしていた奈加が、攻撃を受けやすい位置にいるカズマへとプロテクションを施す。
手強いハンター達に業を煮やした歪虚が、手当たり次第に攻撃しようといっせいに触腕を動かした。
回避行動をとろうとしていたヴァンシュトロールとカズマだったが、思った以上に触腕が速く、二人それぞれに巻き付かれてしまった。
(軟性があるなら、どこかに不動の点を作ればいい。鰻を捌く時に、杭を打ち込むのと同じように)
カズマはドリルナックルを利用し、触腕を巻きとり、伸びきったところをスラッシュエッジで切り裂く、ということを図っていたが、触腕はドリルナックルだけにとどまらず、カズマの胴体ごと巻き付いていた。
それなら力比べとカズマは両足を踏ん張り、触腕を伸びきらせた状態へと持ち込んだ。
意図を察したウーナの銃弾が触腕を撃ち切る。
千切られた触腕が力を失い砂に落ち、カズマを解放する。
「ぬわー! 誰か助けてー! へるぷみー!?」
強力な力で締め上げられ、ヴァンシュトールが仲間に助けを求める。
「マズイ!」
「すぐ助けるっすよ!」
狛が触腕に取り付き、短刀で切り込みを入れた箇所を廼鴉が撃ち抜き、触腕を千切り取る。
「ありがと~!」
「困ったときはお互い様ってやつっすよ!」
解放されたヴァンシュトールの礼に狛が明るく答え、廼鴉も片手を振って応えた。
窮地を脱した彼らを更に触腕が狙うが、奈加がホーリーライトで攻撃し、牽制する。
「あっぶなーい!! そうはさせないんだからねっ♪ もう、ウネウネウネウネ気持ち悪いのよ~~!!」
こうして連携のとれた猛攻に晒され、歪虚はついに全ての触腕を失った。
身悶えるように身体を振るわせ、唯一残った尾を振り上げてハンター達を威嚇する。
(ゲソ足はどうにかできたから……次は甲殻だよね。まあ、どれだけ硬くても耐久度に限界はあるだろうし、一箇所を狙い打ちにしてその部分を叩き割っちゃおう)
「ワンホールショット、久しぶりに狙うね」
ヴァンシュトールはリボルバーを握り直し、自身のマテリアルを高め、ここぞと決めた一カ所に銃撃を撃ち込む。
この一撃は歪虚の外殻に傷をつけたものの、割砕くまではいかなかった。
それとほぼ同時、触腕の根元にドリルを叩き込もうとしていたカズマの頭上に陰が落ちる。歪虚の尾剣が迫っていた。
身を翻して回避するカズマ。彼は尾の攻撃を誘発させ、自傷を誘おうとしていた。
「俺はそこまで強く無いのでね。使えるものは利用させて貰うさ」
回避のために崩れた体勢を立て直すカズマと入れ替わりように、ウーナの放った弾丸が飛来する。
マテリアルが込められた最大火力の一撃。
先にヴァンシュトールの銃撃が傷をつけた箇所に狙い過たず着弾するも、外殻の堅牢さが勝っていた。
「うそ! これでも割れない!?」
「あー!!」
ウーナの驚愕の声に狛の声が重なる。
「あったすよ! 隙間ー!!」
歪虚に肉薄し、囮となりながら外殻の隙間を探していた狛が、前体部と後体部の間にほんのわずかに開いた発見し、箇所を指示する。
可動部分に目をつけていた廼鴉はこの機会を逃さず、すかさずそこへと銃弾を撃ち込む。
隙間を穿った弾丸、歪虚からまた新たに青く濁った体液が飛び散った。
歪虚はもがき苦しみ、動きを更に鈍らせる。
この隙にと奈加はヴァンシュトールへとヒールを使用する。
「傷は大丈夫? 私が癒してあげるわ♪」
奈加は笑顔を作り努めて明るい調子で、癒やしと鼓舞を送るが、その内面は真摯なものだった。
(ゴメンネ……無理させて……もう少しだから頑張って!!)
ヴァンシュトールは奈加へと笑顔を向けて頷いた。
「さあ、もう一押しだ。一気に行こう!」
逃走される前に集中攻撃をという呼びかけに、ハンター達が呼応する。
ヴァンシュトールの銃弾が撃ち抜いた傷を、カズマがドリルナックルで押し広げ、更に、ウーナの最大火力が込められた弾丸が続く。狛が切り裂き、そこを廼鴉が狙い撃つ。
脆い箇所を衝かれ、流れるような連続攻撃に許容範囲を超えたダメージを受け続けた歪虚は、グズグズと崩れ落ち、やがて、形を失い塵となって消え去った。
本体が消えると同時に、千切れて砂の上に転がっていた触腕も消えていった。
珍しいゲソ足を味見できないかと期待していた狛は、それに落胆し、盛大にため息をついた。
●
こうして歪虚が消え去り、美しい風景が戻ってきた。
戦闘終了後、海岸へと様子を見に来た監視員を目敏く見つけ、奈加は猛アピールを開始する。
「ねねね監視員さん、流石にまだ歪虚の影響でみんな戻ってきてないじゃん? ちょこ~っと遊ぼうよ~♪ ダメ~?」
「あ、良いですよ。安全確認も兼ねてってことで、のんびりしてってください。でもあんま遠くに行かないでくださいね」
監視員は爽やかな笑顔を奈加とハンター達に向け、労いと感謝を込めて海水浴場をしばらくの間ハンター達の貸し切りにすると申し出た。
狛は瞳を輝かせて、波打ち際へと駆け出したが、水際で歩を止める。
「……あ、自分、犬掻きしかできなかったっす」
「そんな本格的に泳がなくても、波を楽しめばいいんじゃない?」
「そうっすね!」
まぶしい太陽、どこまでも続く水平線、突き抜けた青い空に浮かぶ白い入道雲。
まさしく夏。
ささやかだが人々の日常である景色を取り戻し、依頼を達成したことへの充足感を胸に、ハンター達は銘々に、のんびりと浜辺での一時を楽しむ。
そんな中、監視員に連絡先交換を持ちかける奈加だったが、監視員は彼女持ちであることが判明し、大変残念な空気が流れた。
「……チッ、爆発しr」
夏の恋は成就しない。
そういうところまで絵に描いたような夏だった。
ハンターズソサエティに血相を変えて駆け込んできた海岸監視員が、海水浴場の異変を訴える。
その場に居合わせ、そのまま歪虚退治を引き受けたハンター達は、詳しい状況を聞くと即座に対応と作戦を練り始めた。
凜々しい表情で作戦と装備の確認を行う松岡 奈加(ka0988)は、ふと、チラリと視線を横にそらして事務員と話し込んでいる監視員の様子を伺う。
監視員は水難救助の技能を持っており、それに見合う引き締まった肉体と精悍な面構えをしており、出会いを求める彼女の心を揺さぶるに十分だった。
(わぁー!! わぁーー!! 何? あの筋肉やばぁーい♪ 顔もわりかし好みだし~、活躍して、ビーチ護っちゃったりしたら、連絡先交換とか、ロマンス始まっちゃうんじゃないの?)
視線に気づいたのか、監視員は奈加へ顔を向け、はにかみながら白い歯を見せて微笑みかける。
(ヤダー……ガンバロ♪)
恋に恋する乙女のハートは、今ここに夏の太陽よりも熱く燃え上がっていた。
「なんでまた海水浴場なんだろね」
バーニング・ラブ状態の奈加の隣でウーナ(ka1439)が疑問を口にする。
近辺には港や街といった、より重要な施設があるにも関わらず、なぜ海水浴場になど出現したのか。
「水着のお姉さんが好きなのかな?」
小首を傾げ、冗談めかしたウーナに、神代 廼鴉(ka2504)が苦笑いで答えた。
「ま、それが嫌いなヤツの方が少ないだろうからなぁ」
出現理由は歪虚にしかわからないが、案外、水着美女の溢れる海水浴場で触手を振り回して、ポローンペローンイヤ~ンな読者サービス感溢れる画面を望んでいたのかもしれない。
望まれていたのかもしれない。
だがそうはならなかった。
●
現場は青い空と紺碧の海の間に広がる白砂の浜。
小さいながらも、地元の人間に愛される美しい景観。
その中に居座る異形、歪虚はカブトガニのような外殻の下から10本の触腕を伸ばし、獲物を求めて蠢かせていた。
「夏だ! 海だ! イカだ! ……え?」
狛(ka2456)は海の見える景色にはしゃぎながら、鎮座する歪虚の姿に驚き、そして
「かになのかいかなのかはっきりしてほしいっす!!」
即ツッコんだ。
全くもって如何にも(イカだけに)なツッコミに龍崎・カズマ(ka0178)が笑いを漏らす。
「ホント、あの中途半端さ。ああいうのを相手するのも、サバイバル経験なんだろうけどね」
「夏場の海に来てまで、ワケワカラン感じの相手ってのもなぁ」
やれやれといった具合に肩を竦める廼鴉。
「カブトガニってこんな浅瀬に現れるんだねー……って、歪虚ならそんなことも関係ないか」
ヴァンシュトール・H・R(ka0169)も半笑いだが、見た目の微妙さに反して、手強い敵であるだろうとの予測があった。
「でかくて硬くて動きは鈍い。典型的だけど厄介なパターンだよねコレ。とりあえずやるだけやってみようか」
ハンター達はその言葉に表情を引き締め、真剣な面持ちを見合わせ頷く。
「ところであの触手、おいしいんすかね!?」
どこまでもマイペースな狛の疑問。
「うーん、煮ても焼いても美味しくなさそうだよ、アレ」
「お腹壊しそうだしやめた方がいいよ」
ヴァンシュトールは迷うような困ったような笑みを浮かべ、ウーナが微笑みながら制止した。
●
前中後衛に分かれての行動。
前衛は囮として動き、中衛はそのアシスト、後衛は距離を保ちながら、囮に誘われて動いた触腕に攻撃を加える。
と、既に大まかな動きと布陣を決定していたハンター達の行動には迷いがなかった。
(まずは触腕を奪うことに専念、だね)
ヴァンシュトールとカズマがほぼ同時に砂を蹴って駆け出す。
カズマは攻撃を誘って触腕の限界距離を測り、仲間が戦いやすいような位置取りを把握しようとしていた。
「戦いは速さとチームワーク! 一気に叩き潰すよ!」
予備の弾倉と足場を確保し、万全の体制を整えていたウーナは後方に陣取り、歪虚へと接近する前衛を援護するために、アサルトライフルで触腕を狙い撃つ。
接近するまでが一番危険と、歪虚の手数を減らして前衛の安全を確保する。
「敵が動かないってのがラッキーっすよー」
二人の接近と銃撃に気を取られた歪虚、その反対側から祖霊の加護を得た狛が白砂の上を滑るように駆け、最短ルートを伝って歪虚の懐へと飛び込んだ。
カズマと共に囮となろうとしている狛は瞳にも加護を得て、注意深く歪虚の動きを追う。
触腕が狛の接近にも反応したが、それを廼鴉の銃弾が制止した。
(まずは触腕を減らしにいこう。甲羅に被われてる訳でも無し、ダメージは狙えるよな)
水中用アサルトライフルを構えた廼鴉は、触腕の排除と援護射撃に徹している。
奈加は突出する狛へとプロテクションを施術する。
「一応、お守りみたいなものよ♪」
後方にて前衛の支援を行う奈加は軽薄にも思える言の裏で、不測の事態に備え、すぐに対応できるようにしっかりと状況を見定めようとしていた。
ハンター達の接近と攻撃に歪虚はのそりと身体を動かし、反撃としてぞんざいに触腕を動かした。
丸太のようなそれがカズマに迫る。
横殴りの衝撃に蹈鞴を踏むが、彼はその場に踏みとどまり、不敵な笑顔を浮かべながら耐えて見せた。
(ゲソ足は早く減らさないと危ないな、まずはそっちを狙って撃ち落していこう)
前衛と後衛の間で足を止めたヴァンシュトールのリボルバーが火を噴く。
もし、再生能力があるようなら、次の一手をと彼は考えていたが、触腕についた傷が塞がることはなく、その心配はなかった。
銃撃に怯んだ触腕、歪虚へとカズマが更に距離を詰め、攻撃を誘う。
彼は敵の勢いを利用してのカウンターを狙っていた。
距離をカリキュレイトゴーグルで計り、攻撃のベクトルと真逆にナイフの刃を突きたてる、そのチャンスを伺う。
その背後を触腕が脅かすが、ウーナの放った銃弾がそれを止める。
「貸し1だよっ、今のうち!」
「おう!」
狛はクファンジャルで触腕に斬りかかりながら、本体甲羅のどこかに攻撃が通る隙間がないか探していた。
攻撃と探査とを同時に行うとなると、どうしても隙が生じるが、狛はそれを承知しており、触腕や尻尾への対処は、遠距離専門の後衛を信じ全て任せていた。
廼鴉がその信頼に応え、狛を狙っていた触腕を撃ち抜き援護する。
状況を見て少しの前進をしていた奈加が、攻撃を受けやすい位置にいるカズマへとプロテクションを施す。
手強いハンター達に業を煮やした歪虚が、手当たり次第に攻撃しようといっせいに触腕を動かした。
回避行動をとろうとしていたヴァンシュトロールとカズマだったが、思った以上に触腕が速く、二人それぞれに巻き付かれてしまった。
(軟性があるなら、どこかに不動の点を作ればいい。鰻を捌く時に、杭を打ち込むのと同じように)
カズマはドリルナックルを利用し、触腕を巻きとり、伸びきったところをスラッシュエッジで切り裂く、ということを図っていたが、触腕はドリルナックルだけにとどまらず、カズマの胴体ごと巻き付いていた。
それなら力比べとカズマは両足を踏ん張り、触腕を伸びきらせた状態へと持ち込んだ。
意図を察したウーナの銃弾が触腕を撃ち切る。
千切られた触腕が力を失い砂に落ち、カズマを解放する。
「ぬわー! 誰か助けてー! へるぷみー!?」
強力な力で締め上げられ、ヴァンシュトールが仲間に助けを求める。
「マズイ!」
「すぐ助けるっすよ!」
狛が触腕に取り付き、短刀で切り込みを入れた箇所を廼鴉が撃ち抜き、触腕を千切り取る。
「ありがと~!」
「困ったときはお互い様ってやつっすよ!」
解放されたヴァンシュトールの礼に狛が明るく答え、廼鴉も片手を振って応えた。
窮地を脱した彼らを更に触腕が狙うが、奈加がホーリーライトで攻撃し、牽制する。
「あっぶなーい!! そうはさせないんだからねっ♪ もう、ウネウネウネウネ気持ち悪いのよ~~!!」
こうして連携のとれた猛攻に晒され、歪虚はついに全ての触腕を失った。
身悶えるように身体を振るわせ、唯一残った尾を振り上げてハンター達を威嚇する。
(ゲソ足はどうにかできたから……次は甲殻だよね。まあ、どれだけ硬くても耐久度に限界はあるだろうし、一箇所を狙い打ちにしてその部分を叩き割っちゃおう)
「ワンホールショット、久しぶりに狙うね」
ヴァンシュトールはリボルバーを握り直し、自身のマテリアルを高め、ここぞと決めた一カ所に銃撃を撃ち込む。
この一撃は歪虚の外殻に傷をつけたものの、割砕くまではいかなかった。
それとほぼ同時、触腕の根元にドリルを叩き込もうとしていたカズマの頭上に陰が落ちる。歪虚の尾剣が迫っていた。
身を翻して回避するカズマ。彼は尾の攻撃を誘発させ、自傷を誘おうとしていた。
「俺はそこまで強く無いのでね。使えるものは利用させて貰うさ」
回避のために崩れた体勢を立て直すカズマと入れ替わりように、ウーナの放った弾丸が飛来する。
マテリアルが込められた最大火力の一撃。
先にヴァンシュトールの銃撃が傷をつけた箇所に狙い過たず着弾するも、外殻の堅牢さが勝っていた。
「うそ! これでも割れない!?」
「あー!!」
ウーナの驚愕の声に狛の声が重なる。
「あったすよ! 隙間ー!!」
歪虚に肉薄し、囮となりながら外殻の隙間を探していた狛が、前体部と後体部の間にほんのわずかに開いた発見し、箇所を指示する。
可動部分に目をつけていた廼鴉はこの機会を逃さず、すかさずそこへと銃弾を撃ち込む。
隙間を穿った弾丸、歪虚からまた新たに青く濁った体液が飛び散った。
歪虚はもがき苦しみ、動きを更に鈍らせる。
この隙にと奈加はヴァンシュトールへとヒールを使用する。
「傷は大丈夫? 私が癒してあげるわ♪」
奈加は笑顔を作り努めて明るい調子で、癒やしと鼓舞を送るが、その内面は真摯なものだった。
(ゴメンネ……無理させて……もう少しだから頑張って!!)
ヴァンシュトールは奈加へと笑顔を向けて頷いた。
「さあ、もう一押しだ。一気に行こう!」
逃走される前に集中攻撃をという呼びかけに、ハンター達が呼応する。
ヴァンシュトールの銃弾が撃ち抜いた傷を、カズマがドリルナックルで押し広げ、更に、ウーナの最大火力が込められた弾丸が続く。狛が切り裂き、そこを廼鴉が狙い撃つ。
脆い箇所を衝かれ、流れるような連続攻撃に許容範囲を超えたダメージを受け続けた歪虚は、グズグズと崩れ落ち、やがて、形を失い塵となって消え去った。
本体が消えると同時に、千切れて砂の上に転がっていた触腕も消えていった。
珍しいゲソ足を味見できないかと期待していた狛は、それに落胆し、盛大にため息をついた。
●
こうして歪虚が消え去り、美しい風景が戻ってきた。
戦闘終了後、海岸へと様子を見に来た監視員を目敏く見つけ、奈加は猛アピールを開始する。
「ねねね監視員さん、流石にまだ歪虚の影響でみんな戻ってきてないじゃん? ちょこ~っと遊ぼうよ~♪ ダメ~?」
「あ、良いですよ。安全確認も兼ねてってことで、のんびりしてってください。でもあんま遠くに行かないでくださいね」
監視員は爽やかな笑顔を奈加とハンター達に向け、労いと感謝を込めて海水浴場をしばらくの間ハンター達の貸し切りにすると申し出た。
狛は瞳を輝かせて、波打ち際へと駆け出したが、水際で歩を止める。
「……あ、自分、犬掻きしかできなかったっす」
「そんな本格的に泳がなくても、波を楽しめばいいんじゃない?」
「そうっすね!」
まぶしい太陽、どこまでも続く水平線、突き抜けた青い空に浮かぶ白い入道雲。
まさしく夏。
ささやかだが人々の日常である景色を取り戻し、依頼を達成したことへの充足感を胸に、ハンター達は銘々に、のんびりと浜辺での一時を楽しむ。
そんな中、監視員に連絡先交換を持ちかける奈加だったが、監視員は彼女持ちであることが判明し、大変残念な空気が流れた。
「……チッ、爆発しr」
夏の恋は成就しない。
そういうところまで絵に描いたような夏だった。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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サポート一覧
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依頼相談掲示板 | |||
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相談掲示板 狛(ka2456) 人間(クリムゾンウェスト)|17才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2014/08/26 07:10:37 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/08/21 00:07:00 |