ゲスト
(ka0000)
花見を邪魔する無粋者達
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/03/21 19:00
- 完成日
- 2016/03/26 14:17
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●花見スポットに現れた雑魔
グラズヘイムにも春の足音が近づいてきていて。
徐々に、梅や桜のつぼみが膨らんできている。もうじき、木々に花が咲き乱れ、花見ができそうだ。
古都「アークエルス」から程近い位置にある村。そこにはたくさんの木々があり、春になれば花見をしようと訪れる者も多い。
だからこそ、その村は観光地として、人々を出迎える準備を行うのだが。今年は困ったことになってしまった。
「雑魔、か……」
その村の村長は深く溜息をついてしまう。どうやら、木々の一部が雑魔になってしまったらしい。マテリアルの異常なのか原因はわからないが、近場の梅や桜が合わせて4本。雑魔となった木々は、近づく者へと襲い掛かってくるのだそうだ。
近づかなければ、一応害はないようだが、この時期に人が集まるこの村にとって、花見ができないのは致命的とも言える。
「……仕方ない」
村長はやむを得ず、ハンターズソサエティへと出向いていくのである。
●ちゃちゃっと倒して花見だ!
そうして、程なくハンターズソサエティに張り出された、新たな依頼。
『我が村の周辺に現れた、木々の雑魔を倒して欲しい』
それだけを見れば、なんとも単純な依頼だ。ハンターにとって、手軽な依頼ではあるのだが、さらに、彼らの目を引き付ける内容がその下にあった。
『倒してくれたなら、貸しきり状態で花見場所、並びに飲み物、食べ物の提供を約束する』
……とのこと。折角だから、ハンター達はその恩恵に預かる為に、雑魔を討伐しようと考えたようだ。
雑魔情報へと一通り目を通した一行は多少の作戦を立てた後、雑魔を倒してから、何をして楽しもうかと話を始めた。持ち寄る料理や振舞う芸などをどうしようかと、楽しそうに語るのである。
グラズヘイムにも春の足音が近づいてきていて。
徐々に、梅や桜のつぼみが膨らんできている。もうじき、木々に花が咲き乱れ、花見ができそうだ。
古都「アークエルス」から程近い位置にある村。そこにはたくさんの木々があり、春になれば花見をしようと訪れる者も多い。
だからこそ、その村は観光地として、人々を出迎える準備を行うのだが。今年は困ったことになってしまった。
「雑魔、か……」
その村の村長は深く溜息をついてしまう。どうやら、木々の一部が雑魔になってしまったらしい。マテリアルの異常なのか原因はわからないが、近場の梅や桜が合わせて4本。雑魔となった木々は、近づく者へと襲い掛かってくるのだそうだ。
近づかなければ、一応害はないようだが、この時期に人が集まるこの村にとって、花見ができないのは致命的とも言える。
「……仕方ない」
村長はやむを得ず、ハンターズソサエティへと出向いていくのである。
●ちゃちゃっと倒して花見だ!
そうして、程なくハンターズソサエティに張り出された、新たな依頼。
『我が村の周辺に現れた、木々の雑魔を倒して欲しい』
それだけを見れば、なんとも単純な依頼だ。ハンターにとって、手軽な依頼ではあるのだが、さらに、彼らの目を引き付ける内容がその下にあった。
『倒してくれたなら、貸しきり状態で花見場所、並びに飲み物、食べ物の提供を約束する』
……とのこと。折角だから、ハンター達はその恩恵に預かる為に、雑魔を討伐しようと考えたようだ。
雑魔情報へと一通り目を通した一行は多少の作戦を立てた後、雑魔を倒してから、何をして楽しもうかと話を始めた。持ち寄る料理や振舞う芸などをどうしようかと、楽しそうに語るのである。
リプレイ本文
●花見の前に
古都「アークエルス」近郊の村。
「此方の世界でも、桜や梅が見られるとは思ってませんでした」
ユキヤ・S・ディールス(ka0382)がその場を見回して、感嘆する。そこには、桜、梅などの木々があちらこちらに植えられていた。まだ、時期が若干早いのか、枝についているもののほとんどはつぼみの段階。満開には今しばらく、といった状態だ。
「花見日和と言えますけど、まだ花は咲きかけですね」
「ああ、早目の花見も、風情があって良いものだな」
満開の花や散り際の花も綺麗ではあるが。鞍馬 真(ka5819)も感慨深げに木々を見上げて呟く。花見と聞いて駆けつけたハンター達。多くはリアルブルー出身者だ。
「梅……桜……。何だか懐かしい気持ちになるわね」
リアルブルー出身のケイ・R・シュトルツェ(ka0242)はドイツ人だ。ただ、桜を見て覚えるこの特別な感覚……これは、彼女の中の日本人の血によるものなのだろうか。
(梅も桜も咲き掛け……。でも、「これから」って言う感じが未来を感じさせて。素敵な力を持っている気がする……)
彼女はしばらく、その感覚に身を委ねる。
しかしながら、直にここは戦場になってしまう。
「今回は木が相手っすか。人型じゃない敵は初めてっすね」
西蓮寺 咏(ka5700)は、まだまだ戦闘経験が浅い。木型の雑魔相手の戦闘方法を学びたいと考えている。
「漢探知前に近づいただけでやる気十分な歪虚なの。でも、お花見の為に容赦しないのっ」
漢探知とは、態と近づき、身を張って探知を行うことらしい。それはそれとして、ディーナ・フェルミ(ka5843)はお花見の為にと、ある程度村人から雑魔となった木々の出現場所を聞き出していたようだ。
「無料で、食べ放題と聞いて、全力で来ましたよー」
「花見、かあ……ぶっちゃけた話、然程親しくもないハンターの皆さんより、恋人と一緒に来たかったものね……まあいいわ」
最上 風(ka0891)やアルスレーテ・フュラー(ka6148)のように、身も蓋もないコメントをするメンバーもいたが。彼女達は彼女達なりに花見を楽しもうと考えている。アルスレーテは後の為にとお弁当を用意しているのだ。風は食べ物目当て丸出しだが。
そのハンター達の前に、動き出した木々がゆらりと近づいてくる。歪虚となってしまった桜、そして梅の木。黙っていれば風情のある木々に見えるが、そいつらは目に見えて、侵入者であるハンターを排除すべく近づいてくる。
「えーと、あの桜と梅を何とかすればいいのよね。ま、運動のついでよ。さっさと片付けましょ」
「さぁ、さっさと倒して、花見をしましょうー」
アルスレーテ、風の2人に続き、メンバー達は戦闘準備を整える。
そこで、ハンター側からは、怪しげな格好をした女性が1人。
(春の爽やかな陽気の中、素晴らしいお花見スポットで、桜や梅、季節感溢れる雑魔と血塗れデスマッチ……)
現れたのは、超級まりお(ka0824)。ただ、木々を伐ろうとする為、彼女はリボルビングソーをチュイイイイイ~ンと鳴らし、花粉対策にと目の部分に穴の開いた紙袋を頭に被っていて。
(花より団子ならぬ花より断末魔な連中には、さっさと退場していただかないとね~)
……まさに、その容姿は危険人物である。同じハンター達が完全に引いてしまっているが、まりおはお構いなし。
「ファー、ファップフェ、プフォオ~!(さー、やっつけるよ~!)」
意気込んで叫ぶまりおだが紙袋に遮られて、仲間達には何を言っているのかさっぱり分からないのだった。
●雑魔の伐採
「プィファーファップゴォ~!!」
もはや何を言っているのか分からぬ、不審者……もとい、まりお。
木々が迫ってくるのを見計らい、両足にマテリアルを込めた彼女は心の中でボタンを押しつつ、近場の梅へと素早く接近する。そして、彼女は手にしたリボルビングソーでその幹へと切りかかった。
「……さて。この素敵なロケーションに敵だなんて、無粋だわ」
ケイは何も見なかった振りをしつつ、敵の動きを観察する。突撃してきた梅の木に先んじて彼女は攻撃を仕掛け、敵の攻撃を止められればと、リボルバー銃から銃弾を叩き込む。
幹に銃弾を浴びせはしたが、敵の勢いは止められずにケイはそれをくらってしまう。
すかさず、敵を捉えたユキヤが光の弾を撃ち出す。光は梅の木に当たると同時に弾け飛び、敵に衝撃を与えて怯ませる。おかげでケイは体勢を整える余裕ができたようだ。
だが、向かってくる敵は1体ではない。向かってくる敵は突撃しながら突っ込んでくる。
真もそれを受けてしまうが、強く踏み込んだ直後に、右手の試作振動刀「オートMURAMASA」とソニックブレードを使って切りかかる。
「探す手間も省けて助かるっすね」
咏は報告通りの敵を確認するが、群がってくる敵はちと面倒だ。その為、彼女は飛び上がり、八角棍での強烈な一撃を叩き込む。すると、それを受けた桜の木を大きく吹き飛ばす。
さらに向かってくる木々を見据え、アルスレーテは練り上げたマテリアルを纏い、手にする鉄扇を叩きつけていく。
後ろに立つ風、ディーナ。彼女達は聖導士同士で固まり、敵が飛ばすという眠り花粉に備える。
風はその上でケイを狙う梅の木を狙い、被っている帽子の大きな目の模様からビームを発射する……ように見せかける。しかしながら、広がる光の波動は確かな威力を持ち、木々へとダメージを与えた。
「いくらきれいでも、歪虚には容赦なしなの。……セイクリッドフラッシュ」
ディーナはできる限り、雑魔になっても美しさを残す梅の木目掛け、彼女もまた光の波動を自身の周囲から飛ばす。
それを受けてもなお、雑魔となった木々は、侵入者を排除すべく攻撃を仕掛けてくるのだった。
●拘束と花粉に耐えながら
雑魔と化した木々は体当たりを繰り出し、またはその根を広げ、ハンター達の動きを止めてくる。
そんな中、怖いのが花粉だ。それには睡眠成分が含まれており、戦うハンターですらもそれに抗えないことがある。
手前の梅の木が飛ばす花粉に、アルスレーテは刹那、気が遠くなりそうな感覚を覚えて。
(そのまま寝てたーい……けど、そうは行かないわよね)
なんとか抵抗した彼女は、強かに花粉を撒き散らす梅の木へと鉄扇を叩きつける。すると、全身に攻撃を受けていたその木は全身を霧散させるように爆ぜ、消えてしまう。
一息つくアルスレーテだが、そばで咏がぐっすりと眠っているのを目にして。
「私が楽できないでしょ!」
「あいたっす!」
アルスレーテが鉄扇で引っ叩くと、咏はすぐに起き出していた。
その後も、前衛メンバーは目の前の敵を叩く。前衛メンバーが雑魔の伸ばす根に絡み取られてしまうと。
「キュア! ここで歪虚の養分になるとか、まっぴらなの」
絡め取られる仲間へ、ディーナが光を飛ばしてその根を取り去る。
ユキヤも聖導士だが、彼はある程度他2人の聖導士とは距離を開けていた。これは花粉に備えてのこと。回復手が全員眠らされては元も子もない。
「今、助けます!」
「助かる」
ユキヤは真を絡め取る根を攻撃して、拘束を解く。
その真は拘束されぬようにとうまく立ち回っていたのだが、連続して自身へと伸びてきた根に対応できなかったのだ。
しかし、目の前の相手はすでにボロボロ。真の振るう2本の刀はその桜の木を寸断してしまう。斬撃に沿ってずれる幹。それは地面に落ちることなく、消え去っていった。
一方で、梅の木と孤軍奮闘していたまりおは、体当たりと絡め取られる木の根で徐々に体力を減らしていて。
「回復しますよー、治療しますよー、有料でー」
彼女の体力を気にした風は注射器を乱舞し、まりおを癒す。紙袋によって注射器が飛んでくるのを見ずにすんだのは、ある意味では良かったかもしれない。
「手近な相手から、一体ずつ……ね」
アルスレーテは己の身を固めつつ、鉄扇を敵へと叩きつけ続ける。しかしながら、雑魔も隙を見計らって体当たりを繰り出し、またもまりおの身体に殴打を食らわせた。
「ヒール大盤振る舞いなの。だって終わったら宴会なの」
ディーナが祈りを捧げ、マテリアルの力を引き出し、体当たりを食らったまりおの傷を癒す。
そのまりおも、反撃とばかりに体中に巡らせたマテリアルによって、洗練された一撃を叩き込む。
のこぎり刃はついに、梅の木を切り落とす。
「フォッファーーーーー!」
叫ぶ彼女は、またも紙袋にその雄たけびを邪魔されていた。
気づけば、動いている木は桜が1体。
そいつもそれに気づいたのだろう。我が身可愛さに、後ろに向かって逃げ出そうとする。
「雑魔が逃げますよー」
注射器を飛ばしまくっていた風が、敵の動きに気づく。
すかさずケイが射撃を飛ばして敵を威嚇する。それによって足、もとい、根を止めた敵へ、咏が迫る。フットワークを使う彼女はステップを使いつつ雑魔へと近づき、八角棍を渾身の力で叩き付けた。
「終わりっすよ」
彼女がそっけなく告げると、みしりと木材がきしむ様な音を立て、動きを止めた雑魔が弾け飛んだ。
一通り敵を倒したメンバー達。ディーナは傷つくメンバーの手当てに当たる。
そして、真はこの地で不本意な形で倒れた木々の供養の為にと、横笛を吹く。その音色は鎮魂歌となりて木々達の間を行き交い、響き渡ったのだった。
●のんびりと花見に余興を
無事、雑魔を討伐したハンター達。
ユキヤは念の為、周囲の探索を行う。被害状況の確認もそうだが、他に雑魔となった木々がいないかのチェックも兼ねている。
「ケイさんは梅と桜……どちらがお好きですか?」
その同伴を願ったケイへ、ユキヤが問う。ケイはしばし、それぞれに数輪ずつ咲く綺麗な花を見比べて。
「比べるのは野暮かもしれないですね。どちらも其々綺麗ですから」
ユキヤは自らの問いを撤回しようとするが、ケイはそれを認めるも、敢えて答えを出した。
「あたしは……梅の方が好きかもしれない」
まだ寒さも和らぐかどうかの内に、春を訪れさせる前触れ。その姿は凛として、高貴で……。
「確かに春は命の季節、ですね」
ユキヤはケイのそんな言葉に、植えられた木々のつぼみを眺める。
「満開になったら、また来たいですね」
その頃、雑魔を倒した場所では。
「宴会っ宴会っ♪ うふふふふ、これが楽しみでこの依頼に参加したの」
ディーナは忙しなく動き回る。村の人々にも、本格的な季節を前にしたプレ宴会だと声をかけ、その上で自身は宴会料理を作成する。
それ以外のハンターは、すでに花見モードだ。
「どうせなら、満開の時に出現してくれていれば、より最高でしたのにねー」
風が言うようにほとんど花は咲いていない。真はそれが満開になった姿を想像しつつ、村人が持ってきてくれた酒を口にする。ほのかに暖かさを感じる陽気なこともあり、彼はぼんやりと桜を見上げていた。
「とりあえず、お弁当はみんなで食べましょうか」
アルスレーテは自身が持ってきた弁当を広げる。バラエティランチとツナサンドを作る為のパンとツナ缶。パンを切り分ける為にオブシディアンナイフを持ち寄り、その場でツナサンドを作り、仲間へと手渡す。
戦闘ではあれほどはっちゃけていたまりおも、戦闘でかなり消耗したこともあって、比較的大人しくぱくぱくとそのツナサンドを食べていた。
「運動してお腹空いているから、遠慮なく食べるっすよ」
咏は出される料理を片っ端から手を付けていく。
その間に、ディーナが調理した宴会料理が大皿で山のように盛られて運ばれてきた。揚げ物や握り飯、フルーツも脇には添えられていて。咏はそれらの料理に目移りをさせていたようだ。
「おかわり下さいー、食べますよー、超食べますよー、なにせタダ飯ですからね!」
風も片っ端から料理にがっつく。たくさんあって食べきれないと村人から声が上がるが、風にはお構いなし。
「残ったら、持って帰りますので、包んで下さい! お土産です!」
風は全力で村人へとそんな主張をしていた。
「さて、余興……。あ、そうだ」
アルスレーテは鉄扇を手にし、舞にチャレンジをしてみせる。とはいえ、彼女もさほど踊りの経験はないらしい。だが、リアルブルーや東方の知識を駆使し、和風というか、東方風の舞を踊ってみせる。東方の衣装出ないこともあり、見栄えもいいとはいえないが、そのチャレンジに盛大な拍手が沸き起こる。
「こういう場では、何か芸を披露するのが暗黙の了解なんすかね?」
料理を食べていた咏もそれではと、動画を観て覚えた棒術の型を披露してみせる。彼女が思い描いた桜の花弁が舞う状況とはいかなかったが、それでも、やる気を出して振るうその業は中々のものだった。
「タイやヒラメは舞い踊らなくても、宴会には音楽なの。リクエストがあったらジャンジャン弾くの」
ある程度料理を作り、自身もそれらを口にしたディーナも、仲間の武芸に合わせてリュートで明るい曲を弾く。真も横笛を奏で、合奏を行っていた。
そこで、ユキヤとケイが見回りから戻ってくる。
「ケイさんも、何か歌を聞かせて下さいますか?」
「あとで……感想、聴かせて頂戴ね? ユキヤも皆も」
微笑を浮かべたケイは、かつての本職ともいえる美声をこの場で披露する。
歌……この花達の美しさには敵わないけれど。
春を……冬から春になり行く。
花が……綻んで満開になり行く。
優しく、そして、生命の力強さを感じるその歌に、観客達からは大きな歓声と拍手が巻き起こったのだった。
古都「アークエルス」近郊の村。
「此方の世界でも、桜や梅が見られるとは思ってませんでした」
ユキヤ・S・ディールス(ka0382)がその場を見回して、感嘆する。そこには、桜、梅などの木々があちらこちらに植えられていた。まだ、時期が若干早いのか、枝についているもののほとんどはつぼみの段階。満開には今しばらく、といった状態だ。
「花見日和と言えますけど、まだ花は咲きかけですね」
「ああ、早目の花見も、風情があって良いものだな」
満開の花や散り際の花も綺麗ではあるが。鞍馬 真(ka5819)も感慨深げに木々を見上げて呟く。花見と聞いて駆けつけたハンター達。多くはリアルブルー出身者だ。
「梅……桜……。何だか懐かしい気持ちになるわね」
リアルブルー出身のケイ・R・シュトルツェ(ka0242)はドイツ人だ。ただ、桜を見て覚えるこの特別な感覚……これは、彼女の中の日本人の血によるものなのだろうか。
(梅も桜も咲き掛け……。でも、「これから」って言う感じが未来を感じさせて。素敵な力を持っている気がする……)
彼女はしばらく、その感覚に身を委ねる。
しかしながら、直にここは戦場になってしまう。
「今回は木が相手っすか。人型じゃない敵は初めてっすね」
西蓮寺 咏(ka5700)は、まだまだ戦闘経験が浅い。木型の雑魔相手の戦闘方法を学びたいと考えている。
「漢探知前に近づいただけでやる気十分な歪虚なの。でも、お花見の為に容赦しないのっ」
漢探知とは、態と近づき、身を張って探知を行うことらしい。それはそれとして、ディーナ・フェルミ(ka5843)はお花見の為にと、ある程度村人から雑魔となった木々の出現場所を聞き出していたようだ。
「無料で、食べ放題と聞いて、全力で来ましたよー」
「花見、かあ……ぶっちゃけた話、然程親しくもないハンターの皆さんより、恋人と一緒に来たかったものね……まあいいわ」
最上 風(ka0891)やアルスレーテ・フュラー(ka6148)のように、身も蓋もないコメントをするメンバーもいたが。彼女達は彼女達なりに花見を楽しもうと考えている。アルスレーテは後の為にとお弁当を用意しているのだ。風は食べ物目当て丸出しだが。
そのハンター達の前に、動き出した木々がゆらりと近づいてくる。歪虚となってしまった桜、そして梅の木。黙っていれば風情のある木々に見えるが、そいつらは目に見えて、侵入者であるハンターを排除すべく近づいてくる。
「えーと、あの桜と梅を何とかすればいいのよね。ま、運動のついでよ。さっさと片付けましょ」
「さぁ、さっさと倒して、花見をしましょうー」
アルスレーテ、風の2人に続き、メンバー達は戦闘準備を整える。
そこで、ハンター側からは、怪しげな格好をした女性が1人。
(春の爽やかな陽気の中、素晴らしいお花見スポットで、桜や梅、季節感溢れる雑魔と血塗れデスマッチ……)
現れたのは、超級まりお(ka0824)。ただ、木々を伐ろうとする為、彼女はリボルビングソーをチュイイイイイ~ンと鳴らし、花粉対策にと目の部分に穴の開いた紙袋を頭に被っていて。
(花より団子ならぬ花より断末魔な連中には、さっさと退場していただかないとね~)
……まさに、その容姿は危険人物である。同じハンター達が完全に引いてしまっているが、まりおはお構いなし。
「ファー、ファップフェ、プフォオ~!(さー、やっつけるよ~!)」
意気込んで叫ぶまりおだが紙袋に遮られて、仲間達には何を言っているのかさっぱり分からないのだった。
●雑魔の伐採
「プィファーファップゴォ~!!」
もはや何を言っているのか分からぬ、不審者……もとい、まりお。
木々が迫ってくるのを見計らい、両足にマテリアルを込めた彼女は心の中でボタンを押しつつ、近場の梅へと素早く接近する。そして、彼女は手にしたリボルビングソーでその幹へと切りかかった。
「……さて。この素敵なロケーションに敵だなんて、無粋だわ」
ケイは何も見なかった振りをしつつ、敵の動きを観察する。突撃してきた梅の木に先んじて彼女は攻撃を仕掛け、敵の攻撃を止められればと、リボルバー銃から銃弾を叩き込む。
幹に銃弾を浴びせはしたが、敵の勢いは止められずにケイはそれをくらってしまう。
すかさず、敵を捉えたユキヤが光の弾を撃ち出す。光は梅の木に当たると同時に弾け飛び、敵に衝撃を与えて怯ませる。おかげでケイは体勢を整える余裕ができたようだ。
だが、向かってくる敵は1体ではない。向かってくる敵は突撃しながら突っ込んでくる。
真もそれを受けてしまうが、強く踏み込んだ直後に、右手の試作振動刀「オートMURAMASA」とソニックブレードを使って切りかかる。
「探す手間も省けて助かるっすね」
咏は報告通りの敵を確認するが、群がってくる敵はちと面倒だ。その為、彼女は飛び上がり、八角棍での強烈な一撃を叩き込む。すると、それを受けた桜の木を大きく吹き飛ばす。
さらに向かってくる木々を見据え、アルスレーテは練り上げたマテリアルを纏い、手にする鉄扇を叩きつけていく。
後ろに立つ風、ディーナ。彼女達は聖導士同士で固まり、敵が飛ばすという眠り花粉に備える。
風はその上でケイを狙う梅の木を狙い、被っている帽子の大きな目の模様からビームを発射する……ように見せかける。しかしながら、広がる光の波動は確かな威力を持ち、木々へとダメージを与えた。
「いくらきれいでも、歪虚には容赦なしなの。……セイクリッドフラッシュ」
ディーナはできる限り、雑魔になっても美しさを残す梅の木目掛け、彼女もまた光の波動を自身の周囲から飛ばす。
それを受けてもなお、雑魔となった木々は、侵入者を排除すべく攻撃を仕掛けてくるのだった。
●拘束と花粉に耐えながら
雑魔と化した木々は体当たりを繰り出し、またはその根を広げ、ハンター達の動きを止めてくる。
そんな中、怖いのが花粉だ。それには睡眠成分が含まれており、戦うハンターですらもそれに抗えないことがある。
手前の梅の木が飛ばす花粉に、アルスレーテは刹那、気が遠くなりそうな感覚を覚えて。
(そのまま寝てたーい……けど、そうは行かないわよね)
なんとか抵抗した彼女は、強かに花粉を撒き散らす梅の木へと鉄扇を叩きつける。すると、全身に攻撃を受けていたその木は全身を霧散させるように爆ぜ、消えてしまう。
一息つくアルスレーテだが、そばで咏がぐっすりと眠っているのを目にして。
「私が楽できないでしょ!」
「あいたっす!」
アルスレーテが鉄扇で引っ叩くと、咏はすぐに起き出していた。
その後も、前衛メンバーは目の前の敵を叩く。前衛メンバーが雑魔の伸ばす根に絡み取られてしまうと。
「キュア! ここで歪虚の養分になるとか、まっぴらなの」
絡め取られる仲間へ、ディーナが光を飛ばしてその根を取り去る。
ユキヤも聖導士だが、彼はある程度他2人の聖導士とは距離を開けていた。これは花粉に備えてのこと。回復手が全員眠らされては元も子もない。
「今、助けます!」
「助かる」
ユキヤは真を絡め取る根を攻撃して、拘束を解く。
その真は拘束されぬようにとうまく立ち回っていたのだが、連続して自身へと伸びてきた根に対応できなかったのだ。
しかし、目の前の相手はすでにボロボロ。真の振るう2本の刀はその桜の木を寸断してしまう。斬撃に沿ってずれる幹。それは地面に落ちることなく、消え去っていった。
一方で、梅の木と孤軍奮闘していたまりおは、体当たりと絡め取られる木の根で徐々に体力を減らしていて。
「回復しますよー、治療しますよー、有料でー」
彼女の体力を気にした風は注射器を乱舞し、まりおを癒す。紙袋によって注射器が飛んでくるのを見ずにすんだのは、ある意味では良かったかもしれない。
「手近な相手から、一体ずつ……ね」
アルスレーテは己の身を固めつつ、鉄扇を敵へと叩きつけ続ける。しかしながら、雑魔も隙を見計らって体当たりを繰り出し、またもまりおの身体に殴打を食らわせた。
「ヒール大盤振る舞いなの。だって終わったら宴会なの」
ディーナが祈りを捧げ、マテリアルの力を引き出し、体当たりを食らったまりおの傷を癒す。
そのまりおも、反撃とばかりに体中に巡らせたマテリアルによって、洗練された一撃を叩き込む。
のこぎり刃はついに、梅の木を切り落とす。
「フォッファーーーーー!」
叫ぶ彼女は、またも紙袋にその雄たけびを邪魔されていた。
気づけば、動いている木は桜が1体。
そいつもそれに気づいたのだろう。我が身可愛さに、後ろに向かって逃げ出そうとする。
「雑魔が逃げますよー」
注射器を飛ばしまくっていた風が、敵の動きに気づく。
すかさずケイが射撃を飛ばして敵を威嚇する。それによって足、もとい、根を止めた敵へ、咏が迫る。フットワークを使う彼女はステップを使いつつ雑魔へと近づき、八角棍を渾身の力で叩き付けた。
「終わりっすよ」
彼女がそっけなく告げると、みしりと木材がきしむ様な音を立て、動きを止めた雑魔が弾け飛んだ。
一通り敵を倒したメンバー達。ディーナは傷つくメンバーの手当てに当たる。
そして、真はこの地で不本意な形で倒れた木々の供養の為にと、横笛を吹く。その音色は鎮魂歌となりて木々達の間を行き交い、響き渡ったのだった。
●のんびりと花見に余興を
無事、雑魔を討伐したハンター達。
ユキヤは念の為、周囲の探索を行う。被害状況の確認もそうだが、他に雑魔となった木々がいないかのチェックも兼ねている。
「ケイさんは梅と桜……どちらがお好きですか?」
その同伴を願ったケイへ、ユキヤが問う。ケイはしばし、それぞれに数輪ずつ咲く綺麗な花を見比べて。
「比べるのは野暮かもしれないですね。どちらも其々綺麗ですから」
ユキヤは自らの問いを撤回しようとするが、ケイはそれを認めるも、敢えて答えを出した。
「あたしは……梅の方が好きかもしれない」
まだ寒さも和らぐかどうかの内に、春を訪れさせる前触れ。その姿は凛として、高貴で……。
「確かに春は命の季節、ですね」
ユキヤはケイのそんな言葉に、植えられた木々のつぼみを眺める。
「満開になったら、また来たいですね」
その頃、雑魔を倒した場所では。
「宴会っ宴会っ♪ うふふふふ、これが楽しみでこの依頼に参加したの」
ディーナは忙しなく動き回る。村の人々にも、本格的な季節を前にしたプレ宴会だと声をかけ、その上で自身は宴会料理を作成する。
それ以外のハンターは、すでに花見モードだ。
「どうせなら、満開の時に出現してくれていれば、より最高でしたのにねー」
風が言うようにほとんど花は咲いていない。真はそれが満開になった姿を想像しつつ、村人が持ってきてくれた酒を口にする。ほのかに暖かさを感じる陽気なこともあり、彼はぼんやりと桜を見上げていた。
「とりあえず、お弁当はみんなで食べましょうか」
アルスレーテは自身が持ってきた弁当を広げる。バラエティランチとツナサンドを作る為のパンとツナ缶。パンを切り分ける為にオブシディアンナイフを持ち寄り、その場でツナサンドを作り、仲間へと手渡す。
戦闘ではあれほどはっちゃけていたまりおも、戦闘でかなり消耗したこともあって、比較的大人しくぱくぱくとそのツナサンドを食べていた。
「運動してお腹空いているから、遠慮なく食べるっすよ」
咏は出される料理を片っ端から手を付けていく。
その間に、ディーナが調理した宴会料理が大皿で山のように盛られて運ばれてきた。揚げ物や握り飯、フルーツも脇には添えられていて。咏はそれらの料理に目移りをさせていたようだ。
「おかわり下さいー、食べますよー、超食べますよー、なにせタダ飯ですからね!」
風も片っ端から料理にがっつく。たくさんあって食べきれないと村人から声が上がるが、風にはお構いなし。
「残ったら、持って帰りますので、包んで下さい! お土産です!」
風は全力で村人へとそんな主張をしていた。
「さて、余興……。あ、そうだ」
アルスレーテは鉄扇を手にし、舞にチャレンジをしてみせる。とはいえ、彼女もさほど踊りの経験はないらしい。だが、リアルブルーや東方の知識を駆使し、和風というか、東方風の舞を踊ってみせる。東方の衣装出ないこともあり、見栄えもいいとはいえないが、そのチャレンジに盛大な拍手が沸き起こる。
「こういう場では、何か芸を披露するのが暗黙の了解なんすかね?」
料理を食べていた咏もそれではと、動画を観て覚えた棒術の型を披露してみせる。彼女が思い描いた桜の花弁が舞う状況とはいかなかったが、それでも、やる気を出して振るうその業は中々のものだった。
「タイやヒラメは舞い踊らなくても、宴会には音楽なの。リクエストがあったらジャンジャン弾くの」
ある程度料理を作り、自身もそれらを口にしたディーナも、仲間の武芸に合わせてリュートで明るい曲を弾く。真も横笛を奏で、合奏を行っていた。
そこで、ユキヤとケイが見回りから戻ってくる。
「ケイさんも、何か歌を聞かせて下さいますか?」
「あとで……感想、聴かせて頂戴ね? ユキヤも皆も」
微笑を浮かべたケイは、かつての本職ともいえる美声をこの場で披露する。
歌……この花達の美しさには敵わないけれど。
春を……冬から春になり行く。
花が……綻んで満開になり行く。
優しく、そして、生命の力強さを感じるその歌に、観客達からは大きな歓声と拍手が巻き起こったのだった。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 4人 |
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- お約束のツナサンド
アルスレーテ・フュラー(ka6148)
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依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/03/20 08:43:39 |
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花より団子!(相談卓) アルスレーテ・フュラー(ka6148) エルフ|27才|女性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2016/03/20 06:48:46 |