【空の研究】虹の橋は誰がために

マスター:紺堂 カヤ

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/03/25 19:00
完成日
2016/04/01 02:29

みんなの思い出

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オープニング

 音もなく、霧雨に近いような細かな雨が降っていた。
 川のほとりに立てたられた、工事用の簡易テントから、雨の様子をうかがっている男が、五人。全員が、作業用のツナギを着ていた。
「やまねえなあ、雨」
 と、誰かがため息まじりにつぶやいた。
「もうやっちまいましょうよ、このくらいの雨なら大丈夫ですって」
 一番小柄な男がそう言って、木材置場へ歩き出そうとする。何人かが、それに続くようなそぶりを見せたのを。
「バカ野郎どもが!!!」
 ひげ面の男が一喝した。
「お、親方……」
「お前たち、もう忘れたのか! そういって工事を再開したからバリーもジョージも怪我をしたんじゃねえか! あの川を舐めちゃいけねえ」
「は、はい、すみませんでした……。でも、このままじゃいつになったら橋が完成するものやら」
 男たちが肩を落として、またため息をついた。そのとき。
「あのーう、お取込み中のところ、申し訳ないんですけれどねーえ」
 雨の中に、黒いローブの人物が現れた。フードを目深にかぶっていて、顔はほとんど見えない。
「ちょっと雨宿りさせていただけませんかねーえ」
「雨宿り? おわわ、ずぶ濡れじゃねえか! とりあえず、テントに入んなよ!」
「ありがとうございます」
 見知らぬ人物ではあったが、挨拶の丁寧さから考えても悪気を感じられず、気のいい男たちは、その人物をテントの中に招き入れた。
「助かりました、道に迷ってしまいましてねーえ。おや、皆さんは何かお仕事中だったのですか? お邪魔してすみませんねーえ」
 ずぶ濡れだというのにフードを外すこともなく、その人物は深々と頭を下げた。いやいや、と男たちは首を横に振る。
「気にすることないさ、仕事はな、進めることができんでいるのさ」
「まったく、勘弁してほしいよなあ。簡単になんか進められねえのに、催促だけは来るしよお」
「早く終わらせて欲しければもっと大規模に、って頼んでも、それは無理だって言われるしなあ」
 よほど鬱憤が溜まっていたのであろう、男たちが口々にぼやき始めた。かろうじて、ひげ面の親方がたしなめる。
「おい、やめないか、失礼だろう」
「いえいえー。何やら、事情がありそうですねーえ。よろしければ、お聞かせ願えませんかねーえ」
 フードの人物が、口元だけで微笑んだ。それがなんだか頼もしげに見えて、親方はしばらく迷っていたが、事情を説明しはじめた。



 目の前の川の向こう岸は、とてもさみしい所で、建物もほとんどなく、もちろん人通りもとても少ない。だが、そこにわざわざ別荘を建てた者がいた。ここ十年ほど、王国で力を伸ばしてきた商家・ルルド家の長男、カールである。実はこの別荘は、カールが恋人のキャスリンと逢瀬を重ねるために建てたもので、人気の少なさはむしろ好都合だったわけである。なぜそんなところでこっそり会わなければならないのかというと。
「ルルド家と、キャスリンさんのお家であるゴーン家は、昔から仲が悪いんだ」
「だから、交際がばれたりしたら大変なんだよ」
 なるほど、とフードの人物が頷くと、男たちのため息は一層深くなった。
「まあ、それに関しちゃ気の毒だとは思うけどよお……」
「もうちょっと違う方法はなかったのかねえ」
 人気の少なさは好都合だった。だが、人気が少ないが故に、道の整備は不十分で、別荘に行くには5キロも先の大きな橋を渡ってまた5キロ戻ってくる、という、片道だけで10キロの遠回りが必要になるのだ。
「だから、近道になるように橋を新たに作ってくれ、って依頼されたのさ。ところが、この川はそう深くはないにせよ、川岸の地盤が緩いんで工事がしにくい。もう二人も怪我人が出ちまった。大がかりに足場が作れれば安全対策もしっかりできるんだが、なにせ、秘密の別荘だからこっそりやってくれ、と言われたんで、大規模な工事ができねえ。怪我人が出てるんだ、と訴えたが、聞いてもらえなかったのさ」
「それは……、困りましたねーえ」
 フードの人物の声が、こころなし、低くなった。
「おや、雨があがってきたぞ」
「でも、地面が乾くまでは、まだ作業はできねえだろうなあ。明日にはカールさんとキャスリンさん、視察に来るって言ってたのになあ」
「また来るのか!」
 男たちが川を見つめる中、フードの人物は、雲間から光が差し出した空を見上げた。太陽の光が、独特の筋をつくり出しているのを見て、ふと、思いついたように微笑む。
「虹の魔法を、実験する良い機会かもしれませんねーえ」
 そう呟いてから、親方に向き直った。
「よろしければ、その橋の建造、少しだけ私に任せてみてはくれませんかねーえ」

リプレイ本文

 雨上がり、アメリアが空に見つけた独特な光の筋は、ほのかな虹となって空を彩った。
「お。虹出てるじゃん。あれを橋にするってわけだな」
 ザレム・アズール(ka0878)が空を見上げてニ、と笑った。それにつられて顔を動かしたシリウス(ka0043)とアルナイル(ka0001)も目を細めた。
「虹の橋なんて素敵だね」
「なんだか夢のお話みたいなのよ」
 頷き合う小柄な二人の後ろから、ぬっと白く大きな体躯が現れる。しろくま(ka1607)だ。
「虹の橋くまー? とても素敵くま!」
 大きなきぐるみの登場に、皆驚いていたが、フカフカで可愛らしい姿が笑顔を誘った。
「おやおや、随分と個性的な面々がお揃いですねーえ。嬉しいですよーお」
 黒いフードを目深にかぶったアメリアがハンターたちの前へ進み出る。マルカ・アニチキン(ka2542)が慌てて深々と頭を下げるのにアメリアも会釈を返す。マルカよりは砕けた態度で、マチルダ・スカルラッティ(ka4172)も挨拶をした。
「アメリアさん、こんにちは」
「こんにちは、マチルダさん。今回もよろしくお願いしますねーえ」
 アメリアはハンターたちの顔を見回して、誰もが虹の橋の完成を楽しみにしているらしいことを読み取った。思ったよりも楽しい作業になるかもしれない、と自らも顔をほころばせる。とはいえ、見えているのは口元だけなのだが。
「アメリアさん、早速だけど、今回試そうとしている虹の橋の魔法について、もう少し詳しく説明してもらえませんか? 魔法陣の大きさと橋の大きさは比例するのか、とか、魔法陣の位置とか、硬化時間とか」
 マチルダが小首を傾げて問うと、ザレムも頷いた。
「そうだな。硬化の持続時間は、俺も気になっていたんだ」
「さすが、皆さんポイントを押さえてくださってますねーえ。では、順番に説明しましょうかねーえ」
 アメリアが微笑んで、任務の軸となる虹の魔法について解説を始めた。
「まず、魔法陣の大きさと橋の大きさの関係性ですが、これは完全に比例するとは言えません。大きな魔法陣を描いたところで、虹が小さければそれまでですからねーえ。ですが、大きな虹を小さな魔法陣で硬化させる、ということもまた難しいのです。ですから、虹の大きさと魔法陣の大きさはできるだけ揃えておいた方がいいでしょうねーえ。今回のケースでいくと、そうですね、川幅の半分くらいの直径で描くのが良いでしょうかねーえ。
 位置は、虹の真下、橋の中心になる部分がいいですね。
次に、硬化時間ですが。およそ二時間ほどです。虹を構成する水分を、その程度しか引き留めておけないようでしてねーえ。それを延長するときには水をまきなおして、虹を作り直さなければなりません」
ふむふむ、と全員が真剣に聞いていた。ふと思いついたように呟いたのは、アルナイルだった。
「じゃあ、一度作った虹の橋で行って、戻って来るには、カールさんとキャスリンさんは二時間しか別荘にいられない、ということなのね」
「そうなりますねーえ」
「……カールさんとキャスリンさんのお家が認めてくれると早いのに」
「まったく、その通りですねーえ」
 アルナイルの言葉に、アメリアが深く頷いた。
「それで、魔法陣はどうやって描きましょうか?」
 マルカが遠慮がちに問いかけると、ハンターたちから次々に案が出された。
「橋の中心に魔法陣を描かなくちゃいけないってことは、川岸ではダメなのね」
 マチルダはアメリアの説明を聞いて、考えていた自分の案を自ら却下した。
「川の中に石柱を立てられないかなあ?」
 シリウスがそういうと、アルナイルとマチルダがうんうん、と頷く。可能であるならば、その方法は確実であろう。しかし。
「横から口を出してすまないんだが……」
 ハンターたちをもの珍しそうに眺めていた作業員の男たちが口を挟んだ。ひげ面の親方が代表して進言する。
「石柱を作るにはかなり大がかりな工事が必要だ。石を使う予定もなかったから、石材の準備もないし、難しいと思いますがね……」
「そうですか……、助言をありがとうございます」
 シリウスが丁寧に礼を述べると、じゃあこういうのはどうだ、と別の案が出てきた。
「ボートや筏を川に浮かべてその上に魔法陣を描いたらどうくま? 魔法陣を頑丈な板に書いてボートに固定するくま!」
 しろくまがそう言うと、ボート案を考えていた者は多かったらしく、頷きは大きくなった。誰ともなしに専門家の意見を求めて親方の方を見ると、親方も頷く。
「魔法のことはわからんが、それならよさそうな気がするな。だが、板をボートに乗せるというのは危険かもしれん。水の抵抗を大きく受けるからなあ」
「それなら、布かビニールシートのようなものに描いたらどう?」
 アルナイルが言うと、親方もそれなら、と同意した。
「じゃあ、ちょっと皆の案のいいところを集めてまとめよう」
 ザレムが落ち着いた微笑みでそう言った。



「シリィ、お願いね!」
 アルナイルがウォーターウォークで川を渡っていくシリウスに声をかけた。マルカも同じくウォーターウォークで川の上に立ち、川底に杭を打ち込む作業を始めた。
 ハンターたちが出した案をザレムがまとめたのが、この、川底に杭を打ち込み、そこからロープでボートを固定する、という方法だった。
「問題なく打ちこめそうです」
 マルカが川底と杭の調子を確かめて打ち込みながらそう言うと、ザレムは良かった、と頷いた。
「川岸は脆くても、川底なら長期の流水である程度安定してると思ったんだ」
「賢いくまー! はい、ボートとロープ、運んできたくま!」
 大きな身体を活かし、しろくまは率先して必要なものを運んでいた。作業員たちの手も借りながらボートを水面におろし、ロープで固定していく。ボートの数や位置の調整は、アルナイルとザレムが川岸から確認して行っていた。
 マチルダはというと、ビニールシートを広げ、アメリアの指示のもと、耐水性のペンキで魔法陣を描いていた。
「ねえ、アメリアさん。こういう魔法ってどこでみつけてくるの?」
 刷毛をペンキにひたしながらマチルダが尋ねると、アメリアはふふふ、と楽しそうに笑った。
「そうですねーえ、忘れかけられているような各地の不思議な言い伝えや、歌、遺跡……、そういうところが多いですかねーえ。不思議な出来事というのは数多くあって、その中には魔法が原因であることも多い。それを魔法だと断じる人がいないだけでねーえ。そういうものをひとつひとつ、見て回っているのですよ」
「それは凄い……、あれ?」
 マチルダは、なおも魔法の話をしようとしたのだが、川に近付いてくる人影に気が付いて顔を上げた。金髪の青年と、黒髪の娘だ。
「こ、これは何の騒ぎです!?」
 目を見開いて金髪の青年が駆け寄ってくる。もしかして、と誰もが思った通り。
「カールさん」
 親方が頭を下げた。彼が、橋の建設を依頼しているというカール・ルルドであるらしい。ということは、その隣に立つ黒髪の娘はキャスリン・ゴーンだろう。目鼻立ちのはっきりした、美しいかんばせである。
「見慣れない顔がいくつもありますが、これはどういうことですか親方。こうも大勢で作業をされては、人目についてしまうではありませんか」
 キャスリンが外見にぴったりのはっきりした物言いで親方に向き合う。自分の半分ほどの年齢であるだろう娘に対して、親方は恐縮して頭を下げた。
「は、すみません、しかし……」
「私が無理を言ったのです、申し訳ありませんねーえ」
 親方を庇うように、アメリアがふたりの前に立った。フードをすっぽりとかぶった見慣れぬ人物の姿に、カールとキャスリンがたじろぐ。そこをとりなすようにやってきたのは、川から上がってきたマルカであった。おどおどとした様子でありつつも礼儀正しくふたりにお辞儀をして、ふたりに椅子をすすめる。
「どうぞ、こちらに。もうすぐ、橋がかかりますから。それまで、お菓子などいかがでしょう」
「紅茶を淹れるくまー!」
 しろくまも寄ってきて、もてなしの準備を手伝った。
「は? 橋がもうすぐかかる? どういうことです、っていうか、クマ?」
 何もかもが突然の事態に目を白黒させつつ、カールとキャスリンはすすめられるがままに椅子に腰を下ろして出された紅茶と菓子を受け取った。
 川で作業をしていた面々も、休憩を取っているようだ。シリウスが持参したパンやチーズ、ハチミツなどのお弁当を頬張って、一息ついていた。
「さっすがシリィ!」
 アルナイルが満面の笑みを浮かべてマシュマロを食べている。食には目がないザレムも、舌鼓を打っていた。
「ボートの準備はできたようですねーえ。では魔法陣を仕上げて、水を撒く準備をしましょう」
 アメリアとマチルダが頷き合って、シートに魔法陣を描く作業を再開する。
「撒く水は、川から取ればいいよな、折角こんなにあるんだし」
 いちはやく休憩を終えたザレムは、ホースを準備し始めていた。もともとの工事に使用していた排水用のポンプを、作業員が準備してくれたので、それを使って、水を撒く算段を整える。
「虹の橋……」
「そのようなことができるなんて……」
 マルカとしろくまから話を聞いたカールとキャスリンが驚愕の眼差しで川を眺める。
「成功して欲しいくまー!」
 しろくまがとてとてとアメリアに近付いて、完成した魔法陣のシートを運ぶのを手伝った。マルカとシリウスが再びウォーターウォークでシートをボートの上へ広げると、あとは水を撒いて虹を作るだけ、になった。雨雲がすっかり晴れた空からの日差しは、ちょうどよい輝きで降り注いでいる。
「水は、ホースで撒きますか? ウォーターシュートを使えば、と思ったのですが」
 マルカが申し出ると、アメリアが首を傾げた。
「そうですねーえ、ウォーターシュートは何かぶつける対象がないと使用が難しいですから、ホースで撒くのが適切でしょうねーえ」
「よし、じゃあ、水を撒くよ!」
 ザレムがホースをかまえた。ホースの口をつぶして持ち、水が勢いよく出るようにしている。ポンプを、作業員が作動させると。
 シューッ、と勢いよく水が飛び出し、陽の光にキラキラと輝いた。
「わあ、綺麗!」
 アルナイルが歓声を上げる。水の輝きだけでも、充分美しい。が。
「ザレムくん、ホースの角度をもう少し上に。ああ、そうですそうです」
 アメリアが指示を出し、ザレムがそのとおりに角度を変えると。
「虹だ!」
 シリウスが微笑んだ。わあ、とすべての者の顔に笑みが広がる。七色の、大きな虹がアメリアは、油断なく魔法陣に目を走らせた。
 と。
 その魔法陣がぼんやりと輝き始め、魔法の発動を教えた。
「あっ、虹が!」
 マチルダが思わずというように叫ぶ。淡く輝く虹の色が、少しずつ濃くなってゆく。すぐに消えてしまいそうな儚い揺らめきだった虹は、明らかに硬度を得ているように見えた。そして、揺らめきが完全になくなったところで。
「成功したようですねーえ」
 アメリアは虹に近付き、拳でコンコン、と叩いて硬度を確かめた。ザレムに水を止めるように合図すると、くるり、と皆の方へ振り向いて、芝居がかったお辞儀をした。
「お待たせいたしました。虹の橋の完成でございますよーお」
 しろくまがぱふぱふと拍手をすると、それに合わせて皆が拍手をした。カールとキャスリンも呆然としながら手を叩いている。
「安全確認も兼ねて、僭越ながら私がまず渡らせていただきますねーえ」
 アメリアはそう言うと、安全確認、という言葉の割には躊躇いのカケラもなく、虹の橋に足を乗せ、すたすたと渡り切って向こう岸で手を上げた。
「凄いくま! くまも渡ってみたいくま! でも、まずはカールさんたちが渡るくまま!」
 しろくまが、カールとキャスリンを促すと、ふたりは迷うように顔を見合わせたが、うん、とひとつ頷き合って、おそるおそる、虹の上を歩き出した。手を繋いで歩くふたりを見て、アルナイルが呟く。
「2人ともずーっと仲良しでいてほしいな」
 その呟きは、虹の橋の上のキャスリンにも聞こえたらしい。キツイ印象の目元をやわらげて、美しく微笑んだ。
 無事にふたりが渡り終えると、ハンターたちも順番に橋を渡り始めた。
「すっごく綺麗! ね、フィオレッティ」
 マチルダはソウルウルフのフィオレッティと共に。
「アル、いっしょに行こう」
「うん、シリィと一緒に行きたいのよ」
 シリウスとアルナイルは、仲良く微笑み合って。
「くまも渡れるくま?」
「大丈夫みたいですよ、行きましょう」
「早くいかないと後ろから押すぞ~!」
 しろくま、マルカ、ザレムが楽しそうにじゃれあいながら。
 そのように渡っているハンターたちを、カールとキャスリンが真剣なまなざしで眺めていた。後ろから、そっとアメリアが声をかける。
「橋が、どのようなものか、おわかりになりましたかねーえ」
「え」
 カールとキャスリンが振り向くと、アメリアが静かな声で言葉を続けた。
「あの橋は、あなた方ふたりだけのために架けられた橋です。けれど、ふたりだけのための橋を、これだけ大勢の力がなければ架けられなかったのです。こっそり橋を架けたい、と仰っていたようですが。大勢が、そうして苦労して架けた橋は、ふたりだけの絆を繋ぐものにしかならないというのは、寂しいですねーえ」
「……」
 カールか唇を噛み、キャスリンはうつむいた。
「あの橋は、私だけが作れるというものではなく、あの魔法陣があれば誰でも作れます。ですが、水を撒くのも、ボートを出すのも、何かと手間がかかります。誰もが使う橋として管理する人間を置くというのなら、あの魔法陣は置いてゆきましょう。そうではなく、あくまでもふたりで使うというのなら、持って帰らせていただきます。あなた方はボートでもなんでも使ってこそこそおやりなさい」
「……今、ハンターの皆さんを見ていて、思いました」
 キャスリンが、顔を上げた。
「あんなふうに、たくさんの人が、そう、わたくしのお母様やお父様も、一緒にあの橋を渡れたら、って。そして、ずっとふたり、仲良くできたら、って」
「橋は、責任を持って僕らが維持できるように管理を整えます。そのために、両親にも、僕らの仲を認めてもらいます」
 カールも、しっかりと頷いた。
「良かった!」
 離れたところではらはらと様子を見ていたハンターたちが微笑んだ。ことに、アルナイルは嬉しそうに、シリウスの手を取って飛び跳ねた。
「よかった、よかった!」
 そして、誰よりも嬉しそうにしていたのは、苦労を重ねて工事を続けてきた、作業員たちであった。彼らも、虹の橋の上で、嬉しそうに笑っていた。

「川の両岸だけでなく、家も繋ぐ橋。虹の橋にふさわしい役目ですねーえ」

 フードの下で、アメリアが目を細めた。

依頼結果

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MVP一覧

  • 幸せ歌う双兎
    アルナイルka0001
  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズールka0878

重体一覧

参加者一覧

  • 幸せ歌う双兎
    アルナイル(ka0001
    エルフ|13才|女性|聖導士
  • 世界爪弾く双兎
    シリウス(ka0043
    エルフ|13才|男性|魔術師
  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • もふもふ☆教祖様
    しろくま(ka1607
    人間(紅)|28才|男性|聖導士
  • ジルボ伝道師
    マルカ・アニチキン(ka2542
    人間(紅)|20才|女性|魔術師
  • 黎明の星明かり
    マチルダ・スカルラッティ(ka4172
    人間(紅)|16才|女性|魔術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
シリウス(ka0043
エルフ|13才|男性|魔術師(マギステル)
最終発言
2016/03/25 17:46:14
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/03/24 20:38:28