• 審判

【審判】防衛! ラスリド領巡礼路

マスター:鳴海惣流

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/04/01 15:00
完成日
2016/04/06 09:49

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 グラズヘイム王国ラスリド領。
 領主のゲオルグ・ミスカ・ラスリド伯爵が朝に自身の執務室でゆっくりしていると、補佐役に任命している疾影士の男ザスターがノックもそこそこに飛び込んできた。
 騒々しいと叱責するような真似はしない。外見は三十代前半程度だが、ザスターは元ハンターでそれなりに経験も積んでいる。縁あって現在は所属をハンターズソサエティからラスリド領に移している。実力のある覚醒者は数が少ないため、私設軍を任せる意味でも重宝している。
 そのザスターが慌てているのだから、領内で問題が発生したのは明らかだ。椅子に座ったままで、ラスリド伯爵は事態の報告を求める。

「何があった」
「はっ。領内に複数の飛行生物が接近中とのことです」

 刈り揃えた前髪を少しだけ揺らし、筋肉に包まれた大きな背中を丸めるようにしてザスターが手に持つ報告書を読み上げた。

「飛行生物? まさかワイバーンが群れをなして襲ってきたか?」
「いえ。敵はどうやら有翼の獅子一体と有翼の狼が数体の模様。正体不明の歪虚と思われます」
「正体不明なのに歪虚なのは判明しているのか?」
「以前に似たような敵の報告が、ギルドを通してあった模様です」

 ラスリド伯爵は右手の親指と人差し指で顎を撫でながら「ふぅむ」と唸るように言った。
 ラスリド領のあるフェルダー地方には、魔獣が生息している。そのため凶悪な魔獣との戦闘も経験があった。
 しかしながら、報告にあった有翼の獅子や狼といった敵と遭遇したことはない。

「ゴブリンどもの脅威が薄れたと思ったら、次はこれか。休む暇もないな。それで連中は我が領を飛び越えて、王都を目指すつもりか?」
「いいえ。それがどうやら我が領の巡礼路を目指している模様です」
「巡礼路? 正体不明の歪虚が、どうしてそこを狙う」
「敵の目的については、いまだ謎のままです。どうなさいますか?」

 問われたラスリド伯爵は、勢いよく椅子から立ち上がる。

「決まっている、出撃だ。私兵だけでは足りぬ可能性もある。ハンターに依頼を出しておいてくれ」
「はっ」


 大急ぎで準備を整えたラスリド伯爵は、領内の巡礼路前の平原に陣を張った。
 事前の報告で、敵はこの進軍ルートを使うのがわかっていたからである。
 前衛を雇ったハンターに任せ、ラスリド伯爵の部隊は後衛から援護する。
 兵の大半に弓を持たせ、いつでも矢を射れるように準備させておく。

「敵が空を飛んでいるのなら、撃ち落とせばいい。そうすれば影響なぞなくなるからな」

 笑うラスリド伯爵の隣には、装備に身を固めたザスターが立っている。

「連中の狙いを判明させますか?」
「その必要もなかろう。泳がせた結果、取り返しのつかない事態になっても面倒だ。狙いがどうであろうとも、ここで全滅させればよいだけよ」

 向かってくる謎の歪虚の殲滅。それが今回の戦闘の目的だった。

「我らの背後には巡礼路がある。この草原を最終防衛ラインとする。一体二体なら追いかけてなんとかできるかもしれんが、三体以上になるとキツい。その点を考慮にいれておけ」
「はっ」

 ザスターが返事をしたところで、警戒にあたっていた兵士が声を張り上げた。

「来ました。翼の生えた獅子と狼の歪虚です。真っ直ぐにこちらへ向かってきます!」
「よし、前衛のハンターに伝令を送れ。戦闘開始だ!」

 ――かくして。
 ラスリド領に侵入し、巡礼路を狙う歪虚との戦いの火ぶたが切られた。

リプレイ本文


 爽やかな草原が戦場へ変わる。艦隊を組むように空を舞う狼の群れと獅子の存在感は強烈だった。
 雲ひとつない青空を進む敵を阻んでやろうと央崎 枢(ka5153)が前に出る。

「ラスリド伯爵の兵には援護をお願いする」

 枢が仲間やラスリド兵の反応を確認する側で、アルスレーテ・フュラー(ka6148)は何かを考えるように首を軽く傾げた。

「一匹連れ帰ってペットにしたいけれど、世話がめんどそうだし、やっぱり殲滅かしら」
「翼の生えた獅子さんに狼さんだもんね。普通は飼いたいと思うよね! もふもふしたいよね! 歪虚じゃなければ……悔しい!」

 似たような感想を抱いていたミィリア(ka2689)は、アルスレーテの呟きに真っ先に反応した。両手をブンブン振って興奮ぶりを表現しつつも、自分を叱咤するように両拳を強く握り締める。

「ええーい、だからといって可愛さに惑わされるミィリアじゃない! しっかり倒して全員無事で帰るっ。それが一番だよね! でござる!」
「ダイエットのついでだし、頑張りましょう。ところで、どうしてハナは涎を垂らしているのかしら」

 周囲の注目を集めた星野 ハナ(ka5852)が、濡れた唇からこぼれ落ちそうな涎を手の甲で拭う。

「まだ見ぬ食材への憧れ。コレは全てに優先すると思うんですぅ。狼と獅子の手羽先。異世界感満載のファンタジー料理を想像するだけで……じゅるり」

 拭いたばかりの涎がまた溢れそうになる。若干の興味を示したのは、肉類が大好物の不動シオン(ka5395)だった。

「連中の手羽先で一杯飲むのも乙かもしれないが、すべては今回の依頼を片付けたあとだな」

 そう言うとシオンは、空を舞う狼や獅子を睨むように見上げた。

「おい貴様ら、巡礼路まで何も急ぐことはなかろう? 私が遊んでやる、少しは付き合え!」

 シオンから見て左側の先頭を飛ぶ狼の一体に、拳銃で弾丸を撃ち込む。
 狙いは正確だったが、体を捻るようにして狼が回避する。大きな翼のおかげで、空中でも十分な俊敏性を発揮できるようだ。
 シオンの横を通り抜け、馬に乗った万歳丸(ka5665)が前進する。

「西方で初めて見た縁日の射的みてェだな」

 言って、チラリと背後を見る。いるのはボウを構えたラスリド兵達だ。

「頼りにしてるぜラスリドの兵士達。景気よく飛ンでくれてンだ、ガンガン撃ち落としてやろうぜ。景品になるかは知らねェがなァ!」

 馬上で両手に構えた銃をぶっ放すも、先ほどのシオンの攻撃同様にかわされてしまう。

「だあっ! クソっ! 俺が下手なのか、奴らが速すぎるのか。どっちにしろ、厄介だぜ!」
「個人的には後者だと思うけどね。さて、とにかく敵を地上に引きずり下ろしたいわね。空中優先は絶対よ。ずっと撃ち続けてくれるかしら」

 マリィア・バルデス(ka5848)と万歳丸に弓での迎撃を依頼されたゲオルグは、兵士に左に四名、右に三名で隊列を組み直すように指示を出した。

「承知した。前方の狼から優先的に攻撃させる。君はどうするのだ?」
「私? 私は獅子狙いよ。このマシンガンなら、ここからでも届くもの」

 不敵に微笑んだマリィアの狙いすました高加速射撃だったが、命中する寸前で獅子が身体を沈ませてやり過ごす。空中では敵に分がありそうだ。

「飛んでくるなら撃ち落とせばいいか。分かりやすくて良いじゃねえか」

 銃を準備しながら、レイオス・アクアウォーカー(ka1990)は背後のラスリド兵を見る。

「魔獣相手に経験豊富な兵士が揃ってるって聞いてるぜ。安心して背中を任せられそうだ、援護よろしくな」

 敵の有利性を奪うべく、レイオスも左側先頭の狼を銃撃する。しかし仲間の攻撃と合わせて三度回避される。
 ならばとミィリアが弓で右側先頭の狼へ矢を放つも結果は同じだった。

「初撃と手羽先はいただきますよぅ。だ~か~ら~……往生せいやぁっ!」

 アクセサリーに装備した符を投げ上げ、ハナが先頭を飛ぶ二体の狼へ風雷陣を放った。荒れ狂う稲妻が、一体の背中を貫く。
 瀕死に近いダメージを負って大きな翼を羽ばたかせる力を失い、苦悶と殺意で目をギラつかせた狼がゆっくりと草原へ降りる。

「一体落ちたな。回避力はありそうだが、絶対に当たらないってわけじゃなさそうだ」

 枢がクールに状況分析する中、好機と見なしたゲオルグが配下の兵士に装備させたボウで攻撃を仕掛けさせる。
 左側先頭の狼を四人で狙うも、なんとか命中したのは一本だけ。それも弱いダメージを与えるのがやっとだった。
 右側先頭の狼には当てられず、止めも刺せなかった。


 攻撃を繰り返せば、どうしても手の休まる瞬間が生まれる。敵はその隙を逃さない。
 先頭にいた二体がラスリド兵の目と鼻の先まで前進し、その他も一直線に空から草原の突破を目指す。

「ここを通りたければミィリアを倒してからにしろー! でござる! ……なんて、言ってみたかったんだよね~」

 頭上を飛んでいきそうだった狼が動きを止める。しかし視覚でマテリアル反応がミィリアからだと知ると、抵抗するように理性を働かせて影響を弱めさせる。
 目視で効果の低下を悟ったミィリアだが、試す意味も含めてのソウルトーチだったので落胆はしない。

「想像してたほどじゃないけど、ちょっとでも気を引けたんなら上出来だよね。ここは突破させないんだからっ!」

 一方シオンは前衛を突破した狼を追いかけて後衛まで下がる。銃で狙ったのは、先ほどまで左側先頭だった敵だ。
 弾丸の熱さと激痛で狂ったように首を振る狼は飛んでいられなくなり、ラスリド兵たちの前に墜落するような勢いで降り立つ。

「無視して素通りするほど、私との戦いが退屈だったみたいだからな。少しは面白くなったろう? 巡礼路へ行けなくなるくらい、たっぷり可愛がってやる」

 見下すように笑って敵を挑発するシオンに続き、大地に立った二体の狼へハナが五色光符陣で追撃する。

「んもう! ちょこちょこと避けてないで、早くこんがりと焼けてくださいよぉ」

 命中した一体が地面に横たわる。直後、ハナが「あーっ!」と叫んだ。
 狼が倒される様子を近くで見ていたゲオルグが、どうしたとハナに大声で聞く。

「狼の死体が消えちゃってますぅ。これじゃ、手羽先が食べられないですぅ!」
「歪虚でなければ本当に食べるうつもりだったのか。あなどれん」

 何故か生唾を飲むゲオルグへ、身を守るために前へ立っていたザスターが警戒の言葉を飛ばす。
 そこへ重なるようにしてマリィアの言葉が届く。

「私は引き続き獅子を狙うわ。射程に入った後続の敵や、ハンターが対応できていない地上に落ちた奴は任せるわ。連携するならタイミング合わせはラスリド伯にお願いしたいわね。貴方の兵の誉れは貴方の誉れだもの」
「無論だ。右翼は飛んでいる敵を、左翼は落ちた敵を狙え。後退し、距離を稼ぎながらだ。近接戦闘を担うハンターのお荷物にはなるなよ。撃てぇ!」
「防御より攻撃優先の後退。嫌いではないわね」

 わずかに口角を吊り上げ、ラスリド兵が矢を射るのに合わせてマリィアは高加速射撃を行った。
 ゲオルグの号令で敵を牽制している間に、アルスレーテが落とした狼へ追いつき、ラスリド兵を守るように立つ。

「ずいぶんと走らせてくれるじゃない。私がダイエット中なのを知ってるのかしら。お礼を言ってあげてもいいわよ。貴方が消えるまで、このままお手伝いしてくれたらね」

 後衛が各所で発生する睨み合いで緊張感を高める中、前衛では枢が新たに迫ってきた狼の一体とやり合っていた。

「竜を相手にしてきたんだ。飛ぶ敵には慣れてるんで、ねっ!」

 ヴァイパーソードを鞭のようにしならせ、背中に命中させるも、敵はまだ落ちない。

「戻って後列へ向かった敵を討伐したいが、そっちは仲間に任せるか。俺はこの場で、これ以上後ろへ行かせないように食い止める。正面からは迫力満点の奴もやってくるしな」

 枢が見上げた先には、威風堂々という表現に相応しい態度の有翼の獅子がいた。

「あのござる野郎には負けてらンねェ! ごゆっくりと突破できるなんて、思ってくれてンじゃねェぞ!」

 狼以上にミィリアのソウルトーチへ敏感に反応した万歳丸。馬で戦場を駆けながら、いまだ我が物顔で大空を舞う狼を撃つ。

「いよっしゃ! 当たったぜ。意外にオレって才能あンのかもしれねェなァ。 ハッハァ! この調子で次行くぜ!」

 着実に空から狼の影が消える中、レイオスは兵を守るために後衛まで下がっていた。

「よう。地面に落とされた気分はどうだ。ここから先が通行止めなのは理解できたか?」

 威嚇するような唸り声から突進してきた狼の一撃を、仲間のお返しとばかりにレイオスはサイドステップで回避する。

「空では味方の弾を避けまくってくれたみたいだが、地上ではそう簡単にいかねぇぞ。オレ式変則二刀流、存分に喰らいやがれ!」

 初撃の拳は避けらるも、二撃目の刀でレイオスは狼を背中から斬り裂いた。

「好機を逃すな!」

 ゲオルグの号令で射られた無数の矢が、先ほど枢がダメージを与えた狼に命中する。すでに傷を負っていたのもあり、兵士の一斉射撃で落とすのに成功した。


 枢は素早くガラティンに持ち替え、狼の反撃の牙をブロックする。
 アルスレーテも他の狼の一撃をひらりと避ける。戦況は着実に有利になりつつある。
 しかしそこへ獅子がやってくる。空中で動きを止め、見下ろすミィリア、マリィア、枢にファイアブレスを見舞う。
 枢へのブレスは外れ、マリィアは寸前で回避した。ミィリアは腕に受けてしまったが、ダメージにはならなかった。
 獅子が攻撃を仕掛けたタイミングで、他の狼がラスリド兵の頭上を通過して巡礼路へ向かおうとする。

「歪虚が聖地巡礼なんてするワケ無いし、向かっているのも碌な理由じゃなさそうだな」

 牽制するように、レイオスはミィリアのソウルトーチの影響を受けている狼を狙う。命中こそしなかったが、前へ進ませないようにするには十分だった。
 ラスリド兵の射撃で落ちた狼に枢が迫る。敵の攻撃を受け止めた魔剣を急所に叩き込み、絶命させる。

「落ちてしまえば、ご自慢の飛行能力も役に立たないな。削っておいたおかげで兵士の弓で翼を潰せたし、このまま連携して一気に終わらせるかね」

 シオンはさらに下がり、空を飛んだまま防衛ラインを突破しようとする狼へ銃口を向ける。

「この私が追いかけてやってるんだ。そろそろ振り向いてくれてもいいだろう? 地獄への片道切符をプレゼントしてやるぞ」

 放たれた弾丸が急所に命中し、空中で悶えた狼が悲鳴を上げながら落下する。
 いまだ翼を活用できる一体には、レイオスと万歳丸が狙いをつける。
 ミィリアのソウルトーチの効果を振り切るように前へ出た狼に弾丸が迫るも、体勢を変えて皮一枚をかすって大空に消えていく。

「……ンー。最初は当たって面白かったんだが、飽きてきたな。効率もイイかもしれねェが、拳の方が性にあうぜ」

 万歳丸とレイオスの攻撃を避けた狼を、今度はミィリアが狙う。力の限りに弓弦を引き、精神を集中して矢を放つべき一点を見据える。

「憧れのおサムライさんになる為に、コツコツ練習した成果を見せてやるんだからっ!」

 まるで地上から流星が空へと駆け上がっていくかのようだった。頭上高く飛んでいた狼が落ちてきた。腹に矢が刺さった状態で。

「これで狼はすべて落としたわね。あとは獅子だけになるけど、その前に始末をつけておきましょうか」

 自分に仕掛けてきた狼に開いた鉄扇を振るい、疾風打で牽制の一撃を加えたアルスレーテはさらに加速する。今度は鉄扇を閉じ、敵の肉体をドリルで貫くように螺旋突を食らわせて、存在を消滅させる。

「次は獅子を狙おうかしら。くるくる舞うように立ち回って、ちょっとカッコつけてみるのも悪くないわね」

 残る敵は獅子一体と落ちた狼が二体。そのうちの一体が、強引にラスリド陣内を突破しようとする。

「させるか!」

 ゲオルグを背後に守りつつ、狼の動きを止めるためにザスターが長剣を振り下ろす。
 だがハンターたちでも当てるのに相当苦労した狼。剣は届かず、反撃を食らう。盾で防いだが、ザスターは軽く吹き飛ばされる。

「よく足を止めてくれた。後はオレに任せてくれ! 一気に潰してやる!」

 チャージングで距離を一気に詰めたレイオスの二刀流を受け、草原を転がる狼に立ち上がる力はもうない。
 次々と倒される狼たちを目にして、獅子の怒りが増幅する。その様子を見ていた枢が正面を担当し、ハナとミィリアが援護に回る。

「符にはまだ余裕があるし、バンバン撃っちゃいますよぉ」
「こっちもいくよっ! 痛い目にあわせてやるから、覚悟しろー! でござる!」

 ハナとミィリアがタイミングを合わせる。五色光符陣と矢がそれぞれ別方向から獅子を襲う。
 避けるのが遅れた獅子は、ついに空を飛んでいられなくなる。降りた先で待ち構えるのは枢だ。

「黒の炎に呑まれ、無へ還れ――」

 必殺のデイブレイカーがまともに決まるも、獅子はまだ絶命しない。最後の力を振り絞って枢に爪を突き立てようとする。
 だが獅子は目的を果たすことなく、瞳から命の輝きを失わせて横向きに倒れた。腹部には、マリィアの放った銃弾による穴が空いていた。

「ずっと撃ち続けて、ようやく当たったと思ったら止めになるなんて、なんだか皮肉よね」

 そう言ってマリィアは苦笑した。
 最後に残った一体はレイオスとアルスレーテが挟撃して動きを止め、万歳丸が仕留めた。
 なかなか当たらなかった銃での鬱憤を晴らすかのような疾風撃からの蒼麒麟は強烈のひと言だった。
 苦悶の表情を浮かべた狼が消滅するのを待って、勝ち名乗りを上げる。
 こうして、一時的に押し込まれはしたものの、一体の通過も許さずに防衛ラインを守り切ったのである。


 戦闘後、労いに来たゲオルグの前で、アルスレーテはお腹を両手で押さえるポーズをしながら草原に座り込んだ。

「無事に片付いたし、お腹空いたから帰って何か食べたいわねー」
「ダイエットはいいの?」

 尋ねたマリィアに、アルスレーテは肩を竦めてみせる。

「飢え死にしちゃ、意味がないもの」

 まったくだと同意するのはシオンだ。

「使った体力を補充するためにも、是非とも肉が食べたいところだな」

 肉という単語を聞き、思い出したようにハナが泣きそうな顔をする。

「手~羽~先~! 食べ損ねたーっ!」

 一連のやりとりを聞いていたゲオルグが豪快に笑う。

「手羽先というのがどういうのかは知らぬが、肉ならば私がご馳走しよう。好きに食べて飲んでくれ」

 ゲオルグの提案に喜びを露わにしたのは、ハンターだけではなかった。疲れていた兵士たちも立ち上がり、笑みを浮かべて帰路につく。
 足音が遠ざかる草原を風が撫でる。いつもと変わらない一日となったのを、喜ぶかのように。

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重体一覧

参加者一覧

  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカー(ka1990
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • 春霞桜花
    ミィリア(ka2689
    ドワーフ|12才|女性|闘狩人
  • 祓魔執行
    央崎 枢(ka5153
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 飢力
    不動 シオン(ka5395
    人間(蒼)|27才|女性|闘狩人
  • パティの相棒
    万歳丸(ka5665
    鬼|17才|男性|格闘士
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • お約束のツナサンド
    アルスレーテ・フュラー(ka6148
    エルフ|27才|女性|格闘士

サポート一覧

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依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/03/30 23:26:50
アイコン 防衛戦だぜ!
万歳丸(ka5665
鬼|17才|男性|格闘士(マスターアームズ)
最終発言
2016/04/01 12:27:55