ゲスト
(ka0000)
墓場に現れた死者の群れ
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/04/03 19:00
- 完成日
- 2016/04/08 21:12
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●墓場から蘇る死者達
グラズヘイム王都イルダーナ。
そこには、『エクラ教』を崇め、祭祀を執り行う教会、『聖堂教会』がある。
この聖堂教会の擁する武力が『聖堂戦士団』だ。
その聖堂戦士団所属の新米聖導士、ファリーナ・リッジウェイ。彼女はまだまだ入団して間もない新兵である。
朝から晩まであちらこちらへと駆け回る彼女。まだまだ覚えなければならないことも多く、目まぐるしい日々を過ごしている。
それでも、人の為になるのであらばとファリーナは己を奮い立たせ、日々、邁進しているのだ。
「はぁ……今日も疲れました」
それでも、一日中動き回っていれば、体力もなくなろうというもの。へとへとになりながらも、彼女は家路を急ぐ。
その途中には、墓場がある。イルダーナの民はもちろんのこと、任務中に命を落とした聖導士、あるいは、ハンターが眠りについている……のだが。
「なっ……!」
ファリーナはその光景に驚く。墓場では土が掘り起こされ、蘇った死者が起き上がってくるではないか。
マテリアルの異常のせいだろうかと考える彼女。いや、もしかしたら、暴食の手によるものか。上位の歪虚らしき姿は近辺に見当たらないが……。
「いや、ぼやぼやしていると、周辺に被害が……」
彼女は疲れている身体に鞭をうち、ロッドを構えようとする。
ただ、1人で相手をするにも、自身の能力で5体を相手にするのは厳しい。応援を呼ぶなら……、ここからならば、ハンターズソサエティの方が近いだろうか。
(ハンター……そうです。ハンターというのもいいものですね)
それまで、聖堂戦士団での任務ばかり考えていたファリーナだったが。ハンターという別の形で、人を救うことができると思い立つ。
だが、今は目の前の事態の解決が先だ。彼女はハンターの力を借りるべく、急いでハンターズソサエティへと向かっていくのだった。
グラズヘイム王都イルダーナ。
そこには、『エクラ教』を崇め、祭祀を執り行う教会、『聖堂教会』がある。
この聖堂教会の擁する武力が『聖堂戦士団』だ。
その聖堂戦士団所属の新米聖導士、ファリーナ・リッジウェイ。彼女はまだまだ入団して間もない新兵である。
朝から晩まであちらこちらへと駆け回る彼女。まだまだ覚えなければならないことも多く、目まぐるしい日々を過ごしている。
それでも、人の為になるのであらばとファリーナは己を奮い立たせ、日々、邁進しているのだ。
「はぁ……今日も疲れました」
それでも、一日中動き回っていれば、体力もなくなろうというもの。へとへとになりながらも、彼女は家路を急ぐ。
その途中には、墓場がある。イルダーナの民はもちろんのこと、任務中に命を落とした聖導士、あるいは、ハンターが眠りについている……のだが。
「なっ……!」
ファリーナはその光景に驚く。墓場では土が掘り起こされ、蘇った死者が起き上がってくるではないか。
マテリアルの異常のせいだろうかと考える彼女。いや、もしかしたら、暴食の手によるものか。上位の歪虚らしき姿は近辺に見当たらないが……。
「いや、ぼやぼやしていると、周辺に被害が……」
彼女は疲れている身体に鞭をうち、ロッドを構えようとする。
ただ、1人で相手をするにも、自身の能力で5体を相手にするのは厳しい。応援を呼ぶなら……、ここからならば、ハンターズソサエティの方が近いだろうか。
(ハンター……そうです。ハンターというのもいいものですね)
それまで、聖堂戦士団での任務ばかり考えていたファリーナだったが。ハンターという別の形で、人を救うことができると思い立つ。
だが、今は目の前の事態の解決が先だ。彼女はハンターの力を借りるべく、急いでハンターズソサエティへと向かっていくのだった。
リプレイ本文
●着の身着のまま現場へ……
王都イルダーナ。
すでに日が落ちかけ、夕闇が支配する時間帯。
墓場に歪虚……スケルトンが現れたという話を聞き、オフィスに詰めていたハンター達は取り急ぎ現場へ直行することにした。
「ゆっくり水を飲んでいたところなのに、呼ばれてしまっては行かなければならないわね」
「申し訳ありません……」
「スケルトンたちの殲滅、ね。復活までの経緯がどうであれ、ほっとくと碌な事にならないし」
ほぼ着の身着のままのルヌーン・キグリル(ka5477)に、ファリーナ・リッジウェイ (kz0182)が頭を下げる。椅子に腰掛けてまったりしていたアルスレーテ・フュラー(ka6148)も同行を決めたようだ。
「やれやれ……骨亡者か……、極楽に還すとしよう」
同じく話を聞き、取り急ぎ参加を思い立った恭牙(ka5762)。翠華(ka6165)も友人に誘われて、ついてきている。
白桜(ka6224)もまた、戦いと聞きつけて後を追う。
(楽しめればよいのう)
鬼の彼女は思わず血が騒いだのだろうが、さすがに状況が状況の為か、彼女がそれを口に出すことはなかった。
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)、ユキヤ・S・ディールス(ka0382)は馬を走らせ、いち早く現場へと到着していた。
墓場の敷地では、蘇ったスケルトン達はわらわらと動き出してうろうろと歩いている。放っておけば、市街地方面に出て行くのも時間の問題だろう。
少しでも周りに被害が及ばないように。取り急ぎ駆けつけたアルトは馬を下り、ちらほらと付近に見える一般人の誘導を始める。
ユキヤもアルトに続き、到着して墓場を直視する。不完全な姿で蘇った死者が歩くさまを嘆いた。
「死者を冒涜する行為……何がそうさせたのかは分からないですけれど、安らかな眠りを再びもたらせる様に……」
ユキヤは墓場へと立ち入る。生前の装備を纏いて蠢く死者達。その姿はなんとも痛々しい。
「……一度は亡くなった人々……戦うのは躊躇われますね……」
だが、彼らはもう歪虚と化してしまっている。ユキヤが出来ることは、ただ眠りを再び与える事だけだ。
光る弾を放ったユキヤは、スケルトンに衝撃を与えて注意を引き付ける。彼はそのまま街道と逆側、野原の方へとスケルトンを誘導しようと試みるのだった。
●墓場の外へ……
「皆さん、こちらです!」
程無くして、ファリーナに連れられた残りのハンター達も墓場へとやってきた。彼らも墓場をうろつくスケルトンの姿を目の当たりにする。
「既死者……暴食の歪虚の眷属ですか。見る限り、下位の様ですけれど……油断は出来ませんよね」
天央 観智(ka0896)は動き出した死者の姿に、あれこれと考えを巡らす。
「問題は、何故発生したのか? ですよね」
同じく、その原因が気になるユキヤだが、今は歪虚の対処が先決。
「すみません、こちらへと誘導を願えますか?」
彼が仲間へと要請を行えば、観智も一旦思考を止め、スケルトンの注意をすべく墓場へと立ち入る。
ある程度一般人がいなくなったこともあり、墓場に駆け込んだアルトもスケルトンの相手を始め、その攻撃を受け止めていた。
「歪虚との戦いで命を落とした人達か」
おそらく生前は、信じるものや守りたいものの為に命を賭けた者達だったはずだ。
だが、今はもはや、信念や守るべき者すら忘れ、手にする武器を叩きつけてこようとしてくる。
攻撃を避けて墓石が破壊されるのを懸念したアルトはそれを受け止めつつ、スケルトンを外に誘導することにする。
「……死んでからも起きてくるなんて、頑張りやさんだことで。私には真似できないし、したくもないわ」
墓場で蠢くスケルトンの姿に、アルスレーテは呆れすら覚えてしまうが。
(『うるさい! せっかく寝てるのに起こすな!』……ってなノリで、スケルトンが増えても嫌だし……)
アルスレーテもまた、墓場での戦闘を是とはせず、向こう側の野原におびき寄せようとする仲間に合わせ、フリーになっている相手を軽く刀で小突いて気を引こうとする。
褐色肌が目を引くルヌーンはそのままスケルトンを倒そうと構えを取るが、仲間達の呼びかけを聞いて動きを止める。
「他の墓? ……そうね、野原に誘導しましょう。もし壊してしまったら、後で丁重に直さなければね」
ルヌーンは仲間に応じ、墓場外への誘導に動き始めていたようだ。
正直、ほとんど打ち合わせも準備も出来ぬ状況ではあったのだが、墓場で戦おうと言い出す者が皆無だったこともあり、大勢としてハンターの戦略はよい方向へと働く。
「さあ、かかってくるのじゃ!」
白桜もそれに協力をすべく敵へと挑発する。残るメンバーもまた、敵の気を引き付けつつ、外へ、外へとスケルトンを誘導していく。
その間に、ハンター達は出来る限り声を掛け合い、その後の作戦について確認し合う。
「分かりました。皆さん、お願いします!」
ファリーナも応じて改めて願う。これがハンターなのだと考えながら。
数十秒後には、ハンター達はうまくスケルトンを野原へとおびき出すことができていた。ここまでくれば、墓を荒らすこともないだろう。
観智は誘導の間も、スケルトンが出現した原因をあれこれと考えてしまっていて。
(負のマテリアルが流れて来た? 溜まった? 発生している? それとも、暴食の歪虚が絡んでいるのでしょうか?)
それがどうしても気になるが、油断は怪我の元ともなる。彼は携えた魔法剣『レヴァリー』を使い、術を発動させていく。
「ようよう亡者狩りなど出来ぬからな……。早々供養としてやろう……」
「そうですね……」
恭牙と共に、翠華もスケルトンの殲滅に切り替えて攻撃に打って出る。
「死体なんだから、ファイアアローで燃やして火葬よ!」
それまで仲間に合わせていたルヌーンも、豪奢な十字架を取り付けたクロススタッフを振り上げ、ようやく攻撃ができると術を発動させていくのだった。
●生ける屍となった戦士達
スケルトンと成り果てた元ハンター、あるいは聖導士達。彼らは片手斧で寸断を狙い、あるいは力任せにメイスを叩きつけてくる。
それらを抑えていたアルト、ユキヤ。誘導を続けていた彼らもまた、死者が野原までやってきたところで攻勢に打って出る。ユキヤがレクイエムを歌う間に、仲間達は敵を観察し、倒すべき敵を示し合わせていた。
「まずは、こちらからね」
アルスレーテは、2人が狙う回復手、聖導士の死骸と思われる個体から狙う。突構えを取った彼女は接敵し、開いた鉄扇『北斗』でフェイントを繰り出す。ややスケルトンの体勢が崩れたことを見逃さず、彼女はすかさずパチンと鉄扇を閉じ、抉るようにしてその扇を突き出した。
その後ろでは、観智が立ち回るが、ファリーナのように戦闘経験の浅いメンバーを気がけつつ、魔法剣から発動させた冷気を蘇った躯数体を包み込む。
吹き荒れる嵐は、強制的に蘇らせられたスケルトンを凍てつかせる。だが、それも滞りなく心安らかに永眠できるようにと放たれたものだ。
もちろん、仲間に合わせ、各個撃破できるようにと観智は狙いを仲間に合わせる。
ルヌーンも、言葉通りに聖導士の鎧を纏った骸骨を狙う。
「とりあえず、ヒールを使いそうな聖導士は倒さないとね」
淡白な態度でスタッフを振るい、その先から炎の矢を撃ち出す彼女。
(…………っ)
ただ、炎の衝撃を受けて状態を揺らがせるスケルトン……いや、躯と成り果てた聖導士が2度死ぬことになることを、ルヌーンは内心痛ましく感じ、心苦しさを覚えている。
「……已むを得ませんね」
以前はどうあれ、今この時は人に害なす雑魔でしかない。翠華は仲間を援護すべく、狙いを定めて矢を撃ち出す。
一方で、敢えて斧を携えた闇狩人のスケルトンと直面していたのは、恭牙だ。
相手はその見た目、そして、行使するスキルから見ても聖導士を狙うのが定石ではあるのだろうが、彼は斧を持つ闇狩人と戦ってみたいと感じていたのだ。
「愚かに戻りし亡者よ、今生から消えよ」
恭牙は久しく使っていなかった獲物、薙刀『静』を抜き、相手の斧と刃を交わす。
そして、敵のリーチを気にしつつ、獲物となる斧を落とそうと恭牙は試みる。相手は同じハンター。だからこそ、手を抜くのは失礼に当たると、彼は全力で薙刀を振り下ろすのである。
メイスを握り締めるファリーナもまた、力を高めてスケルトンへと殴りかかる。とはいえ、まだまだ経験の浅い彼女の打撃は、決定打を与えるには至らない。
援護するように白桜が刀を走らせ、スケルトンの腕を砕く。相手は彼女へとメイスを振り下ろして叩きつけていたが、その横からアルトが迫る。
(自らが雑魔……歪虚となって、人に危害を加えると言うのは本望ではないだろう)
アルトは思う。生ある時、彼らもまた人を救うべく戦っていたはずなのだから。
「一般人に危害を加える前に、私が再び眠らせてやろう」
戦場を駆け抜ける彼女は、すれ違いざまにスケルトンを切り裂いた。そいつはついに果て、地面へと亡骸を転がしていく。
その隣では、ユキヤが再び光の弾を発生させ、別のスケルトンへとぶつける。衝撃を受けたその躯もまた、身体を維持できなくなって崩れ落ちたのだった。
●今度こそ安らかな眠りを
残るスケルトンは、闘狩人だった者達。
しかしながら、全く統制が取れていないスケルトン達は、ただ生あるハンターへと渾身の一撃を叩きつけてくる。
早くから駆けつけていた2人はやや傷ついてはいたものの、ユキヤは適宜回復に当たっていたし、アルトも熟達した技で相手を攻め立てる。
そして、しばし、闘狩人達を抑えていた恭牙。
「我が身を昂らせろ、血を滾らせろ!」
戦いを楽しむ彼だが、無謀であったかもしれない。猛然と1人でスケルトンへと拳を叩きつけていたのだから。観智が取り巻く風で包んでくれていなければ、そして、ファリーナがヒールで援護をしていなければ、危なかったかもしれない。
その間に白桜が知人の恭牙を守るようにスケルトンの相手を行い、凶刃を受け止め、反撃とばかりに刃を突き入れる。合わせたルヌーンが炎の矢を浴びせ、敵を牽制していた。
仲間達が攻撃を行う間に、恭牙は武器を取り替える。着けていた鬼爪篭手とレガース「エダークス」。それらを使って打撃を浴びせた彼は、敵が怯んだ隙を見計らい、最短距離で真っ直ぐ渾身の一撃を叩き込む。それはまさに修羅のごとき一打だ。
「……眠れ」
篭手での殴打を浴びたスケルトン。その箇所から徐々にヒビが全身へと行き渡り、ついにはガラガラと崩れ始める。それが起き上がることはもうなかった。
何も気遣う必要のない野原が戦場であれば、思いっきり走り抜けてスケルトンに斬撃を与えることが出来る。
(あまり時間をかけて、何かしらの二次災害が起きても面倒だしな)
アルトはスケルトンを狙うべく戦場を駆け回り、敵を切り裂いていく。
ぐらりとスケルトンの身体が揺らいだ隙に、アルスレーテは悠然と舞い踊りながら敵へと接近する。
(この為に、動きやすいシャツを着ていたわけではないけれど)
別段、意識して服装を選んだわけではない。ただ、折角だからと、アルスレーテは少しだけ格好つけて野原で舞い踊る。
「悪いわね。……これで」
またも鉄扇を叩きつけ、さらに鋭く突き出すと、その連撃が敵の肋骨を砕く。同時に全身の関節を歪ませたスケルトンは、再び地面へと戻っていった。
残るスケルトンは1体。完全にハンター達のペースだ。
翠華は仲間の為にと矢を打ち放ち、敵の動きを抑える。それまでも、予期せぬトラブルがないかと戦場全体に視線を走らせていたが、問題はなさそうだ。これは、熟練ハンターが力押しでスケルトンを圧倒していた事が大きい。
「すごい……」
ファリーナはそのハンター達の姿に、思わず見とれてしまう。
観智は仲間の動きを読み取り、再度氷の嵐を巻き起こす。身体を凍らせて行動阻害を起こした敵へ、ユキヤが迫る。
「どうか、安らかな眠りを……」
スケルトンに近づいたユキヤは、聖剣『カリスデオス』を袈裟懸けに振るう。
それが最後の一撃となって。ハンターだったその死体は動かぬ躯へと戻ったのだった。
●鎮魂の祈りを
戦いが終わる頃には日も沈み、夜空には星が瞬き始めていた。
翠華は弓の手入れをしながらも、周囲の警戒に当たる。この1件に関して、何らの働きかけを行った誰かの来訪、あるいは、さらなるスケルトンの出現を警戒していたのだ。それも杞憂で済んだようである。
アルトを中心として、ハンター達はスケルトンとして蘇らされた死骸を再び墓へと埋葬する。雑魔になった死体は基本残らないが、こうして残っていたのは、不浄に晒された時が短かったことが幸いしたのかもしれない。
かつて、命を賭けて戦った先達に、せめてもの弔いを。ルヌーンもなんだかんだと言葉を漏らしていたが、一緒になって丁重に葬っていた。
「……安らかに眠れ、恨むなら恨めばいい、私は修羅である」
再び土へと還った者達の安寧を、恭牙は祈り願う。
ユキヤは墓地近辺を観智と共に調査する。何か、死者を呼び覚ました原因があるかと考えたのだ。
とはいえ、召喚の跡らしきものは確認できなかった。現状では、マテリアル異常の線が濃厚ではないかと彼らは推論を立てるに留めたようだ。ユキヤは一度、情報だけを持ち帰ることにする。
「墓全体をもう一度、清めたほうがいいかもしれないな」
アルトはふと、そばにいたファリーナが聖堂戦士団に所属していることを思い出す。
「ファリーナさん、そういった手続きや手配ができたりしないだろうか?」
「そうですね……。上に掛け合って見ます」
さすがに王都での事件。次はないようにと聖堂教会も動いてくれることだろう。
「……疲れたな、何か甘いもんでも喰いたいものだ」
恭牙は小言を漏らす。突発的な事件だったこともある。疲れてしまうのも無理はないだろう。白桜がお茶でも飲もうかと提案し、それに賛同した者が近場の喫茶店へと移動していくのだった。
後日、その墓場には、聖堂教会によって清めの儀式が執り行われる。同時に、眠りから覚まされた者達に対する慰霊の儀も行われた。それにより、この墓場でスケルトンが復活することはなくなったという。
王都イルダーナ。
すでに日が落ちかけ、夕闇が支配する時間帯。
墓場に歪虚……スケルトンが現れたという話を聞き、オフィスに詰めていたハンター達は取り急ぎ現場へ直行することにした。
「ゆっくり水を飲んでいたところなのに、呼ばれてしまっては行かなければならないわね」
「申し訳ありません……」
「スケルトンたちの殲滅、ね。復活までの経緯がどうであれ、ほっとくと碌な事にならないし」
ほぼ着の身着のままのルヌーン・キグリル(ka5477)に、ファリーナ・リッジウェイ (kz0182)が頭を下げる。椅子に腰掛けてまったりしていたアルスレーテ・フュラー(ka6148)も同行を決めたようだ。
「やれやれ……骨亡者か……、極楽に還すとしよう」
同じく話を聞き、取り急ぎ参加を思い立った恭牙(ka5762)。翠華(ka6165)も友人に誘われて、ついてきている。
白桜(ka6224)もまた、戦いと聞きつけて後を追う。
(楽しめればよいのう)
鬼の彼女は思わず血が騒いだのだろうが、さすがに状況が状況の為か、彼女がそれを口に出すことはなかった。
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)、ユキヤ・S・ディールス(ka0382)は馬を走らせ、いち早く現場へと到着していた。
墓場の敷地では、蘇ったスケルトン達はわらわらと動き出してうろうろと歩いている。放っておけば、市街地方面に出て行くのも時間の問題だろう。
少しでも周りに被害が及ばないように。取り急ぎ駆けつけたアルトは馬を下り、ちらほらと付近に見える一般人の誘導を始める。
ユキヤもアルトに続き、到着して墓場を直視する。不完全な姿で蘇った死者が歩くさまを嘆いた。
「死者を冒涜する行為……何がそうさせたのかは分からないですけれど、安らかな眠りを再びもたらせる様に……」
ユキヤは墓場へと立ち入る。生前の装備を纏いて蠢く死者達。その姿はなんとも痛々しい。
「……一度は亡くなった人々……戦うのは躊躇われますね……」
だが、彼らはもう歪虚と化してしまっている。ユキヤが出来ることは、ただ眠りを再び与える事だけだ。
光る弾を放ったユキヤは、スケルトンに衝撃を与えて注意を引き付ける。彼はそのまま街道と逆側、野原の方へとスケルトンを誘導しようと試みるのだった。
●墓場の外へ……
「皆さん、こちらです!」
程無くして、ファリーナに連れられた残りのハンター達も墓場へとやってきた。彼らも墓場をうろつくスケルトンの姿を目の当たりにする。
「既死者……暴食の歪虚の眷属ですか。見る限り、下位の様ですけれど……油断は出来ませんよね」
天央 観智(ka0896)は動き出した死者の姿に、あれこれと考えを巡らす。
「問題は、何故発生したのか? ですよね」
同じく、その原因が気になるユキヤだが、今は歪虚の対処が先決。
「すみません、こちらへと誘導を願えますか?」
彼が仲間へと要請を行えば、観智も一旦思考を止め、スケルトンの注意をすべく墓場へと立ち入る。
ある程度一般人がいなくなったこともあり、墓場に駆け込んだアルトもスケルトンの相手を始め、その攻撃を受け止めていた。
「歪虚との戦いで命を落とした人達か」
おそらく生前は、信じるものや守りたいものの為に命を賭けた者達だったはずだ。
だが、今はもはや、信念や守るべき者すら忘れ、手にする武器を叩きつけてこようとしてくる。
攻撃を避けて墓石が破壊されるのを懸念したアルトはそれを受け止めつつ、スケルトンを外に誘導することにする。
「……死んでからも起きてくるなんて、頑張りやさんだことで。私には真似できないし、したくもないわ」
墓場で蠢くスケルトンの姿に、アルスレーテは呆れすら覚えてしまうが。
(『うるさい! せっかく寝てるのに起こすな!』……ってなノリで、スケルトンが増えても嫌だし……)
アルスレーテもまた、墓場での戦闘を是とはせず、向こう側の野原におびき寄せようとする仲間に合わせ、フリーになっている相手を軽く刀で小突いて気を引こうとする。
褐色肌が目を引くルヌーンはそのままスケルトンを倒そうと構えを取るが、仲間達の呼びかけを聞いて動きを止める。
「他の墓? ……そうね、野原に誘導しましょう。もし壊してしまったら、後で丁重に直さなければね」
ルヌーンは仲間に応じ、墓場外への誘導に動き始めていたようだ。
正直、ほとんど打ち合わせも準備も出来ぬ状況ではあったのだが、墓場で戦おうと言い出す者が皆無だったこともあり、大勢としてハンターの戦略はよい方向へと働く。
「さあ、かかってくるのじゃ!」
白桜もそれに協力をすべく敵へと挑発する。残るメンバーもまた、敵の気を引き付けつつ、外へ、外へとスケルトンを誘導していく。
その間に、ハンター達は出来る限り声を掛け合い、その後の作戦について確認し合う。
「分かりました。皆さん、お願いします!」
ファリーナも応じて改めて願う。これがハンターなのだと考えながら。
数十秒後には、ハンター達はうまくスケルトンを野原へとおびき出すことができていた。ここまでくれば、墓を荒らすこともないだろう。
観智は誘導の間も、スケルトンが出現した原因をあれこれと考えてしまっていて。
(負のマテリアルが流れて来た? 溜まった? 発生している? それとも、暴食の歪虚が絡んでいるのでしょうか?)
それがどうしても気になるが、油断は怪我の元ともなる。彼は携えた魔法剣『レヴァリー』を使い、術を発動させていく。
「ようよう亡者狩りなど出来ぬからな……。早々供養としてやろう……」
「そうですね……」
恭牙と共に、翠華もスケルトンの殲滅に切り替えて攻撃に打って出る。
「死体なんだから、ファイアアローで燃やして火葬よ!」
それまで仲間に合わせていたルヌーンも、豪奢な十字架を取り付けたクロススタッフを振り上げ、ようやく攻撃ができると術を発動させていくのだった。
●生ける屍となった戦士達
スケルトンと成り果てた元ハンター、あるいは聖導士達。彼らは片手斧で寸断を狙い、あるいは力任せにメイスを叩きつけてくる。
それらを抑えていたアルト、ユキヤ。誘導を続けていた彼らもまた、死者が野原までやってきたところで攻勢に打って出る。ユキヤがレクイエムを歌う間に、仲間達は敵を観察し、倒すべき敵を示し合わせていた。
「まずは、こちらからね」
アルスレーテは、2人が狙う回復手、聖導士の死骸と思われる個体から狙う。突構えを取った彼女は接敵し、開いた鉄扇『北斗』でフェイントを繰り出す。ややスケルトンの体勢が崩れたことを見逃さず、彼女はすかさずパチンと鉄扇を閉じ、抉るようにしてその扇を突き出した。
その後ろでは、観智が立ち回るが、ファリーナのように戦闘経験の浅いメンバーを気がけつつ、魔法剣から発動させた冷気を蘇った躯数体を包み込む。
吹き荒れる嵐は、強制的に蘇らせられたスケルトンを凍てつかせる。だが、それも滞りなく心安らかに永眠できるようにと放たれたものだ。
もちろん、仲間に合わせ、各個撃破できるようにと観智は狙いを仲間に合わせる。
ルヌーンも、言葉通りに聖導士の鎧を纏った骸骨を狙う。
「とりあえず、ヒールを使いそうな聖導士は倒さないとね」
淡白な態度でスタッフを振るい、その先から炎の矢を撃ち出す彼女。
(…………っ)
ただ、炎の衝撃を受けて状態を揺らがせるスケルトン……いや、躯と成り果てた聖導士が2度死ぬことになることを、ルヌーンは内心痛ましく感じ、心苦しさを覚えている。
「……已むを得ませんね」
以前はどうあれ、今この時は人に害なす雑魔でしかない。翠華は仲間を援護すべく、狙いを定めて矢を撃ち出す。
一方で、敢えて斧を携えた闇狩人のスケルトンと直面していたのは、恭牙だ。
相手はその見た目、そして、行使するスキルから見ても聖導士を狙うのが定石ではあるのだろうが、彼は斧を持つ闇狩人と戦ってみたいと感じていたのだ。
「愚かに戻りし亡者よ、今生から消えよ」
恭牙は久しく使っていなかった獲物、薙刀『静』を抜き、相手の斧と刃を交わす。
そして、敵のリーチを気にしつつ、獲物となる斧を落とそうと恭牙は試みる。相手は同じハンター。だからこそ、手を抜くのは失礼に当たると、彼は全力で薙刀を振り下ろすのである。
メイスを握り締めるファリーナもまた、力を高めてスケルトンへと殴りかかる。とはいえ、まだまだ経験の浅い彼女の打撃は、決定打を与えるには至らない。
援護するように白桜が刀を走らせ、スケルトンの腕を砕く。相手は彼女へとメイスを振り下ろして叩きつけていたが、その横からアルトが迫る。
(自らが雑魔……歪虚となって、人に危害を加えると言うのは本望ではないだろう)
アルトは思う。生ある時、彼らもまた人を救うべく戦っていたはずなのだから。
「一般人に危害を加える前に、私が再び眠らせてやろう」
戦場を駆け抜ける彼女は、すれ違いざまにスケルトンを切り裂いた。そいつはついに果て、地面へと亡骸を転がしていく。
その隣では、ユキヤが再び光の弾を発生させ、別のスケルトンへとぶつける。衝撃を受けたその躯もまた、身体を維持できなくなって崩れ落ちたのだった。
●今度こそ安らかな眠りを
残るスケルトンは、闘狩人だった者達。
しかしながら、全く統制が取れていないスケルトン達は、ただ生あるハンターへと渾身の一撃を叩きつけてくる。
早くから駆けつけていた2人はやや傷ついてはいたものの、ユキヤは適宜回復に当たっていたし、アルトも熟達した技で相手を攻め立てる。
そして、しばし、闘狩人達を抑えていた恭牙。
「我が身を昂らせろ、血を滾らせろ!」
戦いを楽しむ彼だが、無謀であったかもしれない。猛然と1人でスケルトンへと拳を叩きつけていたのだから。観智が取り巻く風で包んでくれていなければ、そして、ファリーナがヒールで援護をしていなければ、危なかったかもしれない。
その間に白桜が知人の恭牙を守るようにスケルトンの相手を行い、凶刃を受け止め、反撃とばかりに刃を突き入れる。合わせたルヌーンが炎の矢を浴びせ、敵を牽制していた。
仲間達が攻撃を行う間に、恭牙は武器を取り替える。着けていた鬼爪篭手とレガース「エダークス」。それらを使って打撃を浴びせた彼は、敵が怯んだ隙を見計らい、最短距離で真っ直ぐ渾身の一撃を叩き込む。それはまさに修羅のごとき一打だ。
「……眠れ」
篭手での殴打を浴びたスケルトン。その箇所から徐々にヒビが全身へと行き渡り、ついにはガラガラと崩れ始める。それが起き上がることはもうなかった。
何も気遣う必要のない野原が戦場であれば、思いっきり走り抜けてスケルトンに斬撃を与えることが出来る。
(あまり時間をかけて、何かしらの二次災害が起きても面倒だしな)
アルトはスケルトンを狙うべく戦場を駆け回り、敵を切り裂いていく。
ぐらりとスケルトンの身体が揺らいだ隙に、アルスレーテは悠然と舞い踊りながら敵へと接近する。
(この為に、動きやすいシャツを着ていたわけではないけれど)
別段、意識して服装を選んだわけではない。ただ、折角だからと、アルスレーテは少しだけ格好つけて野原で舞い踊る。
「悪いわね。……これで」
またも鉄扇を叩きつけ、さらに鋭く突き出すと、その連撃が敵の肋骨を砕く。同時に全身の関節を歪ませたスケルトンは、再び地面へと戻っていった。
残るスケルトンは1体。完全にハンター達のペースだ。
翠華は仲間の為にと矢を打ち放ち、敵の動きを抑える。それまでも、予期せぬトラブルがないかと戦場全体に視線を走らせていたが、問題はなさそうだ。これは、熟練ハンターが力押しでスケルトンを圧倒していた事が大きい。
「すごい……」
ファリーナはそのハンター達の姿に、思わず見とれてしまう。
観智は仲間の動きを読み取り、再度氷の嵐を巻き起こす。身体を凍らせて行動阻害を起こした敵へ、ユキヤが迫る。
「どうか、安らかな眠りを……」
スケルトンに近づいたユキヤは、聖剣『カリスデオス』を袈裟懸けに振るう。
それが最後の一撃となって。ハンターだったその死体は動かぬ躯へと戻ったのだった。
●鎮魂の祈りを
戦いが終わる頃には日も沈み、夜空には星が瞬き始めていた。
翠華は弓の手入れをしながらも、周囲の警戒に当たる。この1件に関して、何らの働きかけを行った誰かの来訪、あるいは、さらなるスケルトンの出現を警戒していたのだ。それも杞憂で済んだようである。
アルトを中心として、ハンター達はスケルトンとして蘇らされた死骸を再び墓へと埋葬する。雑魔になった死体は基本残らないが、こうして残っていたのは、不浄に晒された時が短かったことが幸いしたのかもしれない。
かつて、命を賭けて戦った先達に、せめてもの弔いを。ルヌーンもなんだかんだと言葉を漏らしていたが、一緒になって丁重に葬っていた。
「……安らかに眠れ、恨むなら恨めばいい、私は修羅である」
再び土へと還った者達の安寧を、恭牙は祈り願う。
ユキヤは墓地近辺を観智と共に調査する。何か、死者を呼び覚ました原因があるかと考えたのだ。
とはいえ、召喚の跡らしきものは確認できなかった。現状では、マテリアル異常の線が濃厚ではないかと彼らは推論を立てるに留めたようだ。ユキヤは一度、情報だけを持ち帰ることにする。
「墓全体をもう一度、清めたほうがいいかもしれないな」
アルトはふと、そばにいたファリーナが聖堂戦士団に所属していることを思い出す。
「ファリーナさん、そういった手続きや手配ができたりしないだろうか?」
「そうですね……。上に掛け合って見ます」
さすがに王都での事件。次はないようにと聖堂教会も動いてくれることだろう。
「……疲れたな、何か甘いもんでも喰いたいものだ」
恭牙は小言を漏らす。突発的な事件だったこともある。疲れてしまうのも無理はないだろう。白桜がお茶でも飲もうかと提案し、それに賛同した者が近場の喫茶店へと移動していくのだった。
後日、その墓場には、聖堂教会によって清めの儀式が執り行われる。同時に、眠りから覚まされた者達に対する慰霊の儀も行われた。それにより、この墓場でスケルトンが復活することはなくなったという。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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相談所 天央 観智(ka0896) 人間(リアルブルー)|25才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2016/04/03 17:52:52 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/04/03 00:05:32 |