ゲスト
(ka0000)
運送業:港湾
マスター:水

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 7日
- 締切
- 2016/04/16 22:00
- 完成日
- 2016/04/22 02:44
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●後ろめたい人たちの結託
雑魔を恐れ、誰もが自宅へと閉じこもり、恐怖を抱えながらベッドへと潜り込む深夜。上手い事港湾の使用権を確保できた商人たちは、これから到着する商品を心待ちにしながらポーカーを嗜んでいた。
「スリーカード」
「ドロップ」
「へっ、やった! フルハウスだ」
三人の商人たちの内、その場で最も強い役を上がった商人は上機嫌に場へ出されたチップを回収し、ドロップを宣言した商人がディーラを引き継ぎつつゲームを続行しようとする。
その時、ドアがノックされる音が彼らの耳に入った。
「景気が一番良いお前が行け」
「わかったよ。俺は今機嫌がいいんだ」
上機嫌な商人は自分の運に絶対の自信があるのか、席を立ちノックされたドアに近づく。
だがそこはベテランの商人、どちら、と一言かけて向こうの反応を伺う。
ドアの向こうからは宝石職人だと返ってきた。実はこれが彼らの合言葉であり、仲間である事を証明するものであった。男はそれでも警戒心を解く事無く自衛としてナイフを持ったままゆっくりとドアを開けた。
入ってきたのはとても職人とは思えない風貌の男性。どちらかというと職業泥棒という言葉がぴったりな彼はこれから運ばれる大量の盗まれた宝石や違法に作られた薬品を船に乗せて出港させる為の橋渡し役として派遣された強盗団のパシリだった。
「もう来るのか?」
「ええ、あなた方が準備を終える事には積み込みもスムーズに始められるでしょう」
男はにやにやと笑いながら商人たちを外へと連れ出す。人間、莫大な利益がいとも簡単に手に入ると解るとついつい気持ち悪い笑みを浮かべてしまうものだが、盗品や薬品をたんまり積んだ馬車三台を見るころには、その笑みはとっくに消え失せ、いつもの仕事をするための仏頂面へと戻っていた。
●とびきりの瞬間
商船の前で止まった馬車三台に乗っていた男達と小屋から出てきた三人の商人が話し合っている頃、その様子を別の場所から伺っている軍人男性が居た。
軍人男性は数日前に発生した宝石店強盗事件で、強盗団の確保を試みるも、同盟軍だけで無くハンター本部に登録しているハンター達の力を借りなければ太刀打ちできないと判断し、改まって依頼に集まったハンター達を付近の倉庫へ集め、状況を彼らに伝えた。
軍人男性は真正面からでは返り討ちに遭ってしまうと判断、敢て泳がせて一番襲撃しやすい積み込みの最中を狙う作戦へと打って出たのだ。
「よし、予定通り取引が始まったぞ、船員は我々同盟軍が確保する。武装した連中が歯向かってくるようならお前たちで片付けろ。制圧が済んだら盗品や違法薬品の詰まった馬車を頂こう」
隠れているハンター達に情報を伝え、更に彼は偵察を続ける。荷台の錠が外れ、中から盗まれた宝石類や違法に製造された薬品が持ち込まれ、船に積まれようとしていた。
これらを積み込めば莫大な利益になる。しかも邪魔だてする奴は誰一人いない、そう油断している所を狙い、ハンター達は隠れていた倉庫から飛び出し、自慢の得物を強盗達へと向けていく。
雑魔を恐れ、誰もが自宅へと閉じこもり、恐怖を抱えながらベッドへと潜り込む深夜。上手い事港湾の使用権を確保できた商人たちは、これから到着する商品を心待ちにしながらポーカーを嗜んでいた。
「スリーカード」
「ドロップ」
「へっ、やった! フルハウスだ」
三人の商人たちの内、その場で最も強い役を上がった商人は上機嫌に場へ出されたチップを回収し、ドロップを宣言した商人がディーラを引き継ぎつつゲームを続行しようとする。
その時、ドアがノックされる音が彼らの耳に入った。
「景気が一番良いお前が行け」
「わかったよ。俺は今機嫌がいいんだ」
上機嫌な商人は自分の運に絶対の自信があるのか、席を立ちノックされたドアに近づく。
だがそこはベテランの商人、どちら、と一言かけて向こうの反応を伺う。
ドアの向こうからは宝石職人だと返ってきた。実はこれが彼らの合言葉であり、仲間である事を証明するものであった。男はそれでも警戒心を解く事無く自衛としてナイフを持ったままゆっくりとドアを開けた。
入ってきたのはとても職人とは思えない風貌の男性。どちらかというと職業泥棒という言葉がぴったりな彼はこれから運ばれる大量の盗まれた宝石や違法に作られた薬品を船に乗せて出港させる為の橋渡し役として派遣された強盗団のパシリだった。
「もう来るのか?」
「ええ、あなた方が準備を終える事には積み込みもスムーズに始められるでしょう」
男はにやにやと笑いながら商人たちを外へと連れ出す。人間、莫大な利益がいとも簡単に手に入ると解るとついつい気持ち悪い笑みを浮かべてしまうものだが、盗品や薬品をたんまり積んだ馬車三台を見るころには、その笑みはとっくに消え失せ、いつもの仕事をするための仏頂面へと戻っていた。
●とびきりの瞬間
商船の前で止まった馬車三台に乗っていた男達と小屋から出てきた三人の商人が話し合っている頃、その様子を別の場所から伺っている軍人男性が居た。
軍人男性は数日前に発生した宝石店強盗事件で、強盗団の確保を試みるも、同盟軍だけで無くハンター本部に登録しているハンター達の力を借りなければ太刀打ちできないと判断し、改まって依頼に集まったハンター達を付近の倉庫へ集め、状況を彼らに伝えた。
軍人男性は真正面からでは返り討ちに遭ってしまうと判断、敢て泳がせて一番襲撃しやすい積み込みの最中を狙う作戦へと打って出たのだ。
「よし、予定通り取引が始まったぞ、船員は我々同盟軍が確保する。武装した連中が歯向かってくるようならお前たちで片付けろ。制圧が済んだら盗品や違法薬品の詰まった馬車を頂こう」
隠れているハンター達に情報を伝え、更に彼は偵察を続ける。荷台の錠が外れ、中から盗まれた宝石類や違法に製造された薬品が持ち込まれ、船に積まれようとしていた。
これらを積み込めば莫大な利益になる。しかも邪魔だてする奴は誰一人いない、そう油断している所を狙い、ハンター達は隠れていた倉庫から飛び出し、自慢の得物を強盗達へと向けていく。
リプレイ本文
●先制攻撃
深夜、波の音が鮮明に聞こえる中、マリィア・バルデス(ka5848)が放ったフォールシュートが降り注ぐ中、命令に忠実な犬のαと柴犬のγが盗品の運搬を行っていた強盗達の脹脛へ食らいつき、その痛みで荷物を落とす。
更にリオン(ka1757)がランアウトで強盗達を攪乱するかの如く接近し、さらに気を引く為にリオンの最も身近に居た一人に対して飛燕による集中攻撃を開始する。
「ウェイッス、バッボゥイのみなすァ~ん! その馬車には何積んでンのかなァ? え、何? 言えない? ツレないコト言わないで教えてチョ。あ、教える気ない? じゃあ良いやむしろ? 逆に? すんなり教えてくれたら拍子抜けしちゃう的な、ギャハハ!」
挨拶とばかりにリオンは早口で挑発するように強盗達へ声を掛ける。たった一人で突っ込み命知らずな行為をしているようにも映るが、その強気な行動を裏付けるように近づく複数の足音に強盗達は気が付いた。
しかし咄嗟の事に、周囲が暗闇である事も手伝って理解するのに時間がかかったが、状況を理解した瞬間、強盗達は各々剣を抜き、同盟軍を退けた実力を誇示する。
「散開しろ! 確実な一撃をお見舞いしてやれ! 俺達に挑んだ事を後悔させてやる!」
強盗の一人は他の仲間に指示を出すと、自身もマテリアルを込め、攻めの構えを見せて備える。
「商人の手先になるのは同盟じゃ珍しくねーが、堅気の商売人に強盗たあ穏やかじゃねーや」
その時、指示を下した男の元へランタンの光が近づいてくる。やがて暗い中でも顔が確認できるようになると、強盗はより気を引き締め声の主であるジャック・エルギン(ka1522)と対峙する。
「アンタが部下へ指示を出すリーダーか? そうでなくてもきっちり、カタに嵌めさせてもらうぜ」
「ならそのセリフ、そのまま返してやるよ!」
ジャックの姿を捉えた強盗の一人は、守りを捨てた攻めの構えから振りかぶり剣を振り下ろす。
その一撃を、ジャックは大太刀で弾き、剣戟へと持ち込む。
他の仲間も奮戦する中、ジャックは相手が完全に剣戟でしか戦わないと思い込みだしたと判断すると、一歩踏み込み至近距離から苦無を投擲する。
「しまったっ!」
咄嗟に強盗は体をよじるも、放たれた苦無は右肩に食い込み、その痛みから持っていた剣を落としてしまう。
「くそっ」
「真正面からぶつかり合うのは自信あるみたいだが、駆け引きはイマイチだったようだな!」
ペースを乱された強盗は何としてもペースを取り返そうと地面に落ちた剣を取ろうとした時だった。
「死にたくなきゃ死ぬ気で受けやがれ!」
瞳が赤熱した金属のような色に変色したジャックによる渾身撃が同時に放たれ、強盗に追い打ちをかけていく。
負傷した右肩をかばいながら、戦闘を試みようともがくも、その追い打ちにより強盗は地面に伏せ、そのまま動かなくなった。
動かなくなったのを確認した後、仲間への援護へと向かおうとした時、この強盗団のパシリらを連行していた同盟軍の一人に声を掛ける。
「おーい、この寝そべってる奴、連れてってくれ」
「解った、一緒に連行しておく。ありがとう」
「礼には及ばねぇよ」
ジャックはそう言って後の事を同盟軍へと任せると、再び仲間の救援を行う為に走り出した。
●所詮は強盗
ジャックがリーダー格を倒した直後、アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)が電光の如き踏鳴で敵陣を駆け抜け散華で刻む。十メートル以上も離れていたのだから構えてからでも遅くはないと考えていた強盗の一人は、その一瞬を理解するよりも先に自分の足がどこかへ飛んで行ってしまった事へ意識が向かってしまう。
足が無い事に悲鳴を上げながら、今度は身を守る為に周囲の状況を確認し、腰まで伸びた赤髪のアルトの姿を肉眼で捉える。
片足が無い以上、転がって避ける事で精いっぱいだが、せめて次に狙ってくるであろう腕を差し出してでも相打ちに持ち込んでやろうと強盗は企んでいた。
「へへっ、来いよ! 俺は満身創痍だぞ! トドメを刺せ! 何も怖くはねぇ! 腕だって足だって、やろうと思えば繋がるんだ!」
「そうだな、人間は手足が無くとも最悪生きてはいける。人はそう簡単には死なん、どこまで耐えれる?」
半笑いの強盗が誘うように騒ぐが、アルトはこれを冷静に受け止め、トドメを刺す為に走り出した。
「寝そべってても俺の振るう剣は首ぐらい簡単に落とせるぜ!」
そう振るわれた、刺し違いを狙った衝撃波だったが、アルトはこれを瞬影で受け流し、そのままの勢いで再び散華を放つ。
すると今度は剣を持っていた腕が吹き飛び、その剣が地面に突き刺さる。
アルトは周囲に警告を与えるつもりで攻撃し、その腕と足を片方ずつ落とした。だが、それを見て怯まず、むしろその光景を見て油を注がれた火の如く強盗達は沸き立ち始めた。
仲間の仇討ちの為に、一人の強盗がアルトへ向けて渾身撃による一撃を狙おうとしたその時の事。マリィアの犬であるαが脹脛に噛みつく。
思わず上げた悲鳴で、アルトは強盗が自分に攻撃しようと接近していた事に気づくと同時に、その強盗へ藤堂 小夏(ka5489)が攻撃を加えようとしていた事に気づく。
「ねぇ玉無しの(自主規制)野郎、女の私を簡単に倒せないってどういうことなの? このヘタレの根性無し。しかもアルトの背中を狙って攻撃だなんてとんでもなく卑怯だし擁護のしようのない(自主規制)野郎だよ本当に」
犬に噛まれた上にその一言が頭に来たのか、一撃を放ち損ねた強盗は犬を振り払い改めて小夏へと向きその剣を握る。
「アルト、此処は任せて」
「助かった。恩に着る」
小夏とアルトは短くやり取りすると、アルトはその場を離れ、自分が仕留めた強盗の元へ尋問の為に戻った。
強盗はよほど頭に来ていたのか、小夏の挑発以降一言も発することなく、ただうめき声にも叫び声にも似たような声を発しながら彼女へ向けて攻撃を放つ準備を始める。
彼女も又攻めの構えを取り、いつでも迎撃できるように準備する。互いに見合い、一撃でも当てれば致命傷になるような状況、先に動き出したのは強盗の方だった。
「うがぁぁぁつ!」
再び振り上げられた剣、怒りに我を忘れた渾身撃が小夏を襲うが、そのどれもこれもが出鱈目に振られ、小夏はそれをすいすいと避ける。
剣を振りぬき、一瞬身動きが取れなくなった強盗の隙を攻めの構えで睨み続けていた小夏はその時を逃さなかった。強盗が再び剣を振り上げる前に、小夏は踏込み、お返しと言わんばかりの渾身撃を見舞う。
その一撃を受けた強盗はまるで糸の切れた操り人形のような崩れた倒れ方をし、そのまま白目を剥いて動かなくなる。
「ふぅ、何とかなったね」
対人戦では初陣だった彼女は、少し緊張していたのか、動かなくなった強盗を見て胸を撫で下ろすようなため息を吐いた。
●因果応報
既に三人が戦闘不能に追い込まれ、窮地に追い込まれた強盗達だったが、もう彼らの退路は塞がれているも同然だった。
逃げようとすれば、ステラ・レッドキャップ(ka5434)による威嚇射撃やマリィアの犬であるαと柴犬であるγが走り回ってるお蔭で逃げ道を封じられ、リオンを相手していた強盗が逃亡を図ろうとするも逃げる機会を逸した一人を殴り続け、顔がたんこぶで歪むさまをリオンは楽しんでいた。
「ねぇねぇ、さっきまでのおこな態度どこ行ったの? 逃げちゃうだなんてもったいないじゃないつまらないじゃない! 主にあ・た・し・が」
腹部を数発殴られ、戦意を完全に喪失したにも関わらず、彼女は更に追撃を見舞い、ついには失神させてしまった。
「あらま、もうおねんねなの。つまらないわね」
失神した強盗をつまらなそうに捨てると、リオンは改めて周囲を見回し、まだ戦っている味方が居ないか確認する。
「おーいステラちゃ~ん! まだ終わらないのかしら~ん」
まるで新しいおもちゃでも見つけた子供のような笑顔を浮かべながら、ステラを手伝うそぶりを見せつつも手を出さずにヤジを飛ばす。
「リオンの奴……まあいいや。逃げないように予防線は張ってるし、カッコ良い所見せるか!」
ステラは呆れつつリオンのヤジを聞き流し、敵を接近させるためにわざと弾幕を薄め、接近戦へと持ち込もうとする。
弾幕が薄くなり、勝機を見出したのか、強盗は口元を歪めてステラへと一歩、強く踏み込む。
その踏込と同時に一撃が放たれようとするが、これをクローズコンバットによって引かれた引き金により躊躇させ、ナイフで追撃に移る。
「このっ! ちょこまかと」
銃撃に怯んで咄嗟に攻撃をやめてしまった強盗をあざ笑うかのように、ナイフが剣を握っていた手の手首を切り裂く。
「ちいとばかし脈を外したか!」
しかし、入りが浅かったのか、派手な出血は無く、脈を裂けていないと、再びステラはナイフを構え、強盗に向かう。
強盗の方も、軍を退けたというプライドがあるのか、あるいは逃げられないと悟っているのか、無謀にもステラへ向けて再び剣を向ける。
「本当はもうちょっと足止めと時間稼ぎして戦いながら盗品を運ぶのかと思ってたけど……」
ステラは強盗に神経を集中させながらも、周りに逃亡を図ろうとする強盗が居ないかどうかを確認する。
しかし、残っている強盗はマリィアが相手をしている為、その必要もなくなっていた。
「これならさっさと片づけてからゆっくり運んだ方が楽そうだな」
「ごちゃごちゃうるせぇぞ!」
独り言をつぶやきながら戦おうとするステラに激昂した強盗は、再び地面を強く踏込み、渾身撃により大きく剣を振り下ろす。
来ている事がわかっている攻撃にやすやすと当たるようなステラではない。ステラはそのまま避けると、今度は首の側面へナイフを突き立て、直ぐに引き抜く。
おびただしい量の血液が宙を舞い、強盗はゆっくりと倒れるが、その鮮血がステラに触れる事は無かった。
●ケチな同盟軍
それはリオンが敵の中を攪乱し、ジャックが戦闘を行う事と並列しての出来事だった。
リオンの攪乱と並行してマリィアの魔道バイク滑り込んできた為、強盗は仲間の援護が受けられず、本気で轢き殺そうとするマリィアのバイクに意識を向けて居なければならない為、とりあえず逃げ出して仲間と合流する、というわけにはいかない状況に陥ってしまった。
これなら十分に一対一で戦えるだろう、そう考えたマリィアは強盗を轢く直前で受け身を取り、バイクから離れた。
「くそっ!」
乗り捨てられたバイクに危うく巻き込まれそうになった強盗は悪態一つ吐き、体勢を立て直してマリィアへと意識を集中させる。
「覚醒者がこの程度で死なれちゃ困るわね……きっちり殺す」
マリィアは低くつぶやくと、容赦なくダブルファイアによる掃射を行い、強盗の見せ場を作らせない勢いで圧倒する。
何発かが被弾し、自慢の剣を落としてもお構いなしにマリィアは発砲を続け、ついに強盗は何もできないまま動かなくなる。
遮蔽物に逃げる余裕を与えなければ、いくら強力な剣でも銃にはかなわないのである。
完全に動かなくなったのを確認したマリィアは、改めて周囲を見回す。
もう既に片付いたようで、後は盗品の入った馬車を頂くだけとなった。
遺体の回収を終えた同盟軍は、一斉に馬車の手綱を引き、馬をゆっくりと誘導させる。後はこの後を警護するだけなのだが……。
「どうどう……落ち着いて。ちゃんと安全な場所へ連れて行くから」
戦闘でも動じなかった馬がここに来て怯えだして動かなくなってしまった為、しばらくマリィアの手によって慰められる。
その間、地面に落とされた盗品や薬物を持ち上げたステラはすっかり頭の中で金勘定をしていた。
「これに宝石が詰まってるのか……幾らで売れるんだろうな」
「あー気持ちはすっげー分かるが、取るなよー」
ジャックもまた落ちた盗品袋を持ち上げていたのだが、彼も我慢していたようである。高価な宝石が袋いっぱいに詰まっているのだから、誰だって中身や値段が気になるだろう。
「てェか、ぶっちゃけ軍もセコいカンジよネ、少しはこっちに回してもいいのに……」
「その分が今回の報酬で上乗せされている事を願おうよ。ふぅ、初の対人戦だったし、少し疲れたね」
同じように盗品袋を運んでいたリオンの愚痴に、ため息一つ吐きながら盗品を運ぶ小夏が応える。
「それよりも、今後もこのような依頼が来るかもしれない。転がした一人から洗ったら、同業者も出始めているらしい。もしかすると、また会うかもしれないな」
「また会えるかはぁ~別としてェ、食い扶持に困らなさそうな朗報をありがとネ。アルトちゃん」
これから似たような犯罪が起こりうる事を真剣に懸念しているアルトを他所に、ハンターとしての使命感というよりは、快楽を優先するような雰囲気を出していたリオンに悟られないよう、アルトはこっそりとため息を吐いた。
やがて、盗品袋や薬物の詰まった袋がぎっしり詰まった馬車を施錠し、ゆっくりと動かす。ハンター達はその周囲を警戒しながら港湾を後にするが、軍が管理する倉庫へ到着するまでアクシデントに巻き込まれなかった事は、盗まれた宝石達にとっては不幸中の幸いだったのかもしれない。
深夜、波の音が鮮明に聞こえる中、マリィア・バルデス(ka5848)が放ったフォールシュートが降り注ぐ中、命令に忠実な犬のαと柴犬のγが盗品の運搬を行っていた強盗達の脹脛へ食らいつき、その痛みで荷物を落とす。
更にリオン(ka1757)がランアウトで強盗達を攪乱するかの如く接近し、さらに気を引く為にリオンの最も身近に居た一人に対して飛燕による集中攻撃を開始する。
「ウェイッス、バッボゥイのみなすァ~ん! その馬車には何積んでンのかなァ? え、何? 言えない? ツレないコト言わないで教えてチョ。あ、教える気ない? じゃあ良いやむしろ? 逆に? すんなり教えてくれたら拍子抜けしちゃう的な、ギャハハ!」
挨拶とばかりにリオンは早口で挑発するように強盗達へ声を掛ける。たった一人で突っ込み命知らずな行為をしているようにも映るが、その強気な行動を裏付けるように近づく複数の足音に強盗達は気が付いた。
しかし咄嗟の事に、周囲が暗闇である事も手伝って理解するのに時間がかかったが、状況を理解した瞬間、強盗達は各々剣を抜き、同盟軍を退けた実力を誇示する。
「散開しろ! 確実な一撃をお見舞いしてやれ! 俺達に挑んだ事を後悔させてやる!」
強盗の一人は他の仲間に指示を出すと、自身もマテリアルを込め、攻めの構えを見せて備える。
「商人の手先になるのは同盟じゃ珍しくねーが、堅気の商売人に強盗たあ穏やかじゃねーや」
その時、指示を下した男の元へランタンの光が近づいてくる。やがて暗い中でも顔が確認できるようになると、強盗はより気を引き締め声の主であるジャック・エルギン(ka1522)と対峙する。
「アンタが部下へ指示を出すリーダーか? そうでなくてもきっちり、カタに嵌めさせてもらうぜ」
「ならそのセリフ、そのまま返してやるよ!」
ジャックの姿を捉えた強盗の一人は、守りを捨てた攻めの構えから振りかぶり剣を振り下ろす。
その一撃を、ジャックは大太刀で弾き、剣戟へと持ち込む。
他の仲間も奮戦する中、ジャックは相手が完全に剣戟でしか戦わないと思い込みだしたと判断すると、一歩踏み込み至近距離から苦無を投擲する。
「しまったっ!」
咄嗟に強盗は体をよじるも、放たれた苦無は右肩に食い込み、その痛みから持っていた剣を落としてしまう。
「くそっ」
「真正面からぶつかり合うのは自信あるみたいだが、駆け引きはイマイチだったようだな!」
ペースを乱された強盗は何としてもペースを取り返そうと地面に落ちた剣を取ろうとした時だった。
「死にたくなきゃ死ぬ気で受けやがれ!」
瞳が赤熱した金属のような色に変色したジャックによる渾身撃が同時に放たれ、強盗に追い打ちをかけていく。
負傷した右肩をかばいながら、戦闘を試みようともがくも、その追い打ちにより強盗は地面に伏せ、そのまま動かなくなった。
動かなくなったのを確認した後、仲間への援護へと向かおうとした時、この強盗団のパシリらを連行していた同盟軍の一人に声を掛ける。
「おーい、この寝そべってる奴、連れてってくれ」
「解った、一緒に連行しておく。ありがとう」
「礼には及ばねぇよ」
ジャックはそう言って後の事を同盟軍へと任せると、再び仲間の救援を行う為に走り出した。
●所詮は強盗
ジャックがリーダー格を倒した直後、アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)が電光の如き踏鳴で敵陣を駆け抜け散華で刻む。十メートル以上も離れていたのだから構えてからでも遅くはないと考えていた強盗の一人は、その一瞬を理解するよりも先に自分の足がどこかへ飛んで行ってしまった事へ意識が向かってしまう。
足が無い事に悲鳴を上げながら、今度は身を守る為に周囲の状況を確認し、腰まで伸びた赤髪のアルトの姿を肉眼で捉える。
片足が無い以上、転がって避ける事で精いっぱいだが、せめて次に狙ってくるであろう腕を差し出してでも相打ちに持ち込んでやろうと強盗は企んでいた。
「へへっ、来いよ! 俺は満身創痍だぞ! トドメを刺せ! 何も怖くはねぇ! 腕だって足だって、やろうと思えば繋がるんだ!」
「そうだな、人間は手足が無くとも最悪生きてはいける。人はそう簡単には死なん、どこまで耐えれる?」
半笑いの強盗が誘うように騒ぐが、アルトはこれを冷静に受け止め、トドメを刺す為に走り出した。
「寝そべってても俺の振るう剣は首ぐらい簡単に落とせるぜ!」
そう振るわれた、刺し違いを狙った衝撃波だったが、アルトはこれを瞬影で受け流し、そのままの勢いで再び散華を放つ。
すると今度は剣を持っていた腕が吹き飛び、その剣が地面に突き刺さる。
アルトは周囲に警告を与えるつもりで攻撃し、その腕と足を片方ずつ落とした。だが、それを見て怯まず、むしろその光景を見て油を注がれた火の如く強盗達は沸き立ち始めた。
仲間の仇討ちの為に、一人の強盗がアルトへ向けて渾身撃による一撃を狙おうとしたその時の事。マリィアの犬であるαが脹脛に噛みつく。
思わず上げた悲鳴で、アルトは強盗が自分に攻撃しようと接近していた事に気づくと同時に、その強盗へ藤堂 小夏(ka5489)が攻撃を加えようとしていた事に気づく。
「ねぇ玉無しの(自主規制)野郎、女の私を簡単に倒せないってどういうことなの? このヘタレの根性無し。しかもアルトの背中を狙って攻撃だなんてとんでもなく卑怯だし擁護のしようのない(自主規制)野郎だよ本当に」
犬に噛まれた上にその一言が頭に来たのか、一撃を放ち損ねた強盗は犬を振り払い改めて小夏へと向きその剣を握る。
「アルト、此処は任せて」
「助かった。恩に着る」
小夏とアルトは短くやり取りすると、アルトはその場を離れ、自分が仕留めた強盗の元へ尋問の為に戻った。
強盗はよほど頭に来ていたのか、小夏の挑発以降一言も発することなく、ただうめき声にも叫び声にも似たような声を発しながら彼女へ向けて攻撃を放つ準備を始める。
彼女も又攻めの構えを取り、いつでも迎撃できるように準備する。互いに見合い、一撃でも当てれば致命傷になるような状況、先に動き出したのは強盗の方だった。
「うがぁぁぁつ!」
再び振り上げられた剣、怒りに我を忘れた渾身撃が小夏を襲うが、そのどれもこれもが出鱈目に振られ、小夏はそれをすいすいと避ける。
剣を振りぬき、一瞬身動きが取れなくなった強盗の隙を攻めの構えで睨み続けていた小夏はその時を逃さなかった。強盗が再び剣を振り上げる前に、小夏は踏込み、お返しと言わんばかりの渾身撃を見舞う。
その一撃を受けた強盗はまるで糸の切れた操り人形のような崩れた倒れ方をし、そのまま白目を剥いて動かなくなる。
「ふぅ、何とかなったね」
対人戦では初陣だった彼女は、少し緊張していたのか、動かなくなった強盗を見て胸を撫で下ろすようなため息を吐いた。
●因果応報
既に三人が戦闘不能に追い込まれ、窮地に追い込まれた強盗達だったが、もう彼らの退路は塞がれているも同然だった。
逃げようとすれば、ステラ・レッドキャップ(ka5434)による威嚇射撃やマリィアの犬であるαと柴犬であるγが走り回ってるお蔭で逃げ道を封じられ、リオンを相手していた強盗が逃亡を図ろうとするも逃げる機会を逸した一人を殴り続け、顔がたんこぶで歪むさまをリオンは楽しんでいた。
「ねぇねぇ、さっきまでのおこな態度どこ行ったの? 逃げちゃうだなんてもったいないじゃないつまらないじゃない! 主にあ・た・し・が」
腹部を数発殴られ、戦意を完全に喪失したにも関わらず、彼女は更に追撃を見舞い、ついには失神させてしまった。
「あらま、もうおねんねなの。つまらないわね」
失神した強盗をつまらなそうに捨てると、リオンは改めて周囲を見回し、まだ戦っている味方が居ないか確認する。
「おーいステラちゃ~ん! まだ終わらないのかしら~ん」
まるで新しいおもちゃでも見つけた子供のような笑顔を浮かべながら、ステラを手伝うそぶりを見せつつも手を出さずにヤジを飛ばす。
「リオンの奴……まあいいや。逃げないように予防線は張ってるし、カッコ良い所見せるか!」
ステラは呆れつつリオンのヤジを聞き流し、敵を接近させるためにわざと弾幕を薄め、接近戦へと持ち込もうとする。
弾幕が薄くなり、勝機を見出したのか、強盗は口元を歪めてステラへと一歩、強く踏み込む。
その踏込と同時に一撃が放たれようとするが、これをクローズコンバットによって引かれた引き金により躊躇させ、ナイフで追撃に移る。
「このっ! ちょこまかと」
銃撃に怯んで咄嗟に攻撃をやめてしまった強盗をあざ笑うかのように、ナイフが剣を握っていた手の手首を切り裂く。
「ちいとばかし脈を外したか!」
しかし、入りが浅かったのか、派手な出血は無く、脈を裂けていないと、再びステラはナイフを構え、強盗に向かう。
強盗の方も、軍を退けたというプライドがあるのか、あるいは逃げられないと悟っているのか、無謀にもステラへ向けて再び剣を向ける。
「本当はもうちょっと足止めと時間稼ぎして戦いながら盗品を運ぶのかと思ってたけど……」
ステラは強盗に神経を集中させながらも、周りに逃亡を図ろうとする強盗が居ないかどうかを確認する。
しかし、残っている強盗はマリィアが相手をしている為、その必要もなくなっていた。
「これならさっさと片づけてからゆっくり運んだ方が楽そうだな」
「ごちゃごちゃうるせぇぞ!」
独り言をつぶやきながら戦おうとするステラに激昂した強盗は、再び地面を強く踏込み、渾身撃により大きく剣を振り下ろす。
来ている事がわかっている攻撃にやすやすと当たるようなステラではない。ステラはそのまま避けると、今度は首の側面へナイフを突き立て、直ぐに引き抜く。
おびただしい量の血液が宙を舞い、強盗はゆっくりと倒れるが、その鮮血がステラに触れる事は無かった。
●ケチな同盟軍
それはリオンが敵の中を攪乱し、ジャックが戦闘を行う事と並列しての出来事だった。
リオンの攪乱と並行してマリィアの魔道バイク滑り込んできた為、強盗は仲間の援護が受けられず、本気で轢き殺そうとするマリィアのバイクに意識を向けて居なければならない為、とりあえず逃げ出して仲間と合流する、というわけにはいかない状況に陥ってしまった。
これなら十分に一対一で戦えるだろう、そう考えたマリィアは強盗を轢く直前で受け身を取り、バイクから離れた。
「くそっ!」
乗り捨てられたバイクに危うく巻き込まれそうになった強盗は悪態一つ吐き、体勢を立て直してマリィアへと意識を集中させる。
「覚醒者がこの程度で死なれちゃ困るわね……きっちり殺す」
マリィアは低くつぶやくと、容赦なくダブルファイアによる掃射を行い、強盗の見せ場を作らせない勢いで圧倒する。
何発かが被弾し、自慢の剣を落としてもお構いなしにマリィアは発砲を続け、ついに強盗は何もできないまま動かなくなる。
遮蔽物に逃げる余裕を与えなければ、いくら強力な剣でも銃にはかなわないのである。
完全に動かなくなったのを確認したマリィアは、改めて周囲を見回す。
もう既に片付いたようで、後は盗品の入った馬車を頂くだけとなった。
遺体の回収を終えた同盟軍は、一斉に馬車の手綱を引き、馬をゆっくりと誘導させる。後はこの後を警護するだけなのだが……。
「どうどう……落ち着いて。ちゃんと安全な場所へ連れて行くから」
戦闘でも動じなかった馬がここに来て怯えだして動かなくなってしまった為、しばらくマリィアの手によって慰められる。
その間、地面に落とされた盗品や薬物を持ち上げたステラはすっかり頭の中で金勘定をしていた。
「これに宝石が詰まってるのか……幾らで売れるんだろうな」
「あー気持ちはすっげー分かるが、取るなよー」
ジャックもまた落ちた盗品袋を持ち上げていたのだが、彼も我慢していたようである。高価な宝石が袋いっぱいに詰まっているのだから、誰だって中身や値段が気になるだろう。
「てェか、ぶっちゃけ軍もセコいカンジよネ、少しはこっちに回してもいいのに……」
「その分が今回の報酬で上乗せされている事を願おうよ。ふぅ、初の対人戦だったし、少し疲れたね」
同じように盗品袋を運んでいたリオンの愚痴に、ため息一つ吐きながら盗品を運ぶ小夏が応える。
「それよりも、今後もこのような依頼が来るかもしれない。転がした一人から洗ったら、同業者も出始めているらしい。もしかすると、また会うかもしれないな」
「また会えるかはぁ~別としてェ、食い扶持に困らなさそうな朗報をありがとネ。アルトちゃん」
これから似たような犯罪が起こりうる事を真剣に懸念しているアルトを他所に、ハンターとしての使命感というよりは、快楽を優先するような雰囲気を出していたリオンに悟られないよう、アルトはこっそりとため息を吐いた。
やがて、盗品袋や薬物の詰まった袋がぎっしり詰まった馬車を施錠し、ゆっくりと動かす。ハンター達はその周囲を警戒しながら港湾を後にするが、軍が管理する倉庫へ到着するまでアクシデントに巻き込まれなかった事は、盗まれた宝石達にとっては不幸中の幸いだったのかもしれない。
依頼結果
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面白かった! | 4人 |
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依頼の相談 ジャック・エルギン(ka1522) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2016/04/16 19:38:22 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/04/15 13:07:32 |