ゲスト
(ka0000)
【幻魂】再来の機神
マスター:剣崎宗二

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 6~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 7日
- 締切
- 2016/04/25 12:00
- 完成日
- 2016/05/02 06:19
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「すまんな、マティリア。 疑って悪かったな……お前の忠誠心は、先の一戦にて十分に見せてもらった」
「いえ。マスターは慎重であるべきです。その判断も当然かと」
先の一戦。アレクサンドルには、本当にマティリアが自身に仕えられるかの、疑いがあった。
それ故に、彼はハンターたちの戦力がマティリア側に偏っていると見ながらも、一旦マティリアを自身から遠ざけ、ハンターたちの戦力の分断に利用した。
若しもマティリアが自身の命に従わないとしても、その時は自身が薄いハンターたちの包囲を突破し、マティリアをハンターたちに倒させている間に撤退すれば良かったのである。
――その結果が、この損耗。
数々のヒビが入り、オイルが流れ出しているマティリアの身体を、アレクサンドルの手が撫でる。
「――じっとしていろ。今修復を行う」
装甲にその手が触れると、装甲が独りでに動き出し。まるで生き物のように、ヒビのあった部分を埋めていく。
「マスター、私の為に何も力を使わなくとも――」
「もう直ぐ奴らの反攻がある可能性がある。 今のうちに、準備をして置くべきだ」
「マスター。ご心配には及びません。…既にあの者たちの戦術は解析済み。今ある機能を『運用』すれば、十分に対策可能です」
「それでも、念には念を入れねば、な。敵側には、新たな力も見られている」
アレクサンドルの手の動きと共に、地面から無数の石の巨人が湧き出す。その表面に、彼が「Instant Concrete Glue」を掛けると…それは独りでに動き出し、マティリアのような形を形作っていく。
――それは、マティリアそっくりの人形。中身は当然違う。故に彼女と同等の力は望むべくもない。
だが。だが然し。それは「目を晦ます」には十分。
――一部の戦場に於いては、既に異形の者――幻獣の力を纏いし人間が出現していると聞く。
故に、保険は掛けておくのに越した事はない。
――主の『準備』を見ながら、マティリアも悔しさに強く、奥歯をかみ締める。
…自身の装備が一つ。この軟体アーマーには、魔剣の力が宿ると聞く。だが、己は未だに、その力を引き出す事が出来ない。それ故に、今こうして、主の手を煩わせている。
――何と不甲斐ない事か。
「来たぞ」
主の声に、現実に引き戻される。目の前には、既に倒すべき敵が。
「――今はただ、マスターを助けるだけです」
彼女は周囲の『ドール』と共に、一斉に構えを取った。
「いえ。マスターは慎重であるべきです。その判断も当然かと」
先の一戦。アレクサンドルには、本当にマティリアが自身に仕えられるかの、疑いがあった。
それ故に、彼はハンターたちの戦力がマティリア側に偏っていると見ながらも、一旦マティリアを自身から遠ざけ、ハンターたちの戦力の分断に利用した。
若しもマティリアが自身の命に従わないとしても、その時は自身が薄いハンターたちの包囲を突破し、マティリアをハンターたちに倒させている間に撤退すれば良かったのである。
――その結果が、この損耗。
数々のヒビが入り、オイルが流れ出しているマティリアの身体を、アレクサンドルの手が撫でる。
「――じっとしていろ。今修復を行う」
装甲にその手が触れると、装甲が独りでに動き出し。まるで生き物のように、ヒビのあった部分を埋めていく。
「マスター、私の為に何も力を使わなくとも――」
「もう直ぐ奴らの反攻がある可能性がある。 今のうちに、準備をして置くべきだ」
「マスター。ご心配には及びません。…既にあの者たちの戦術は解析済み。今ある機能を『運用』すれば、十分に対策可能です」
「それでも、念には念を入れねば、な。敵側には、新たな力も見られている」
アレクサンドルの手の動きと共に、地面から無数の石の巨人が湧き出す。その表面に、彼が「Instant Concrete Glue」を掛けると…それは独りでに動き出し、マティリアのような形を形作っていく。
――それは、マティリアそっくりの人形。中身は当然違う。故に彼女と同等の力は望むべくもない。
だが。だが然し。それは「目を晦ます」には十分。
――一部の戦場に於いては、既に異形の者――幻獣の力を纏いし人間が出現していると聞く。
故に、保険は掛けておくのに越した事はない。
――主の『準備』を見ながら、マティリアも悔しさに強く、奥歯をかみ締める。
…自身の装備が一つ。この軟体アーマーには、魔剣の力が宿ると聞く。だが、己は未だに、その力を引き出す事が出来ない。それ故に、今こうして、主の手を煩わせている。
――何と不甲斐ない事か。
「来たぞ」
主の声に、現実に引き戻される。目の前には、既に倒すべき敵が。
「――今はただ、マスターを助けるだけです」
彼女は周囲の『ドール』と共に、一斉に構えを取った。
リプレイ本文
●遭遇
「アレックスさんっ!やっと見つけましたっ」
アレクサンドルの姿を認めたアルマ・アニムス(ka4901)が叫ぶ。
「ほう。性懲りもなくまた来たか」
「僕はあきらめは悪いほうですからね!」
そのままドールの間を縫い、突撃するアルマ。
だが、忘れてはいけない。ドールたちはマティリアを模造した物――即ち、その腰の長い砲も、また同じ。まるで閂をかける様に、砲が横のドールに向けられ、馬足を凪ぐ障害物なった。
「あぶっ!?」
馬足が『閂』に躓き、転倒するアルマ。
「あれ…?マチリアさん…沢山いません?ご姉妹?」
転倒の衝撃で涙目になりながら――アレクサンドルに語りかける。
「お願いがあります。あの時の言葉、もう一度くださいっ」
「それは…どの言葉かな?」
余裕を持って腕を組んだアレクサンドルが、彼に意識を取られた瞬間。巨大な斧が彼を上から襲う。
「オオオォォォオオ!!」
咆哮と共に、倒れる馬から飛びおりたバルバロス(ka2119)。跳躍の勢いそのままに、上から斧を振り下ろしたのだ。
「…!」
回避が間に合ったのは、ほぼ幸運。だが、それは同時に、攻撃力を重視するバルバロスの命中率が低めであった事にも由来する。
「狂戦士か…」
「そうだ、彼、僕の大事なお友達です。バルバロスさんです。とっても大きくてもふもふで…可愛いですよね!」
「ああ、確かにな。…おっさんの趣味ではないが、な」
周囲のドール…三体程が突き出す砲が、槍の如く突き出され、バルバロスの斧を受け止める。
一体の歪虚が、彼の腕力に敵うはずはない。――だが、三体が協力すれば、話は変わってくる。
「なら…纏めて焼くだけよ!」
エリス・ブーリャ(ka3419)の放つ炎が、三体のドールたちを纏めて焼く。
だが、堪えたようには見えない。あるいは…単に表情と言うものが存在しないだけなのか。
「それなら一体ずつ叩き潰すだけ…!」
次に襲撃に加わったのは、ゾファル・G・初火(ka4407)。一歩遅れて前進した彼女は、愛馬『黒船』を駆りながらも、交差する砲に引っかかる前に飛び降りる事に成功。大上段から斜めに、巻き込むようにして斧が振り下ろされる。
バルバロスと同じタイプの『狂戦士』にして、同レベルの腕力を持つ彼女の一撃。しかしそれは焼かれたドールに直撃する前に、他のドールによって受け止められる。
受け止めたドールは、彼女の強靭な腕力によって、大きく吹き飛ばされる。だが、破壊には至っていない。
同様の戦術を用いたジョージ・ユニクス(ka0442)もまた、同じ結果に至る。ドールの一体を吹き飛ばしたのみである。
――しかし、僅かに陣形が崩れたその隙は、ハンターたちに、アレクサンドル自身への襲撃を決断させるには十分であった。
●Assault on A
「先に行くっすよ!」
先に踏み出したのは無限 馨(ka0544)。転倒したアルマと、拮抗状態にあるバルバロスを観察しての決断である。――同時に、地面にトラップが無いかどうかを確かめるためでもあったのだが。
ビールが投げつけられると共に、振るわれる鞭が四方八方からアレクサンドルを襲う。
キンキンキン。
次々とそれをメスの『爪』で切り払っていくアレクサンドル。
だが――
「捉えたっすよ!」
僅か一瞬。横に動いた鞭が、アレクサンドルの腕に巻きつく。
「纏めて吹っ飛びやがれっ!」
その瞬間、横に薙がれたミリア・コーネリウス(ka1287)の剣が、彼ごと周りのドールたちを吹き飛ばそうと、風を切り裂き襲い掛かる!
「…飛ぶのは…そちらだ!」
ガン。
飛来したのは、鉄の剛腕。破魔の剣と激突し、その反動力により距離が離される。
「っ!?」
だが、次の瞬間、アレクサンドルの視界が、桜の幻影によって塞がれる事になる。
幻影を生み出したのは、夜桜 奏音(ka5754)。
その幻影に乗じて起き上がったアルマは、その手に青く光輝く光剣を生み出す。
「前回のは、結構痛かったんですからね」
突進し、突き出される光の剣。それには冷気が纏わりつき、その威力をさらに増す!
「…まずいか…!」
アレクサンドルは、それの脅威をよく知っている。ハンターの一部には、一撃にのみ、友の力を乗せ、強化する術があると。
「ティア――お前は5人の中でも最も聡明で、知恵が働いた。だから――」
――今ここで、使わせてもらう。
放出されたのは大量の液体。それは放出される端から固形化し、巨大な壁が一瞬にしてアレクサンドルの眼前に出現する!
「見えないのならば――全ての面を塞いでしまえばいい」
「なら――その防御ごと貫きます!」
バン。
青の光剣が、壁を貫通し、いくつにも砕く。
だが――その裏にアレクサンドルの姿はない。
「…!」
光剣を構えたままアレクサンドルを探すアレクサンドル。次の瞬間、巨大な壁の破片が彼の後頭部へと叩き込まれる。
「Life to Lifeless――!!」
――『Instant Concrete Glue』は、一見それ程対処が難しい能力ではない。だが、特筆すべきは能力自体の『アレクサンドルとの相性』。固形化したそれは――『無機物』なのだ。
動き出した壁にの破片が、一瞬にして変形し、アルマを拘束する。
然し、アルマを拘束したアレクサンドルには――油断があった。危機を脱した、と。
「ウォォオオオォォォオ――!!」
身の毛もよだつ様な、獣の咆哮が――轟いた。
●Mirage Combat
一方その頃。マティリアとドールを相手にしていたハンターたちは――
「とりあえずは纏めて攻撃するべきですかね」
投げ上げた符が、無数の雷光に変わる。アレクサンドルとマティリア、両方の対策班へ援護を行っていた奏音の放った風雷が、ドールの膝部分を打ち据える。
だが、流石は耐久力に優れる歪虚と言った所か。雷撃を受けてもその動作は何ら衰えを見せない。あるいはもっと多くの人数でこれを集中的に行っていたのならば、また違った結果を見せたのかもしれないが。
「はぁっ!」
横振りの大剣が、ドールの一体の表面に傷をつける。
どれがマティリアであるか判別できた際に、再度隠れられるのを防ぐ為の一手。だが、ジョージのその手段は、先ず『どれがマティリアであるか』を判別できなければ、意味は無い。
――ハンターたちは、動きの傾向によって、マティリアが判別できると考えていた。
思考が違う二人によってコントロールされていたのであれば、その思考の差異によって、判るはずだと。
確かにそうかも知れない。違う個体である以上、個体間の思考が統一できる筈は無い。
だが、そこには一つ、失念があった。
――若しもマティリアが、意図的にドールの動きを真似ていたとしたら?
――或いはドールが、意図的にマティリアの動きを真似ていたとしたら?
「うーん、難しいか」
目に力を集中させ、マティリアの判別を試みていたエリスが漏らす。
若しも、一体だけ…特徴が違うドールが存在していたのならば、それがマティリアと特定もできよう。
だが、ドールたちとて、天然物から作られている以上。それぞれの微細な特徴が違うのも、また当然。
「なら――端から叩き潰せばいいんじゃないかな!」
元よりそのつもりだった、とばかりにゾファルの斧が振り回される。
暴風の如き金属が、エリスの炎に幾度も焼かれたドールたちを巻き込み、一体を破壊し、他の者の装甲に傷をつける。
「このまま――っ!?」
更に奏音が雷撃を放とうと符を構えた瞬間。飛来する『何か』に気づき、とっさに利き腕と頭をそらす。
次の瞬間、固形化した液体が飛来し、彼女の足に付着する。
完全に行動不能にはならなかった物の、移動は封じられた。
――奏音が対マティリア、対アレクサンドルの両方に援護を行っていたのと同じように。アレクサンドルもまた、迎撃と共に味方への援護を行っていた。元より彼はドールたちの陣の中にいる。例えある程度ドールたちが叩かれ、彼への道が開かれても、ドールたちから引き離されなければ援護を行う事も受ける事も容易。
「一応初めましてのはずですが、これはひどいのではないですかね?」
軽口を叩きながらも、尚も行動が封じられていない事を利用し、雷撃がドールたちの膝をを打ち据える。
だが、すぐさま降り注いだ二波目の液体が、奏音の全身を包み込み、完全に固定して動きを封じる。
「手間掛けさせてくれるね――!」
このままでは呼吸もままならなく、命の危険すらある。ゾファルが即座に駆け寄り、斧を横にして鉄槌のように使い、一撃でとりあえず頭部に近い部分の固形化した物質を砕く。だが、体を戻すにはもう少し時間がかかりそうだ。
●奥の一手
「フン。――死を越え、命を賭ける覚悟か。その様な物、言うまでも無い」
毛と血にまみれた男の全身より立ち上るは、力への渇望。
「命をかけて戦い続ける我ら『バルバロス』に覚悟など――物心ついた時より完了しておるわ!!」
その全身から立ち上る闘気が、狼の形を作る。そして――男は、咆哮と共に、飛び掛った。
――爪牙が、一瞬にしてダメージを受けたドール二体を両断する。
「ぬう…!」
マティリア側への援護を行ったアレクサンドルだが、それ故に反応が一瞬遅れる。故に、再度『ICG』を起動する時間はなく、鉄の腕を動かして防御するのが精一杯。然し、その防御もまた――
「邪魔はさせませんよ!」
アルマの銃撃が僅かに軌道を逸らし、
「例えどんな境遇があろうとも……やろうとしてる事、それだけは許すわけにはいかないっすよ!」
馨の伸ばしたワイヤーウィップが鉄腕を引っ張り、完全に逸らす。
――近接攻撃に対しては防御能力が低下する故、『Death to the Lifeless』ではバルバロスの一撃は防げないだろう。
全ての防御手段を失ったアレクサンドル。その頭部に、バルバロスの斧が食い込もうとした刹那。
「マスター!!」
一つの影が、その間に滑り込んだ。
――バルバロスたちが猛攻を仕掛けていたその時。マティリアの牽制を任務としていたハンターたちは、マティリアの特定ができず、攻めあぐねていた。
だがその瞬間、エリスの鋭敏な視覚が、青い光を湛える砲を、捉えた。
――ドールは砲撃できない。故にそれは――
「あそこよ!」
その言葉を頼りに、ジョージが突進する。突き出した盾で押さえ込もうとする。
猛烈な砲の横薙ぎ。その怪力に、押し飛ばされるジョージ。だが――
「それで射程外――とでも思いましたか?」
盾の後ろに一直線に構えられたのは、己が愛剣。
放たれる技は、前回のマティリアに受けた一撃を、我流で真似た一撃。
突き出されるそれは、一条の光となり、マティリアに向かい――
――そして、ドールの体によって止められた。
「!?」
押し飛ばされたその先は、ドールたちの『囲い』の中。
彼を押しつぶすようにして、ドールたちが取り囲んだのだ。
剣を振り、無数の斬撃を飛ばすが、攻撃より防御を重視した彼では、この囲いを突破するには、少し時間がかかる。
「てめぇの外殻も心臓も元はウチらのものなんだ。返せ――」
「取り戻したくば、力づくで倒して見せろ――!」
ジョージを押し飛ばしたマティリアが、砲を向けたその先は、エリス。バイクに乗り突撃する彼女を、覚悟の構えで狙う。
ドン。ドールの一体の薙ぎ払いにより、バイクから落とされるエリス。だが、主を失ったバイクはそれでも、猛烈な勢いを以って、元の目標へと向かっていく。
砲撃が、ドール諸共、エリスを打ち貫く。だが、同時にバイクはそのままマティリアに激突し、彼女をも後ろの木に叩きつける。
「マスター!!」
彼女が見たのは、今まさに、叩き切られようとするマスターの姿。
それが彼女の全身に――力を注いだ。
――強引にバイクを押しのけ変形する。それを妨害しようとしたジョージの突きは、然しドールに遮られ届かない。
一瞬にして、バルバロスとアレクサンドルの間に割って入り再変形。砲身で、斧の一撃を受け止める!
「ぐ、ぅぁぁぁ!」
然し、奥義を使ったバルバロスの力は半端ではない。加え、無理な体勢のせいで力は入らず、完全に軌道は逸らせていない。頭部を両断される事こそ避けた物の、戦斧が横から顔を抉り、片目を――破壊する。
「このまま――!」
更なる追撃が、馨の手によって加えられる。槍によって放たれる、無数の突き。
「Death to Soulless――!」
突きが見えない壁に刺さるように、減速する。それでも穂先はアレクサンドルの体に傷をつけていくが、僅かな隙に、その腕がアレクサンドルに掴まれ、マティリアの砲が叩き付けられる。
「視界は低減しましたが、通常戦闘に問題はありません、マスター」
「ならば、協力しろ――!」
鉄腕が飛来する。狙ったのは、体力の回復を行っているバルバロス。
――奥義の体力消耗はあまりにも大きすぎた。超再生でも補え切れない程に。
鉄腕が彼の腹部に突き刺さったその瞬間、マティリアの砲によるスイングが、その後ろに叩き込まれる。
――杭打ちの如く、貫通する。
「今回は止めさせてもらうぞ……今だ、アルマ!」
「アレックスさん――これで!」
ミリアの神速の突きが、アレクサンドルのガードを弾く。その瞬間に、アルマの光剣が、アレクサンドルの体に突き刺さる。
焼け付くような痛みに眉をしかめながら、彼の両手が、アルマに掛かる。その瞬間、迸る雷光。
攻性障壁。吹き飛ばしと麻痺を兼ねる、電撃の防御。
「――Death to Soulless!」
だが、発揮されたのは麻痺効果のみ。アレクサンドルの声と共に、一瞬後ろに動いた彼の体が、ぴたりとその場に留まる。
「『Weather the Elder』…!!」
アルマの体力が吸い取られ、アレクサンドルの体力が、みるみる回復していく。
「アルマ!」
振るわれるミリアの大剣。狙うは、アルマを掴んでいる、アレクサンドルの腕。
「――お前さんも、無念を味わうがいい――!」
だが、それを視認したアレクサンドルは。そのまま腕に力を入れてアルマを持ち上げ。ミリアの剣に――押し付けた。
「――!!」
最愛の人を斬った事で、一瞬、ミリアの行動が止まる。その機に、急激に後退するアレクサンドル。
「逃がさないっすよ!」
投げられた馨のカードが、ドールによって受け止められたその隙に。変形したマティリアに乗り、戦場から去るアレクサンドル。復帰した奏音が投げつけられたワインも、空中でメスに迎撃され、届かない。
――彼らの損害も少なくは無かったのだろう。これ以上戦う意思はない、と言うことか。
――痛み分けとは言え、脅威は去った。
故に、傷ついた体を癒すため、ハンターたちもまた、帰途に着いた。
「アレックスさんっ!やっと見つけましたっ」
アレクサンドルの姿を認めたアルマ・アニムス(ka4901)が叫ぶ。
「ほう。性懲りもなくまた来たか」
「僕はあきらめは悪いほうですからね!」
そのままドールの間を縫い、突撃するアルマ。
だが、忘れてはいけない。ドールたちはマティリアを模造した物――即ち、その腰の長い砲も、また同じ。まるで閂をかける様に、砲が横のドールに向けられ、馬足を凪ぐ障害物なった。
「あぶっ!?」
馬足が『閂』に躓き、転倒するアルマ。
「あれ…?マチリアさん…沢山いません?ご姉妹?」
転倒の衝撃で涙目になりながら――アレクサンドルに語りかける。
「お願いがあります。あの時の言葉、もう一度くださいっ」
「それは…どの言葉かな?」
余裕を持って腕を組んだアレクサンドルが、彼に意識を取られた瞬間。巨大な斧が彼を上から襲う。
「オオオォォォオオ!!」
咆哮と共に、倒れる馬から飛びおりたバルバロス(ka2119)。跳躍の勢いそのままに、上から斧を振り下ろしたのだ。
「…!」
回避が間に合ったのは、ほぼ幸運。だが、それは同時に、攻撃力を重視するバルバロスの命中率が低めであった事にも由来する。
「狂戦士か…」
「そうだ、彼、僕の大事なお友達です。バルバロスさんです。とっても大きくてもふもふで…可愛いですよね!」
「ああ、確かにな。…おっさんの趣味ではないが、な」
周囲のドール…三体程が突き出す砲が、槍の如く突き出され、バルバロスの斧を受け止める。
一体の歪虚が、彼の腕力に敵うはずはない。――だが、三体が協力すれば、話は変わってくる。
「なら…纏めて焼くだけよ!」
エリス・ブーリャ(ka3419)の放つ炎が、三体のドールたちを纏めて焼く。
だが、堪えたようには見えない。あるいは…単に表情と言うものが存在しないだけなのか。
「それなら一体ずつ叩き潰すだけ…!」
次に襲撃に加わったのは、ゾファル・G・初火(ka4407)。一歩遅れて前進した彼女は、愛馬『黒船』を駆りながらも、交差する砲に引っかかる前に飛び降りる事に成功。大上段から斜めに、巻き込むようにして斧が振り下ろされる。
バルバロスと同じタイプの『狂戦士』にして、同レベルの腕力を持つ彼女の一撃。しかしそれは焼かれたドールに直撃する前に、他のドールによって受け止められる。
受け止めたドールは、彼女の強靭な腕力によって、大きく吹き飛ばされる。だが、破壊には至っていない。
同様の戦術を用いたジョージ・ユニクス(ka0442)もまた、同じ結果に至る。ドールの一体を吹き飛ばしたのみである。
――しかし、僅かに陣形が崩れたその隙は、ハンターたちに、アレクサンドル自身への襲撃を決断させるには十分であった。
●Assault on A
「先に行くっすよ!」
先に踏み出したのは無限 馨(ka0544)。転倒したアルマと、拮抗状態にあるバルバロスを観察しての決断である。――同時に、地面にトラップが無いかどうかを確かめるためでもあったのだが。
ビールが投げつけられると共に、振るわれる鞭が四方八方からアレクサンドルを襲う。
キンキンキン。
次々とそれをメスの『爪』で切り払っていくアレクサンドル。
だが――
「捉えたっすよ!」
僅か一瞬。横に動いた鞭が、アレクサンドルの腕に巻きつく。
「纏めて吹っ飛びやがれっ!」
その瞬間、横に薙がれたミリア・コーネリウス(ka1287)の剣が、彼ごと周りのドールたちを吹き飛ばそうと、風を切り裂き襲い掛かる!
「…飛ぶのは…そちらだ!」
ガン。
飛来したのは、鉄の剛腕。破魔の剣と激突し、その反動力により距離が離される。
「っ!?」
だが、次の瞬間、アレクサンドルの視界が、桜の幻影によって塞がれる事になる。
幻影を生み出したのは、夜桜 奏音(ka5754)。
その幻影に乗じて起き上がったアルマは、その手に青く光輝く光剣を生み出す。
「前回のは、結構痛かったんですからね」
突進し、突き出される光の剣。それには冷気が纏わりつき、その威力をさらに増す!
「…まずいか…!」
アレクサンドルは、それの脅威をよく知っている。ハンターの一部には、一撃にのみ、友の力を乗せ、強化する術があると。
「ティア――お前は5人の中でも最も聡明で、知恵が働いた。だから――」
――今ここで、使わせてもらう。
放出されたのは大量の液体。それは放出される端から固形化し、巨大な壁が一瞬にしてアレクサンドルの眼前に出現する!
「見えないのならば――全ての面を塞いでしまえばいい」
「なら――その防御ごと貫きます!」
バン。
青の光剣が、壁を貫通し、いくつにも砕く。
だが――その裏にアレクサンドルの姿はない。
「…!」
光剣を構えたままアレクサンドルを探すアレクサンドル。次の瞬間、巨大な壁の破片が彼の後頭部へと叩き込まれる。
「Life to Lifeless――!!」
――『Instant Concrete Glue』は、一見それ程対処が難しい能力ではない。だが、特筆すべきは能力自体の『アレクサンドルとの相性』。固形化したそれは――『無機物』なのだ。
動き出した壁にの破片が、一瞬にして変形し、アルマを拘束する。
然し、アルマを拘束したアレクサンドルには――油断があった。危機を脱した、と。
「ウォォオオオォォォオ――!!」
身の毛もよだつ様な、獣の咆哮が――轟いた。
●Mirage Combat
一方その頃。マティリアとドールを相手にしていたハンターたちは――
「とりあえずは纏めて攻撃するべきですかね」
投げ上げた符が、無数の雷光に変わる。アレクサンドルとマティリア、両方の対策班へ援護を行っていた奏音の放った風雷が、ドールの膝部分を打ち据える。
だが、流石は耐久力に優れる歪虚と言った所か。雷撃を受けてもその動作は何ら衰えを見せない。あるいはもっと多くの人数でこれを集中的に行っていたのならば、また違った結果を見せたのかもしれないが。
「はぁっ!」
横振りの大剣が、ドールの一体の表面に傷をつける。
どれがマティリアであるか判別できた際に、再度隠れられるのを防ぐ為の一手。だが、ジョージのその手段は、先ず『どれがマティリアであるか』を判別できなければ、意味は無い。
――ハンターたちは、動きの傾向によって、マティリアが判別できると考えていた。
思考が違う二人によってコントロールされていたのであれば、その思考の差異によって、判るはずだと。
確かにそうかも知れない。違う個体である以上、個体間の思考が統一できる筈は無い。
だが、そこには一つ、失念があった。
――若しもマティリアが、意図的にドールの動きを真似ていたとしたら?
――或いはドールが、意図的にマティリアの動きを真似ていたとしたら?
「うーん、難しいか」
目に力を集中させ、マティリアの判別を試みていたエリスが漏らす。
若しも、一体だけ…特徴が違うドールが存在していたのならば、それがマティリアと特定もできよう。
だが、ドールたちとて、天然物から作られている以上。それぞれの微細な特徴が違うのも、また当然。
「なら――端から叩き潰せばいいんじゃないかな!」
元よりそのつもりだった、とばかりにゾファルの斧が振り回される。
暴風の如き金属が、エリスの炎に幾度も焼かれたドールたちを巻き込み、一体を破壊し、他の者の装甲に傷をつける。
「このまま――っ!?」
更に奏音が雷撃を放とうと符を構えた瞬間。飛来する『何か』に気づき、とっさに利き腕と頭をそらす。
次の瞬間、固形化した液体が飛来し、彼女の足に付着する。
完全に行動不能にはならなかった物の、移動は封じられた。
――奏音が対マティリア、対アレクサンドルの両方に援護を行っていたのと同じように。アレクサンドルもまた、迎撃と共に味方への援護を行っていた。元より彼はドールたちの陣の中にいる。例えある程度ドールたちが叩かれ、彼への道が開かれても、ドールたちから引き離されなければ援護を行う事も受ける事も容易。
「一応初めましてのはずですが、これはひどいのではないですかね?」
軽口を叩きながらも、尚も行動が封じられていない事を利用し、雷撃がドールたちの膝をを打ち据える。
だが、すぐさま降り注いだ二波目の液体が、奏音の全身を包み込み、完全に固定して動きを封じる。
「手間掛けさせてくれるね――!」
このままでは呼吸もままならなく、命の危険すらある。ゾファルが即座に駆け寄り、斧を横にして鉄槌のように使い、一撃でとりあえず頭部に近い部分の固形化した物質を砕く。だが、体を戻すにはもう少し時間がかかりそうだ。
●奥の一手
「フン。――死を越え、命を賭ける覚悟か。その様な物、言うまでも無い」
毛と血にまみれた男の全身より立ち上るは、力への渇望。
「命をかけて戦い続ける我ら『バルバロス』に覚悟など――物心ついた時より完了しておるわ!!」
その全身から立ち上る闘気が、狼の形を作る。そして――男は、咆哮と共に、飛び掛った。
――爪牙が、一瞬にしてダメージを受けたドール二体を両断する。
「ぬう…!」
マティリア側への援護を行ったアレクサンドルだが、それ故に反応が一瞬遅れる。故に、再度『ICG』を起動する時間はなく、鉄の腕を動かして防御するのが精一杯。然し、その防御もまた――
「邪魔はさせませんよ!」
アルマの銃撃が僅かに軌道を逸らし、
「例えどんな境遇があろうとも……やろうとしてる事、それだけは許すわけにはいかないっすよ!」
馨の伸ばしたワイヤーウィップが鉄腕を引っ張り、完全に逸らす。
――近接攻撃に対しては防御能力が低下する故、『Death to the Lifeless』ではバルバロスの一撃は防げないだろう。
全ての防御手段を失ったアレクサンドル。その頭部に、バルバロスの斧が食い込もうとした刹那。
「マスター!!」
一つの影が、その間に滑り込んだ。
――バルバロスたちが猛攻を仕掛けていたその時。マティリアの牽制を任務としていたハンターたちは、マティリアの特定ができず、攻めあぐねていた。
だがその瞬間、エリスの鋭敏な視覚が、青い光を湛える砲を、捉えた。
――ドールは砲撃できない。故にそれは――
「あそこよ!」
その言葉を頼りに、ジョージが突進する。突き出した盾で押さえ込もうとする。
猛烈な砲の横薙ぎ。その怪力に、押し飛ばされるジョージ。だが――
「それで射程外――とでも思いましたか?」
盾の後ろに一直線に構えられたのは、己が愛剣。
放たれる技は、前回のマティリアに受けた一撃を、我流で真似た一撃。
突き出されるそれは、一条の光となり、マティリアに向かい――
――そして、ドールの体によって止められた。
「!?」
押し飛ばされたその先は、ドールたちの『囲い』の中。
彼を押しつぶすようにして、ドールたちが取り囲んだのだ。
剣を振り、無数の斬撃を飛ばすが、攻撃より防御を重視した彼では、この囲いを突破するには、少し時間がかかる。
「てめぇの外殻も心臓も元はウチらのものなんだ。返せ――」
「取り戻したくば、力づくで倒して見せろ――!」
ジョージを押し飛ばしたマティリアが、砲を向けたその先は、エリス。バイクに乗り突撃する彼女を、覚悟の構えで狙う。
ドン。ドールの一体の薙ぎ払いにより、バイクから落とされるエリス。だが、主を失ったバイクはそれでも、猛烈な勢いを以って、元の目標へと向かっていく。
砲撃が、ドール諸共、エリスを打ち貫く。だが、同時にバイクはそのままマティリアに激突し、彼女をも後ろの木に叩きつける。
「マスター!!」
彼女が見たのは、今まさに、叩き切られようとするマスターの姿。
それが彼女の全身に――力を注いだ。
――強引にバイクを押しのけ変形する。それを妨害しようとしたジョージの突きは、然しドールに遮られ届かない。
一瞬にして、バルバロスとアレクサンドルの間に割って入り再変形。砲身で、斧の一撃を受け止める!
「ぐ、ぅぁぁぁ!」
然し、奥義を使ったバルバロスの力は半端ではない。加え、無理な体勢のせいで力は入らず、完全に軌道は逸らせていない。頭部を両断される事こそ避けた物の、戦斧が横から顔を抉り、片目を――破壊する。
「このまま――!」
更なる追撃が、馨の手によって加えられる。槍によって放たれる、無数の突き。
「Death to Soulless――!」
突きが見えない壁に刺さるように、減速する。それでも穂先はアレクサンドルの体に傷をつけていくが、僅かな隙に、その腕がアレクサンドルに掴まれ、マティリアの砲が叩き付けられる。
「視界は低減しましたが、通常戦闘に問題はありません、マスター」
「ならば、協力しろ――!」
鉄腕が飛来する。狙ったのは、体力の回復を行っているバルバロス。
――奥義の体力消耗はあまりにも大きすぎた。超再生でも補え切れない程に。
鉄腕が彼の腹部に突き刺さったその瞬間、マティリアの砲によるスイングが、その後ろに叩き込まれる。
――杭打ちの如く、貫通する。
「今回は止めさせてもらうぞ……今だ、アルマ!」
「アレックスさん――これで!」
ミリアの神速の突きが、アレクサンドルのガードを弾く。その瞬間に、アルマの光剣が、アレクサンドルの体に突き刺さる。
焼け付くような痛みに眉をしかめながら、彼の両手が、アルマに掛かる。その瞬間、迸る雷光。
攻性障壁。吹き飛ばしと麻痺を兼ねる、電撃の防御。
「――Death to Soulless!」
だが、発揮されたのは麻痺効果のみ。アレクサンドルの声と共に、一瞬後ろに動いた彼の体が、ぴたりとその場に留まる。
「『Weather the Elder』…!!」
アルマの体力が吸い取られ、アレクサンドルの体力が、みるみる回復していく。
「アルマ!」
振るわれるミリアの大剣。狙うは、アルマを掴んでいる、アレクサンドルの腕。
「――お前さんも、無念を味わうがいい――!」
だが、それを視認したアレクサンドルは。そのまま腕に力を入れてアルマを持ち上げ。ミリアの剣に――押し付けた。
「――!!」
最愛の人を斬った事で、一瞬、ミリアの行動が止まる。その機に、急激に後退するアレクサンドル。
「逃がさないっすよ!」
投げられた馨のカードが、ドールによって受け止められたその隙に。変形したマティリアに乗り、戦場から去るアレクサンドル。復帰した奏音が投げつけられたワインも、空中でメスに迎撃され、届かない。
――彼らの損害も少なくは無かったのだろう。これ以上戦う意思はない、と言うことか。
――痛み分けとは言え、脅威は去った。
故に、傷ついた体を癒すため、ハンターたちもまた、帰途に着いた。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
- ヴァイス・エリダヌス(ka0364) → 夜桜 奏音(ka5754)
- 十色・T・ エニア(ka0370) → アルマ・A・エインズワース(ka4901)
- Uisca=S=Amhran(ka0754) → 夜桜 奏音(ka5754)
- ボルディア・コンフラムス(ka0796) → 夜桜 奏音(ka5754)
- 白神 霧華(ka0915) → エリス・ブーリャ(ka3419)
- シガレット=ウナギパイ(ka2884) → エリス・ブーリャ(ka3419)
- ミオレスカ(ka3496) → エリス・ブーリャ(ka3419)
- ラティナ・スランザール(ka3839) → アルマ・A・エインズワース(ka4901)
- 久木 満(ka3968) → アルマ・A・エインズワース(ka4901)
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しつもん!【質問卓】 エリス・ブーリャ(ka3419) エルフ|17才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2016/04/24 01:51:20 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/04/23 18:09:38 |
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相談卓 夜桜 奏音(ka5754) エルフ|19才|女性|符術師(カードマスター) |
最終発言 2016/04/26 07:44:34 |