暗躍する潜入者達を止めよ!

マスター:星群彩佳

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
8日
締切
2016/05/03 19:00
完成日
2016/05/16 18:30

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 ウィクトーリア伯爵領は王都・イルダーナと古都・アークエルスの中間部分、五十キロメートル四方に存在している。
 ルサリィ・ウィクトーリア(kz0133)の父であるマルセド・ウィクトーリアは、幼い頃から一部の貴族の傲慢さにうんざりしていた。
 妻のミナーヴァの実家は元々商業で成功をおさめて伯爵の地位を得た一族で、財産や人望の厚さはそこら辺の貴族よりも上であり、マルセドはその部分を見習うことにした。
 ウィクトーリア領内を商業地域として発展させたおかげで民の人気は得られたのだが……、一部の貴族達からは「金儲け主義者」と言われるようになってしまう。
 しかし強き覚悟を持って商売を続けているマルセドにとっては、陰口など微風程度にしか感じていなかったが――。
「マルセドお父様は良く言えば意志が強いお方、悪く言えば頑固親父なのよね」
「……どこでそんな言葉を覚えてきたんですか? ルサリィお嬢様」
 フェイト・アルテミス(kz0134)は温めたイチゴミルクとイチゴのロールケーキをルサリィの前のテーブルに置きながら、顔をしかめた。
「ミナーヴァお母様がよく言っているわ。お母様の考え方は一般民寄りで、良く言えば素直、悪く言えば天然でいらっしゃるのよね」
 良くも悪くもいろいろな事を教えているのがルサリィの母であることを知り、フェイトは痛むこめかみを指で押す。
「でもこういう手紙を送られてくるほど、知名度が高いことは確かね」
 ルサリィはロールケーキを頬張りながら、マルセド宛に送られてきた手紙を指ではじく。
 仕事部屋の休憩用のテーブルの上には数多くの手紙が置かれているものの、既に開封済みだ。本人の許可無く開けているのだが、その理由は差出人の名前が書かれていないせいである。
 商売敵が多いマルセドには、毎日のように何かしら贈り物が届く。
 中には危険な物もあるので、使用人達は送り主が分からない物は先に開けるようにしているのだ。
 そしてルサリィが読んだ手紙には、共通点がある。

『今度のパーティーは中止しろ。さもなくば、悲劇が起きるであろう』

「よりにもよってグラズヘイム王国に多少なりと関係があるパーティーで事件を起こそうなんて、何を考えているんだか」
「関係があるからこそ、事件を起こしてウィクトーリア家の名に泥を塗りたいんでしょう」
 送られてきた手紙は全て、脅迫状であった。
 その理由は、マルセドが先に起こした行動にある。


 古都・アークエルスと崖上都市・ビースホライズンの中間にある森近くに、マルセドのかつての仕事仲間が住んでいた。
 今は引退している六十を過ぎた老夫婦はいわゆる貧乏貴族で、小さな家で二人暮らしをしていた。
 領地は小さくも持っていたのだが、住人達は自然が多い土地よりも、仕事を求めてほとんど都や港へ行ってしまった。
 そこへとある商売人が、土地を売ってほしいと言ってきたらしい。代わりに住む家も用意されて、支払われる金額も少なくはないのだが……、どこか不審に感じた老夫婦はマルセドに相談した。
 マルセドが商売人のことを調べてみたところ、どうも以前から様々な田舎の土地を買い取っているらしい。
 その上、商売人が扱う商品の中には、貴重な天然資源が含まれているのだが、どれも買い取った土地から出ているのだ。
 しかし土地を売った者達は、私有地に天然資源があることを知らずにいたらしい。
 マルセドはすぐに老夫婦の領地を調べに行ったところ、森の奥に貴重なマテリアル鉱石がとれる鉱山が見つかった。


「つまり商売人は田舎の土地を密かに調べ上げて貴重な天然資源を見つけると、土地の所有者に何も告げずにそこそこの値段で買い取っていたわけね。あまり値を上げ過ぎては何かがあると気付かれるから、そこそこの金額を出しているところが商売人らしいわね」
「そして土地を買い取った後は、資源を自らの物として利益を得ていたわけですね。まあ私有地でどんな商売をしても構いませんが、先の所有者に何も言わないのはタチが悪いです」
 土地に価値のある天然資源があることがバレれば、売値を倍以上に上げられるか、あるいは最悪の場合は売ってくれなくなる。ゆえに黙ったまま、取引を進めたのだ。
 しかし今回の場合は違った。マルセドが商売人の魂胆に気付いた為に、取引自体が無くなったのだ。
 マルセドはすぐに鉱山のことを騎士団へ報告し、老夫婦の領地は国が管理することになる。
 老夫婦と領地内に住んでいた者達は、ウィクトーリア領内に移住することを希望した。
 結果的に、商売人は損をしたのだ。
「そのことを面白くないと思った商売人は、今度のパーティーで一波乱起こす気なのね」
「よりにもよって、引っ越し歓迎パーティーを狙うとは……。犯人は自白しているようなものですけど、証拠が無いのでこちらからは何もできません」
 手紙に書いてあるパーティーとは、ウィクトーリア領内に引っ越してきた老夫婦と住人達の為に行われるもので、かつての仕事仲間や知り合いなども呼ばれている。
「他にも建前上、呼ばなければならない貴族もいるんだけど……。どうやら招かれざる客も、来そうね」
 脅迫状が届くとすぐに、ルサリィはマルセドへ報告した。
 マルセドは仕事が忙しくミナーヴァと共に領地を離れているものの、商売人が一部の貴族と癒着していることを調べ上げる。そしてその貴族が、ウィクトーリア家にあまり良い感情を抱いていないことも――。
「パーティーを制限して良いのならば、安全にできるんですけどね」
 フェイトが言う通り、パーティーはウィクトーリア家の屋敷内で行い、来る客も前もって調べて安全な者だけ呼べば良いのだが……。
「生憎とウチのお父様は、そういう臆病パーティーは嫌いなのよ。老夫婦も元商売人なだけに、負け試合は嫌いなんですって」
 『来るなら来い!』という気持ちになっているらしいが、実際にパーティーをとり仕切るルサリィとウィクトーリア家の使用人達は頭を痛めている。
「今回の敵は、スパイと思った方が良さそうですね。流石に死人が出てはあちらもタダでは済まされないでしょうし、せいぜい嫌がらせ程度でしょうから」
 それでも事件が起きれば、ウィクトーリア家の名に傷が付く。
「それじゃあ、スパイにはスパイをぶつけましょう。隠密活動はハンター達だって得意よね? ならば彼らに任せてみましょうよ」
「今回はそうした方が良さそうです。旦那様が調べたところによると、向こうも覚醒者を雇ったようですから」
 敵はハンターという職に就いていないだけで、覚醒者VS覚醒者の対決となる。
「でも今回はあくまでもパーティーが重要だから、静かに戦ってもらうわ」

リプレイ本文

 イベント会場屋敷の大ホールで行われている引っ越し歓迎パーティーは、穏やかな雰囲気の中で進んでいた。
 まるごとゆぐでぃらの着ぐるみを着ている龍崎・カズマ(ka0178)は、スローイングカードで手品を披露している。
「ハハッ、それではこんな手品はいかがでしょうか?」
 老夫婦が見える位置でわざと人の視線を集めて、着ぐるみ姿で手品をしている自分に全く興味を示さない者達をチェックしていく。
(こういう余興に反応を示さないヤツは、他のことに興味を持っているか、あるいは別のことに集中しているか、だからな)
 招かれざる客である潜入者達は、特に当てはまる条件だ。
 カズマは手品を一つ終えると別の場所へ移動して、大ホール内にいる客達を見張る。
 その中で、異様に目立っている仲間を発見した。
「ええ、俺もウィクトーリア家には大変お世話になっております。おかげで良い思いをさせてもらっていますよ」
 貴族の放蕩息子風の衣装に身を包んだシャガ=VII(ka2292)は、派手なアクセサリーもつけている。
「マルセド氏が俺の父と共同経営をしてくださったおかげで、息子の俺も甘い汁を吸えるというものです」
 表向きはドラ息子を演じているものの、心の中ではうんざりしていた。
(貴族のドラ息子を演じるのにデカい武器を持つのはおかしいと言われたから、小型のしか持てなかったから辛いぜ……。にしても、例の商売人と通じている貴族が欠席するとはな)
 シャガは潜入者を手引きした貴族を捕まえようと思っていたのだが、パーティーの受付に使用人が訪れて、主人の欠席を告げて去ったらしい。
(どうやら調査の手が自分へ向けられていることを察したらしいが、潜入者達を止めなかったのはいただけねぇ。全部止めてやるぜ)
 気合いを入れたシャガだが、不意に冷たい視線を感じて振り返り、ビクッと身体を震わす。
(あんまりやり過ぎるなよ? 依頼人の評判を落としやがったら、……分かっているな?)
 視線の主は、老夫婦にメイドとして付き添っているヴィス=XV(ka2326)だ。
 ヴィスの視線に射抜かれたシャガは、顔を強張らせながらも少しテンションを落として役を続ける。
「……ああ、失礼いたしました。素晴らしいパーティーに、少々心奪われておりました」
 客に声をかけられたヴィスは、すぐにお淑やかな女性を演じる。
「私はメイドのスフェールと申します。このたび旦那様と奥様がこちらの土地に移り住むことになりましたので、遠縁である私がメイドとしてお仕えすることになりました」
 先程シャガを凍りつかせた時とは正反対の女性を演じながらも、周囲を警戒することは忘れない。
 一方でぽややんとした雰囲気を醸し出しながら、髪と同じ紫色のドレスを身に付けて、メガネを外した静刃=II(ka2921)はにっこりと微笑んでいる。
「はじめまして、プリーステスと申します。本日はご招待をしていただきまして、参りましたの」
 貴族の娘を演じている静刃は、いつもと変わらぬ柔和な態度で客達と接していた。
(さて、挨拶をしながら大ホール内を歩きましょうか。とは言え、パーティーで手ぶらのままというのもちょっと変ですかね?)
 静刃はグルッと周囲を見回すと、近くを通りかかった見知った顔の使用人に声をかける。
「ワインを一杯、貰えますか?」
 その使用人はワインを注いだグラスを銀のトレーにのせて、片手で持ちながら客達の間を歩いていた。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます。……お仕事、頑張ってくださいね」
「ええ」
 二人は微笑み合うと、すぐに離れて行く。
 使用人の正体は、男性用の制服を着たステラ=XVII(ka3687)だった。前髪をかき上げて、普段はかけないメガネをかけている。
 ワインを客達に配りながらも、怪しい動きをしている者がいないかチェックをしているのだ。
(暗躍を阻止するのはもちろんのことだけど、せっかくのパーティーを楽しんでもらいたいね。ワインを配り終えたら、コーナーに行かなきゃ)
 ステラは余興として、大ホールの隅で特設カクテル制作コーナーを受け持つことになっていた。
 客の要望に応じてオリジナルのカクテルを作るというもので、今は宣伝も兼ねて客達に声をかけている。
 ステラはふと、壁の方で落ち着かなげに一人でいる女性を見かけて、笑顔を浮かべながら近付いて声をかけた。
「そのドレス、とても素敵ですね。良く似合っておりますよ。実はこの後、あちらの特設コーナーで僕がオリジナルカクテルを皆様にお作りすることになっているんです。よろしければ、お声をかけてください。貴女様のイメージに合った、世界でただ一つのカクテルをお作りしますので」
(はあ……。ステラみたいに、上手に演じるのは無理そう……。でも頑張らなきゃね)
 貴族の娘を演じているセレナ=XVIII(ka3686)は、開いた胸元を落ち着かなげに手で撫でる。
 白いドレスに身を包んだセレナは、ルサリィと同じく後継ぎという設定だ。
 『ウィクトーリア家は貴族・一般市民関係なく、仕事をこなすところを尊敬している』と言いながら、いろいろな客に声をかけていた。
「私もルサリィ様と同じく一人娘ですので、いずれは父の仕事を継ごうと思っておりますの。今回このパーティーに参加したのは、いろいろな方とお知り合いになる良い機会だと思いまして……」
 社交的に振る舞いながらも、セレナは客達の様子を窺う。
 六人のハンターはそれぞれ役を演じながら、眼を光らせる――。

 そしてパーティーの空気は、徐々に変わっていく。

 最初の異変に気付いたのは、次の手品披露場所へ移動していたカズマだ。
(うん? あの三十代ぐらいの貴族風の男、眼つきがタダ者じゃねーな)
 姿形は違和感がないものの、様々な戦いを経験してきたカズマの眼には、男の鋭い眼つきがただの貴族ではないように映る。
 すると男は、金持ち風の恰幅の良い中年男性へ静かに近付いていく。その視線の先には、中年男性が指につけている大きなダイヤモンドリングがあった。
(アクティブスキルの瞬脚を使って、スるつもりかよ!)
 素早く移動しながらリングを盗もうとする男へ向けて、カズマは前のめりに倒れ込む。
「おわっと! つまずいてしまったぁ!」
 わざと大きな声を上げながら倒れたカズマの両手から、アクティブスキルのスローイングを発動させたスローイングカードが男へ向かって飛んで行く。
 男は咄嗟に、アクティブスキルのドッジダッシュを使って避ける。しかしそれで自分が覚醒者であることを自らばらしてしまったことに気付き、悔しそうに舌打ちをしながら大ホールから出て行った。
(まずは一人……。とりあえず出て行ったのなら、良しとするか)
「おいおい、大丈夫かよ?」
 転んだカズマに手を差し出しのは、シャガだ。既にカズマが投げたスローイングカードを全て回収して、もう片方の手で持っている。
「申し訳ありません……。疲れが出たようなので、少々休んできますね」
 シャガの手を借りながら立ち上がったカズマはスローイングカードを受け取ると、着替える為に一旦大ホールから出て行った。
(俺もそろそろ動くか。アクティブスキルの野生の瞳を使ってりゃあ、近付いて来たヤツの一人や二人はとッ捕まえられるしな)
 静かに野生の瞳を発動させながら、シャガは腰に差していたローゼンメッサーを大事そうに両手で持ち上げる。
「見てください、この美しい短剣をっ! 金に糸目はつけずに、特別に刀匠に作らせたものなんですよ!」
 大きな声で短剣自慢を語った後、わざと緩く腰に差す。
 そして歩き出すと、斜め後ろから二十代ぐらいの一般市民風の男が近付いて来るのが見えた。
(ヤレヤレ……。ニンジンで馬を釣っているようなモンだな)
 ニンジンならぬ短剣を腰に差して、馬ならぬ潜入者を引き寄せたシャガは声なくため息を吐く。
 それとなく人気の少ない壁際に移動すると、男はアクティブスキルの隠の徒を発動させた。そして静かに流れるような動作で、シャガの短剣へと手を伸ばしたが……。
「おっと、あぶねぇ」
 触れる寸前で、シャガに手首をガシッと掴まれる。
「よろけるほど酒を飲んだのか? だったら夜風に当たってその頭、冷やしてくると良いぜ」
 顔では穏やかな笑みを浮かべながらも、男の手首を掴む力は強い。
 震え上がった男を見て、シャガは手首を解放する。自由の身となった男は背を向けると、慌てて大ホールから出て行った。
(さぁて、と。敵が同じ覚醒者なら、今の行動で俺からは盗みにくいと判断しただろうな。となれば、こっちから探りを入れてみるか)
 壁に寄りかかりながらシャガは眼を閉じて、アクティブスキルの超聴覚と超嗅覚を発動させる。
(それぞれ一分間限定のアクティブスキルだが、一人でも怪しいヤツを見っけなきゃな)
 聴覚が鋭くなったシャガの耳に、数人の中年男性のうるさい笑い声が届く。
(アッチだな。……にしても、酒クセー)
 騒ぎの現場へ近付くにつれて、酒臭さも鼻に届いてくる。
 どうやら、貴族の酔っ払い達が騒ぎ出したようだ。
(コイツらが潜入者なのか、ただの迷惑客なのか、見分けがつかねーよ)
 しかし周囲の人々が引きはじめているので、シャガは特設カクテル制作コーナーにいるステラへ視線を向けて、ニッコリ微笑みながら顔の横で軽く手を振って見せる。
 ステラは応えるように微笑み返し、特製カクテルを作って銀のトレーにのせて、シャガがいる所まで歩いて来た。
「お客様方、こちらのオリジナルカクテルはいかがでしょうか?」
 浴びるように酒を飲み続けていた男達は、魅力的なステラが勧めるカクテルを喜んで飲み干す。
 すると一瞬の間の後、男達は床に倒れて寝息を立て始めた。
「おや、お客様方、どうされました? ……ああ、眠いのですね。それでは休憩室までお運びいたします」
 ウィクトーリア家の男性使用人達が担架で酔っ払い達を運んでいく光景を見て、シャガはステラが作ったオリジナルカクテルの威力を知る。
 ステラは酔っ払い達が使ったグラスを片付けていたものの、ふと眠っている男の一人に近付く女の子に気付いた。
 十代後半の若い貴族風の女の子が無表情で、男の財布が入っているスーツの内ポケットに手を伸ばそうとしている。
 傍から見れば心配そうに男の様子を窺っているように見えるが、その動きは素人とは言い辛い。
 ステラはアクティブスキルの隠の徒を発動させながら女の子へ近付き、細い両肩にそっと両手を置く。
「ご心配であれば僕と一緒に、彼らが運ばれる休憩室まで行きましょうか?」
 スリを止められた女の子は振り返ってステラの顔を見ると全てを察したようで、諦めたようにため息を吐きながら頷いた。
 酔っ払い達の騒ぎがおさまりつつある頃、静刃はとある男女を見て立ち止まる。
 共に二十代ほどの貴族らしき二人は意気投合しているようで会話が弾み、身体の密着度が高い。
 しかし男は女性の肩に手を回しながらも、その首にかかっている大きなエメラルドのネックレスの留め具を外そうとしていた。
(アラアラ、手癖の悪い殿方ですね)
 静刃は持っていたワインを一気に飲み干すとフラフラしながら歩きだして、例の男にわざとぶつかる。
「あら、ごめんなさい。普段はあまりお酒は飲まないんですけど、つい一杯だけ飲んでしまいまして……」
 男に寄りかかりながら照れ臭そうに微笑んで見せると、男はだらしなく鼻の下を伸ばす。
 するとそんな男の態度を見て気分を悪くした女性は、怒りながら離れて行く。
(女性の好感度が下がってしまうのはしょうがないですけど、コレもお仕事です)
 静刃がうんざりしていると、不意に一人の女性が男にぶつかってきた。
「まあ、すみません。少しよろけてしまいました」
 その女性は、ワイングラスを持ったセレナだ。隠の徒を発動させながら男へ近付き、ワインはぶつかった時にセレナの露わになっている胸元にかかって濡れた。
 男がセレナの胸元に熱視線を向けている間に、ステラが慌てた様子で駆け寄って来る。
「おや、大変ですね! 休憩室へどうぞ。後で代わりのお飲み物をお運びいたします」
 ステラの案内で、三人は大ホールを出て休憩室へ向かう。
 そしてステラは先程酔っ払い達に飲ませた物と同じオリジナルカクテルを作って、休憩室へ運んだ。
 ――数分後、休憩室から出て来たのは静刃・セレナ・ステラだけだった。
 三人が大ホールへ戻る頃、スーツに着替えたカズマも戻って来る。
 一般民に扮したカズマは、自然な動きでヴィスと合流した。
「おや、カズマの旦那。せっかくの着ぐるみ、脱いでしまったのか? 後で抱き着こうかと思っていたのに」
「勘弁してくれ。アレはあくまで仕事用だ」
 二人は営業スマイルを浮かべながらも、小声でいつもの口調で会話をする。
「ふふっ。仕事用の演技とは言え、戦車のはドラ息子ぶりが板についているし、静刃は美しいご令嬢になっている。月のは美貌の貴族の女性に、星のはイケメン使用人役が合っているな。なかなか楽しめる依頼だぜ」
 話をしながらもヴィスは隠し持っていた鉄扇を取り出して、老夫婦へ向かって飛んでくるブランデー入りのグラスを叩いて弾く。
「きゃあっ、すみません! 少々暑かったので鉄扇で扇ごうとしましたら、ぶつけてしまいました」
 床に散らばったグラスの破片はウィクトーリア家の使用人が片付けることになり、老夫婦とヴィスは別の場所へ移動する。
「申し訳ありません、旦那様、奥様。あちらへ行きましょう」
 ヴィスに促されるまま歩いて行く老夫婦を見送った後、カズマは料理が置いてある長テーブルへ向かう。
 そこには多種多様の酒とグラスも置かれており、数人の客がいた。
 その中で、カズマは二十代ぐらいのメイド服を着た女性に眼をつける。
 彼女が二枚の皿の料理に、袖から出した白い紙包みの中の白い粉をかけようとしたからだ。
(ヤバいな)
 カズマは素早く近付き、メイドの肩を軽く叩く。
「美味しそうな料理だな。俺の分をくれるか?」
 突然のカズマの行動にメイドが驚いている隙に、一般スキルの手品を応用して紙包みを奪う。
 薬を奪われたことに気付いたメイドは、慌ててカズマから逃げようとした。
 が、それよりも早くカズマはスローイングカードを内ポケットから取り出すと、アクティブスキルの飛燕を発動させて彼女の首元に当てる。
「せっかくの引っ越し歓迎パーティーに、無駄な騒ぎは起こしたくないんだ。俺と一緒に来てくれるな?」
 ガックリと肩を落としたメイドの後姿を見て、カズマは内心でホッとした。
 その後も細々とした出来事をハンター達は全て解決していき、パーティーは無事に終了する。


 ――数日後、詐欺の疑いで例の商売人が捕まったことを、ハンター達は知った。


<終わり>

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重体一覧

参加者一覧

  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマ(ka0178
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 《戦車》の誇りを抱く者
    シャガ=VII(ka2292
    人間(紅)|22才|男性|霊闘士
  • 二つの顔を持つ女エルフ
    ヴィス=XV(ka2326
    エルフ|18才|女性|疾影士
  • 運命に抗う女教皇
    静刃=II(ka2921
    人間(紅)|18才|女性|闘狩人
  • 灰かぶり姫
    セレナ=XVIII(ka3686
    人間(紅)|20才|女性|疾影士
  • 星かげのステラ
    ステラ=XVII(ka3687
    人間(紅)|22才|女性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/04/26 23:20:37
アイコン 暗躍阻止
龍崎・カズマ(ka0178
人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2016/05/02 21:40:24