ゲスト
(ka0000)
【龍奏】少年、北の地で右往左往する
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/05/02 07:30
- 完成日
- 2016/05/08 20:03
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●ゴロゴロ
グラズヘイム王国の片隅でプエル(kz0127)はベッドの上でごろごろしていた。手には手紙を持っており、読み終わった瞬間飛び起きた。
「うわああ、大変だ! 大変だよ! 見てよ、ね、これすごいよ! これがあれば、僕もレチタティーヴォ様のようになれるのかもしれない!」
プエルはレチタティーヴォを模したような三頭身の手作りらしい人形に手紙を見せる。ボタンの目の持ち主はただの人形であり、プエルの言っていることを理解したり、返事をしたりすることもない。
「あー、でも、パタリンがいないからなぁ」
ため息を漏らす。それでも戻って来次第出かけられるように準備をした。服を着替え、武器を用意する。それと肩掛け鞄に人間でも拾ったらあげるつもりなのか、菓子や水を入れていた。
「ここにおまえも入るね」
鞄の中に人形が入るスペースを確保した。
「パタリン、まだかなぁ」
外で大きな音がしたため、プエルは荷物にレチタティーヴォ人形を詰め込み、外に出た。
「あれ? パタリン、おまえだけが戻ってきたの?」
ワイバーンのパタリンは特に答えない。プエルの部下であり友という嫉妬の歪虚であるエクエスがパタリンに乗ってでかけたのだった。
違和感がわく、エクエスがパタリンだけを返す理由がないから。プエルはじっとパタリンを見てから首を横に振った、悪い考えは吹き飛ばすように。
「……エクエスが一緒じゃないなら……書き置きしていけばいいよね! 僕、エクエス思い!」
出かけてくる旨をプエルは紙に書いて机の上に置いた。パタリンの背中にある鞍によじ登ると、北に進路をとった。
●コロコロ
「ふえええ」
星の傷跡と呼ばれる渓谷の隅っこで、プエルは下層に運よく近くまで来られたが、強欲の軍勢がいるために近付けず、プエルはいじけた。
プエルはお願いをしたのだが、相手は拒絶した。攻撃を受けそうだったため、プエルは半べそで撤退している。それでもここを離れないのはマテリアルがほしい一心だ。
ワイバーンのパタリンを歩かせて、洞窟をとぼとぼと歩く。パタリンは時々プエルの髪の毛をつついて遊んでいる。
「……けちっ! 僕がマテリアル、食べたってそんなに減らなそうなのにっ!」
それとは別にプエルは先ほど見た光景を思い出して震える。
「うにょうにょした奴は僕、嫌いだなぁ」
巨大なミミズのようなのが数匹いたから。何か思い出しそうで考えるが気持ち悪さがおそう。
「そうだよねぇ……僕がちょっと通れればいいのに……はあ……マテリアル欲しいなあ……こういうときどうすればいいんだろう。レチタティーヴォ様がいればいい知恵くれるんだろうなぁ、ふええ」
答えは見つからない。パタリンに寄りかかり休憩をしつつ、お茶を飲む。近くに落ちている石はマテリアルを感じさせるので鞄に拾って入れた。ただ、目の前にもっといっぱいありそうなのでため息が漏れる。
「ん? あれええ?」
プエルは人が来るような音を耳にした。パタリンによじ登り視線を高くした。人間の姿が遠くに見える。
「……ん? うふふっ! 決めたそうだよ! 人間にあいつらを蹴散らしてもらえばいいんだよ!」
そこまでの手段を考えないといけない。
うんうんとうなって短時間で考える。
「よしっ! 手紙書こう」
プエルは鞄からレターセットを取り出した。
手紙を書くと青いマントについているフードを目深にかぶってハンターたちがいる方向にむかったのだった。
●ハンターとの接触
プエルがひょこりと現れるとハンターは一斉に武器を向ける。
(こいつらを倒せばマテリアル入る? ううん、それじゃ、ここまで来た意味がないよ!)
プエルはごくりと生唾を飲み込む。歪虚だとここでばれると面倒なことになる。
「あのね……ハンターさん?」
ハンターが異常に警戒しているのは、こんなところに人間の子供がいるわけがないのだから。人間がいるとすれば彼らと同じハンターで、この洞窟を先行しているメンバーであるということになる。
ただし、ここにいるハンターたちは自分たちがこの洞窟を進んできた最初のメンバーだと認識している。別のところとつながっており、本当に用があって一人来たかもしれないということ。
ここに来ているハンターの任務は偵察であり、状況によっては敵を打ち払う必要がある。
「こ、これ、先に行った人が渡して言ったの」
プエルは手紙を差し出す、人間の少年だと自分を言い聞かせて。
ハンターが受け取ったのはきれいな羊皮紙の封筒だ。封はされていない。
――この先に強欲の軍勢がいる。その先に、マテリアルの宝庫がある。
大人びた流麗な筆跡だ。
「僕、渡したからね!」
急いでプエルは引き返す。
ハンターたちは追いかける準備をする。敵の情報もあり内容は人類側に有利であるが、罠の可能性もある。
だから、プエルを泳がす。
強欲に使われている人形の歪虚かもしれないのだから。
追いかけたハンターたちは情報が正しいと知った。
それに加え、不自然な見物人の姿もあった。柱の陰に一体のワイバーンと先ほどの青いフードの子どもが見え隠れしているのだった。
グラズヘイム王国の片隅でプエル(kz0127)はベッドの上でごろごろしていた。手には手紙を持っており、読み終わった瞬間飛び起きた。
「うわああ、大変だ! 大変だよ! 見てよ、ね、これすごいよ! これがあれば、僕もレチタティーヴォ様のようになれるのかもしれない!」
プエルはレチタティーヴォを模したような三頭身の手作りらしい人形に手紙を見せる。ボタンの目の持ち主はただの人形であり、プエルの言っていることを理解したり、返事をしたりすることもない。
「あー、でも、パタリンがいないからなぁ」
ため息を漏らす。それでも戻って来次第出かけられるように準備をした。服を着替え、武器を用意する。それと肩掛け鞄に人間でも拾ったらあげるつもりなのか、菓子や水を入れていた。
「ここにおまえも入るね」
鞄の中に人形が入るスペースを確保した。
「パタリン、まだかなぁ」
外で大きな音がしたため、プエルは荷物にレチタティーヴォ人形を詰め込み、外に出た。
「あれ? パタリン、おまえだけが戻ってきたの?」
ワイバーンのパタリンは特に答えない。プエルの部下であり友という嫉妬の歪虚であるエクエスがパタリンに乗ってでかけたのだった。
違和感がわく、エクエスがパタリンだけを返す理由がないから。プエルはじっとパタリンを見てから首を横に振った、悪い考えは吹き飛ばすように。
「……エクエスが一緒じゃないなら……書き置きしていけばいいよね! 僕、エクエス思い!」
出かけてくる旨をプエルは紙に書いて机の上に置いた。パタリンの背中にある鞍によじ登ると、北に進路をとった。
●コロコロ
「ふえええ」
星の傷跡と呼ばれる渓谷の隅っこで、プエルは下層に運よく近くまで来られたが、強欲の軍勢がいるために近付けず、プエルはいじけた。
プエルはお願いをしたのだが、相手は拒絶した。攻撃を受けそうだったため、プエルは半べそで撤退している。それでもここを離れないのはマテリアルがほしい一心だ。
ワイバーンのパタリンを歩かせて、洞窟をとぼとぼと歩く。パタリンは時々プエルの髪の毛をつついて遊んでいる。
「……けちっ! 僕がマテリアル、食べたってそんなに減らなそうなのにっ!」
それとは別にプエルは先ほど見た光景を思い出して震える。
「うにょうにょした奴は僕、嫌いだなぁ」
巨大なミミズのようなのが数匹いたから。何か思い出しそうで考えるが気持ち悪さがおそう。
「そうだよねぇ……僕がちょっと通れればいいのに……はあ……マテリアル欲しいなあ……こういうときどうすればいいんだろう。レチタティーヴォ様がいればいい知恵くれるんだろうなぁ、ふええ」
答えは見つからない。パタリンに寄りかかり休憩をしつつ、お茶を飲む。近くに落ちている石はマテリアルを感じさせるので鞄に拾って入れた。ただ、目の前にもっといっぱいありそうなのでため息が漏れる。
「ん? あれええ?」
プエルは人が来るような音を耳にした。パタリンによじ登り視線を高くした。人間の姿が遠くに見える。
「……ん? うふふっ! 決めたそうだよ! 人間にあいつらを蹴散らしてもらえばいいんだよ!」
そこまでの手段を考えないといけない。
うんうんとうなって短時間で考える。
「よしっ! 手紙書こう」
プエルは鞄からレターセットを取り出した。
手紙を書くと青いマントについているフードを目深にかぶってハンターたちがいる方向にむかったのだった。
●ハンターとの接触
プエルがひょこりと現れるとハンターは一斉に武器を向ける。
(こいつらを倒せばマテリアル入る? ううん、それじゃ、ここまで来た意味がないよ!)
プエルはごくりと生唾を飲み込む。歪虚だとここでばれると面倒なことになる。
「あのね……ハンターさん?」
ハンターが異常に警戒しているのは、こんなところに人間の子供がいるわけがないのだから。人間がいるとすれば彼らと同じハンターで、この洞窟を先行しているメンバーであるということになる。
ただし、ここにいるハンターたちは自分たちがこの洞窟を進んできた最初のメンバーだと認識している。別のところとつながっており、本当に用があって一人来たかもしれないということ。
ここに来ているハンターの任務は偵察であり、状況によっては敵を打ち払う必要がある。
「こ、これ、先に行った人が渡して言ったの」
プエルは手紙を差し出す、人間の少年だと自分を言い聞かせて。
ハンターが受け取ったのはきれいな羊皮紙の封筒だ。封はされていない。
――この先に強欲の軍勢がいる。その先に、マテリアルの宝庫がある。
大人びた流麗な筆跡だ。
「僕、渡したからね!」
急いでプエルは引き返す。
ハンターたちは追いかける準備をする。敵の情報もあり内容は人類側に有利であるが、罠の可能性もある。
だから、プエルを泳がす。
強欲に使われている人形の歪虚かもしれないのだから。
追いかけたハンターたちは情報が正しいと知った。
それに加え、不自然な見物人の姿もあった。柱の陰に一体のワイバーンと先ほどの青いフードの子どもが見え隠れしているのだった。
リプレイ本文
●隠れてる?
手紙を渡して走り去った少年を追ったハンター。岩陰から洞窟の広くなっているところを見る。突き当りには強欲の軍勢と思われる影があり、中間の岩場に先ほどの少年とワイバーンがいる。
「あいつは例の子供か。しかし、なぜあんなところに隠れる必要がある? しかも一緒にいるあのデカ物は何だ?」
不動シオン(ka5395)は隠れているつもりらしい少年を見て眉をひそめる。
「……あァ? 全然隠れてねェじゃねェか……龍をつれているってこたァアイツも妖怪のたぐい、か」
万歳丸(ka5665)がワイバーンの陰に見える先ほどの影を眺める。
「……やっぱりさっきの子はあの少年ですよね」
ミオレスカ(ka3496)はあきれるような、不安そうな声でつぶやく。ワイバーンは隠れることもなくはっきりと姿をさらしているため、コンビが何かわかった。
「あれで正体がバレてないと思っているのか……。それも含めて演技ならすごいんだろうが、違うだろうな」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)からなんともいえないため息が漏れる。
「また……といっていいのだろうか。そろそろ、どうにかしておきたいところだが」
ロニ・カルディス(ka0551)はその先を見て、巨大な影に眉を寄せる。
「歪虚は全滅よ! すべて浄化するのよ!」
セリス・アルマーズ(ka1079)が武器を構えて突撃準備をしている。
「確かにその通りだ。……プエルは漁夫の利を狙っているみたいだからうまく立ち回らないとな」
柊 真司(ka0705)はうなずく。
「あの子供モドキが丁寧に情報を詰めて手紙を渡す利点は何だ? マテリアルほしさか? 猿芝居もいいところだ」
クリスティン・ガフ(ka1090)は考え込む。
敵に気づかれていないハンターたちは状況から方針を立てる。まずは強欲の軍勢を打ち払うこと、途中プエルを注意することだった。
「歪虚と会話なんて無意味だけど、交渉に関してはかまわない。わかった、隠れているつもりのは後回しね」
セリスは剣の柄を握る。
「はい……でも、強欲側からは隠れているのかもしれません」
ミオレスカが指摘するように岩の状況を見るとそのようだ。
「……なめられたもんだな」
真司のため息交じりにつぶやきに、仲間の首肯が見えた。
●激突
ハンターは素早く近寄る。
強欲の軍勢も近づいてくる。一部は洞窟を突破させないように防御を固めていく。
「水系は効かないかもしれませんが」
巨大ミミズにミオレスカの【レイターコールドショット】がたたき込まれる。冷気がそれを包み、行動を阻害するはずだ。
「まずは頭数を減らせねぇとなっ!」
真司はリザードマンに【ファイアスローワー】を放つ。三体が炎に巻き込まれ倒れる。
「歪虚滅ぶべし、慈悲はないっ!」
「まだまとまっているうちに対処してしまおう」
敵をぬって前に出たセリスとロニが【セイクリッドフラッシュ】を発動させる。
「まとめて蹴散らして進ませてもらうぜ」
レイオスは強欲の歪虚に向かってなぎ払いを使う。回避はされなかったが、固いという手応えが伝わる。
「ミミズは任せろ」
クリスティンが動きの鈍っている巨大ミミズに攻撃を仕掛ける。これが前に行った仲間に向かえば、挟み撃ちを許すこととなってしまう。
「ミミズの体液は不穏だな」
シオンはプエルの動きを気にしつつ、巨大ミミズに銃撃をする。
「数の上では不利なのは承知。それをひっくり返してこそ漢の花道よッ! 【黄金掌《蒼麒麟》】」
万歳丸が放った気は青い燐光を引く麒麟となって駆け抜け、ミミズと強欲の歪虚を巻き込んだ。
強欲の軍勢の攻撃は前に出た者に集中する。
「こっちに来るのか」
ロニに向かうのは巨大ミミズと強欲の歪虚一体。巨大ミミズはロニに巻き付いてきたが、逃げることはできた。
一方、クリスティンが対峙している巨大ミミズは何かはき出した。彼女は回避したが、地面がジュッという音を立てた。
「体の周りは溶けてねェみてェだな」
万歳丸はクリスティンの武器を見て判断した、巨大ミミズのねっとりとした皮膚に関して。
岩の陰にいるプエルはフードの下で微笑む。
プエルは前の岩場に走って行く、隙をみて奥に進むために。
ドドド……。
ワイバーンのパタリンが一緒に走ってついてきたため、プエルは驚く。
「か、隠れていてほしいんだけど」
パタリンは小首をかしげただけだった。
「皆さん、注意してください」
ミオレスカは一応プエルの動きに関して注意を促すが、必要ない気がした。そのまま巨大ミミズに攻撃を仕掛ける。
「ロニ君っ!」
「やばいっ」
他のハンターが近づけない間に、再びロニはミミズに巻き取られていた。今回は避けられず、身動きが取れてない。セリスが声をかけ、真司が【デルタレイ】を放つ。
「セリス、あっちに行けるか」
「こいつが倒すのも重要」
レイオスはセリスに言うが、身動きできないのは同じだ。
真司が接敵されていない。
「さっさと倒れろ!」
クリスティンは巨大ミミズに技をたたき込む。救援に行くとしてもこれを放置すれば更なる危機が訪れる。
「銃よりこちらの方が効果的だな」
シオンは武器を変えて近接でマテリアルを込めた技で挑む。手応えは十分あった。
「いい加減に、倒れろ。覇亜亜亜亜ッ!」
万歳丸は再び気を放つ。
「やりましたっ! 前のミミズや歪虚に向かいましょう」
ミオレスカは声をかける。ちらりとプエルを見るが、まだ止まっていた。
クリスティンとシオン、万歳丸がロニに巻き付いている巨大ミミズと近くにいる強欲の歪虚に向かう。
「すまない」
ロニは自力で脱出をしたが、仲間と入れ替わりに後退する。そして、ヒーリングスフィアを掛ける。
「こっちも掛けとくね」
セリスもロニにヒールを掛けた。
ハンターたちの陣形が機能し始める。前に出てきているミミズと強欲の歪虚を集中的に狙い、遠距離攻撃できる者がリザードマン等の奥にいるものを狙う。
「……それにしても固いな……」
レイオスは攻撃を当てているが、効果的な攻撃ができていないために焦りそうになる。
強欲の歪虚一体とリザードマン一体になるまで、時間はかからなかった。
「うにょうにょがいなくなった。いいかい、パタリンはここで待っているんだよ?」
プエルが手薄になってきた部分を見いだし、岩から岩の陰へささっと走って行く。
ワイバーンが走ってついていく。
プエルは説得をあきらめた。
●すり抜け禁止
強欲の歪虚とリザードマンが何かしゃべる。何か指示を出しているような雰囲気だ。
強欲の歪虚は目の前にいるレイオスとセリスをなぎ払い、リザードマンは奧へ走る。
「応援を呼ぶのか?」
「させるか」
クリスティンとシオンが追った。
この隙に奥に向かってプエルが走る。
「よォ坊主、この先に行かせねェぜ」
万歳丸が割って入った。
プエルは止まって一歩後退し、大剣に手を伸ばす。
「邪魔をするな。余は奥に行かないと行けないんだ!」
「どうして行かないとならねェんだァ?」
「うー……極秘だよ!」
理由を言えばハンターは通してくれないだろうとプエルは考えるが、嘘の理由も思いつかない。
「だからどうしてだと聞いている」
「……うー、あっ! 余は鬼の角を触ったんだ」
「……はァ?」
「どうして角は固んだ?」
「知らねェ」
万歳丸はプエルとのらりくらり会話をする羽目になったが、仲間が強欲勢を倒す間の時間稼ぎにはなった。
プエルは隙を突いて進むつもりだったため、慌てて走り出そうとしたが、その前を銃弾がえぐった。
ミオレスカが銃を構えている。
「おい、プエル。味方の情報を売ってまで奧に行きたいのはわからなくもないが、さすがにそうはうまく行かせねぇよ」
真司はマシンガンをパタリンにあわせ、奧に続く道に立ちふさがる。
プエルは答えない。
「……なあ、手紙渡す相手少し見ろよ……。声でバレバレだぜ」
レイオスがあきれてしゃべる。マシンガンはワイバーンに向けてある、逃げる時の足になるだろうから。
プエルはフードを跳ね上げ、むっとした不機嫌な顔をさらす。
「歪虚は滅する……交渉するならして。私の前に歪虚がいるなんて信じたくないから」
セリスがプエルを視線で殺せそうなほどにらむ。
「なんで岩場に隠れていたのか? その龍はなんだ? 目的は何だ?」
シオンの素朴な質問にプエルは「多いよ内容」と怒るが律儀に答える。
「あいつらけちだし。それに余はお前たちと戦うために来たわけじゃないから、とばっちりは受けたくなかったんだ。んー、パタリンは野良ワイバーンかなぁ? 余が出かけたいなぁと思ったら来たけど。目的……奧に行くこと」
「奧に何がある」
「……ふふっ、余がレチタティーヴォ様みたいになれるような力の源! はい、余は答えてあげたよ。通してくれる?」
プエルは無邪気に尋ねるが、誰も答えない。
「で、戦場で結構こっちは隙間があったのに、なぜ通らなかった?」
クリスティンの言葉に、プエルはきょとんとした。
「だって、大きなにょろっとしたのがいたじゃないか」
「お前は強いと聞くから倒せばいいじゃないか」
「……にょろ、だよ?」
プエルは体を震わせ、心底嫌そうな顔をしている。
クリスティンはプエルの様子を観察して眉をひそめる。歪虚としてのプエルに違和感を覚えていた。
「お前……何に嫉妬しているのか?」
「え?」
「嫉妬の外見をしているくせに、振る舞いは傲慢のよう。剣も使えれば魔法も使える……矛盾を抱えて何を目指す?」
クリスティンに突きつけられた言葉に、プエルは目を見開く。
「……余のことを弱いからと見下す奴がいるからだ! 頑張れば、レチタティーヴォ様のためになるし、レチタティーヴォ様のおそばにいられたんだよ! 余がどれだけうらやましがっているか知らないくせに! レチタティーヴォ様みたいになれば、他者から嫉妬はされるけど嫉妬しなくていいんでしょ? それに、レチタティーヴォ様に褒めてもらえて、撫でてもらったりぎゅってしてもらえたかもしれないんだよ! それなのに人間が……。余は、レチタティーヴォ様みたいにかっこいい演出家になりたいんだ!」
「つまり、力がほしいのか?」
「……必要だもの!」
プエルはクリスティンをにらみつける。
「後釜に座りたいお前はレチタティーなんとか野郎としていた演目を知っているな? もし、教えてくれるなら、通すのも考えてもいいぜ」
レイオスは情報を引き出したかった。
「ご褒美っているだろう? お前は頑張ってやっているのに、エクエスなんて辺境や帝国で女の尻を追って遊んでいたんだぜ?」
プエルの相方であるエクエスは、先日レイオスやミオレスカが討伐に関わり、無に帰したため嘘である。
気になる点が二つあり、一つはエクエスが消える直前に漏らした「プエルが演目である」ということ。もう一つが、一度見せた不安定な状況。下手をすれば巻き込まれる危険であるが、情報も欲しい。
情報と危険の天秤が揺れる。
プエルは驚いたという顔をしてレイオスに近付こうとした。
「……ねえ、何それ! 人間……レチタティーヴォ様の演目? 僕、知らないよ? お前、ひょっとして、レチタティーヴォ様とお話ししていたの?」
「……ああ、知ってる」
「えええ! ぼ、僕聞いてないよ? うらやましい、うらやましいよぉ! お前を殺して……」
プエルの周りでマテリアルが動き始める。
ハンターは一斉に攻撃態勢になる。ワイバーンに注意し、プエルを逃がさない、奧に行かせない布陣は敷いた。
「あ、でも殺したら話聞けない……」
プエルはけろりと言った。
「ねね、教えて、教えてよ!」
レイオスの服をつかんで揺する。
「……」
レイオスはミオレスカに意見を求めるように見た。
「あの、エクエスは女の子を誘拐したりひどかったんです」
ミオレスカのどの奥が緊張からからからになっていく、どこまで嘘をつくか情報を得るために告げるか。
「え?」
「イノアさんという方に」
「……誰それ?」
プエルは首を傾げる。
「……覚えていない?」
プエルがもともと人間であった場合、イノア・クリシスという少女の兄だった可能性があったのだ。
「覚えて? ……まさか、余のことを知っているの? 余がレチタティーヴォ様に助けてもらった時のことを? ……余にひどいことをした人間?」
「待ってください。最近のことしか知りません」
「……余は奥に行っていい? あいつら、異変を感じてくるかもしれないし、ちょっと行って帰ってくるだけだから」
プエルはそわそわする。
「行かせる訳にはいかねぇぞ」
「そうよ、【ホーリーライト】」
真司とセリスが素早く動いた。
会話は終わったのだ。
「足止め……ならば」
ロニの【レクイエム】が響く。
プエルは回避するが、攻撃に備えている万歳丸に近くなる。
プエルは剣を抜くか魔法を使うか逡巡した、戦場では命取りの思考であるが。
ワイバーンは羽ばたいた。風圧が起こり、ハンターは飛ばされそうになる。
マシンガン、銃、魔法などがそれに向かう。ワイバーンはプエルを器用にしっぽに引っかけ、そのまま奧に飛んでいった。
●音
ハンターは追う。
ただし、深追いをすると強欲の新たな軍勢が来た場合、危険だ。
「マテリアル……でしょうか。濃密な」
奧に行けば行くほど、気圧されるような物を感じミオレスカは大きく息を吐く。
「どこまで行ったんだ、子供モドキ」
「ワイバーンが負傷している状態だ、そう遠くまでは」
クリスティンにシオンは返答する。先ほど銃撃や魔法が当たっている。
「何か来る音がする」
レイオスは分かれ道で片方を指さす。その先もいくつか枝分かれしているようだが、敵の数によっては挟み撃ちされる可能性もある。
「……引き返した方がいいかもしれないな。俺たちだけでやるには敵が多そうだ」
ロニの表情にどこか疲れが見える。
「目の前に歪虚がいるかもしれないところで退くの……」
セリスから血を吐くような声が漏れる。
「冷静に対処すればどうにかなるなら止めないが」
「動きを止めてまとめてたたければ……て考えるけど無謀。でも、あの隠れていた奴だって、そっちに行ったらただで済まないよね?」
「確かに」
セリスと真司は音がする方を眺める。セリスはあきらめるが、闘志は消えない。
「行こうぜ。巻き込まれる前に立てなおせねェと。ん? あれはあの坊主……」
万歳丸はきびすを返す直前、ワイバーンがかろうじて飛んでいるのが見たのだった。それは脇道に入っていく。
「運が強いというのでしょうか」
ミオレスカはつぶやく、ワイバーンの手綱にぶら下がるプエルが見えたから。
「結局……プエル、何も知らないのか」
レイオスは消えていった影を追いつつ、強欲の新たな影に急いで踵を返した。
そして、無事に人類軍が拠点としているところまで戻った。
手紙を渡して走り去った少年を追ったハンター。岩陰から洞窟の広くなっているところを見る。突き当りには強欲の軍勢と思われる影があり、中間の岩場に先ほどの少年とワイバーンがいる。
「あいつは例の子供か。しかし、なぜあんなところに隠れる必要がある? しかも一緒にいるあのデカ物は何だ?」
不動シオン(ka5395)は隠れているつもりらしい少年を見て眉をひそめる。
「……あァ? 全然隠れてねェじゃねェか……龍をつれているってこたァアイツも妖怪のたぐい、か」
万歳丸(ka5665)がワイバーンの陰に見える先ほどの影を眺める。
「……やっぱりさっきの子はあの少年ですよね」
ミオレスカ(ka3496)はあきれるような、不安そうな声でつぶやく。ワイバーンは隠れることもなくはっきりと姿をさらしているため、コンビが何かわかった。
「あれで正体がバレてないと思っているのか……。それも含めて演技ならすごいんだろうが、違うだろうな」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)からなんともいえないため息が漏れる。
「また……といっていいのだろうか。そろそろ、どうにかしておきたいところだが」
ロニ・カルディス(ka0551)はその先を見て、巨大な影に眉を寄せる。
「歪虚は全滅よ! すべて浄化するのよ!」
セリス・アルマーズ(ka1079)が武器を構えて突撃準備をしている。
「確かにその通りだ。……プエルは漁夫の利を狙っているみたいだからうまく立ち回らないとな」
柊 真司(ka0705)はうなずく。
「あの子供モドキが丁寧に情報を詰めて手紙を渡す利点は何だ? マテリアルほしさか? 猿芝居もいいところだ」
クリスティン・ガフ(ka1090)は考え込む。
敵に気づかれていないハンターたちは状況から方針を立てる。まずは強欲の軍勢を打ち払うこと、途中プエルを注意することだった。
「歪虚と会話なんて無意味だけど、交渉に関してはかまわない。わかった、隠れているつもりのは後回しね」
セリスは剣の柄を握る。
「はい……でも、強欲側からは隠れているのかもしれません」
ミオレスカが指摘するように岩の状況を見るとそのようだ。
「……なめられたもんだな」
真司のため息交じりにつぶやきに、仲間の首肯が見えた。
●激突
ハンターは素早く近寄る。
強欲の軍勢も近づいてくる。一部は洞窟を突破させないように防御を固めていく。
「水系は効かないかもしれませんが」
巨大ミミズにミオレスカの【レイターコールドショット】がたたき込まれる。冷気がそれを包み、行動を阻害するはずだ。
「まずは頭数を減らせねぇとなっ!」
真司はリザードマンに【ファイアスローワー】を放つ。三体が炎に巻き込まれ倒れる。
「歪虚滅ぶべし、慈悲はないっ!」
「まだまとまっているうちに対処してしまおう」
敵をぬって前に出たセリスとロニが【セイクリッドフラッシュ】を発動させる。
「まとめて蹴散らして進ませてもらうぜ」
レイオスは強欲の歪虚に向かってなぎ払いを使う。回避はされなかったが、固いという手応えが伝わる。
「ミミズは任せろ」
クリスティンが動きの鈍っている巨大ミミズに攻撃を仕掛ける。これが前に行った仲間に向かえば、挟み撃ちを許すこととなってしまう。
「ミミズの体液は不穏だな」
シオンはプエルの動きを気にしつつ、巨大ミミズに銃撃をする。
「数の上では不利なのは承知。それをひっくり返してこそ漢の花道よッ! 【黄金掌《蒼麒麟》】」
万歳丸が放った気は青い燐光を引く麒麟となって駆け抜け、ミミズと強欲の歪虚を巻き込んだ。
強欲の軍勢の攻撃は前に出た者に集中する。
「こっちに来るのか」
ロニに向かうのは巨大ミミズと強欲の歪虚一体。巨大ミミズはロニに巻き付いてきたが、逃げることはできた。
一方、クリスティンが対峙している巨大ミミズは何かはき出した。彼女は回避したが、地面がジュッという音を立てた。
「体の周りは溶けてねェみてェだな」
万歳丸はクリスティンの武器を見て判断した、巨大ミミズのねっとりとした皮膚に関して。
岩の陰にいるプエルはフードの下で微笑む。
プエルは前の岩場に走って行く、隙をみて奥に進むために。
ドドド……。
ワイバーンのパタリンが一緒に走ってついてきたため、プエルは驚く。
「か、隠れていてほしいんだけど」
パタリンは小首をかしげただけだった。
「皆さん、注意してください」
ミオレスカは一応プエルの動きに関して注意を促すが、必要ない気がした。そのまま巨大ミミズに攻撃を仕掛ける。
「ロニ君っ!」
「やばいっ」
他のハンターが近づけない間に、再びロニはミミズに巻き取られていた。今回は避けられず、身動きが取れてない。セリスが声をかけ、真司が【デルタレイ】を放つ。
「セリス、あっちに行けるか」
「こいつが倒すのも重要」
レイオスはセリスに言うが、身動きできないのは同じだ。
真司が接敵されていない。
「さっさと倒れろ!」
クリスティンは巨大ミミズに技をたたき込む。救援に行くとしてもこれを放置すれば更なる危機が訪れる。
「銃よりこちらの方が効果的だな」
シオンは武器を変えて近接でマテリアルを込めた技で挑む。手応えは十分あった。
「いい加減に、倒れろ。覇亜亜亜亜ッ!」
万歳丸は再び気を放つ。
「やりましたっ! 前のミミズや歪虚に向かいましょう」
ミオレスカは声をかける。ちらりとプエルを見るが、まだ止まっていた。
クリスティンとシオン、万歳丸がロニに巻き付いている巨大ミミズと近くにいる強欲の歪虚に向かう。
「すまない」
ロニは自力で脱出をしたが、仲間と入れ替わりに後退する。そして、ヒーリングスフィアを掛ける。
「こっちも掛けとくね」
セリスもロニにヒールを掛けた。
ハンターたちの陣形が機能し始める。前に出てきているミミズと強欲の歪虚を集中的に狙い、遠距離攻撃できる者がリザードマン等の奥にいるものを狙う。
「……それにしても固いな……」
レイオスは攻撃を当てているが、効果的な攻撃ができていないために焦りそうになる。
強欲の歪虚一体とリザードマン一体になるまで、時間はかからなかった。
「うにょうにょがいなくなった。いいかい、パタリンはここで待っているんだよ?」
プエルが手薄になってきた部分を見いだし、岩から岩の陰へささっと走って行く。
ワイバーンが走ってついていく。
プエルは説得をあきらめた。
●すり抜け禁止
強欲の歪虚とリザードマンが何かしゃべる。何か指示を出しているような雰囲気だ。
強欲の歪虚は目の前にいるレイオスとセリスをなぎ払い、リザードマンは奧へ走る。
「応援を呼ぶのか?」
「させるか」
クリスティンとシオンが追った。
この隙に奥に向かってプエルが走る。
「よォ坊主、この先に行かせねェぜ」
万歳丸が割って入った。
プエルは止まって一歩後退し、大剣に手を伸ばす。
「邪魔をするな。余は奥に行かないと行けないんだ!」
「どうして行かないとならねェんだァ?」
「うー……極秘だよ!」
理由を言えばハンターは通してくれないだろうとプエルは考えるが、嘘の理由も思いつかない。
「だからどうしてだと聞いている」
「……うー、あっ! 余は鬼の角を触ったんだ」
「……はァ?」
「どうして角は固んだ?」
「知らねェ」
万歳丸はプエルとのらりくらり会話をする羽目になったが、仲間が強欲勢を倒す間の時間稼ぎにはなった。
プエルは隙を突いて進むつもりだったため、慌てて走り出そうとしたが、その前を銃弾がえぐった。
ミオレスカが銃を構えている。
「おい、プエル。味方の情報を売ってまで奧に行きたいのはわからなくもないが、さすがにそうはうまく行かせねぇよ」
真司はマシンガンをパタリンにあわせ、奧に続く道に立ちふさがる。
プエルは答えない。
「……なあ、手紙渡す相手少し見ろよ……。声でバレバレだぜ」
レイオスがあきれてしゃべる。マシンガンはワイバーンに向けてある、逃げる時の足になるだろうから。
プエルはフードを跳ね上げ、むっとした不機嫌な顔をさらす。
「歪虚は滅する……交渉するならして。私の前に歪虚がいるなんて信じたくないから」
セリスがプエルを視線で殺せそうなほどにらむ。
「なんで岩場に隠れていたのか? その龍はなんだ? 目的は何だ?」
シオンの素朴な質問にプエルは「多いよ内容」と怒るが律儀に答える。
「あいつらけちだし。それに余はお前たちと戦うために来たわけじゃないから、とばっちりは受けたくなかったんだ。んー、パタリンは野良ワイバーンかなぁ? 余が出かけたいなぁと思ったら来たけど。目的……奧に行くこと」
「奧に何がある」
「……ふふっ、余がレチタティーヴォ様みたいになれるような力の源! はい、余は答えてあげたよ。通してくれる?」
プエルは無邪気に尋ねるが、誰も答えない。
「で、戦場で結構こっちは隙間があったのに、なぜ通らなかった?」
クリスティンの言葉に、プエルはきょとんとした。
「だって、大きなにょろっとしたのがいたじゃないか」
「お前は強いと聞くから倒せばいいじゃないか」
「……にょろ、だよ?」
プエルは体を震わせ、心底嫌そうな顔をしている。
クリスティンはプエルの様子を観察して眉をひそめる。歪虚としてのプエルに違和感を覚えていた。
「お前……何に嫉妬しているのか?」
「え?」
「嫉妬の外見をしているくせに、振る舞いは傲慢のよう。剣も使えれば魔法も使える……矛盾を抱えて何を目指す?」
クリスティンに突きつけられた言葉に、プエルは目を見開く。
「……余のことを弱いからと見下す奴がいるからだ! 頑張れば、レチタティーヴォ様のためになるし、レチタティーヴォ様のおそばにいられたんだよ! 余がどれだけうらやましがっているか知らないくせに! レチタティーヴォ様みたいになれば、他者から嫉妬はされるけど嫉妬しなくていいんでしょ? それに、レチタティーヴォ様に褒めてもらえて、撫でてもらったりぎゅってしてもらえたかもしれないんだよ! それなのに人間が……。余は、レチタティーヴォ様みたいにかっこいい演出家になりたいんだ!」
「つまり、力がほしいのか?」
「……必要だもの!」
プエルはクリスティンをにらみつける。
「後釜に座りたいお前はレチタティーなんとか野郎としていた演目を知っているな? もし、教えてくれるなら、通すのも考えてもいいぜ」
レイオスは情報を引き出したかった。
「ご褒美っているだろう? お前は頑張ってやっているのに、エクエスなんて辺境や帝国で女の尻を追って遊んでいたんだぜ?」
プエルの相方であるエクエスは、先日レイオスやミオレスカが討伐に関わり、無に帰したため嘘である。
気になる点が二つあり、一つはエクエスが消える直前に漏らした「プエルが演目である」ということ。もう一つが、一度見せた不安定な状況。下手をすれば巻き込まれる危険であるが、情報も欲しい。
情報と危険の天秤が揺れる。
プエルは驚いたという顔をしてレイオスに近付こうとした。
「……ねえ、何それ! 人間……レチタティーヴォ様の演目? 僕、知らないよ? お前、ひょっとして、レチタティーヴォ様とお話ししていたの?」
「……ああ、知ってる」
「えええ! ぼ、僕聞いてないよ? うらやましい、うらやましいよぉ! お前を殺して……」
プエルの周りでマテリアルが動き始める。
ハンターは一斉に攻撃態勢になる。ワイバーンに注意し、プエルを逃がさない、奧に行かせない布陣は敷いた。
「あ、でも殺したら話聞けない……」
プエルはけろりと言った。
「ねね、教えて、教えてよ!」
レイオスの服をつかんで揺する。
「……」
レイオスはミオレスカに意見を求めるように見た。
「あの、エクエスは女の子を誘拐したりひどかったんです」
ミオレスカのどの奥が緊張からからからになっていく、どこまで嘘をつくか情報を得るために告げるか。
「え?」
「イノアさんという方に」
「……誰それ?」
プエルは首を傾げる。
「……覚えていない?」
プエルがもともと人間であった場合、イノア・クリシスという少女の兄だった可能性があったのだ。
「覚えて? ……まさか、余のことを知っているの? 余がレチタティーヴォ様に助けてもらった時のことを? ……余にひどいことをした人間?」
「待ってください。最近のことしか知りません」
「……余は奥に行っていい? あいつら、異変を感じてくるかもしれないし、ちょっと行って帰ってくるだけだから」
プエルはそわそわする。
「行かせる訳にはいかねぇぞ」
「そうよ、【ホーリーライト】」
真司とセリスが素早く動いた。
会話は終わったのだ。
「足止め……ならば」
ロニの【レクイエム】が響く。
プエルは回避するが、攻撃に備えている万歳丸に近くなる。
プエルは剣を抜くか魔法を使うか逡巡した、戦場では命取りの思考であるが。
ワイバーンは羽ばたいた。風圧が起こり、ハンターは飛ばされそうになる。
マシンガン、銃、魔法などがそれに向かう。ワイバーンはプエルを器用にしっぽに引っかけ、そのまま奧に飛んでいった。
●音
ハンターは追う。
ただし、深追いをすると強欲の新たな軍勢が来た場合、危険だ。
「マテリアル……でしょうか。濃密な」
奧に行けば行くほど、気圧されるような物を感じミオレスカは大きく息を吐く。
「どこまで行ったんだ、子供モドキ」
「ワイバーンが負傷している状態だ、そう遠くまでは」
クリスティンにシオンは返答する。先ほど銃撃や魔法が当たっている。
「何か来る音がする」
レイオスは分かれ道で片方を指さす。その先もいくつか枝分かれしているようだが、敵の数によっては挟み撃ちされる可能性もある。
「……引き返した方がいいかもしれないな。俺たちだけでやるには敵が多そうだ」
ロニの表情にどこか疲れが見える。
「目の前に歪虚がいるかもしれないところで退くの……」
セリスから血を吐くような声が漏れる。
「冷静に対処すればどうにかなるなら止めないが」
「動きを止めてまとめてたたければ……て考えるけど無謀。でも、あの隠れていた奴だって、そっちに行ったらただで済まないよね?」
「確かに」
セリスと真司は音がする方を眺める。セリスはあきらめるが、闘志は消えない。
「行こうぜ。巻き込まれる前に立てなおせねェと。ん? あれはあの坊主……」
万歳丸はきびすを返す直前、ワイバーンがかろうじて飛んでいるのが見たのだった。それは脇道に入っていく。
「運が強いというのでしょうか」
ミオレスカはつぶやく、ワイバーンの手綱にぶら下がるプエルが見えたから。
「結局……プエル、何も知らないのか」
レイオスは消えていった影を追いつつ、強欲の新たな影に急いで踵を返した。
そして、無事に人類軍が拠点としているところまで戻った。
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強欲の軍勢対策 ミオレスカ(ka3496) エルフ|18才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2016/05/02 00:24:59 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/05/01 04:50:06 |