虫は無視できない!?

マスター:奈華里

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/05/04 19:00
完成日
2016/05/15 01:47

このシナリオは2日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●敵
 とある軍人寄宿舎にて――ある男は日夜闘っていた。
「くぅぅ、また…またしても侵入してくるとはっ」
 肩を上下に揺らして、男・シウは僅か数センチの敵と対峙する。
「なぁ、もういい加減掴めるようにならねぇと付き合い切れねぇぜ?」
 大欠伸をしながらシウより若い青年が面倒気に言う。
「何を怖がる事がある。ただの虫だろう」
 そう言うのは同室のもう一人だ。先の一人とは同い年で、名はケイとライトと言う。
「とはいっても、これは飛ぶじゃないかっ! それに何考えてるか判らないし、奇襲のスペシャリストとなれば心してかからないと」
 年下の明らかに冷たい言葉であったが、彼は今それ所じゃない。視線は虫から外さぬまま、そう答える。
「はぁ? どこに奇襲のスペシャリストがいるんだよ…ただの虫だろ?」
 半ばあきれた顔でケイが息を吐く。
「まぁそんな事言ってやるな。けど、確かにまだまだ過敏だとは思うがな…」
 これはライトの言葉。
 シウへの気遣いを見せてはいるが、もう時計は夜の一時を過ぎていて…二人としては堪ったものではない。
 狭い寄宿舎にあるのは二段に備え付けられたベッドが二つ。その奥と手前にはそれぞれが使えるクローゼットがあるだけ。通路も足の踏み場程度であるから、まるでリアルブルーの寝台特急の一室のよう。そんな中で暴れられては、声も近く耳障りな事この上ない。
「もう、いいだろ。俺、マジで付き合い切れねぇから」
 ケイはそう言い、彼の定位置である上のベッドへと梯子を上ってゆく。
「すまないが、私も上がるぞ」
 ライトもそれに倣って、シウを放置し強行就寝へ。
 天井に下がったランプの灯りを吹き消して、何事もなかったようにベッドに入る。
「えっ、ちょっ…そんな、見えない…奴が見えないですから~~」
 残されたシウは涙目だった。敵である虫の姿が見えず、ただ一人下のベットで虫と共に眠らなければならないのだ。
「あぁ、神様ぁ~~なぜ、なぜ僕にこんな試練をお与えになるのですかぁ~」
 その後、シウが疲れ果てるまで――彼と虫との攻防は続いていた。

●強行策
「隊長、もう勘弁してくれ。これじゃあ寝不足で軍務に支障が出るぜ?」
 ケイが自分の上司――つまり隊長の許を訪れて、最近の不満をぶちまける。
「あ~…まぁ、やる気になってくれたのは結構なんだがなぁ。確かにそれはちょっと辛いかもなぁ」
 そう言いつつも様子を思い浮かべて、隊長であるスニークからは声を殺した笑みが零れる。
「そう思うならなんとかしてくれよ……でないとマジで俺、移動するぜ?」
 ケイが真剣に言う。それ程までに結構なストレスと睡眠不足に悩まされているらしい。
 まだ二十歳を過ぎたばかりだというのに、目の下にはうっすらと隈が出来ている。
「あぁわかったわかった。こうなったらまぁ、仕方がない。少し酷だと思うが、ショック療法といくか」
 そんな部下を見兼ねてスニークは机にあった書類を何枚か捲り、彼の方へと書面を向ける。
「それは?」
「次の任務だ。どうだ、うってつけだろう?」
 書類を渡して、彼がにやりと笑う。
「…そう、だな。まあ、やってみる価値はあるかもしれねぇ」
 ケイも内容に目を通し、口元を俄かに吊り上げる。
 それは一か八かの方法だった。しかし、本人がやる気になっている今だからこそ出来る方法でもあって――。
「って事でいいか、シウ?」
 次の任務の発表の後、隊長自ら彼に尋ねる。
「…は、はい。が、頑張ります…」
 そういう彼であるが、腕は僅かに震えている。
 彼らの次の任務、それはとある村の修繕工事の手伝いだった。
 本来ならばもっと危険な任務につく隊であるのだが、少し前に怪我をした者も多く現在戦場は控え気味だ。
 しかし、実際のところを言えばこの任務も手伝いだけでは終わらない。
 なぜ修繕が必要になったのか、目撃情報によるとこうある。

『巨大なカマキリにやられた。数は三匹』

 大人が太刀打ちできなかったとなればその大きさは想像できるだろう。
「なぁに、心配すんな。今回はお前の尊敬するハンター方との共同任務だ。いざとなったら助けて貰え」
 からからと笑い、スニークがシウの背を豪快に打つ。
「わ、わわっ、本当ですかっ! でも、それでも…やっぱり…」
 虫が苦手な彼は些か不安そうだ。しかし、ここで怖気ついたら何も変わらない。
 克服できるのか否かは神のみの知る所ではあるが、はてさて――。

リプレイ本文

●意識改革
 ハンターに会えた嬉しさとこれから待つ敵への動揺――その二つの事柄が鬩ぎ合って、シウの表情は複雑だった。
 頼もしい助っ人の参上に固まる筋肉から力を抜きたい。けれど、敵がカマキリの姿をしているとなれば、それはもう彼にとってカマキリでしかない。
「うぅ…せめて、芋虫だったら…」
 飛ばないし鈍足――そう願うも実態は変わらない。
 顔色を悪くする彼を見つけて、助っ人のアメリア・フォーサイス(ka4111)もある事実を彼に告げる。
「シウさんシウさん。実は私も虫が苦手で……なんで節足生物ってあんなに気持ち悪いんですかね?」
 つまりは彼女も虫嫌い。ハンターにもそんな人がいるんだと思うとシウも少し親しみを覚えて、
「ですよね、ですよねっ。虫って脚を一、二本失くしても平気で動くじゃないですか! それに何見てるのか判らないし、挙句の果てに飛びかかってくるし……馬上で目に飛び込んで来た時は何て言うか、もう…」
 と昔の恐怖体験を矢継ぎ早に話し始める。
「シウ、暫くぶり」
 そんな彼を見つけてザレム・アズール(ka0878)も彼に声をかけた。
 ちなみにザレムは以前の依頼でシウらを救ったハンターであり恩人でもある。
「あ、こんにちは…それにマリィアさんも来てくれたんですね」
 そこにもう一人の恩人も加わって、シウは素直に喜びの表情を見せる。
「虫相手に狂乱しなくなっただけマシだと思うけど、今日はいけそう?」
 そんな彼に彼女は率直な質問を投げた。すると戻りかけていた覇気が明らかに沈んで、
(本当にこの人は判り易いわね…)
 彼女の知る軍人とは違って、かなり軟弱。しかし、根性を鍛えれば少しは…などと思案する。
「とにかく皆あなたができると思ったからこの仕事を振ったと思うの。だから頑張らなきゃね」
 マリィア・バルデス(ka5848)はそう言って、彼の胸ポケットに小さくしたハーブブーケを挿す。
 それは言わば予防線――これから林に入るのだ。問題の敵以外への虫対策に他ならない。
「じゃああたしからはこれあげるね」
 そう言って通りすがりのSさん(ka6276)からは小さな瓶。ラベルには精神安定剤と書かれている。
 そしてもう一人、マルカ・アニチキン(ka2542)からは大物が。
「えと…これは」
「使って下さい。この盾があれば少しは怯まずにいられるかもしれませんし」
 少し控えめにそう言って渡されたのは立派な盾。それは道具屋でも良い値の付く代物で……流石に気がひけたのだが、さささと後ろに下がってゆくマルカに声をかける暇を失って、話は何故苦手なのかというところに進む。
「さっき聞いた感じだとシウはあの脚が嫌なのか? それとも行動が読めないから? どっちにしても、俺から見ればそうでもないと思うが」
 原因解明にザレムが尋ねる。
「そうだよ。あれっていいたんぱく源になるんだよ。ミノアなんて探して食料にするくらいなのに!」
 そう言うのは辺境育ちのミノア・エデン(ka1540)だ。そんな彼女であるから、正直シウのいう事がてんでよく判らない。きもかろうが意味不明な行動をしてこようが、相手は食料。彼女からしてみれば獣と大して変わらないのだ。
「えぇっ…あれを食べるんですか……嘘ですよね、あんなの口に入れたら…」
 ぞわわっと寒気がして、シウの後ろではアメリアも悪寒を感じたのか両肩を抱きかかえる。
「嘘じゃないよ。蝉なんか丸焼きにすると…」
「まあまあそれ位で。でも、ミノアのいう事には一理あるな。虫だと思うから拒否反応が出てしまうのかもしれない。魚も鳥も形はあんなだけどキモくないだろ? ようは『慣れ』さ。人は異質なものを排除しようとする…ミノアにとっては普通だったが、シウにとっては異質だった。まぁ、良く言えば君は防衛本能が高く、危機察知能力に優れていた…とも言えるんだよ」
 シウの心を傷つけないような言い方でザレムがシウの意識改善を試みる。
「防衛本能…僕が、ですか?」
「ああ。それにものは考えようだ。何を考えてるか分からないというが、あれは本能で動いているんだ。哺乳類よりよっぽど予測が立て易いんだぞ」
 知能を持たない虫の事――行動理由は本能に直結していると彼は説く。
「そうかなぁ…僕にはそうは思えないけど」
「まぁ、後は実戦で知るしかない。とりあえずは敵を知り、己を知り、討てば良いんだ」
 ザレムはそう言うと彼にカマキリの特徴を教え始める。
「あっ、だったらミノアも教えたげる。カマキリはやっぱりこの鎌が一番危険だよー!」
 それにミノアも加り、急遽討伐隊での作戦会議が始まるのだった。

●対峙
 道中は隊長らと共に移動して、村に到着すると討伐隊は雑魔の足跡を辿る。
 情報にあった村周辺の林に分け入り、死角となりそうな場所や影になる場所を重点的に探す。
(さーて…まともな依頼は初めてだけど、なんかこう…少し気が抜けるんだよね…)
 相手が雑魔であるという事もあるだろう。それに加えて、終始緊張しているシウを見ていると、こちらがびくつく訳にもいかないし、虫の姿であればそこまで怯える程のものではない気がする。
(いやまぁ、あたしだって別に好きなわけでもないけどさ)
 噂に聞くグロテスクな形態のものに比べればどうって事は無いだろう。そう判断して、Sさんは単独先行を希望した。何故なら自分の力量を踏まえて有効なのは奇襲と判断。カマキリの視野が三百六十度あるという事が気にかかるが、それでもやってみる価値はある。仲間らと一定の距離を取って、彼女は前に進む。
(ん、アレ何だろう?)
 そんな彼女の視界の先にはうすぼんやりした何かの塊が木にぶら下がって見えた。

 一方本隊では未だシウへの励ましは続いている。
 彼を囲むように前にはザレムとミノアが、彼の横には残りの三名がついて万一に備える。
「大丈夫、虫が苦手でもいいんです。大事なのはその部分と自分がどう向き合うか考える事なんです……つまりは、もうシウさんは、その事を理解し立ち向かっている。それだけで一歩前に進んでいるんですから…」
 自分も普段からネガティブ志向である為、いつも自分に言い聞かせている言葉を声にしマルカが励ます。
「そそっ、いざとなったら私達がいるもの。大船に乗った気分でどっしりしてなさい」
 とこれはマリィアだ。本当に相手が虫ならば静かにした方が良いと思うが、相手は雑魔。うるさい方が逆に出てきてくれるかもしれない。
「本当なんで虫って虫なんですかね? なんか少し腹立ってきました」
 アメリアはそう言いつつも両手の拳銃を握り締め、いつでも引き金をひけるように撃鉄をあげている。
 そんな道中が暫く続いて――夕暮れが近付いた折、やっと奴らは姿を現す。
「うっへ~、これはたまげた…」
 Sさんが思わずその場で尻餅を付く。耳障りな羽音をさせて、飛びきたのは情報通り三匹のカマキリ。
 しかし、大きさは予想以上だった。大凡三mもあるシュッとした身体に細長い脚を器用に木々に絡めて、ハンター達を見下ろす形で触角を揺らす。
「あ、あれはハラビロカマキリっぽい!」
 その姿に一目で種類を見分けるミノア。辺境の野宿育ちは伊達じゃない。
 がそんな事、シウにとってはどうでもいい。
「あ、ああ…」
 カマキリ特有の動きと畳まれた鎌がいつ飛び来るか判らない恐怖に完全に固まっている。
 だが、彼よりも更に怯えている者がいて、
「い……いやあああ、近くで見るとキモいキモいキモい! そしてグロイ! って事でシウさん助けて―!」
 言うが早いか彼女はシウの背に回り、強引に彼を前へと押し出す。
「えっ、ちょっ、アメリアさんっ!?!」
 その非情ともいえる行動に振り返る彼であるが、その隙を狙って前方のカマキリが彼目掛けて自慢の鎌を振るう。
「うわぁぁぁ!」
 そんな彼を助けたのはマルカだった。ウインドガストで鎌の軌道を逸らして、必死に手元のそれを使えと身振りで指示を送る。がシウはと言えば扱い慣れぬ盾を構えようとして木の根に躓く始末。
「とりあえず数を減らすぞ」
 それを見取りザレムの一声――彼はジェットブーツを発動し、手前の一匹に大剣を振り被る。
「って事はこっちはあたしの担当って事で」
 Sさんもそれに立ち上がると、ランアウトで距離を詰めてダガーで比較的細い脚の付け根を狙いスラッシュエッジを繰り出す。が、流石の視界――彼女が隠れていたのを知っていたのか彼女の狙った一匹は羽根を羽ばたかせ宙へと舞い上がる。
「ッ、あたしのレベルじゃ簡単には近寄らせてくれないって事!」
 そう悔しがる彼女に仲間の援護――アメリアの二丁拳銃が火を噴く。
「あわわっ、駄目、こっちこないでぇ~来るんだったらシウさんの方だけにしてぇ~~!」
 言葉では弱音を吐いてはいるものの彼女の射撃は正確だった。
 飛び立とうとしたカマキリの羽の付け根を撃ち抜き上空への逃走を妨害する。
「ひゃっほ~、大量ごはん~!!」
 そう言いはしゃぐのはミノアさん。相手は雑魔であるが、シウと違った意味であれを本物のカマキリだと思い込んでいるらしい。マリィアの援護射を受けて、カマキリに接近し次々と関節を狙い行動を奪ってゆく。
「ほら、シウさん! 男の子なんですから、私達を守って下さいよ~!」
 マルカの風が止みそうなのを見取って、アメリアがまたしても彼を押し出す。
(そ、そうだ…みんな…僕の為を思って…だから、やらなきゃ)
 シウもその声に自分を奮い立たせて半ベソを掻きつつも、使い慣れたワンドの先に炎を生み出す。
 そして放たれた炎球は眼前のカマキリに着弾。だが、
「え、え…ちょっまだ生きてるっ!!?」
 被弾した箇所から立ち昇る煙のその先には未だ実体を有したカマキリの姿があって、シウは明らかな動揺を見せる。
「諦めないで! ちゃんと効いてるよっ!」
 そんな彼に声をかけて、ミノアがシウの間に割って入り斧を揮う。
「そうだ。見ろ、あれはただの悪足掻きだ」
 そう言うザレムも彼女に続いて前に出て大剣を振り下ろす。
「悪足掻き…?」
「そうだよ。だからほらもう一発」
 いつの間に倒したのか。一匹になったカマキリの元にハンター達が集まってくる。
「もういっちょ食らわしてやるがいいのです!」
 そういうアメリアは相変わらずシウの背後に隠れたままであるがその励ましに力を貰い、再び敵を見据えて…仲間の援護もあり、カマキリ雑魔の討伐は無事成功した。
 但し、別の部分では余り無事とも言えなかったが…。
「わー…これはちょっとひどいかも」
 戦闘のあった辺りの木々が傷つき、無残な姿になっているのを見つめミノアが呟く。
「あうぅ~ごめんなさい、ごめんなさい。いけると思ったんですが、思いのほか素早くて…」
 そう謝罪するのは勿論シウだ。とどめを任されたのだが、この有様である。
「脚止めしてた筈だけど…もしかして、攻撃魔法苦手なの?」
 Sさんが戦闘風景を思い出し尋ねる。
「……すみません。黙ってましたが、僕…補助援護魔法専門でして…」
 後で判る事であるが、彼はこの依頼が攻撃魔法使用の初陣であったという。

●身近な罠
 荒れてしまった林の事は後で報告するとして、その後ザレムが卵の存在を危惧し辺りを探索。Sさんの心当たりを頼りにあの謎の塊がそうかもしれないという事になり、念の為攻撃を加えて駆除し寄宿舎に帰還。本来であればこれで依頼は完了となるのであるが、彼らはこれだけに終わらない。
「さて、部屋の掃除を始めるわよ」
 そう言って次の日の早朝から網を張る為の大掃除が始まる。
「では、その…まずは、虫取りボトルを作りたい、と思います」
 青の世界の住人から聞いた虫取りボトルの作り方――それをマルカがあり合わせのもので制作を試みる。
 具体的には炭酸飲料のペットボトルを加工して、中には自然素材で作った薬剤を。砂糖、酵母、熱湯だけで出来るとあって、シウが熱心にその作り方を書き留める。その間に残りの面子は部屋を片付け、判った事が一つ。それは同居人もただの被害者ではなかったという事だ。
「ねえ、これあなたのかしら?」
 ケイのクローゼットを開けてマリィアが空になった未洗浄の飲料瓶を持ち上げる。
「ねぇねぇ、これ一つ頂戴」
 そういうミノアはライトのクローゼットから出てきたカラフルな瓶詰めグミに興味津々。果汁が入っているのかいい匂いがする。つまるところ、同居人の不始末がこの部屋に虫を招いたとも考えられる。
「ちっ、後で片付けるつもりだったんだよ」
 ケイが言う。ライトも皆から刺さる冷たい視線に、事を理解したらしくバツが悪そうだ。
 けれど、ケイもこのままでは引き下がれないと思ったのか話題を根本へと戻して反撃開始。
「なぁ、結局あいつの虫嫌いは直ったのか?」
 その問いにハンター達は答えられなかった。確かにカマキり型の雑魔は倒す事が出来た。しかし、実際の虫とはサイズも違う訳で、受ける印象も随分違う筈だ。
「ただいま戻りましたー」
 そんな折にシウがマルカと部屋に戻ってきて、そのものずばりを尋ねてみると答えは明確。
「あ~……えとぉ~、克服できてたら虫取りボトルって必要ないですよね…?」
 という事はまだ克服は出来ていないらしい。しかし、全く進歩がなかった訳ではない。
「あの、でもでもカマキリは大丈夫になりましたよ! だってほら、色々教えて頂きましたから♪」
 敵を知り、一応やっつけた事が自信に繋がったのかカマキリについては抵抗がついたようだ。
「あー、次はバッタとかカブトムシとかの雑魔を探さないだねぇ」
 Sさんが冗談交じりに言う。
「その前に実戦慣れする! これが最優先事項だと思いまーす!」
 そうしれっと意見しているアメリアであるが、彼女自身は全く克服できていない事実を密かに隠していたりする。
「でも、一つでも前に進んだのは良い事、です…って、言い過ぎでしょうか…?」
 謙虚過ぎるマルカがおどおどした様子で言葉を付け加える。けれど、それは間違いではない。
 先人も言うではないか、千里の道も一歩から――と。
「ま、克服はじっくりでいいんだからな」
 ザレムのその言葉とマルカから頂いた盾を胸に抱え、彼は気持ちを新たに加わった課題を含め克服に向けて闘志を燃やして、
「とにかく有難う御座いましたっ!」
 完全な克服まではまだまだ時間がかかりそうであるが、今度こそこの依頼は終了。
 家路につくハンター達と言いたい所であったがただ一人、寄宿舎に残る影一つ。
「えー、何で、何処行ったの、ミノアの食料! あんな大物だったのに…消えちゃうなんて聞いてない~、マジ食いっぱぐれた~」
 カマキリが果たして美味しいのか定かではないが、今回の獲物の大きさを思い出しミノアが涙ぐむ。
 そんな彼女を隊長が見つけて、軍の食堂の料理をご馳走するに至るのはまだ少し後の事だった。

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MVP一覧

  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズールka0878
  • ジルボ伝道師
    マルカ・アニチキンka2542

重体一覧

参加者一覧

  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • サバイバー
    ミノア・エデン(ka1540
    人間(紅)|16才|女性|闘狩人
  • ジルボ伝道師
    マルカ・アニチキン(ka2542
    人間(紅)|20才|女性|魔術師
  • Ms.“Deadend”
    アメリア・フォーサイス(ka4111
    人間(蒼)|22才|女性|猟撃士
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
  • 風と踊る娘
    通りすがりのSさん(ka6276
    エルフ|18才|女性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
マリィア・バルデス(ka5848
人間(リアルブルー)|24才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2016/05/04 16:56:05
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/05/03 02:29:44