ゲスト
(ka0000)
マギア砦偵察
マスター:とりる

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/05/29 19:00
- 完成日
- 2016/06/11 20:56
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
要塞都市【ノアーラ・クンタウ】内にある辺境のハンターズソサエティ――。
一人の男性ハンターが依頼を物色していると……
「そこな男前のハンターさん、良い依頼があるのですがちょっと話を聞きませんか?」
綺麗な黒髪ツインテールの受付嬢、クラヴィーア・キルシェ(kz0038)が手招きしてきた。
それに男性ハンターはホイホイ付いて行く。
「実はですね、辺境ユニオン【ガーディナ】肝煎りの依頼が届いたんですよ」
ほうほう、とツインテ受付嬢の話に耳を傾ける男性ハンター。
「その内容はですね……『マギア砦の偵察』です!」
男性ハンターはそれを聞いた途端あからさまに嫌そうな顔をする。
「そんな顔をしないで最後まで聞いてくださいよ。そのマギア砦なんですけどね、一年くらい前の大規模作戦で怠惰の軍勢に占領されてからずっと放置状態だったんです」
クラヴィーアは「辺境部族の人達にとっては大迷惑ですよねー」と、少し顔をしかめた後に営業モードへ戻る。
「その大規模作戦で怠惰の軍勢の指揮官は倒したので粗方の怠惰は退いたのですがマギア砦を占領していた怠惰については不明なまま……と言いますか、未確認なんです」
クラヴィーアはこほんと咳払いし、改めて口を開く。
「というわけで、マギア砦の現状を偵察してきて欲しいんです」
男性ハンターは「うえー」といった表情。気が向かないようだ。
それは怠惰の軍勢と言えば巨人の軍団。そんな危険な歪虚とやり合うのはまっぴらごめんである。
「だ、大丈夫ですよ! あくまで偵察ですから! 今、マギア砦がどんな状態にあるのかさえ確かめてもらえれば!」
それに人類連合軍のお偉いさん達の考えでは怠惰の軍勢は指揮官喪失に伴い既に退いている可能性が高いらしいですよ、とクラヴィーアは付け加える。
それならまあ……と男性ハンターは腕を組んでうむむと唸る。
「重要な依頼なので報酬も多めです。というわけで、いかがですか?」
そう言って、とびっきりの営業スマイルを浮かべるクラヴィーアであった。
一人の男性ハンターが依頼を物色していると……
「そこな男前のハンターさん、良い依頼があるのですがちょっと話を聞きませんか?」
綺麗な黒髪ツインテールの受付嬢、クラヴィーア・キルシェ(kz0038)が手招きしてきた。
それに男性ハンターはホイホイ付いて行く。
「実はですね、辺境ユニオン【ガーディナ】肝煎りの依頼が届いたんですよ」
ほうほう、とツインテ受付嬢の話に耳を傾ける男性ハンター。
「その内容はですね……『マギア砦の偵察』です!」
男性ハンターはそれを聞いた途端あからさまに嫌そうな顔をする。
「そんな顔をしないで最後まで聞いてくださいよ。そのマギア砦なんですけどね、一年くらい前の大規模作戦で怠惰の軍勢に占領されてからずっと放置状態だったんです」
クラヴィーアは「辺境部族の人達にとっては大迷惑ですよねー」と、少し顔をしかめた後に営業モードへ戻る。
「その大規模作戦で怠惰の軍勢の指揮官は倒したので粗方の怠惰は退いたのですがマギア砦を占領していた怠惰については不明なまま……と言いますか、未確認なんです」
クラヴィーアはこほんと咳払いし、改めて口を開く。
「というわけで、マギア砦の現状を偵察してきて欲しいんです」
男性ハンターは「うえー」といった表情。気が向かないようだ。
それは怠惰の軍勢と言えば巨人の軍団。そんな危険な歪虚とやり合うのはまっぴらごめんである。
「だ、大丈夫ですよ! あくまで偵察ですから! 今、マギア砦がどんな状態にあるのかさえ確かめてもらえれば!」
それに人類連合軍のお偉いさん達の考えでは怠惰の軍勢は指揮官喪失に伴い既に退いている可能性が高いらしいですよ、とクラヴィーアは付け加える。
それならまあ……と男性ハンターは腕を組んでうむむと唸る。
「重要な依頼なので報酬も多めです。というわけで、いかがですか?」
そう言って、とびっきりの営業スマイルを浮かべるクラヴィーアであった。
リプレイ本文
●偵察 前半
辺境ユニオン『ガーディナ』より、現在のマギア砦に怠惰の軍勢が残留しているか否かを確かめる依頼を受けたハンター達。
まず彼らは遠方から砦の様子を窺った所……サイクロプスの様な巨人の姿は見られなかった為、もっと接近しての偵察を試みる。
……砦まである程度接近した後、ハンター達は各々で行動を開始した――。
***
「……現状が分からないでは対応もしようがないからな。きちんと偵察する事にしようか」
榊 兵庫(ka0010)は双眼鏡を片手に、敵襲を警戒しつつ砦の周辺を回る。
「……怠惰の残党が残っているのかもしれない。偵察を任された以上可能な限り情報を集めなくてはなるまい」
念入りに捜索をした結果……敵は雑魔一匹居なかった。
兵庫はその後に仲間と連絡を取り合流。情報共有を行ってから、砦内を散策する事にした。
「……完全に破棄されたか。今後この砦をどうするかは上が判断する事だが、往事の輝きを取り戻せればそれに越したことはないな」
完全に敵の気配が消え失せた砦内を歩きながら、兵庫は呟く。
「……さすがに『夏草や兵どもが夢の跡』とはまだいかないか。まだまだあの戦闘の爪痕はそこかしこに残っているな。これは復興するのも一苦労だろう」
砦の周囲や内部を見て回れば、激しい籠城戦の跡がそのまま残っていた。内部の壁や床には乾き褐色になった血痕も多数ある……。
「……あの戦闘で大切な者を亡くし、遺品なりと、と待ち焦がれている者が居るのかもしれない」
それから兵庫は砦内を再び見回り、遺品らしき物を見つけては可能な限り回収する。
「余分なお節介かもしれないが、これも何かの縁だ。可能な限り持ち帰ってやる事にしよう」
ここ散った各国の兵士達……その遺品を集めた兵庫は帰還した後にハンターズソサエティへ引き渡すつもりである。
その心遣いはきっと遺族に届く事だろう。
***
(幾ら『怠惰』だからって砦の警戒も……物音すらしてないってのは不自然だな……潜んでいる? まさか)
龍崎・カズマ(ka0178)は砦正面入り口からの進入は避け、城壁を【壁歩き】を駆使して登ってゆく。
城壁の上に到達後は【隠の徒】にて気配を消し、砦内の状態を確認。歪虚の姿を探す。
「あのでかさだ、隠れられる場所なんてそうそうないはずだが……」
……結果、歪虚の姿は発見出来ず。カズマは砦内部の探索を開始する。
「姿が見えないだけで、何らかの仕掛けが無いとも限らないし、単純に騒乱で砦の一部が崩れ易くなってるだけでも十分危険だしな」
……結果、やはり歪虚の姿は見ず。小動物の雑魔一匹すら発見出来なかった。
「何も、無い。奴らは、放棄した、っていうのか?」
探索の結果を呑み込むと、カズマは胸の内から湧き上って来る感情を覚える。
あれだけの騒動を巻き起こしておいて、一年程度で放棄?
奴らにとって砦の意味が、価値が判るのかは知らないが……
ここを奪われたら自分達の家族が、仲間が危ないからと言う理由で立ち向かった者達が。
あの戦いで命を落とした各国の兵士達が。
これではあんまりに、あんまりに報われないではないか。
「何の為にあいつらは戦い、そして散ってったんだ!」
カズマは昂る怒りの感情のままに、硬い握り拳を壁面に叩き付けた――。
***
戦馬に騎乗し砦近くまで移動して来たエルバッハ・リオン(ka2434)は馬を降り、適当な場所へ待機させ、更に慎重に砦へと近づく。
その際は双眼鏡で適宜砦の様子を窺った。敵の姿は見えない。……そして大分砦へ接近した所でエルバッハはぽつりと呟いた。
「マギア砦ですか。この地で戦ってから、大分経ちますね」
彼女は砦を眺め、当時の戦いを思い出す。
……しばし砦を眺めた後に、エルバッハは砦内部へ進入。
物音を立てない様に注意しながら内部を回り、怠惰の歪虚が居ないか確認を行った。
結果、敵影は見えず。
怠惰の軍勢が完全に退いた事を確認した彼女は砦の一番高い所へ上った。
そしてエルバッハは砦籠城戦時に怠惰の軍勢をマギア砦に誘引させるため交戦した戦場の方角に目をやる。
「籠城戦の後の戦い、そして聖地奪還戦も激戦でした。その後には、東方での戦いに赴きましたね」
古戦場……と呼ぶにはまだまだ新しい場所を見、エルバッハは想いを馳せる。
依頼として受けた東方の使者との会談、東方での戦い、憤怒の歪虚王――『九蛇頭尾大黒狐・獄炎』との決戦を振り返った。
それから彼女は北の方角に目を移し、感慨深げに呟く。
「そして、私達は北で今も戦いを繰り広げています。それはこの地での戦いから続いていると言えるかもしれませんね」
「歪虚との戦いで多くの命が落とされました。その命を無駄にしない為に、そして、今を生きる人達を守る為にも負けられませんね」
過去の戦いを思い返し、これからの戦いに硬い決意を固めるエルバッハであった……。
***
「ここが、私がまだハンターになる前に大規模な戦闘が起こったマギア砦ですか」
夜桜 奏音(ka5754)はマギア砦内部に進入後、周囲を見渡し、その様に呟く。
「過去の戦闘の名残もあるのでしょうが、なんだか物悲しい場所ですね」
外から砦を見た様子から敵の気配が無い事に気付いてはいたが依頼内容が偵察である事から砦内部の探索を開始する。
「うーん、何か居るような気配は無いですが、一応砦の探索をして安全だけは確認しましょうか」
一通り見回った後に、ここは廃墟と化しており、もう歪虚の姿は無いと判断する。
「ここにはもう歪虚は居ない様ですね」
その後、巫女である奏音は砦で最も激しい戦闘があった場所へ赴き、
「かつての大規模戦闘を慮って舞いましょう」
月桂樹の名を冠する騎士剣を用いて鎮魂の剣舞を舞った。
「……この様な廃墟にならない様に今後はより一層戦いに力をいれませんといけませんね」
それから彼女は砦の敷地内に澱みを感じる場所を回り、符綴『花吹雪』を用いて少しでも澱みが浄化される事を祈り演舞を舞った。
演舞が終わると奏音は砦の一番高い場所へ行き、外で風を感じながら龍園の方向を眺め、想いを馳せる。
「この砦での戦いではまだ私はハンターではありませんでしたが、思えば龍園の様な随分と遠くまで進みました」
すぅーはぁーと深呼吸した後に彼女は、
「まだまだ、大きな戦いは続いていますし、私ももっと力を付けないといけませんね」
その様に決意を新たにした。
***
マリィア・バルデス(ka5848)の場合――。
「α、γ……歪虚を見かけたら呼びに来なさい。吠えてはだめよ、分かったわね……行け」
ある程度まで砦に接近した彼女はまず、ペットの犬二匹に偵察を命じる。
しっかりと躾けられた犬達は主人の命令に従い、走り去ってゆく。
(犬にはそう命じたけれど、多分ここには歪虚が居ないだろう)
マリィアは怠惰の軍勢は既に退いた物と感じていた。
(例え死体であっても動くものが発する独特の気配、その残り香を全く感じなかったから)
身を隠しながらゆっくり砦に近づくと……そこにあったのは確実に数ヶ月は放置されたと思われる、半ば崩れた廃砦。
そして彼女は考え、調査を開始する。
何をどこまで直せば使えるようになるのか、それとも完全に廃棄するのか、置き土産のトラップはないか。
水場は? 調度は? 地下室は? 保管庫は?
……結果。使用に耐える調度は無し。置き土産のトラップは無し。再建後を見越した新たな侵入路になりそうな場所も無し。
いつの間にか偵察に放った犬二匹が戻って来ていた。……どうやら歪虚の姿は無かったらしい。
マリィアは犬を連れて壁を叩き、床を叩き、中庭を調べ、厩舎を調べ、ただ淡々と、しかし丁寧に・慎重に調査を行う。
元の砦と同程度に使える様になるまで必要な物を私見を加えずただメモに書き連ねる。
ここを再建するか廃棄するかはガーディナが決める事である。
(私の仕事はガーディナが正確な判断を行えるよう一つでも正確な事実を集める事)
彼女の思考は常に冷静且つ合理的だった。
(私が何を思おうと、戦略的に重要な砦ならガーディナはこの砦を再建する様に働きかけるだろう。それだけの事だ)
何度この砦が落ちようと、幾万の命が失われようと、自分達が歪虚としているのはそういう戦いだ。
マリィアはその様に思考する。
調査は無事に終了。やはり怠惰の軍勢は完全に撤退した模様。
彼女は可愛い犬達を両手でわしゃわしゃと抱き締めつつ、思案。
(世界を違えても人類と歪虚の戦いは続いている……)
***
「かつて激戦がありきと聞く砦か。今なお歪虚共がいる可能性もあると聞く。気を引き締めていこう」
遠方からの偵察の後に魔導バイクに跨りマギア砦を目指すのは阿頼耶(ka6281)。
ここはかつての激戦区。悪路を考慮し、バイクを急かせずに進む。
ある程度バイクを走らせると、籠城戦時に激しい戦闘があったらしく、地面があちこち掘り返されている場所に当たった。
阿頼耶はバイクでの移動は不可能と判断し、バイクを帰りに回収できる位置に停めて降り、ここからは徒歩で移動。
……暫く歩いて大分マギア砦に近づいた。今の所敵の気配は……無い。阿頼耶は足音を消さずに周囲を歩き回る。
道中、砦の壁の様子などを眺め、彼は砦が廃墟となった理由等を想像する。
壁に触れて傷などを確かめ、念を入れ周囲の気配を確認してから、ハンターズソサエティへ提出用のメモに砦の様子を書き込む。
「あららかなる戦いによって、砦としての役目を果たせなくなったのか?」
そして阿頼耶は刀をいつでも抜ける様に構えてつつ砦の内部へ。
「これだけ騒いでもうちいでずか」
砦内の部屋を回り、様子を確認していく。また、歪虚の痕跡を探す。
「歪虚に占領されていたと聞くが、なお痛みたりな」
その間も阿頼耶は常に刀から手を離さず、襲撃への警戒をし続ける。
砦内部を回り終え、提出用のメモに『歪虚と遭遇しなかった事』『歪虚の痕跡が古かった事』『がくたびれている事』を書き込んだ。
調査を終えた阿頼耶は少し離れてから砦を見やる。
「歪虚に占領されてなお、砦としての影を成したりか。我もあいつを守れるようかかる存在にならねばなるまい」
●偵察 後半
「マギア砦、偵察とは言えまたここに来る事になるなんてね」
アイビス・グラス(ka2477)は感慨深げに言った。
「……城門裏の方に回ってみようかしらね」
城門裏――。
「確かこの辺りだっけ、オーガやオーク、トロルが彷徨いてた場所は」
しかし今はもう、巨人の姿は無い。残るは戦闘痕のみ……。
「ほんの少し前の出来事だったのに昔に思えてきちゃうなぁ。砦の城門を開ける為に敵の真っ只中を全速で駆け抜けたのよね」
アイビスは当時の様子を思い出し、振り返る。
「途中、トロルがこっちに気づいて攻撃してきてギリギリの所をすり抜けて行ったのよね。今思えば凄い無茶な事をしてたんだなぁ、私……」
過去の自分の行動に思わず苦笑してしまう。
そしてまたキッと表情を引き締める。
「身体中から痛みがきて視界も揺れたけど、あの時は倒れる訳には行かない、城門を開けなきゃっと必死だったな」
当時の痛みを思い出すと弥が上にも身が引き締まる。
「そして城門にかけられてた閂を思いっきり蹴り上げたんだっけ。……今思えばそれがきっかけだったのかもしれない」
言いながらアイビスは目を細め、自分の手の平に目をやった。
「今までマテリアルの事は漠然としか思えなかったけど、あの一件で自分の覚醒状態はどういうものなのか。土壇場で自分の力を覚醒できる様になったのもこの場所からだったんだよね」
そして。
「今じゃ……」
覚醒。風の様な淡いオーラが狼の耳や尻尾に見える様に現れる。
「こんな姿になっちまう位まで力が付いてきたんだよな。けどまだ歪虚達の戦いも続く訳だし、お母さんの居る世界に帰らなきゃいけないんだ」
グッと拳を握り締め、故郷への帰還を誓う。
「もっと強く……いや、生き抜いて必ず帰る為に戦わないとな」
決意を改めた所で。
「さて、他の所も偵察してくるか。ついでにこの姿にも慣れておくか、それにこっちの方がなんか楽だしな」
***
「マギア砦……ここで篭城したのは確か去年でしたか。色々ありすぎて、何だかすっかり懐かしい感じがしてしまいますが……静かですね。もう誰も居ないのでしょうか?」
ヴァルナ=エリゴス(ka2651)は砦の内部を見て回ってから城壁へ移動し、当時のまま残る傷を見て、ついつい感傷に浸ってしまう。
「そういえば、ここではガルドブルムとも戦ったのでしたね。割と好き勝手に暴れ回られて大変でした。何せ適当に暴れられるだけで色々な物が壊れますし……」
災厄の十三魔――飛天真如のガルドブルム。禍々しき戦闘狂の竜。
「戦況をかき混ぜるだけかき混ぜて唐突に帰る。私達はそれに振り回される。互いに力を増した今でも大して変わらないやり取り……たまには振り回す側になってみたくなりますね」
そうは言うが、ヴァルナ自身、実現可能とはあまり思っていない……。
「さて、かの竜を討ち果たすのはいつになるのでしょう?」
それからヴァルナはあちこちを見回して口を開く。
「大規模作戦では旗を立てたりもしましたね。あの辺りだったでしょうか。怠惰の軍勢も押し寄せて、脱出もギリギリでした」
当時の事を思い出すと冷や汗をかいてしまう。それだけの激戦だった。
「……此処も放棄しては取り戻して、また放棄して……大切な場所を何度も敵の手に渡さねばならないのは苦い事、でしょうね」
辺境部族にとってはまさにその心境だ。辺境の地で人類は前進と後退を繰り返している……。
「それでも、折れずにここまで来た。人はそうやって今に至っている……私も落ち込んでいる場合ではありませんね。あの方に誓った通り、『これから』を負うべく前に進みませんと」
ヴァルナは淡い想いを抱いている人物の顔を思い浮かべ、思考を前向きに切り替えた。
「『欲しい物は諦めず全て手に入れる』かの竜の言ではありませんが、私もその位に強欲な方が良いのでしょうか? 強く求めるものがある方が、人は強くなれるとも言いますし」
それは本人のスタンス次第である。誰にも耳を貸さず力だけを追い求め、歪虚に身を落とした者だって居る。
ヴァルナは決してその様な覚醒者、ハンターではないが。
「……さて、あまり物思いに耽るのもいけませんね。行きましょうか」
***
偵察の任として一通り砦内を回り、高い所から周辺を見渡して不審な点が無いのを確認し終えたシュクトゥ(ka5118)。
現在は外に出て、砦を眺め、ぼんやりと物思いに耽っていた。
「しかし、マギア砦か……初めて来る場所なのにそんな気がしないな」
(……マギア砦が関連した一連の戦いの話を聞くまで、私はハンターになる気すらなかった)
彼女の部族は辺境の中でも北方を拠点にしており、それ故に歪虚の侵攻により早期に集落を放棄したらしい。
多くの戦士は抵抗運動を行なう為に旅立ってそれきりである。
部族の戦士達は生きているのかいないのか、それは最早分からない……。
シュクトゥは、現在は族長としての立場、そして文化と部族自体の預かり手と自身の事を思っているが……。
(恥ずかしながら昔は自分達が『置いて行かれた者』であるという意識が強くてな。このまま誰かが敵を倒してくれるのを待っていれば良いなんて事を考えていた時期もあった)
昔を思い返し、悲しげな表情を浮かべる彼女。
(そんな時だ、砦陥落からの一連の流れと東方からの援軍の話を聞いたのは。我ながら単純だとは思うのだが、それを聞いてなんとも自身が情けない気分になった)
「聖地の奪還に、今まで戦い続けてきた東方の話。どちらも私には深く刺さったんだろう」
守る為に続けた者達を見聞きし、守る戦いをしなかった自分達を情けなく思ったのだろうか……。
「勿論今の預かり手としての役割が大事なのは解っている。ただ、我々には本当に他にも出来る事はないのか、とね」
(一日でも早く部族の戦士たちが戻れる様に、そして皆で再び故郷へ帰れる様に。私達に出来る事を精一杯やろうと、やるべきだと思ったきっかけが、ここにはある)
当時とは違う。今はやるべき事がはっきりしている。後は行動するだけだ。シュクトゥの決起の切欠がマギア砦での出来事であった。
「今そう出来ているかは分からないが……前には進めているとそう思いたいな」
***
今回のハンター達の偵察によりマギア砦を占拠していた怠惰の軍勢は既に退いた事が確認された。
しかし怠惰の歪虚達は指揮官が倒された為に、撤退したに過ぎない。いずれまた侵攻してくる事も十分に考えられる。
ナナミ川より北の辺境地域は、未だ予断を許さない状況が続いている……。
辺境ユニオン『ガーディナ』より、現在のマギア砦に怠惰の軍勢が残留しているか否かを確かめる依頼を受けたハンター達。
まず彼らは遠方から砦の様子を窺った所……サイクロプスの様な巨人の姿は見られなかった為、もっと接近しての偵察を試みる。
……砦まである程度接近した後、ハンター達は各々で行動を開始した――。
***
「……現状が分からないでは対応もしようがないからな。きちんと偵察する事にしようか」
榊 兵庫(ka0010)は双眼鏡を片手に、敵襲を警戒しつつ砦の周辺を回る。
「……怠惰の残党が残っているのかもしれない。偵察を任された以上可能な限り情報を集めなくてはなるまい」
念入りに捜索をした結果……敵は雑魔一匹居なかった。
兵庫はその後に仲間と連絡を取り合流。情報共有を行ってから、砦内を散策する事にした。
「……完全に破棄されたか。今後この砦をどうするかは上が判断する事だが、往事の輝きを取り戻せればそれに越したことはないな」
完全に敵の気配が消え失せた砦内を歩きながら、兵庫は呟く。
「……さすがに『夏草や兵どもが夢の跡』とはまだいかないか。まだまだあの戦闘の爪痕はそこかしこに残っているな。これは復興するのも一苦労だろう」
砦の周囲や内部を見て回れば、激しい籠城戦の跡がそのまま残っていた。内部の壁や床には乾き褐色になった血痕も多数ある……。
「……あの戦闘で大切な者を亡くし、遺品なりと、と待ち焦がれている者が居るのかもしれない」
それから兵庫は砦内を再び見回り、遺品らしき物を見つけては可能な限り回収する。
「余分なお節介かもしれないが、これも何かの縁だ。可能な限り持ち帰ってやる事にしよう」
ここ散った各国の兵士達……その遺品を集めた兵庫は帰還した後にハンターズソサエティへ引き渡すつもりである。
その心遣いはきっと遺族に届く事だろう。
***
(幾ら『怠惰』だからって砦の警戒も……物音すらしてないってのは不自然だな……潜んでいる? まさか)
龍崎・カズマ(ka0178)は砦正面入り口からの進入は避け、城壁を【壁歩き】を駆使して登ってゆく。
城壁の上に到達後は【隠の徒】にて気配を消し、砦内の状態を確認。歪虚の姿を探す。
「あのでかさだ、隠れられる場所なんてそうそうないはずだが……」
……結果、歪虚の姿は発見出来ず。カズマは砦内部の探索を開始する。
「姿が見えないだけで、何らかの仕掛けが無いとも限らないし、単純に騒乱で砦の一部が崩れ易くなってるだけでも十分危険だしな」
……結果、やはり歪虚の姿は見ず。小動物の雑魔一匹すら発見出来なかった。
「何も、無い。奴らは、放棄した、っていうのか?」
探索の結果を呑み込むと、カズマは胸の内から湧き上って来る感情を覚える。
あれだけの騒動を巻き起こしておいて、一年程度で放棄?
奴らにとって砦の意味が、価値が判るのかは知らないが……
ここを奪われたら自分達の家族が、仲間が危ないからと言う理由で立ち向かった者達が。
あの戦いで命を落とした各国の兵士達が。
これではあんまりに、あんまりに報われないではないか。
「何の為にあいつらは戦い、そして散ってったんだ!」
カズマは昂る怒りの感情のままに、硬い握り拳を壁面に叩き付けた――。
***
戦馬に騎乗し砦近くまで移動して来たエルバッハ・リオン(ka2434)は馬を降り、適当な場所へ待機させ、更に慎重に砦へと近づく。
その際は双眼鏡で適宜砦の様子を窺った。敵の姿は見えない。……そして大分砦へ接近した所でエルバッハはぽつりと呟いた。
「マギア砦ですか。この地で戦ってから、大分経ちますね」
彼女は砦を眺め、当時の戦いを思い出す。
……しばし砦を眺めた後に、エルバッハは砦内部へ進入。
物音を立てない様に注意しながら内部を回り、怠惰の歪虚が居ないか確認を行った。
結果、敵影は見えず。
怠惰の軍勢が完全に退いた事を確認した彼女は砦の一番高い所へ上った。
そしてエルバッハは砦籠城戦時に怠惰の軍勢をマギア砦に誘引させるため交戦した戦場の方角に目をやる。
「籠城戦の後の戦い、そして聖地奪還戦も激戦でした。その後には、東方での戦いに赴きましたね」
古戦場……と呼ぶにはまだまだ新しい場所を見、エルバッハは想いを馳せる。
依頼として受けた東方の使者との会談、東方での戦い、憤怒の歪虚王――『九蛇頭尾大黒狐・獄炎』との決戦を振り返った。
それから彼女は北の方角に目を移し、感慨深げに呟く。
「そして、私達は北で今も戦いを繰り広げています。それはこの地での戦いから続いていると言えるかもしれませんね」
「歪虚との戦いで多くの命が落とされました。その命を無駄にしない為に、そして、今を生きる人達を守る為にも負けられませんね」
過去の戦いを思い返し、これからの戦いに硬い決意を固めるエルバッハであった……。
***
「ここが、私がまだハンターになる前に大規模な戦闘が起こったマギア砦ですか」
夜桜 奏音(ka5754)はマギア砦内部に進入後、周囲を見渡し、その様に呟く。
「過去の戦闘の名残もあるのでしょうが、なんだか物悲しい場所ですね」
外から砦を見た様子から敵の気配が無い事に気付いてはいたが依頼内容が偵察である事から砦内部の探索を開始する。
「うーん、何か居るような気配は無いですが、一応砦の探索をして安全だけは確認しましょうか」
一通り見回った後に、ここは廃墟と化しており、もう歪虚の姿は無いと判断する。
「ここにはもう歪虚は居ない様ですね」
その後、巫女である奏音は砦で最も激しい戦闘があった場所へ赴き、
「かつての大規模戦闘を慮って舞いましょう」
月桂樹の名を冠する騎士剣を用いて鎮魂の剣舞を舞った。
「……この様な廃墟にならない様に今後はより一層戦いに力をいれませんといけませんね」
それから彼女は砦の敷地内に澱みを感じる場所を回り、符綴『花吹雪』を用いて少しでも澱みが浄化される事を祈り演舞を舞った。
演舞が終わると奏音は砦の一番高い場所へ行き、外で風を感じながら龍園の方向を眺め、想いを馳せる。
「この砦での戦いではまだ私はハンターではありませんでしたが、思えば龍園の様な随分と遠くまで進みました」
すぅーはぁーと深呼吸した後に彼女は、
「まだまだ、大きな戦いは続いていますし、私ももっと力を付けないといけませんね」
その様に決意を新たにした。
***
マリィア・バルデス(ka5848)の場合――。
「α、γ……歪虚を見かけたら呼びに来なさい。吠えてはだめよ、分かったわね……行け」
ある程度まで砦に接近した彼女はまず、ペットの犬二匹に偵察を命じる。
しっかりと躾けられた犬達は主人の命令に従い、走り去ってゆく。
(犬にはそう命じたけれど、多分ここには歪虚が居ないだろう)
マリィアは怠惰の軍勢は既に退いた物と感じていた。
(例え死体であっても動くものが発する独特の気配、その残り香を全く感じなかったから)
身を隠しながらゆっくり砦に近づくと……そこにあったのは確実に数ヶ月は放置されたと思われる、半ば崩れた廃砦。
そして彼女は考え、調査を開始する。
何をどこまで直せば使えるようになるのか、それとも完全に廃棄するのか、置き土産のトラップはないか。
水場は? 調度は? 地下室は? 保管庫は?
……結果。使用に耐える調度は無し。置き土産のトラップは無し。再建後を見越した新たな侵入路になりそうな場所も無し。
いつの間にか偵察に放った犬二匹が戻って来ていた。……どうやら歪虚の姿は無かったらしい。
マリィアは犬を連れて壁を叩き、床を叩き、中庭を調べ、厩舎を調べ、ただ淡々と、しかし丁寧に・慎重に調査を行う。
元の砦と同程度に使える様になるまで必要な物を私見を加えずただメモに書き連ねる。
ここを再建するか廃棄するかはガーディナが決める事である。
(私の仕事はガーディナが正確な判断を行えるよう一つでも正確な事実を集める事)
彼女の思考は常に冷静且つ合理的だった。
(私が何を思おうと、戦略的に重要な砦ならガーディナはこの砦を再建する様に働きかけるだろう。それだけの事だ)
何度この砦が落ちようと、幾万の命が失われようと、自分達が歪虚としているのはそういう戦いだ。
マリィアはその様に思考する。
調査は無事に終了。やはり怠惰の軍勢は完全に撤退した模様。
彼女は可愛い犬達を両手でわしゃわしゃと抱き締めつつ、思案。
(世界を違えても人類と歪虚の戦いは続いている……)
***
「かつて激戦がありきと聞く砦か。今なお歪虚共がいる可能性もあると聞く。気を引き締めていこう」
遠方からの偵察の後に魔導バイクに跨りマギア砦を目指すのは阿頼耶(ka6281)。
ここはかつての激戦区。悪路を考慮し、バイクを急かせずに進む。
ある程度バイクを走らせると、籠城戦時に激しい戦闘があったらしく、地面があちこち掘り返されている場所に当たった。
阿頼耶はバイクでの移動は不可能と判断し、バイクを帰りに回収できる位置に停めて降り、ここからは徒歩で移動。
……暫く歩いて大分マギア砦に近づいた。今の所敵の気配は……無い。阿頼耶は足音を消さずに周囲を歩き回る。
道中、砦の壁の様子などを眺め、彼は砦が廃墟となった理由等を想像する。
壁に触れて傷などを確かめ、念を入れ周囲の気配を確認してから、ハンターズソサエティへ提出用のメモに砦の様子を書き込む。
「あららかなる戦いによって、砦としての役目を果たせなくなったのか?」
そして阿頼耶は刀をいつでも抜ける様に構えてつつ砦の内部へ。
「これだけ騒いでもうちいでずか」
砦内の部屋を回り、様子を確認していく。また、歪虚の痕跡を探す。
「歪虚に占領されていたと聞くが、なお痛みたりな」
その間も阿頼耶は常に刀から手を離さず、襲撃への警戒をし続ける。
砦内部を回り終え、提出用のメモに『歪虚と遭遇しなかった事』『歪虚の痕跡が古かった事』『がくたびれている事』を書き込んだ。
調査を終えた阿頼耶は少し離れてから砦を見やる。
「歪虚に占領されてなお、砦としての影を成したりか。我もあいつを守れるようかかる存在にならねばなるまい」
●偵察 後半
「マギア砦、偵察とは言えまたここに来る事になるなんてね」
アイビス・グラス(ka2477)は感慨深げに言った。
「……城門裏の方に回ってみようかしらね」
城門裏――。
「確かこの辺りだっけ、オーガやオーク、トロルが彷徨いてた場所は」
しかし今はもう、巨人の姿は無い。残るは戦闘痕のみ……。
「ほんの少し前の出来事だったのに昔に思えてきちゃうなぁ。砦の城門を開ける為に敵の真っ只中を全速で駆け抜けたのよね」
アイビスは当時の様子を思い出し、振り返る。
「途中、トロルがこっちに気づいて攻撃してきてギリギリの所をすり抜けて行ったのよね。今思えば凄い無茶な事をしてたんだなぁ、私……」
過去の自分の行動に思わず苦笑してしまう。
そしてまたキッと表情を引き締める。
「身体中から痛みがきて視界も揺れたけど、あの時は倒れる訳には行かない、城門を開けなきゃっと必死だったな」
当時の痛みを思い出すと弥が上にも身が引き締まる。
「そして城門にかけられてた閂を思いっきり蹴り上げたんだっけ。……今思えばそれがきっかけだったのかもしれない」
言いながらアイビスは目を細め、自分の手の平に目をやった。
「今までマテリアルの事は漠然としか思えなかったけど、あの一件で自分の覚醒状態はどういうものなのか。土壇場で自分の力を覚醒できる様になったのもこの場所からだったんだよね」
そして。
「今じゃ……」
覚醒。風の様な淡いオーラが狼の耳や尻尾に見える様に現れる。
「こんな姿になっちまう位まで力が付いてきたんだよな。けどまだ歪虚達の戦いも続く訳だし、お母さんの居る世界に帰らなきゃいけないんだ」
グッと拳を握り締め、故郷への帰還を誓う。
「もっと強く……いや、生き抜いて必ず帰る為に戦わないとな」
決意を改めた所で。
「さて、他の所も偵察してくるか。ついでにこの姿にも慣れておくか、それにこっちの方がなんか楽だしな」
***
「マギア砦……ここで篭城したのは確か去年でしたか。色々ありすぎて、何だかすっかり懐かしい感じがしてしまいますが……静かですね。もう誰も居ないのでしょうか?」
ヴァルナ=エリゴス(ka2651)は砦の内部を見て回ってから城壁へ移動し、当時のまま残る傷を見て、ついつい感傷に浸ってしまう。
「そういえば、ここではガルドブルムとも戦ったのでしたね。割と好き勝手に暴れ回られて大変でした。何せ適当に暴れられるだけで色々な物が壊れますし……」
災厄の十三魔――飛天真如のガルドブルム。禍々しき戦闘狂の竜。
「戦況をかき混ぜるだけかき混ぜて唐突に帰る。私達はそれに振り回される。互いに力を増した今でも大して変わらないやり取り……たまには振り回す側になってみたくなりますね」
そうは言うが、ヴァルナ自身、実現可能とはあまり思っていない……。
「さて、かの竜を討ち果たすのはいつになるのでしょう?」
それからヴァルナはあちこちを見回して口を開く。
「大規模作戦では旗を立てたりもしましたね。あの辺りだったでしょうか。怠惰の軍勢も押し寄せて、脱出もギリギリでした」
当時の事を思い出すと冷や汗をかいてしまう。それだけの激戦だった。
「……此処も放棄しては取り戻して、また放棄して……大切な場所を何度も敵の手に渡さねばならないのは苦い事、でしょうね」
辺境部族にとってはまさにその心境だ。辺境の地で人類は前進と後退を繰り返している……。
「それでも、折れずにここまで来た。人はそうやって今に至っている……私も落ち込んでいる場合ではありませんね。あの方に誓った通り、『これから』を負うべく前に進みませんと」
ヴァルナは淡い想いを抱いている人物の顔を思い浮かべ、思考を前向きに切り替えた。
「『欲しい物は諦めず全て手に入れる』かの竜の言ではありませんが、私もその位に強欲な方が良いのでしょうか? 強く求めるものがある方が、人は強くなれるとも言いますし」
それは本人のスタンス次第である。誰にも耳を貸さず力だけを追い求め、歪虚に身を落とした者だって居る。
ヴァルナは決してその様な覚醒者、ハンターではないが。
「……さて、あまり物思いに耽るのもいけませんね。行きましょうか」
***
偵察の任として一通り砦内を回り、高い所から周辺を見渡して不審な点が無いのを確認し終えたシュクトゥ(ka5118)。
現在は外に出て、砦を眺め、ぼんやりと物思いに耽っていた。
「しかし、マギア砦か……初めて来る場所なのにそんな気がしないな」
(……マギア砦が関連した一連の戦いの話を聞くまで、私はハンターになる気すらなかった)
彼女の部族は辺境の中でも北方を拠点にしており、それ故に歪虚の侵攻により早期に集落を放棄したらしい。
多くの戦士は抵抗運動を行なう為に旅立ってそれきりである。
部族の戦士達は生きているのかいないのか、それは最早分からない……。
シュクトゥは、現在は族長としての立場、そして文化と部族自体の預かり手と自身の事を思っているが……。
(恥ずかしながら昔は自分達が『置いて行かれた者』であるという意識が強くてな。このまま誰かが敵を倒してくれるのを待っていれば良いなんて事を考えていた時期もあった)
昔を思い返し、悲しげな表情を浮かべる彼女。
(そんな時だ、砦陥落からの一連の流れと東方からの援軍の話を聞いたのは。我ながら単純だとは思うのだが、それを聞いてなんとも自身が情けない気分になった)
「聖地の奪還に、今まで戦い続けてきた東方の話。どちらも私には深く刺さったんだろう」
守る為に続けた者達を見聞きし、守る戦いをしなかった自分達を情けなく思ったのだろうか……。
「勿論今の預かり手としての役割が大事なのは解っている。ただ、我々には本当に他にも出来る事はないのか、とね」
(一日でも早く部族の戦士たちが戻れる様に、そして皆で再び故郷へ帰れる様に。私達に出来る事を精一杯やろうと、やるべきだと思ったきっかけが、ここにはある)
当時とは違う。今はやるべき事がはっきりしている。後は行動するだけだ。シュクトゥの決起の切欠がマギア砦での出来事であった。
「今そう出来ているかは分からないが……前には進めているとそう思いたいな」
***
今回のハンター達の偵察によりマギア砦を占拠していた怠惰の軍勢は既に退いた事が確認された。
しかし怠惰の歪虚達は指揮官が倒された為に、撤退したに過ぎない。いずれまた侵攻してくる事も十分に考えられる。
ナナミ川より北の辺境地域は、未だ予断を許さない状況が続いている……。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/05/29 00:16:46 |
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そういえば【雑談】 龍崎・カズマ(ka0178) 人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2016/05/29 01:32:49 |