ゲスト
(ka0000)
たらい回しの、洗濯もの(軍需品)
マスター:DoLLer

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 3日
- 締切
- 2016/05/31 07:30
- 完成日
- 2016/06/11 15:19
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●バルトアンデルス(連合軍に帝国兵増援派遣8日前)
#大規模作戦に何を持っていきますか?
怪我の手当て、搬送などに清潔な布がたくさんあるといいと思います。
薬草士 ルーフィ
●帝国第一師団(同上7日前朝)
「ということで、街で聞き込みをしたこの意見は、連合軍として重要だと思うのです。帝国からの派遣兵に持って行かせましょう」
新しく兵長に抜擢された青年の言葉に、副師団長のシグルドもこくりと頷いた。
「そうだね。兵長は準備を。布については上に具申しておくよ」
●オズワルド(第一師団長)(7日前昼)
「シグルドの部下はまともなんだよな……承認だ。カッテの決済ボックスにいれておかねぇとな」
●カッテ(帝国皇帝代理人)(7日前夜)
「はい、承認。軍務課にお願いします」
●軍務課(6日前午前)
「布……。うわぁ、あんまりないなぁ。とりあえず買うか……財務課に回そう」
●財務課(6日前午後)
「国庫から歳出を認めます。見積もりは必ず取ること、領収書は貰うように」
●帝都バルトアンデルスの商人(5日前午前)
「いきなりそんなの言わんといてください。困りますねん。ある分だけ渡しておきますわな」
●軍務課(5日前お昼)
「うわ、足りないよ。仕方ない。各師団に問い合わせてみるか」
●各師団(5日前午後)
「予備品を送ります。後で返してください」
「歓楽街で使用済みのシーツを送ります」
「リンゴの荷運びに使った麻袋ならあるので送ります」
「ゾンビが着ていた服を捌きました」
「幽霊船の帆がありました」
etc etc
●軍務課(4日前朝)
「まだちょっと足りない、困ったな。もう時間もないし……仕方ない地方内務課に回して、供出してもらえる分探してもらおう。ちょっとでいいから超速でヨロ!」
●地方内務課(4日前昼)
「また無茶な申請を。……町村に連絡しよう。回収もだ」
●町村(4日前)
「布、つったってなぁ」
「なんでもいいからとにかく欲しいってさ」
「じゃあ小さくなってきられなくなったこの服でいいか」
「雑巾」
「馬の寝床に敷いてた奴」
「親父のふんどし」
「お古のカーテン」
etc etc
●地方内務課(3日前 午前)
「集めたよ。後知らん」
●軍務課(3日前 前述直後)
「戦争なめるな。せめて洗え! あ、各師団からもらったこの布もついでにな!!」
●地方内務課(3日前 昼)
「仕方ないなぁ。おーい、メルツェーデス!!」
●メルツェーデス(地方内務課のヒラ課員)(3日前 午後)
「まてや、こらァァァ!!!!」
地方内務課員のメルツェーデスはせっかくの化粧とパーマが剥がれ落ちるくらいに叫んだ。
放り込まれた布倉庫からは色んな匂いが混ざっていたし、だいたい汚れていた。
「3日でよろしくな!! 金はあるからなんとかしてくれ」
先輩は予算書の入った洗濯タライと洗剤のセットを押し込むと、さっさと逃げ出してしまった。
後は叫ぼうが、暴れようがメルツェーデスをフォローしてくれる人は誰もいなかった。
ひたすらキレた後、肩で息をしたメルツェーデスは予算書を手に取り、憎悪の瞳を燃やした。
「シグルドぉぉ。こんな時間設定的に無謀な提案しやがって、頭の中はもう雨季に入ってんじゃないの! あーもぅ。急募で報酬多めにしてハンター雇ってやる……これを言い出した現実をしらないお子ちゃまも巻き込んで、二度とこんなふざけた提案出させないようにしてやる!!」
メルツェーデスは怒り心頭のまま、ハンターオフィスへの依頼書を書き始めたのであった。
#大規模作戦に何を持っていきますか?
怪我の手当て、搬送などに清潔な布がたくさんあるといいと思います。
薬草士 ルーフィ
●帝国第一師団(同上7日前朝)
「ということで、街で聞き込みをしたこの意見は、連合軍として重要だと思うのです。帝国からの派遣兵に持って行かせましょう」
新しく兵長に抜擢された青年の言葉に、副師団長のシグルドもこくりと頷いた。
「そうだね。兵長は準備を。布については上に具申しておくよ」
●オズワルド(第一師団長)(7日前昼)
「シグルドの部下はまともなんだよな……承認だ。カッテの決済ボックスにいれておかねぇとな」
●カッテ(帝国皇帝代理人)(7日前夜)
「はい、承認。軍務課にお願いします」
●軍務課(6日前午前)
「布……。うわぁ、あんまりないなぁ。とりあえず買うか……財務課に回そう」
●財務課(6日前午後)
「国庫から歳出を認めます。見積もりは必ず取ること、領収書は貰うように」
●帝都バルトアンデルスの商人(5日前午前)
「いきなりそんなの言わんといてください。困りますねん。ある分だけ渡しておきますわな」
●軍務課(5日前お昼)
「うわ、足りないよ。仕方ない。各師団に問い合わせてみるか」
●各師団(5日前午後)
「予備品を送ります。後で返してください」
「歓楽街で使用済みのシーツを送ります」
「リンゴの荷運びに使った麻袋ならあるので送ります」
「ゾンビが着ていた服を捌きました」
「幽霊船の帆がありました」
etc etc
●軍務課(4日前朝)
「まだちょっと足りない、困ったな。もう時間もないし……仕方ない地方内務課に回して、供出してもらえる分探してもらおう。ちょっとでいいから超速でヨロ!」
●地方内務課(4日前昼)
「また無茶な申請を。……町村に連絡しよう。回収もだ」
●町村(4日前)
「布、つったってなぁ」
「なんでもいいからとにかく欲しいってさ」
「じゃあ小さくなってきられなくなったこの服でいいか」
「雑巾」
「馬の寝床に敷いてた奴」
「親父のふんどし」
「お古のカーテン」
etc etc
●地方内務課(3日前 午前)
「集めたよ。後知らん」
●軍務課(3日前 前述直後)
「戦争なめるな。せめて洗え! あ、各師団からもらったこの布もついでにな!!」
●地方内務課(3日前 昼)
「仕方ないなぁ。おーい、メルツェーデス!!」
●メルツェーデス(地方内務課のヒラ課員)(3日前 午後)
「まてや、こらァァァ!!!!」
地方内務課員のメルツェーデスはせっかくの化粧とパーマが剥がれ落ちるくらいに叫んだ。
放り込まれた布倉庫からは色んな匂いが混ざっていたし、だいたい汚れていた。
「3日でよろしくな!! 金はあるからなんとかしてくれ」
先輩は予算書の入った洗濯タライと洗剤のセットを押し込むと、さっさと逃げ出してしまった。
後は叫ぼうが、暴れようがメルツェーデスをフォローしてくれる人は誰もいなかった。
ひたすらキレた後、肩で息をしたメルツェーデスは予算書を手に取り、憎悪の瞳を燃やした。
「シグルドぉぉ。こんな時間設定的に無謀な提案しやがって、頭の中はもう雨季に入ってんじゃないの! あーもぅ。急募で報酬多めにしてハンター雇ってやる……これを言い出した現実をしらないお子ちゃまも巻き込んで、二度とこんなふざけた提案出させないようにしてやる!!」
メルツェーデスは怒り心頭のまま、ハンターオフィスへの依頼書を書き始めたのであった。
リプレイ本文
「お、ルーフィさんじゃないっすか」
「お久しぶりです」
無限 馨(ka0544)が手を上げると、依頼人のメルツェーデスの横にいた少女は静かにお辞儀をした。
「へえ、言い出しっぺはあんたかい。それじゃ一丁ばかし頑張らなくちゃな」
文挟 ニレ(ka5696)は以前出会ったルーフィの顔を見ると、そう語り掛けて腕まくりをした。
「スピードスターと呼ばれたオレがいれば、洗濯物なんてソッコーっすよ。まあ大船に乗ったつもりで……」
無限はそんなルーフィに笑ってそう言うと倉庫の扉を勢いよく開いた。
「あ」
メルとルーフィの二人がその動作に声を揃えた瞬間。
無限という名の大船は即座に沈没した。
衣類の山という津波によって。
「……うっひゃあ。壮絶。もしもーし、生きてる?」
ミィリア(ka2689)は悪臭を放つゴミ……もとい布の山に埋もれた無限に呼びかると山が動いた。
金髪をぼさぼさにして衣類の山から這い出す無限が身動きすると、ホコリと垢と酢の臭いを混ぜて腐らせたような鼻を刺すような悪臭が吹き出し、思わずミィリアは後ずさった。
「しぐるぅぅぅどぉぉぉぉ」
無限は発起人を心底恨んだ。どこが洗濯ものだよ。ゴミじゃねーか! 洗濯じゃなくて廃品回収の間違いだろ!
「どうみてもゴミの山ね。こんなものを医療用具として利用できると考えて提出した方には呪いあれ、ですわ」
無限の顔にかかっていたふんどしをツマみあげた音羽 美沙樹(ka4757)は眉をひそめてそう言い、呪言の短歌を口ずさみながら放り投げると、それは 高瀬 未悠(ka3199)の目の前に落ちて来た。
「ちょっと、やめてよね!」
「ごめんなさい。そちらに投げたつもりはないのだけど……変ね?」
「あ、足になんか引っかかって抜けないっす。へ、へるぷみー」
「引っ張て上げるね! せぇの!!」
どさどさどさぁぁぁ。
「こらぁ、何仕事増やしてのさ!」
混乱は深まる一方。ぎゃーぎゃーと騒ぐ仲間達の混乱を収めたのは一之瀬 智香(ka6257)の手を叩く音だった。
「はいはい、そこまでになさってください。お仕事は一刻を争います。まず分別から始めましょう」
小学生の娘を持った経験のある母親の力、いと強し。あっと言う間に場は大人しくなり、本来の仕事をする雰囲気に戻っていく。
「ええと、メルツェーデスさんには、錬魔院で洗濯機の借用と、水の浄化のためにピュアウォーターが使える魔術師さんの雇用をお願いします。皆さんはまず綺麗な布だけを分別を優先しましょうね。皆さん、頼りにしています」
すっかり毒気を抜かれたメンバーは元気の良い返事を皮切りにそれぞれの本来の仕事に移っていったのを見送って、智香は隠れて安堵の吐息を吐いた。
「あのぅ、オレはどうしたらいいんすかね……」
まだ一人、山の中に埋もれた無限を除いて。
●次の日
「ゾンビの服も雑巾も、ぽいぽいぽぽーーい♪」
ミィリアは鼻歌まじりに血や体液で染まった使えそうもない布地や汚れた下着など次々と火の中に放り込んでいった。どうせ洗っても使えないものばかりだ。洗うより燃料にしちゃった方が効率がいい。彼女が持ってきた簡易かまどは勢いよく炎を上げる。
「ミィリアさん。この帆布つかえそうじゃないっすか?」
「けっこう綺麗だよね。裁断すれば、担架に使う布に使えるんじゃないかな」
第四師団からの提供物資として届いた帆布を広げた無限とミィリアはその白さに顔を見合わせて頷き合った。
潮の香りがほんのりと香る程度で、それはそれで海を旅している光景を彷彿とさせる。もはや人間の住む地ではない果ての地であれば、その程度なら返って心休まるのではないかと思うほどだ。
手にしていると耳に浮かぶ屍となった海賊の鬨の声。
時折、帆に人間の顔が帆に浮かんでは消えるのもまた……。
「……やっぱり焼いちゃおう」
「そっすね!」
若干危険な感じを読み取った二人はさっさと炎の中に帆を投げ入れたのであった。
「これも入れてくれる? 残ってたんだけど」
そこに未悠がふんどしを持ってきた。
「あれ? さっきまとめて入れたはずだけど、残ってたのかな?」
ミィリアはかまどの中を覗き込んで首を傾げよた。しかし小さなかまどは幽霊船の帆やゾンビの服によって黒い炎と恨みつらみの声で満ちており、どれがどれだかさっぱりだ。
「なんでふんどしばっかり引き当てるのかしら……まるで呪いみたい」
ぶつくさ言いつつ未悠はふんどしをかまどの中に無理やり押し込むと、さっさと干場を作るべく外へ出て行った。
「未悠ってば実はふんどし好きなんじゃないかな……は、まさか隠れおサムライ!」
ふんどし=和(リアルブルー)の装備=おサムライ=ミィリアの憧れ
何気なしに話していた未悠に対するミィリアの目つきが変わる。そういえば転移してきたって言ってた気がする。
「これは是非、休憩の時に色々教えてもらわないと! でござるっ」
「おっ、いい具合に燃えてるじゃないか。結構結構。煮沸させてもらうよ。ルーフィ」
茶色の大釜をかまどにどんっと置いたニレに呼ばれて、ルーフィは早速釜に入れた水の様子を確認しながら振り返った。
「はい、お任せください。それにしても、この釜どこからご用意されたんですか?」
「そいつぁ、あっしの店の品物なんだよ。文福の茶色釜はラッキーアイテムって言われててねぇ」
狸が化けてるんじゃないじゃないだろうか。
なーんとなく、茶色の釜を見てそこにいた面々は顔を見合わせたが、ニレはそんな一同の顔を見てしたり顔で笑った。
「そんな大切なお店のアイテムを……文挟さんのお気持ち、しっかと受け止めさせていただきます」
「あ、いや、そんな真面目にしなくてもサ……ああ、もうあんたは本っ当に生真面目だねぇ」
ニレはぼさぼさの自分の頭をがしがしと掻くと無限に助けを求める視線をよこした。
「楽しくやるのが長く続くコツっすよ! パルムとアリスと一緒に楽しくやるといいっす!」
無限は連れて来た妖精たちを呼ぶと、二人の妖精が賑やかにルーフィの周りを飛び交う様子を見つめるルーフィは身を固くしていたが頬に挿した赤みからして、嬉しくなっているのだろう。これなら楽しくやってくれるはず!
「では煮沸がんばってきますね」
「よっし、それじゃ選り分けも急がないとね!」
やる気が伝播したのか、未悠も改めて腕まくりをすると未分別の布の山へと立ち向かっていった。
●
「いくっすよ!!!」
無限が覚醒して、軽く跳ねると、スピードスターの名に恥じぬ高速移動で洗濯物の山を登りながら選別し、先駆が必要な物は美沙樹の待つ大タライの中、また小物は智香の待つ洗濯機に投げ飛ばした。
「先手必勝!」
美沙樹がその洗濯物を掛矢で叩き落とすと、リズムよく叩きはじめる。
「祖霊まします この山河 敵に踏ませてなるものか」
リズムは東方の長唄らしくゆるやかなものだが、その中に細かなリズムでお湯に沈めた洗濯ものを叩いて汚れを浮かせる。
「お、エトファリカの戦節をこんなところで聞くことになるたぁね」
ニレはその拍子を聴いてにやりとし、掛矢でピックアップされた洗濯物を受け取る。
「代わりに洗濯ものでも 踏みましょか 人はタライ 人は洗剤っとな」
鬼のしっかとした腕でくるくるっと洗濯ものを巻き取ると、そのまま軽くしぼりあげると、端をミィリアにパスする。
「なになに、なんかいい感じの歌。ミィリアも歌いたい、でごさるっ」
ミィリアも詩吟のリズムに反応すると、渡された洗濯ものの端を刀の鞘に巻き付けると回転させて、捻じり上げていく。
「「汚れ一つに 情けは無用 仇の如き 敵の如きぃぃぃぃ」」
揃って唄いながらそのままぎゅぎゅーっと洗濯ものを一気に絞り上げる。
「さぁ、うなれ、女子力のみせるときぃぃぃぃ!!」
びりぃぃぃぃ。
洗濯物は、散り散りになって宙を舞った。
「女子力ってのは一体……」
「えへ」
女子力に負けて地面に臥せったニレのぼやきに、ミィリアはやりすぎちゃった☆ と苦笑いするしかなかった。
「多少の失敗はありますわ。もう加減は大丈夫でしょ?」
智香はささっと破れた布をかまどコーナーに押しやると、メルツェーデスの借りて来た錬金洗濯機で洗いあげた洗濯ものを渡した。
失敗を責めない母親心に、どうしたものかと悩む場の空気が一掃される。
「こちらもお願いしますね」
「よっし、それじゃ一之瀬の洗濯物はミィリアに任せるよ。あっしは美沙樹の方の濯ぎをするよ」
「了解! でござるっ。それで洗いあがりは……よろしくねっ」
今度は適当な加減で絞り切った布を、思いっきり倉庫の外に投げ飛ばした。
「受け取ったわ! 気合い入れて干すからねっ」
外に縦横無尽に張り巡らせた洗濯紐の上で洗濯ものをキャッチした未悠は、そのまま紐のしなりを利用して飛び跳ねると尻尾でバランスを取りつつ、洗濯物を上から吊り下げていく。
そしてフィニッシュにたなびくふんどし。
「ちょっと、なんでこいつ混ざってるのよ!?」
遠くから上がる悲鳴が聞こえつつも。
彼女の軌跡には白く輝く洗濯物が風にはためいていた。
「いける、これなら全部洗濯できるかも……!!」
借用書やなどの書類の束を抱えたメルツェーデスは次々と洗いあがっていく布の山を見て、感激に打ち震えていた。
●休憩
太陽は頂点を過ぎて、気持ちの良いお昼過ぎ。外はそよ風がちょうど良い頃合いだ。
倉庫の中のひどい臭いと光景の中ではとても休憩にならないと、皆は揃って外に出て来た。
「きゅーけっ、きゅーけっ♪」
「あ、でも、キリのいいところまで」
案の定休憩のタイミングを飛ばそうとしていたルーフィは無限のアリスとパルムに連れられて、外に出て来た。
それをよしよしと無限は頷くと、無事大役を果たした二匹に飴玉を渡す。
「さ、小休憩というわけにもまいりませんわ。しっかり動いた分、しっかり栄養とらないととってくださいますように」
美沙樹はマッシュポテトとソーセージをまとめて乗っけた大皿を切り株に載せた。
「えーーー、甘いモノがいい。3時はおやつって相場が決まっているのよ」
未悠が口を尖らせたが智香がくすくすと笑う。
「お楽しみは後の方がいいんじゃないかしら? それとも先に食べてしまう方?」
「う、最後までとっとく派なのよ……ううう、せっかくリゼリオの流行りのお菓子屋さんで買ってきたのがはやく食べたくて食べたくて」
せっかくと買って来た鳥のデザインがあしらわれた菓子折を見下ろす未悠。
「流行りなの?」
「そうそう、並んだのよ。ほら、この新緑のクリームパフが見た目もよくて」
「あ、本当。美味しそうね」
菓子折を除いた智香は思わず目を輝かせて、そのまま勧められるままにパフをぱくり。
「ご飯の前の方ですけれどもよろしかったかしら?」
「あ、ごめんなさい。つい」
クスクス笑う美沙樹に、智香は顔を赤らめた。ご飯の前だと言っていた自分なのに。つい不注意が働いてしまう。
「ミィリアはこっちがいいな。お酒のアテにぴったりだもん」
「あら、ダメよ。お酒は成人してからです」
その一言にミィリアの年齢を知る人間は揃って押し黙った。
言えない。ミィリアが実は智香より年上だなんて言えない。
「まぁ、いいじゃないか。覚醒者が酒の一杯か二杯で成長に影響が出やしないさ。あっしはこの空にかけて澄んだ酒がいいや」
ニレは沈鬱なる空気を笑い飛ばして、改めて洗濯物が広がる空を眺めた。
穏やかな日差しが降り注ぎ、陽気が若草の匂いと共に大地から吹く。その香りを清涼な風が遥か地平線までゆっくりと駆け抜け。汚れを落とした白い布がゆらゆら。
鳥のさえずりが耳に優しい。
「近頃、頭の痛くなるような話ばっかりだったけど、目を向けりゃあこんなに平和な世界も広がってんだな」
「この平和な世界を守るためにも戦わなくちゃならないっすけど……戦ばかりだとついつい忘れてしまうんスよね」
無限も金髪を風になびかせつつ、マッシュポテトを口に含んでいた。
「へへへ、久方ぶりに良い夢見れそうだ。ルーフィ、あんたはどうだい?」
休憩中でもみんなにお茶を配って回っていたルーフィはその言葉に振り向くと静かにほほ笑んだ。
「皆様の力があるのですから、きっと良い夢に違いありませんね。これがもつとたくさんの良い夢につながるように」
●最終日
ミィリアは大きく上げて振った手をそのままに草原に大の字になって寝そべっていた。
「やりきったぁ……」
そんな彼女の鼻先に、ちょんと冷たい雫がかかる。何かと手を触れて見ればいい香りが漂うクリームのようだった。
「お疲れ様でした。お手入れを忘れちゃダメよ? メルツェーデスさんからのご褒美ですって」
智香はクリームを手に馴染ませて微笑んでいる横でメルツェーデスは深いため息をついていた。
「ありがとう。独りでは絶対無理だったわ……ルーフィ。こういうの無茶だってわかったでしょ!」
「でもおかげで使える布は全部お渡しできましたね!」
ルーフィの言う通り、使用可能な布は全部洗濯し渡すことができたのだ。トラックでやってきた連合軍として編入される帝国兵士が嬉しそうにそれを荷台に運び込んでいた。
「北の果てに置き去りにされる人のいないよう。みんなで戻って来れるよう。使用いたしますっ」
「怪我せずに使わないのが一番だよ。無理しなさんな」
ニレは兵士の感謝に苦笑いをしつつ、積み込まれる布の山を見送っていた。その横では未悠が包帯を握りしめて深いため息をついている。
「それ、あのふんどしかい?」
「そうよ。何度も何度も蹴散らされようとも戻ってきて、ここまで白くなったの……もうあなたは立派な包帯よ!」
そう語る未悠の眼は、寝不足で血走っていた。もう狂気が近い。
「……音羽。呪いったって、あそこまでしなくても良かったんじゃないかい?」
ニレの言葉に、使いすぎて壊れた洗濯機をいじくり回していた美沙樹が顔を上げた。
「あたしは持ち主に呪いあれと歌いましたけれど……」
……。
二人が未悠に視線がいく。
「ふふふ、あなたミルフィーユみたいで素敵よ」
「高瀬さん、ミルフィーユの幻想はいいっすけど、口に入れる前に見送りしましょうね……」
筒状に巻いた包帯をうっとり眺めて呟く未悠をなだめ、ふらふらの無限が包帯をそっとトラックの積み荷に放り込んだ。
「それでは行ってまいります!!」
兵士の一声でトラックにエンジンがかかると、ハンター達もそろって並び手を振る。
そして走りゆくトラックの荷台から、兵士達が顔を出したかと思うと、洗いあがった大きな布をそれぞれ手にして、旗のように振ってくれた。
「ありがとうなぁぁぁぁ!!!!」
「がんばってねーーーーーーっ!!」
ミィリアが去りゆくトラックに思いっきり声をかけて手を振った。
見上げた空はどこまでも、綺麗な色。
「お久しぶりです」
無限 馨(ka0544)が手を上げると、依頼人のメルツェーデスの横にいた少女は静かにお辞儀をした。
「へえ、言い出しっぺはあんたかい。それじゃ一丁ばかし頑張らなくちゃな」
文挟 ニレ(ka5696)は以前出会ったルーフィの顔を見ると、そう語り掛けて腕まくりをした。
「スピードスターと呼ばれたオレがいれば、洗濯物なんてソッコーっすよ。まあ大船に乗ったつもりで……」
無限はそんなルーフィに笑ってそう言うと倉庫の扉を勢いよく開いた。
「あ」
メルとルーフィの二人がその動作に声を揃えた瞬間。
無限という名の大船は即座に沈没した。
衣類の山という津波によって。
「……うっひゃあ。壮絶。もしもーし、生きてる?」
ミィリア(ka2689)は悪臭を放つゴミ……もとい布の山に埋もれた無限に呼びかると山が動いた。
金髪をぼさぼさにして衣類の山から這い出す無限が身動きすると、ホコリと垢と酢の臭いを混ぜて腐らせたような鼻を刺すような悪臭が吹き出し、思わずミィリアは後ずさった。
「しぐるぅぅぅどぉぉぉぉ」
無限は発起人を心底恨んだ。どこが洗濯ものだよ。ゴミじゃねーか! 洗濯じゃなくて廃品回収の間違いだろ!
「どうみてもゴミの山ね。こんなものを医療用具として利用できると考えて提出した方には呪いあれ、ですわ」
無限の顔にかかっていたふんどしをツマみあげた音羽 美沙樹(ka4757)は眉をひそめてそう言い、呪言の短歌を口ずさみながら放り投げると、それは 高瀬 未悠(ka3199)の目の前に落ちて来た。
「ちょっと、やめてよね!」
「ごめんなさい。そちらに投げたつもりはないのだけど……変ね?」
「あ、足になんか引っかかって抜けないっす。へ、へるぷみー」
「引っ張て上げるね! せぇの!!」
どさどさどさぁぁぁ。
「こらぁ、何仕事増やしてのさ!」
混乱は深まる一方。ぎゃーぎゃーと騒ぐ仲間達の混乱を収めたのは一之瀬 智香(ka6257)の手を叩く音だった。
「はいはい、そこまでになさってください。お仕事は一刻を争います。まず分別から始めましょう」
小学生の娘を持った経験のある母親の力、いと強し。あっと言う間に場は大人しくなり、本来の仕事をする雰囲気に戻っていく。
「ええと、メルツェーデスさんには、錬魔院で洗濯機の借用と、水の浄化のためにピュアウォーターが使える魔術師さんの雇用をお願いします。皆さんはまず綺麗な布だけを分別を優先しましょうね。皆さん、頼りにしています」
すっかり毒気を抜かれたメンバーは元気の良い返事を皮切りにそれぞれの本来の仕事に移っていったのを見送って、智香は隠れて安堵の吐息を吐いた。
「あのぅ、オレはどうしたらいいんすかね……」
まだ一人、山の中に埋もれた無限を除いて。
●次の日
「ゾンビの服も雑巾も、ぽいぽいぽぽーーい♪」
ミィリアは鼻歌まじりに血や体液で染まった使えそうもない布地や汚れた下着など次々と火の中に放り込んでいった。どうせ洗っても使えないものばかりだ。洗うより燃料にしちゃった方が効率がいい。彼女が持ってきた簡易かまどは勢いよく炎を上げる。
「ミィリアさん。この帆布つかえそうじゃないっすか?」
「けっこう綺麗だよね。裁断すれば、担架に使う布に使えるんじゃないかな」
第四師団からの提供物資として届いた帆布を広げた無限とミィリアはその白さに顔を見合わせて頷き合った。
潮の香りがほんのりと香る程度で、それはそれで海を旅している光景を彷彿とさせる。もはや人間の住む地ではない果ての地であれば、その程度なら返って心休まるのではないかと思うほどだ。
手にしていると耳に浮かぶ屍となった海賊の鬨の声。
時折、帆に人間の顔が帆に浮かんでは消えるのもまた……。
「……やっぱり焼いちゃおう」
「そっすね!」
若干危険な感じを読み取った二人はさっさと炎の中に帆を投げ入れたのであった。
「これも入れてくれる? 残ってたんだけど」
そこに未悠がふんどしを持ってきた。
「あれ? さっきまとめて入れたはずだけど、残ってたのかな?」
ミィリアはかまどの中を覗き込んで首を傾げよた。しかし小さなかまどは幽霊船の帆やゾンビの服によって黒い炎と恨みつらみの声で満ちており、どれがどれだかさっぱりだ。
「なんでふんどしばっかり引き当てるのかしら……まるで呪いみたい」
ぶつくさ言いつつ未悠はふんどしをかまどの中に無理やり押し込むと、さっさと干場を作るべく外へ出て行った。
「未悠ってば実はふんどし好きなんじゃないかな……は、まさか隠れおサムライ!」
ふんどし=和(リアルブルー)の装備=おサムライ=ミィリアの憧れ
何気なしに話していた未悠に対するミィリアの目つきが変わる。そういえば転移してきたって言ってた気がする。
「これは是非、休憩の時に色々教えてもらわないと! でござるっ」
「おっ、いい具合に燃えてるじゃないか。結構結構。煮沸させてもらうよ。ルーフィ」
茶色の大釜をかまどにどんっと置いたニレに呼ばれて、ルーフィは早速釜に入れた水の様子を確認しながら振り返った。
「はい、お任せください。それにしても、この釜どこからご用意されたんですか?」
「そいつぁ、あっしの店の品物なんだよ。文福の茶色釜はラッキーアイテムって言われててねぇ」
狸が化けてるんじゃないじゃないだろうか。
なーんとなく、茶色の釜を見てそこにいた面々は顔を見合わせたが、ニレはそんな一同の顔を見てしたり顔で笑った。
「そんな大切なお店のアイテムを……文挟さんのお気持ち、しっかと受け止めさせていただきます」
「あ、いや、そんな真面目にしなくてもサ……ああ、もうあんたは本っ当に生真面目だねぇ」
ニレはぼさぼさの自分の頭をがしがしと掻くと無限に助けを求める視線をよこした。
「楽しくやるのが長く続くコツっすよ! パルムとアリスと一緒に楽しくやるといいっす!」
無限は連れて来た妖精たちを呼ぶと、二人の妖精が賑やかにルーフィの周りを飛び交う様子を見つめるルーフィは身を固くしていたが頬に挿した赤みからして、嬉しくなっているのだろう。これなら楽しくやってくれるはず!
「では煮沸がんばってきますね」
「よっし、それじゃ選り分けも急がないとね!」
やる気が伝播したのか、未悠も改めて腕まくりをすると未分別の布の山へと立ち向かっていった。
●
「いくっすよ!!!」
無限が覚醒して、軽く跳ねると、スピードスターの名に恥じぬ高速移動で洗濯物の山を登りながら選別し、先駆が必要な物は美沙樹の待つ大タライの中、また小物は智香の待つ洗濯機に投げ飛ばした。
「先手必勝!」
美沙樹がその洗濯物を掛矢で叩き落とすと、リズムよく叩きはじめる。
「祖霊まします この山河 敵に踏ませてなるものか」
リズムは東方の長唄らしくゆるやかなものだが、その中に細かなリズムでお湯に沈めた洗濯ものを叩いて汚れを浮かせる。
「お、エトファリカの戦節をこんなところで聞くことになるたぁね」
ニレはその拍子を聴いてにやりとし、掛矢でピックアップされた洗濯物を受け取る。
「代わりに洗濯ものでも 踏みましょか 人はタライ 人は洗剤っとな」
鬼のしっかとした腕でくるくるっと洗濯ものを巻き取ると、そのまま軽くしぼりあげると、端をミィリアにパスする。
「なになに、なんかいい感じの歌。ミィリアも歌いたい、でごさるっ」
ミィリアも詩吟のリズムに反応すると、渡された洗濯ものの端を刀の鞘に巻き付けると回転させて、捻じり上げていく。
「「汚れ一つに 情けは無用 仇の如き 敵の如きぃぃぃぃ」」
揃って唄いながらそのままぎゅぎゅーっと洗濯ものを一気に絞り上げる。
「さぁ、うなれ、女子力のみせるときぃぃぃぃ!!」
びりぃぃぃぃ。
洗濯物は、散り散りになって宙を舞った。
「女子力ってのは一体……」
「えへ」
女子力に負けて地面に臥せったニレのぼやきに、ミィリアはやりすぎちゃった☆ と苦笑いするしかなかった。
「多少の失敗はありますわ。もう加減は大丈夫でしょ?」
智香はささっと破れた布をかまどコーナーに押しやると、メルツェーデスの借りて来た錬金洗濯機で洗いあげた洗濯ものを渡した。
失敗を責めない母親心に、どうしたものかと悩む場の空気が一掃される。
「こちらもお願いしますね」
「よっし、それじゃ一之瀬の洗濯物はミィリアに任せるよ。あっしは美沙樹の方の濯ぎをするよ」
「了解! でござるっ。それで洗いあがりは……よろしくねっ」
今度は適当な加減で絞り切った布を、思いっきり倉庫の外に投げ飛ばした。
「受け取ったわ! 気合い入れて干すからねっ」
外に縦横無尽に張り巡らせた洗濯紐の上で洗濯ものをキャッチした未悠は、そのまま紐のしなりを利用して飛び跳ねると尻尾でバランスを取りつつ、洗濯物を上から吊り下げていく。
そしてフィニッシュにたなびくふんどし。
「ちょっと、なんでこいつ混ざってるのよ!?」
遠くから上がる悲鳴が聞こえつつも。
彼女の軌跡には白く輝く洗濯物が風にはためいていた。
「いける、これなら全部洗濯できるかも……!!」
借用書やなどの書類の束を抱えたメルツェーデスは次々と洗いあがっていく布の山を見て、感激に打ち震えていた。
●休憩
太陽は頂点を過ぎて、気持ちの良いお昼過ぎ。外はそよ風がちょうど良い頃合いだ。
倉庫の中のひどい臭いと光景の中ではとても休憩にならないと、皆は揃って外に出て来た。
「きゅーけっ、きゅーけっ♪」
「あ、でも、キリのいいところまで」
案の定休憩のタイミングを飛ばそうとしていたルーフィは無限のアリスとパルムに連れられて、外に出て来た。
それをよしよしと無限は頷くと、無事大役を果たした二匹に飴玉を渡す。
「さ、小休憩というわけにもまいりませんわ。しっかり動いた分、しっかり栄養とらないととってくださいますように」
美沙樹はマッシュポテトとソーセージをまとめて乗っけた大皿を切り株に載せた。
「えーーー、甘いモノがいい。3時はおやつって相場が決まっているのよ」
未悠が口を尖らせたが智香がくすくすと笑う。
「お楽しみは後の方がいいんじゃないかしら? それとも先に食べてしまう方?」
「う、最後までとっとく派なのよ……ううう、せっかくリゼリオの流行りのお菓子屋さんで買ってきたのがはやく食べたくて食べたくて」
せっかくと買って来た鳥のデザインがあしらわれた菓子折を見下ろす未悠。
「流行りなの?」
「そうそう、並んだのよ。ほら、この新緑のクリームパフが見た目もよくて」
「あ、本当。美味しそうね」
菓子折を除いた智香は思わず目を輝かせて、そのまま勧められるままにパフをぱくり。
「ご飯の前の方ですけれどもよろしかったかしら?」
「あ、ごめんなさい。つい」
クスクス笑う美沙樹に、智香は顔を赤らめた。ご飯の前だと言っていた自分なのに。つい不注意が働いてしまう。
「ミィリアはこっちがいいな。お酒のアテにぴったりだもん」
「あら、ダメよ。お酒は成人してからです」
その一言にミィリアの年齢を知る人間は揃って押し黙った。
言えない。ミィリアが実は智香より年上だなんて言えない。
「まぁ、いいじゃないか。覚醒者が酒の一杯か二杯で成長に影響が出やしないさ。あっしはこの空にかけて澄んだ酒がいいや」
ニレは沈鬱なる空気を笑い飛ばして、改めて洗濯物が広がる空を眺めた。
穏やかな日差しが降り注ぎ、陽気が若草の匂いと共に大地から吹く。その香りを清涼な風が遥か地平線までゆっくりと駆け抜け。汚れを落とした白い布がゆらゆら。
鳥のさえずりが耳に優しい。
「近頃、頭の痛くなるような話ばっかりだったけど、目を向けりゃあこんなに平和な世界も広がってんだな」
「この平和な世界を守るためにも戦わなくちゃならないっすけど……戦ばかりだとついつい忘れてしまうんスよね」
無限も金髪を風になびかせつつ、マッシュポテトを口に含んでいた。
「へへへ、久方ぶりに良い夢見れそうだ。ルーフィ、あんたはどうだい?」
休憩中でもみんなにお茶を配って回っていたルーフィはその言葉に振り向くと静かにほほ笑んだ。
「皆様の力があるのですから、きっと良い夢に違いありませんね。これがもつとたくさんの良い夢につながるように」
●最終日
ミィリアは大きく上げて振った手をそのままに草原に大の字になって寝そべっていた。
「やりきったぁ……」
そんな彼女の鼻先に、ちょんと冷たい雫がかかる。何かと手を触れて見ればいい香りが漂うクリームのようだった。
「お疲れ様でした。お手入れを忘れちゃダメよ? メルツェーデスさんからのご褒美ですって」
智香はクリームを手に馴染ませて微笑んでいる横でメルツェーデスは深いため息をついていた。
「ありがとう。独りでは絶対無理だったわ……ルーフィ。こういうの無茶だってわかったでしょ!」
「でもおかげで使える布は全部お渡しできましたね!」
ルーフィの言う通り、使用可能な布は全部洗濯し渡すことができたのだ。トラックでやってきた連合軍として編入される帝国兵士が嬉しそうにそれを荷台に運び込んでいた。
「北の果てに置き去りにされる人のいないよう。みんなで戻って来れるよう。使用いたしますっ」
「怪我せずに使わないのが一番だよ。無理しなさんな」
ニレは兵士の感謝に苦笑いをしつつ、積み込まれる布の山を見送っていた。その横では未悠が包帯を握りしめて深いため息をついている。
「それ、あのふんどしかい?」
「そうよ。何度も何度も蹴散らされようとも戻ってきて、ここまで白くなったの……もうあなたは立派な包帯よ!」
そう語る未悠の眼は、寝不足で血走っていた。もう狂気が近い。
「……音羽。呪いったって、あそこまでしなくても良かったんじゃないかい?」
ニレの言葉に、使いすぎて壊れた洗濯機をいじくり回していた美沙樹が顔を上げた。
「あたしは持ち主に呪いあれと歌いましたけれど……」
……。
二人が未悠に視線がいく。
「ふふふ、あなたミルフィーユみたいで素敵よ」
「高瀬さん、ミルフィーユの幻想はいいっすけど、口に入れる前に見送りしましょうね……」
筒状に巻いた包帯をうっとり眺めて呟く未悠をなだめ、ふらふらの無限が包帯をそっとトラックの積み荷に放り込んだ。
「それでは行ってまいります!!」
兵士の一声でトラックにエンジンがかかると、ハンター達もそろって並び手を振る。
そして走りゆくトラックの荷台から、兵士達が顔を出したかと思うと、洗いあがった大きな布をそれぞれ手にして、旗のように振ってくれた。
「ありがとうなぁぁぁぁ!!!!」
「がんばってねーーーーーーっ!!」
ミィリアが去りゆくトラックに思いっきり声をかけて手を振った。
見上げた空はどこまでも、綺麗な色。
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
---|
面白かった! | 7人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/05/28 23:36:21 |
|
![]() |
洗濯・準備 音羽 美沙樹(ka4757) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2016/05/30 23:01:21 |