ゲスト
(ka0000)
ただひたすらに殲滅せよ
マスター:植田誠

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/06/02 19:00
- 完成日
- 2016/06/15 22:30
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
あるところに、墓地があった。寂れた墓地だ。
管理する者もいない。恐らく昨今の歪虚進行を避けて別の場所に移り住んだのだろう。
その地は、いつの間にかゾンビがはびこる歪虚の住まいと化していた。
またあるところに、古戦場があった。
戦いの跡は過去へと消え、わずかに白骨化した死体や、誰かが扱っていたのだろう武具が転がっている。
その地では、いつの間にかスケルトンたちが闊歩するようになっていた。
またまたあるとろこに、すでに人のいなくなった集落があった。
コボルドかゴブリンにでも襲われたのだろう。未だ消えぬ血の跡があたりには残されている。
そしてやっぱり、その場所では雑魔が発生していた。
一見、単なる雑魔発生の事案に見える。
この状況を空から発見した第5師団のグリフォンライダーも緊急性は無いと判断し、ハンターの方へ依頼を出すに留めた。
だが問題だったのはこれらの現場がそれぞれ近い場所にあったという点だ。いつのまにやらこの雑魔たちはひとところに集まって、群れをつくっていたのだ。
群れと言っても何かを集団でするわけではない。
指揮する者もいなければ、同士討ちをするわけでもない。ただただその場を歩き回っているだけだ。
だが、3か所から集まってきただけあって数が多いのが厄介なところだ。
そうとも知らずやってきたハンターたちは、所狭しとうろつく雑魔を見て絶句する。そして、これらがもしこの場から住人のいる場所へ移動したらどうなるかを想像し……この場で殲滅することを決めた。
こうして、ハンターたちと雑魔の終わりの見えない戦いが始まった。
あるところに、墓地があった。寂れた墓地だ。
管理する者もいない。恐らく昨今の歪虚進行を避けて別の場所に移り住んだのだろう。
その地は、いつの間にかゾンビがはびこる歪虚の住まいと化していた。
またあるところに、古戦場があった。
戦いの跡は過去へと消え、わずかに白骨化した死体や、誰かが扱っていたのだろう武具が転がっている。
その地では、いつの間にかスケルトンたちが闊歩するようになっていた。
またまたあるとろこに、すでに人のいなくなった集落があった。
コボルドかゴブリンにでも襲われたのだろう。未だ消えぬ血の跡があたりには残されている。
そしてやっぱり、その場所では雑魔が発生していた。
一見、単なる雑魔発生の事案に見える。
この状況を空から発見した第5師団のグリフォンライダーも緊急性は無いと判断し、ハンターの方へ依頼を出すに留めた。
だが問題だったのはこれらの現場がそれぞれ近い場所にあったという点だ。いつのまにやらこの雑魔たちはひとところに集まって、群れをつくっていたのだ。
群れと言っても何かを集団でするわけではない。
指揮する者もいなければ、同士討ちをするわけでもない。ただただその場を歩き回っているだけだ。
だが、3か所から集まってきただけあって数が多いのが厄介なところだ。
そうとも知らずやってきたハンターたちは、所狭しとうろつく雑魔を見て絶句する。そして、これらがもしこの場から住人のいる場所へ移動したらどうなるかを想像し……この場で殲滅することを決めた。
こうして、ハンターたちと雑魔の終わりの見えない戦いが始まった。
リプレイ本文
●
ハンターたちの前に存在する歪虚群。スケルトンやゾンビで構成された歪虚の、数は……考えたくもない。これだけの数が良く集まったものだと感心する。
「この数……このまま放置していたら大変なことになるの」
数の多さに圧倒されるファリス(ka2853)。同じような感想を持ったのはその隣にいたレオーネ・インヴェトーレ(ka1441)だった。
「なんか話よりえらいことになってない、師団長……?」
依頼をしてきたのは第五師団だ。そこの団長に恨み言の一つは言ってやりたいところだが……
「ま、いいさ。腕試しできるチャンスだぜ」
そう言って気を取り直す。魔導アーマーも手に入れ、前衛方として戦う機会も増えることだろう。そうなればいつかのように射撃戦ではなく、至近での殴りあいも増えるため、慣れていく必要があるという考えのようだ。
「天気わりぃな。じめじめな上に腐臭まで酷いときた! 最悪だな!」
悪態をつきつつロロ・R・ロベリア(ka3858)は地面に向かって斧を叩きつける。時間がないためあまり深く、広い範囲でとはいかないが、これにより溝が出来た。
「おまえらはこの後ろにいな!」
敵がこの溝に躓けば良し。躓かなくともジャンプするなりして通ろうとすれば多少時間が稼げる。防御柵の簡易代用品といったところか。口調の悪さゆえにそうは見えないが、案外仲間思いのところがありそうだ。
「それじゃ、行くとすっか。片っ端から潰してけばいーんだろ? 好きだぜ、そういうの」
そう言って斧を再度振り上げる。その道先を風の刃が駆け抜け、歪虚を切り裂いた。ファリスのウィンドスラッシュだ。
「ファリスも、頑張って退治するの!」
「サンキュー! それじゃ、脳ミソすっからかんにして楽しもうぜ!」
そう言って駆け出すロロ。この時、他のハンターたちもすでに行動を開始していた。
●
魔導バイクのエンジン音が戦場に響く。先行して突っ込んでいったのは白神 霧華(ka0915)だ。
(今の私がどこまでやれるか……試してみます)
数体のゾンビを轢き飛ばしながら群れに突っ込む霧華。さらに鞭を振り回しスペースを確保。そこにバイクを止めると、速やかに盾を構える。
「向かってきますか」
早速敵が群がってくる。右を見ても、左を見ても歪虚だらけだ。こちらの攻撃に逃げまわるケースも想定していたのだが、バイクの駆動音は丁度良い囮になってくれたようだ。
「飛んで火にいるなんとやら……ですね」
向かってきたゾンビの攻撃を盾で受け止め、カウンターアタック。全力反撃でその敵を倒す。これが霧華の基本的な戦闘方針であった。
「相手は特に変哲のない雑魔か……良いな」
霧華と同じく敵中に突っ込んだのはアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)。その心境は半ばリハビリ、半ば八つ当たり。この数の相手に大した胆力であるが、それは驕りではない。アルトの積み重ねてきた戦闘経験による自信の表れだろうか。
「策や能力を気にしなくても良い……何も考えなくてよいというのはシンプルで楽だな」
呟くアルトの背後には、いつのまにか斬られた歪虚の姿。踏鳴を使用しながら駆け抜け様に斬り捨てたようだ。
「さぁ、狩りつくさせてもらおう」
風の如く敵を切り裂く高速剣、散華。その精髄たる速さを歪虚は早速味合わされたのだった。
「これはこれは……まさしく選り取り見取りですね」
敵の数に物怖じしないのはノエル・ウォースパイト(ka6291)も同様だった。それどころか、ノエルはどこか楽しげに、その様子をみて笑う。
「斬り甲斐があるのは良い事です」
そう言って手近なゾンビを叩き斬る。戦闘力という点で見ればまだまだ経験不足の点から拙い部分はあるものの、この程度の敵なら一撃で斬り伏せられる。そうなると、斬り甲斐という意味では手応えが無いかもしれない。
「でも、たくさん斬れるのは……」
しかし、そんなことは関係ない。全ての敵を、平等に、八つ裂きに。この刃が折れない限り。
「もっと、良い事です」
ノエルはそう言うと変わらぬ笑みを浮かべた。
「思った以上の数だね。圧倒されちゃうなぁ」
ユウキ(ka5861)は馬を操りながら呟く。確かに、この数は凄い。だが、それ以上にユウキが思うのは、これが元は生きていた人達なんだということ。
「なんだか、悲しいね……」
だが、一歩も引くわけにはいかない。これらを放置していればいずれ害を為す。
気付くと、ユウキの周囲を炎のようなオーラが覆っている。ソウルトーチだ。命の灯火は歪虚の意識を引き付ける。
「行こう」
せめて、この戦いを以って安らかな眠りを与えよう。そう思いユウキも手綱を握りしめる。
「いやー、ものすごい数ですね! よくもまぁこんなに」
敵集団の大外を回るように駆けるのはナナセ・ウルヴァナ(ka5497)だ。下手に接近すると敵を分散させる結果になる。それに……ナナセは敵に近寄る必要などない。
ナナセは馬上にて、弓を空へと向ける。その矢と腕には鳥を象ったオーラで包まれている。隼急下を使おうというのだ。
「それじゃ、気合入れて掃除しちゃいますかね!」
放たれた矢は反転して急降下。敵の頭上ではじけ、範囲内の歪虚を貫いていく。
「上手くいった! 妖精さんはこのまま周辺警戒のお手伝いをお願いしますね」
そう言うとナナセは再度矢を番えた。
「さぁ、サクサク行きますよ!」
●
「よし、とりあえずはいい感じだな」
そう呟きレオーネは笑みを浮かべる。もちろん、この間にもロックオンレーザーによる対空攻撃と接近するゾンビの撃破も忘れてはいない。お陰で隣にいるファリスにも被害はなし。
作戦は包囲殲滅。ある程度集まったところを範囲攻撃でドカン、と……言葉に出せばシンプルな作戦ではあるのだが、雑魚集団が相手なら適切と言えるだろう。
「といっても、ベストではないか……」
ただ一つの問題として、敵が突っ込んだハンターを別々に追っている為、全体をまとめることは出来ず、いくつかの小集団をつくることになった点だろう。といっても、範囲攻撃も万能ではない。全部集めたところでその全てを範囲に収めることはできないだろう。そう考えれば大した問題ではないか。
(空の敵は任せて大丈夫そうなの……その分、地上の敵は……)
「可能な限り倒す、なの!」
軽く舌打ちをするレオーネを横目にファリスは後方からブリザードで、その小集団を攻撃していく。メガフレアボムの方が範囲は広いが、敵に隠れて味方の姿がはっきりしない段階では使うのが躊躇われた。尤も、霧華などは巻き込まれても耐えきっただろうし、アルトは当たる前に躱しただろうが。
「その調子で頼むぜ、ファリスさん!」
そう言って空の敵にロックオンレーザーを打ち込むレオーネ。だが当たる直前、狙っていた鳥型は側面から矢に貫かれ落ちた。
レオーネ以外にもナナセが対空戦闘を行っていた。
「んんー、このところ掃除の仕事も龍鉱石関連が多かったですからねー」
呟きながら飛行敵を狙い、撃ち落としていくナナセ。射程ギリギリの敵も余裕で直撃を取れる。やはり龍相手とは比較にならないのか。
「それにしても……」
今度は先程より遠くの敵を、猪突矢を使用して狙い撃つ。
「歯ごたえが無さすぎますね」
狙いは過たず、敵を射落とすナナセ。その表情はどこか不機嫌そうだった。
「空の敵は……気にしなくて大丈夫そうだね」
ユウキはわずかに視線を上げ上空を警戒する。だが、こちらに向かってくる気配はない。
ならばと、ユウキは馬首を巡らせ反転。ここまであえて追ってこさせるように走っていたユウキ。それもこのタイミングの為だ。スケルトンが投げてきた骨で多少ダメージを追いながらも、ユウキは突撃。
刺突一閃を使い、追いかけてきていた歪虚を一挙に貫いた。
「オラオラ、こっちだこっち!」
スケルトンを頭蓋から一振りで両断しながらロロは叫ぶ。
その声に従ったのかは分からないが、歪虚はどんどん迫ってくる。
「こんなんじゃ物足りねぇ! もっとどんどん来いや!!」
言いながらも今度は手近なゾンビの両足を切断。崩れ落ちたゾンビの頭を踏み砕きながら、斧をさらに振り回す。
「……って!? っぜぇな! 犬に食わせんぞ骨野郎!!」
その攻撃力はかなりのもの。一般人が見たら恐怖のあまり失禁するレベルだったろうが、歪虚にそんな感情は無い。むしろ攻撃的な分だけ防御が甘く、隙間を縫って投げ込まれる骨や足元を攻撃してくる犬には手を焼いているようだ。
「しょうがねぇなぁ……」
ロロは武器をしっかりと構え堅守。そこに向かってきた犬型。食いついてきたところに斧を落としその刃で首を落とす。
「ざまぁ見ろ! 犬公め!」
だが、足を止めていた分敵が群がってきて、包囲しようとしていた。
「上等だ! かかってきやがれ!!」
ノエルも同様。攻撃の為に足を止めてしまうと囲まれてしまう。それだけ敵の数が多いのだ。
「……突出して孤立しないようにとは考えていましたが……上手くいかないものですね」
そう呟いたノエルは円を意識した動きをとりながら歪虚に攻撃を仕掛けていく。その様は表情とも相まってさながら踊りでも踊っているようだった。尤も、上がるのは喝采ではなく斬られ飛ぶ歪虚の肉と、歪虚からの反撃によって生じた自身の血しぶきであったが。
「っ……! 油断も隙間ない!」
苦戦と言うほどでもないが、霧華もこの数に手を焼いているようだ。見ると、足元に犬型のゾンビが噛みついている。それを鞭で斬り払い、さらに突っ込んできたゾンビを盾で受け止める。そこから全力のカウンターで倒す。だが、その間にまた別方向から攻撃を受ける。
確かに霧華の防御力は高い。盾で受けてからのカウンターは確実に敵を減らしている。だが、盾で受けている際やカウンター時に別方向から攻撃を受けると防ぎようがなく、多少ずつだがダメージは受けてしまう。敵の数が膨大であるこの状況においてその戦法は悪手であったかもしれない。
離脱に使用するつもりだったバイクもすでにゾンビの群れに飲み込まれてどこにあるのか分からない状態だ。こうなれば、ここに踏みとどまって倒していくより他ない。
アルトの方は、霧華とは対照的な動きだ。
密集した敵、その中にある僅かなスペースを縫うように攻撃を躱しながら、敵を斬りつける。無論、回避可能なスペースはわずか。敵の攻撃が直撃しそうな場合だってある。
だが、アルトはその攻撃を刀で受け、すぐさま引く。敵の体勢を崩しつつも、引いた刀はそのまま後方の敵を斬りつけるのに使用。瞬影による早業で攻撃回数を増やし、敵を減らしていく。
全ての攻撃をこうしていなし利用できるわけではなく、稀に攻撃を当てる敵もいるのだが、それはむしろアルトに当てたことを褒めてやるべきであろう。
(この調子なら範囲攻撃の援護なしで大丈夫そうだな)
まだ踏鳴による離脱と散華による殲滅という手も残されているし、リハビリには程よい戦場であったろう。
●
「頃合いだろう、頼むぜファリスさん!」
迫ってきた敵集団をヒートウェーブ・スラッシュで諸共薙ぎ払いながらレオーネは言った。
「分かったの……巻き込まれないようにきちんと離れてなの!」
無線を通して一応の声かけ。ただし、ゾンビの波に呑まれ味方の姿は確認できていない。巻き込まれないことを願い、ファリスはメガフレアボムを使用する。
射程内の集団、その中心点を見据えるファリス。そこに現れたのは白い火球。それは炸裂と同時に白炎を撒き散らし焼き焦がす。火の魔法は効果的だ。魔法に巻き込まれた歪虚は焼かれ崩れる。戦場の一角がぽっかりと空き、かつて歪虚だった塵がわずかに残るのみとなっていた。
ファリスはそれを、2度3度と続けていく。メガフレアボムを使用する前段階でもすでにハンター有利は覆らなかっただろうが、これは決定打となっただろう。
「おお、景気良いじゃねぇか! ちっとは湿気も吹き飛ぶってもんだ!」
その様子を見たロロは丁度手近なゾンビを叩き潰したところだった。元気そうな声ではあったが、それなりにきつい戦いだったのか、倒した後は地面に突き立てた斧にもたれ掛っていたが。
「……どうも、単調になりがちだわ。相手が雑魔ではこんなところかしら」
ノエルの方はそれより更にダメージは大きそうだ。表情こそ崩れてはいないものの、肩で息をしている。
その横には丁度下馬したところのユウキが。馬による機動力を活かして二人の支援を行っていたのだ。
「みんな、無事で良かったよ」
「向こうも片付きましたか」
最後の一体をカウンターで倒した霧華。結果として受けたダメージはロロやノエルのそれより少ないのはさすがと言ったところではある。尤も、ダメージを受けたこと自体が霧華にとって不服だったかもしれないが。
(まだまだ、精進が足りませんね)
横倒しになったバイクを回収しながら、心中で霧華はそう呟いた。
「んんー、そろそろ片付きましたかね?」
双眼鏡で索敵を行っていたナナセがそう言って戻ってきた。
集団から離れた敵がいないか確認、見つけたそばから排除していた。その時、どこか八つ当たり気味に歪虚を的に遊んでいたのだが、皆がそのことを知る由もない。
なんにせよ、逃がしたりはしていないのだから問題は無い。
「こっちも見つからないな。戦闘終了、でいいんじゃないかな」
覚醒を解いたアルトはその場に座り込む。ほぼ無傷だが、それでも病み上がりだから少し疲れたようだ。
「しかしまぁ、雑魚はこうしてまとめて退治すると労力が少なくて済むね。誘蛾灯の雑魔版みたいなのを作って運用出来たら雑魔被害も減らせるかな」
「面白い……けど、今回みたいにあんまり数が多すぎても大変だけどな」
アルトに応えたレオーネは、歪虚が消えたことで只の平野に戻った戦場を見回しホッと息を吐いた。
こうして、戦闘はハンターたちの勝利に終わった。多少傷を受けた者もいたが致命傷には至っておらず、通説に反し戦いは数より質であることを示したのだった。
ハンターたちの前に存在する歪虚群。スケルトンやゾンビで構成された歪虚の、数は……考えたくもない。これだけの数が良く集まったものだと感心する。
「この数……このまま放置していたら大変なことになるの」
数の多さに圧倒されるファリス(ka2853)。同じような感想を持ったのはその隣にいたレオーネ・インヴェトーレ(ka1441)だった。
「なんか話よりえらいことになってない、師団長……?」
依頼をしてきたのは第五師団だ。そこの団長に恨み言の一つは言ってやりたいところだが……
「ま、いいさ。腕試しできるチャンスだぜ」
そう言って気を取り直す。魔導アーマーも手に入れ、前衛方として戦う機会も増えることだろう。そうなればいつかのように射撃戦ではなく、至近での殴りあいも増えるため、慣れていく必要があるという考えのようだ。
「天気わりぃな。じめじめな上に腐臭まで酷いときた! 最悪だな!」
悪態をつきつつロロ・R・ロベリア(ka3858)は地面に向かって斧を叩きつける。時間がないためあまり深く、広い範囲でとはいかないが、これにより溝が出来た。
「おまえらはこの後ろにいな!」
敵がこの溝に躓けば良し。躓かなくともジャンプするなりして通ろうとすれば多少時間が稼げる。防御柵の簡易代用品といったところか。口調の悪さゆえにそうは見えないが、案外仲間思いのところがありそうだ。
「それじゃ、行くとすっか。片っ端から潰してけばいーんだろ? 好きだぜ、そういうの」
そう言って斧を再度振り上げる。その道先を風の刃が駆け抜け、歪虚を切り裂いた。ファリスのウィンドスラッシュだ。
「ファリスも、頑張って退治するの!」
「サンキュー! それじゃ、脳ミソすっからかんにして楽しもうぜ!」
そう言って駆け出すロロ。この時、他のハンターたちもすでに行動を開始していた。
●
魔導バイクのエンジン音が戦場に響く。先行して突っ込んでいったのは白神 霧華(ka0915)だ。
(今の私がどこまでやれるか……試してみます)
数体のゾンビを轢き飛ばしながら群れに突っ込む霧華。さらに鞭を振り回しスペースを確保。そこにバイクを止めると、速やかに盾を構える。
「向かってきますか」
早速敵が群がってくる。右を見ても、左を見ても歪虚だらけだ。こちらの攻撃に逃げまわるケースも想定していたのだが、バイクの駆動音は丁度良い囮になってくれたようだ。
「飛んで火にいるなんとやら……ですね」
向かってきたゾンビの攻撃を盾で受け止め、カウンターアタック。全力反撃でその敵を倒す。これが霧華の基本的な戦闘方針であった。
「相手は特に変哲のない雑魔か……良いな」
霧華と同じく敵中に突っ込んだのはアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)。その心境は半ばリハビリ、半ば八つ当たり。この数の相手に大した胆力であるが、それは驕りではない。アルトの積み重ねてきた戦闘経験による自信の表れだろうか。
「策や能力を気にしなくても良い……何も考えなくてよいというのはシンプルで楽だな」
呟くアルトの背後には、いつのまにか斬られた歪虚の姿。踏鳴を使用しながら駆け抜け様に斬り捨てたようだ。
「さぁ、狩りつくさせてもらおう」
風の如く敵を切り裂く高速剣、散華。その精髄たる速さを歪虚は早速味合わされたのだった。
「これはこれは……まさしく選り取り見取りですね」
敵の数に物怖じしないのはノエル・ウォースパイト(ka6291)も同様だった。それどころか、ノエルはどこか楽しげに、その様子をみて笑う。
「斬り甲斐があるのは良い事です」
そう言って手近なゾンビを叩き斬る。戦闘力という点で見ればまだまだ経験不足の点から拙い部分はあるものの、この程度の敵なら一撃で斬り伏せられる。そうなると、斬り甲斐という意味では手応えが無いかもしれない。
「でも、たくさん斬れるのは……」
しかし、そんなことは関係ない。全ての敵を、平等に、八つ裂きに。この刃が折れない限り。
「もっと、良い事です」
ノエルはそう言うと変わらぬ笑みを浮かべた。
「思った以上の数だね。圧倒されちゃうなぁ」
ユウキ(ka5861)は馬を操りながら呟く。確かに、この数は凄い。だが、それ以上にユウキが思うのは、これが元は生きていた人達なんだということ。
「なんだか、悲しいね……」
だが、一歩も引くわけにはいかない。これらを放置していればいずれ害を為す。
気付くと、ユウキの周囲を炎のようなオーラが覆っている。ソウルトーチだ。命の灯火は歪虚の意識を引き付ける。
「行こう」
せめて、この戦いを以って安らかな眠りを与えよう。そう思いユウキも手綱を握りしめる。
「いやー、ものすごい数ですね! よくもまぁこんなに」
敵集団の大外を回るように駆けるのはナナセ・ウルヴァナ(ka5497)だ。下手に接近すると敵を分散させる結果になる。それに……ナナセは敵に近寄る必要などない。
ナナセは馬上にて、弓を空へと向ける。その矢と腕には鳥を象ったオーラで包まれている。隼急下を使おうというのだ。
「それじゃ、気合入れて掃除しちゃいますかね!」
放たれた矢は反転して急降下。敵の頭上ではじけ、範囲内の歪虚を貫いていく。
「上手くいった! 妖精さんはこのまま周辺警戒のお手伝いをお願いしますね」
そう言うとナナセは再度矢を番えた。
「さぁ、サクサク行きますよ!」
●
「よし、とりあえずはいい感じだな」
そう呟きレオーネは笑みを浮かべる。もちろん、この間にもロックオンレーザーによる対空攻撃と接近するゾンビの撃破も忘れてはいない。お陰で隣にいるファリスにも被害はなし。
作戦は包囲殲滅。ある程度集まったところを範囲攻撃でドカン、と……言葉に出せばシンプルな作戦ではあるのだが、雑魚集団が相手なら適切と言えるだろう。
「といっても、ベストではないか……」
ただ一つの問題として、敵が突っ込んだハンターを別々に追っている為、全体をまとめることは出来ず、いくつかの小集団をつくることになった点だろう。といっても、範囲攻撃も万能ではない。全部集めたところでその全てを範囲に収めることはできないだろう。そう考えれば大した問題ではないか。
(空の敵は任せて大丈夫そうなの……その分、地上の敵は……)
「可能な限り倒す、なの!」
軽く舌打ちをするレオーネを横目にファリスは後方からブリザードで、その小集団を攻撃していく。メガフレアボムの方が範囲は広いが、敵に隠れて味方の姿がはっきりしない段階では使うのが躊躇われた。尤も、霧華などは巻き込まれても耐えきっただろうし、アルトは当たる前に躱しただろうが。
「その調子で頼むぜ、ファリスさん!」
そう言って空の敵にロックオンレーザーを打ち込むレオーネ。だが当たる直前、狙っていた鳥型は側面から矢に貫かれ落ちた。
レオーネ以外にもナナセが対空戦闘を行っていた。
「んんー、このところ掃除の仕事も龍鉱石関連が多かったですからねー」
呟きながら飛行敵を狙い、撃ち落としていくナナセ。射程ギリギリの敵も余裕で直撃を取れる。やはり龍相手とは比較にならないのか。
「それにしても……」
今度は先程より遠くの敵を、猪突矢を使用して狙い撃つ。
「歯ごたえが無さすぎますね」
狙いは過たず、敵を射落とすナナセ。その表情はどこか不機嫌そうだった。
「空の敵は……気にしなくて大丈夫そうだね」
ユウキはわずかに視線を上げ上空を警戒する。だが、こちらに向かってくる気配はない。
ならばと、ユウキは馬首を巡らせ反転。ここまであえて追ってこさせるように走っていたユウキ。それもこのタイミングの為だ。スケルトンが投げてきた骨で多少ダメージを追いながらも、ユウキは突撃。
刺突一閃を使い、追いかけてきていた歪虚を一挙に貫いた。
「オラオラ、こっちだこっち!」
スケルトンを頭蓋から一振りで両断しながらロロは叫ぶ。
その声に従ったのかは分からないが、歪虚はどんどん迫ってくる。
「こんなんじゃ物足りねぇ! もっとどんどん来いや!!」
言いながらも今度は手近なゾンビの両足を切断。崩れ落ちたゾンビの頭を踏み砕きながら、斧をさらに振り回す。
「……って!? っぜぇな! 犬に食わせんぞ骨野郎!!」
その攻撃力はかなりのもの。一般人が見たら恐怖のあまり失禁するレベルだったろうが、歪虚にそんな感情は無い。むしろ攻撃的な分だけ防御が甘く、隙間を縫って投げ込まれる骨や足元を攻撃してくる犬には手を焼いているようだ。
「しょうがねぇなぁ……」
ロロは武器をしっかりと構え堅守。そこに向かってきた犬型。食いついてきたところに斧を落としその刃で首を落とす。
「ざまぁ見ろ! 犬公め!」
だが、足を止めていた分敵が群がってきて、包囲しようとしていた。
「上等だ! かかってきやがれ!!」
ノエルも同様。攻撃の為に足を止めてしまうと囲まれてしまう。それだけ敵の数が多いのだ。
「……突出して孤立しないようにとは考えていましたが……上手くいかないものですね」
そう呟いたノエルは円を意識した動きをとりながら歪虚に攻撃を仕掛けていく。その様は表情とも相まってさながら踊りでも踊っているようだった。尤も、上がるのは喝采ではなく斬られ飛ぶ歪虚の肉と、歪虚からの反撃によって生じた自身の血しぶきであったが。
「っ……! 油断も隙間ない!」
苦戦と言うほどでもないが、霧華もこの数に手を焼いているようだ。見ると、足元に犬型のゾンビが噛みついている。それを鞭で斬り払い、さらに突っ込んできたゾンビを盾で受け止める。そこから全力のカウンターで倒す。だが、その間にまた別方向から攻撃を受ける。
確かに霧華の防御力は高い。盾で受けてからのカウンターは確実に敵を減らしている。だが、盾で受けている際やカウンター時に別方向から攻撃を受けると防ぎようがなく、多少ずつだがダメージは受けてしまう。敵の数が膨大であるこの状況においてその戦法は悪手であったかもしれない。
離脱に使用するつもりだったバイクもすでにゾンビの群れに飲み込まれてどこにあるのか分からない状態だ。こうなれば、ここに踏みとどまって倒していくより他ない。
アルトの方は、霧華とは対照的な動きだ。
密集した敵、その中にある僅かなスペースを縫うように攻撃を躱しながら、敵を斬りつける。無論、回避可能なスペースはわずか。敵の攻撃が直撃しそうな場合だってある。
だが、アルトはその攻撃を刀で受け、すぐさま引く。敵の体勢を崩しつつも、引いた刀はそのまま後方の敵を斬りつけるのに使用。瞬影による早業で攻撃回数を増やし、敵を減らしていく。
全ての攻撃をこうしていなし利用できるわけではなく、稀に攻撃を当てる敵もいるのだが、それはむしろアルトに当てたことを褒めてやるべきであろう。
(この調子なら範囲攻撃の援護なしで大丈夫そうだな)
まだ踏鳴による離脱と散華による殲滅という手も残されているし、リハビリには程よい戦場であったろう。
●
「頃合いだろう、頼むぜファリスさん!」
迫ってきた敵集団をヒートウェーブ・スラッシュで諸共薙ぎ払いながらレオーネは言った。
「分かったの……巻き込まれないようにきちんと離れてなの!」
無線を通して一応の声かけ。ただし、ゾンビの波に呑まれ味方の姿は確認できていない。巻き込まれないことを願い、ファリスはメガフレアボムを使用する。
射程内の集団、その中心点を見据えるファリス。そこに現れたのは白い火球。それは炸裂と同時に白炎を撒き散らし焼き焦がす。火の魔法は効果的だ。魔法に巻き込まれた歪虚は焼かれ崩れる。戦場の一角がぽっかりと空き、かつて歪虚だった塵がわずかに残るのみとなっていた。
ファリスはそれを、2度3度と続けていく。メガフレアボムを使用する前段階でもすでにハンター有利は覆らなかっただろうが、これは決定打となっただろう。
「おお、景気良いじゃねぇか! ちっとは湿気も吹き飛ぶってもんだ!」
その様子を見たロロは丁度手近なゾンビを叩き潰したところだった。元気そうな声ではあったが、それなりにきつい戦いだったのか、倒した後は地面に突き立てた斧にもたれ掛っていたが。
「……どうも、単調になりがちだわ。相手が雑魔ではこんなところかしら」
ノエルの方はそれより更にダメージは大きそうだ。表情こそ崩れてはいないものの、肩で息をしている。
その横には丁度下馬したところのユウキが。馬による機動力を活かして二人の支援を行っていたのだ。
「みんな、無事で良かったよ」
「向こうも片付きましたか」
最後の一体をカウンターで倒した霧華。結果として受けたダメージはロロやノエルのそれより少ないのはさすがと言ったところではある。尤も、ダメージを受けたこと自体が霧華にとって不服だったかもしれないが。
(まだまだ、精進が足りませんね)
横倒しになったバイクを回収しながら、心中で霧華はそう呟いた。
「んんー、そろそろ片付きましたかね?」
双眼鏡で索敵を行っていたナナセがそう言って戻ってきた。
集団から離れた敵がいないか確認、見つけたそばから排除していた。その時、どこか八つ当たり気味に歪虚を的に遊んでいたのだが、皆がそのことを知る由もない。
なんにせよ、逃がしたりはしていないのだから問題は無い。
「こっちも見つからないな。戦闘終了、でいいんじゃないかな」
覚醒を解いたアルトはその場に座り込む。ほぼ無傷だが、それでも病み上がりだから少し疲れたようだ。
「しかしまぁ、雑魚はこうしてまとめて退治すると労力が少なくて済むね。誘蛾灯の雑魔版みたいなのを作って運用出来たら雑魔被害も減らせるかな」
「面白い……けど、今回みたいにあんまり数が多すぎても大変だけどな」
アルトに応えたレオーネは、歪虚が消えたことで只の平野に戻った戦場を見回しホッと息を吐いた。
こうして、戦闘はハンターたちの勝利に終わった。多少傷を受けた者もいたが致命傷には至っておらず、通説に反し戦いは数より質であることを示したのだった。
依頼結果
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相談卓 ナナセ・ウルヴァナ(ka5497) 人間(クリムゾンウェスト)|22才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2016/06/02 13:48:25 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/05/31 14:17:02 |