ゲスト
(ka0000)
ボロ切れを纏った人影
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/06/03 19:00
- 完成日
- 2016/06/07 16:43
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●折角目撃証言があったのに……!
王都イルダーナ周辺で、何件か起こっているスケルトン出没事件。
墓が荒らされ、死者をスケルトンとして蘇らせていた事件だ。それらはいずれも、ハンターと聖堂戦士団所属の団員によって解決されている。
しかしながら、そのうちの1件は王都イルダーナで起こっている。この調査に動いていたのは、聖堂戦士団団員、ファリーナ・リッジウェイ(kz0182)だ。
前回のスケルトン討伐後、ハンターの助力もあって、墓場で発見した布切れ。同じくハンターからの、王都からこの村にやってきた者がいなかったかどうかという入れ知恵もあり、ファリーナは根気強く王都イルダーナで、そして、次に事件の起きた北東の村で聞き込みを繰り返していた。
ただ、聖堂戦士団の日々の雑務、業務もある。この為、彼女は少しずつ合間を見つけて調査を進めていた。
「はぁ……」
ファリーナは自室の机に突っ伏し、溜息をついてしまう。
最初の事件発生はすでに一月以上経っている。怪しい人物の目撃証言もなかったわけではない。だが、その足取りを追ったとして、そいつはまだグラズヘイム王国内に留まっているのか……。解決の糸口をなかなか掴むことが出来ない。
だが、その数刻後に、思いもかけぬ朗報が彼女の元に届く。
「おい、ファリーナ」
そんな時、声をかけてきたのは、別部隊の新米隊長、ロジェだ。この間、一緒にハンター達と戦術指南を受けた程度の知り合いではある。上司であるので、ファリーナもかしこまって頭を垂れる。
「あったらしいぞ。ボロ切れを纏った人影の目撃証言」
「く、詳しく教えてくださいっ!」
その言葉に彼女は目を丸くし、ロジェへと飛びついた。
どうやら、墓を荒らすボロ切れを纏った何者かが、古都アークエルス南西の村に現れたというのだ。現状、被害はないが、今後その村の墓が荒らされる可能性はかなり高い。
向こうからアクションを起こしてくれたのであれば、話は早い。ファリーナはそそくさと身支度を済ませようと背を向ける……が。
「何をしている。巡礼者の応対。お前の隊が担当だろう」
言葉に詰まるファリーナ。なかなか思うような成果が出せず、現状は隊の仕事もこなしながらという状況。少なくとも、今日は個人行動を行うのは難しそうだ。
それでも、なんとか休憩中にハンターズソサエティへと駆け込んできたファリーナは、ハンター数人を捕まえて頭を下げる。
ファリーナはスケルトン事件について知らぬハンターに対して、イルダーナと、その近隣の村で墓が荒らされ、死者がスケルトンとなる事件が連続して起こっていたと、かいつまんで事情を説明をした。
「皆さん、すみません。私の代わりに調査へと出かけて欲しいのです……!」
その手がかりがつかめそうだというのに、任務の為に動けない。このもどかしさが非常に悔しいと彼女は語る。
ただ、この依頼の解決は、聖堂戦士団のメンツもかかっているのではないかとハンターから声があがる。王都で歪虚による事件が起こるなど、あってはならないことだからだ。
「……そうなのですが、それを理由に任務を辞退するのも、負けたような気がして」
仮にここで結果が出せなければ。ただでさえ、なかなか成果が出せない彼女の立場が一層悪くなってしまう。任務そっちのけでは迂闊に動けないというのが彼女の心情だろう。
彼女は前回の事件で発見した布切れをハンカチに包んでハンターへと手渡す。
「数少ない手がかりですから、無くさないよう注意してくださいね……」
ハンターからは力強い返事が次々に返ってくる。きっと、敵の尻尾を掴んでくる。そうファリーナに言い聞かせ、ハンター達はハンターズソサエティを出発していくのだった。
王都イルダーナ周辺で、何件か起こっているスケルトン出没事件。
墓が荒らされ、死者をスケルトンとして蘇らせていた事件だ。それらはいずれも、ハンターと聖堂戦士団所属の団員によって解決されている。
しかしながら、そのうちの1件は王都イルダーナで起こっている。この調査に動いていたのは、聖堂戦士団団員、ファリーナ・リッジウェイ(kz0182)だ。
前回のスケルトン討伐後、ハンターの助力もあって、墓場で発見した布切れ。同じくハンターからの、王都からこの村にやってきた者がいなかったかどうかという入れ知恵もあり、ファリーナは根気強く王都イルダーナで、そして、次に事件の起きた北東の村で聞き込みを繰り返していた。
ただ、聖堂戦士団の日々の雑務、業務もある。この為、彼女は少しずつ合間を見つけて調査を進めていた。
「はぁ……」
ファリーナは自室の机に突っ伏し、溜息をついてしまう。
最初の事件発生はすでに一月以上経っている。怪しい人物の目撃証言もなかったわけではない。だが、その足取りを追ったとして、そいつはまだグラズヘイム王国内に留まっているのか……。解決の糸口をなかなか掴むことが出来ない。
だが、その数刻後に、思いもかけぬ朗報が彼女の元に届く。
「おい、ファリーナ」
そんな時、声をかけてきたのは、別部隊の新米隊長、ロジェだ。この間、一緒にハンター達と戦術指南を受けた程度の知り合いではある。上司であるので、ファリーナもかしこまって頭を垂れる。
「あったらしいぞ。ボロ切れを纏った人影の目撃証言」
「く、詳しく教えてくださいっ!」
その言葉に彼女は目を丸くし、ロジェへと飛びついた。
どうやら、墓を荒らすボロ切れを纏った何者かが、古都アークエルス南西の村に現れたというのだ。現状、被害はないが、今後その村の墓が荒らされる可能性はかなり高い。
向こうからアクションを起こしてくれたのであれば、話は早い。ファリーナはそそくさと身支度を済ませようと背を向ける……が。
「何をしている。巡礼者の応対。お前の隊が担当だろう」
言葉に詰まるファリーナ。なかなか思うような成果が出せず、現状は隊の仕事もこなしながらという状況。少なくとも、今日は個人行動を行うのは難しそうだ。
それでも、なんとか休憩中にハンターズソサエティへと駆け込んできたファリーナは、ハンター数人を捕まえて頭を下げる。
ファリーナはスケルトン事件について知らぬハンターに対して、イルダーナと、その近隣の村で墓が荒らされ、死者がスケルトンとなる事件が連続して起こっていたと、かいつまんで事情を説明をした。
「皆さん、すみません。私の代わりに調査へと出かけて欲しいのです……!」
その手がかりがつかめそうだというのに、任務の為に動けない。このもどかしさが非常に悔しいと彼女は語る。
ただ、この依頼の解決は、聖堂戦士団のメンツもかかっているのではないかとハンターから声があがる。王都で歪虚による事件が起こるなど、あってはならないことだからだ。
「……そうなのですが、それを理由に任務を辞退するのも、負けたような気がして」
仮にここで結果が出せなければ。ただでさえ、なかなか成果が出せない彼女の立場が一層悪くなってしまう。任務そっちのけでは迂闊に動けないというのが彼女の心情だろう。
彼女は前回の事件で発見した布切れをハンカチに包んでハンターへと手渡す。
「数少ない手がかりですから、無くさないよう注意してくださいね……」
ハンターからは力強い返事が次々に返ってくる。きっと、敵の尻尾を掴んでくる。そうファリーナに言い聞かせ、ハンター達はハンターズソサエティを出発していくのだった。
リプレイ本文
●情報収集の為の準備
依頼を受けたハンター達ではあるが、月影 葵(ka6275)、五黄(ka4688)は依頼主である聖堂戦士団のファリーナに対して思うことがあるようで。
「メンツ、ですか。初心を忘れていなければ良いのですが」
「ったく、ふざけてんのか……何が、『負けたような気がする』だ」
そんな2人を連れながらも、メンバー達は聖堂戦士団の一隊の詰め所に向かう。
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は調査の委任状を書いてもらえればと考えていたし、ザレム・アズール(ka0878)はもう少し、ファリーナに話が聞ければと思っていたのだ。
ただ、ファリーナはすでに任務で不在。彼らは小隊長のロジェとだけ会って話をすることが出来た。
とはいえ、ロジェもそれほど詳しいことを知っていたわけではない。古都アークエルス南西の村で、ボロボロの布を纏った怪しい人影の情報が聖堂戦士団へと寄せられたのを伝え聞いただけだと言う。
それでも、ハンター達が動いてくれるということもあり、ロジェは調査の為の委任状を発行してくれる。ザレムは礼にとささやかに謝礼を渡すと、聖堂戦士団の活動資金としてロジェはそれを受け取っていたようだ。
直接ファリーナに会えず、五黄はやや苛立ちも見せていたようだが。今回の仕事と考えを切り替える。
「そういえば、村人からの情報収集をしやすくする為に宴をするって言ってたか」
村へ押しかけた上、宴の為の食材を全て工面するのは難しいだろうからと、五黄は自腹で泊り込みの食料と、宴の為に少し多めに買出しを行う。
そうして、準備を整え、目的の村へ向かうことにしたハンター達。
「ほいほーい、今回はスケルトンさんの事件の調査ですかー」
見た目、女の子のように見える小宮・千秋(ka6272)だが、れっきとした男の子である。しかしながら、まだまだ幼い彼は、ホラー展開になりそうだと少々不安がっていたようだ。
「死者がスケルトンとなる事件ですか」
エルバッハ・リオン(ka2434)が誰に語るともなしに呟く。
「不審なボロ切れを纏った人影……。確かに怪しいとは思いますが、人影の正体を確認しなければ何とも言えませんね」
「何かが起きる前に、つかめたらいいんだが」
アルトも考える。今回の依頼は情報収集が主目的。ただ、スケルトンとの戦いになる可能性は濃厚だ。
「調査依頼だが、戦う用意も怠らずに行かなくてはな」
ザレムはバイクに跨り、仲間達に注意を促すのである。
●手伝いしながら情報収集
しばらくして、ハンター達は古都アークエルス南西の村までやってくる。
村人はちらほらと、ハンター一行に視線を投げかけてくる。村長もそれが気になり、顔を出してきた。
それに対して、丁寧に挨拶する一行。
まず、アルトが聖堂戦士団から受け取った委任状を村長へと確認してもらった後、ザレムが事情を説明する。
一方の村長もまた、村に怪しげな人影が現れていることを憂いてはいた。場合によってはハンターズソサエティに依頼を考えていたが、残念ながら村にはさほど蓄えがない……といった様子であったらしい。
それならば、互いに有益になるようにと、ザレムが村の農土木作業を手伝いたいと申し出る。その最中に聞き込み、張り込みができればと。
「村の生活には影響を出さない。どうか、配慮を頼みたい」
そっけない口調ではあるが、ザレムは村長へと説得を続ける。何かあったら、すぐに報告もすると。これに、村長は快く了承してくれた。
しかしながら、敵がすぐに現れるとは限らない。数日、泊り込みする必要がありそうだ。
ただ、村には空き家こそあるが、食料事情に関してはお世辞にも余裕があるとは言えない村である。
この為、ハンター達は広場の一角へ、ザレム、葵が持ち寄ったテントを張ることを提案した。男女に分かれれば、各テントにはなんとか全員が寝るスペースはある。
村長はこれに対し、家を借りないならばと宿泊費を免除してくれた。アルトやエルバッハは出すと主張もしたが、村長も何も出来ぬからせめてと申し出てくれた。
「それじゃ、よろしくお願いしまーす」
宿泊費を気にかけていた千秋にとっては、渡りに船といった提案だったようだ。
「折角ですから、ご好意に甘えるとしましょう」
葵はあまり大きく表情を動かすことはなかったが、うまく事が運んで安堵していたようだった。
●お手伝いに警戒
まずはしばしの寝床を作るべく、メンバー達はテントを張り始める。残念ながら、スペースの都合で墓の近くとはいかず、村の入り口広場の脇の一角にテントを設置した。
その後、ハンター達は早速村の作業の手伝いをしながら、情報収集に当たる。
この時期の主な仕事は農作業だ。
農作業を行うに当たり、戦闘用装備を見せると村人の不安を煽ると判断したエルバッハは、テントに武具を仕舞った後、ドレス、ビキニアーマー、マギステルグローブのみ纏っていたが。露出の高い彼女の衣装には、村の男性達も目の毒だったらしい。
作業に伴う肥料の作成に、ザレムは園芸の意識を活かして手伝いを行う。それらの運搬、散布に五黄が当たっていたが、そこで村人から耳寄りな情報が得られる。
現れるボロ切れを纏った何者かは、夜になると現れると言う。どうやら、村の様子を窺っただけで去っていったそうだが……。さほど夜に外へと出る村人もいなかった為、見た者は少ないという。
一方、村の家事を行う女性達の手伝いにと、千秋がメイドとして当たる。
葵もまた、炊事、洗濯の手伝いを行っていた。その間、彼女は村の女性達と積極的に会話を行う。
談笑しつつ聞いた話では、出所は夜中に外へと出た少年だという。こっそりと剣術修行をしていた彼によれば、やはり汚らしい布切れを纏った人影が村の近くにいたとの目撃証言だった。
葵は相槌を打ちつつ、それに耳を傾けるのである。
――夜。
日が沈んだ後、ザレムは村を改めて歩き、墓地への道、そして墓地内の通路に鳴子を設置する。
メンバーは交代で警邏、張り込みを行うことにし、ザレムがそれを設置する間、エルバッハ、千秋が警邏に当たっていた。
「マルチーズさんも御一緒でーす」
連れている2匹のマルチーズと一緒に、千秋はてくてくと村の中を歩く。何かあったときの為にと、トランシーバーを肌身離さない。
同じく、エルバッハもトランシーバーを所持して、怪しげな人影が墓場にいないかと気にかけていた。
やがて、交代の時間となり、アルト、五黄、葵が動く。
闇夜の中、アルトは気配を消しながら見回りを行う。五黄も超聴覚を駆使してかすかな物音をも聞き逃さないようにと耳を澄ませる。
葵は見回りの為の案も提示していたが、諸事情あって2班の班分けになったことに嘆息しつつも、村中をライトで照らして満遍なく見回っていた。
その日は何事もなく暮れていく。昼は農作業やら家事の手伝い。その後、何者かの警戒の為に見回りで、メンバー達はくたくただ。
千秋はせっかくのお泊りだからと、着替えにお菓子の準備。それにトランプ、枕投げといった遊戯の準備もしてはいたが。仲間達も疲れており、満足に付き合ってもらうことは出来なかったようだ。
翌日、ハンター達は初日とほぼ同様の仕事の手伝いを行いつつ、雑談をして村の人々と交流を深める。
「ハンターやってると、こういう生活が嬉しくて……」
ザレムは明るい笑顔で進んで作業を行う。時折、真剣な表情で、村の安全を守ると告げる彼に、村人達は頼もしさすら覚えていた様子だ。
引き続き、五黄、エルバッハは昨日接点のなかった人と会話を行っていた。
そんな中、村人達は必要な物資の買出しがあるからと、アークエルスへ向かう者がいた。アルトはその運搬の手伝いにと馬を利用して同行しつつ雑談を行う。移動中、彼女は頃合を見計らって転寝などしていた。
村に戻ってきた荷物の中から、葵は食料などを売ってもらうよう村人に交渉する。代金はある人にツケておきますと、葵は村人へと話を持ちかけていた。
そんな忙しない1日を過ごすハンター達。夜にはまた見回りを行ったが、特にこれといった成果は得られずじまいだった。
●楽しいパーティーの後……
3日目も作業をこなしたハンター達は、葵の提案で村人達と共にささやかな立食パーティーを催すことにする。
先日街へと出向いて買ってきた食材を合わせ、葵も調理や配膳を行う。千秋はここぞとメイドとしての腕を発揮し、会場の準備から配膳まで可愛らしく動き回っていた。
宴ということで、ザレムは村の野菜、そして、五黄が用意した食材や自身が買ってきた肉で鍋料理を振舞い、シェフとしての一面を見せてくれる。
村人達も普段目にしない料理や飲み物を口にする。アルトは軽食としてお野菜クッキーに花籠パイ。そして、飲み物としてヒカヤ紅茶。大人にはリンゴ酒にワインを振舞っていた。
余興としては、葵が刀を使った円舞を行い、その間も千秋が忙しなく皆が食べた食器の後片付けに奔走する。ハンター達が村人を楽しませる形で、交流をより深めていたようだ。
カラッ……。
それは、ザレムが仕掛けた鳴子の音。
夜も更けた頃、見張りをしていたメンバー達は一斉に音が鳴った方へと近づいていく。墓場に現れたのは情報の通り、ボロ切れを纏った影だ。
エルバッハは双眼鏡を使い、その四肢をしっかり確認していた。手足がこけており、ほぼ骨と皮のような体躯。彼女はトランシーバーを使い、別班と連絡を取る。
捕縛しようとザレム、五黄が近づくが、敵の動きは速い。しかも、そいつの手前にはすでに2体スケルトンの姿がある。
ザレムは光の三角形から飛ばす光で敵を貫く。すると、ボロ切れの頭部が外れ、手足と同様病的にこけた顔が露わになった。
「グ、ヨクモ……」
飛びのくそれは暴食の歪虚に違いない。そいつは捕まるまいと大きく飛びのき、ハンターの囲いから逃れて村の外へと去っていく。
ザレムは鳴子を仕掛けてよかったと考える半面。敵に警戒を抱かせた事に関しては失策だったかと後悔もしてしまう。
逃げ行く歪虚を追わねばと考えるが、スケルトンが村へと被害を及ぼす可能性も否めない。駆けつけた別班と合流したハンター達はその討伐へと当たる。
素早く仕掛けたのはエルバッハ。敵陣に冷気の嵐を発生させ、その動きを封じようとする。アルトは遠方から接敵し、全速力で駆け抜けつつ刀を振り払う。
どうやら、さほど強い敵でないのは明白。スケルトンは剣と弓こそ持ってはいたが、そのスキルすらも満足に使いこなせぬ状況だ。
五黄が活性化させたマテリアルを纏わせたスピアで手前の敵を貫けば、葵は攻め来る敵の剣をさらりと受け流し、そのまま腰を捻って体勢を低くし、地面を刷り上げるようにしてスケルトンを切り上げる。火花と共に発火し、燃え上がる軌跡を残しながらも、スケルトンはその場へと倒れていった。
スケルトンにやや恐怖を覚える千秋だが。1体しかいなければ、仲間と共に倒すのみ。
「足止めお願いしまーす」
連れていたマルチーズにスケルトンの骨へと食らいつくよう指示を飛ばしつつ、自らはまっすぐ敵へと飛び込んで拳で殴りつける。
怯む敵に、エルバッハが氷の矢を飛ばす。それに貫かれ、凍りついたスケルトンは衝撃に耐えられず、その場へと崩れ去っていった。
敵は逃がしてしまったが。相手が歪虚なのは確実。
攻撃によって飛び散ったボロ切れ。それは、ファリーナから受け取ったハンカチに包まれていたボロ切れと特徴が一致したのだった。
●今回の一件に苦言を
夜が明けた後、村に現れた人影に関して、ザレムが村長に報告すると、事件を防いだことに村長は感謝してくれた。
さすがに憂いが完全になくなったわけではないが、敵もあの様子からすると、表ざたにしたくないように見える。これまでの事件を考えれば、この村に再び姿を見せる可能性は低いだろう。
ひとまず、調査に進展があった為、メンバー達はイルダーナへと戻ってファリーナにも報告することにする。任務を終えた彼女は、戻ってきたハンター達を労ってくれた。
しかし……。
「一度、自ら漕ぎ出した船です。どこに行きついたのかは直接確かめてください」
葵は冷淡な言葉と共に、買出しの代金を彼女へとツケとして託す。
「……これでまたスケルトン事件が起こって人的被害でも出ようもんなら、お前はどうやってその埋め合わせをするつもりだったんだ?」
五黄もまた、ファリーナへと厳しい言葉を突きつける。負けただのなんだの言う前にやることがあるだろうと。
部外者でなく、同じ組織の人間の手の借り方を覚えること。そして、物事の優先順位を間違えないことを指摘する。実際、彼女は人命の危機を優先順位として下に置いてしまったのだから。
「でないとずっと、一人であることの無力さにもがき苦しむ羽目になるぞ」
唇をかみ締めるファリーナ。その叱責に彼女は愕然としてしまっていた。
その後、アルトがコボルトを繁殖させる黒マントの不審者の報告書の話もしてくれた。
アルトが気にかけてくれた話に関して、ファリーナは有用な情報に感謝すべく深々と頭を下げてはいたものの。心ここにあらずといった状態だったようだ。
「何を守る為に、聖堂戦士団に入ったのですか?」
葵のその言葉を反芻させていたファリーナ。その頬には、涙が流れ落ちていた。
依頼を受けたハンター達ではあるが、月影 葵(ka6275)、五黄(ka4688)は依頼主である聖堂戦士団のファリーナに対して思うことがあるようで。
「メンツ、ですか。初心を忘れていなければ良いのですが」
「ったく、ふざけてんのか……何が、『負けたような気がする』だ」
そんな2人を連れながらも、メンバー達は聖堂戦士団の一隊の詰め所に向かう。
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は調査の委任状を書いてもらえればと考えていたし、ザレム・アズール(ka0878)はもう少し、ファリーナに話が聞ければと思っていたのだ。
ただ、ファリーナはすでに任務で不在。彼らは小隊長のロジェとだけ会って話をすることが出来た。
とはいえ、ロジェもそれほど詳しいことを知っていたわけではない。古都アークエルス南西の村で、ボロボロの布を纏った怪しい人影の情報が聖堂戦士団へと寄せられたのを伝え聞いただけだと言う。
それでも、ハンター達が動いてくれるということもあり、ロジェは調査の為の委任状を発行してくれる。ザレムは礼にとささやかに謝礼を渡すと、聖堂戦士団の活動資金としてロジェはそれを受け取っていたようだ。
直接ファリーナに会えず、五黄はやや苛立ちも見せていたようだが。今回の仕事と考えを切り替える。
「そういえば、村人からの情報収集をしやすくする為に宴をするって言ってたか」
村へ押しかけた上、宴の為の食材を全て工面するのは難しいだろうからと、五黄は自腹で泊り込みの食料と、宴の為に少し多めに買出しを行う。
そうして、準備を整え、目的の村へ向かうことにしたハンター達。
「ほいほーい、今回はスケルトンさんの事件の調査ですかー」
見た目、女の子のように見える小宮・千秋(ka6272)だが、れっきとした男の子である。しかしながら、まだまだ幼い彼は、ホラー展開になりそうだと少々不安がっていたようだ。
「死者がスケルトンとなる事件ですか」
エルバッハ・リオン(ka2434)が誰に語るともなしに呟く。
「不審なボロ切れを纏った人影……。確かに怪しいとは思いますが、人影の正体を確認しなければ何とも言えませんね」
「何かが起きる前に、つかめたらいいんだが」
アルトも考える。今回の依頼は情報収集が主目的。ただ、スケルトンとの戦いになる可能性は濃厚だ。
「調査依頼だが、戦う用意も怠らずに行かなくてはな」
ザレムはバイクに跨り、仲間達に注意を促すのである。
●手伝いしながら情報収集
しばらくして、ハンター達は古都アークエルス南西の村までやってくる。
村人はちらほらと、ハンター一行に視線を投げかけてくる。村長もそれが気になり、顔を出してきた。
それに対して、丁寧に挨拶する一行。
まず、アルトが聖堂戦士団から受け取った委任状を村長へと確認してもらった後、ザレムが事情を説明する。
一方の村長もまた、村に怪しげな人影が現れていることを憂いてはいた。場合によってはハンターズソサエティに依頼を考えていたが、残念ながら村にはさほど蓄えがない……といった様子であったらしい。
それならば、互いに有益になるようにと、ザレムが村の農土木作業を手伝いたいと申し出る。その最中に聞き込み、張り込みができればと。
「村の生活には影響を出さない。どうか、配慮を頼みたい」
そっけない口調ではあるが、ザレムは村長へと説得を続ける。何かあったら、すぐに報告もすると。これに、村長は快く了承してくれた。
しかしながら、敵がすぐに現れるとは限らない。数日、泊り込みする必要がありそうだ。
ただ、村には空き家こそあるが、食料事情に関してはお世辞にも余裕があるとは言えない村である。
この為、ハンター達は広場の一角へ、ザレム、葵が持ち寄ったテントを張ることを提案した。男女に分かれれば、各テントにはなんとか全員が寝るスペースはある。
村長はこれに対し、家を借りないならばと宿泊費を免除してくれた。アルトやエルバッハは出すと主張もしたが、村長も何も出来ぬからせめてと申し出てくれた。
「それじゃ、よろしくお願いしまーす」
宿泊費を気にかけていた千秋にとっては、渡りに船といった提案だったようだ。
「折角ですから、ご好意に甘えるとしましょう」
葵はあまり大きく表情を動かすことはなかったが、うまく事が運んで安堵していたようだった。
●お手伝いに警戒
まずはしばしの寝床を作るべく、メンバー達はテントを張り始める。残念ながら、スペースの都合で墓の近くとはいかず、村の入り口広場の脇の一角にテントを設置した。
その後、ハンター達は早速村の作業の手伝いをしながら、情報収集に当たる。
この時期の主な仕事は農作業だ。
農作業を行うに当たり、戦闘用装備を見せると村人の不安を煽ると判断したエルバッハは、テントに武具を仕舞った後、ドレス、ビキニアーマー、マギステルグローブのみ纏っていたが。露出の高い彼女の衣装には、村の男性達も目の毒だったらしい。
作業に伴う肥料の作成に、ザレムは園芸の意識を活かして手伝いを行う。それらの運搬、散布に五黄が当たっていたが、そこで村人から耳寄りな情報が得られる。
現れるボロ切れを纏った何者かは、夜になると現れると言う。どうやら、村の様子を窺っただけで去っていったそうだが……。さほど夜に外へと出る村人もいなかった為、見た者は少ないという。
一方、村の家事を行う女性達の手伝いにと、千秋がメイドとして当たる。
葵もまた、炊事、洗濯の手伝いを行っていた。その間、彼女は村の女性達と積極的に会話を行う。
談笑しつつ聞いた話では、出所は夜中に外へと出た少年だという。こっそりと剣術修行をしていた彼によれば、やはり汚らしい布切れを纏った人影が村の近くにいたとの目撃証言だった。
葵は相槌を打ちつつ、それに耳を傾けるのである。
――夜。
日が沈んだ後、ザレムは村を改めて歩き、墓地への道、そして墓地内の通路に鳴子を設置する。
メンバーは交代で警邏、張り込みを行うことにし、ザレムがそれを設置する間、エルバッハ、千秋が警邏に当たっていた。
「マルチーズさんも御一緒でーす」
連れている2匹のマルチーズと一緒に、千秋はてくてくと村の中を歩く。何かあったときの為にと、トランシーバーを肌身離さない。
同じく、エルバッハもトランシーバーを所持して、怪しげな人影が墓場にいないかと気にかけていた。
やがて、交代の時間となり、アルト、五黄、葵が動く。
闇夜の中、アルトは気配を消しながら見回りを行う。五黄も超聴覚を駆使してかすかな物音をも聞き逃さないようにと耳を澄ませる。
葵は見回りの為の案も提示していたが、諸事情あって2班の班分けになったことに嘆息しつつも、村中をライトで照らして満遍なく見回っていた。
その日は何事もなく暮れていく。昼は農作業やら家事の手伝い。その後、何者かの警戒の為に見回りで、メンバー達はくたくただ。
千秋はせっかくのお泊りだからと、着替えにお菓子の準備。それにトランプ、枕投げといった遊戯の準備もしてはいたが。仲間達も疲れており、満足に付き合ってもらうことは出来なかったようだ。
翌日、ハンター達は初日とほぼ同様の仕事の手伝いを行いつつ、雑談をして村の人々と交流を深める。
「ハンターやってると、こういう生活が嬉しくて……」
ザレムは明るい笑顔で進んで作業を行う。時折、真剣な表情で、村の安全を守ると告げる彼に、村人達は頼もしさすら覚えていた様子だ。
引き続き、五黄、エルバッハは昨日接点のなかった人と会話を行っていた。
そんな中、村人達は必要な物資の買出しがあるからと、アークエルスへ向かう者がいた。アルトはその運搬の手伝いにと馬を利用して同行しつつ雑談を行う。移動中、彼女は頃合を見計らって転寝などしていた。
村に戻ってきた荷物の中から、葵は食料などを売ってもらうよう村人に交渉する。代金はある人にツケておきますと、葵は村人へと話を持ちかけていた。
そんな忙しない1日を過ごすハンター達。夜にはまた見回りを行ったが、特にこれといった成果は得られずじまいだった。
●楽しいパーティーの後……
3日目も作業をこなしたハンター達は、葵の提案で村人達と共にささやかな立食パーティーを催すことにする。
先日街へと出向いて買ってきた食材を合わせ、葵も調理や配膳を行う。千秋はここぞとメイドとしての腕を発揮し、会場の準備から配膳まで可愛らしく動き回っていた。
宴ということで、ザレムは村の野菜、そして、五黄が用意した食材や自身が買ってきた肉で鍋料理を振舞い、シェフとしての一面を見せてくれる。
村人達も普段目にしない料理や飲み物を口にする。アルトは軽食としてお野菜クッキーに花籠パイ。そして、飲み物としてヒカヤ紅茶。大人にはリンゴ酒にワインを振舞っていた。
余興としては、葵が刀を使った円舞を行い、その間も千秋が忙しなく皆が食べた食器の後片付けに奔走する。ハンター達が村人を楽しませる形で、交流をより深めていたようだ。
カラッ……。
それは、ザレムが仕掛けた鳴子の音。
夜も更けた頃、見張りをしていたメンバー達は一斉に音が鳴った方へと近づいていく。墓場に現れたのは情報の通り、ボロ切れを纏った影だ。
エルバッハは双眼鏡を使い、その四肢をしっかり確認していた。手足がこけており、ほぼ骨と皮のような体躯。彼女はトランシーバーを使い、別班と連絡を取る。
捕縛しようとザレム、五黄が近づくが、敵の動きは速い。しかも、そいつの手前にはすでに2体スケルトンの姿がある。
ザレムは光の三角形から飛ばす光で敵を貫く。すると、ボロ切れの頭部が外れ、手足と同様病的にこけた顔が露わになった。
「グ、ヨクモ……」
飛びのくそれは暴食の歪虚に違いない。そいつは捕まるまいと大きく飛びのき、ハンターの囲いから逃れて村の外へと去っていく。
ザレムは鳴子を仕掛けてよかったと考える半面。敵に警戒を抱かせた事に関しては失策だったかと後悔もしてしまう。
逃げ行く歪虚を追わねばと考えるが、スケルトンが村へと被害を及ぼす可能性も否めない。駆けつけた別班と合流したハンター達はその討伐へと当たる。
素早く仕掛けたのはエルバッハ。敵陣に冷気の嵐を発生させ、その動きを封じようとする。アルトは遠方から接敵し、全速力で駆け抜けつつ刀を振り払う。
どうやら、さほど強い敵でないのは明白。スケルトンは剣と弓こそ持ってはいたが、そのスキルすらも満足に使いこなせぬ状況だ。
五黄が活性化させたマテリアルを纏わせたスピアで手前の敵を貫けば、葵は攻め来る敵の剣をさらりと受け流し、そのまま腰を捻って体勢を低くし、地面を刷り上げるようにしてスケルトンを切り上げる。火花と共に発火し、燃え上がる軌跡を残しながらも、スケルトンはその場へと倒れていった。
スケルトンにやや恐怖を覚える千秋だが。1体しかいなければ、仲間と共に倒すのみ。
「足止めお願いしまーす」
連れていたマルチーズにスケルトンの骨へと食らいつくよう指示を飛ばしつつ、自らはまっすぐ敵へと飛び込んで拳で殴りつける。
怯む敵に、エルバッハが氷の矢を飛ばす。それに貫かれ、凍りついたスケルトンは衝撃に耐えられず、その場へと崩れ去っていった。
敵は逃がしてしまったが。相手が歪虚なのは確実。
攻撃によって飛び散ったボロ切れ。それは、ファリーナから受け取ったハンカチに包まれていたボロ切れと特徴が一致したのだった。
●今回の一件に苦言を
夜が明けた後、村に現れた人影に関して、ザレムが村長に報告すると、事件を防いだことに村長は感謝してくれた。
さすがに憂いが完全になくなったわけではないが、敵もあの様子からすると、表ざたにしたくないように見える。これまでの事件を考えれば、この村に再び姿を見せる可能性は低いだろう。
ひとまず、調査に進展があった為、メンバー達はイルダーナへと戻ってファリーナにも報告することにする。任務を終えた彼女は、戻ってきたハンター達を労ってくれた。
しかし……。
「一度、自ら漕ぎ出した船です。どこに行きついたのかは直接確かめてください」
葵は冷淡な言葉と共に、買出しの代金を彼女へとツケとして託す。
「……これでまたスケルトン事件が起こって人的被害でも出ようもんなら、お前はどうやってその埋め合わせをするつもりだったんだ?」
五黄もまた、ファリーナへと厳しい言葉を突きつける。負けただのなんだの言う前にやることがあるだろうと。
部外者でなく、同じ組織の人間の手の借り方を覚えること。そして、物事の優先順位を間違えないことを指摘する。実際、彼女は人命の危機を優先順位として下に置いてしまったのだから。
「でないとずっと、一人であることの無力さにもがき苦しむ羽目になるぞ」
唇をかみ締めるファリーナ。その叱責に彼女は愕然としてしまっていた。
その後、アルトがコボルトを繁殖させる黒マントの不審者の報告書の話もしてくれた。
アルトが気にかけてくれた話に関して、ファリーナは有用な情報に感謝すべく深々と頭を下げてはいたものの。心ここにあらずといった状態だったようだ。
「何を守る為に、聖堂戦士団に入ったのですか?」
葵のその言葉を反芻させていたファリーナ。その頬には、涙が流れ落ちていた。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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調査相談 五黄(ka4688) 人間(クリムゾンウェスト)|30才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2016/06/03 18:46:43 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/06/03 00:18:28 |