ゲスト
(ka0000)
【闘祭】求む、スペシャル闘技場
マスター:樹シロカ

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/06/06 19:00
- 完成日
- 2016/06/21 02:31
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●リゼリオにて
冒険都市リゼリオ。ハンターズソサエティが本部を構える街は同盟領内の島にある。
同盟軍中尉メリンダ・ドナーティ(kz0041)は、リゼリオを吹き抜ける海風の匂いを胸いっぱいに吸い込む。
休暇は終わり、また連合軍の一員として戦地へ赴かねばならない。この潮の香りとも暫くはお別れだ。
「それにしても用件は何なのかしらね?」
同盟ユニオンのある魔術師協会に向かいながら、メリンダは首を傾げる。
呼び出したのはユニオンリーダーのドメニコ・カファロ(kz0017)だが、自分はすぐに発たねばならない。
それはもちろん、ドメニコ自身も知っているはずだ。
時間通りに到着すると、ドメニコが待つ部屋へと案内された。
「おお、呼びたててすまぬな。おぬしにしか頼めそうな相手が居らんのだ」
この言葉に、メリンダの心にいや~な予感が訪れたのは言うまでもない。
「近々ハンターズソサエティ主催の武闘大会があることは知っていような?」
「ええ、一応は」
身構えるメリンダに構わず、ドメニコは楽しそうに地図を広げる。
「実は余り時間もないのでな、会場の設営を急がねばならん。闘技場の整備に力を貸してほしい」
「私がですか?」
メリンダの顔には『なんでやねん』という感情がありありと浮かんでいた。体裁を繕うことを放棄したらしい。
「いやいや。おぬしが多忙なことは知っておるとも。整備自体はハンターに依頼するつもりだ」
「……では私は何を?」
ドメニコが満面の笑みを浮かべる。
「なに、簡単なことよ。軍から魔導アーマーを数台、都合してくれるよう手配してくれるだけで良い」
「は?」
「軍にとっても、いざというときにアーマーに慣れたハンターが多い方が役に立つ筈。その辺りの調整はおぬしにしかできぬ。頼むぞ!」
完全にドメニコのペースのまま会見は終了。
メリンダは出立前の忙しい時間をやりくりして、準備に走る羽目になったのだった。
●とある小島にて
集まったハンター達を見渡し、ドメニコが満足げに頷いた。
今は一線を退いたとはいえ、「獄炎のドメニコ」の異名を持つ魔術師に相応しい風格である。
「見知っている御仁もあろうが、わしが同盟ユニオンのドメニコ・カファロだ。早速だが……」
ドメニコが悪戯っ子のように目を細め、依頼について語り始めた。
冒険都市リゼリオ。ハンターズソサエティが本部を構える街は同盟領内の島にある。
同盟軍中尉メリンダ・ドナーティ(kz0041)は、リゼリオを吹き抜ける海風の匂いを胸いっぱいに吸い込む。
休暇は終わり、また連合軍の一員として戦地へ赴かねばならない。この潮の香りとも暫くはお別れだ。
「それにしても用件は何なのかしらね?」
同盟ユニオンのある魔術師協会に向かいながら、メリンダは首を傾げる。
呼び出したのはユニオンリーダーのドメニコ・カファロ(kz0017)だが、自分はすぐに発たねばならない。
それはもちろん、ドメニコ自身も知っているはずだ。
時間通りに到着すると、ドメニコが待つ部屋へと案内された。
「おお、呼びたててすまぬな。おぬしにしか頼めそうな相手が居らんのだ」
この言葉に、メリンダの心にいや~な予感が訪れたのは言うまでもない。
「近々ハンターズソサエティ主催の武闘大会があることは知っていような?」
「ええ、一応は」
身構えるメリンダに構わず、ドメニコは楽しそうに地図を広げる。
「実は余り時間もないのでな、会場の設営を急がねばならん。闘技場の整備に力を貸してほしい」
「私がですか?」
メリンダの顔には『なんでやねん』という感情がありありと浮かんでいた。体裁を繕うことを放棄したらしい。
「いやいや。おぬしが多忙なことは知っておるとも。整備自体はハンターに依頼するつもりだ」
「……では私は何を?」
ドメニコが満面の笑みを浮かべる。
「なに、簡単なことよ。軍から魔導アーマーを数台、都合してくれるよう手配してくれるだけで良い」
「は?」
「軍にとっても、いざというときにアーマーに慣れたハンターが多い方が役に立つ筈。その辺りの調整はおぬしにしかできぬ。頼むぞ!」
完全にドメニコのペースのまま会見は終了。
メリンダは出立前の忙しい時間をやりくりして、準備に走る羽目になったのだった。
●とある小島にて
集まったハンター達を見渡し、ドメニコが満足げに頷いた。
今は一線を退いたとはいえ、「獄炎のドメニコ」の異名を持つ魔術師に相応しい風格である。
「見知っている御仁もあろうが、わしが同盟ユニオンのドメニコ・カファロだ。早速だが……」
ドメニコが悪戯っ子のように目を細め、依頼について語り始めた。
リプレイ本文
●
ドメニコは説明を終え、重々しく頷いた。
「可能な限りの協力はするつもりだ。良ければこれも使うがいい」
背後には魔導アーマーが並んでいる。同盟ユニオンの代表とはいえ、そう簡単に用意できるものでもないだろう。
それだけ本気ということか。あるいは、相当な無茶ぶりをやってのけたということかもしれない。
だがクローディオ・シャール(ka0030)は秀麗な口元を僅かに緩め、きっぱりと言った。
「いや、私には不要だ。何故なら私には……このヴィクトリアがいる」
クローディオの傍らで凛々しい佇まいで控えるのは、自転車。それもスタンドで自立する、いわゆるママチャリである。
「安心するがいい。彼女と共に力を尽くす所存だ」
堂々と胸を張る貴公子に、ドメニコは若干、不審そうな眼を向けた。
その肩を、勢いよく叩いて行くのはウーナ(ka1439)だ。
「おぉ、ドメニコさん久しぶりー! こりゃ頑張っちゃうね!」
同盟を世界の中で盛り上げたい。CAMを動かしたい。以前からそう願っていたウーナである。双方が一気に実現する依頼となれば、気合が入るのも無理はない。
尚、肩を叩かれたドメニコとは、直接対面するのは今回が初めてだったりする。
だがドメニコのほうも明るくあわせる。
「おお、久しぶりだな。今回もよろしく頼むぞ!」
それも、嬉しそうなウーナの表情、そして魔導アーマーに並び立つピンクのラインが特徴的なデュミナスを見ればこそ。
何かやってくれるのではないかと、期待しているのだ。
ルトガー・レイヴンルフト(ka1847)は腕組みし、魔導アーマーを熱心に見上げていた。
「おぬしもこの機械を扱えるのかな?」
ドメニコが尋ねると、重々しく頷く。
実はここのところ、ほとんどハンターとしての仕事は引き受けず、気ままに暮らしていたルトガーだが。
ふと気がつくと、このような玩具(※ユニットのこと)が資金次第で貸与されるようになっていたではないか。
当然、先立つモノが必要であったが、ルトガーの懐は若干寂しかった。
ということで、今回の依頼は渡りに船。貸してくれるというならお試しにはもってこいだ。
「準備はしてきた。任せておけ」
……スキルだけは。
根拠のない自信に裏打ちされた渋い笑顔が眩しい。
一方、クレール・ディンセルフ(ka0586)は島を見渡して目を輝かせている。
「ここをまるごとスペシャル闘技場に……いち技術者として! こんな大工事、光栄です!」
代々続く鍛冶屋の跡取り娘としては、大いに興味をそそられるらしい。
「とにかくまずは、島の地図で計画を立てましょう! ドメニコさん、レビュー頼みますね!」
イラストの得意なパトリシア=K=ポラリス(ka5996)が、島の地図に花やキラキラ輝く太陽を描きこんだ。
「パティはネ、同盟が大好きダカラ。いろんな人が来てくれるノガ、楽しみデ、嬉しーんダヨ♪」
折角の島の自然を生かした、花と緑がいっぱいの闘技場。
「闘技場の名前はネ、そのまんま、響きもカワイイ『L`isola』がいいと思うんダヨ!」
島を意味する言葉を、地図の上に可愛い文字で書き込んだ。
トルステン=L=ユピテル(ka3946)は島の地形を睨み、地図と見比べる。
「基本方針はアスレチックな冒険ステージ、ってコトでいいんだな?」
ドメニコの顔を窺うと、興味深そうに頷いている。
「観客は見下ろす形の方が見やすいよな。 とすると南側をリングにして、崖側を観客席にする感じか」
イメージはコロッセオだ。
「じゃあ雑木林はアスレチックなフィールドにするヨ! 折角だからネ! できたらCAMが通れる道も通したいカナ?」
パトリシアは提案をメモしていく。
東の崖からは、リゼリオの輝く海が見えるだろう。どうせなら、少し張りだしたデッキを設け、海の眺めを楽しめるようにしたい。
「お花や、海の生き物もいるかもしれないケド。ちょっとだけ場所を分けてもらって、そこで水中戦なんかも楽しいヨネ♪」
「この辺りに、戦況を表示するディスプレイがあると楽しめるんだがな」
央崎 枢(ka5153)がとん、と地図の一点を指差した。
タンクトップにダボダボズボン、足には地下足袋を履き、頭にタオルといういでたちが、妙に似合っている。
「どうだろう、オフィスにあるようなのが欲しいんだが」
「そうだな、実に面白い提案ではあるが……今回は間に合わんな」
ドメニコが残念そうに唸る。おそらく闘技場で観客が確認できるサイズとなると、新たに作り直す必要があるだろう。またエネルギーの供給も、この離れ小島では難しい。
「そっか。まあそれならしょうがないか。情報を掲示するボードって形で行こうかな」
枢は更に、スコアボードや人型模型でのダメージ表示などを提案する。
こうして設計図はでき上がり、クレールが図面と時計を確認する。
「ではそれぞれの工程の担当は、このように! 工員は、私達皆です! 早速とりかかりましょう!」
およその時間を計算し、遅れがないように。クレールはタイムキーパーを担当する。
それぞれが持ち場に移動する中、シバ・ミラージュ(ka2094)は青い空に誓う。
「メリンダさん、安心してください。逃げ出した貴女の尻拭いは、僕がきちんと果たしてみせますよ」
……逃げた訳じゃないですからー!
そんな叫びがどこかから聞こえたような気がした。
●
ドメニコはまた後で見に来ると言って島を離れた。
彼の意図が作業の邪魔をしないようにとの配慮か、闘技場ができ上がるまでのお楽しみかはわからないが。
魔導アーマーに乗り込んだトルステンは、海へとなだらかに下っていく南側へ向かう。
白い砂浜、青い海。平和そのもののこの空の下、激しい戦いはまだ続いているのだが。
「ま、たまにはイベントごともイイよな、戦争ばっかじゃシンドイし」
張り詰めたままの糸はいつか切れてしまうかもしれない。戦いが続くのなら、適度に緊張をほぐすこともまた大事なことなのだ。
ふと見ると、波打ち際でパトリシアが祈っている。
「何やってんだ?」
アーマーから身を乗り出すトルステンに、パトリシアが声を上げる。
「島の精霊さんにご挨拶ダヨ! ……少しだけ騒がしくするケド、よろしくネ。皆が怪我しないように、って!」
「ふうん?」
余り興味がなさそうにそう言いながらも、トルステンはアーマーを降りてパトリシアの隣で軽く目を閉じる。
その姿に、他のメンバーたちもそれぞれの場所で祈りを捧げた。
トルステンがアーマーに乗り込むと、ウーナのCAMが傍に来た。
「細かい造成は任せて!」
コックピットのキャノピーをあげ、ウーナが手を振る。
「ああ。まずは余計なものを片付けてからな」
ルトガーも加わり、岩や流木など、邪魔になるものを取り除いていく。
だがどうしても動かせない大岩もある。
「折角の無人島だからな、余り人工的に整えるのも面白くない。雰囲気を壊さない程度にせんとな」
ルトガーはそう言って、大岩を砕いた。
「うむ。中々面白いな」
彼の美的センスの赴くままに岩をブレイクしていく。
だんだん楽しくなってきたようだが、それはルトガーに限ったことではないようだ。
「みんなでブレイク! ですね!」
がつんと大岩を砕くのは、シバが乗ったアーマーだ。
ヘルメットを被り、タオルで汗を拭いながら、いつしか気分はワイルド系。過去の自分をぶっ壊す勢いで、ガンガン岩を砕く。
だがあくまでも、表情はいつもの通りに。
「おい、ここはそんなもんでいい。次の作業にいくぞ」
「はい!」
声をかけるトルステンに、汗を光らせながらあくまでも爽やかに。
「良い闘技場ができそうですね」
「作るのはこれからだけどな」
クレールはパトリシアと共に、元気よく雑木林へ。
「さあ! パティさん、頑張りましょう!」
「ハイっ、オヤカタ♪」
パトリシアはリーリーのホルに跨り、魔導アーマーを見上げる。
「ふぁぁ、みんな……アーマー動かせるんダネっ! パティも後で乗せて欲しいんダヨ〜♪♪」
南のほうで動きまわるアーマーを振り返ると、友人のトルステンも器用に乗りこなしている。
「でもまずは、お仕事お仕事!」
クレールは頑丈そうな木を見つくろい、印をつける。
「やっぱり、通常ではできない特殊な……立体的な戦闘とか、スタイリッシュで映えますよね!」
目をつけた木が観客から見えやすいように、余計な木を切り倒す。
「どうですか?」
「ここ、もうちょっと開けたほうが見やすいと思うんだヨ!」
アーマーからでは見えないところを、パトリシアが細かくチェック。
それからクライミング用の綱や、滑車をつけた吊革など、面白い戦い方ができそうなアイテムを用意する。
パトリシアも杭の立て方や縄の結び方などを教わりながら、自分の目の高さの作業をテキパキと進めて行く。
「いいペースですね! できれば溜池も作りたいです。水は周囲にありますし! 水中戦の得意な選手も、いると思うんです!」
皆が自分の個性を最大限に引き出せるように。時間の許す限り、様々な仕掛けを凝らしていく。
こうして闘技場が形を整えて行く。
クローディオがひらりとヴィクトリア(※ママチャリ)に跨った。
「そろそろ私の出番だな」
南側の砂地に回ると、そこから島全体を見る。
木の板を打ち付けた観客席。海から観客席を抜けて林を繋ぐ花道。木々の間にはロープや網が渡されている。
クローディオは背筋を伸ばしてヴィクトリアを駆る。
ちりりん。
嘶きの代わりに、涼やかな音をたて、ママチャリは砂浜を走りだした。
……物凄い体力である。
段差の有無、花道の滑らかさ、観客席の隙間など。生身の身体で確認し、クローディオは動きにくい箇所で合図を送る。
「この階段はもう少し段を刻むほうがよかろう」
そう言いながら、器用にママチャリで降りて行く。
そこには面白そうにママチャリを眺めるドメニコがいた。
「器用なものだな」
「ママチャリと心を合わせれば容易いこと。これはいずれクリムゾンウェスト中に普及するであろう、次世代の乗り物だ。同盟でも是非積極的に導入されることをお勧めする」
いずれ、ユニオンにも乗り込んでじっくりと素晴らしさを伝えよう。
クローディオは誇らしげに、陽光を浴びて輝くママチャリのベルを鳴らすのだった。
●
島は闘技場として生まれ変わった。
観客席に繋がる崖では、ルトガーがまだ作業を続けていた。
岩を掴んでのボルダリングや、切り出した木を使った迷路など。
子供連れの観客も楽しめるように、あまり難しくない遊具を作っているのだ。
「折角ここまで来るんだ、多少ワイルドに楽しめたほうがいいだろう」
武闘大会を見ているうちに、観客もヤンチャしたくなるかもしれない。ルトガーは魔導アーマーで岩を割りまくって、何かが吹っ切れたようだ。
「少しいいだろうか」
「ん?」
クローディオが思案げな顔で辺りを見回す。
「ここにママチャリ等の二輪車両を駐車するスペースの作成したいのだ」
「……何だって?」
ルトガーは首を傾げる。
アーマーにせよユニットにせよ、基本は雨ざらしだ。
だがクローディオにはそれは耐えられない。
「屋根を設け、日差しや悪天候からヴィクトリアを守ることができるような場所を、な。潮の影響も無視できん」
「……」
果たして何人が二輪車で闘技場に来るのか?
ルトガーは疑問に思ったが、クローディオの作業を止めはしなかった。
トルステンとパトリシアは、花道の傍に支柱を立てたり、タイヤを積み重ねたりして賑やかに飾る。
「パティはねー、こういうのが可愛いと思うんダヨ♪」
「あんまファンシーにすんじゃねーぞ? 格闘技だかんな」
タイヤを赤や黄色に彩るパトリシアに、トルステンが一応釘をさす。
観客席の高い場所に上がり、クレールが辺りを見回した。
「すごいですよ! 大会もきっと盛り上がりますよ!」
そこにトランシーバーを通して、枢が尋ねて来る。
『見え具合はどうだろう。指示をもらえるかな』
試合の状況を伝えるボードの角度を調整するためだ。
ウーナがCAMから顔を覗かせる。
「ねえ、ドメニコさん。このまま本戦もユニットを都合できない?」
作業用に都合してくれたということは、ユニットの有用性を認めているということだ。
ハンター達が使い方に習熟すれば、今後もきっと役に立つ。
「本音をいえば、大会にユニット部門があれば最高なんだけどね! ボードの書き換えにつかったりさ、入場時に礼砲をぶっ放したり? 選手を肩に乗せて入場させたりしたら面白いと思うんだけどなあ」
「そうだな、その案は今回は暖めておくとしよう」
ちらりと不満そうな表情を見せるウーナに、ドメニコは悪戯っ子のような笑顔を向ける。
「今回の出資は我がユニオンだからな。いい案を全部一度に提供するのは、親切すぎるというものだ」
何かとぬかりない同盟の人間らしい言葉に、ウーナが噴き出す。
「いいよ、じゃあいずれ役立てるために。特別にドメニコさんにはデモンストレーションを披露するよ!」
ウーナが手を振りながら、花道を通り、闘技場に立つ。
「最近ならった青竜紅刃流の刀銃二挺術、バッチリ見なー!」
「お手柔らかにお願いしますね」
シバが深々と頭を下げる。とみるや、一気にダッシュ。
わざわざ空に向けてマジックアローを放ち、派手な光を背負う。
「こっちも派手に行くよ!」
ウーナは激しくステップを踏み、拳銃で暖幕を張る。シバは行動を阻害されつつも、拳を叩きこむ。
「ブレイク! ブレイク!」
さっきの工事の余韻か、いつものシバよりも随分と活動的だ。ふたりはもつれ合いながら、雑木林へ。
『ポイント! シバ、脚部にダメージ! ウーナ、上腕にダメージ!』
枢が人型のボードにわかりやすく印をつけて行く。
実際の武術大会のルールはまだわからないが、生身で戦う以上、判定にそう違いはないだろう。
「本番では発煙筒や花火なんかがあると派手になるな……ま、シバみたいに、スキル使うのもいいかもな」
枢はそれも後でドメニコに伝えようと考える。
トルステンが半ばぼやくように呟いた。
「あんだけ作業してさらに模擬戦とか、元気よな……」
そう言いながらも、頃合いを見て、海の水につけて冷やしておいた飲み物を取りにいってやろうと思う。
「終わったらみんなで、ごはんダヨー!」
パトリシアがお弁当をつめたバスケットを抱えている。
ウーナとシバのデモンストレーションに、観客席に陣取るドメニコが大きな拍手を送る。
「成程、これは見応えがある。面白い競技場に……」
いいかけた瞬間、ドメニコがアースウォールを使って流れ弾を受け止めた。
「安全面では一考の余地があるか」
……尤も、闘技場が駄目なら、同盟の娯楽施設として買い取る手もある。
この男もまた、一筋縄ではいかないようだ。
<了>
ドメニコは説明を終え、重々しく頷いた。
「可能な限りの協力はするつもりだ。良ければこれも使うがいい」
背後には魔導アーマーが並んでいる。同盟ユニオンの代表とはいえ、そう簡単に用意できるものでもないだろう。
それだけ本気ということか。あるいは、相当な無茶ぶりをやってのけたということかもしれない。
だがクローディオ・シャール(ka0030)は秀麗な口元を僅かに緩め、きっぱりと言った。
「いや、私には不要だ。何故なら私には……このヴィクトリアがいる」
クローディオの傍らで凛々しい佇まいで控えるのは、自転車。それもスタンドで自立する、いわゆるママチャリである。
「安心するがいい。彼女と共に力を尽くす所存だ」
堂々と胸を張る貴公子に、ドメニコは若干、不審そうな眼を向けた。
その肩を、勢いよく叩いて行くのはウーナ(ka1439)だ。
「おぉ、ドメニコさん久しぶりー! こりゃ頑張っちゃうね!」
同盟を世界の中で盛り上げたい。CAMを動かしたい。以前からそう願っていたウーナである。双方が一気に実現する依頼となれば、気合が入るのも無理はない。
尚、肩を叩かれたドメニコとは、直接対面するのは今回が初めてだったりする。
だがドメニコのほうも明るくあわせる。
「おお、久しぶりだな。今回もよろしく頼むぞ!」
それも、嬉しそうなウーナの表情、そして魔導アーマーに並び立つピンクのラインが特徴的なデュミナスを見ればこそ。
何かやってくれるのではないかと、期待しているのだ。
ルトガー・レイヴンルフト(ka1847)は腕組みし、魔導アーマーを熱心に見上げていた。
「おぬしもこの機械を扱えるのかな?」
ドメニコが尋ねると、重々しく頷く。
実はここのところ、ほとんどハンターとしての仕事は引き受けず、気ままに暮らしていたルトガーだが。
ふと気がつくと、このような玩具(※ユニットのこと)が資金次第で貸与されるようになっていたではないか。
当然、先立つモノが必要であったが、ルトガーの懐は若干寂しかった。
ということで、今回の依頼は渡りに船。貸してくれるというならお試しにはもってこいだ。
「準備はしてきた。任せておけ」
……スキルだけは。
根拠のない自信に裏打ちされた渋い笑顔が眩しい。
一方、クレール・ディンセルフ(ka0586)は島を見渡して目を輝かせている。
「ここをまるごとスペシャル闘技場に……いち技術者として! こんな大工事、光栄です!」
代々続く鍛冶屋の跡取り娘としては、大いに興味をそそられるらしい。
「とにかくまずは、島の地図で計画を立てましょう! ドメニコさん、レビュー頼みますね!」
イラストの得意なパトリシア=K=ポラリス(ka5996)が、島の地図に花やキラキラ輝く太陽を描きこんだ。
「パティはネ、同盟が大好きダカラ。いろんな人が来てくれるノガ、楽しみデ、嬉しーんダヨ♪」
折角の島の自然を生かした、花と緑がいっぱいの闘技場。
「闘技場の名前はネ、そのまんま、響きもカワイイ『L`isola』がいいと思うんダヨ!」
島を意味する言葉を、地図の上に可愛い文字で書き込んだ。
トルステン=L=ユピテル(ka3946)は島の地形を睨み、地図と見比べる。
「基本方針はアスレチックな冒険ステージ、ってコトでいいんだな?」
ドメニコの顔を窺うと、興味深そうに頷いている。
「観客は見下ろす形の方が見やすいよな。 とすると南側をリングにして、崖側を観客席にする感じか」
イメージはコロッセオだ。
「じゃあ雑木林はアスレチックなフィールドにするヨ! 折角だからネ! できたらCAMが通れる道も通したいカナ?」
パトリシアは提案をメモしていく。
東の崖からは、リゼリオの輝く海が見えるだろう。どうせなら、少し張りだしたデッキを設け、海の眺めを楽しめるようにしたい。
「お花や、海の生き物もいるかもしれないケド。ちょっとだけ場所を分けてもらって、そこで水中戦なんかも楽しいヨネ♪」
「この辺りに、戦況を表示するディスプレイがあると楽しめるんだがな」
央崎 枢(ka5153)がとん、と地図の一点を指差した。
タンクトップにダボダボズボン、足には地下足袋を履き、頭にタオルといういでたちが、妙に似合っている。
「どうだろう、オフィスにあるようなのが欲しいんだが」
「そうだな、実に面白い提案ではあるが……今回は間に合わんな」
ドメニコが残念そうに唸る。おそらく闘技場で観客が確認できるサイズとなると、新たに作り直す必要があるだろう。またエネルギーの供給も、この離れ小島では難しい。
「そっか。まあそれならしょうがないか。情報を掲示するボードって形で行こうかな」
枢は更に、スコアボードや人型模型でのダメージ表示などを提案する。
こうして設計図はでき上がり、クレールが図面と時計を確認する。
「ではそれぞれの工程の担当は、このように! 工員は、私達皆です! 早速とりかかりましょう!」
およその時間を計算し、遅れがないように。クレールはタイムキーパーを担当する。
それぞれが持ち場に移動する中、シバ・ミラージュ(ka2094)は青い空に誓う。
「メリンダさん、安心してください。逃げ出した貴女の尻拭いは、僕がきちんと果たしてみせますよ」
……逃げた訳じゃないですからー!
そんな叫びがどこかから聞こえたような気がした。
●
ドメニコはまた後で見に来ると言って島を離れた。
彼の意図が作業の邪魔をしないようにとの配慮か、闘技場ができ上がるまでのお楽しみかはわからないが。
魔導アーマーに乗り込んだトルステンは、海へとなだらかに下っていく南側へ向かう。
白い砂浜、青い海。平和そのもののこの空の下、激しい戦いはまだ続いているのだが。
「ま、たまにはイベントごともイイよな、戦争ばっかじゃシンドイし」
張り詰めたままの糸はいつか切れてしまうかもしれない。戦いが続くのなら、適度に緊張をほぐすこともまた大事なことなのだ。
ふと見ると、波打ち際でパトリシアが祈っている。
「何やってんだ?」
アーマーから身を乗り出すトルステンに、パトリシアが声を上げる。
「島の精霊さんにご挨拶ダヨ! ……少しだけ騒がしくするケド、よろしくネ。皆が怪我しないように、って!」
「ふうん?」
余り興味がなさそうにそう言いながらも、トルステンはアーマーを降りてパトリシアの隣で軽く目を閉じる。
その姿に、他のメンバーたちもそれぞれの場所で祈りを捧げた。
トルステンがアーマーに乗り込むと、ウーナのCAMが傍に来た。
「細かい造成は任せて!」
コックピットのキャノピーをあげ、ウーナが手を振る。
「ああ。まずは余計なものを片付けてからな」
ルトガーも加わり、岩や流木など、邪魔になるものを取り除いていく。
だがどうしても動かせない大岩もある。
「折角の無人島だからな、余り人工的に整えるのも面白くない。雰囲気を壊さない程度にせんとな」
ルトガーはそう言って、大岩を砕いた。
「うむ。中々面白いな」
彼の美的センスの赴くままに岩をブレイクしていく。
だんだん楽しくなってきたようだが、それはルトガーに限ったことではないようだ。
「みんなでブレイク! ですね!」
がつんと大岩を砕くのは、シバが乗ったアーマーだ。
ヘルメットを被り、タオルで汗を拭いながら、いつしか気分はワイルド系。過去の自分をぶっ壊す勢いで、ガンガン岩を砕く。
だがあくまでも、表情はいつもの通りに。
「おい、ここはそんなもんでいい。次の作業にいくぞ」
「はい!」
声をかけるトルステンに、汗を光らせながらあくまでも爽やかに。
「良い闘技場ができそうですね」
「作るのはこれからだけどな」
クレールはパトリシアと共に、元気よく雑木林へ。
「さあ! パティさん、頑張りましょう!」
「ハイっ、オヤカタ♪」
パトリシアはリーリーのホルに跨り、魔導アーマーを見上げる。
「ふぁぁ、みんな……アーマー動かせるんダネっ! パティも後で乗せて欲しいんダヨ〜♪♪」
南のほうで動きまわるアーマーを振り返ると、友人のトルステンも器用に乗りこなしている。
「でもまずは、お仕事お仕事!」
クレールは頑丈そうな木を見つくろい、印をつける。
「やっぱり、通常ではできない特殊な……立体的な戦闘とか、スタイリッシュで映えますよね!」
目をつけた木が観客から見えやすいように、余計な木を切り倒す。
「どうですか?」
「ここ、もうちょっと開けたほうが見やすいと思うんだヨ!」
アーマーからでは見えないところを、パトリシアが細かくチェック。
それからクライミング用の綱や、滑車をつけた吊革など、面白い戦い方ができそうなアイテムを用意する。
パトリシアも杭の立て方や縄の結び方などを教わりながら、自分の目の高さの作業をテキパキと進めて行く。
「いいペースですね! できれば溜池も作りたいです。水は周囲にありますし! 水中戦の得意な選手も、いると思うんです!」
皆が自分の個性を最大限に引き出せるように。時間の許す限り、様々な仕掛けを凝らしていく。
こうして闘技場が形を整えて行く。
クローディオがひらりとヴィクトリア(※ママチャリ)に跨った。
「そろそろ私の出番だな」
南側の砂地に回ると、そこから島全体を見る。
木の板を打ち付けた観客席。海から観客席を抜けて林を繋ぐ花道。木々の間にはロープや網が渡されている。
クローディオは背筋を伸ばしてヴィクトリアを駆る。
ちりりん。
嘶きの代わりに、涼やかな音をたて、ママチャリは砂浜を走りだした。
……物凄い体力である。
段差の有無、花道の滑らかさ、観客席の隙間など。生身の身体で確認し、クローディオは動きにくい箇所で合図を送る。
「この階段はもう少し段を刻むほうがよかろう」
そう言いながら、器用にママチャリで降りて行く。
そこには面白そうにママチャリを眺めるドメニコがいた。
「器用なものだな」
「ママチャリと心を合わせれば容易いこと。これはいずれクリムゾンウェスト中に普及するであろう、次世代の乗り物だ。同盟でも是非積極的に導入されることをお勧めする」
いずれ、ユニオンにも乗り込んでじっくりと素晴らしさを伝えよう。
クローディオは誇らしげに、陽光を浴びて輝くママチャリのベルを鳴らすのだった。
●
島は闘技場として生まれ変わった。
観客席に繋がる崖では、ルトガーがまだ作業を続けていた。
岩を掴んでのボルダリングや、切り出した木を使った迷路など。
子供連れの観客も楽しめるように、あまり難しくない遊具を作っているのだ。
「折角ここまで来るんだ、多少ワイルドに楽しめたほうがいいだろう」
武闘大会を見ているうちに、観客もヤンチャしたくなるかもしれない。ルトガーは魔導アーマーで岩を割りまくって、何かが吹っ切れたようだ。
「少しいいだろうか」
「ん?」
クローディオが思案げな顔で辺りを見回す。
「ここにママチャリ等の二輪車両を駐車するスペースの作成したいのだ」
「……何だって?」
ルトガーは首を傾げる。
アーマーにせよユニットにせよ、基本は雨ざらしだ。
だがクローディオにはそれは耐えられない。
「屋根を設け、日差しや悪天候からヴィクトリアを守ることができるような場所を、な。潮の影響も無視できん」
「……」
果たして何人が二輪車で闘技場に来るのか?
ルトガーは疑問に思ったが、クローディオの作業を止めはしなかった。
トルステンとパトリシアは、花道の傍に支柱を立てたり、タイヤを積み重ねたりして賑やかに飾る。
「パティはねー、こういうのが可愛いと思うんダヨ♪」
「あんまファンシーにすんじゃねーぞ? 格闘技だかんな」
タイヤを赤や黄色に彩るパトリシアに、トルステンが一応釘をさす。
観客席の高い場所に上がり、クレールが辺りを見回した。
「すごいですよ! 大会もきっと盛り上がりますよ!」
そこにトランシーバーを通して、枢が尋ねて来る。
『見え具合はどうだろう。指示をもらえるかな』
試合の状況を伝えるボードの角度を調整するためだ。
ウーナがCAMから顔を覗かせる。
「ねえ、ドメニコさん。このまま本戦もユニットを都合できない?」
作業用に都合してくれたということは、ユニットの有用性を認めているということだ。
ハンター達が使い方に習熟すれば、今後もきっと役に立つ。
「本音をいえば、大会にユニット部門があれば最高なんだけどね! ボードの書き換えにつかったりさ、入場時に礼砲をぶっ放したり? 選手を肩に乗せて入場させたりしたら面白いと思うんだけどなあ」
「そうだな、その案は今回は暖めておくとしよう」
ちらりと不満そうな表情を見せるウーナに、ドメニコは悪戯っ子のような笑顔を向ける。
「今回の出資は我がユニオンだからな。いい案を全部一度に提供するのは、親切すぎるというものだ」
何かとぬかりない同盟の人間らしい言葉に、ウーナが噴き出す。
「いいよ、じゃあいずれ役立てるために。特別にドメニコさんにはデモンストレーションを披露するよ!」
ウーナが手を振りながら、花道を通り、闘技場に立つ。
「最近ならった青竜紅刃流の刀銃二挺術、バッチリ見なー!」
「お手柔らかにお願いしますね」
シバが深々と頭を下げる。とみるや、一気にダッシュ。
わざわざ空に向けてマジックアローを放ち、派手な光を背負う。
「こっちも派手に行くよ!」
ウーナは激しくステップを踏み、拳銃で暖幕を張る。シバは行動を阻害されつつも、拳を叩きこむ。
「ブレイク! ブレイク!」
さっきの工事の余韻か、いつものシバよりも随分と活動的だ。ふたりはもつれ合いながら、雑木林へ。
『ポイント! シバ、脚部にダメージ! ウーナ、上腕にダメージ!』
枢が人型のボードにわかりやすく印をつけて行く。
実際の武術大会のルールはまだわからないが、生身で戦う以上、判定にそう違いはないだろう。
「本番では発煙筒や花火なんかがあると派手になるな……ま、シバみたいに、スキル使うのもいいかもな」
枢はそれも後でドメニコに伝えようと考える。
トルステンが半ばぼやくように呟いた。
「あんだけ作業してさらに模擬戦とか、元気よな……」
そう言いながらも、頃合いを見て、海の水につけて冷やしておいた飲み物を取りにいってやろうと思う。
「終わったらみんなで、ごはんダヨー!」
パトリシアがお弁当をつめたバスケットを抱えている。
ウーナとシバのデモンストレーションに、観客席に陣取るドメニコが大きな拍手を送る。
「成程、これは見応えがある。面白い競技場に……」
いいかけた瞬間、ドメニコがアースウォールを使って流れ弾を受け止めた。
「安全面では一考の余地があるか」
……尤も、闘技場が駄目なら、同盟の娯楽施設として買い取る手もある。
この男もまた、一筋縄ではいかないようだ。
<了>
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建設、もとい依頼相談スレ ウーナ(ka1439) 人間(リアルブルー)|16才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2016/06/06 06:18:48 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
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