ゲスト
(ka0000)
婚活(?)ガーデンパーティ!
マスター:四月朔日さくら

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2016/06/16 19:00
- 完成日
- 2016/06/27 22:07
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「……は?」
のっけから間抜けな声を上げたのはゲルタ・シュヴァイツァー。
どこか子どもっぽいところがあるが、その実力は確かなものだ。ただ、その子どもっぽさがどうにも抜けきらないのはよろしくなさそうなのだが――本人が余り気にしてないあたり、とくに。
「いえ、ですので……当主が、それならいっそ婿捜しのパーティでも開いたらどうか、と仰っておりまして」
そう言っているのは、実家からわざわざやってきた執事のひとりだ。もともとゲルタの実家は帝国では医者を輩出する名家の一つであり、こう見えてもゲルタは結構なお嬢様なのである。
「でも突然パーティって言われても、ねえ?」
今の仕事にやり甲斐を見いだしているゲルタとしては、複雑な気分だ。
と、そこにそっと耳打ちするメイドが一人。
「それならとりあえず名目だけでも探しておけば良いかと。ゲルタ様の様子を見ればそのうち諦めるでしょうし」
そう言われて、ゲルタはうんざりした様にため息をつく。そういえば以前にも、見合いを迫られた事もあったっけ。あのときはハンターたちに随分たすけてもらったものだが……
「あ」
ゲルタは思わず笑った。そうだ、ハンターに手伝ってもらえばいい。それなら家族への角も立たず、楽しめるだろう。
「……判ったわ。でもその代わり、こちらから条件を出させてもらうわね」
――そんなこんなで、ゲルタを主催者とした、なんだか訳の分からない(多分婚活)パーティが開催される事になったのである。
「……は?」
のっけから間抜けな声を上げたのはゲルタ・シュヴァイツァー。
どこか子どもっぽいところがあるが、その実力は確かなものだ。ただ、その子どもっぽさがどうにも抜けきらないのはよろしくなさそうなのだが――本人が余り気にしてないあたり、とくに。
「いえ、ですので……当主が、それならいっそ婿捜しのパーティでも開いたらどうか、と仰っておりまして」
そう言っているのは、実家からわざわざやってきた執事のひとりだ。もともとゲルタの実家は帝国では医者を輩出する名家の一つであり、こう見えてもゲルタは結構なお嬢様なのである。
「でも突然パーティって言われても、ねえ?」
今の仕事にやり甲斐を見いだしているゲルタとしては、複雑な気分だ。
と、そこにそっと耳打ちするメイドが一人。
「それならとりあえず名目だけでも探しておけば良いかと。ゲルタ様の様子を見ればそのうち諦めるでしょうし」
そう言われて、ゲルタはうんざりした様にため息をつく。そういえば以前にも、見合いを迫られた事もあったっけ。あのときはハンターたちに随分たすけてもらったものだが……
「あ」
ゲルタは思わず笑った。そうだ、ハンターに手伝ってもらえばいい。それなら家族への角も立たず、楽しめるだろう。
「……判ったわ。でもその代わり、こちらから条件を出させてもらうわね」
――そんなこんなで、ゲルタを主催者とした、なんだか訳の分からない(多分婚活)パーティが開催される事になったのである。
リプレイ本文
●
帝国軍属軍医でそれなりの名家のお嬢様でもあるゲルタが婚活を名目としたガーデンパーティを主催する――それを聞きつけて、興味を示したハンターたちは会場たるノアーラ・クンタウにあるとある小さな庭園へとやってきていた。
今回の参加者のなかには、ゲルタと既に面識のある人物もいる。
無論、面識がないものもいる。
あるいは面識があっても、そんなことにはお構いなしに参加しているものも――。
(……まあ美人サンが主催……ってだけでも、出る価値はあるかも……な)
参加者の一人で何処か飄々とした雰囲気を持つ青年ヤナギ・エリューナク(ka0265)は、そんなことを思いながらゲルタという女性を見つめていた。
軍医という立場もあってか普段は非常にラフな格好をしているゲルタであるが、今日は彼女自身が本来持つスタイルの良さを引き立たせるような、それでいて上品な紺色のドレスを身に纏っている。いつもはせいぜい軽くゆわう程度の長いブロンドヘアも、今日はきれいに結い上げられている。薄く化粧も施され、もともとの素材がいいこともあってか、ゲルタはなかなかの美女になっていた。
もともと裕福な家庭に生まれ、ミュージシャンとしても活動していたエリューナクからしてみると、ゲルタという女性の根っこの良さというのはわかるのだろう、なれない格好につかれた表情を見せているゲルタにそっと近づいて、
「紅茶でも一杯どうだい?」
そう問いかけてみる。
ゲルタも彼の注いでくれた紅茶の品の良い香りに、嬉しそうに頷いてみせる。
「ありがとう。こういうことはあたし自身もなかなか慣れてないから、もっと気軽に話しかけたりして構わないから、よろしくね」
そう苦笑しながらティカップを受け取り、一口飲んでみる。……口の中にふわりと香りが広がる。おいしい。それだけで笑顔になってしまえるのだから、ゲルタもずいぶん単純だが。
「ああ、ゲルタさん。本日はお招き頂き……誠にありがとうございます。なかなか、楽しいパーティですよね」
そこに挨拶してきたのは、根っからの研究者肌の青年でゲルタが以前保護した子ども・ファナとも接点の多い天央 観智(ka0896)だ。ゲルタのほうも時々リゼリオから届く報告書に彼の名前を何度か見かけたことがあるので、彼についての情報はぼんやりと把握している。
「ああ、観智さん……でしたっけ。いつもファナが世話になっているようで」
実の子どもではないが、保護者としての礼もちゃんとするゲルタに、観智はクスクスと笑う。礼儀正しい、気持ちの良い女性――自身と同じように研究者肌のゲルタを、観智はそう判断した。無論今日は普段の様なラフな装いではなく、それなりにしっかりしたスーツ姿。一応『婚活』という名目で集まっているわけだし、下手なことをするわけにもいかない。彼女の実家に迷惑がかかってもいけないだろうという配慮のもとだ。
それに、ゲルタは研究者肌。観智との共通項も多く、なにか面白い話を聞くこともできるのでは、と言うことを考えていたりもする。勿論、相手の迷惑にならない範囲で、だが。
「……それにしても、この時期はなにかとそう言う話題を持ち出されるみたいですね」
そうクスクスと笑うのは、去年も同様の騒動に巻き込まれ、彼氏役を買って出ることとなったミノル・ユスティース(ka5633)。以前恋人役をしたと言うこともあって、今回も自分がエスコートした方が家族への対応として良いのではないか――そう思って参加した、らしい。
が、実のところは少しばかり違う。以前、ミノルはゲルタが実際に働いている姿を見た。そのときの気さくな性格と、同時に物事に真摯に打ち込む態度――そんな彼女の人柄に、彼は少しずつではあるが、確かに引かれつつあった。
無論彼も紳士の嗜みとしての身だしなみを整えている。ステッキを所持しているのも、紳士たる者持つべきと言うこともあるが、万が一のときの仕込み杖になっているからだ。
「あ、ミノルさん」
昨年の騒動を思い出し、ゲルタは顔を赤らめて挨拶をする。普段よりもいっそう女性らしいその出で立ちはなかなか普段見られるものではないからとメイドたちが張り切った結果だ。そしてそんなミノルはふ、と微笑むと、ゲルタにそっとぬいぐるみを手渡す。
「ささやかなものですが。いつも忙しくしていらっしゃるから、癒やしになるかと思いまして」
手渡されたぬいぐるみは、可愛らしい小狐を模したものだ。意外とこういうぬいぐるみの類が好きなゲルタは、ぱっと顔を輝かせる。
「可愛らしいですね。ありがとう、大事にさせてもらいます」
そう言って微笑むゲルタに、
(参ったなぁ、そう言う笑顔は反則ですよ)
と思わず緩みそうになる口元を隠すミノルであった。
●
穏やかに晴れた午後。
ガーデンパーティには、アフタヌーンティやサンドイッチと行った定番メニューだけではなく、菓子の類もふんだんに揃えられている。
「にしても、婚活ねぇ……どこの世界にでも、あぶれるやつとか日照るやつとかはでるんかね」
そんなことを言いながらチキンナゲットをぱくついているのはキー=フェイス(ka0791)。酒と女のことくらいしか考えない、若干個性的な青年だ。今回はアルコールなしと言うことで、それについては残念に思いながらもしっかりご馳走にありつけるチャンスに乗っかっている。
(お、可愛いお嬢さん)
ぱっと目についたのは艶やかな黒髪に群青色の双眸という小柄な少女――鷹藤 紅々乃(ka4862)だ。彼女は彼女で男性の相手をしている主催のゲルタを見て心中複雑そうにしていた。
(お婿さん捜し……身分のあるほうは、いろいろ大変なのですね)
自身はそういうことには余り興味がないし、そもそもそこまで年齢も高くない。正直なところ、まだまだお子様だ。今回は何しろ名目だけとは言え『婚活』パーティと言うこともあって、男性参加者のほうが多く、声をかける相手も限られてしまう。それもあって少女にも声をかけようとしたが、そこで見慣れた顔があることにキーは気づいた。
「あれ、ちーっす雪にゃん。婚活たのしんでっか?」
相手の名前は雪雫 (ka3362)。白銀の髪と瞳が特徴的な、エルフの少女である。ふだんからぽやっとしたところのある少女だが、それは今日も相変わらずなようで、
「あら、キー。素敵なお庭ですよねぇ……ここ。ところで、、こんかつ、というのは一体何なのでしょうか……?」
そもそもの定義が判っていなかったらしい。
「そこからかよ、あいかわらずだなぁ~。まあ、そうだな。婚活って言うのは一緒に味噌汁食べる相手を探すもんだとでも思っとけばいいさ」
キーは相変わらず、判る様な判らない様な、そんなはぐらかし方をしてみせる。
「味噌汁ですか?」
「……いや、そこ本気にとられるとまたあとで説明厄介だけどさ……あれだ。仲のいいお友達でいられそうな相手を探す会、って解釈しとくといいと思うぞ」
「……? わかりました」
世間知らずな雪雫は、言われたことを鵜呑みにしてこっくりと頷いた。
一方声をかけられることのなかった紅々乃は、と言うと。
(お友達、増えたら嬉しいですね……!)
完全にガーデンパーティを楽しむつもり満々での参加である。
(でもこのパーティの本来の目的は、今回の主催のゲルタさんのお婿さん捜し……なのですよね? 身分のある方はいろいろ大変なのですね……)
そう思いながらきょろきょろと周囲を見回していると、以前依頼で出会った青年――鵤(ka3319)に遭遇した。ドレスコードは一応クリアしているものの、いつもながらの何処かくたびれた印象は否めない。
「鵤さん!」
そう紅々乃が話しかけると、鵤はにんまりと笑って小さく片手をあげた。
「よ、なにか美味い飯でも食えてるか?」
そう言う鵤はサンドイッチをもぐもぐと堪能している。本人は婚活だろうがなんだろうが飲み食いできりゃ構わない、と言うスタンスだから仕方がない。ただここはアルコール禁止と前もって言われているので、そのことだけは残念そうにしている。
一方の紅々乃はと言えば、珍しい甘味を嬉しそうに頬張っていた。
「はぃ~、お日様もぽかぽかで、スイーツはあまあまで、幸せです♪ 鵤さんは残念でしたね、お酒がなくて?」
にこにことそんなことを言うのは悪気があってか無邪気さゆえか。
「まあだからやけ食いってわけじゃあないが、いろいろ食わせてもらってるってわけだ。……と、他にも見た顔がいるな」
鵤はひょい、と軽く片手を挙げてみせる。そちらの方には金髪金目の穏やかそうな女性――ソアレ・M・グリーヴ(ka2984)と、何故か巷で「ママチャリの貴公子」と呼ばれている王国の由緒正しい貴族の家の出身・クローディオ・シャール(ka0030)が談笑していた。ソアレはクローディオにとって大事な戦友のいとこにあたる存在だ。会って話をするのはまだ二度目だが、クローディオとしては悪い印象は持たなかったこともあってたわいのない会話で親交を深めたいと思っている。
「嬢ちゃんたちも来てたのか。なかなかいいパーティだよなあ」
「まあ、鵤さまもいらしているなんて。お会いできて嬉しく思いますの。そうそう、クローディオ様とも先ほど話していたのですが、このようなパーティも機会が多いわけでは御座いませんし、楽しませてもらっていますの」
ソアレはクローディオの愛車(ママチャリ)・ヴィクトリアにも興味津々といった様子だ。
「そういえば、私はフルートも多少たしなんでいるのだが」
クローディオはそう言いつつも、己の左腕――そこにあったはずのものは今はないのだが――をちらりと見やる。本人はさほど気にしてはいないつもりだが、こういうときにやはり不便さを感じてしまうのは仕方ないだろう。
しかし、それを聞いたソアレは嬉しそうに頬を染めた。
「まあ! 私もフルートはたしなんでおりますの。セッションが出来れば良かったのですけれど」
「いや、それなら是非今度君の音色を聞かせてくれると嬉しい」
少しずつではあるが、話のきっかけなどができている様だ。
「……そう言えば、鵤。そちらのお嬢さんは?」
紅々乃に気が付いたクローディオが少女に目を移す。
「ああ、知り合いの嬢ちゃんでな。以前に依頼で一緒になったことがある」
「ふむ。私はクローディオという、よろしく頼む」
「よ、よろしくお願いします」
すっきりとした金髪碧眼の男性に声を掛けられ、紅々乃は少し緊張気味だ。でもこういう場所で出会ったのも何かの縁、話をして親交を深めるのも楽しいものである。
それを少し遠目に眺めている壮年の男性が、ひとり。
可愛い養女の為――といっても相手捜しというわけではなく、「父親としての適切な対応」を知ることができれば、と言う程度のものだが――に参加している、セドリック・L・ファルツ(ka4167)。穏やかな笑みを浮かべる優しげな男性である。親友の娘を養女として引き取って早七年、そう言う浮いた話はまだない様だが、逆に言えばいつ起きてもおかしくない話だ。
思春期の娘というのはとかく扱いが難しい。とくに父一人娘一人という環境、しかも血が繋がっていないとなればなおのこと。
ちなみに彼自身は既に妻を喪って久しい。だからといってこういう場所で相手捜し、と言うのも縁のない話だ。
今は仕事、家、そして愛娘のことで手一杯なのだから。
「そんなところでぼうっと立っていないで、話をもっとしてみると良いと思いますよ?」
そう言ってくれるのはゲルタだ。
「そんなものですか?」
「そんなものですよ」
ゲルタもそう言いながらクスクスと笑っている。ゲルタ自身、ファナという存在の後見人であるわけなので、似た様な問題は抱えていないわけではないからだろう。
「おやおや。ゲルタ、折角ならもう少し話を聞かせてくれないか? リアルブルーを知りたいって聞いてるが、俺もこっちの世界のこと、もっと知りてぇと思ってるんだ……教えてくれるか?」
エリューナクがそっと会話に混ざってきて、そんなことを言う。見た目は結構軽そうにも見えるが、中身は一本通った気持ちのいい青年であるのは、ゲルタ自身も話していて判っていた。悪い人物ではないのはすぐにわかる。
「わたしの知っていることなんて、本当にまだまだ少ないけれど。それでも、皆が興味を持ってくれるなら、今度また機会あれば話しましょうか」
ゲルタは嬉しそうに微笑んだ。
――ところで。今回の会場にはひとり、性別の判断が難しい人物が紛れている。
ロス・バーミリオン(ka4718)。『彼』はいわゆる若作り系のオネェである。しかも今回の目的は『イケメンみつけてゲット』なわけで、いっそう訳が分からない。
身長はかなり高いし、普通にしていればしっかり男性なのだろうが、何しろ赤いドレスで髪もメイクもばっちり決めたロスの姿は本気で性別不詳という言葉に相応しい。
そんなロスとは以前からの知り合いである鵤だが、彼をみつけてすぐに隠れようとした。しかし隠れようとすればするほど見つかってしまうのも良くある話で、
「あ~ら、ルカちゃんじゃないの! なになに、ルカちゃんもイケメン捜しにきたのぉ?」
などと尋ねられてしまう始末。無論そんなわけはないので首を横に古ものの、
「まったくぅ、ご飯ばっか食べてないでちょっとはこの美女の相手をしなさいよね!」
などと言われてしまう。
「美女なんてどこにいるんだっての」
「や~だ、ここにいるじゃないのよぉ!」
完全にペースはロス優勢になっている。鵤は思わず頭に手を当ててしまった。
●
「えっ、婚活?! 名物料理が目当てだったんだよ、俺。シェフとしての見聞を広げたくてさ」
婚活パーティと言うことに気付いていなかったのはザレム・アズール(ka0878)。腕利きのハンターの筈なのだが、今回はちょっと見落としてしまったらしい。そんな彼は、自他共に認める面食いの星野 ハナ(ka5852)を伴ってやってきている。
正直、ふたりで歩いているのを見れば、これはカップルだろうかと思える程度には仲の良い関係ではある。
――と言うか、今回のパーティへの参加も、ハナの方が先に参加したいと言い出していたらしい。まあつまり、ハナの下心たっぷりの参加、と言うことらしい。
(好きな気持ちは知っといて欲しいんじゃ~!)
恋愛至上主義のハナ、なかなかに策士である。もともと『モテるためにはキャラ作りから』と言うヘンなことに大学卒業後に気付いてしまったタイプなので、正直言うと、イタい。それでも、もうそれがすっかり板についてしまっているあたりは逆に凄いのかも知れないが。
「そう言えばぁ、ガーデンパーティと聞いていたのでぇ……クリーム系はあえて避けて涼しげなものを、とおもってぇ」
そう言いながら取り出したのはアイシングシュガーたっぷり、フルーツミックスたっぷりのブランデーケーキ。それも二本。綺麗に切り分けたりするあたりは女子力の高さがうかがえるが、それを見ていて欲しい肝心要のザレムはと言うと、ゲルタと談笑している。
「はー、結構大変なんだな。で、ゲルタのお眼鏡にかなう殿方は見つかったかい?」
「いや……うーん。皆良い方だから、逆にこういうことになって、少し申し訳ないかな、ってね」
ゲルタは照れくさそうに笑う。こういう催しに集まってくれるハンターたちは、本当にいい人たちだ。だからこそ、逆になんとなく申し訳なくなってしまうのだろう。
「そう言うザレムさんは、彼女とかは?」
逆にゲルタが話を振ってみると、
「彼女? いや、いないぞ。ま、募集中……ってところだな」
ザレムはそんなことを言って苦笑してみせる。
「それでも好みの女性ってあるんじゃない?」
そうつついてみせると、ザレムはまあね、と言って笑った。
「そうだな……お飾りの人形みたいなお嬢さんじゃなくて、自立してる職業女性のほうが好きだな。それも、仕事に誇りを持っていて、男性と肩を並べてるような人。そんな人と、ともに歩きたいなとは思えるよ。化粧なんか要らないし、見た目にこだわってるわけでもない。たとえ同居しなくても、心が繋がってたらいいと思ってる」
「……聞いてると、ずいぶん面白い考え方してるわね」
ゲルタはクスクスと笑った。でも、ゲルタはそう言う考えは嫌いではない。自身も、学者肌で普段はドレスアップなんて考えないタイプだから。
「……確かに。結構特殊な嗜好かも知れない」
言ったザレム本人も苦笑いを浮かべてみせる。それを耳そばだてて聞いていたハナは、わずかに顔を赤くした。
(へぇ……そうなんだ、ふーん……)
でもそんなことはおくびにも出さず、集めてきた料理や菓子の数々をザレムにはい、と手渡してやる。
「これ、甘辛い味付けでとっても美味しいんですぅ! あと、こっちのも、甘さ控えめのお菓子で、美味しいですよぉ?」
ザレムは言われるままにそれを口にする。ぱっと顔が明るくなった。
「うん、美味いな。流石というか」
良く考えたら良家のお嬢様の婚活なわけで、下手な料理はないわけだ。それぞれを堪能しながら、ニコニコと笑っていた。――ハナの秋波には、いっさい気付かずに。
●
気付けばずいぶん太陽が茜に染まっている。ゲルタは一つ、深い礼をした。
「今日は来てくれてありがとうね」
もともとは彼女の我儘からはじまったことなのだが、楽しませてもらったのはだれもが認めることなので、気にしているものはいない。
いや、むしろ――
「ゲルタさん。もしご迷惑じゃなければ、その――以前の恋人のまねごとじゃなく、本当にお近づきになれたらと、そう思っているのですけれど」
ミノルがそう言って、小さく微笑んだ。ゲルタは大きく目を見開いて、何度か瞬きをする。
「あ、で、でも、まだわたしはミノルさんのことを詳しく知らないので――もう少し、あなたと接する機会が増えたら、と言うことで、今は保留にさせてください……」
そう言って、ゲルタは頬に手を当てた。耳たぶまで熱い。まさかそんなことを言われると思っていなかったものだから、尚更だ。
そしてそんな初心な態度を見せるゲルタに、あたたかな笑いが聞こえる。このパーティは、決して失敗ではなかったと言うことだ。
そして帰り道。
ハナはザレムの右手を両手でぎゅっと握り、そしてまっすぐに見つめる。
「えっとぉ……私はイケメンもお料理もだいすきなのでぇ、こういう機会があったらまた誘ってもいいですぅ……?」
ザレムは目をぱちくりさせながら、くすっと笑った。
「ああ。料理の勉強にもなるし、俺でよければつきあうぞ?」
ぱあっと顔を明るくさせたハナの気持ちには、相変わらず気付かぬまま。だけどそれもきっと、友情から愛情へ変わる一過程のかたちのひとつなのかも知れない。
さまざまな予感を感じさせながら、ガーデンパーティは無事に終わりを告げたのであった。
帝国軍属軍医でそれなりの名家のお嬢様でもあるゲルタが婚活を名目としたガーデンパーティを主催する――それを聞きつけて、興味を示したハンターたちは会場たるノアーラ・クンタウにあるとある小さな庭園へとやってきていた。
今回の参加者のなかには、ゲルタと既に面識のある人物もいる。
無論、面識がないものもいる。
あるいは面識があっても、そんなことにはお構いなしに参加しているものも――。
(……まあ美人サンが主催……ってだけでも、出る価値はあるかも……な)
参加者の一人で何処か飄々とした雰囲気を持つ青年ヤナギ・エリューナク(ka0265)は、そんなことを思いながらゲルタという女性を見つめていた。
軍医という立場もあってか普段は非常にラフな格好をしているゲルタであるが、今日は彼女自身が本来持つスタイルの良さを引き立たせるような、それでいて上品な紺色のドレスを身に纏っている。いつもはせいぜい軽くゆわう程度の長いブロンドヘアも、今日はきれいに結い上げられている。薄く化粧も施され、もともとの素材がいいこともあってか、ゲルタはなかなかの美女になっていた。
もともと裕福な家庭に生まれ、ミュージシャンとしても活動していたエリューナクからしてみると、ゲルタという女性の根っこの良さというのはわかるのだろう、なれない格好につかれた表情を見せているゲルタにそっと近づいて、
「紅茶でも一杯どうだい?」
そう問いかけてみる。
ゲルタも彼の注いでくれた紅茶の品の良い香りに、嬉しそうに頷いてみせる。
「ありがとう。こういうことはあたし自身もなかなか慣れてないから、もっと気軽に話しかけたりして構わないから、よろしくね」
そう苦笑しながらティカップを受け取り、一口飲んでみる。……口の中にふわりと香りが広がる。おいしい。それだけで笑顔になってしまえるのだから、ゲルタもずいぶん単純だが。
「ああ、ゲルタさん。本日はお招き頂き……誠にありがとうございます。なかなか、楽しいパーティですよね」
そこに挨拶してきたのは、根っからの研究者肌の青年でゲルタが以前保護した子ども・ファナとも接点の多い天央 観智(ka0896)だ。ゲルタのほうも時々リゼリオから届く報告書に彼の名前を何度か見かけたことがあるので、彼についての情報はぼんやりと把握している。
「ああ、観智さん……でしたっけ。いつもファナが世話になっているようで」
実の子どもではないが、保護者としての礼もちゃんとするゲルタに、観智はクスクスと笑う。礼儀正しい、気持ちの良い女性――自身と同じように研究者肌のゲルタを、観智はそう判断した。無論今日は普段の様なラフな装いではなく、それなりにしっかりしたスーツ姿。一応『婚活』という名目で集まっているわけだし、下手なことをするわけにもいかない。彼女の実家に迷惑がかかってもいけないだろうという配慮のもとだ。
それに、ゲルタは研究者肌。観智との共通項も多く、なにか面白い話を聞くこともできるのでは、と言うことを考えていたりもする。勿論、相手の迷惑にならない範囲で、だが。
「……それにしても、この時期はなにかとそう言う話題を持ち出されるみたいですね」
そうクスクスと笑うのは、去年も同様の騒動に巻き込まれ、彼氏役を買って出ることとなったミノル・ユスティース(ka5633)。以前恋人役をしたと言うこともあって、今回も自分がエスコートした方が家族への対応として良いのではないか――そう思って参加した、らしい。
が、実のところは少しばかり違う。以前、ミノルはゲルタが実際に働いている姿を見た。そのときの気さくな性格と、同時に物事に真摯に打ち込む態度――そんな彼女の人柄に、彼は少しずつではあるが、確かに引かれつつあった。
無論彼も紳士の嗜みとしての身だしなみを整えている。ステッキを所持しているのも、紳士たる者持つべきと言うこともあるが、万が一のときの仕込み杖になっているからだ。
「あ、ミノルさん」
昨年の騒動を思い出し、ゲルタは顔を赤らめて挨拶をする。普段よりもいっそう女性らしいその出で立ちはなかなか普段見られるものではないからとメイドたちが張り切った結果だ。そしてそんなミノルはふ、と微笑むと、ゲルタにそっとぬいぐるみを手渡す。
「ささやかなものですが。いつも忙しくしていらっしゃるから、癒やしになるかと思いまして」
手渡されたぬいぐるみは、可愛らしい小狐を模したものだ。意外とこういうぬいぐるみの類が好きなゲルタは、ぱっと顔を輝かせる。
「可愛らしいですね。ありがとう、大事にさせてもらいます」
そう言って微笑むゲルタに、
(参ったなぁ、そう言う笑顔は反則ですよ)
と思わず緩みそうになる口元を隠すミノルであった。
●
穏やかに晴れた午後。
ガーデンパーティには、アフタヌーンティやサンドイッチと行った定番メニューだけではなく、菓子の類もふんだんに揃えられている。
「にしても、婚活ねぇ……どこの世界にでも、あぶれるやつとか日照るやつとかはでるんかね」
そんなことを言いながらチキンナゲットをぱくついているのはキー=フェイス(ka0791)。酒と女のことくらいしか考えない、若干個性的な青年だ。今回はアルコールなしと言うことで、それについては残念に思いながらもしっかりご馳走にありつけるチャンスに乗っかっている。
(お、可愛いお嬢さん)
ぱっと目についたのは艶やかな黒髪に群青色の双眸という小柄な少女――鷹藤 紅々乃(ka4862)だ。彼女は彼女で男性の相手をしている主催のゲルタを見て心中複雑そうにしていた。
(お婿さん捜し……身分のあるほうは、いろいろ大変なのですね)
自身はそういうことには余り興味がないし、そもそもそこまで年齢も高くない。正直なところ、まだまだお子様だ。今回は何しろ名目だけとは言え『婚活』パーティと言うこともあって、男性参加者のほうが多く、声をかける相手も限られてしまう。それもあって少女にも声をかけようとしたが、そこで見慣れた顔があることにキーは気づいた。
「あれ、ちーっす雪にゃん。婚活たのしんでっか?」
相手の名前は雪雫 (ka3362)。白銀の髪と瞳が特徴的な、エルフの少女である。ふだんからぽやっとしたところのある少女だが、それは今日も相変わらずなようで、
「あら、キー。素敵なお庭ですよねぇ……ここ。ところで、、こんかつ、というのは一体何なのでしょうか……?」
そもそもの定義が判っていなかったらしい。
「そこからかよ、あいかわらずだなぁ~。まあ、そうだな。婚活って言うのは一緒に味噌汁食べる相手を探すもんだとでも思っとけばいいさ」
キーは相変わらず、判る様な判らない様な、そんなはぐらかし方をしてみせる。
「味噌汁ですか?」
「……いや、そこ本気にとられるとまたあとで説明厄介だけどさ……あれだ。仲のいいお友達でいられそうな相手を探す会、って解釈しとくといいと思うぞ」
「……? わかりました」
世間知らずな雪雫は、言われたことを鵜呑みにしてこっくりと頷いた。
一方声をかけられることのなかった紅々乃は、と言うと。
(お友達、増えたら嬉しいですね……!)
完全にガーデンパーティを楽しむつもり満々での参加である。
(でもこのパーティの本来の目的は、今回の主催のゲルタさんのお婿さん捜し……なのですよね? 身分のある方はいろいろ大変なのですね……)
そう思いながらきょろきょろと周囲を見回していると、以前依頼で出会った青年――鵤(ka3319)に遭遇した。ドレスコードは一応クリアしているものの、いつもながらの何処かくたびれた印象は否めない。
「鵤さん!」
そう紅々乃が話しかけると、鵤はにんまりと笑って小さく片手をあげた。
「よ、なにか美味い飯でも食えてるか?」
そう言う鵤はサンドイッチをもぐもぐと堪能している。本人は婚活だろうがなんだろうが飲み食いできりゃ構わない、と言うスタンスだから仕方がない。ただここはアルコール禁止と前もって言われているので、そのことだけは残念そうにしている。
一方の紅々乃はと言えば、珍しい甘味を嬉しそうに頬張っていた。
「はぃ~、お日様もぽかぽかで、スイーツはあまあまで、幸せです♪ 鵤さんは残念でしたね、お酒がなくて?」
にこにことそんなことを言うのは悪気があってか無邪気さゆえか。
「まあだからやけ食いってわけじゃあないが、いろいろ食わせてもらってるってわけだ。……と、他にも見た顔がいるな」
鵤はひょい、と軽く片手を挙げてみせる。そちらの方には金髪金目の穏やかそうな女性――ソアレ・M・グリーヴ(ka2984)と、何故か巷で「ママチャリの貴公子」と呼ばれている王国の由緒正しい貴族の家の出身・クローディオ・シャール(ka0030)が談笑していた。ソアレはクローディオにとって大事な戦友のいとこにあたる存在だ。会って話をするのはまだ二度目だが、クローディオとしては悪い印象は持たなかったこともあってたわいのない会話で親交を深めたいと思っている。
「嬢ちゃんたちも来てたのか。なかなかいいパーティだよなあ」
「まあ、鵤さまもいらしているなんて。お会いできて嬉しく思いますの。そうそう、クローディオ様とも先ほど話していたのですが、このようなパーティも機会が多いわけでは御座いませんし、楽しませてもらっていますの」
ソアレはクローディオの愛車(ママチャリ)・ヴィクトリアにも興味津々といった様子だ。
「そういえば、私はフルートも多少たしなんでいるのだが」
クローディオはそう言いつつも、己の左腕――そこにあったはずのものは今はないのだが――をちらりと見やる。本人はさほど気にしてはいないつもりだが、こういうときにやはり不便さを感じてしまうのは仕方ないだろう。
しかし、それを聞いたソアレは嬉しそうに頬を染めた。
「まあ! 私もフルートはたしなんでおりますの。セッションが出来れば良かったのですけれど」
「いや、それなら是非今度君の音色を聞かせてくれると嬉しい」
少しずつではあるが、話のきっかけなどができている様だ。
「……そう言えば、鵤。そちらのお嬢さんは?」
紅々乃に気が付いたクローディオが少女に目を移す。
「ああ、知り合いの嬢ちゃんでな。以前に依頼で一緒になったことがある」
「ふむ。私はクローディオという、よろしく頼む」
「よ、よろしくお願いします」
すっきりとした金髪碧眼の男性に声を掛けられ、紅々乃は少し緊張気味だ。でもこういう場所で出会ったのも何かの縁、話をして親交を深めるのも楽しいものである。
それを少し遠目に眺めている壮年の男性が、ひとり。
可愛い養女の為――といっても相手捜しというわけではなく、「父親としての適切な対応」を知ることができれば、と言う程度のものだが――に参加している、セドリック・L・ファルツ(ka4167)。穏やかな笑みを浮かべる優しげな男性である。親友の娘を養女として引き取って早七年、そう言う浮いた話はまだない様だが、逆に言えばいつ起きてもおかしくない話だ。
思春期の娘というのはとかく扱いが難しい。とくに父一人娘一人という環境、しかも血が繋がっていないとなればなおのこと。
ちなみに彼自身は既に妻を喪って久しい。だからといってこういう場所で相手捜し、と言うのも縁のない話だ。
今は仕事、家、そして愛娘のことで手一杯なのだから。
「そんなところでぼうっと立っていないで、話をもっとしてみると良いと思いますよ?」
そう言ってくれるのはゲルタだ。
「そんなものですか?」
「そんなものですよ」
ゲルタもそう言いながらクスクスと笑っている。ゲルタ自身、ファナという存在の後見人であるわけなので、似た様な問題は抱えていないわけではないからだろう。
「おやおや。ゲルタ、折角ならもう少し話を聞かせてくれないか? リアルブルーを知りたいって聞いてるが、俺もこっちの世界のこと、もっと知りてぇと思ってるんだ……教えてくれるか?」
エリューナクがそっと会話に混ざってきて、そんなことを言う。見た目は結構軽そうにも見えるが、中身は一本通った気持ちのいい青年であるのは、ゲルタ自身も話していて判っていた。悪い人物ではないのはすぐにわかる。
「わたしの知っていることなんて、本当にまだまだ少ないけれど。それでも、皆が興味を持ってくれるなら、今度また機会あれば話しましょうか」
ゲルタは嬉しそうに微笑んだ。
――ところで。今回の会場にはひとり、性別の判断が難しい人物が紛れている。
ロス・バーミリオン(ka4718)。『彼』はいわゆる若作り系のオネェである。しかも今回の目的は『イケメンみつけてゲット』なわけで、いっそう訳が分からない。
身長はかなり高いし、普通にしていればしっかり男性なのだろうが、何しろ赤いドレスで髪もメイクもばっちり決めたロスの姿は本気で性別不詳という言葉に相応しい。
そんなロスとは以前からの知り合いである鵤だが、彼をみつけてすぐに隠れようとした。しかし隠れようとすればするほど見つかってしまうのも良くある話で、
「あ~ら、ルカちゃんじゃないの! なになに、ルカちゃんもイケメン捜しにきたのぉ?」
などと尋ねられてしまう始末。無論そんなわけはないので首を横に古ものの、
「まったくぅ、ご飯ばっか食べてないでちょっとはこの美女の相手をしなさいよね!」
などと言われてしまう。
「美女なんてどこにいるんだっての」
「や~だ、ここにいるじゃないのよぉ!」
完全にペースはロス優勢になっている。鵤は思わず頭に手を当ててしまった。
●
「えっ、婚活?! 名物料理が目当てだったんだよ、俺。シェフとしての見聞を広げたくてさ」
婚活パーティと言うことに気付いていなかったのはザレム・アズール(ka0878)。腕利きのハンターの筈なのだが、今回はちょっと見落としてしまったらしい。そんな彼は、自他共に認める面食いの星野 ハナ(ka5852)を伴ってやってきている。
正直、ふたりで歩いているのを見れば、これはカップルだろうかと思える程度には仲の良い関係ではある。
――と言うか、今回のパーティへの参加も、ハナの方が先に参加したいと言い出していたらしい。まあつまり、ハナの下心たっぷりの参加、と言うことらしい。
(好きな気持ちは知っといて欲しいんじゃ~!)
恋愛至上主義のハナ、なかなかに策士である。もともと『モテるためにはキャラ作りから』と言うヘンなことに大学卒業後に気付いてしまったタイプなので、正直言うと、イタい。それでも、もうそれがすっかり板についてしまっているあたりは逆に凄いのかも知れないが。
「そう言えばぁ、ガーデンパーティと聞いていたのでぇ……クリーム系はあえて避けて涼しげなものを、とおもってぇ」
そう言いながら取り出したのはアイシングシュガーたっぷり、フルーツミックスたっぷりのブランデーケーキ。それも二本。綺麗に切り分けたりするあたりは女子力の高さがうかがえるが、それを見ていて欲しい肝心要のザレムはと言うと、ゲルタと談笑している。
「はー、結構大変なんだな。で、ゲルタのお眼鏡にかなう殿方は見つかったかい?」
「いや……うーん。皆良い方だから、逆にこういうことになって、少し申し訳ないかな、ってね」
ゲルタは照れくさそうに笑う。こういう催しに集まってくれるハンターたちは、本当にいい人たちだ。だからこそ、逆になんとなく申し訳なくなってしまうのだろう。
「そう言うザレムさんは、彼女とかは?」
逆にゲルタが話を振ってみると、
「彼女? いや、いないぞ。ま、募集中……ってところだな」
ザレムはそんなことを言って苦笑してみせる。
「それでも好みの女性ってあるんじゃない?」
そうつついてみせると、ザレムはまあね、と言って笑った。
「そうだな……お飾りの人形みたいなお嬢さんじゃなくて、自立してる職業女性のほうが好きだな。それも、仕事に誇りを持っていて、男性と肩を並べてるような人。そんな人と、ともに歩きたいなとは思えるよ。化粧なんか要らないし、見た目にこだわってるわけでもない。たとえ同居しなくても、心が繋がってたらいいと思ってる」
「……聞いてると、ずいぶん面白い考え方してるわね」
ゲルタはクスクスと笑った。でも、ゲルタはそう言う考えは嫌いではない。自身も、学者肌で普段はドレスアップなんて考えないタイプだから。
「……確かに。結構特殊な嗜好かも知れない」
言ったザレム本人も苦笑いを浮かべてみせる。それを耳そばだてて聞いていたハナは、わずかに顔を赤くした。
(へぇ……そうなんだ、ふーん……)
でもそんなことはおくびにも出さず、集めてきた料理や菓子の数々をザレムにはい、と手渡してやる。
「これ、甘辛い味付けでとっても美味しいんですぅ! あと、こっちのも、甘さ控えめのお菓子で、美味しいですよぉ?」
ザレムは言われるままにそれを口にする。ぱっと顔が明るくなった。
「うん、美味いな。流石というか」
良く考えたら良家のお嬢様の婚活なわけで、下手な料理はないわけだ。それぞれを堪能しながら、ニコニコと笑っていた。――ハナの秋波には、いっさい気付かずに。
●
気付けばずいぶん太陽が茜に染まっている。ゲルタは一つ、深い礼をした。
「今日は来てくれてありがとうね」
もともとは彼女の我儘からはじまったことなのだが、楽しませてもらったのはだれもが認めることなので、気にしているものはいない。
いや、むしろ――
「ゲルタさん。もしご迷惑じゃなければ、その――以前の恋人のまねごとじゃなく、本当にお近づきになれたらと、そう思っているのですけれど」
ミノルがそう言って、小さく微笑んだ。ゲルタは大きく目を見開いて、何度か瞬きをする。
「あ、で、でも、まだわたしはミノルさんのことを詳しく知らないので――もう少し、あなたと接する機会が増えたら、と言うことで、今は保留にさせてください……」
そう言って、ゲルタは頬に手を当てた。耳たぶまで熱い。まさかそんなことを言われると思っていなかったものだから、尚更だ。
そしてそんな初心な態度を見せるゲルタに、あたたかな笑いが聞こえる。このパーティは、決して失敗ではなかったと言うことだ。
そして帰り道。
ハナはザレムの右手を両手でぎゅっと握り、そしてまっすぐに見つめる。
「えっとぉ……私はイケメンもお料理もだいすきなのでぇ、こういう機会があったらまた誘ってもいいですぅ……?」
ザレムは目をぱちくりさせながら、くすっと笑った。
「ああ。料理の勉強にもなるし、俺でよければつきあうぞ?」
ぱあっと顔を明るくさせたハナの気持ちには、相変わらず気付かぬまま。だけどそれもきっと、友情から愛情へ変わる一過程のかたちのひとつなのかも知れない。
さまざまな予感を感じさせながら、ガーデンパーティは無事に終わりを告げたのであった。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/06/12 12:06:55 |