ゲスト
(ka0000)
【闘祭】ロイヤルランブル・インザバンク
マスター:cr

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/06/18 09:00
- 完成日
- 2016/06/25 15:44
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「美織さん、大丈夫なのか?」
「ごめんね。心配かけちゃったね」
ある日のハンターオフィス。そこで、随分大柄な女と、それに比べれば遥かに小柄な女が会話を交わしていた。
大柄な女の方はイバラキ(kz0159)。種族は鬼、クラスは格闘士のハンターである。
対する小柄な女の方は愛星 美織。リアルブルー出身であり、リアルブルーでは結構な人気のプロレスラーをしていた。転移後は疾影士のハンターとして登録している。
話は先日に遡る。二人は他のハンター達と村長祭を盛り上げるという依頼に参加したのだが、そこに乱入してきた歪虚の攻撃を受け、美織は膝を複雑骨折する重傷を負っていた。が、今の彼女にはその影響はまるで見られない。プロレスラーというのは随分とタフなようだ。
●
「大丈夫なら良かった。それなら美織さんも武闘大会に参加するんだよな!」
「そっちは流石に無理ね。まあ、私はあんまりシュートマッチには興味ないんだけど」
と言いながら美織は武闘大会の参加案内を記したパンフレットをめくっていた。そしてあるページで手が止まった。
「でも……この武闘大会はダメね」
「ん? 何か問題あるか?」
「これね。敗者復活戦をバトルロイヤルでやるみたいじゃない」
そこにはこの武闘大会の進行が記されていた。予選トーナメントで4名の決勝参加者を決め、そこに敗者復活バトルロイヤルの勝者1名を加えた5人で決勝戦を行う。その敗者復活の部分を指摘していた。
「この武闘大会ってソサエティの資金集めが目的、つまりお客さんに観てもらう為にやるんでしょ? 全員一斉に戦ったら、参加者の方は楽しくても、観ている側はどこで何が起こっているかわからないじゃない」
プロレスの世界で生きてきた美織は、観客に観てもらう戦いのスペシャリストである。
「それなら何か良いやり方を教えていただけませんか?」
そこに急に口を挟んできたものが居た。彼女の名はモア・プリマクラッセ(kz0066)、ハンターオフィスの受付嬢である。つまりこの武闘大会の運営側だ。そして有能な商人でもある彼女は、こういう話に目ざとかった。
●
それから数日後、武闘大会用の闘技場を借りて、特別試合として美織の提案したバトルロイヤルが行われる事となった。そして闘技場の入り口には大きくルールが貼りだされていた。
1.参加者はあらかじめクジを引き、その番号順に闘技場に入場する。
2.最初の2人が闘技場に入った所で試合を開始する。
3.そこから30秒経過するごとに次の参加者が入場して試合を続ける
4.全参加者が入場後、最後まで戦い他の全員を脱落させた者が優勝。
5.また、試合開始から2分後に闘技場の中央に渡されたロープにカバンをぶら下げる。これを入手して闘技場に着地した者は「もう1人の勝者」となる。
6.最後まで勝ち残ったものと、カバンを入手した「もう1人の勝者」には賞品が授与される。
「美織さん、大丈夫なのか?」
「ごめんね。心配かけちゃったね」
ある日のハンターオフィス。そこで、随分大柄な女と、それに比べれば遥かに小柄な女が会話を交わしていた。
大柄な女の方はイバラキ(kz0159)。種族は鬼、クラスは格闘士のハンターである。
対する小柄な女の方は愛星 美織。リアルブルー出身であり、リアルブルーでは結構な人気のプロレスラーをしていた。転移後は疾影士のハンターとして登録している。
話は先日に遡る。二人は他のハンター達と村長祭を盛り上げるという依頼に参加したのだが、そこに乱入してきた歪虚の攻撃を受け、美織は膝を複雑骨折する重傷を負っていた。が、今の彼女にはその影響はまるで見られない。プロレスラーというのは随分とタフなようだ。
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「大丈夫なら良かった。それなら美織さんも武闘大会に参加するんだよな!」
「そっちは流石に無理ね。まあ、私はあんまりシュートマッチには興味ないんだけど」
と言いながら美織は武闘大会の参加案内を記したパンフレットをめくっていた。そしてあるページで手が止まった。
「でも……この武闘大会はダメね」
「ん? 何か問題あるか?」
「これね。敗者復活戦をバトルロイヤルでやるみたいじゃない」
そこにはこの武闘大会の進行が記されていた。予選トーナメントで4名の決勝参加者を決め、そこに敗者復活バトルロイヤルの勝者1名を加えた5人で決勝戦を行う。その敗者復活の部分を指摘していた。
「この武闘大会ってソサエティの資金集めが目的、つまりお客さんに観てもらう為にやるんでしょ? 全員一斉に戦ったら、参加者の方は楽しくても、観ている側はどこで何が起こっているかわからないじゃない」
プロレスの世界で生きてきた美織は、観客に観てもらう戦いのスペシャリストである。
「それなら何か良いやり方を教えていただけませんか?」
そこに急に口を挟んできたものが居た。彼女の名はモア・プリマクラッセ(kz0066)、ハンターオフィスの受付嬢である。つまりこの武闘大会の運営側だ。そして有能な商人でもある彼女は、こういう話に目ざとかった。
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それから数日後、武闘大会用の闘技場を借りて、特別試合として美織の提案したバトルロイヤルが行われる事となった。そして闘技場の入り口には大きくルールが貼りだされていた。
1.参加者はあらかじめクジを引き、その番号順に闘技場に入場する。
2.最初の2人が闘技場に入った所で試合を開始する。
3.そこから30秒経過するごとに次の参加者が入場して試合を続ける
4.全参加者が入場後、最後まで戦い他の全員を脱落させた者が優勝。
5.また、試合開始から2分後に闘技場の中央に渡されたロープにカバンをぶら下げる。これを入手して闘技場に着地した者は「もう1人の勝者」となる。
6.最後まで勝ち残ったものと、カバンを入手した「もう1人の勝者」には賞品が授与される。
リプレイ本文
●
ここはリゼリオに設けられた特設闘技場。観客達は今か今かと特別試合が始まる時を待っている。最初に登場するのは誰なのか、皆が待ち遠しく待っていたその時、突如としてポップソングが流れ始めた。女性ボーカルの歌声に合わせて、闘技場に一人入ってくる。
「祭りに奉仕するのは巫女の務め。最高の祭りにする為、盛り上げるのです」
最初に登場したのはUisca Amhran(ka0754)だった。持ち前のクジ運か、見事1番を引き当てていた。盛り上げようと最初に登場した彼女に、地鳴りのような観客の歓声が浴びせられる。
その歓声が鳴り止まないうちに、次の参加者が登場した。レイ・T・ベッドフォード(ka2398)だった。
「よろしければ、私、一番最初に舞台に上がりたいのですが」
彼はイスカと同じように最初の登場を希望していたが、クジは2番。しかしこのルールでは1番と2番の間には実質上差はない。少し違うが、結果的に彼の希望は叶えられた形になった。
闘技場で最初の二人が向かい合う。一瞬の沈黙。そして程なくしてこの戦いの開始を告げるゴングが鳴り響いた。
●
二人の目指す所は共に一致、即ち最後まで立ち続けること。しかし戦い方は実に対照的だった。イスカは他の全員を打ち倒しての完全勝利を狙っていた。一方、レイは姉達から“肉壁”としてより高みを目指しなさいと厳命されてこの試合のみならず、武闘大会全体に参加していた。すると戦いはこうなる。
「やああぁぁぁっ!」
ゴングの音と共に片手にワンド、片手に盾を持ち突っ込んでいくイスカ。一方のレイは利き手に盾を持ち防御に専念している。そこに飛び込んだ彼女がワンドを振り上げる。すると白龍へ込められた祈りがワンドの先から光と成って顕現し、細身の聖なる剣の形を取った。そしてそれは構えた盾の隙間を縫って急所へと吸い込まれていく。
「大丈夫。峰打ちなのです」
手応えあり、残心を有しながイスカは一言。しかし彼女の一撃は峰打ちなんてものでは無かった。並の雑魚歪虚なら一瞬のうちに真っ二つになっているであろう一撃。しかも会心の一撃だった。どんな相手もこれで立っていられるわけがない……。
だが、大きなダメージを受けつつも、レイは確かにその二本の足で立っていた。これほど強烈な一撃を食らいながら、しかし彼は倒れなかった。イスカは驚きつつもすかさず二撃、三撃と追撃する。
しかし最初の一撃を耐えた彼にとっては、この程度の攻撃は受け止められるものだった。ダメージを受けるどころか、その傷が塞がっていっている。
「汝は肉壁である。 当家、とくに我ら姉妹の肉壁であり、 友人たちの肉壁であり、 世界の肉壁である。 ――汝、姉たちの知らぬ戦場で果つる事なかれ」
レイは姉達の言葉通り立つ。どんな敵も打ち倒す巫女と、絶対に倒れぬ肉壁。矛盾した二人の衝突はこのまま千日手になろうとしていた。
「5! 4!」
しかしこの戦いは普通の戦いとは違う。次の入場者を呼びこむためのカウントダウンが始まっていた。
●
「3! 2! 1!」
カウントダウンの声はイスカの耳には届いていなかった。彼女はまずレイを倒そうとワンドを振り下ろしていく。その時、不意に彼女の体が宙に浮いた。
「へぇ、何か面白そうな試合形式だなぁ。なんだかんだでお祭りだし、真面目に楽しんで闘うとしようかな!」
そこに居たのは大兵肥満の男、白桜龍(ka6308)だった。彼はイスカに近づくとその体を持ち上げる。こう見えて侮ってはいけない。この体の中身は全身筋肉の塊である。そんな彼にとって、イスカの体は朝飯前の稽古にもならなかった。
「ごめんね」
そのまま悠々と持ち上げると、ぽいっと放り投げる。彼はリアルブルーで言うところの「スモウ」に近い武術を使っていた。そんな彼にとって彼女の体は小石を放り投げるようなもの。これこそがスモウの神秘だった。
高々と投げ上げられたイスカの体は真っ逆さまに闘技場に落ちた。そこに一切の手加減は無かった。たとえ相手が女性であっても、手加減は無礼に当たる、そう彼は考えていた。
地面に落ちて蹲るイスカを影が覆う。そこには白桜龍が肘を出して飛び込んでくる姿があった。追撃のスモウで言うところの……否、プロレスで言うところのエルボードロップ。そもそも相撲に倒れた相手へ追い打ちする技は無い。
が、なんにせよ140kgの物体が空から降ってくるのである。堪ったものではない。
「むぎゃっ!」
というわけでイスカは憐れ押し潰されぺちゃんこになるのであった。
●
「3! 2! 1!」
そんなこんなをしているうちに30秒経過。次の入場者が入ってくる……はずだったのだが、音楽が鳴りだしても誰も現れない。
「あ、あれだ!」
観客がざわざわし始めた頃、一人の観客が入場口の上の方を指差した。そこに居たのはノエル(ka0768)だった。彼女は手を上げて観客達にアピールすると、そこから飛んだ。
ひらりと空中で半回転しながら闘技場へと落ちてくる。そこに居たのはエルボードロップを食らわせた直後の白桜龍だった。彼女はカバン狙いだったのだが、いかんせんまだカバンがぶら下げられていない。
「レスラーとしての血が騒ぎます」
しかし彼女は魅せる戦いをすることに関してはこだわりがあった。というわけでド派手な登場から華麗なムーンサルトプレスを炸裂させる。体は決して大きくないが(なにかは大きいが)、スピードを上げた一撃がスモウレスラーの体を押しつぶす。ということはその下に居るはずのイスカは
「ふぎゃっ!」
さらに追い打ちを食らう格好になるわけである。しかし
「なんのこれしき……なのです!」
そこからイスカは二人共押し払って立ち上がった。急所に一撃を食らわないように注意しつつ、盾で防御していたがそれでも再び立ち上がれるようなダメージではなかった。よく見ると彼女の体は柔らかい光りに包まれている。彼女もまた自らの身体を癒やし立ち上がったのだった。
イスカは残りの3人を見る。新たに入ってきた2人も戦う相手と認識し、構えを取ったその時、次の参加者が入場口に現れたのだった。
●
「美織さんの怪我の回復も順調そうでよかったよ。さて行ってくるよ!」
それだけ言い残して入場口から走りこんできたのは天竜寺 舞(ka0377)だった。そのまま剣を振るう……のだが、どちらかと言うと間合いを離し、剣を振るう。その剣撃も相手を打ち倒すための一撃というより牽制といった感じだった。彼女の狙いはあと30秒後に登場する。それまで脱落しないようにタイミングを見計らっていた。
それを見たノエルがドロップキック。それをかわして舞はすかさず剣で突く。それを盾で打ち払い横蹴りを出してきたのを、ジャンプして交わしながら間合いを取る。流れるような一連の攻防に観客達はやんやの拍手を送る。
が、二人の狙いは別のところにある。それまではお互いに観客に喜んでもらうための戦いをする。二人は会話はかわさなくても通じる部分があった。これは以前一度共にプロレスを行ったからか。
しかし、ここには他のものが居た。専守防衛を主としているレイはさておき、残りの二人はそうではない。特にイスカは目の前の相手全てを倒すモードだった。カバン狙いか否かは関係ない。彼女が祈りを捧げると、翡翠色の光が立ち上り、それが龍の姿へと変わっていく。そしてその光は周囲に広がっていく。悪しきものを焼きつくす聖なる光。その衝撃は別に悪しきものではない他参加者にも十分な衝撃を与えていた。
レイは落ち着いて立ち位置を変える。彼にとってこの程度の攻撃なら難なく耐えることができるが、怖いのは場外に追い出されることであった。そこで細かく動きながら立ち位置を変えていた。しかしそんな彼に予想外の方向から一撃が来るのであった。
●
「戦いとなれば参加するしかないっしょ! んふふ、優勝賞品楽しみー」
その時30秒が経過していた。次の入場者はエリス・ブーリャ(ka3419)。彼女は入場口から走りこんでくると大きくジャンプ。彼女の視線の先には上空に吊るされたカバンが見える。丁度2分、ここからカバン争奪戦の開始だ。
が、このジャンプでは高さが足りない。何せ上空6mに吊るされているのだ。
しかし彼女には秘策があった。大きくジャンプして……レイの上に着地。そのまま頭を蹴飛ばして踏み台にしジャンプする。その瞬間靴底から虹色のマテリアルが噴出される。これで一気にカバンまでジャンプ!
だが、この時を他のものも待っていたのである。簡単に取らせる訳にはいかない。すかさずノエルもレイを踏み台にしてジャンプする。彼女は特にジャンプ力を上げる秘策は持っていない。それ故カバンまでは届かないが、エルの足までなら届いていた。空中でくんずほぐれつする美少女二人。しかしこれではさしものエルもカバンまで届かない。
「このぉーっ!」
邪魔されてエルは怒っていた。その怒りを込めて彼女は攻性防壁を発動する。空中に現れた光の壁は電撃をまとい、ノエルに直撃する。
あわれ吹っ飛ばされるノエル。そのまま地面に墜落した所に
「どすこーい」
白桜龍が降ってきた。耐えるを是とするレスラーである彼女にも、流石にこれは無理があった。
《ノエル、リタイア!》
●
が、カバンを狙っていたのはこの二人だけではない。闘技場の端の壁を蹴って走る、というより空を飛ぶ者が居た。舞であった。
そのまま彼女はすれ違いざまにレイに一撃。これはガードされ、そのままカウンターを返されるがこれで注意が一瞬そちらに向いた。準備完了だった。
その勢いのまま彼女はノエルを踏んでいた白桜龍の体を駆け上がり、肩を蹴って飛んだ。長い長い滞空時間と共に飛んだ彼女の手は、ギリギリの所でカバンに届いていた。
「カバン、ゲットだぜ!」
喜びの余り空中でガッツポーズを取る舞。しかしこの戦いには一つ重要なルールがあった。「もう1人の勝者」となる条件は、カバンを入手して「闘技場に着地した者」なのだ。
「エルちゃんのものーっ!」
エルはすかさずデルタレイを起動する。彼女の目の前に光の三角形が現れ、その頂点それぞれから光が伸びる。そのうちの一つが舞を襲っていた。
空中で体をねじりなんとかかわす舞。しかしエルは既に二発目を放っていた。この光線が彼女の手に当たり、カバンを弾き飛ばす。
ところで突然だがデルタレイというスキル、これは三本の光線が必ず別の目標に飛んで行くのである。つまり、エルの放ったデルタレイの残りの二本は別の者へと飛んでいったのである。
一本はレイに飛んでいった。だがこれは彼にとっては何の問題もなかった。盾で弾き飛ばす。傷を受けるどころか、試合序盤より元気な雰囲気だ。
もう一本は白桜龍に飛んでいた。彼のこの大きな体でも、光線の直撃2発は荷が重かった。大の字に倒れる白桜龍。
そして弾き飛ばされたカバンへ向かってエルが猛然とダッシュしていた。舞も空中で必死に手を伸ばすが、いかんせんここには踏み台になるものがない。彼女の手は空を切る。
そして走りこんできたエルの懐にカバンはすっぽり収まった
「いっちばーん!」
天高くカバンを掲げ、観客にアピールするエル。大喜びのまま退場する彼女を
「はぁ~あ……」
がっくりとうなだれて見送るしか出来なかった舞。そんな彼女の背後にぬうっと現れる一つの人影。
それはイスカだった。目の前の敵全てを打ち倒すべく、彼女はワンドを大きく大上段に振りかぶると、そのまま振り下ろした。
結果、頭に大きなたんこぶを作りながら、目を回してKOされている舞の姿がそこにはあった。
《白桜龍、天竜寺 舞、リタイア!》
●
「3! 2! 1!」
カバンはエルが獲得したが、戦いはまだ続く。カウントダウンとともに次の入場者が登場した。
「観客に観てもらうバトルなんだろ? だったら魅せる戦いをしないとな」
それは本命と目されていたレイオス・アクアウォーカー(ka1990)だった。彼は値踏みするように闘技場の中を一瞥する。残るのは盾を構え防御に専念する男と、ワンドを手にすべてを打ち倒そうとする女。そして彼は女――イスカの方に視線を合わせた。二人共眼と眼で通じあった様であった。
レイオスはまず刀を抜き、それを両手で握る。悟りを妨げる魔を退けるという名刀。そしてそれを小手調べとばかりに、イスカに向かって振り下ろす。
だがイスカもその盾で抑え、弾き飛ばしそのまま反撃を繰り出す。それを刀で払うレイオス。
二人は再び間合いを取り離れ、そして互いに笑みを浮かべる。お互いの力量はこの攻防で分かったようだ。ならば。
「今から30秒、オレの全力を見せてやる!」
彼は刀を鞘に収め、もう一本の刀とハンマーを手にした。守りを捨て、一気に討ち滅ぼすべく走りだす。その勢いと体重を乗せての嵐のような二連撃。かわすことなどさせぬ必殺の連撃。
しかしイスカはそれを受け止めきってみせた。そして再び振り上げたワンドから現れた光が剣と成ってレイオスを斬り裂くべく向かう。
その一撃をぎりぎりでかわし、カウンターの連撃を繰り出すレイオス。一撃目を受け止め、二撃目に合わせて反撃を繰り出すイスカ。二人の斬撃が重なるように繰り出され、そして……
その両方を喰らっていたのはレイだった。二人の考えは一致していた。向かい合う相手も注意しなければいけない強者だが、同時にすべてを受け止めるレイもまた倒さねばならぬ強者だった。剣を交え通じあい、二人は一時的に共闘してもう一人の相手に向かっていった。
驚異的な防御能力を誇るレイであったが、さすがに必殺クラスの一撃を二発同時に喰らってはひとたまりもなかった。
《レイ・T・ベッドフォード、リタイア!》
●
とうとう一騎打ちを迎える闘技場。向き合う両者に観客達は声を送る。
(イスカ様もレイオス様も、正直実力では敵いようもないですしね)
しかしそんな闘技場内に、観客達の声に紛れて密かに新たな参加者が入場していた。ライラ = リューンベリ(ka5507)だった。
彼女は自分がどこまでできるのかを確かめにこの戦いに参加したのだが、だからといって無謀な戦いをするつもりはなかった。身を隠し、チャンスを伺う。
しかしそんな彼女を見逃さぬ者が居た。イスカだった。彼女はこの闘技場内に一人隠れたものが居ることを感じ取ると、そちらに向かって歩を進める。
ライラが気づかれたことに気づいた時には、イスカはワンドを振り上げていた。だが、レイオスもそこを見逃さなかった。再び構えを取り、その二つの得物を手に向かっていく。
一撃目を受け止めるべく盾を構えるイスカ。そこがライラの狙っていたチャンスだった。その盾を掲げた手に向かって、彼女は鞭を伸ばす。
それは見事にイスカの腕に絡みつき、動きを止める。そこにレイオスの一撃、二撃がヒット。彼はそのまま攻め立てようと流れるような攻撃を続ける。
だが、今度はレイオスが足を絡ませた。ライラは今度はレイオスに向かって鞭を伸ばす。いずれ両者のどちらかと戦わなければ行けない時が来る。その時のためには、両者に消耗してもらうのが一番いい。彼女は戦況を見極めながら、その鞭で巧みに介入する。真正面から戦うのは愚策だ。
彼女の鞭はレイオスの足を引っ掛け、そのまま転倒させる。すかさず彼が起き上がろうとした時だった。
●
「3! 2! 1!」
最後のカウントダウンが始まる。最終入場者が入場口から飛び込んできた。
「『イバラキも参加するか? 人数が多い方が盛り上がるぜ』って言ってたよな。参加するに決まってるだろ!」
最終入場者はイバラキ(kz0159)だった。彼女は入場してくるなり、転倒していたレイオスの上にのしかかる。格闘士である彼女にとってこれはチャンスであった。
「よっしゃ、貰った!」
足でレイオスの体重を巧みにコントロールしながら、彼女はするりとその背後に自分の体を滑り込ませる。そして両腕で頭と腕に絡みつき、両足で胴を抑えたまま極め上げた。
関節を固められ、身動きの取れなくなったレイオス。彼がなんとか脱出しようともがいているところに、イスカが近づいてきた。そのまま絡み合っている二人の姿を見ると少し微笑み、そして……
「ってアタシごとかよぉぉぉぉ……」
再びイスカの体が翡翠色に輝く。そして放出される光の波動が、二人まとめてKOしていたのだった。
《レイオス・アクアウォーカー、イバラキ、リタイア!》
●
最後に残ったイスカとライラによる雌雄を決する戦いが始まる。
接近戦になったら勝ち目は無いとばかりに、ライラは鞭を伸ばしイスカを寄せ付けないようにする。それを盾で弾きながら、ジリジリと間合いを詰めるイスカ。
その時、ライラの手から鞭が滑り、その先端はあさっての方向に伸びていた。その隙を逃さない。イスカは一気に間合いを詰め、懐に飛び込む。
しかしこれもライラの作戦だった。飛び込んできたイスカの土手っ腹に強烈な横蹴りを叩き込む。そして続けての鞭で勝負を決めようとした。
だが、イスカは思いっきり蹴られながらも、怯むこと無く間合いを詰め、ワンドを振り上げていた。鞭が伸び彼女の体に叩きつけられるが、それと彼女がワンドを振り下ろしたのは同じタイミングだった。
ワンドの先から伸びた光ごと、ライラの頭に叩きつけられる。防御が間に合わないタイミングで振り下ろされたその一撃を喰らって、そのままライラはゆっくりと崩れ落ちるのであった。
●
栄光を勝ち取った二人に賞品が授与される。まずイスカに渡されたのは勝利を記した楯であった。そしてエルにはカバンの中に詰まった賞品がカバンごと渡される。
「んふふ、何かなー」
ウキウキしながらカバンを開けたエルが満たものは、ジェオルジ名物まめし詰め合わせセットだった。
「皆を癒すのも巫女の務めなのです」
一方イスカは他の参加者たちを集め、その怪我を癒やしていた。彼女は巫女、優れた癒し手である。しかし彼女の今回の戦いっぷりを見た者達の噂が噂を呼び、いつしかリゼリオにバーサーク巫女の伝説が広がっていくことになることを彼女はこの時まだ知らなかった。
ここはリゼリオに設けられた特設闘技場。観客達は今か今かと特別試合が始まる時を待っている。最初に登場するのは誰なのか、皆が待ち遠しく待っていたその時、突如としてポップソングが流れ始めた。女性ボーカルの歌声に合わせて、闘技場に一人入ってくる。
「祭りに奉仕するのは巫女の務め。最高の祭りにする為、盛り上げるのです」
最初に登場したのはUisca Amhran(ka0754)だった。持ち前のクジ運か、見事1番を引き当てていた。盛り上げようと最初に登場した彼女に、地鳴りのような観客の歓声が浴びせられる。
その歓声が鳴り止まないうちに、次の参加者が登場した。レイ・T・ベッドフォード(ka2398)だった。
「よろしければ、私、一番最初に舞台に上がりたいのですが」
彼はイスカと同じように最初の登場を希望していたが、クジは2番。しかしこのルールでは1番と2番の間には実質上差はない。少し違うが、結果的に彼の希望は叶えられた形になった。
闘技場で最初の二人が向かい合う。一瞬の沈黙。そして程なくしてこの戦いの開始を告げるゴングが鳴り響いた。
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二人の目指す所は共に一致、即ち最後まで立ち続けること。しかし戦い方は実に対照的だった。イスカは他の全員を打ち倒しての完全勝利を狙っていた。一方、レイは姉達から“肉壁”としてより高みを目指しなさいと厳命されてこの試合のみならず、武闘大会全体に参加していた。すると戦いはこうなる。
「やああぁぁぁっ!」
ゴングの音と共に片手にワンド、片手に盾を持ち突っ込んでいくイスカ。一方のレイは利き手に盾を持ち防御に専念している。そこに飛び込んだ彼女がワンドを振り上げる。すると白龍へ込められた祈りがワンドの先から光と成って顕現し、細身の聖なる剣の形を取った。そしてそれは構えた盾の隙間を縫って急所へと吸い込まれていく。
「大丈夫。峰打ちなのです」
手応えあり、残心を有しながイスカは一言。しかし彼女の一撃は峰打ちなんてものでは無かった。並の雑魚歪虚なら一瞬のうちに真っ二つになっているであろう一撃。しかも会心の一撃だった。どんな相手もこれで立っていられるわけがない……。
だが、大きなダメージを受けつつも、レイは確かにその二本の足で立っていた。これほど強烈な一撃を食らいながら、しかし彼は倒れなかった。イスカは驚きつつもすかさず二撃、三撃と追撃する。
しかし最初の一撃を耐えた彼にとっては、この程度の攻撃は受け止められるものだった。ダメージを受けるどころか、その傷が塞がっていっている。
「汝は肉壁である。 当家、とくに我ら姉妹の肉壁であり、 友人たちの肉壁であり、 世界の肉壁である。 ――汝、姉たちの知らぬ戦場で果つる事なかれ」
レイは姉達の言葉通り立つ。どんな敵も打ち倒す巫女と、絶対に倒れぬ肉壁。矛盾した二人の衝突はこのまま千日手になろうとしていた。
「5! 4!」
しかしこの戦いは普通の戦いとは違う。次の入場者を呼びこむためのカウントダウンが始まっていた。
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「3! 2! 1!」
カウントダウンの声はイスカの耳には届いていなかった。彼女はまずレイを倒そうとワンドを振り下ろしていく。その時、不意に彼女の体が宙に浮いた。
「へぇ、何か面白そうな試合形式だなぁ。なんだかんだでお祭りだし、真面目に楽しんで闘うとしようかな!」
そこに居たのは大兵肥満の男、白桜龍(ka6308)だった。彼はイスカに近づくとその体を持ち上げる。こう見えて侮ってはいけない。この体の中身は全身筋肉の塊である。そんな彼にとって、イスカの体は朝飯前の稽古にもならなかった。
「ごめんね」
そのまま悠々と持ち上げると、ぽいっと放り投げる。彼はリアルブルーで言うところの「スモウ」に近い武術を使っていた。そんな彼にとって彼女の体は小石を放り投げるようなもの。これこそがスモウの神秘だった。
高々と投げ上げられたイスカの体は真っ逆さまに闘技場に落ちた。そこに一切の手加減は無かった。たとえ相手が女性であっても、手加減は無礼に当たる、そう彼は考えていた。
地面に落ちて蹲るイスカを影が覆う。そこには白桜龍が肘を出して飛び込んでくる姿があった。追撃のスモウで言うところの……否、プロレスで言うところのエルボードロップ。そもそも相撲に倒れた相手へ追い打ちする技は無い。
が、なんにせよ140kgの物体が空から降ってくるのである。堪ったものではない。
「むぎゃっ!」
というわけでイスカは憐れ押し潰されぺちゃんこになるのであった。
●
「3! 2! 1!」
そんなこんなをしているうちに30秒経過。次の入場者が入ってくる……はずだったのだが、音楽が鳴りだしても誰も現れない。
「あ、あれだ!」
観客がざわざわし始めた頃、一人の観客が入場口の上の方を指差した。そこに居たのはノエル(ka0768)だった。彼女は手を上げて観客達にアピールすると、そこから飛んだ。
ひらりと空中で半回転しながら闘技場へと落ちてくる。そこに居たのはエルボードロップを食らわせた直後の白桜龍だった。彼女はカバン狙いだったのだが、いかんせんまだカバンがぶら下げられていない。
「レスラーとしての血が騒ぎます」
しかし彼女は魅せる戦いをすることに関してはこだわりがあった。というわけでド派手な登場から華麗なムーンサルトプレスを炸裂させる。体は決して大きくないが(なにかは大きいが)、スピードを上げた一撃がスモウレスラーの体を押しつぶす。ということはその下に居るはずのイスカは
「ふぎゃっ!」
さらに追い打ちを食らう格好になるわけである。しかし
「なんのこれしき……なのです!」
そこからイスカは二人共押し払って立ち上がった。急所に一撃を食らわないように注意しつつ、盾で防御していたがそれでも再び立ち上がれるようなダメージではなかった。よく見ると彼女の体は柔らかい光りに包まれている。彼女もまた自らの身体を癒やし立ち上がったのだった。
イスカは残りの3人を見る。新たに入ってきた2人も戦う相手と認識し、構えを取ったその時、次の参加者が入場口に現れたのだった。
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「美織さんの怪我の回復も順調そうでよかったよ。さて行ってくるよ!」
それだけ言い残して入場口から走りこんできたのは天竜寺 舞(ka0377)だった。そのまま剣を振るう……のだが、どちらかと言うと間合いを離し、剣を振るう。その剣撃も相手を打ち倒すための一撃というより牽制といった感じだった。彼女の狙いはあと30秒後に登場する。それまで脱落しないようにタイミングを見計らっていた。
それを見たノエルがドロップキック。それをかわして舞はすかさず剣で突く。それを盾で打ち払い横蹴りを出してきたのを、ジャンプして交わしながら間合いを取る。流れるような一連の攻防に観客達はやんやの拍手を送る。
が、二人の狙いは別のところにある。それまではお互いに観客に喜んでもらうための戦いをする。二人は会話はかわさなくても通じる部分があった。これは以前一度共にプロレスを行ったからか。
しかし、ここには他のものが居た。専守防衛を主としているレイはさておき、残りの二人はそうではない。特にイスカは目の前の相手全てを倒すモードだった。カバン狙いか否かは関係ない。彼女が祈りを捧げると、翡翠色の光が立ち上り、それが龍の姿へと変わっていく。そしてその光は周囲に広がっていく。悪しきものを焼きつくす聖なる光。その衝撃は別に悪しきものではない他参加者にも十分な衝撃を与えていた。
レイは落ち着いて立ち位置を変える。彼にとってこの程度の攻撃なら難なく耐えることができるが、怖いのは場外に追い出されることであった。そこで細かく動きながら立ち位置を変えていた。しかしそんな彼に予想外の方向から一撃が来るのであった。
●
「戦いとなれば参加するしかないっしょ! んふふ、優勝賞品楽しみー」
その時30秒が経過していた。次の入場者はエリス・ブーリャ(ka3419)。彼女は入場口から走りこんでくると大きくジャンプ。彼女の視線の先には上空に吊るされたカバンが見える。丁度2分、ここからカバン争奪戦の開始だ。
が、このジャンプでは高さが足りない。何せ上空6mに吊るされているのだ。
しかし彼女には秘策があった。大きくジャンプして……レイの上に着地。そのまま頭を蹴飛ばして踏み台にしジャンプする。その瞬間靴底から虹色のマテリアルが噴出される。これで一気にカバンまでジャンプ!
だが、この時を他のものも待っていたのである。簡単に取らせる訳にはいかない。すかさずノエルもレイを踏み台にしてジャンプする。彼女は特にジャンプ力を上げる秘策は持っていない。それ故カバンまでは届かないが、エルの足までなら届いていた。空中でくんずほぐれつする美少女二人。しかしこれではさしものエルもカバンまで届かない。
「このぉーっ!」
邪魔されてエルは怒っていた。その怒りを込めて彼女は攻性防壁を発動する。空中に現れた光の壁は電撃をまとい、ノエルに直撃する。
あわれ吹っ飛ばされるノエル。そのまま地面に墜落した所に
「どすこーい」
白桜龍が降ってきた。耐えるを是とするレスラーである彼女にも、流石にこれは無理があった。
《ノエル、リタイア!》
●
が、カバンを狙っていたのはこの二人だけではない。闘技場の端の壁を蹴って走る、というより空を飛ぶ者が居た。舞であった。
そのまま彼女はすれ違いざまにレイに一撃。これはガードされ、そのままカウンターを返されるがこれで注意が一瞬そちらに向いた。準備完了だった。
その勢いのまま彼女はノエルを踏んでいた白桜龍の体を駆け上がり、肩を蹴って飛んだ。長い長い滞空時間と共に飛んだ彼女の手は、ギリギリの所でカバンに届いていた。
「カバン、ゲットだぜ!」
喜びの余り空中でガッツポーズを取る舞。しかしこの戦いには一つ重要なルールがあった。「もう1人の勝者」となる条件は、カバンを入手して「闘技場に着地した者」なのだ。
「エルちゃんのものーっ!」
エルはすかさずデルタレイを起動する。彼女の目の前に光の三角形が現れ、その頂点それぞれから光が伸びる。そのうちの一つが舞を襲っていた。
空中で体をねじりなんとかかわす舞。しかしエルは既に二発目を放っていた。この光線が彼女の手に当たり、カバンを弾き飛ばす。
ところで突然だがデルタレイというスキル、これは三本の光線が必ず別の目標に飛んで行くのである。つまり、エルの放ったデルタレイの残りの二本は別の者へと飛んでいったのである。
一本はレイに飛んでいった。だがこれは彼にとっては何の問題もなかった。盾で弾き飛ばす。傷を受けるどころか、試合序盤より元気な雰囲気だ。
もう一本は白桜龍に飛んでいた。彼のこの大きな体でも、光線の直撃2発は荷が重かった。大の字に倒れる白桜龍。
そして弾き飛ばされたカバンへ向かってエルが猛然とダッシュしていた。舞も空中で必死に手を伸ばすが、いかんせんここには踏み台になるものがない。彼女の手は空を切る。
そして走りこんできたエルの懐にカバンはすっぽり収まった
「いっちばーん!」
天高くカバンを掲げ、観客にアピールするエル。大喜びのまま退場する彼女を
「はぁ~あ……」
がっくりとうなだれて見送るしか出来なかった舞。そんな彼女の背後にぬうっと現れる一つの人影。
それはイスカだった。目の前の敵全てを打ち倒すべく、彼女はワンドを大きく大上段に振りかぶると、そのまま振り下ろした。
結果、頭に大きなたんこぶを作りながら、目を回してKOされている舞の姿がそこにはあった。
《白桜龍、天竜寺 舞、リタイア!》
●
「3! 2! 1!」
カバンはエルが獲得したが、戦いはまだ続く。カウントダウンとともに次の入場者が登場した。
「観客に観てもらうバトルなんだろ? だったら魅せる戦いをしないとな」
それは本命と目されていたレイオス・アクアウォーカー(ka1990)だった。彼は値踏みするように闘技場の中を一瞥する。残るのは盾を構え防御に専念する男と、ワンドを手にすべてを打ち倒そうとする女。そして彼は女――イスカの方に視線を合わせた。二人共眼と眼で通じあった様であった。
レイオスはまず刀を抜き、それを両手で握る。悟りを妨げる魔を退けるという名刀。そしてそれを小手調べとばかりに、イスカに向かって振り下ろす。
だがイスカもその盾で抑え、弾き飛ばしそのまま反撃を繰り出す。それを刀で払うレイオス。
二人は再び間合いを取り離れ、そして互いに笑みを浮かべる。お互いの力量はこの攻防で分かったようだ。ならば。
「今から30秒、オレの全力を見せてやる!」
彼は刀を鞘に収め、もう一本の刀とハンマーを手にした。守りを捨て、一気に討ち滅ぼすべく走りだす。その勢いと体重を乗せての嵐のような二連撃。かわすことなどさせぬ必殺の連撃。
しかしイスカはそれを受け止めきってみせた。そして再び振り上げたワンドから現れた光が剣と成ってレイオスを斬り裂くべく向かう。
その一撃をぎりぎりでかわし、カウンターの連撃を繰り出すレイオス。一撃目を受け止め、二撃目に合わせて反撃を繰り出すイスカ。二人の斬撃が重なるように繰り出され、そして……
その両方を喰らっていたのはレイだった。二人の考えは一致していた。向かい合う相手も注意しなければいけない強者だが、同時にすべてを受け止めるレイもまた倒さねばならぬ強者だった。剣を交え通じあい、二人は一時的に共闘してもう一人の相手に向かっていった。
驚異的な防御能力を誇るレイであったが、さすがに必殺クラスの一撃を二発同時に喰らってはひとたまりもなかった。
《レイ・T・ベッドフォード、リタイア!》
●
とうとう一騎打ちを迎える闘技場。向き合う両者に観客達は声を送る。
(イスカ様もレイオス様も、正直実力では敵いようもないですしね)
しかしそんな闘技場内に、観客達の声に紛れて密かに新たな参加者が入場していた。ライラ = リューンベリ(ka5507)だった。
彼女は自分がどこまでできるのかを確かめにこの戦いに参加したのだが、だからといって無謀な戦いをするつもりはなかった。身を隠し、チャンスを伺う。
しかしそんな彼女を見逃さぬ者が居た。イスカだった。彼女はこの闘技場内に一人隠れたものが居ることを感じ取ると、そちらに向かって歩を進める。
ライラが気づかれたことに気づいた時には、イスカはワンドを振り上げていた。だが、レイオスもそこを見逃さなかった。再び構えを取り、その二つの得物を手に向かっていく。
一撃目を受け止めるべく盾を構えるイスカ。そこがライラの狙っていたチャンスだった。その盾を掲げた手に向かって、彼女は鞭を伸ばす。
それは見事にイスカの腕に絡みつき、動きを止める。そこにレイオスの一撃、二撃がヒット。彼はそのまま攻め立てようと流れるような攻撃を続ける。
だが、今度はレイオスが足を絡ませた。ライラは今度はレイオスに向かって鞭を伸ばす。いずれ両者のどちらかと戦わなければ行けない時が来る。その時のためには、両者に消耗してもらうのが一番いい。彼女は戦況を見極めながら、その鞭で巧みに介入する。真正面から戦うのは愚策だ。
彼女の鞭はレイオスの足を引っ掛け、そのまま転倒させる。すかさず彼が起き上がろうとした時だった。
●
「3! 2! 1!」
最後のカウントダウンが始まる。最終入場者が入場口から飛び込んできた。
「『イバラキも参加するか? 人数が多い方が盛り上がるぜ』って言ってたよな。参加するに決まってるだろ!」
最終入場者はイバラキ(kz0159)だった。彼女は入場してくるなり、転倒していたレイオスの上にのしかかる。格闘士である彼女にとってこれはチャンスであった。
「よっしゃ、貰った!」
足でレイオスの体重を巧みにコントロールしながら、彼女はするりとその背後に自分の体を滑り込ませる。そして両腕で頭と腕に絡みつき、両足で胴を抑えたまま極め上げた。
関節を固められ、身動きの取れなくなったレイオス。彼がなんとか脱出しようともがいているところに、イスカが近づいてきた。そのまま絡み合っている二人の姿を見ると少し微笑み、そして……
「ってアタシごとかよぉぉぉぉ……」
再びイスカの体が翡翠色に輝く。そして放出される光の波動が、二人まとめてKOしていたのだった。
《レイオス・アクアウォーカー、イバラキ、リタイア!》
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最後に残ったイスカとライラによる雌雄を決する戦いが始まる。
接近戦になったら勝ち目は無いとばかりに、ライラは鞭を伸ばしイスカを寄せ付けないようにする。それを盾で弾きながら、ジリジリと間合いを詰めるイスカ。
その時、ライラの手から鞭が滑り、その先端はあさっての方向に伸びていた。その隙を逃さない。イスカは一気に間合いを詰め、懐に飛び込む。
しかしこれもライラの作戦だった。飛び込んできたイスカの土手っ腹に強烈な横蹴りを叩き込む。そして続けての鞭で勝負を決めようとした。
だが、イスカは思いっきり蹴られながらも、怯むこと無く間合いを詰め、ワンドを振り上げていた。鞭が伸び彼女の体に叩きつけられるが、それと彼女がワンドを振り下ろしたのは同じタイミングだった。
ワンドの先から伸びた光ごと、ライラの頭に叩きつけられる。防御が間に合わないタイミングで振り下ろされたその一撃を喰らって、そのままライラはゆっくりと崩れ落ちるのであった。
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栄光を勝ち取った二人に賞品が授与される。まずイスカに渡されたのは勝利を記した楯であった。そしてエルにはカバンの中に詰まった賞品がカバンごと渡される。
「んふふ、何かなー」
ウキウキしながらカバンを開けたエルが満たものは、ジェオルジ名物まめし詰め合わせセットだった。
「皆を癒すのも巫女の務めなのです」
一方イスカは他の参加者たちを集め、その怪我を癒やしていた。彼女は巫女、優れた癒し手である。しかし彼女の今回の戦いっぷりを見た者達の噂が噂を呼び、いつしかリゼリオにバーサーク巫女の伝説が広がっていくことになることを彼女はこの時まだ知らなかった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/06/18 08:03:30 |
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【質問卓】 ノエル(ka0768) エルフ|23才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2016/06/14 11:06:13 |