ゲスト
(ka0000)
積もる不調の正体
マスター:神崎結衣
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
- 1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/09/10 22:00
- 完成日
- 2014/09/15 20:27
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
最近何だか身体が怠い。頭痛がする。食欲が無い。
家畜も元気がなく、次第にやせ細っていくようだ。
そんな声を村で多く聞くようになったのは、一か月ほど前からだった。
もちろん流行病を疑い、検査をした。しかし医者は異常が無いという。そもそも、人間にも動物にも無差別に感染する病が流行しているなどとは聞いたことがない。
「……近くに歪虚が潜んでいるのではないでしょうか」
「ああ、私もそう思っている」
副村長の発言に村長が頷いた。また、会議に出席している面々も深刻な面持ちで考えこんでいる。
本来なら、この小さな村の定例会議は各家庭から代表一名ずつが集まって行われる。しかし今は体調不良による欠席で、会議をぎりぎり開催できるラインにまで出席率が落ち込んでいるのだ。
「誰か歪虚らしき物を見かけた者は?」
今度は村長が問いかけるが、出席者の反応は芳しくない。
「……俺のところは無えな」
「うちも」
「あたしも聞かないねえ」
他の出席者も顔を見合わせ、同じような調子で首を横に振った。
皆が歪虚の存在を予想しているにもかかわらず、この村では誰一人、歪虚らしき影を目撃した者がいないのだった。
「ううむ……やはり、例の区域に……しかしあの場所は……」
村長が唸る。
村の誰もが歪虚を見ていないのだが、もちろん村周辺のあらゆる場所を探しまわった訳ではない。歪虚がいる場所を見ていないだけかもしれないのだ。そして村長にはその場所に心当たりがあった。
実は村の裏山の頂上付近の平地には古くから小さな祠があり、言い伝えにより資格ある者以外は触れてはならないとされているのだ。よって、過ちを防ぐためにその場所自体が立入禁止となっている。村長自身もそこには立ち入ったことがない。そして村人も、あえてそこまで登ったりはしないため、そこに何かが住み着いている可能性はあった。
「しかし村長、このままでは村が……」
「……そうだな。ひとまず調べてもらおう」
家畜も元気がなく、次第にやせ細っていくようだ。
そんな声を村で多く聞くようになったのは、一か月ほど前からだった。
もちろん流行病を疑い、検査をした。しかし医者は異常が無いという。そもそも、人間にも動物にも無差別に感染する病が流行しているなどとは聞いたことがない。
「……近くに歪虚が潜んでいるのではないでしょうか」
「ああ、私もそう思っている」
副村長の発言に村長が頷いた。また、会議に出席している面々も深刻な面持ちで考えこんでいる。
本来なら、この小さな村の定例会議は各家庭から代表一名ずつが集まって行われる。しかし今は体調不良による欠席で、会議をぎりぎり開催できるラインにまで出席率が落ち込んでいるのだ。
「誰か歪虚らしき物を見かけた者は?」
今度は村長が問いかけるが、出席者の反応は芳しくない。
「……俺のところは無えな」
「うちも」
「あたしも聞かないねえ」
他の出席者も顔を見合わせ、同じような調子で首を横に振った。
皆が歪虚の存在を予想しているにもかかわらず、この村では誰一人、歪虚らしき影を目撃した者がいないのだった。
「ううむ……やはり、例の区域に……しかしあの場所は……」
村長が唸る。
村の誰もが歪虚を見ていないのだが、もちろん村周辺のあらゆる場所を探しまわった訳ではない。歪虚がいる場所を見ていないだけかもしれないのだ。そして村長にはその場所に心当たりがあった。
実は村の裏山の頂上付近の平地には古くから小さな祠があり、言い伝えにより資格ある者以外は触れてはならないとされているのだ。よって、過ちを防ぐためにその場所自体が立入禁止となっている。村長自身もそこには立ち入ったことがない。そして村人も、あえてそこまで登ったりはしないため、そこに何かが住み着いている可能性はあった。
「しかし村長、このままでは村が……」
「……そうだな。ひとまず調べてもらおう」
リプレイ本文
●歪虚を探して
裏山の頂上に潜んでいると思われる歪虚の探索と殲滅を依頼されたハンター達は、木々が鬱蒼と生い茂る山の中を歩いていた。
「ええと、祠には絶対に触れないようにして……でしたね」
村長の話を聞き、一刻も早く解明・解決しなければいけないと思いながら、ネージュ(ka0049)は共に歩いているJ(ka3142)と古川 舞踊(ka1777)に話しかけた。
「敵が祠の近くにいるようなら、誘き寄せる必要があるでしょう。初手で空に向けて発砲しましょうか」
Jは真剣な面持ちでオートマチックピストルの具合を確かめるように握る。
「そうですね。私も撃ちましょう」
「ではわたくしは、最初は後衛で支援を行うことにします。それにしても、敵が複数だった場合は少し厄介ですわね」
これから戦闘だというのに、舞踊は変わらない笑みをたたえている。
「あれかねぇ……俺の怠さもハンターなんてやって歪虚なんかに関わってんのが原因なのかねぇ」
戦い方について三人が話し合う後ろで、ハスキー(ka2447)は、腰に差した仕込み杖に体重をかけるようにして長身を屈ませ、うだうだ言いながら足をのそのそ動かしていた。もうすぐ頂上へ辿り着くが、既にぐったりしている様子である。
更に後方ではクラリア(ka3091)が、話を聞きつつも黙々と歩いている。その手には武器の他に絵描き道具が収まっていた。祠に触れさえしなければ描写は構わないと村長に許可をもらったときの彼女の内心の喜び様を知る者はいない。私クラリア。自分の嗜好の為なら、どんな努力だってする女。――そんな事を考えながら、目的地へと向かうのであった。
●殲滅
小さな山を登り切った五人の目の前に、開けた空間が現れた。木々に囲まれた数十メートル四方の平坦な地面は低い雑草に覆われている。長期に渡り人が立ち入った気配はない。
木々の影に隠れて様子をうかがっている五人の正面奥に、腰の高さほどしかない小さな祠があった。木造のそれは一見して古い。「触れないように」との言葉通り、祠のまわりは立ち入り禁止の看板と共に縄で囲われている。しかしその一部は既に朽ちてしまっていて意味を成していなかった。
そしてその祠のまわりには、狼のような身体に翼を持った雑魔が六体、寝そべったり歩きまわったりしていた。まだハンター達の存在には気がついていないようである。
風にそよぐ葉音以外は聞こえないような静寂の中に、突如乾いた銃声が響いた。雑魔を誘き寄せるため、Jがオートマチックピストルを空中に向けて発砲したのである。その音に反応して雑魔は立ち上がり、唸り声を上げながら木陰から飛び出したハンター達を睨み付けた。
続けてネージュもリボルバーを構え、一体の雑魔に向けて発砲した。また舞踊は機導砲を放ち、一条の光が雑魔を狙う。雑魔達は俊敏な動きでそれを避けたが、臨戦態勢に入ったようである。
クラリアは精霊と共に舞い、マテリアルを解放する。更に動物霊の力を借りて身のこなしを素早くし、戦闘準備を整えた。
「さてさて、一丁やりますか……」
と、仲間達が動き出してからのそっと行動を開始したハスキーの全身には、幽鬼の様な青白いオーラが全身からあふれ出し、纏わりついていた。
雑魔達は六体全員が祠を離れてハンター達の方へ向かって来たが、二体ずつ組になるように分かれて大きく横に広がった。
「私の邪魔をするか……よろしい。やってみろ」
雑魔を倒すのも絵の為。クラリアは敵の一体へと近付き、クファンジャルを大きく振りぬいた。その一撃で雑魔の翼が切り裂かれ、おそらく飛行は不可能であろう状態となった。しかしカウンターで胴に噛み付かれ、クラリアは雑魔を振り払った。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫。……超痛いけど」
近くにいたネージュが声をかけると、クラリアは頷く。
ネージュはクラリアを襲った雑魔にショートソードを向けようとしたが、別の雑魔が牙を剥いて向かって来るのを、脚にマテリアルを集中させて素早く避けた。続けて予備動作を挟まずその雑魔に斬りかかったが、雑魔はぎりぎりでそれをかわした。
舞踊も二人の援軍に加わって機導砲を放ち、雑魔の注意を逸した。
「激おこ……確実に擂り潰す。肉を掻っ切れ、クファンジャル」
攻撃を受けたクラリアは傷を回復すると、すぐに自らを襲ってきた敵の胴体にクファンジャルを叩き込んだ。その攻撃で力を失った雑魔は灰のように崩れて消えて行った。
ネージュと舞踊は続けてもう一体の敵に攻撃を仕掛けるが、一体が倒されたことで警戒したのか、敵は逃げるように避けて後退し、間合いを取った。
その間、ハスキーは別の組の雑魔に対して居合い斬りを仕掛けていた。仕込み杖から刀を抜き、地面スレスレまで低く踏み込んで一気に敵に迫ったが、雑魔は間一髪でそれを回避して飛翔した。
「んー……避けたか」
「なかなか素早いですね」
Jはその雑魔を追いかけるように機導砲を放ったが、空中を自在に動く雑魔はその攻撃すらも回避してハスキーに噛み付いてきた。もう一体の敵からもほとんど同時に攻撃を受け、バックラーで対応していたハスキーはそれを避けきることができず、腕に傷を作った。
空高く飛翔した雑魔を追わず、ハスキーとJは地上にいる方の雑魔に攻撃を仕掛けようとした。しかしクラリアに倒された雑魔とペアだった雑魔の鳴き声を聞き、雑魔は素早くその雑魔の近くへと移動してしまった。
もう二体の雑魔はそれらの様子を見るように遠巻きにうろついていたが、空を飛んでいる一体と言葉をかわすように吠え合うと、戦闘を後方から支援していた舞踊の方へと向かって行った。
「硝煙の臭い……嫌いだけど。仕方ない……燻し穿て、オートマチック」
飛翔している敵にクラリアがオートマチックピストルで発砲したが、敵はそれを避け、Jに向かって降下し始めた。
「後ろの方、気を付けて!」
地上を駆ける二体の敵を見つつ、Jはひとまず空から自分に向かって来る敵に機導砲を撃ち込んだ。光に脚を撃ちぬかれた敵は、それでもJに鋭く爪で切りかかった。
「逃がさねぇよ……っと」
ハスキーは、Jを攻撃してから再び飛翔しようとする敵に対して上段の攻撃を放った。滑らかな動きで繰り出された一撃は狙い通りに翼の付け根に直撃し、常より重くその身体を斬り裂いた。翼を切り落とされた敵は落下したかと思うと、そのまま跡形も無く消滅していった。
舞踊は自分の方に向かって来る敵の一体に対して機導砲を撃ったが、敵はそれを横に跳んでかわした。
追いかけてきたネージュの剣も振り切って素早く駆け抜ける二体の敵は二手に分かれ、挟み撃ちを仕掛けようとしているようだ。
「一体ずつ確実に仕留めましょう」
そう言って構えた舞踊の手に光の剣が現れた。舞踊が操るその剣は、敵の背中に深く傷を作ってから、何もなかったかのように消えた。
続けて舞踊の元へと集まったクラリアが短剣を振りぬき、敵はそれをかわそうとした。
「避けさせませんよ」
そこにネージュが間髪入れずに追撃を叩き込んだ。ニ方向からの攻撃を避けることができず、ネージュの剣で背中に二つ目の傷を作った敵は、やはり砂のように崩れて姿を消した。
雑魔を攻撃した隙を狙ってもう一体が素早く噛み付いてきたが、ネージュはそれを機敏な身のこなしで避けた。
ネージュが一旦引いて間合いを取ったところにクラリアがクファンジャルを振るい、敵の脚を斬り裂いた。
更に再び機導剣を構えた舞踊が放った一撃は急所を突き、雑魔はその場に倒れて消えて行った。
その頃、一度後退してハンター達と距離を置いていた二体の雑魔は祠の方に向かおうとしていた。
「お前達の敵はこっちだ!」
Jは手早く傷を癒やすと発砲して敵の注意を引き、敵が祠に近付かないように牽制した。二体の内一体はその銃声に反応してハンター達の方へと踵を返してきた。
ハスキーは近付いてくる雑魔に対し、居合い斬りを放った。緩急をつけたその動作に雑魔は攻撃を避けることができず、仕込み杖の刃で翼を切り裂かれた。
飛ぶことができなくなったであろう雑魔に、Jが機導砲で追撃した。その攻撃は敵の頭部を正確に撃ち抜き致命傷となった。
「行かせませんわよっ」
もう一体の敵がまだ祠の方へ進んでいくのに、舞踊が機導砲を放った。ネージュもリボルバーで発砲して敵の動きを妨害した。雑魔はそれらの攻撃を避けて飛翔し、ようやく身体の向きを変えてハンター達へと立ち向かってきた。
敵との距離を詰めている間にもクラリアはオートマチックピストルで翼を狙って攻撃を加える。
更にJが機導砲を放ち、雑魔は背部に攻撃を受けて高度を落とした。
「さあ、これでトドメかねぇ」
ゆっくりと歩いていたハスキーが、敵の下から跳躍して切っ先を胴に刺した。雑魔はそのまま地面に落下し、灰燼に帰した。
「その塵すら星は赦すだろう。穢れた魂は星を巡り清められ、やがて大地に還る。せめて、来世が優しい世界でありますように」
そして全ての雑魔が消え去り静寂を取り戻した広場でクラリアは瞑目し、静かに言葉を紡いだ。
その手には、戦闘中には木陰に隠しておいた絵画道具があった。
●依頼完遂後
帰ってきたハンター達に、秘書らしき男性がティーカップを差し出していく。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「あ、どーもどーも」
温かく湯気を立てているそれを受け取り、Jは丁寧な所作で、ハスキーは軽く会釈した。
無事に歪虚を発見し殲滅したハンター達に、村長は深々と頭を垂れた。
「本当にありがとうございました。これで皆元気になるでしょう。あまり良い物もお出しできませんが、せめてお茶だけでも……おや、クラリアさんは?」
「お参りしてから祠を描くと仰っておられました。ご趣味だそうです」
裏山に出発した時にはいたはずの一人が見当たらないことに疑問を呈した村長に、舞踊が笑みをたたえながら答える。
雑魔を殲滅してからおもむろに祠にお参りを始めたクラリアは、それから祠の前に陣取って絵を描き始めた。それで他の四人は先に山を降りてきたのだった。
「はあ……そういえばそんな事を仰ってましたな……。祠に触れさえしなければご自由にとお伝えしましたが、そう描いて面白い物にも思えませんが」
「あの祠、どういう物なんですか? 触ってもいけない祠なんて、興味があるのですけれど」
お茶を一口飲んでから、ネージュが尋ねた。
「あの祠は山神様を祀っていて、中にはご神体として山神様の牙が納められていると聴いています。私も実際に中を見たことはないので、真実かどうかは定かではありませんが……。
触れてはならないというのは、祠には神聖な結界がかけてあるからです。資格ある者以外が触れると、穢れが振りかかると言われているのですよ。
しかし歪虚が沸いてしまったとなると、何らかの対策を講じなければならないのかもしれませんな……」
裏山の頂上に潜んでいると思われる歪虚の探索と殲滅を依頼されたハンター達は、木々が鬱蒼と生い茂る山の中を歩いていた。
「ええと、祠には絶対に触れないようにして……でしたね」
村長の話を聞き、一刻も早く解明・解決しなければいけないと思いながら、ネージュ(ka0049)は共に歩いているJ(ka3142)と古川 舞踊(ka1777)に話しかけた。
「敵が祠の近くにいるようなら、誘き寄せる必要があるでしょう。初手で空に向けて発砲しましょうか」
Jは真剣な面持ちでオートマチックピストルの具合を確かめるように握る。
「そうですね。私も撃ちましょう」
「ではわたくしは、最初は後衛で支援を行うことにします。それにしても、敵が複数だった場合は少し厄介ですわね」
これから戦闘だというのに、舞踊は変わらない笑みをたたえている。
「あれかねぇ……俺の怠さもハンターなんてやって歪虚なんかに関わってんのが原因なのかねぇ」
戦い方について三人が話し合う後ろで、ハスキー(ka2447)は、腰に差した仕込み杖に体重をかけるようにして長身を屈ませ、うだうだ言いながら足をのそのそ動かしていた。もうすぐ頂上へ辿り着くが、既にぐったりしている様子である。
更に後方ではクラリア(ka3091)が、話を聞きつつも黙々と歩いている。その手には武器の他に絵描き道具が収まっていた。祠に触れさえしなければ描写は構わないと村長に許可をもらったときの彼女の内心の喜び様を知る者はいない。私クラリア。自分の嗜好の為なら、どんな努力だってする女。――そんな事を考えながら、目的地へと向かうのであった。
●殲滅
小さな山を登り切った五人の目の前に、開けた空間が現れた。木々に囲まれた数十メートル四方の平坦な地面は低い雑草に覆われている。長期に渡り人が立ち入った気配はない。
木々の影に隠れて様子をうかがっている五人の正面奥に、腰の高さほどしかない小さな祠があった。木造のそれは一見して古い。「触れないように」との言葉通り、祠のまわりは立ち入り禁止の看板と共に縄で囲われている。しかしその一部は既に朽ちてしまっていて意味を成していなかった。
そしてその祠のまわりには、狼のような身体に翼を持った雑魔が六体、寝そべったり歩きまわったりしていた。まだハンター達の存在には気がついていないようである。
風にそよぐ葉音以外は聞こえないような静寂の中に、突如乾いた銃声が響いた。雑魔を誘き寄せるため、Jがオートマチックピストルを空中に向けて発砲したのである。その音に反応して雑魔は立ち上がり、唸り声を上げながら木陰から飛び出したハンター達を睨み付けた。
続けてネージュもリボルバーを構え、一体の雑魔に向けて発砲した。また舞踊は機導砲を放ち、一条の光が雑魔を狙う。雑魔達は俊敏な動きでそれを避けたが、臨戦態勢に入ったようである。
クラリアは精霊と共に舞い、マテリアルを解放する。更に動物霊の力を借りて身のこなしを素早くし、戦闘準備を整えた。
「さてさて、一丁やりますか……」
と、仲間達が動き出してからのそっと行動を開始したハスキーの全身には、幽鬼の様な青白いオーラが全身からあふれ出し、纏わりついていた。
雑魔達は六体全員が祠を離れてハンター達の方へ向かって来たが、二体ずつ組になるように分かれて大きく横に広がった。
「私の邪魔をするか……よろしい。やってみろ」
雑魔を倒すのも絵の為。クラリアは敵の一体へと近付き、クファンジャルを大きく振りぬいた。その一撃で雑魔の翼が切り裂かれ、おそらく飛行は不可能であろう状態となった。しかしカウンターで胴に噛み付かれ、クラリアは雑魔を振り払った。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫。……超痛いけど」
近くにいたネージュが声をかけると、クラリアは頷く。
ネージュはクラリアを襲った雑魔にショートソードを向けようとしたが、別の雑魔が牙を剥いて向かって来るのを、脚にマテリアルを集中させて素早く避けた。続けて予備動作を挟まずその雑魔に斬りかかったが、雑魔はぎりぎりでそれをかわした。
舞踊も二人の援軍に加わって機導砲を放ち、雑魔の注意を逸した。
「激おこ……確実に擂り潰す。肉を掻っ切れ、クファンジャル」
攻撃を受けたクラリアは傷を回復すると、すぐに自らを襲ってきた敵の胴体にクファンジャルを叩き込んだ。その攻撃で力を失った雑魔は灰のように崩れて消えて行った。
ネージュと舞踊は続けてもう一体の敵に攻撃を仕掛けるが、一体が倒されたことで警戒したのか、敵は逃げるように避けて後退し、間合いを取った。
その間、ハスキーは別の組の雑魔に対して居合い斬りを仕掛けていた。仕込み杖から刀を抜き、地面スレスレまで低く踏み込んで一気に敵に迫ったが、雑魔は間一髪でそれを回避して飛翔した。
「んー……避けたか」
「なかなか素早いですね」
Jはその雑魔を追いかけるように機導砲を放ったが、空中を自在に動く雑魔はその攻撃すらも回避してハスキーに噛み付いてきた。もう一体の敵からもほとんど同時に攻撃を受け、バックラーで対応していたハスキーはそれを避けきることができず、腕に傷を作った。
空高く飛翔した雑魔を追わず、ハスキーとJは地上にいる方の雑魔に攻撃を仕掛けようとした。しかしクラリアに倒された雑魔とペアだった雑魔の鳴き声を聞き、雑魔は素早くその雑魔の近くへと移動してしまった。
もう二体の雑魔はそれらの様子を見るように遠巻きにうろついていたが、空を飛んでいる一体と言葉をかわすように吠え合うと、戦闘を後方から支援していた舞踊の方へと向かって行った。
「硝煙の臭い……嫌いだけど。仕方ない……燻し穿て、オートマチック」
飛翔している敵にクラリアがオートマチックピストルで発砲したが、敵はそれを避け、Jに向かって降下し始めた。
「後ろの方、気を付けて!」
地上を駆ける二体の敵を見つつ、Jはひとまず空から自分に向かって来る敵に機導砲を撃ち込んだ。光に脚を撃ちぬかれた敵は、それでもJに鋭く爪で切りかかった。
「逃がさねぇよ……っと」
ハスキーは、Jを攻撃してから再び飛翔しようとする敵に対して上段の攻撃を放った。滑らかな動きで繰り出された一撃は狙い通りに翼の付け根に直撃し、常より重くその身体を斬り裂いた。翼を切り落とされた敵は落下したかと思うと、そのまま跡形も無く消滅していった。
舞踊は自分の方に向かって来る敵の一体に対して機導砲を撃ったが、敵はそれを横に跳んでかわした。
追いかけてきたネージュの剣も振り切って素早く駆け抜ける二体の敵は二手に分かれ、挟み撃ちを仕掛けようとしているようだ。
「一体ずつ確実に仕留めましょう」
そう言って構えた舞踊の手に光の剣が現れた。舞踊が操るその剣は、敵の背中に深く傷を作ってから、何もなかったかのように消えた。
続けて舞踊の元へと集まったクラリアが短剣を振りぬき、敵はそれをかわそうとした。
「避けさせませんよ」
そこにネージュが間髪入れずに追撃を叩き込んだ。ニ方向からの攻撃を避けることができず、ネージュの剣で背中に二つ目の傷を作った敵は、やはり砂のように崩れて姿を消した。
雑魔を攻撃した隙を狙ってもう一体が素早く噛み付いてきたが、ネージュはそれを機敏な身のこなしで避けた。
ネージュが一旦引いて間合いを取ったところにクラリアがクファンジャルを振るい、敵の脚を斬り裂いた。
更に再び機導剣を構えた舞踊が放った一撃は急所を突き、雑魔はその場に倒れて消えて行った。
その頃、一度後退してハンター達と距離を置いていた二体の雑魔は祠の方に向かおうとしていた。
「お前達の敵はこっちだ!」
Jは手早く傷を癒やすと発砲して敵の注意を引き、敵が祠に近付かないように牽制した。二体の内一体はその銃声に反応してハンター達の方へと踵を返してきた。
ハスキーは近付いてくる雑魔に対し、居合い斬りを放った。緩急をつけたその動作に雑魔は攻撃を避けることができず、仕込み杖の刃で翼を切り裂かれた。
飛ぶことができなくなったであろう雑魔に、Jが機導砲で追撃した。その攻撃は敵の頭部を正確に撃ち抜き致命傷となった。
「行かせませんわよっ」
もう一体の敵がまだ祠の方へ進んでいくのに、舞踊が機導砲を放った。ネージュもリボルバーで発砲して敵の動きを妨害した。雑魔はそれらの攻撃を避けて飛翔し、ようやく身体の向きを変えてハンター達へと立ち向かってきた。
敵との距離を詰めている間にもクラリアはオートマチックピストルで翼を狙って攻撃を加える。
更にJが機導砲を放ち、雑魔は背部に攻撃を受けて高度を落とした。
「さあ、これでトドメかねぇ」
ゆっくりと歩いていたハスキーが、敵の下から跳躍して切っ先を胴に刺した。雑魔はそのまま地面に落下し、灰燼に帰した。
「その塵すら星は赦すだろう。穢れた魂は星を巡り清められ、やがて大地に還る。せめて、来世が優しい世界でありますように」
そして全ての雑魔が消え去り静寂を取り戻した広場でクラリアは瞑目し、静かに言葉を紡いだ。
その手には、戦闘中には木陰に隠しておいた絵画道具があった。
●依頼完遂後
帰ってきたハンター達に、秘書らしき男性がティーカップを差し出していく。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「あ、どーもどーも」
温かく湯気を立てているそれを受け取り、Jは丁寧な所作で、ハスキーは軽く会釈した。
無事に歪虚を発見し殲滅したハンター達に、村長は深々と頭を垂れた。
「本当にありがとうございました。これで皆元気になるでしょう。あまり良い物もお出しできませんが、せめてお茶だけでも……おや、クラリアさんは?」
「お参りしてから祠を描くと仰っておられました。ご趣味だそうです」
裏山に出発した時にはいたはずの一人が見当たらないことに疑問を呈した村長に、舞踊が笑みをたたえながら答える。
雑魔を殲滅してからおもむろに祠にお参りを始めたクラリアは、それから祠の前に陣取って絵を描き始めた。それで他の四人は先に山を降りてきたのだった。
「はあ……そういえばそんな事を仰ってましたな……。祠に触れさえしなければご自由にとお伝えしましたが、そう描いて面白い物にも思えませんが」
「あの祠、どういう物なんですか? 触ってもいけない祠なんて、興味があるのですけれど」
お茶を一口飲んでから、ネージュが尋ねた。
「あの祠は山神様を祀っていて、中にはご神体として山神様の牙が納められていると聴いています。私も実際に中を見たことはないので、真実かどうかは定かではありませんが……。
触れてはならないというのは、祠には神聖な結界がかけてあるからです。資格ある者以外が触れると、穢れが振りかかると言われているのですよ。
しかし歪虚が沸いてしまったとなると、何らかの対策を講じなければならないのかもしれませんな……」
依頼結果
依頼成功度 | 普通 |
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面白かった! | 5人 |
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依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/09/07 16:22:47 |
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作戦相談卓 ハスキー(ka2447) 人間(リアルブルー)|20才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2014/09/09 11:17:42 |