人知れず滅ぼされた村

マスター:なちゅい

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/06/25 22:00
完成日
2016/06/29 21:47

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●事件の裏で人知れず……
 王都イルダーナ周辺で何件か起こっている、スケルトン出没事件。
 夕方から深夜にかけ、墓場からスケルトンが現れて徘徊するというもので、事件によっては、スケルトンが村中を徘徊するに至ったこともあった。これらはハンターの手によって解決されている。
 だが、実は人知れず、王都イルダーナ北西にある小さな集落がこのスケルトンの手によって滅ぼされていることが後に判明した。
 発見は行商にやってきた男によるもの。残念ながら、村にはスケルトンの群れがうろついており、近寄ることすら敵わなかったとの事。
 危険と判断した人々によって、討伐依頼がハンターズソサエティに舞い込む。
 普段からあまり人が近寄る場所出なかったことが災いしてしまったのだろうが、犠牲者が出てしまっている今、それをとやかく言っても仕方ない。
 名もないその集落は、15人ほどが住んでいた。幼子もいたはずだが、現状は直接遺体の確認には至っていない。
 この場所は3~4件が連なる程度の集落で、男性は狩猟を行っていたとのこと。それでも命を落としたことを考えれば、スケルトンはかなりの力を持っているのだろう。
 スケルトンは3体が確認されている。
 真っ赤な体をした1体は杖を手にし、魔術師のスキルをも駆使するのではないかと見られている。この個体が特に強力な力を持つようだ。
 他2体は剣を手にして疾影士のスキルを使うようだが、こちらは並のハンターレベルと見ていい力量だ。元は3体いたようだが、集落の男性によって1体が倒されているらしい。
 ところで、これらのスケルトンを呼び起こしたのは、1人の歪虚と見られている。現状、とあるハンター達が討伐依頼に当たっているが、続報を待つ状況だ。
 こちらはこちらでスケルトンを討伐してしまいたい。できるならば事後、この集落の人々の遺体を手厚く葬ってほしい。
 人知れず、歪虚の手にかかってしまった哀れな人々に安らぎを……。

リプレイ本文

●歪虚による被害
 ハンター達が目指すのは、王都イルダーナ北西のとある集落。
 そこはすでに、廃墟と化してしまっている。……スケルトンの手によって。
「王国も先のベリトの件以降、人手不足というところか……。王都にほど近い村も守れないとは……」
「同様に滅ぼされてしまった集落は、他にもたくさんあるんでしょうね……」
 この現状を、馬を駆るラヴィーネ・セルシウス(ka3040)が憂う。ラース・フュラー(ka6332)も、これ以外に知られていない被害があったのではないかと考える。
「嗚呼……なんと悲しきことでしょう。彼らにも日常が、営みがあったでしょうに……」
 人知れず犠牲になってしまった人々。嘆き悲しむアレシュ=ゼヒター(ka5857)は突然声を荒げる。
「やはり赦されざるは歪虚! 選ぶまでもない! 彼らに与えられるのは無、ただそれのみです」
 狂気を垣間見せるアレシュにやや驚きながらも、ハンター達は話を進める。
「餓鬼の頃から傭兵やってこの歳まで来たんだ。こういう話は珍しかないが……何度聞いてもやるせないもんだぜ」
 とっとと歪虚を倒して、遺体の埋葬をとジャンク(ka4072)は考えている。そんな彼の視界に、目的の集落が見えてきていた。
 遠目には、生活観のある光景がちらほらと垣間見える。庭先にある菜園。綺麗に刈り取られた家の周囲の雑草。それらは人が住む場所だと思わせるが……。建物の周囲に倒れる人影。その人々や建物には、赤い物がこびりついていた。
 そして、今なお、集落の周りに動く骸骨の姿が見える。
「……村を滅ぼすなんて許せない」
 ミノア・エデン(ka1540)は幼き日、歪虚の軍勢に滅ぼされた過去を持つ。だからこそ、彼女はこの状況を、そして、集落を潰したスケルトンに静かな怒りを燃やす。
 悪党を自称する葛葉 莢(ka5713)だが、罪もなき一般人が犠牲になったのであらば彼女も黙ってはいられない。
「さて。人の領域に踏み入った無法者どもに思い知らせましょ」
 同意するハンター達。一行はすぐにスケルトン討伐の為の作戦を開始するのである。

●集落からのおびき寄せ
 まずは、敵の状況の確認をハンター達は行う。
 馬を降りたラヴィーネは、改めて村の様子を遠目から観察する。建物の外を、剣を手にした白いスケルトン1体がうろうろと彷徨っている。
「あまり大きくない集落ですし、敢えて散開する必要はなさそうですね」
 先ほど、狂気にも似たアレシュの叫びに思うことを抱くメンバーだが、彼は的確に状況を分析している。
「1体しか姿が見えねえのが気になるが……」
 ジャックが遠見の眼鏡のレンズを切り替えつつ呟く。どうやら、家の奥にもう1体、いや2体いるが、物陰になってこちらからは見えない。
 1体は真っ赤なスケルトンで、かなりの力を持つという。だが、白いスケルトンも隠形、機動性に富む。莢はその奇襲に対して十分に警戒を強めていた。
「敵は1体。集中して叩きましょう」
 敵が集まっていないのは幸い。ラースの提案もあり、メンバー達は白い敵を狙って襲撃を企てる。しかしながら、敵は集落民の遺体の周囲を歩き回っていた。
 メンバー達はかなり集落に近づいてきていた。このまま襲撃すれば、確実にその遺体を巻き込んでしまう。
「なるべく、遺体から遠ざけたいね」
「ご遺体をこれ以上荒らさない為にも、集落周囲での戦闘は避けたいですね」
 ミノア、アレシュはそれを確認し、後方の広い場所での戦いを提案する。
 この為、スケルトンの前に姿を現したメンバー達は、集落から離れるように敵をおびき寄せていく。
「……そうです。こちらへ……」
 身を引くラース。莢、ジャンクもそれに倣うと、白いスケルトンは素早くこちらへと近づいてきた。
 そこで現れたのは、全身を真っ赤に染めたスケルトンだ。並々ならぬ魔力をその体に秘めていることが外見でも分かる。
「紅いのは見るからに強敵そうだな。他の奴から片付けたいが」
 ジャンクはそいつを抑えるべく魔導銃を構え、マテリアルを込めた弾丸によって、そいつの体の一部を凍りつかせる。
 紅いスケルトンはジャンクを敵と見定め、骨のような杖を振りかざした。じりじり下がるメンバーをうまく射程に抑えながら、紅い個体は雷撃を放射してくる。
 敵も上手く攻撃を仕掛けてくる。ミノアは白いスケルトンの斬撃を避けようとするが、自身の培ってきたスキルだけではなかなか避けられない。狩猟する動物とは違った対応が求められるのは難しいところだ。
(村を滅ぼしたスケルトンは許せないけど、怒りだけじゃ、勝てるのも勝てなくなるから)
 ミノアは心を落ち着かせ、戦いに臨む。集落民の仇を討つ為に。

●元の動かぬ骸へ……
 執拗にハンターとの距離を詰めてくるスケルトン達。
 白いスケルトンはその間も、剣を構えて斬撃を叩き込んでくる。紅いスケルトンもまた、時に冷気を放ち、複数のハンターに冷気の嵐を浴びせかけていく。
 しばしそれに耐えていたハンター達は、集落から距離を十分にとったことで、反撃へと打って出始めた。
 狙うは白い個体。ほとんどのメンバーは白い個体を先に狙おうと動く。
 ただ、紅い奴をフリーにはできぬと、ジャンクはその抑えに回り、冷気の弾丸でそいつを凍らせようと狙う。相手の体が骨ということもあって、狙うは頭蓋。撃ち抜いた弾丸によって、敵の頭部が凍り付いていた。
 ラヴィーネも紅い個体の抑えが少ないと感じ、そちらの対応に回っていた。距離をとりつつ、前線メンバーに光の精霊力を付与し、あるいは自ら光の弾を飛ばして攻撃も仕掛ける。それもあり、紅い個体は後ろの2人に狙いを定めて魔法を発していたようだ。
 一方、白いスケルトンを狙うメンバー。
 まだ自身が未熟と感じているラースだが、この場でできることをと考え、聖剣「カル・マ・ヘトン」を大きく振りかぶり、スケルトンに強打を叩き込む。
 手応えを感じたラースは次なる一撃をと構えるが。
「新手が……」
 いつの間にかもう1体、白いスケルトンが現れていた。刀を手にしたそいつは、素早く距離を詰めてこちらへと迫ってきていたのだ。ラースは 龍壁「ガータル・ゾア」を構え、敵の攻撃に備える。
 敵の奇襲に警戒していたアレシュも新手の攻撃を気にかけ、『【闘祭】カーニバルバックラー』でそれを受け止め、その上で盾を強く押し込み、敵の体勢を崩す。
 ともあれ、敵の数を減らすことが優先と、ハンター達は最初からいる剣持ちの白いスケルトンを叩く。
「罪には、罰っていう単純かつ強力な反撃をね」
 ただ、紅い敵の魔法攻撃が怖い。仲間と適度に距離を保って位置取る莢は剣持ちの白い敵の体のバランスを崩し、勢いよく投げ飛ばす。そうして、莢はそいつの関節をすかさず極めてしまい、その動きを封じる。
 そこで、ミノアが攻め込む。歪虚の軍勢に自身の村を襲われて命からがら逃げ出した過去が頭によぎるが、冷静な彼女は力強く踏み込み、クレイモアでの一撃を強く叩き込む。
 そのスケルトンは全身を維持できなくなり、崩れ落ちていく。そして、すぐにかき消えるようにしてなくなっていったのだった。

 スケルトンはそれぞれの長所を生かしつつ、ハンター達に刃を、魔力をぶつけてくる。
 やはり紅のスケルトンの魔法は脅威だ。広範囲を攻撃し、大幅に体力を削る攻撃は常に注意する必要がある。
 こちらの体力がいつまでもつか分からない。早めに敵を倒さねばと、アレシュは自身の聖剣『アルマス』に光の精霊力を付与し、それで敵の体を切り裂く。
 度重なる攻撃で、刀持ちのスケルトンの全身にヒビが入り始める。しかし、そいつは臆することなく、体内にマテリアルを潤滑させて切り込んでくる。
(覚醒者のスキルを扱えるのは、覚醒者の遺体から生み出されたからか……?)
 ラヴィーネはそう考えるが、実際のところは分からない。関連事件を調べるとその可能性が高いことが分かるのだが、今はその対処が先だ。
(遺体を利用するなど、死者の魂と肉体を愚弄し汚す行為。主謀者には死を持って罪を贖わせるべきだな)
 怒りを覚えつつ、ラヴィーネは光る弾を飛ばす。それがスケルトンの体に命中して勢いよく弾けると、スケルトンの体もまた弾け飛ぶようにして消えていった。
 残るは、紅いスケルトンのみ。そいつはまたも雷を一直線に放ってくる。
 それに貫かれつつも、ミノアは再び強く踏みこんでクレイモアを叩きつけた。強い敵だ。1人では勝てない。だからこそ、彼女は皆と連携をはかる。
 ラースが続く。彼女もまた聖剣『カル・マ・ヘトン』での強打を紅の骸骨に浴びせかけた。よろける敵だが、倒れない。生前から強力な力を持っていたのか、あるいは術者が強力な力で蘇らせたからなのか……。
「土は土に、灰は灰に。動く骨は地獄に還りなさい!」
 莢が敵へと一気に距離を詰め、レガースをつけた脛で蹴りかかる。その打撃音は住む者がいなくなった集落にまで響く。
 だが、敵はそれに耐えて見せた。またも骨のような杖を振り、冷気の嵐をハンター達へと浴びせかけようとするが、体が動かない。ジャンクの放つ冷気の銃弾が効いていたのだ。
 すかさず、ジャンクがまたもマテリアルを込めた弾丸を魔導銃から撃ち放つ。威力を高めたその一撃は、ついに紅いスケルトンの頭蓋を砕く。そのスケルトンは塵と化し、その場から消えてしまった。
(元覚醒者だったなら、弔いたかったものだが……)
 ラヴィーネは倒したスケルトンについてそう考える。弔いすらできず、彼女はせめてと祈りを捧げるのだった。

●犠牲者に祈りを
 スケルトンを全て倒すことができたハンター達は改めて、集落へと近づく。
 そこには、老若男女関係なく、むごたらしい姿で命を奪われた人々の姿があった。
 交戦の跡か、砕かれたスケルトンの残骸らしきものが家の中に散らばる。こちらはまだ歪虚になって間もなかったのか、遺骸が残されていた。ラヴィーネの考え通り、術者はハンターの死体を利用したのだろう。
 そして、そばには力つきた集落の男性達の姿もあった。
「……あー。くそっ」
 初めて直視した人の死に、莢が苛立ちの声を上げる。その見た目の嫌悪感などよりも、自身の無力さを痛感させられていたのだ。
 後手に回ってこういう事態を起こさないように悪党になったのに。結局、歪虚相手に後手を強いられている事実。彼女はそれに歯噛みする。
 メンバー達はその遺体を1体ずつ、丁寧に場所へと運んでいく。ジャンクが率先して、痛々しいそれらの亡骸を、とりわけ子供の遺体を運ぶ。
「間に合わなかった償いよ。獣に荒らされたりしない死後の安息くらいは約束してあげるわ」
 莢は集落の近く、かつ見晴らしのいい場所を選び、集落民の墓標を作る。獣に荒らされぬよう、ミノアが所持していたスコップで土を深く掘って土葬を行う。
「貴重品も遺品として、一緒に埋めてやるか」
 その際、家の中にあった貴重品をいくつか見繕い、ジャンクが一緒に穴へと埋めていた。少し離した場所には、残っていたスケルトンの骨も埋めることにしていたようだ。
 土を戻し、完成した墓標には、ミノアが近くで見つけてきた花を添える。
「名も知らぬ人達故に、名前も刻めないのは少し辛いですね……」
「死者に安らぎのあらんことを」
 ラースが言うように、その墓標に名前を刻むことすらできない。それでも、アレシュは名も知らぬ死者達へと祈りの言葉を捧げていた。
「……ゆっくり眠ってくれな」
 ジャンクは鎮魂の道標代わりにと煙草に火をつける。紫煙はゆっくりと空へと立ち上っていった。

 祈りを捧げ終えたメンバー達は、今後のことを考える。
「ソサエティ経由で、遺族に渡って何もねえって噂は流しておいて貰った方がよさそうだな」
 ジャンクが懸念しているのは、この集落を盗賊が漁りに来ること。間違いなく、金目の物を狙う輩がここを訪れることだろう。
 それもあってか、ラヴィーネは改めて村人の遺品を整理していた。これらを元に、王都など別所に集落出身者がいないかと調べる予定だ。調べきることができなければ、ハンターズソサエティの手を借りようとすら考えている。
(いれば、せめて、遺品だけでも後日遺族に届けたい。人がいなくなっても、この村の事を覚えている者がいるならまだ……)
 集落の生き残りがいたら。ラヴィーネはそう願って止まない。
 その時、墓標から叫び声が聞こえる。ずっと祈りを捧げていたアレシュが声を荒げていたのだ。
「改めて思います、やはり歪虚は存在自体が罪でしかない!」
 歪虚は存在するだけで、災厄を撒き散らす害悪でしかないのだ。
「必ず、必ず殲滅します。この胸の内から湧き上がる激情に応える為にも! ははは……あはははは!!!」
 住民のいなくなった集落に、アレシュの笑い声が響き渡るのだった……。

依頼結果

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MVP一覧

  • 銀と碧の聖導士
    ラヴィーネ・セルシウスka3040
  • 明敏の矛
    ジャンクka4072

重体一覧

参加者一覧

  • サバイバー
    ミノア・エデン(ka1540
    人間(紅)|16才|女性|闘狩人
  • 銀と碧の聖導士
    ラヴィーネ・セルシウス(ka3040
    人間(紅)|20才|女性|聖導士
  • 明敏の矛
    ジャンク(ka4072
    人間(紅)|53才|男性|猟撃士
  • 悪党の美学
    五光 莢(ka5713
    人間(蒼)|18才|女性|格闘士
  • 歪虚の殲滅を誓う者
    アレシュ=ゼヒター(ka5857
    人間(紅)|22才|男性|聖導士
  • 内助の功
    ラース・フュラー(ka6332
    エルフ|23才|女性|闘狩人

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
ジャンク(ka4072
人間(クリムゾンウェスト)|53才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2016/06/24 02:01:56
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/06/22 00:59:09