六月の二ホン国は今……

マスター:チャリティーマスター

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~6人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
8日
締切
2016/07/03 19:00
完成日
2016/07/14 20:29

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 【二ホン国】――その世界はリアルブルーの世界に似て非なるもの。
 ヴォイドという存在が無い世界で『あなた』はハンターではなく、一般人として暮らしています。
(※シナリオ名・『【初夢】現代の地球、二ホン国へようこそ』参照)


 平和で平凡な日々を過ごす中で一年も半分が過ぎ、六月になりました。
 二ホン国で過ごすあなたは六月の今、何をしているのでしょう?
 ジューンブライドということもあり、ご自分の結婚式を挙げるのでしょうか? あるいはどなたかの結婚式に、参加される予定があるのかもしれません。
 また父の日を楽しんでいるのかもしれません。
 あるいは雨の中でも美しい紫陽花を見に、出掛けているのかもしれませんね。
 学生の方は学校行事に忙しく、社会人の方も季節にちなんだ仕事を担当しているのかもしれません。

 クリムゾンウェストでもリアルブルーでもないこの【二ホン国】、ハンターではない『あなた』は何をしているんでしょうか?

リプレイ本文

○レーヴェ・W・マルバス(ka0276)、雨の日の作業
 二ホン国の六月の朝はまだ肌寒く、天気は曇る。
 海岸沿いを小型トラックにのって走るレーヴェは、ラジオから聞こえる今日のこれからの天気を知って少しだけ苦く笑う。
「今日は海岸に落ちている流木とシーグラス、それに貝殻を拾いに来たんだが……急いで終わらせた方がよさそうじゃ」
 レーヴェの不安通り、空と海は暗い色に染まりつつあった。

「はぁ……。やはりこの時季になると海へ行く者が多いせいか、収穫はそんなに多くなかったのう」
 レーヴェはトラックの荷台から麻袋を持ち上げて、自分が経営しているインテリア雑貨店・『LOWE』の裏へ回る。
「まずは拾ってきた物を洗わなければな。しかし雨が降りそうであるし、室内干しにするのじゃ」
 外の水道で洗って、乾かす為に流木は工房の中の隅に並べて置く。流木は重いものや大きなものがあったせいで、レーヴェは疲労のため息を吐いた。
 しかし壁掛け時計を見て、開店時間が迫っていることに気付き、慌ててスタッフ用のエプロンをつける。
「いかんいかん! ゆっくりしている時間はなかったのじゃ!」
 長い銀の髪をポニーテールにして、レーヴェは開店準備をはじめた。
 そして朝の十時に『LOWE』は開店する。
 住宅街の中にある小さなこの店は、午前中はあまり客は来ない。午後になれば多少なりと忙しくなるので、今の内にレーヴェは海から拾ってきた材料で商品を作るのだ。
 工房と店は左右に開く二枚のガラス扉で仕切られており、開ければ客からも工房の中が見えるようになる。
 レーヴェは開店準備を終えた後、レジのすぐ後ろにある作業机の上にタオルで包んだ貝殻やシーグラスを広げた。
「質は良い物が拾えたのぅ。貝殻はストラップやタペストリー、シーグラスはアクセサリーの売れ行きが良いのじゃ。……っとと、その前に注文の品を完成させなければな。六月はイベントが多いから、オーダーメイド制作の方が忙しいのじゃ」
 インターネット販売もしている為に、店に来る客が少なくても結構忙しいのだ。
「それでも私が作った作品を求めてくれる客の為、そして生活費の為にも頑張らんとのぅ」
 アハハと笑いながら、レーヴェは作業をはじめる――。


○外待雨 時雨(ka0227)、雨の日の散歩
 時雨は上機嫌で鼻歌を歌いながら、外出の準備をしていた。
「六月はわたしの一番好きな月です♪ この前、レーヴェさんのお店で買った紫陽花柄の傘を持って、心友の雨に会いに行きましょう!」
 時雨はバッグを肘にかけて、外に出て曇りの中を歩き出す。
「ん~っと、まずは街の中を歩きましょうか。……あっ、今日は商店街の特売日でした! お魚が食べたい気分ですし、お野菜も残り少ないので早速今から……って違いますね。お買い物は……とりあえずお花屋さんには行きましょうか」
 商店街へ向かう途中で、時雨は塀の上で顔を洗っている白猫を見つけた。
「こんにちは、白猫さん。お顔を洗っている途中で申し訳ないのですが、わたしの心友が何時頃くるか分かりますか?」
 話しかけられた白猫は、「うにゃあ」と高く鳴く。
「三十分後ぐらい――ですね。ありがとうございます」
 時雨はお礼に白猫の喉を撫でていたが、向かいから一匹の黒猫がやって来た。黒猫が「うにゃっ」と鳴くと白猫は塀から下りて、二匹そろって走って行く。
「白猫さんには黒猫さんの親友がいるんですね。追い掛けるのは野暮というものですし、お花屋さんに行かなければ」
 時雨は商店街に入ると、真っ直ぐに花屋へ向かった。
 そして色とりどりの紫陽花の花束を購入して、店を出る。
「――おや、雨の匂いと気配が濃くなってきましたね」
 ウキウキしながら、時雨は海浜公園へ向かう。
 商店街を抜けた先にある海浜公園は、海を一望できることで地元の名所の一つになっていた。しかし今は雨が降りだしそうなこともあり、人気は少ない。
 それでも時雨は柵がある防波堤まで歩いて行くと、雨は静かに降り出した。
「ああ、やっと来てくださりましたね」
 時雨は満面の笑みを浮かべながら、紫陽花の花束を空へ向けて上げる。
「紫陽花の花言葉は『仲良し』なんです。大好きなあなたへ、わたしからのプレゼントです!」
 そして時雨は傘をさして、雨へ向かっていろいろなことを話した。
 するとバッグの中から、メールの着信音が聞こえてくる。メールの内容を見た時雨は、その場でアタフタしだす。
「レーヴェさんからのメールで『注文の品の紫陽花のランプシェードが完成したのじゃ!』とのこと! 名残惜しいですけど、行ってきますね!」
 時雨は辛そうに空へ向かって手を振った後、急いで『LOWE』へ向かう。 


○エルバッハ・リオン(ka2434)、雨の日の買い物
 エルバッハは自室でイスに座り、机の上に置いてあるノートパソコンの画面を見つめていた。
「父の日に何か贈り物をしたいのですが……、何が良いですかね?」
 いろいろと検索しているのだが、いまいちピンとこない。
 しかし昼食を終えた後、自室にこもりっきりになった娘を父が心配して、ドアを少し開けながらこちらの様子を窺っている。
 だがエルバッハの体でパソコンの画面は隠されているので、娘が何に悩んでいるのか分からなくてソワソワしていた。
 ところが廊下をたまたま通りかかった母がそんな父の姿を見て、眼をつり上げながら部屋のドアを静かにしめる。
 母は驚いて振り返った父の襟首を掴み、引きずりながら歩いて行った。
「……父の視線がうっとおしかったので、ありがたい母です。さて、ようやく集中できますね」
 エルバッハは父の日のプレゼントの画像を見ていくうちに、ふと数日前のことを思い出す。
 母とテレビを見ていたところ、面白そうな映画のCMが流れた。映画について母と話をした後日、父は三人分のチケットを買ってきてくれたのだが、その時に見た財布がかなり古くなっていたのだ。
「レーヴェさんのお店に行ってみますか」
 そう決めたエルバッハは雨が降っている中、傘をさして『LOWE』へ向かう。
「こんにちは、レーヴェさん。男性用のお財布はありますか?」
「いらっしゃい、エル。男性用の財布となると、ちぃっと値が張るが良い物があるのじゃ」
 レーヴェはガラスケースを開けて、商品を見せる。
「うっ!? ……次のお小遣い日まで節約の日々を送りそうですが、いつもお世話になっていますし、年に一度の父の日ですからね。このブラウンのをお願いします」
「お買い上げ、ありがとうなのじゃ♪」
 ――そしてその日の夕食後に、エルバッハは父に財布を贈った。

 しかし数日後、学校から帰ったエルバッハの机の上に白い封筒が置かれており、中を見ると一ヶ月分のお小遣いが入っている。
「ヤレヤレ、これでは贈り物の意味があまりないですねぇ。……でも何で、あのお財布が高いことを知ったのでしょう?」
 そこにメールが届き、内容を確認したエルバッハはガックリ項垂れた。
 送り主はレーヴェからで、『すまん。財布の値札、取るのを忘れたカモなのじゃ★』とあったのだ。


○鞍馬 真(ka5819)、雨の日の結婚式
「六月は結婚式が多いな。みんな、幸せそうで良いんだが……ご祝儀がなぁ。ボーナスを控えた会社員にとっては、懐事情が厳しくなる時季だ」
 学生時代からの友人の結婚式に参加している真は、披露宴会場の隅にいた。
 今は友人達と制作したプロフィールビデオが流れている途中で、BGMは全て真が楽器を演奏した曲になっている。
 この後、友達の新郎が新婦へラブソングを歌って贈る予定になっているので、真はピアノ伴奏を任されていた。
 なのでここでスタンバイをしているのだが、二十代も半ばになると六月に行われる結婚式にしょっちゅう呼ばれるようになり、そのたびに楽器伴奏を頼まれることを思い出して思わず肩を竦める。
「学生時代から楽器演奏は趣味程度だと言っていたのに、何でこうも頼まれるんだか……。いや、頼られるのは嬉しいのだが、最近の休日はずっと結婚式に出席している気がする」
 平日は仕事へ行き、休日は音楽スタジオや公園などで楽器の演奏をしていた。この過ごし方は、学生時代から引き継いだものだ。
 ゆえに友人達は真がそこそこの腕を持っていることを知っているので、プロフィールビデオのBGM・チャペルで行われる誓いの儀式のピアノ演奏・披露宴で行われる歌の伴奏を気軽に頼んでくる。
「しかし六月の結婚式は雨の日が多い。楽器に多少なりと影響を与えるから、気を付けないとな」
 やがてプロフィールビデオが終わり、新郎がスタンドマイクの前に立つ。真も移動して、ピアノのイスに座る。
 新婦へのサプライズということもあり、新郎は忙しい中でも真と共に一生懸命に練習を重ねた。そのかいがあって、新婦が感動の涙を流すほどの良いサプライズとなったのだ。
 伴奏者として役目を終えた真はこっそり会場を出て、エントランスのイスに座る。
「ふう……、熱気に少し当てられた。でも平凡だが平和な日々の中で、友人が幸せになる場面を見られるのは良いものだ。私にも相手がいないことはないが……、まだ自分が結婚式の主役になる姿は思い浮かばないな」
 だがいつかは真が新郎となり、友人達に祝福される立場になるのだろう。
 その時の考えていると、会場の扉が開いて友人達が「一緒に飲むぞ!」と声をかけてきた。
「ああ、今行く」
 立ち上がった真は、この友情も永遠に続けば良いと思う。


○美風(ka6309)、雨の日の過ごし方
 美風は早朝ランニングを終えた後、風呂に入って汗を流し、着替えてから朝食を作って食べた。その時は父は一緒だったのだが、今日は空手教室が休みということで二度寝をはじめてしまう。
 美風は食器を片付けて、洗濯を終えた後、空手着に着替えて道場で一人稽古をはじめた。
「今日は休日で父の日ということもあり、空手教室はお休みになりました。……とは言え、一番喜んだのは門下生ではなく、ウチの父なんですけどね。我が父ながら、本当に情けない方です。これでは父の日を祝ってあげようという気持ちが起きませんよ」
 顔をしかめながらブツブツと文句を言っていたのだが、しかし雨音を聞いた美風は外の様子を見て大きなため息を吐く。
「雨の日は湿気のせいで、床の踏み具合が悪くなるんですよね。一人稽古を無理に続けても良い事はありませんし、道場の掃除をしましょうか」
 美風は一人で道場を掃除した後、普段着に着替えて母親の仏壇の前に座布団を敷いて座る。
「お母さん、わたしはいろいろと疲れてきました……。近所の方がご厚意で食べ物や飲み物を差し入れてくれるので、何とか父娘二人、飢え死にせずに済んでいます。……ですが差し入れの日本酒を飲んで昼間っからいびきをしながら寝ている父を、どうしても尊敬することができないのです。もうちょっとしっかりしてくれると良いのですけどね」
 隣の父の寝室からは、酒臭さと父のいびきが伝わってくるのだ。
「……せっかくお友達と描いたこの絵も、素直に渡せそうにないですし」
 美風の手には、真っ赤な顔で大の字になりながら寝ている父の絵がある。
 数日前、空手教室が休みの時に美風は学校の友達の家に遊びに行った。その時に父の日の話題が出て、小学生ということもあり、あまりお金をかけずに父親へ贈り物を渡そうという話になる。
 そして美風は友達と共に、父親の絵を描いたのだ。絵の隅には鉛筆で『お父さん、いつもありがとう』と小さく書いてある。
「感謝はしているのですが……、これでは酔っ払った父に感謝している絵になりますね。はあ……。でも今日という日は半分過ぎてしまいますし、とりあえず置いておきましょう」
 美風はふすまをそっと開けると、絵を父の部屋に置く。
「お昼ご飯を作って起こせば、きっと気付くでしょうね。まあせっかくなので、父の好物でも作りましょうか」


○ヴィーナ(ka6323)、雨の日のお出かけ
「今年の雨は……よく降るのかな? あまり降らないんだったらレインシューズ、よく降るならレインブーツを買うんだけど……」
 ヴィーナはライトグリーンの傘をさしながら、レーヴェの店を目指して歩いていた。
 本当は母親と一緒に買い物に行く予定だったのだが急ぎの仕事が入ってしまった為に、ヴィーナ一人で買い物することになったのだ。
 ヴィーナは買う物について考えていたが、ふと周囲にいる人達の姿を見て眼を輝かせる。
「あの青い髪と眼のおねえさんが持っている青い傘、とってもキレイ……! それにあたしよりも年下の銀髪がキレイな女の子が履いている、ワインレッドのレインブーツもステキ♪ ……ううっ、靴は安いのを買って、余ったお金で新しい傘を買おうかな?」
 悩んでいる中で、色とりどりの紫陽花がたくさん咲いているのを見つけた。紫陽花には、複数のカタツムリがいる。
「レイングッズによって、今年の梅雨を過ごす気分が変わるから……とても悩むわ。あなた達はどう思う?」
 カタツムリ達はまるで応えるように、ウネウネと動く。
 ヴィーナはニコッと微笑み、再び『LOWE』へ向かう。
「こんにちは、レーヴェさん。新作のレインシューズかレインブーツ、あるかな?」
「いらっしゃい、ヴィーナ。今年の新作はこっちじゃ」
 レーヴェはいくつかの新作を、ヴィーナの前に出す。
「う~ん……。大人っぽいデザインを選ぶか、明るくて可愛いのを選ぶか、それとも奇抜なのを選ぶか……、スッゴク迷う。新しい傘も欲しいし」
「ははっ、ヴィーナはお年頃じゃのう。しかし持たされた予算以内にしとくのじゃよ? オシャレな少女というのも良いが、買い物上手となるともっと良いぞ」
「ううっ……! わっ分かっているよ」
 母親からお金は貰っているものの、ヴィーナの年齢に合った金額である。
「ちなみに新作の傘は隣じゃ。ヴィーナはお得意様であるし、多少は値段の交渉をしてやるからのぅ。ゆっくりと選ぶと良い」
「うっうん、やっぱり靴と傘は合った物を選んだ方が良いよね」
 雨の日用の靴と傘は売り場が隣同士なので、ヴィーナは右を見て左を見てと忙しい。
 そんなヴィーナの姿を微笑ましく見ていたレーヴェは、雨が降り続いている窓の外に視線を向ける。
「雨の日でも、何かと騒がしいのぅ。だがこれもまた、人生の一ページよ」
 

<終わり>

依頼結果

依頼成功度大成功

MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 雨降り婦人の夢物語
    外待雨 時雨(ka0227
    人間(蒼)|17才|女性|聖導士
  • 豪傑!ちみドワーフ姐さん
    レーヴェ・W・マルバス(ka0276
    ドワーフ|13才|女性|猟撃士
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • 空手道場小町
    美風(ka6309
    鬼|11才|女性|格闘士
  • 梅雨を楽しむ娘
    ヴィーナ(ka6323
    人間(紅)|14才|女性|魔術師

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言