【闘祭】最も美しいメイド男子はこの私

マスター:真太郎

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
4日
締切
2016/07/04 15:00
完成日
2016/07/08 18:18

みんなの思い出

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オープニング

「巷は武闘大会で賑わいを見せているようだな」
 リゼリオに数多くあるハンターオフィスの一つで、オフィスのマスターが窓から町並みを見渡しながら言う。
「はい。活気に溢れてていいですよね」
 オフィスの職員が手元の書類を処理しながら応じる。
「我々もこの活気の波に乗ってみるべきだと思うのだ」
「何をするつもりですか? 以前みたいにまた模擬戦でもするんですか?」
「いや。武闘大会が既に始まっている以上同じような事をしても客をそちらに取られてしまう。それでは儲からん」
(あ、やっぱり儲け優先か)
 職員が心の中だけで呟く。
「君は、女性が最も美しく戦っているのはどんな時でどんな格好だと思う?」
「美しく戦う時と格好ですか? え~と……舞刀士が民族衣装を着て剣舞を踊っている姿を見た事がありますが、あれは美しかったですよ」
「うむ、それも美しいな。決して間違いではない。だが、私が最も美しいと思うのは、メイドさんがメイド服で仕事をしている姿だと思う!」
「…………は?」
 職員は一瞬マスターが何を言っているのか分からなかった。
「あの……メイドって戦ってるんですか?」
「もちろんだ! どんな主人に対しても笑顔と献身を忘れず慈しむ。誰に対してもだぞ。そんな崇高な精神と姿勢を保ち続ける事が戦いでなくて何だというのだ!」
 職員はマスターの正気を疑った。
 しかしマスターの目は真剣だ。
 守銭奴だが生真面目だと思っていたマスターへの認識が改まるのが自分でもハッキリと分かった。
 もちろん良い方にではない。
「そんなメイドの中でも最も美しいメイドを決める大会を開けばきっと繁盛間違いなしだ」
「そうですね」
 職員は棒読みで返事した。
「実は既に企画書はできている」
(うわ、この人最初っからやる気満々だ)
「という訳で」
「僕は手伝いませんよ。僕は僕は自分の仕事が忙しいんです。やるならご自分でどうぞ」
 職員は先手を打って逃げた。
「むぅ……」
 マスターは企画書を手にして唸った。
 企画をやりたいのは山々だが自分も忙しい身だ。全ての段取りを自分一人でやるのは不可能だ。
 そんなマスターの目が1人の少女を捉える。
 最近、ハンターオフィスの職員見習いとして配属されてきた『ハナ・カリハ』だ。
 経験は薄いが真面目で働き者である。
 マスターはハナを呼んだ。
「な、なんでしょうか?」
 ハナは物凄く緊張しながらマスターの前に立った。
 頭の中では、何か失敗しただろうか? どんな叱責を受けるのだろうか? という思いがぐるぐるしている。
「君にこの企画を任せる」
「…………え?」
 ハナは一瞬マスターが何を言っているのか分からなかった。
 ハナはまだ職員ではない。単なる見習いなのだ。戸惑って当然である。
「難しい仕事ではない。この企画書通りに関係各所との段取りを進めるだけだ。君にでもできる」
「は、はい……」
 ハナはおずおず企画書を受け取って読んでみた。
 確かに緻密で丁寧に書かれた企画書で、本当に自分でもできそうだった。
(そうか。これはきっと私の職員としての資質が試されているんだ)
 本当は他に人手がなかったから頼まれただけなのだが、ハナはそう解釈した。
「分かりました。お引き受けします」
「よろしく頼む。何か分からぬ事があれば私に相談しなさい」
「はい!」
 ハナは元気よく返事をすると、企画書通りに仕事を進め始めた。

「これは面白いイベントですね。採用しますよ」
 【闘祭】のイベント企画受付でも審査は無事通過。

 次にイベントの設営を行う業者との打ち合わせを行う。
「あははっ、こいつは面白い。とびっきりのイベントにしてみせますよ」
 業者もイベント内容を気に入ったのか張り切って準備をしてくれた。

 次に行ったのは街中での宣伝と普及のお願い。
「へぇ~。こんなイベントするんだ。変わった事考えるんだねぇ」
「でも面白そうじゃない」
「分かった。宣伝しといてやるよ」
 これも好感を持って受けて入れられイベントもすぐに認知される事だろう。

 全ては順調に進んでいた。
 ある1点を除いて……。


 そうしてイベントの準備はほぼ整い、マスターはイベント会場に足を運んだ。
 そこには。

『最も美しいメイド男子はこの私 男性メイドコンテスト』

 と書かれた看板が大きく掲げられていた。
「…………は?」
 マスターは我が目を疑った。
 メガネを外して目を擦り、もう一度見直す。
 マスターの目に『男子』や『男性』の文字が飛び込んでくる。
 見間違いではない。
「な……なんだこれは……」
 マスターは愕然とした。
 彼が思い描いていたのは見目麗しいメイド達の饗宴なのだ。
 驚き、愕然とするのも当然である。
「マスター!」
 そこに誇らしげな顔をしたハナが企画書を手にやってくる。
「ハナ君。これはいったい……」
「はい。マスターの企画書のおかげで私でもここまで仕事を進められました」
 マスターはハナから自分が渡した企画書を受け取り、読みなおした。
 するとイベントの募集要項の部分が『女性』ではなく『男性』となっていた。
 それ以外の部分は全て企画通りだ。
 誰かが書き直したのか?
 しかし企画書に書き直した跡はない。
 では誰かが企画書をすり替えたのか?
 いや、この企画書は間違いなく自分が渡したものだ。
 つまり……。
 自分で書き間違ったのだ。
(しまったぁーーーーー!!)
 マスターは心の中で絶叫した。
(どうする? 今から直してもらうか?)
 しかしイベントは既に男性メイドコンテストとして進行してしまっている。
 募集も男性をターゲットにして既に行われている事だろう。
 今更変更できるとは思えないし、変更するとなると無駄な予算を使う事となる。
(どうする……)
「あのマスター……。表情が険しいですけど、私、何か間違った事してましたか?」
 ハナが物凄く不安そうな表情で尋ねてくる。
 ハナは企画書通りに仕事を進めただけだ。
 まったく落ち度はない。
 それどころかまったくミスなくここまで進めた事ができたのだ。
 優秀な仕事振りだと言えた。
「こ、この看板は?」
 この看板の事は企画書に記載していない。
「これは業者の方が張り切って作ってくれました。とっても評判なんですよ」
 ハナが誇らしげに語る。
「そうか……」
 マスターはイベント会場を見渡した。
 全てに力が入っている。
 多くの者がこのイベントを面白いと思って力を尽くしてくれたと分かる。
「よくやった」
 だからマスターはハナを褒めた。
 そして自分の思い描いていた普通のメイドコンテストの企画は全て捨て、この男性メイドコンテンストに注力する事を決めた。

リプレイ本文

 閏(ka5673)は東方の山村出身でメイドの事を知らず、和風メイド服が似合うだろうと言われたので淡い色の反物を見繕ってきた。
 しかし白いエプロンとヘッドドレスも着けた姿は女性の様に見える。
「このお召し物は……その、女性が着る物では?」
 不安になった閏は他の出場者の様子を伺った。

 メーレ・クロイツェル(ka5626)は黒のロングワンピースに白のエプロン、白のキャップ、黒いソックスに黒の編み上げブーツを着用。
 下着にコルセットにペチコートとドロワーズまで身に着ける。
「ウルウ君。これはうちのメイド達に同じものを用意させたんだよ。いつも美しい服だと思っていたのだよね、そしてやっぱり、美しい僕にとても似合うな」
 閏の視線に気づいたメーレは勝手に解説して悦に入った。
「ウルウ君は和装がよく似合っているね」
 メーレがそっと閏の手を取る。
「そして優しい手、温かで美しい手だ、貴方に触れられれば、きっと誰でも幸せな気分になる」

 十色 エニア(ka0370)はスカート丈を短くした一般的なメイド服を着て、ガーターを着用。
「トイロ君。美しい黒髪だ、まるで黒曜石のようだね。君の白い肌によく似合っているよ」
 メーレはエニアの髪を手にとって梳いた。

 クリス・クロフォード(ka3628)は特に飾り気のない一般的なメイド服を着用。
 化粧をうっすらと施し、髪は三つ編みにした上で、まとめてアップにして止める。
「メイド服着た女装なんて基本よね。ま、学祭で毎年やってりゃ慣れもするわ」
 女装に慣れているクリスは今日の自身の出来栄えにも満足する。
「クリス君。美しい肌をしているね、触れなくともわかるよ、きっとシルクのようになめらかだろう」
 メーレがクリスの肌に見惚れる。

 エミリオ・ブラックウェル(ka3840)はロイヤルパープル色のワンピースドレスに白色のエプロン、白のニーハイソックスに濃紫色のパンプスを着用。
 ワンピースの下にはチュチュパニエを着て、スカートにボリュームを持たせる。
 サイド編上げで、袖筒はパフスリーブ。襟は白色のセーラースタンドカラー、襟元には黒色のリボンタイ。
 髪型はツインテールに紫のリボン。
 エプロンはウエスト部分のフリルと裾にたっぷりとチュールレースを施してある。
 自称、老若男女に好まれる清楚で浪漫溢れるスタイルだ。
「エミリオ君。美しい瞳、宝石のようにキラキラと輝いて見つめていると吸い込まれてしまいそうだ」
「ありがとう。メーレさんも美しいわよ」
 メーレとエミリオは互いの美しさを褒めあった。

 フェリル・L・サルバ(ka4516)は丈の短い一般的なメイド服にガーダーを着用。
 全身から圧倒的なゴリラ感を醸し出していた。
「フェリル君。鍛えられた肉体には美が宿るというよ。君の肉体はまさしくそれだね、素晴らしい!」
「お……おう。サンキュ」
 メーレは純粋に褒め称えたのだが、フェリルは返答に困った。
 フェリルに女装趣味は一切ない。
 あくまでも賞金目当て出場したのだ。
(こんな恥ずかしい姿を大勢の人に見られるのか……嫌いじゃないかも)
 でもちょっとM属性はあるようだ。


 コンテストが始まって6人が姿を現すと会場がどよめいた。
「あれ本当に男?」
「可愛いー!」
「すっごい美人ー!」
「俺の嫁より綺麗じゃねーか!」
 観客が(約1名を除いた)出場者のレベルの高さに度肝を抜かれたのだ。
「でも1人男混ざってるぞ」
「全員男だろ。いや、言いたい事は分かるけど」
 ただ、フェリルだけちょっと違う注目のされ方をする。
(そんな目で見ないでくれぇ……)
 フェリルは羞恥に耐えながらも注目を浴びてる事にちょっとだけ快感も覚えていた。


・自己紹介

「十色 エニアです。とある事情から歪虚にも奉仕した事があって、それも結構評判良くて。なので奉仕には自信があります」
「クリスと申します。旦那様、お嬢様、本日はよろしくお願いいたします。」
「お初にお目にかかりますわ、旦那様、奥様、お坊ちゃま、お嬢様♪ 私の事はエミリオ、とお呼び下さいませ」
「フェリル・L・サルバです! 趣味は釣りで、特技は料理。ご主人様への忠誠心なら誰にも負けねぇ! よろしく!!」
「やあ! 僕はメーレ・クロイツェルだ。よろしく紳士淑女の皆様」
「う、閏です……。と、東方より参りました……鬼……です」
 緊張しすぎて閏の涙腺が緩む。
「えと……ぇぐっ……宜しくお願いしますぅぅ……っ」
 必死に涙を堪えたが、結局零れてしまった。



・給仕タイム

 閏。
「本日はご足労頂き有難う御座います。短い時間になりますがお給仕をさせて頂く、閏と申します。
 お料理に関しましてはお時間も無く、大した物をご用意出来なかったのですが、心を込めてお作り致しました。
 本日のお料理は、旬の焼き魚・味噌汁・塩むすびでございます」
 早々に泣き出した自分を恥じた閏だが、料理には自信があるためか最後までちゃんと言えた。
「うん、美味い」
「いい塩加減だわ」
「特におむずびが絶品だ」
 皆が美味しそうに食べてくれる姿を見て閏は嬉しくなった。
 食事中は全てのテーブルを見て周り、湯飲みのお茶が減っていればすぐ注ぎ足す心配りも欠かさない。
 その心遣いゆえか30~40代の男女に特に好評であった。
「近所の飲み屋で女将をやってくれてたら絶対に通うな」
「あぁ、嫁にしたいくらいだ」
 閏が男なのを完全に忘れた発言である。
「うちの旦那と取り替えたい……」
 中にはこんな事を言う女性もいた。

 メーレ。
「僕が作ったのはローズジャムのベルリーナー。皆が美味しい料理を振る舞うならデザートも必要だろう?
 ふふ、実はね。この日のために練習したのさ。とても楽しい経験だった。
 こんな素敵な努力をする機会が得られるなんて、僕は幸せだよ」
 メーレは悦に入った様子で給仕を始め、ベルリーナーに粉砂糖を振りかける時は薔薇の型紙を使って美しくデコレーションしてゆく。
「さ、君のさくらんぼのように可愛い唇で食してくれ」
「え? そんな……可愛いなんて」
 そう言われながら手渡されると10代女子は顔を赤らめた。
「あぁ、君の指は細くなめらかで凄くステキだ!」
 別の20代女性にはそう言いながらフォークを手渡して持たせる。
「なんて美しい肌なんだ。まるで赤ちゃんや卵のようだ」
 40代女性にはこう言った。
「なんて精悍で堀の深い顔立ち……。人生の渋みが感じられるよ」
 40代男性にはこうである。
 メーレは男女関係なく全ての観客を褒め称えながら給仕してゆく。
 およそメイドらしからぬ給仕だが嫌味は一切なく、全て的確な賛辞であったため好評を得たのだった。

 エミリオ。
「私のお料理はスコーンと香草茶です。
 スコーンはバター香るプレーンと、蜂蜜のまろやかな甘さが響くハニーの2種類を用意したしました。
 香草茶はローズにレモングラスのブレンド。スッキリした味わいにローズの華やかな香りが特徴ですわ♪」
 エミリオが各テーブルにスコーンと香草茶を配膳してゆく。
 その際、座ってる者の目線がちょうどエミリオの胸の当たりに来る。
(やっぱり無いな……)
 10代男子だとどうしてもそこに目がいってしまう。
 その時エミリオと目が合った。
「ご主人様、そんなに見られると恥ずかしいわ」
「あ! ご、ごめん」
 男の胸を見て悪い事などないはずだが、反射的に謝ってしまう。
「うふふっ、冗談よ。ご自由に見てくださって構わないわよ」
 エミリオはスカートの端を摘んで少し持ち上げ、お辞儀する。
 すると男子の目は磁気のように白い絶対領域に釘付けになった。
 心臓が激しく鼓動を打って高鳴る。
(いやいや待て! この人は男だ男!)
 男子は必死に自分に言い聞かせた。
 だがエミリオが再び給仕に戻ると、今度はツインテールが顔に当たる。
 すごく良い匂いがした。
「ごめんなさいご主人様!」
「あ、いや、平気だから」
「ご主人様、優しい♪」
 エミリオがニコリと微笑む。
 その笑顔にハートを撃ち抜かれた。
(もう、性別とかそんなの、どうでもいいかも……)
 10代の心が激しく揺れ動く。

 フェリル。
「俺の料理は『メイド特製☆萌えきゅんハンバーグ』でございます」
 フェリオが給仕の際には胸筋や腹筋が目の前に来た。
 ムキムキだ。
 目を反らして視線を下げたら絶対領域が見えた。
 ムキムキだ。
 同じ性別なのに先ほど見た物とまったく違う。
「中は完全に火を通さず、ミディアムレア仕様。ソースは定番デミグラスとさっぱり食べられる玉葱の和風ソースの2種類用意しました」
 添え物の野菜は粉ふきいもとインゲン、そしてニンジンのグラッセはハート型にくり抜くという手の凝り様。
 フェリオの本気度が伺える一品である。
「最後に美味しくなる魔法をかけさせていただきます。美味しくなぁれ♪ 萌え萌え☆ びーむ!!」
 そしてトドメに指でハート型を作ってビーム。
 完璧である。
 それをやるのがムキムキの男性でなければ……。
「……」
 ハートビームで撃ち抜かれた10代男子は魂の抜けた顔で食べた。
 美味い。
 ハンバーグから滲み出る肉汁がソースと絡まって口いっぱいに広がる。
 でも作ったのはメイド服を着たムキムキ男だ。
(俺……やっぱり女の子の方がいいや)
 フェリオは人知れず10代男子を現実に引き戻したのだった。

 クリス。
「私の準備したお料理……というよりお菓子はスコーンです。先に紅茶をお淹れしますので少々お待ち下さい」
 観客の目の前でゴールデンルールに従った紅茶を淹れると、砂糖とミルクを付けて出してゆく。
 続いてディップソースとしてチョコ、生クリーム、蜂蜜、メープルシロップが添えられたスコーンを各テーブルに配膳してゆく。
 その際、先に給仕した観客の料理が冷めないよう、軽く皿を温めておく気遣いも怠らない。
「ソースは何種類か準備いたしましたので、お好みでお召し上がりください」
「あら! この紅茶とっても美味しいわ」
「スコーンも最高だ!」
 観客は紅茶の香りと味を楽しみ、スコーンも堪能する。
「ねぇ、あの人本当に男性?」
 10代の少女Aが友人の10代少女Bに尋ねる。
「でしょ。胸ないし」
「でも女性以上に女性らしいじゃない!」
「少なくてもアンタよりは女らしいわね」
「神様は不公平だぁー!!」
 嘆く10代少女達の所にクリスがやってくる。
「お嬢様、紅茶のおかわりはいかがですか?」
「クリスさん! どうすれば貴方みたいに綺麗になれますか?」
「え?」
「男性、なんですよね。でも女の私よりずっと綺麗で……。どうすればそんな風になれるんですか?」
 困った質問であるが、少女の目は真剣だ。
「お嬢様、人の美しさは内面より滲み出るものです」
 そう前置きして幾つかアドバイスをあげる。
 すると少女達から尊敬の眼差しを向けられた。
「私、頑張ります!」
「頑張ってクリスさんみたいになります!」
「えっと……私みたいになるのはダメじゃないかしら」

 エニア。
「わたしが作ったのはフルーツサンドです。トマトジュースと一緒に召し上がって下さい」
 クリスが極上の紅茶を淹れていたので、飲み物は紅茶からトマトジュースに変更している。
 小柄なエニアがちょこまかと給仕する様子は見ていて微笑ましい光景だった。
「この皿はこっちでいいのかな?」
「あ、わたしがやりますから座っててください」
「いいからいいから」
 そのためか年配の者程何かしてあげたい衝動にかられ、つい給仕を手伝ってしまう。
「うん、おいしい」
 元々お菓子作りが好きな事もあってフルーツサンドの出来は上々で、皆おいしそうに食べてくれている。
「フルーツは何を使ってるのかしら?」
「イチゴとキウイとバナナとマンゴーです。生クリームも自分で作りました」
「どうりで一味違うと思った」
「ありがとう。とっても嬉しいです」
 笑顔を振りまいて給仕するエニアを30代男性の1人がじっと見ていた。
(可愛らしい顔。細い腰。細い手足。滑らかな肌。
 本当に男なのだろうか?
 胸はないが、胸の小さい女の子など幾らでもいる。
 もし男でなかったら……彼女にしたい!)
 そんな想いから男性はエニアに尋ねた。
「エニアちゃんは、その……本当に男なのかな?」
「あなたはどっちだと思う?」
「え! それは……」
 イタズラっぽい表情で聞き返され、男性は返事に窮した。
「わたしが男でも女でも、わたしの魅力は変わらない。だったらどっちだっていいじゃない。些細な問題よ?」
 そう言って浮かべたエニアの笑みに、男性は更に魅了されたのだった。


・アピールタイム

「最後になりましたがこの様な貴重な経験をして頂き、感謝しています。
 初めは泣いてしまって皆さんを驚かせてしまったと思います。
 ……でも、とても楽しかったです。本日は有難う御座いましたっ!」
 閏が頭を下げると拍手が送られた。

「いざって時も俺が命に代えて護る!鍛錬は一日たりとも欠かしたことはないぜ。ご主人様、お嬢様、俺に清き一票を!!」
 フェリルは最後まで男らしさを貫いた。 

「美しさは競う必要などないんじゃないかな。だってほら、皆こんなに美しいんだもの。美しさに優劣はないと、僕は思うよ」
 メーレは皆の美しさをアピール。

「わたしは得意の踊りを披露します」
 音楽が奏でられてエニアが踊り出す。
「あら、エニアちゃんも踊るのね。それじゃ私も混ざっちゃお!」
 そこにエミリオも乱入して踊り始める。
 踊りに慣れているエニアはすぐにエミリオの踊りにも合わせ、2人で観客を魅せ始めた。
 2人とも短いスカートで見えそうで見えないギリギリの踊りを披露し、男性陣が興奮させる。
 そうして踊り終わると観客から歓声が上がった。

「私がアピールできそうな事と言えば……」
 クリス空いてるテーブルを片手で自分の前に持ってきて肘を置いた。
「私に勝てたら1日メイドとしてお世話させたいただく、というのは?」
 男女問わず褒美に欲しさに何人も挑んでくる。
 だが当然誰もクリスに敵わない。
 しかし。
「俺が勝ったら部屋の炊事洗濯料理、全部してもらうぜ!」
 最後にフェリルが挑んできた。
「え? いいのコレ?」
 主催者席に聞くとOKが出て試合開始。
 両者とも覚醒者のためか組まれた手が微動だにしない。
 だが徐々にクリスが押し始める。
「くっ!」
 フェリムも最後まで粘ったが、結局押し切られた。
「ちくしょう……」
「意外な展開になったけど、盛り上がったからいいか」


 そして投票が行われ、最も多く票を獲得したのは『クリス・クロフォード』だった。
「みんなありがとうー! 本当に嬉しいわ」
 クリスには賞金5万Gに加え『真のメイド男子』の称号も送られる。

 投票後には観客全員にエニアからお土産のマカロンが配られた。
「今日はありがとう」
 この笑顔がまた多くの男性を魅了してゆく。
 こうしてコンテストは好評のうちに幕を閉じた。

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MVP一覧

  • 魂の灯火
    クリス・クロフォードka3628

重体一覧

参加者一覧

  • 【ⅩⅧ】また"あした"へ
    十色・T・ エニア(ka0370
    人間(蒼)|15才|男性|魔術師
  • 魂の灯火
    クリス・クロフォード(ka3628
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人
  • 愛しき陽の守護星
    エミリオ・ブラックウェル(ka3840
    エルフ|19才|男性|機導師
  • M属性
    フェリル・L・サルバ(ka4516
    人間(紅)|22才|男性|疾影士

  • メーレ・クロイツェル(ka5626
    エルフ|18才|男性|聖導士
  • 招雷鬼
    閏(ka5673
    鬼|34才|男性|符術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 【質問卓】ハナちゃんに質問!
エミリオ・ブラックウェル(ka3840
エルフ|19才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2016/07/03 19:17:24
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/07/03 00:50:47