ゲスト
(ka0000)
死せる屍に、弔いを
マスター:水貴透子

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/06/17 12:00
- 完成日
- 2014/06/24 22:16
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
そこは、まるでゾンビの街だった。
生きる者は存在せず、生々しい血痕、鼻をふさぎたくなるほどの腐臭。
※※※
「ゾンビの群れ?」
女性が資料を見ながら、眉根を寄せて呟く。
ハンターオフィスに依頼されたのは、とある場所に存在するゾンビの群れを討伐してほしい、という内容。
群れと言っても、5匹程度らしいが、それでも油断をすれば危険な状態になるのは明らかである。
「少し前は、そこに人が住んでたらしいんだけどな」
「……その人たちはどうしたの?」
「生々しい血痕が残されてたって書いてあるし、逃げられなかった奴もいるんだろうな」
もしかしたら全員が、と誰もが考えたけど、それを言葉にするものはいなかった。
「はっきりしているのは数だけね、開けた場所だから戦いやすいっていうのはあるでしょうけど」
確実に誰かの命が失われた場所――。
そんな現場を目の当たりにして、冷静に戦えるのだろうか、と女性は心の中で呟く。
この討伐依頼は他の者たちが行う事になっているけど、目の前の状況に心乱さずにいられるのかと、他人事ながら心配になった。
「お前が心配するこっちゃねーだろ」
「それはそうだけど、私もこれから討伐依頼に行くし……やっぱり、心配になるっていうか」
女性がため息を吐いた時、ゾンビの群れを討伐する者たちが現れ、彼女は複雑な表情を見せた。
生きる者は存在せず、生々しい血痕、鼻をふさぎたくなるほどの腐臭。
※※※
「ゾンビの群れ?」
女性が資料を見ながら、眉根を寄せて呟く。
ハンターオフィスに依頼されたのは、とある場所に存在するゾンビの群れを討伐してほしい、という内容。
群れと言っても、5匹程度らしいが、それでも油断をすれば危険な状態になるのは明らかである。
「少し前は、そこに人が住んでたらしいんだけどな」
「……その人たちはどうしたの?」
「生々しい血痕が残されてたって書いてあるし、逃げられなかった奴もいるんだろうな」
もしかしたら全員が、と誰もが考えたけど、それを言葉にするものはいなかった。
「はっきりしているのは数だけね、開けた場所だから戦いやすいっていうのはあるでしょうけど」
確実に誰かの命が失われた場所――。
そんな現場を目の当たりにして、冷静に戦えるのだろうか、と女性は心の中で呟く。
この討伐依頼は他の者たちが行う事になっているけど、目の前の状況に心乱さずにいられるのかと、他人事ながら心配になった。
「お前が心配するこっちゃねーだろ」
「それはそうだけど、私もこれから討伐依頼に行くし……やっぱり、心配になるっていうか」
女性がため息を吐いた時、ゾンビの群れを討伐する者たちが現れ、彼女は複雑な表情を見せた。
リプレイ本文
●雑魔退治に集まったハンター達
「出発する前に確認しときてー事があるんだが……これ、噛まれたら感染るのか?」
ダナン=オーガット(ka0214)が資料を読みながら呟く。その辺の事は資料に書かれておらず、ダナンが不思議に思うのも無理はないだろう。
「どうだろう? だが、死者が歩いて人を食う……悪い冗談のような光景だな」
小さなため息を吐きながら、イヴァン・レオーノフ(ka0557)は眉をひそめながら答える。
「ゾンビの群れ、な。何を思いそこにいて、人を狩る事で何を思うのか……まァ、俺には想像し得ない何かがあるのかもしれないが、とりあえず放っておいていいもんじゃねェな」
エルドレッド・ディアルティア(ka0560)は複雑そうな表情を見せる。そのゾンビの『元』になったのが何なのかを気にしているのだろうか。
「死体は死体、生きながら焼かれる奴もいれば食われる奴もいる。どんな凄惨な姿であろうと、敵であれば……敵がいれば、倒すのみ」
足立 真(ka0618)は呟いた後、強く唇を噛む。その表情からは様々な感情が読み取れるが、戦う意志だけはしっかりと刻まれていた。
「……ゾンビの群れかぁ、ホラーゲームはよくやったけど……まさか、リアルで相手するとは思ってなかったんだよ……むー、どうすれば倒せるのかな?」
柊崎 風音(ka1074)は、かくりと首を傾げながら呟く。自分達がこの世界にいる事も、まだゲームのような感覚で考えているのかもしれない。
「今さら、ゾンビが出てきても驚かないですよ……まぁ、ゾンビというからには、元々生きた人間だったのかもしれませんけど」
ハイネ・ブランシェ(ka1130)は淡々とした口調で呟く。歪虚侵攻、異世界への漂着、それらの事実がハイネから驚きを取っているのだろう。
(……でも、昔いた場所で人が死んでいったのを思い出して、いい気分はしないですね)
ハイネは拳を強く握り締めながら、やりきれない思いを胸に抱える。
そして、もう一人、やりきれなさを抱えるハンターがいる。白い髪をなびかせ、その華奢な身体には不釣り合いな武器を抱える少女、アンゴルボダ(ka1930)だった。
(……せめて、その場に居合わせたらと思うのは詮無き事なんでしょうね。失われた命が戻る訳ではありませんが……灰は灰に、塵は塵に返さねばなりません)
「ゾンビね、俺達は与えられた仕事をこなすだけだけど……まぁ、どうなる事やら」
ライル・ギルバート(ka2077)は苦笑気味に呟き、小さなため息を零した。
「噛まれたら感染るかどうかも含めて調査になるのか、自分から噛まれる事はしねーけど。願うのは、このゾンビが飛んだり走ったりしねー事くらいかね」
情報の少ない資料を読みながら、ダナンは呟き、ハンター達はゾンビがうろつく荒野に向かい始めた――……。
●死者の歩く場所
ハンター達がやってきたのは、まさにゾンビが徘徊するに相応しい暗く濁った場所。
荒野に着いた時から、数体のゾンビがうろついているのが分かる。
「ゾンビはばらけているのか、作戦通り分かれて行動するしかないな」
ライルが面倒そうに呟く。ハンター達は5体のゾンビに対して、班を4つに分けるという作戦を取っていた。
ダナンとイヴァン、エルドレッドと足立、柊崎とハイネ、アンゴルボダとライル。
それぞれ分かれて行動をして、確実に一体ずつは倒す、という作戦を立てている。その場合1体が残ってしまうのだが、それは余力のある者が倒す……という事になっている。
「めんどくせえ相手ではあるが、きっちりとカタをつけるかねぇ」
エルドレッドが呟き、ハンター達は荒野にばらけているゾンビめがけて駆けだした。
※ダナン&イヴァン
「何か面倒だなぁ、調査手当てと怪我を負った場合、美人ナースの手当てを要求してぇ」
「このような惨状を見て、冗談を言える余裕があるとは凄いな」
ダナンの言葉に、イヴァンが少し口の端を持ち上げながら呟く。
「そういうイヴァンこそ、余裕があるように見えるが?」
「余裕というか、ただ問題を感じないだけだ。自分は、こういう仕事には慣れている」
「まぁ、その傷を見れば分かるけどなー、お互いに頑張ろうや」
イヴァンの肩を軽く叩きながら、ダナンはにかっと笑った。
「さて、おいでなすったな……」
「仕事、として対処させてもらおう」
よろよろと近づいてくるゾンビに、2人は戦闘態勢を取る。
イヴァンは『踏込』を使用して、ゾンビに近づき『ロングソード』を大きく振り上げる。
その時、ダナンは『攻性強化』を使用しており、イヴァンの攻撃は通常より多くのダメージをゾンビに与える。
「……凄い匂いだな、ここまで腐ったような匂いが届く」
ダナンは腐敗臭に眉根を寄せながら呟くが、最も近い距離で戦っているイヴァンは腐敗臭も、醜悪な姿も、全く意に介してしないようで、表情を変えていない。
「腕と下顎を潰せば安全か……しかし、その前に首を折るか落とした方が早いようだ」
ゾンビから吐き出される体液を器用に避けながら、イヴァンが呟く。
「イヴァン! 離れろ!」
ダナンの声を合図に、イヴァンはゾンビから離れる。
すると『攻性強化』で攻撃力を高めた『機導砲』を、ダナンがゾンビにぶっ放す。ダナンの攻撃はゾンビの腕をもぐほど強力で、そのまま地面へと倒れ込んだ。
そして、その一瞬の隙を見逃す2人でもなく、互いに攻撃をし合い、1匹目のゾンビを無事に退治する事が出来た。
※エルドレッド&足立
「今回はよろしくな、俺は後衛だから前衛は任せたぜ?」
「了解、しかしゾンビか……弱点とかなさそうだな。腐った心臓や目が弱点になるとも思えないし、やはり動かなくなるまで斬り伏せる方が確実なのかもしれないね」
エルドレッドの言葉に、足立はため息混じりに呟く。こちらでの実戦経験が多ければ、多少なりとも対策が立てられたのだろうが、あいにく皆が初任務で、なるようにしかならない……というのが現状だ。
「……あんまり気分の良くねぇ場所だな」
エルドレッドは地面を見ながら、眉根を寄せる。地面の至る場所に赤黒い染みが出来ていて、それが人間の血である事は容易に想像が出来る。
「結構な量だ、どれだけの怪我人、犠牲者が出たのか……想像したくないね。見知らぬ人間の敵討ちなんて柄じゃないからあたしは目の前の敵を倒す、ただそれだけに集中するよ」
足立は『ロングソード』を構え、少し遠くにいるゾンビをきつく睨みつけ『踏込』を使用して、雑魔との距離を詰める。
「ハートをぶち抜くぜ? ……って、ゾンビに言うと色気ないこと夥しいな」
エルドレッドは装備した『ボウ』を引き絞って、しっかりと狙いを定め、放つ。
「はぁっ!」
エルドレッドの攻撃が雑魔の足を止め、足立は『強打』を使用して、攻撃を行う。
「お前らにも事情があるのかもしれないが――……人を害するお前達は、これ以上ここにいてはいけないんだ」
エルドレッドが悲壮な声で呟く。その言葉は、あまりにもか細くて足立の耳には届かなかったが、エルドレッドの心情が深く滲んだ言葉だった。
「…腕と足を失えば、さすがに移動は出来ないだろう」
足立はゾンビの腕と足を斬り落とし、地面で身体を捩って暴れるゾンビを見下ろす。両手両足を失ったゾンビは口で足立の足に噛みつこうとしたが、エルドレッドの攻撃がそれを阻み、ゾンビの頭に、足立は『ロングソード』を突き刺した。
※柊崎&ハイネ
「う~……やっぱり、凄い匂いなんだよ」
手で鼻を覆いながら、柊崎は我慢ならないのか涙混じりの声で呟く。
「確かに凄い匂いですね、ゾンビの腐敗臭がほとんどですが……血の匂いも、酷い」
柊崎の言葉を聞き、ハイネは眉をひそめながら呟く。
「ボクは近づきすぎないようにするね、接近戦は得意じゃないし……」
何よりゾンビだし、と柊崎はボソッと言葉を付け足す。確かに接近戦が得意ではないのは事実だろうが、何となく後ろに回るのは付け足した言葉が本音のような気がする。
「女性にはきついでしょうね、僕がやれる所までやりますし……後ろは任せますね」
「うん、任されたんだよ……って所で、行ってみよう!」
まるでゾンビ映画のような醜悪な姿の物が目の前に立ち、2人は戦闘態勢を取る。
(これはゲームオーバーになったらそれまで……やり直しは、きかないんだよ)
自分の心に強く言い聞かせて『オートマチックピストル』を構え、ゾンビに向けて発砲する。
「……行きます」
柊崎の攻撃で、ゾンビの注意を彼女に向けた後、ハイネは『ランアウト』を使用して、命中率を高めた後、ゾンビの横から『ショートソード』を横に薙ぐ。
攻撃を仕掛けた後は、すぐにゾンビから離れ『強弾』で拳銃の威力を高めた柊崎の攻撃が再びゾンビに当たる。
「……もしかしたら、貴方にも待っている人はいるのかもしれませんね。けど、あなたはもう死んでいるのだから……終わらせる、貴方の事を知る、生きている人達のために」
ハイネは小さな深呼吸をした後、頭を潰し、3体目のゾンビを退治した。
※アンゴルボダ&ライル
「ゾンビが5体に対して、俺達の班は4つ……1体あぶれる事になるから、急がないとな」
ライルは小さな声で呟き、左手に持った『ダガー』を見つめる。右手に持った『ロングソード』は囮にして、ライルの本命は右手の『ダガー』だった。
(上手く『ロングソード』の方に注意が向いてくれるといいんだが……)
思わず漏れたため息に「……大丈夫です」とアンゴルボダが呟く。
「……私達の班は、近接のみですが……それだけ、火力があります」
確かにアンゴルボダの言う通りかもしれない。近接組の2人が一気に押せば、短期決戦も夢ではないのだから。
「そうだな、さっさと倒してあぶれたゾンビの所に行かなくちゃな」
ライルは苦笑気味に呟き『ショートソード』をグッと握りしめた。
「……行きます」
ゾンビの姿を確認して、アンゴルボダは覚醒を行い『ウォーハンマー』を持つ腕に、幾何学模様的なものが浮かび上がってくる。
そして、そのままゾンビに向かって駆けだした。
「……っ」
身体中が腐っているせいか、動きそのものは早くないが、逆に鈍すぎてタイミングを合わせづらいくらいだった。
だが、アンゴルボダはゾンビの動きを観察して『ウォーハンマー』で攻撃を防ぎながら、ちらり、とライルに視線を向けた。
アンゴルボダの役割は引きつける事であり、ライルが攻撃する隙を作る事だった。
「よし……」
ゾンビの注意がアンゴルボダに向いている時、ライルが『ロングソード』を大きく振りかぶる。
だが、ゾンビはライルの攻撃を避け、2人から離れ、やや警戒をしているように見える。けれど、それこそがライルの目的だった……『ロングソード』を大きく振りかぶれば、ゾンビの注意は『ロングソード』だけに向かう。
そうなれば、右手に持っている『ダガー』への警戒が薄れ、一気にカタをつける事が出来るから。
「……!」
アンゴルボダの攻撃で、ゾンビのバランスが崩れる。
それを合図に、ライルとアンゴルボダは同時に攻撃を繰り出し、無事に4体目のゾンビを倒したのだった。
●最後に残されたゾンビ
ハンター達がゾンビを倒したのは、ライル達の班が一番早く倒し、他の3班はほぼ同じ頃にゾンビを倒していた。
「最後に残ったからって、特別強いってわけでもなさそうだ。さっさと終わらせようぜ」
ダナンは『ジャンクガン』を構え、ゾンビの移動手段である足を奪う。
「おっと、それ以上は進ませないんだよ……!」
這いつくばって移動しようとするゾンビに、柊崎が『オートマチックピストル』を発砲して、手の甲を撃つ。
それと同時に、ハイネ、イヴァン、足立がゾンビへと駆け寄り、そのまま身体を切り刻み、5体目のゾンビを倒して、無事に任務終了となった。
「さすがに1体に対して、全員で行けばすぐに決着がつくな」
エルドレッドは苦笑気味に呟き、自分達が倒したゾンビ達に向かって十字を切る。
「死んだ後にあの世があるかどうかは分からないが――……願わくば、心安らかにって事でな? ……まぁ、我ながら似合わないとは思うけど」
エルドレッドの言葉に「遺留品があれば持ち帰ろう」とイヴァンが呟く。
「……ん? 何してんだ?」
足立が何かをしているのを見つけ、エルドレッドが問い掛ける。
「被害状況を端末に入力しているんだ、向こうでは兵士のヘルメットにカメラが仕込んであって行動のすべてが記録として残るんだが、こちらでは無理だからね」
パルムでもいれば違うのかもしれないけど、と足立は困ったように答えた。
「遺体は埋葬して帰ろう、これをこのままにするのは……さすがに惨いからね」
「ボクも手伝うんだよ。一応、そのためにスコップ持って来たし」
足立の言葉に、柊崎が軽く手を挙げながら呟く。
「僕は、遺留品を探します。少しでも遺族に届けられるものがあれば……」
ハイネが呟き、そっとアンゴルボダも頷く。どうやら彼女も弔いや遺留品探しをするつもりでいたらしい。
「俺も手伝うよ、まぁ、ぐちゃぐちゃだし……あんまり長くは持っていたくねーけど」
ダナンは苦笑気味に呟き、散らばったアクセサリーなどを拾い始める。
それから数時間後、すべての遺留品を拾い終わった後、イヴァンの提案により、周辺の警戒と確認を行った後、ハンター達は本部へと帰還していった――……。
END
「出発する前に確認しときてー事があるんだが……これ、噛まれたら感染るのか?」
ダナン=オーガット(ka0214)が資料を読みながら呟く。その辺の事は資料に書かれておらず、ダナンが不思議に思うのも無理はないだろう。
「どうだろう? だが、死者が歩いて人を食う……悪い冗談のような光景だな」
小さなため息を吐きながら、イヴァン・レオーノフ(ka0557)は眉をひそめながら答える。
「ゾンビの群れ、な。何を思いそこにいて、人を狩る事で何を思うのか……まァ、俺には想像し得ない何かがあるのかもしれないが、とりあえず放っておいていいもんじゃねェな」
エルドレッド・ディアルティア(ka0560)は複雑そうな表情を見せる。そのゾンビの『元』になったのが何なのかを気にしているのだろうか。
「死体は死体、生きながら焼かれる奴もいれば食われる奴もいる。どんな凄惨な姿であろうと、敵であれば……敵がいれば、倒すのみ」
足立 真(ka0618)は呟いた後、強く唇を噛む。その表情からは様々な感情が読み取れるが、戦う意志だけはしっかりと刻まれていた。
「……ゾンビの群れかぁ、ホラーゲームはよくやったけど……まさか、リアルで相手するとは思ってなかったんだよ……むー、どうすれば倒せるのかな?」
柊崎 風音(ka1074)は、かくりと首を傾げながら呟く。自分達がこの世界にいる事も、まだゲームのような感覚で考えているのかもしれない。
「今さら、ゾンビが出てきても驚かないですよ……まぁ、ゾンビというからには、元々生きた人間だったのかもしれませんけど」
ハイネ・ブランシェ(ka1130)は淡々とした口調で呟く。歪虚侵攻、異世界への漂着、それらの事実がハイネから驚きを取っているのだろう。
(……でも、昔いた場所で人が死んでいったのを思い出して、いい気分はしないですね)
ハイネは拳を強く握り締めながら、やりきれない思いを胸に抱える。
そして、もう一人、やりきれなさを抱えるハンターがいる。白い髪をなびかせ、その華奢な身体には不釣り合いな武器を抱える少女、アンゴルボダ(ka1930)だった。
(……せめて、その場に居合わせたらと思うのは詮無き事なんでしょうね。失われた命が戻る訳ではありませんが……灰は灰に、塵は塵に返さねばなりません)
「ゾンビね、俺達は与えられた仕事をこなすだけだけど……まぁ、どうなる事やら」
ライル・ギルバート(ka2077)は苦笑気味に呟き、小さなため息を零した。
「噛まれたら感染るかどうかも含めて調査になるのか、自分から噛まれる事はしねーけど。願うのは、このゾンビが飛んだり走ったりしねー事くらいかね」
情報の少ない資料を読みながら、ダナンは呟き、ハンター達はゾンビがうろつく荒野に向かい始めた――……。
●死者の歩く場所
ハンター達がやってきたのは、まさにゾンビが徘徊するに相応しい暗く濁った場所。
荒野に着いた時から、数体のゾンビがうろついているのが分かる。
「ゾンビはばらけているのか、作戦通り分かれて行動するしかないな」
ライルが面倒そうに呟く。ハンター達は5体のゾンビに対して、班を4つに分けるという作戦を取っていた。
ダナンとイヴァン、エルドレッドと足立、柊崎とハイネ、アンゴルボダとライル。
それぞれ分かれて行動をして、確実に一体ずつは倒す、という作戦を立てている。その場合1体が残ってしまうのだが、それは余力のある者が倒す……という事になっている。
「めんどくせえ相手ではあるが、きっちりとカタをつけるかねぇ」
エルドレッドが呟き、ハンター達は荒野にばらけているゾンビめがけて駆けだした。
※ダナン&イヴァン
「何か面倒だなぁ、調査手当てと怪我を負った場合、美人ナースの手当てを要求してぇ」
「このような惨状を見て、冗談を言える余裕があるとは凄いな」
ダナンの言葉に、イヴァンが少し口の端を持ち上げながら呟く。
「そういうイヴァンこそ、余裕があるように見えるが?」
「余裕というか、ただ問題を感じないだけだ。自分は、こういう仕事には慣れている」
「まぁ、その傷を見れば分かるけどなー、お互いに頑張ろうや」
イヴァンの肩を軽く叩きながら、ダナンはにかっと笑った。
「さて、おいでなすったな……」
「仕事、として対処させてもらおう」
よろよろと近づいてくるゾンビに、2人は戦闘態勢を取る。
イヴァンは『踏込』を使用して、ゾンビに近づき『ロングソード』を大きく振り上げる。
その時、ダナンは『攻性強化』を使用しており、イヴァンの攻撃は通常より多くのダメージをゾンビに与える。
「……凄い匂いだな、ここまで腐ったような匂いが届く」
ダナンは腐敗臭に眉根を寄せながら呟くが、最も近い距離で戦っているイヴァンは腐敗臭も、醜悪な姿も、全く意に介してしないようで、表情を変えていない。
「腕と下顎を潰せば安全か……しかし、その前に首を折るか落とした方が早いようだ」
ゾンビから吐き出される体液を器用に避けながら、イヴァンが呟く。
「イヴァン! 離れろ!」
ダナンの声を合図に、イヴァンはゾンビから離れる。
すると『攻性強化』で攻撃力を高めた『機導砲』を、ダナンがゾンビにぶっ放す。ダナンの攻撃はゾンビの腕をもぐほど強力で、そのまま地面へと倒れ込んだ。
そして、その一瞬の隙を見逃す2人でもなく、互いに攻撃をし合い、1匹目のゾンビを無事に退治する事が出来た。
※エルドレッド&足立
「今回はよろしくな、俺は後衛だから前衛は任せたぜ?」
「了解、しかしゾンビか……弱点とかなさそうだな。腐った心臓や目が弱点になるとも思えないし、やはり動かなくなるまで斬り伏せる方が確実なのかもしれないね」
エルドレッドの言葉に、足立はため息混じりに呟く。こちらでの実戦経験が多ければ、多少なりとも対策が立てられたのだろうが、あいにく皆が初任務で、なるようにしかならない……というのが現状だ。
「……あんまり気分の良くねぇ場所だな」
エルドレッドは地面を見ながら、眉根を寄せる。地面の至る場所に赤黒い染みが出来ていて、それが人間の血である事は容易に想像が出来る。
「結構な量だ、どれだけの怪我人、犠牲者が出たのか……想像したくないね。見知らぬ人間の敵討ちなんて柄じゃないからあたしは目の前の敵を倒す、ただそれだけに集中するよ」
足立は『ロングソード』を構え、少し遠くにいるゾンビをきつく睨みつけ『踏込』を使用して、雑魔との距離を詰める。
「ハートをぶち抜くぜ? ……って、ゾンビに言うと色気ないこと夥しいな」
エルドレッドは装備した『ボウ』を引き絞って、しっかりと狙いを定め、放つ。
「はぁっ!」
エルドレッドの攻撃が雑魔の足を止め、足立は『強打』を使用して、攻撃を行う。
「お前らにも事情があるのかもしれないが――……人を害するお前達は、これ以上ここにいてはいけないんだ」
エルドレッドが悲壮な声で呟く。その言葉は、あまりにもか細くて足立の耳には届かなかったが、エルドレッドの心情が深く滲んだ言葉だった。
「…腕と足を失えば、さすがに移動は出来ないだろう」
足立はゾンビの腕と足を斬り落とし、地面で身体を捩って暴れるゾンビを見下ろす。両手両足を失ったゾンビは口で足立の足に噛みつこうとしたが、エルドレッドの攻撃がそれを阻み、ゾンビの頭に、足立は『ロングソード』を突き刺した。
※柊崎&ハイネ
「う~……やっぱり、凄い匂いなんだよ」
手で鼻を覆いながら、柊崎は我慢ならないのか涙混じりの声で呟く。
「確かに凄い匂いですね、ゾンビの腐敗臭がほとんどですが……血の匂いも、酷い」
柊崎の言葉を聞き、ハイネは眉をひそめながら呟く。
「ボクは近づきすぎないようにするね、接近戦は得意じゃないし……」
何よりゾンビだし、と柊崎はボソッと言葉を付け足す。確かに接近戦が得意ではないのは事実だろうが、何となく後ろに回るのは付け足した言葉が本音のような気がする。
「女性にはきついでしょうね、僕がやれる所までやりますし……後ろは任せますね」
「うん、任されたんだよ……って所で、行ってみよう!」
まるでゾンビ映画のような醜悪な姿の物が目の前に立ち、2人は戦闘態勢を取る。
(これはゲームオーバーになったらそれまで……やり直しは、きかないんだよ)
自分の心に強く言い聞かせて『オートマチックピストル』を構え、ゾンビに向けて発砲する。
「……行きます」
柊崎の攻撃で、ゾンビの注意を彼女に向けた後、ハイネは『ランアウト』を使用して、命中率を高めた後、ゾンビの横から『ショートソード』を横に薙ぐ。
攻撃を仕掛けた後は、すぐにゾンビから離れ『強弾』で拳銃の威力を高めた柊崎の攻撃が再びゾンビに当たる。
「……もしかしたら、貴方にも待っている人はいるのかもしれませんね。けど、あなたはもう死んでいるのだから……終わらせる、貴方の事を知る、生きている人達のために」
ハイネは小さな深呼吸をした後、頭を潰し、3体目のゾンビを退治した。
※アンゴルボダ&ライル
「ゾンビが5体に対して、俺達の班は4つ……1体あぶれる事になるから、急がないとな」
ライルは小さな声で呟き、左手に持った『ダガー』を見つめる。右手に持った『ロングソード』は囮にして、ライルの本命は右手の『ダガー』だった。
(上手く『ロングソード』の方に注意が向いてくれるといいんだが……)
思わず漏れたため息に「……大丈夫です」とアンゴルボダが呟く。
「……私達の班は、近接のみですが……それだけ、火力があります」
確かにアンゴルボダの言う通りかもしれない。近接組の2人が一気に押せば、短期決戦も夢ではないのだから。
「そうだな、さっさと倒してあぶれたゾンビの所に行かなくちゃな」
ライルは苦笑気味に呟き『ショートソード』をグッと握りしめた。
「……行きます」
ゾンビの姿を確認して、アンゴルボダは覚醒を行い『ウォーハンマー』を持つ腕に、幾何学模様的なものが浮かび上がってくる。
そして、そのままゾンビに向かって駆けだした。
「……っ」
身体中が腐っているせいか、動きそのものは早くないが、逆に鈍すぎてタイミングを合わせづらいくらいだった。
だが、アンゴルボダはゾンビの動きを観察して『ウォーハンマー』で攻撃を防ぎながら、ちらり、とライルに視線を向けた。
アンゴルボダの役割は引きつける事であり、ライルが攻撃する隙を作る事だった。
「よし……」
ゾンビの注意がアンゴルボダに向いている時、ライルが『ロングソード』を大きく振りかぶる。
だが、ゾンビはライルの攻撃を避け、2人から離れ、やや警戒をしているように見える。けれど、それこそがライルの目的だった……『ロングソード』を大きく振りかぶれば、ゾンビの注意は『ロングソード』だけに向かう。
そうなれば、右手に持っている『ダガー』への警戒が薄れ、一気にカタをつける事が出来るから。
「……!」
アンゴルボダの攻撃で、ゾンビのバランスが崩れる。
それを合図に、ライルとアンゴルボダは同時に攻撃を繰り出し、無事に4体目のゾンビを倒したのだった。
●最後に残されたゾンビ
ハンター達がゾンビを倒したのは、ライル達の班が一番早く倒し、他の3班はほぼ同じ頃にゾンビを倒していた。
「最後に残ったからって、特別強いってわけでもなさそうだ。さっさと終わらせようぜ」
ダナンは『ジャンクガン』を構え、ゾンビの移動手段である足を奪う。
「おっと、それ以上は進ませないんだよ……!」
這いつくばって移動しようとするゾンビに、柊崎が『オートマチックピストル』を発砲して、手の甲を撃つ。
それと同時に、ハイネ、イヴァン、足立がゾンビへと駆け寄り、そのまま身体を切り刻み、5体目のゾンビを倒して、無事に任務終了となった。
「さすがに1体に対して、全員で行けばすぐに決着がつくな」
エルドレッドは苦笑気味に呟き、自分達が倒したゾンビ達に向かって十字を切る。
「死んだ後にあの世があるかどうかは分からないが――……願わくば、心安らかにって事でな? ……まぁ、我ながら似合わないとは思うけど」
エルドレッドの言葉に「遺留品があれば持ち帰ろう」とイヴァンが呟く。
「……ん? 何してんだ?」
足立が何かをしているのを見つけ、エルドレッドが問い掛ける。
「被害状況を端末に入力しているんだ、向こうでは兵士のヘルメットにカメラが仕込んであって行動のすべてが記録として残るんだが、こちらでは無理だからね」
パルムでもいれば違うのかもしれないけど、と足立は困ったように答えた。
「遺体は埋葬して帰ろう、これをこのままにするのは……さすがに惨いからね」
「ボクも手伝うんだよ。一応、そのためにスコップ持って来たし」
足立の言葉に、柊崎が軽く手を挙げながら呟く。
「僕は、遺留品を探します。少しでも遺族に届けられるものがあれば……」
ハイネが呟き、そっとアンゴルボダも頷く。どうやら彼女も弔いや遺留品探しをするつもりでいたらしい。
「俺も手伝うよ、まぁ、ぐちゃぐちゃだし……あんまり長くは持っていたくねーけど」
ダナンは苦笑気味に呟き、散らばったアクセサリーなどを拾い始める。
それから数時間後、すべての遺留品を拾い終わった後、イヴァンの提案により、周辺の警戒と確認を行った後、ハンター達は本部へと帰還していった――……。
END
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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依頼相談掲示板 | |||
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作戦相談 アンゴルボダ(ka1930) ドワーフ|12才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/06/17 10:52:46 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/06/11 23:10:33 |