ゲスト
(ka0000)
巡礼者を襲う黒いオオカミ
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/07/09 22:00
- 完成日
- 2016/07/16 11:52
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●新たな歪虚の影……?
聖堂戦士団所属のファリーナ・リッジウェイ(kz0182)は頭を悩ませる。
「はぁ……」
日々の業務に当たる彼女。まだまだ下っ端ということもあり、雑務関連の仕事も多い。
その彼女を悩ます問題の1つが、巡礼者の護衛任務である。
王都イルダーナ内であれば、歪虚はもちろんのこと、彼らが持つ金品狙いの夜盗などの対処を行う必要があろうが、王都外となれば話も変わる。
王都外に人を派遣すれば、それだけ王都の守りなどの人手は減ってしまう。ただでさえ人手は足りない状況。それはできるだけ避けたい状況だ。
しかしながら、歪虚や雑魔はそういう状況をついて現れ、事件を引き起こす。
つい先日、王都へと向かっていた巡礼者4人とハンター2人がオオカミ型雑魔に襲われたという。
全長が3メートル余りあるオオカミは全身がどす黒く、5体の群れで襲い掛かってきたという。
幸い、ハンターが撃退したものの、由々しき事態だと聖堂教会も感じていたようだ。これが続けば、巡礼者の数の減少も懸念される。それだけはなんとしても避けたい。
しかしながら、王都の守りや実務などで現状聖堂戦士団は手一杯で、あまり人手を割く余裕もない。こういった状況が、現場で働く団員達の頭を悩ませるのである。
「そこで、皆さんにお願いしたいのです」
ファリーナは、もはや行きつけとなりかけていた王都のハンターズソサエティにやってきて、詰めていたハンター達へと事情を説明する。
オオカミが現れるのは王都イルダーナの東、リンダールの森に近い街道だ。
現場は開けた場所だ。ほぼ木々などのない草原の真ん中にある街道で、オオカミは襲撃してくる。
「オオカミの数は3~7体と見られています」
ただ、敵は非常に狡猾で、通りがかる人の数によって襲撃するオオカミの数を調整するようなのだ。
普通にオオカミを誘い出せば、参加するハンターの数で判断し、オオカミは襲ってくるだろう。だが、うまくそれを利用できれば……。
「すみません。私達が討伐できればよいのですが」
何せ、人手不足は深刻だ。下っ端の彼女はほぼフル稼働で実務に当たっている。もう少し、人材育成が進めば違うだろうが、今しばらく時間がかかる。
だが、現地点で、このオオカミの対策を講じないわけにも行かない。
先日、歪虚が生み出したスケルトンによって滅ぼされた集落があったという。その集落民は全員、無残に屍をさらしていたという。
「これ以上、被害に遭う人々を増やすわけには行きません」
話を聞き、心を痛めていたファリーナ。現状でも、歪虚、雑魔対策はできる範囲であってもやっておきたいと彼女は語る。
「お手数かけて申し訳ありません。よろしくお願いいたします」
ファリーナはそうして、ハンターへと頭を下げるのだった。
聖堂戦士団所属のファリーナ・リッジウェイ(kz0182)は頭を悩ませる。
「はぁ……」
日々の業務に当たる彼女。まだまだ下っ端ということもあり、雑務関連の仕事も多い。
その彼女を悩ます問題の1つが、巡礼者の護衛任務である。
王都イルダーナ内であれば、歪虚はもちろんのこと、彼らが持つ金品狙いの夜盗などの対処を行う必要があろうが、王都外となれば話も変わる。
王都外に人を派遣すれば、それだけ王都の守りなどの人手は減ってしまう。ただでさえ人手は足りない状況。それはできるだけ避けたい状況だ。
しかしながら、歪虚や雑魔はそういう状況をついて現れ、事件を引き起こす。
つい先日、王都へと向かっていた巡礼者4人とハンター2人がオオカミ型雑魔に襲われたという。
全長が3メートル余りあるオオカミは全身がどす黒く、5体の群れで襲い掛かってきたという。
幸い、ハンターが撃退したものの、由々しき事態だと聖堂教会も感じていたようだ。これが続けば、巡礼者の数の減少も懸念される。それだけはなんとしても避けたい。
しかしながら、王都の守りや実務などで現状聖堂戦士団は手一杯で、あまり人手を割く余裕もない。こういった状況が、現場で働く団員達の頭を悩ませるのである。
「そこで、皆さんにお願いしたいのです」
ファリーナは、もはや行きつけとなりかけていた王都のハンターズソサエティにやってきて、詰めていたハンター達へと事情を説明する。
オオカミが現れるのは王都イルダーナの東、リンダールの森に近い街道だ。
現場は開けた場所だ。ほぼ木々などのない草原の真ん中にある街道で、オオカミは襲撃してくる。
「オオカミの数は3~7体と見られています」
ただ、敵は非常に狡猾で、通りがかる人の数によって襲撃するオオカミの数を調整するようなのだ。
普通にオオカミを誘い出せば、参加するハンターの数で判断し、オオカミは襲ってくるだろう。だが、うまくそれを利用できれば……。
「すみません。私達が討伐できればよいのですが」
何せ、人手不足は深刻だ。下っ端の彼女はほぼフル稼働で実務に当たっている。もう少し、人材育成が進めば違うだろうが、今しばらく時間がかかる。
だが、現地点で、このオオカミの対策を講じないわけにも行かない。
先日、歪虚が生み出したスケルトンによって滅ぼされた集落があったという。その集落民は全員、無残に屍をさらしていたという。
「これ以上、被害に遭う人々を増やすわけには行きません」
話を聞き、心を痛めていたファリーナ。現状でも、歪虚、雑魔対策はできる範囲であってもやっておきたいと彼女は語る。
「お手数かけて申し訳ありません。よろしくお願いいたします」
ファリーナはそうして、ハンターへと頭を下げるのだった。
リプレイ本文
●オオカミの誘い出し
王都イルダーナ東の街道。
ハンター達は最寄りのハンターズソサエティを経由し、街道を歩いてオオカミの群れが現れる現場を目指す。
「道っていうのは生活の要だ。人はもちろん荷物も移動にも欠かせない」
そんなところに陣取るオオカミに、アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)はやれやれと嘆息する。
「最近は……どうなっているんでしょうね?」
スケルトン騒ぎの次は、オオカミ型の雑魔。天央 観智(ka0896)は、このところグラズへイム王国内で起きる事件について考える。
全ての事象には原因が存在している。これも理由もなく起こっているわけではないのだろうと観智は推測していた。
「ただ、対処療法では、キリが無くなるだけ……な気もしますね。原因や理由も捜して、対処しないと」
それを聞いていた、南條 真水(ka2377)。まだまだ、この国も落ち着きは見せないなと感じていたようだ。
「さて、それじゃあ悪いオオカミさんをお仕置きしに行こうか。赤ずきんちゃんが食べられてしまう前にね」
赤ずきんちゃん……巡礼者を守る為に、一行はオオカミを狩りに向かう。
一行はしばらく、現場となる街道を歩く。
しばらくはオオカミの出現待ちをするしかないのが実情だ。
「狼か。奴らは敵だ。兎の天敵だ。飼い狼ならばまだしも……滅ぼさねばならない……!」
「獲物が私を待っている……全ては私の愉しみの為に」
玉兎 小夜(ka6009)、不動シオン(ka5395)のように、オオカミの殲滅に意欲を見せる仲間もいる中、真水はとりあえず、オオカミが現れるまでのんびり歩くことにしていた。
「思想は違えど、同じように巡礼される方々の一助となれましたら」
ルーネ・ルナ(ka6244)は改めて、仲間達へと自己紹介をする。彼女は演技ではなく、本当に巡礼者としてこの依頼に参加していた。
「最近この辺りで、オオカミの化け物に襲われる被害が出てるらしい……。怖いし、さっさと通り抜けたいぜ」
一方の鳳凰院ひりょ(ka3744)は、本当にというべきか、巡礼者を装っている。
「まぁ、こっちにはハンターが護衛に着いてくれているんだ。な、なんとかなるよな?」
相手を油断させる為に少々浴びえる振りをして、ひりょはオオカミを釣り出そうとする。
(多少なりとも、血の臭いを消せればいいが……)
巡礼者を演じる為に。普段、ハンターとして雑魔の相手をするひりょは、一般人よりも血の臭いを纏っている可能性があると考える。その為、開封したティーバッグを、芳香剤代わりにポケットに放り込んでいた。
同様に、ルーネは荷物にチーズと干し肉を忍ばせていたようだ。これで油断した美味しい餌に見えるかもと思いつつ。
(さて、相手がハンターの数を判断材料にしているのか、それとも単純に人数だけを見ているのか……)
ひりょは思う。相手は巡礼者を狙っているのか、それとも。それは、つり出す敵の数で判断できるはずだ。
ハンター達は一緒になって、街道を歩いていく。
歩くメンバーの中には、バイクを押すシオン、ショウコ=ヒナタ(ka4653)や、馬を引くアルトの姿もある。
ショウコはバイクを1速入れた状態にして、仲間と足並みを揃えて徒歩で行軍する。敵が四方から襲ってきても対処できるようにと、彼女はやや後方に位置していた。相手はオオカミ。集団での狩りには慣れているはず。油断するわけには行かない。
アルトは、馬を引いていた。降りて戦うことを想定し、予め下馬していたのだ。
その上で、アルトはひりょと同様、震える動作をしたり、引け腰になったりして、獲物と認識させるような演技をしていた。これで釣れるならば儲け物だ。
視界は全方位に開けた場所。メンバー達は前後左右に神経を張り詰める。
「うーさぎー。うさぎー」
「歌はそこまでだ、来るぞ」
てってけーと陽気に歌い歩く小夜を、ショウコが遮る。小夜も、右後方から駆けて来る黒一団に気づいた。
遠方に現れた7体のオオカミは、獲物を見定めて走ってきている。できる限り多くのオオカミを釣り出そうと考えていた一行としては、願ったり叶ったりだ。
「近づいてきますね、それなら……」
後はこれらを倒すのみ。観智は敵が接近してくるのをじっと待ちつつ、いつでも火球を飛ばせるよう構えを取った。
小夜も覚醒して頭から兎耳を生やし、すらりと腰の刀を抜く。
オオカミの群れは徐々に大きくなっていく。それにつれ、3メートルも個々のオオカミの大きさをハンター達は実感するのだった。
●黒く巨大なオオカミ達
爛々と目を輝かせ、オオカミは口元から涎を垂らして疾走してくる。
「狼? いや駄犬でいいな?」
マテリアルで移動力を高めたアルトは強く地面を踏みしめ、オオカミへと近づいていく。そして、彼女は超重刀「ラティスムス」で自身の駆け抜ける直線上の敵を、特に足を狙って切り刻む。
「私を相手に、その数でどうにかできると思うなよ?」
アルトはオオカミ達へと不敵に笑いかけた。少しは楽しませろよ、と。
近づいてきたオオカミはその巨体でタックルを仕掛け、別の個体は爪で薙ぎ払ってくる。
戦場となるこの場は平地。敵の大きさから見ても、囲まれることになるのかなと真水はぼんやり考える。ぐるぐるメガネを吊り上げた彼女は魔術具である八卦鏡「止水」を使い、前方へ扇状に炎の力を放射していく。
ある程度敵が接近してきたのを見計らった観智は火球を放り込み、多くのオオカミを巻き込む。炎は瞬時に消えてしまうが、オオカミはそれによって煽られ、ダメージを受けていた。
しかしながら、相手は雑魔。多少傷を負ったところで、オオカミは接近戦を仕掛けてくるようだ。観智はオオカミと一定の距離を取るべく動き回る。射程を行かし、相手の攻撃が届く間合いを避けようと彼は考えていたのだ。
逆に、積極的に前に出ていたのは、魔導バイクを駆るシオンだ。その上で、彼女はオートマチック「エヘールシト」でオオカミに弾丸を叩き込んでいく。
「戦え、狼ども。獲物として、ハンターたるこの私と!」
移動しながらもシオンは自身の力を高めていき、獲物を槍に持ち替える。そして、彼女は上段から渾身の一撃を振り下ろした。
戦うシオンは嬉々としていた。強敵と戦い、闘争を愉しみ、報酬を得る。それが荒事請負人たる彼女の生き方だ。
如何なる相手であっても、シオンのスタイルは変わらない。彼女は闘争の愉しみと報酬の為、容赦なく十文字槍「人間無骨」を振るってゆく。一撃を与えれば、敵の攻撃を警戒して彼女はすぐさまその場から離脱していた。
ショウコは敵の接近まで、試作型特殊魔導拳銃「憤慨せしアリオト」の引き金を引き続けていた。
敵がいかなる状況から攻めてきてもいいように、ショウコは背後にバイクを置いて盾としていた。攻め込みはしてくるが、まだ敵に背後を取られることはない。
オオカミが前足を上げたタイミング。それを狙ったショウコは撃った銃弾をマテリアルで加速させ、手近なオオカミを撃ち貫く。
その敵の体勢が大きく崩れるのを、小夜は見逃さない。
「狼、嫌いだ! 首刈って、兎には勝てぬということをその魂に思い知らせてやる!!」
自らを「首狩り兎」と名乗る彼女が狙うは、オオカミの首だ。
「ヴォーパルバニーが、刻み、刈り獲らん!」
彼女は両手で握り締めた斬魔刀「祢々切丸」を大きな所作で振り下ろす。狙い通りにその首を討ち取り……そいつは霧散するように消えていった。
だが、1体が失われようとも、群れの進軍は止まらない。どうやら、巡礼者に狙いを定める個体もいる。
巡礼者を装うルーネは敢えて、仲間から遅れるようにして立ち回っていた。自身に近づいてきたオオカミを誘導する様、動く。そうして、ポケットの肉に気を取られた敵はルーネごと噛み付こうとしてくる。
それはルーネの狙い通り。彼女は大きく口を開いたオオカミの眉間へ、スラッシュアンカーの錨を深々と埋め込む。
同じく、巡礼者の振りをしていたひりょは、怯え、逃げ惑い続けていた。
ひりょはそんな演技を見せつつも、動き回り続ける。仲間がオオカミを狙いやすいように、相手を誘導していたのだ。
敵が十分に近づくと、ひりょは名刀『虹』にマテリアルを篭めて振り抜き、衝撃波を手前のオオカミへと浴びせかけた。
相手がただの巡礼者でないことを知ったオオカミだが、勢いのまま、ハンター達へとその牙や爪を向けてくるのである。
●撃退こそすれど……
オオカミはその大きな体躯に関わらず軽やかに跳躍し、毒爪で素早く薙ぎ払い、麻痺牙で勢いよく喰らいついてくる。前面の広い範囲へと叩きつける体当たりはハンター達に大ダメージを与えてきた。
ルーネはその中でも、麻痺が厄介だと考えている。徐々にハンターの包囲網を敷いてくるオオカミの攻撃を防ぐ仲間の為にと、体を痺れさせる仲間へと光を纏わせてその不浄を取り払うよう努める。
敵の俊敏さを注意していたアルト。確かに素早い動きは武器にもなるが、ターニングの際はどうしても足が止まるし、スピードが乗っていると方向転換ができない。
そうした疾影士視点での高速戦闘の弱点を踏まえ、アルトはオオカミに攻め入る。一直線に駆けて来る敵の攻撃を彼女は躱し、足が止まった敵をメインに周辺の敵を含めて刀で薙ぎ払う。
対する敵は連携攻撃を行う。2体がほぼ同時に、小夜へと仕掛けてきた。
「頭を使ったな! だが、無駄だぁっ!」
彼女はその2体と周辺のオオカミを、「祢々切丸」で切りまくる。その間も、首を狙うのを忘れないのは、さすがヴォーパルバニーといったところか。
乱戦になってきていたのは、真水の予測通りだ。仲間達の善戦もあって、押される状況まで追い込まれることはなさそうだ。
真水はフリーになっている敵を見つけては、光の三角形から伸びる光線で敵を貫いていく。唸る毒の爪を反撃で喰らうことはあれど、ぐるぐるメガネだけは絶対に死守しようとしているのは彼女らしい。
観智としては乱戦を避けたかったが、なにせ段差もほぼないだだっ広い場所。混戦状態となってしまうのは仕方ないことだった。
ただ、布陣をしっかりしていない分、自由に立ち回ることもできる。乱戦となった場所からはできるだけ距離を置き、仲間を巻き込まぬよう気をつけながら、観智は自身から伸びる雷撃でオオカミを貫いていく。
乱戦の最中にあるショウコはバイクを盾にしつつ、オオカミの挟撃を防ぐ。
その上で、彼女は持参してきたベルモットを自身の足元で叩き割った。それによって充満するブドウ酒の香り。戸惑うオオカミへ、ショウコは試作型特殊魔導拳銃「憤慨せしアリオト」の弾丸を叩き込み、さらに 「スキアタキオン」を装着した拳で殴りつける。
死角からの強力な一打を見舞われた敵は卒倒し、地面に崩れ落ちる前に消えてなくなった。
ショウコはすぐさま次の敵を見据える。彼女は敵の布陣、行動、統率力、中心、個体の大きさを観察し、群れのボスを見定めようとしていたのだ。
敵は連携攻撃を仕掛け、その威力もなかなかのものだが、それらに対処するハンター達は広範囲攻撃と個々への攻撃を行うメンバーが上手く噛み合って敵を追い込む。
動きの鈍ったオオカミを、ひりょが発生させた衝撃波で吹っ飛ばす。それによって、地面をもんどりうったそいつは転がるうちに消えていった。
ところで、半数近く倒すほど戦いを進めていたにも関わらず。オオカミの群れに統率をまるで感じないショウコ。
(ボスはいないのか……?)
状況に応じ、オオカミの数が変わるという話もあった。果たして、数が少ない場合であっても、常にその中にボスが居るのだろうか。
とにかく早期の殲滅を……敵の攻撃を刀でいなしつつ、ショウコがオオカミの鼻先に拳を叩き込むと、そこでオオカミ達は揃ってハンター達に背を向け始める。
「ちっ、逃がさないよ!」
ショウコはバイクに跨り、オオカミを追い始める。
まだ追いかけられる。そう判断したアルトは強く踏み込み、最後尾のオオカミの下半身を切り伏せた。真水も光の光線で撃ち貫き、ルーネは光の杭でそいつの体を地面に繋ぎ止める。
そいつ目がけ、水平に刀を構えた小夜は一気に間合いを詰め、敵を貫き斬る。
「死に物狂いでかかってこい。そうでなければ、この私が来た意味がない!」
全力で駆けつけてきたシオンは、十文字槍「人間無骨」の刃を渾身の力で振り下ろし、オオカミの体の半分を断ち切った。体力の費えたそいつは爆ぜるように姿がなくなってしまう。
そいつを倒したのはいいが、他3体のオオカミの姿はすでにかなり前方にあった。それを、観智が軍用双眼鏡で確認しながら追跡を行う。
そのままバイクで追い始めるシオン、ショウコ。アルトも馬に乗って駆け出す。真水は弓を持って矢を番え、完全に射程外に出てしまったオオカミを捕捉できなくなっていた。
「しょうがない。逃げる者は追わない。兎の美学。私は、な」
小夜は仲間が追っていく姿を見送る。ルーネもまた、追った仲間に追撃を託していた。
しばらく、オオカミを追っていた3人だが、ショウコは途中で追うのを止める。
「深追いは禁物だ。戻ろう」
オオカミが南へ逃げるのだけ確認し、ショウコは街道にいる仲間の元へと戻っていく。
だが、他の2人はさらに逃げるオオカミを追ってゆく。とりわけ、シオンは執拗に3体のオオカミを追い回していた。
「どうした、最後まで戦え!」
「待て、あれを……」
オオカミを追うシオンを呼び止めるアルト。
遠くに、こちらを見つめているオオカミの群れが見える。
その中央に一際大きな狼が見える。そいつらは逃げ行くオオカミと合流し、地平の彼方へと姿を消していった。
アフターサービスとして、オオカミの残党を狩りつくそうと考えていたアルト。しかしながら、あれだけのオオカミをたった2人で相手にするわけにもいかない。
そうこうしているうち、オオカミは全て姿を消してしまう。シオンはさらにバイクを走らせて追おうとするが。姿を眩ませたオオカミ達を捉えることは叶わなかった。
一方、戦場から街道へと戻ってきたハンター達。
「やはり兎は最強。狼なんかに負けないぞーーー!」
小夜は「祢々切丸」をブンブン振って、自らの、兎の勝利を吠え始める。オオカミがどんなにかかってこようとも。この吠え声で兎の脅威を知るだろうと、彼女は表情こそ替えはしないが、どんと胸を張っていた。
街道を守ったハンター達は当面のオオカミの撃退を喜びながらも、帰路についていくのだった。
王都イルダーナ東の街道。
ハンター達は最寄りのハンターズソサエティを経由し、街道を歩いてオオカミの群れが現れる現場を目指す。
「道っていうのは生活の要だ。人はもちろん荷物も移動にも欠かせない」
そんなところに陣取るオオカミに、アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)はやれやれと嘆息する。
「最近は……どうなっているんでしょうね?」
スケルトン騒ぎの次は、オオカミ型の雑魔。天央 観智(ka0896)は、このところグラズへイム王国内で起きる事件について考える。
全ての事象には原因が存在している。これも理由もなく起こっているわけではないのだろうと観智は推測していた。
「ただ、対処療法では、キリが無くなるだけ……な気もしますね。原因や理由も捜して、対処しないと」
それを聞いていた、南條 真水(ka2377)。まだまだ、この国も落ち着きは見せないなと感じていたようだ。
「さて、それじゃあ悪いオオカミさんをお仕置きしに行こうか。赤ずきんちゃんが食べられてしまう前にね」
赤ずきんちゃん……巡礼者を守る為に、一行はオオカミを狩りに向かう。
一行はしばらく、現場となる街道を歩く。
しばらくはオオカミの出現待ちをするしかないのが実情だ。
「狼か。奴らは敵だ。兎の天敵だ。飼い狼ならばまだしも……滅ぼさねばならない……!」
「獲物が私を待っている……全ては私の愉しみの為に」
玉兎 小夜(ka6009)、不動シオン(ka5395)のように、オオカミの殲滅に意欲を見せる仲間もいる中、真水はとりあえず、オオカミが現れるまでのんびり歩くことにしていた。
「思想は違えど、同じように巡礼される方々の一助となれましたら」
ルーネ・ルナ(ka6244)は改めて、仲間達へと自己紹介をする。彼女は演技ではなく、本当に巡礼者としてこの依頼に参加していた。
「最近この辺りで、オオカミの化け物に襲われる被害が出てるらしい……。怖いし、さっさと通り抜けたいぜ」
一方の鳳凰院ひりょ(ka3744)は、本当にというべきか、巡礼者を装っている。
「まぁ、こっちにはハンターが護衛に着いてくれているんだ。な、なんとかなるよな?」
相手を油断させる為に少々浴びえる振りをして、ひりょはオオカミを釣り出そうとする。
(多少なりとも、血の臭いを消せればいいが……)
巡礼者を演じる為に。普段、ハンターとして雑魔の相手をするひりょは、一般人よりも血の臭いを纏っている可能性があると考える。その為、開封したティーバッグを、芳香剤代わりにポケットに放り込んでいた。
同様に、ルーネは荷物にチーズと干し肉を忍ばせていたようだ。これで油断した美味しい餌に見えるかもと思いつつ。
(さて、相手がハンターの数を判断材料にしているのか、それとも単純に人数だけを見ているのか……)
ひりょは思う。相手は巡礼者を狙っているのか、それとも。それは、つり出す敵の数で判断できるはずだ。
ハンター達は一緒になって、街道を歩いていく。
歩くメンバーの中には、バイクを押すシオン、ショウコ=ヒナタ(ka4653)や、馬を引くアルトの姿もある。
ショウコはバイクを1速入れた状態にして、仲間と足並みを揃えて徒歩で行軍する。敵が四方から襲ってきても対処できるようにと、彼女はやや後方に位置していた。相手はオオカミ。集団での狩りには慣れているはず。油断するわけには行かない。
アルトは、馬を引いていた。降りて戦うことを想定し、予め下馬していたのだ。
その上で、アルトはひりょと同様、震える動作をしたり、引け腰になったりして、獲物と認識させるような演技をしていた。これで釣れるならば儲け物だ。
視界は全方位に開けた場所。メンバー達は前後左右に神経を張り詰める。
「うーさぎー。うさぎー」
「歌はそこまでだ、来るぞ」
てってけーと陽気に歌い歩く小夜を、ショウコが遮る。小夜も、右後方から駆けて来る黒一団に気づいた。
遠方に現れた7体のオオカミは、獲物を見定めて走ってきている。できる限り多くのオオカミを釣り出そうと考えていた一行としては、願ったり叶ったりだ。
「近づいてきますね、それなら……」
後はこれらを倒すのみ。観智は敵が接近してくるのをじっと待ちつつ、いつでも火球を飛ばせるよう構えを取った。
小夜も覚醒して頭から兎耳を生やし、すらりと腰の刀を抜く。
オオカミの群れは徐々に大きくなっていく。それにつれ、3メートルも個々のオオカミの大きさをハンター達は実感するのだった。
●黒く巨大なオオカミ達
爛々と目を輝かせ、オオカミは口元から涎を垂らして疾走してくる。
「狼? いや駄犬でいいな?」
マテリアルで移動力を高めたアルトは強く地面を踏みしめ、オオカミへと近づいていく。そして、彼女は超重刀「ラティスムス」で自身の駆け抜ける直線上の敵を、特に足を狙って切り刻む。
「私を相手に、その数でどうにかできると思うなよ?」
アルトはオオカミ達へと不敵に笑いかけた。少しは楽しませろよ、と。
近づいてきたオオカミはその巨体でタックルを仕掛け、別の個体は爪で薙ぎ払ってくる。
戦場となるこの場は平地。敵の大きさから見ても、囲まれることになるのかなと真水はぼんやり考える。ぐるぐるメガネを吊り上げた彼女は魔術具である八卦鏡「止水」を使い、前方へ扇状に炎の力を放射していく。
ある程度敵が接近してきたのを見計らった観智は火球を放り込み、多くのオオカミを巻き込む。炎は瞬時に消えてしまうが、オオカミはそれによって煽られ、ダメージを受けていた。
しかしながら、相手は雑魔。多少傷を負ったところで、オオカミは接近戦を仕掛けてくるようだ。観智はオオカミと一定の距離を取るべく動き回る。射程を行かし、相手の攻撃が届く間合いを避けようと彼は考えていたのだ。
逆に、積極的に前に出ていたのは、魔導バイクを駆るシオンだ。その上で、彼女はオートマチック「エヘールシト」でオオカミに弾丸を叩き込んでいく。
「戦え、狼ども。獲物として、ハンターたるこの私と!」
移動しながらもシオンは自身の力を高めていき、獲物を槍に持ち替える。そして、彼女は上段から渾身の一撃を振り下ろした。
戦うシオンは嬉々としていた。強敵と戦い、闘争を愉しみ、報酬を得る。それが荒事請負人たる彼女の生き方だ。
如何なる相手であっても、シオンのスタイルは変わらない。彼女は闘争の愉しみと報酬の為、容赦なく十文字槍「人間無骨」を振るってゆく。一撃を与えれば、敵の攻撃を警戒して彼女はすぐさまその場から離脱していた。
ショウコは敵の接近まで、試作型特殊魔導拳銃「憤慨せしアリオト」の引き金を引き続けていた。
敵がいかなる状況から攻めてきてもいいように、ショウコは背後にバイクを置いて盾としていた。攻め込みはしてくるが、まだ敵に背後を取られることはない。
オオカミが前足を上げたタイミング。それを狙ったショウコは撃った銃弾をマテリアルで加速させ、手近なオオカミを撃ち貫く。
その敵の体勢が大きく崩れるのを、小夜は見逃さない。
「狼、嫌いだ! 首刈って、兎には勝てぬということをその魂に思い知らせてやる!!」
自らを「首狩り兎」と名乗る彼女が狙うは、オオカミの首だ。
「ヴォーパルバニーが、刻み、刈り獲らん!」
彼女は両手で握り締めた斬魔刀「祢々切丸」を大きな所作で振り下ろす。狙い通りにその首を討ち取り……そいつは霧散するように消えていった。
だが、1体が失われようとも、群れの進軍は止まらない。どうやら、巡礼者に狙いを定める個体もいる。
巡礼者を装うルーネは敢えて、仲間から遅れるようにして立ち回っていた。自身に近づいてきたオオカミを誘導する様、動く。そうして、ポケットの肉に気を取られた敵はルーネごと噛み付こうとしてくる。
それはルーネの狙い通り。彼女は大きく口を開いたオオカミの眉間へ、スラッシュアンカーの錨を深々と埋め込む。
同じく、巡礼者の振りをしていたひりょは、怯え、逃げ惑い続けていた。
ひりょはそんな演技を見せつつも、動き回り続ける。仲間がオオカミを狙いやすいように、相手を誘導していたのだ。
敵が十分に近づくと、ひりょは名刀『虹』にマテリアルを篭めて振り抜き、衝撃波を手前のオオカミへと浴びせかけた。
相手がただの巡礼者でないことを知ったオオカミだが、勢いのまま、ハンター達へとその牙や爪を向けてくるのである。
●撃退こそすれど……
オオカミはその大きな体躯に関わらず軽やかに跳躍し、毒爪で素早く薙ぎ払い、麻痺牙で勢いよく喰らいついてくる。前面の広い範囲へと叩きつける体当たりはハンター達に大ダメージを与えてきた。
ルーネはその中でも、麻痺が厄介だと考えている。徐々にハンターの包囲網を敷いてくるオオカミの攻撃を防ぐ仲間の為にと、体を痺れさせる仲間へと光を纏わせてその不浄を取り払うよう努める。
敵の俊敏さを注意していたアルト。確かに素早い動きは武器にもなるが、ターニングの際はどうしても足が止まるし、スピードが乗っていると方向転換ができない。
そうした疾影士視点での高速戦闘の弱点を踏まえ、アルトはオオカミに攻め入る。一直線に駆けて来る敵の攻撃を彼女は躱し、足が止まった敵をメインに周辺の敵を含めて刀で薙ぎ払う。
対する敵は連携攻撃を行う。2体がほぼ同時に、小夜へと仕掛けてきた。
「頭を使ったな! だが、無駄だぁっ!」
彼女はその2体と周辺のオオカミを、「祢々切丸」で切りまくる。その間も、首を狙うのを忘れないのは、さすがヴォーパルバニーといったところか。
乱戦になってきていたのは、真水の予測通りだ。仲間達の善戦もあって、押される状況まで追い込まれることはなさそうだ。
真水はフリーになっている敵を見つけては、光の三角形から伸びる光線で敵を貫いていく。唸る毒の爪を反撃で喰らうことはあれど、ぐるぐるメガネだけは絶対に死守しようとしているのは彼女らしい。
観智としては乱戦を避けたかったが、なにせ段差もほぼないだだっ広い場所。混戦状態となってしまうのは仕方ないことだった。
ただ、布陣をしっかりしていない分、自由に立ち回ることもできる。乱戦となった場所からはできるだけ距離を置き、仲間を巻き込まぬよう気をつけながら、観智は自身から伸びる雷撃でオオカミを貫いていく。
乱戦の最中にあるショウコはバイクを盾にしつつ、オオカミの挟撃を防ぐ。
その上で、彼女は持参してきたベルモットを自身の足元で叩き割った。それによって充満するブドウ酒の香り。戸惑うオオカミへ、ショウコは試作型特殊魔導拳銃「憤慨せしアリオト」の弾丸を叩き込み、さらに 「スキアタキオン」を装着した拳で殴りつける。
死角からの強力な一打を見舞われた敵は卒倒し、地面に崩れ落ちる前に消えてなくなった。
ショウコはすぐさま次の敵を見据える。彼女は敵の布陣、行動、統率力、中心、個体の大きさを観察し、群れのボスを見定めようとしていたのだ。
敵は連携攻撃を仕掛け、その威力もなかなかのものだが、それらに対処するハンター達は広範囲攻撃と個々への攻撃を行うメンバーが上手く噛み合って敵を追い込む。
動きの鈍ったオオカミを、ひりょが発生させた衝撃波で吹っ飛ばす。それによって、地面をもんどりうったそいつは転がるうちに消えていった。
ところで、半数近く倒すほど戦いを進めていたにも関わらず。オオカミの群れに統率をまるで感じないショウコ。
(ボスはいないのか……?)
状況に応じ、オオカミの数が変わるという話もあった。果たして、数が少ない場合であっても、常にその中にボスが居るのだろうか。
とにかく早期の殲滅を……敵の攻撃を刀でいなしつつ、ショウコがオオカミの鼻先に拳を叩き込むと、そこでオオカミ達は揃ってハンター達に背を向け始める。
「ちっ、逃がさないよ!」
ショウコはバイクに跨り、オオカミを追い始める。
まだ追いかけられる。そう判断したアルトは強く踏み込み、最後尾のオオカミの下半身を切り伏せた。真水も光の光線で撃ち貫き、ルーネは光の杭でそいつの体を地面に繋ぎ止める。
そいつ目がけ、水平に刀を構えた小夜は一気に間合いを詰め、敵を貫き斬る。
「死に物狂いでかかってこい。そうでなければ、この私が来た意味がない!」
全力で駆けつけてきたシオンは、十文字槍「人間無骨」の刃を渾身の力で振り下ろし、オオカミの体の半分を断ち切った。体力の費えたそいつは爆ぜるように姿がなくなってしまう。
そいつを倒したのはいいが、他3体のオオカミの姿はすでにかなり前方にあった。それを、観智が軍用双眼鏡で確認しながら追跡を行う。
そのままバイクで追い始めるシオン、ショウコ。アルトも馬に乗って駆け出す。真水は弓を持って矢を番え、完全に射程外に出てしまったオオカミを捕捉できなくなっていた。
「しょうがない。逃げる者は追わない。兎の美学。私は、な」
小夜は仲間が追っていく姿を見送る。ルーネもまた、追った仲間に追撃を託していた。
しばらく、オオカミを追っていた3人だが、ショウコは途中で追うのを止める。
「深追いは禁物だ。戻ろう」
オオカミが南へ逃げるのだけ確認し、ショウコは街道にいる仲間の元へと戻っていく。
だが、他の2人はさらに逃げるオオカミを追ってゆく。とりわけ、シオンは執拗に3体のオオカミを追い回していた。
「どうした、最後まで戦え!」
「待て、あれを……」
オオカミを追うシオンを呼び止めるアルト。
遠くに、こちらを見つめているオオカミの群れが見える。
その中央に一際大きな狼が見える。そいつらは逃げ行くオオカミと合流し、地平の彼方へと姿を消していった。
アフターサービスとして、オオカミの残党を狩りつくそうと考えていたアルト。しかしながら、あれだけのオオカミをたった2人で相手にするわけにもいかない。
そうこうしているうち、オオカミは全て姿を消してしまう。シオンはさらにバイクを走らせて追おうとするが。姿を眩ませたオオカミ達を捉えることは叶わなかった。
一方、戦場から街道へと戻ってきたハンター達。
「やはり兎は最強。狼なんかに負けないぞーーー!」
小夜は「祢々切丸」をブンブン振って、自らの、兎の勝利を吠え始める。オオカミがどんなにかかってこようとも。この吠え声で兎の脅威を知るだろうと、彼女は表情こそ替えはしないが、どんと胸を張っていた。
街道を守ったハンター達は当面のオオカミの撃退を喜びながらも、帰路についていくのだった。
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街道のオオカミ退治 ひりょ・ムーンリーフ(ka3744) 人間(リアルブルー)|18才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2016/07/09 08:08:02 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/07/07 20:53:08 |