ゲスト
(ka0000)
ウィッカーマン
マスター:cr

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/09/12 07:30
- 完成日
- 2014/09/19 07:27
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●悪夢の始まり
最初に聞こえたのは、パチパチと何かが弾けるような音。
次に見えたのは、赤く輝く地平線。
それから感じたのは、真夏の様な激しい暑さ。
そして最後に知ったのは、轟々と燃え上がる人型が幾体か。
●炎の中で
そこは何の変哲も無い、ごくごく小さな集落だった。
住んでる人もごく僅か。そんな集落にこの雑魔達が現れた。
ちょうど集落の伝承で「ウィッカーマン」と呼ばれるそれにそっくりな雑魔は特に何かをするわけでは無かった。
ただよろよろとした足取りで集落に向かって歩いてきて――そして集落は燃え上がった。
人々にできる事は何も無かった。あわてて最小限の家財道具をかき集めて逃げ出し、自分達の住んでいた集落が、そして自分達の今までの生活が炎の中に消えていくのを黙って見ていることしかできなかった。
●敗戦処理
もう燃えてしまった集落を取り戻す事は出来ない。人々に今までの様な生活を与える事も出来ない。それでもハンター達はウィッカーマンを倒すべく現場に向かう。
これ以上同じような目に遭う人を生み出さない、そのためには雑魔を倒すしかない。そして歪虚を倒せるのはハンターだけだ。
人々の大切なものが失われた場所で、ハンター達の戦いが始まった。
最初に聞こえたのは、パチパチと何かが弾けるような音。
次に見えたのは、赤く輝く地平線。
それから感じたのは、真夏の様な激しい暑さ。
そして最後に知ったのは、轟々と燃え上がる人型が幾体か。
●炎の中で
そこは何の変哲も無い、ごくごく小さな集落だった。
住んでる人もごく僅か。そんな集落にこの雑魔達が現れた。
ちょうど集落の伝承で「ウィッカーマン」と呼ばれるそれにそっくりな雑魔は特に何かをするわけでは無かった。
ただよろよろとした足取りで集落に向かって歩いてきて――そして集落は燃え上がった。
人々にできる事は何も無かった。あわてて最小限の家財道具をかき集めて逃げ出し、自分達の住んでいた集落が、そして自分達の今までの生活が炎の中に消えていくのを黙って見ていることしかできなかった。
●敗戦処理
もう燃えてしまった集落を取り戻す事は出来ない。人々に今までの様な生活を与える事も出来ない。それでもハンター達はウィッカーマンを倒すべく現場に向かう。
これ以上同じような目に遭う人を生み出さない、そのためには雑魔を倒すしかない。そして歪虚を倒せるのはハンターだけだ。
人々の大切なものが失われた場所で、ハンター達の戦いが始まった。
リプレイ本文
●
戦いの火蓋を切ったのは一発の銃声だった。
銃声を鳴らしたのはスーズリー・アイアンアックス(ka1687)。彼女の小さな体躯とほぼ同じ大きさのアサルトライフルを構え、よく狙って引き金を引く。
スーズリーの前には集落を縦断する道。そこには彼女の手によって掘られた簡単な塹壕があり、敵の突撃を防いでいる。スーズリーの後ろには水の入った樽がくくりつけられた馬が一頭。ハンター達の拠点となる場所。
そして真っ直ぐ伸びる道の向こう側にいたのは、轟々とその身体を燃やし続ける雑魔、この場所のかつての住人達がウィッカーマンと呼ぶそれ。アサルトライフルから発射された弾丸は、その道を一直線に飛び、雑魔の足を……足なのかは怪しいところだが、それを貫く。足に穴が開いた雑魔は炎をさらに激しく燃やし、その反動なのか火が収まり、そういったことを繰り返す。その炎の動きは、まるで命の鼓動のようだ。
そうしてゆらゆらと燃える雑魔に向かって駆けるのは超級まりお(ka0824)。まるで彼女が元居た場所の人気ゲームのキャラクターのように、全速力で炎の雑魔に向けてダッシュ。濡れていた髪は、衣服は雑魔に近づくにつれ乾いて行く。だが、そうやって水が乾く事でまりおの体は高温から守られる。スピードを止めずリボルビングソーを構えたまま走りぬけ、雑魔に一撃、手応えあり。まりおに斬られたウィッカーマンはもう一度燃え上がり、そしてその炎が消えた。
次に銃声が響く。別の場所に居たウィッカーマン目掛け、弾丸が飛ぶ。だが、その弾を撃った者の姿が見えない。いや、居た。ルア・パーシアーナ(ka0355)は影に隠れていた。そこからチャンスを探り、見逃さずデリンジャーを抜き撃つ。アサルトライフルより射程の短いそれを的確に当てるための不意を打つ一撃。
「……後ろから攻撃したかったんだけど、あれってどっちが顔なのかな」
そんな言葉を呟きながらの一撃。確かにこの姿ではどちらが前かわからない。
が、そこに大きく回りこんで後ろから突進する影があった。彼女の名はリーリア・バックフィード(ka0873)。どちらが後ろかわからない相手の後ろに回りこんだのは、敵を誘導するため。円を描くような動きでウィッカーマンを戸惑わせると、槍を手に駆け抜ける。間合いを生かして少し離れた場所から薙ぎ払うような一撃。
「とり合えず水に突っ込んでみるし水も突っ込んでやるけど、どうなるんだろうな」
そしてそこに水を突っ込むのはフェルム・ニンバス(ka2974)。水を突っ込む、つまり水の弾丸を撃ち込む、このような芸当が出来るのは魔術師であるフェルムならではだ。
フェルムは持ち前の旺盛な好奇心を出して、炎の雑魔に水を撃ち込んでみることにした。フェルムから放たれた魔弾はウィッカーマンのど真ん中に吸い込まれるように入っていき、そして次の瞬間、雑魔は爆発して消滅した。
熱風が前に立つリーリアだけでなく、離れた位置に居るルアやフェルムの元にまで届く。効果は覿面だ。
「……こっちはあの無駄にでかいのに温存するか」
自分の「実験」がうまく行った事に内心ほくそ笑みながら、フェルムはぶっきらぼうにそう呟く。
「それじゃこっちも行きますかねぇ」
太い筋肉に覆われた腕に力を込め、ゴロー・S・ホーガン(ka2713)は弓を引き絞る。放たれた弓はウィッカーマンの腕を貫く。どちらが顔かわからない雑魔だが、貫かれたその時、まるでこちらを見るように思えた。ホーガンの狙いは誘導である。どちらから来たかを認識してくれれば。その狙いはうまく行ったのだろうか。
そして、別の方向から飛ぶ光弾。光弾は雑魔の腹に直撃し、一層強い光を放つ。
これを放ったのは佐倉 桜(ka0386)だ。
「伝承に出るような存在であっても、力を集めれば倒せないことはないはずです」
離れた位置に立ち、盾をかざして熱波から身を守っている桜の身体も、じりじりと焦がされるように感じる。近接武器を手にした仲間が接近戦を挑んだとしても長い時間は持たないだろう。ならば自分達後衛が遠距離攻撃を集中し、とどめの一撃を前衛に放ってもらう。
そしてその桜の思いは現実のものとなった。
フィル・サリヴァン(ka1155)は一気に踏み込み、長い長いハルバートを振りぬく。下から上にその身を切り裂かれた雑魔は一瞬二つに別れ、そして少しずつ炎の勢いが落ちていった。
●
「燃える人型の歪虚ですか……切った時、手ごたえはどんな感じなんでしょうか?」
戦いが始まる少し前、フィルは今回の倒すべき敵の情報を聞いて、温和な笑みを浮かべていた。穏やかな雰囲気のフィルだが、その心の内は違う。どんな強い敵なのか、どれくらい戦えるのか。フィルの心は戦いを求め、ウィッカーマン以上に燃え上がっていた。
「ちょっとは涼しくなってきた際になんだよこれ……」
一方フェルムは毒づいていた。暑い夏が過ぎ、秋を迎えたときに現れた雑魔。存在自体が理不尽の様な雑魔。
「で、連中は何で燃えてるわけ? いや理由じゃなくて理屈だっつーの」
が、フェルムは同時にこの雑魔に興味を抱いていた。どうしたら火は消えるのか。好奇心が首をもたげる。
そんな中、まりおは人々にウィッカーマンの伝承について尋ねていた。彼らの話によると、恨みを持って死んだ人々の魂が炎の人型を取ってやってくる、というものだそうだ。
「確かケルト辺りの生贄も用いる儀式だったか?」
そこにホーガンが割り込んでくる。ホーガンは、リアルブルーにおけるウィッカーマンの伝承を挙げた。もしかすると、ウィッカーマンの伝承はリアルブルーから転移して伝わったものかもしれない。
「さしづめ、この集落は連中の生贄にされた訳だ。……ま、何を祈願する為にかは知らんがね」
ホーガンはそう語る。何故雑魔が現れたかは分からない。ただひとつ言えることは、この雑魔は存在するだけで人々の生活を脅かすものだということだ。
「思い出の品なんかもあったかもしれないのにそれも残らず燃えちゃうよ。収穫前の麦なんかもあったはずだよ、もう最悪!」
ルアはそう、集落の人々の代わりに怒って見せる。
「失ったものへの涙を、次への活力へ変えてあげるためにも、元凶は絶たないといけませんね」
「ええ、生存するだけで害を為すなら、取るべき手段は一つです」
桜とリーリアもそう言葉を交わす。3人の考えは一緒、この雑魔達を、速やかに倒さなければならない。いや、この思いは3人のみならず、この場にいるハンター全員の共通の思いだった。
「この熱は恐ろしいけれど、誰かの未来のために退くわけにはいきませんから」
だからハンター達は集落に何があったのかを尋ねる。
身を守るため、そして敵を嵌める為一番重要と考えた水場は、集落の中程に井戸が一つ。あとは崩れた塀が遮蔽物になる。
少々離れた水辺から水を汲み上げ、馬に乗せ集落の入口まで運んでくる。入口から中に何がいるのか確認する。人々が教えてくれた通りの配置。あとはここまで来る間に考えた作戦が上手くいくか。
「果断即効、消耗戦は避けて迅速に撃破しましょう」
リーリアの一言にハンター達は頷き、水を被る。
「本当は集落が壊滅する前に動けたら良かったんだろうけどそこは流石に無理だったんだから仕方がないや」
まりおは一呼吸入れてから、決意を改めて固め、そして水を被る。
「でも集落のカタキは絶対にとってやるモンだ。ボクらに任せといて♪」
●
フィルはハルバートを振りぬいた。二つに分かれた後にもう一度重なり、そして火が消えていくウィッカーマン。だが、その時だった。ろうそくが最後に激しく燃え盛る様に、ウィッカーマンの体の炎の勢いがやおら激しくなった!
「ぐっ?!」
手応えはあった。だが、一瞬の風が雑魔の体を押し流したのか倒しきることは叶わなかった。そして反撃を受けるフィル。
別の方向からも雑魔がやって来る。腕を伸ばし、ハンターを炎に包もうとするウィッカーマン。狙われたのはまりお。まりおは脚にマテリアルを込め、一気にダッシュ! 炎をかわそうとするその動きはまるでゲームのそれ。だが、そのゲームでもよくあるように、一瞬のボタンの押し遅れが、お尻に火が当たりまりおにダメージを与える。
まりおの濡れた髪は一瞬で乾き、着ていた服に火がつく。
「……あっつ~!」
慌てて地面を転がり火を消そうとするまりお。見ようによってはコミカルな動きだが、実際に燃えている当人にとっては笑い事ではない。じたばたと動くが火はなかなか消えない。
「まりおさん!」
桜は急いで意識を集中すると、まりおの体が光に包まれる。これ以上の炎上を食い止めるための力。光りに包まれたまりおの姿は無敵になったゲームキャラの様であった。
そこに、雑魔は一歩踏み込む。地面を転がるまりおをちょうど踏み潰そうとするような格好。踏み降ろされた足をごろごろと回転して交わしたまりおがそのまま立ち上がると、火はやっと消えていた。
ほっとしたハンター達。だが、そこに奴が来た。一回り大きなウィッカーマンの個体。仮称「L」。Lはにゅうと腕を伸ばすと、リーリアの頭目掛けて突き出す。
リーリアは素早く反応し、塀を蹴って立体的な動きでかわそうとする。しかし何たる不運。蹴った瞬間塀が崩れ、Lの手がリーリアの頭部に直撃した。
衣服には火が付いている。炎は身を焦がし、熱は筋肉を止める。リーリアの意識は朦朧としていた。
「リーリアさん、今行きます!」
反撃を受けていたフィルは、仲間のピンチに再び立ち上がる。もう一度ハルバートを振りぬくと、今度こそ敵の姿は掻き消えた。そのままハルバートを手に、Lの元へ駆けるフィル。
だが、雑魔は容赦はしない。仲間がたどり着くのを待つことなく、リーリアにとどめの一撃を繰りだそうとするL。
そこに再び銃声が鳴り響く。集落の跡を真っ直ぐに貫き、スーズリーの放った銃弾がLを捉える。Lの足元に銃弾が吸い込まれ、その足が吹き飛ぶ。バランスを崩したのか、その場でゆらゆらと揺れながら留まるL。リーリアへの一撃は何とか回避された。
「土まぶせば消えるのか?」
一方フェルムはまりおを燃え上がらせた雑魔に向け、石つぶてを放つ。彼が放ったのはアースバレットという魔術的なそれ。肩を撃ちぬかれ、ふらふらと動くウィッカーマン。
そしてさらなる一手。ホーガンはデリンジャーに持ち替え、後ろから押す様に銃弾を放つ。撃たれたウィッカーマンはトトトトッ、と踏み出し、そして姿が掻き消えた。
そこにあったのは集落で使われていた唯一の井戸。雑魔の体はストンと井戸の中に落ちる。もがき苦しむかのように炎がゆらめき、先端だけが井戸の縁から顔を見せている。まるでその姿はトーチかバーナーの様だった。
シュウシュウと音を立て苦しんでいたウィッカーマンは、ややあって見えなくなった。少し間があって高い澄んだ爆音。そして吹き上がる水。それは、雑魔が残すところLの一体しか居なくなったことを意味していた。
●
残るウィッカーマン目掛け、ハンター達は攻めこむ。ここまでで傷ついた者も多い。だがここで引き返すわけには行かない。
まず先陣を切ったのはルアだった。デリンジャーを収め、拳にフィストガードを付ける。そして用意しておいた水を被り、衣類に染み渡らせる。
「あなたたちのお陰で集落がボロボロだよ!」
ルアに気付かなかったL目掛け、不意を打っての一撃。素早く駆け込んだルアは、盆の窪目掛け拳を一瞬出してから叩きつける。水がたっぷりと染み込んでいたフィストガードは水蒸気を上げ、一瞬のうちに乾く。だが、ルアのフェイント込みの拳は間違いなく敵の体を捉えていた。
ここにおいてルアに気づいたLは、ルア目掛け腕を振り回す。腕を上げガードを固めたその上から、雑魔の拳が叩きつけられる。あれだけ染み渡らせた水はすっかり乾き、ルアの服は燃え始めていた。
「うわぁぁ熱い、熱っ! でもざまぁみろー!」
熱がルアの行動を鈍らせるが、ルアはLの様子を見て勝ち誇っていた。
バランスを崩したように体を下げるL目掛け、今度はまりおが駆け込む。飛び込みながらの一撃は運悪くLに当たらない。だが、その一撃は次なる一撃への伏線となった。
まりおがもう一度跳び上がり離脱したところへ、ホーガンが引き絞っていた矢が打ち込まれる。まともに直撃する矢。矢はそのままウィッカーマンの体を貫き、火矢となって飛び出す。
ハンター達の追撃の手は止まない。スーズリーはもう一度狙いを付け、足に向かって銃弾を放つ。続けざまの攻撃を受け、ウィッカーマンの肉体は激しく揺れる。それは声の出せないウィッカーマンが苦しみの悲鳴を上げているように見えた。
そしてとっておきの一撃が放たれる。放ったのはフェルム。ここぞというときまで温存してきたウォーターシュート。今こそその時だ。フェルムが放った水弾は雑魔の炎の体に吸い込まれ、ポンと高い音を立てて爆発する。白い水蒸気が上がりそれが晴れた時、爆発は雑魔の体をえぐるように吹き飛ばしていた。
「この程度の熱で私の意志は怯みません!」
一つの影がゆらりと立ち上がる。リーリアだ。Lの攻撃を受け、一度は倒れ伏せた彼女は闘志を燃やし立ち上がっていた。しかし、誰が見ても彼女が大きな傷を負ったのは明らかだ。
「リーリアさん……」
一度は止めようとした桜だが、しかしリーリアのその闘志を見てもう何も言えなかった。せめてと桜は自分にできること、すなわちリーリアにヒールをかける。
リーリアは桜のヒールを受け、気力を振り絞って走り抜ける。Lに打ち込まれた一撃は、その半身を斬り飛ばす。
「これで終わりです……」
走り抜けたリーリアは糸の切れた人形のように倒れ伏す。体の半分を失ったLはまるでろうそくが最後に激しく燃え上がるように、その体を大きくさせ上から下へ振り下ろす。
「私を楽しませてくださいね?」
最後にフィルがハルバートを横に振るう。雑魔の手と武器の軌道が交錯する。一瞬フィルの体が火に包まれる。そしてその火が晴れた時、Lの体は風の前の炎のように消え失せていた。
●
激しく傷ついたリーリアは桜を中心に素早く手当を行う。意識を失うほどの大怪我ながら、命には別状なかったようだ。手当にはスーズリーが馬で運んできた水が役に立った。
手当がひと通り終わったところで、ルアは離れ焼け跡を探す。
「何か燃え残っている物ないのかな。家とかお洋服とか燃えちゃってるよね。でも探してみるんだよ」
もう全て終わってしまった。全てが火に消えた。それでもハンター達は戦った。それは今生きている人たちの明日をつくるため。そして多くのものを失った人に、明日を生きる勇気を与えるため。それがハンター達が戦う理由だった。
戦いの火蓋を切ったのは一発の銃声だった。
銃声を鳴らしたのはスーズリー・アイアンアックス(ka1687)。彼女の小さな体躯とほぼ同じ大きさのアサルトライフルを構え、よく狙って引き金を引く。
スーズリーの前には集落を縦断する道。そこには彼女の手によって掘られた簡単な塹壕があり、敵の突撃を防いでいる。スーズリーの後ろには水の入った樽がくくりつけられた馬が一頭。ハンター達の拠点となる場所。
そして真っ直ぐ伸びる道の向こう側にいたのは、轟々とその身体を燃やし続ける雑魔、この場所のかつての住人達がウィッカーマンと呼ぶそれ。アサルトライフルから発射された弾丸は、その道を一直線に飛び、雑魔の足を……足なのかは怪しいところだが、それを貫く。足に穴が開いた雑魔は炎をさらに激しく燃やし、その反動なのか火が収まり、そういったことを繰り返す。その炎の動きは、まるで命の鼓動のようだ。
そうしてゆらゆらと燃える雑魔に向かって駆けるのは超級まりお(ka0824)。まるで彼女が元居た場所の人気ゲームのキャラクターのように、全速力で炎の雑魔に向けてダッシュ。濡れていた髪は、衣服は雑魔に近づくにつれ乾いて行く。だが、そうやって水が乾く事でまりおの体は高温から守られる。スピードを止めずリボルビングソーを構えたまま走りぬけ、雑魔に一撃、手応えあり。まりおに斬られたウィッカーマンはもう一度燃え上がり、そしてその炎が消えた。
次に銃声が響く。別の場所に居たウィッカーマン目掛け、弾丸が飛ぶ。だが、その弾を撃った者の姿が見えない。いや、居た。ルア・パーシアーナ(ka0355)は影に隠れていた。そこからチャンスを探り、見逃さずデリンジャーを抜き撃つ。アサルトライフルより射程の短いそれを的確に当てるための不意を打つ一撃。
「……後ろから攻撃したかったんだけど、あれってどっちが顔なのかな」
そんな言葉を呟きながらの一撃。確かにこの姿ではどちらが前かわからない。
が、そこに大きく回りこんで後ろから突進する影があった。彼女の名はリーリア・バックフィード(ka0873)。どちらが後ろかわからない相手の後ろに回りこんだのは、敵を誘導するため。円を描くような動きでウィッカーマンを戸惑わせると、槍を手に駆け抜ける。間合いを生かして少し離れた場所から薙ぎ払うような一撃。
「とり合えず水に突っ込んでみるし水も突っ込んでやるけど、どうなるんだろうな」
そしてそこに水を突っ込むのはフェルム・ニンバス(ka2974)。水を突っ込む、つまり水の弾丸を撃ち込む、このような芸当が出来るのは魔術師であるフェルムならではだ。
フェルムは持ち前の旺盛な好奇心を出して、炎の雑魔に水を撃ち込んでみることにした。フェルムから放たれた魔弾はウィッカーマンのど真ん中に吸い込まれるように入っていき、そして次の瞬間、雑魔は爆発して消滅した。
熱風が前に立つリーリアだけでなく、離れた位置に居るルアやフェルムの元にまで届く。効果は覿面だ。
「……こっちはあの無駄にでかいのに温存するか」
自分の「実験」がうまく行った事に内心ほくそ笑みながら、フェルムはぶっきらぼうにそう呟く。
「それじゃこっちも行きますかねぇ」
太い筋肉に覆われた腕に力を込め、ゴロー・S・ホーガン(ka2713)は弓を引き絞る。放たれた弓はウィッカーマンの腕を貫く。どちらが顔かわからない雑魔だが、貫かれたその時、まるでこちらを見るように思えた。ホーガンの狙いは誘導である。どちらから来たかを認識してくれれば。その狙いはうまく行ったのだろうか。
そして、別の方向から飛ぶ光弾。光弾は雑魔の腹に直撃し、一層強い光を放つ。
これを放ったのは佐倉 桜(ka0386)だ。
「伝承に出るような存在であっても、力を集めれば倒せないことはないはずです」
離れた位置に立ち、盾をかざして熱波から身を守っている桜の身体も、じりじりと焦がされるように感じる。近接武器を手にした仲間が接近戦を挑んだとしても長い時間は持たないだろう。ならば自分達後衛が遠距離攻撃を集中し、とどめの一撃を前衛に放ってもらう。
そしてその桜の思いは現実のものとなった。
フィル・サリヴァン(ka1155)は一気に踏み込み、長い長いハルバートを振りぬく。下から上にその身を切り裂かれた雑魔は一瞬二つに別れ、そして少しずつ炎の勢いが落ちていった。
●
「燃える人型の歪虚ですか……切った時、手ごたえはどんな感じなんでしょうか?」
戦いが始まる少し前、フィルは今回の倒すべき敵の情報を聞いて、温和な笑みを浮かべていた。穏やかな雰囲気のフィルだが、その心の内は違う。どんな強い敵なのか、どれくらい戦えるのか。フィルの心は戦いを求め、ウィッカーマン以上に燃え上がっていた。
「ちょっとは涼しくなってきた際になんだよこれ……」
一方フェルムは毒づいていた。暑い夏が過ぎ、秋を迎えたときに現れた雑魔。存在自体が理不尽の様な雑魔。
「で、連中は何で燃えてるわけ? いや理由じゃなくて理屈だっつーの」
が、フェルムは同時にこの雑魔に興味を抱いていた。どうしたら火は消えるのか。好奇心が首をもたげる。
そんな中、まりおは人々にウィッカーマンの伝承について尋ねていた。彼らの話によると、恨みを持って死んだ人々の魂が炎の人型を取ってやってくる、というものだそうだ。
「確かケルト辺りの生贄も用いる儀式だったか?」
そこにホーガンが割り込んでくる。ホーガンは、リアルブルーにおけるウィッカーマンの伝承を挙げた。もしかすると、ウィッカーマンの伝承はリアルブルーから転移して伝わったものかもしれない。
「さしづめ、この集落は連中の生贄にされた訳だ。……ま、何を祈願する為にかは知らんがね」
ホーガンはそう語る。何故雑魔が現れたかは分からない。ただひとつ言えることは、この雑魔は存在するだけで人々の生活を脅かすものだということだ。
「思い出の品なんかもあったかもしれないのにそれも残らず燃えちゃうよ。収穫前の麦なんかもあったはずだよ、もう最悪!」
ルアはそう、集落の人々の代わりに怒って見せる。
「失ったものへの涙を、次への活力へ変えてあげるためにも、元凶は絶たないといけませんね」
「ええ、生存するだけで害を為すなら、取るべき手段は一つです」
桜とリーリアもそう言葉を交わす。3人の考えは一緒、この雑魔達を、速やかに倒さなければならない。いや、この思いは3人のみならず、この場にいるハンター全員の共通の思いだった。
「この熱は恐ろしいけれど、誰かの未来のために退くわけにはいきませんから」
だからハンター達は集落に何があったのかを尋ねる。
身を守るため、そして敵を嵌める為一番重要と考えた水場は、集落の中程に井戸が一つ。あとは崩れた塀が遮蔽物になる。
少々離れた水辺から水を汲み上げ、馬に乗せ集落の入口まで運んでくる。入口から中に何がいるのか確認する。人々が教えてくれた通りの配置。あとはここまで来る間に考えた作戦が上手くいくか。
「果断即効、消耗戦は避けて迅速に撃破しましょう」
リーリアの一言にハンター達は頷き、水を被る。
「本当は集落が壊滅する前に動けたら良かったんだろうけどそこは流石に無理だったんだから仕方がないや」
まりおは一呼吸入れてから、決意を改めて固め、そして水を被る。
「でも集落のカタキは絶対にとってやるモンだ。ボクらに任せといて♪」
●
フィルはハルバートを振りぬいた。二つに分かれた後にもう一度重なり、そして火が消えていくウィッカーマン。だが、その時だった。ろうそくが最後に激しく燃え盛る様に、ウィッカーマンの体の炎の勢いがやおら激しくなった!
「ぐっ?!」
手応えはあった。だが、一瞬の風が雑魔の体を押し流したのか倒しきることは叶わなかった。そして反撃を受けるフィル。
別の方向からも雑魔がやって来る。腕を伸ばし、ハンターを炎に包もうとするウィッカーマン。狙われたのはまりお。まりおは脚にマテリアルを込め、一気にダッシュ! 炎をかわそうとするその動きはまるでゲームのそれ。だが、そのゲームでもよくあるように、一瞬のボタンの押し遅れが、お尻に火が当たりまりおにダメージを与える。
まりおの濡れた髪は一瞬で乾き、着ていた服に火がつく。
「……あっつ~!」
慌てて地面を転がり火を消そうとするまりお。見ようによってはコミカルな動きだが、実際に燃えている当人にとっては笑い事ではない。じたばたと動くが火はなかなか消えない。
「まりおさん!」
桜は急いで意識を集中すると、まりおの体が光に包まれる。これ以上の炎上を食い止めるための力。光りに包まれたまりおの姿は無敵になったゲームキャラの様であった。
そこに、雑魔は一歩踏み込む。地面を転がるまりおをちょうど踏み潰そうとするような格好。踏み降ろされた足をごろごろと回転して交わしたまりおがそのまま立ち上がると、火はやっと消えていた。
ほっとしたハンター達。だが、そこに奴が来た。一回り大きなウィッカーマンの個体。仮称「L」。Lはにゅうと腕を伸ばすと、リーリアの頭目掛けて突き出す。
リーリアは素早く反応し、塀を蹴って立体的な動きでかわそうとする。しかし何たる不運。蹴った瞬間塀が崩れ、Lの手がリーリアの頭部に直撃した。
衣服には火が付いている。炎は身を焦がし、熱は筋肉を止める。リーリアの意識は朦朧としていた。
「リーリアさん、今行きます!」
反撃を受けていたフィルは、仲間のピンチに再び立ち上がる。もう一度ハルバートを振りぬくと、今度こそ敵の姿は掻き消えた。そのままハルバートを手に、Lの元へ駆けるフィル。
だが、雑魔は容赦はしない。仲間がたどり着くのを待つことなく、リーリアにとどめの一撃を繰りだそうとするL。
そこに再び銃声が鳴り響く。集落の跡を真っ直ぐに貫き、スーズリーの放った銃弾がLを捉える。Lの足元に銃弾が吸い込まれ、その足が吹き飛ぶ。バランスを崩したのか、その場でゆらゆらと揺れながら留まるL。リーリアへの一撃は何とか回避された。
「土まぶせば消えるのか?」
一方フェルムはまりおを燃え上がらせた雑魔に向け、石つぶてを放つ。彼が放ったのはアースバレットという魔術的なそれ。肩を撃ちぬかれ、ふらふらと動くウィッカーマン。
そしてさらなる一手。ホーガンはデリンジャーに持ち替え、後ろから押す様に銃弾を放つ。撃たれたウィッカーマンはトトトトッ、と踏み出し、そして姿が掻き消えた。
そこにあったのは集落で使われていた唯一の井戸。雑魔の体はストンと井戸の中に落ちる。もがき苦しむかのように炎がゆらめき、先端だけが井戸の縁から顔を見せている。まるでその姿はトーチかバーナーの様だった。
シュウシュウと音を立て苦しんでいたウィッカーマンは、ややあって見えなくなった。少し間があって高い澄んだ爆音。そして吹き上がる水。それは、雑魔が残すところLの一体しか居なくなったことを意味していた。
●
残るウィッカーマン目掛け、ハンター達は攻めこむ。ここまでで傷ついた者も多い。だがここで引き返すわけには行かない。
まず先陣を切ったのはルアだった。デリンジャーを収め、拳にフィストガードを付ける。そして用意しておいた水を被り、衣類に染み渡らせる。
「あなたたちのお陰で集落がボロボロだよ!」
ルアに気付かなかったL目掛け、不意を打っての一撃。素早く駆け込んだルアは、盆の窪目掛け拳を一瞬出してから叩きつける。水がたっぷりと染み込んでいたフィストガードは水蒸気を上げ、一瞬のうちに乾く。だが、ルアのフェイント込みの拳は間違いなく敵の体を捉えていた。
ここにおいてルアに気づいたLは、ルア目掛け腕を振り回す。腕を上げガードを固めたその上から、雑魔の拳が叩きつけられる。あれだけ染み渡らせた水はすっかり乾き、ルアの服は燃え始めていた。
「うわぁぁ熱い、熱っ! でもざまぁみろー!」
熱がルアの行動を鈍らせるが、ルアはLの様子を見て勝ち誇っていた。
バランスを崩したように体を下げるL目掛け、今度はまりおが駆け込む。飛び込みながらの一撃は運悪くLに当たらない。だが、その一撃は次なる一撃への伏線となった。
まりおがもう一度跳び上がり離脱したところへ、ホーガンが引き絞っていた矢が打ち込まれる。まともに直撃する矢。矢はそのままウィッカーマンの体を貫き、火矢となって飛び出す。
ハンター達の追撃の手は止まない。スーズリーはもう一度狙いを付け、足に向かって銃弾を放つ。続けざまの攻撃を受け、ウィッカーマンの肉体は激しく揺れる。それは声の出せないウィッカーマンが苦しみの悲鳴を上げているように見えた。
そしてとっておきの一撃が放たれる。放ったのはフェルム。ここぞというときまで温存してきたウォーターシュート。今こそその時だ。フェルムが放った水弾は雑魔の炎の体に吸い込まれ、ポンと高い音を立てて爆発する。白い水蒸気が上がりそれが晴れた時、爆発は雑魔の体をえぐるように吹き飛ばしていた。
「この程度の熱で私の意志は怯みません!」
一つの影がゆらりと立ち上がる。リーリアだ。Lの攻撃を受け、一度は倒れ伏せた彼女は闘志を燃やし立ち上がっていた。しかし、誰が見ても彼女が大きな傷を負ったのは明らかだ。
「リーリアさん……」
一度は止めようとした桜だが、しかしリーリアのその闘志を見てもう何も言えなかった。せめてと桜は自分にできること、すなわちリーリアにヒールをかける。
リーリアは桜のヒールを受け、気力を振り絞って走り抜ける。Lに打ち込まれた一撃は、その半身を斬り飛ばす。
「これで終わりです……」
走り抜けたリーリアは糸の切れた人形のように倒れ伏す。体の半分を失ったLはまるでろうそくが最後に激しく燃え上がるように、その体を大きくさせ上から下へ振り下ろす。
「私を楽しませてくださいね?」
最後にフィルがハルバートを横に振るう。雑魔の手と武器の軌道が交錯する。一瞬フィルの体が火に包まれる。そしてその火が晴れた時、Lの体は風の前の炎のように消え失せていた。
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激しく傷ついたリーリアは桜を中心に素早く手当を行う。意識を失うほどの大怪我ながら、命には別状なかったようだ。手当にはスーズリーが馬で運んできた水が役に立った。
手当がひと通り終わったところで、ルアは離れ焼け跡を探す。
「何か燃え残っている物ないのかな。家とかお洋服とか燃えちゃってるよね。でも探してみるんだよ」
もう全て終わってしまった。全てが火に消えた。それでもハンター達は戦った。それは今生きている人たちの明日をつくるため。そして多くのものを失った人に、明日を生きる勇気を与えるため。それがハンター達が戦う理由だった。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/09/09 12:58:57 |
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相談卓 リーリア・バックフィード(ka0873) 人間(クリムゾンウェスト)|17才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2014/09/11 23:52:43 |