• 蒼乱

【蒼乱】チキチキトラック猛レース!

マスター:葉槻

シナリオ形態
イベント
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/07/18 19:00
完成日
2016/08/01 13:41

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●まさかのパンデミック!
「……急な招集に対応していただいて感謝します」
 イズン・コスロヴァ(kz0144)マスク越しにそう言うと、丁寧に頭を下げた。
「サルヴァトーレ・ロッソで地球に転移する実験を行うを行う、というお話は皆さんの耳にも入っていることと思います。それに当たり、大量の龍鉱石が必要となります。その移送を我が帝国軍第六師団の一般兵が請け負うことになっていたのですが……」
 慣れない環境からか、体調を崩す者が続出。また、連戦からの疲労もあり、抵抗力が弱っていたのか、1人が急性流行性感冒に罹患。すると瞬く間に一般兵の間で爆発的に感染者が出てしまったのだ。
「怪我でしたらヒールが、負のマテリアルに起因する者であればキュアが効きますが……残念ながら病には回復スキルが通用しません。各自が手洗いうがいで予防するべきだったのですが……」
 環境上水は貴重であり、また、もともと泥仕事や機械油にまみれて仕事をするのが得意な面々は、自身の汚れには無頓着な者も多い。つまり、お世辞にも清潔とはちょっと遠い所にいた。それがウィルスや菌の繁殖を手伝ってしまった一因でもあった。
 ……この話しを聞いて、風呂嫌いで有名な某ドワーフ王を思い出した者も少なくはないだろう。
「幸いにして、現状罹患していない者、また早期に感染し、回復した者で詰め込み作業は無事終わっているのです。しかし、ロッソへ行くはずだったトラックが25台、まるまると未だ出発出来ずに居ます」
 イズンの後ろには25台の2トントラックが積載重量いっぱいに龍鉱石を積んだ状態で整列していた。
「出来る限りこれを早急に、安全にサルヴァトーレ・ロッソへ運んでいただきたいのです。……道は平坦では無く、強欲や狂気の歪虚が狙って来る事とも考えられますが、最優先はロッソへ運ぶ事……どうか、ご協力をお願いします」
 イズンは深々と頭を下げた。
「あんたのそのマスクは?」
 問われてイズンは眉間のしわはそのままに首を振った。
「予防のためです。私自身は発症しておりませんが、ここで指揮を執る必要がありますので同行できません」
 申し訳ありません、と重ねて頭を下げられては、何やら居心地が悪い。
「なお、現状をご理解いただいたロッソ側からは、最も早くロッソに到着された方と、最もトラブルに見舞われながらも到着された方、更に最も沢山の龍鉱石を運んで下さった方には謝礼を出す用意もあるそうです。どうぞ、くれぐれも道中気を付けて行って来て下さい」
 イズンの言葉に、一部のハンターの目の色が変わった。

 こうして、ハンターによる、チキチキトラック猛レースが開催される事となったのだった。





--*--解説--*--
【 !Warning! 】
 このシナリオに限り、レベルに依存しないスゴロク的シナリオとなります。
 歪虚との戦闘はフレーバー的要素が強いので、必ず逃げ切れますし、スキルを使わずとも2名以上のチームであればプレイング次第で備え付けの銃で撃退出来ます。
 

リプレイ本文

●チキチキレース、スタート!!
 青のワイバーンが合図代わりの火炎弾を空中に放った。
 それと同時にハンター達はアクセルをベタ踏みで出発していく。
「ひぃ~あうぃ~~~ごぉ~~~~~!!」
 かけ声と共に超級まりお(ka0824)も快調な滑り出しを見せる。
「やっぱり、どんな道であろうとレース最速を目指す者としてはここは負けられないね!」
 残念なのはカメやバナナ、星などが落ちていない為、妨害や撃退が出来ない事か。
 ……いや、仲間への妨害はこの場合やらかしたら怒られるのは解っているが。
 しかし、この先には様々な悪路やアクシデント、敵が待ち受けているという。
 まりおはワクワクしながら心のBボタンを押しっぱなしで、ゴールを目指す。

 一方で既に悔し泣きをしながらアクセルを踏みつけているのは星野 ハナ(ka5852)。
 これは出発前にあった一幕である。
「体…重…? い、言える訳ないじゃないですか、私筋肉質で普通の女の子より重めなのに、身長だってそこそこ高いのにっ! 酷すぎますぅ、うわーん」
 そうイズン・コスロヴァ(kz0144)に訴えると、イズンはきょとんとした表情をした後、かすかに微笑んだ。
「トラックごと計量りに乗せますから、告知は不要ですよ」
「!?」
「あぁ、お伝えしていませんでしたか……既にトラックには2トン乗っていますから、チームで搭乗して頂いた後、出発前に再度計量りに乗せて調整するんです。自己申告では狂うこともありますし。向こうでも到着後そのまま計量りにトラックごと乗って、運んだ量を調べさせて頂きます」
「な、何でそれを先に言ってくれないんですかぁ~っ!?」
 イズンの言葉を受けて、さらにショックを受けたハナである。
「……聞かれませんでしたので。配慮が足りず申し訳ありません」
 生真面目に頭を下げるイズンを前に、ハナはそれ以上の言葉を紡げず泣きながらトラックへと飛び込んだのであった。
「うぅ……事前に聞けば良かったんですか、でもそんな恥ずかしい事聞けるわけ無いじゃ無いですかぁ……」
 本当はチームを組みたかった。あの人と一緒にドライブが出来るのなら、きっとどんな悪路だって困難だって楽しめた。
 しかし、体重を晒さなければならないと思っていたため、言い出せず結局ソロ参加となったのだ。
 嗚呼、いじらしい乙女心。恋する乙女ゆえの葛藤と苦渋の決断。
「うわぁん、イズンさんのばかぁ~~~~~!!」
 八つ当たりなのは解っているが、他にぶつける場所も無い。
 アクセルをべったりと踏みつけながらハナは叫ぶと前のめりでハンドルを握った。

「ニンジャでプロカードゲーマーとして、どんなデュエルも負けるわけにはいかないんだからっ!」
 ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)が瞳の中の星を煌めかせながらアクセルを踏みしめる。
 任されたトラックの右側面には『!星番一☆者忍』、左側面には『忍者☆一番星!』。
 助手席にはケンと名付けた笑い顔が印象的な犬のぬいぐるみ。
 ……隠しきれないショーワ……もとい、懐かしさを漂わせている気はするが、暴走するルンルンは負けない。諦めない。ついてこられる人だけついてきて!!
「何人たりとも、私の前は走らせないんだからっ!」
 今日のラッキーナンバーを信じて、ルンルンはギアを入れ替え前を見た。
「ブーストポッド作動、エンジン臨界までカウントスタート……いっけぇぇぇ、アスラー……じゃなかった、一番星!」
 ……もう一度念を押す。ついてこられる人だけついてきて!!
 ルンルンは気合い十分に叫ぶと、勢いよくエンジンを吹かせながら爆走し始めた。


●最初の苦難
「……こんな道になってるなんて聞いてないんだけどな……」
 暫く順調に進んでいたのだが、徐々に谷の様相を見せたと思ったら、トラック1台分がギリギリ通れる程度の幅を残して、左側は山、右側はそこの見えない谷という道に入っていた。
 鞍馬 真(ka5819)はトランシーバーを取り出して仲間へと呼びかける。
「んー、多分自然に出来た崖だと思う……慎重に行こう」
 何もない道のりではつまらないと思っていたが、最初から出会したのがコレでは先が思いやられるな……と、慎重にハンドルを操作していく。

「あちゃぁ、崖って……うわぁ、ホントです」
 カリン(ka5456)が身を乗り出すように道を見ながら、慎重にハンドルを操作していく。
「ん……そんな情報は無かったんだけどね」
 地球連合軍用PDAを操作しながら花(ka6246)が呟く。
 どうやら最近自然に出来た裂け目らしい。なる程、正のマテリアルが少ない地域とだけあって不安定な部分があるのかもしれない。
「ひゃうう! 揺れるのです揺れるのですよー!」
 カリンの忠告に花はPDAを操作する手を止めたが、言われたほどの振動は来なかった。
 花はハンターになってから、リアルブルー製の雑誌で見たラリー仕様のウニモグに憧れていたが、この無骨な魔導トラックはそれに近い物があるかもしれない。
 きちんとスペアタイヤの確認やメンテナンス具合なども自分でも調べつつイズンに問い合わせたが、その辺りは流石は後方支援部隊として名高い第六師団だけあって、しっかり整備されていた。
「この車体ならどんな悪路でも耐えるだろうさ。さぁ、カリンくん。頑張って」
「了解です!」
 慎重に崖を抜けると、その先では強欲のワイバーンの群れと遭遇し、カリンは思わず悲鳴を上げた。
「曲がりますっ! ちょっと揺れますよ!」
「射撃は任せてくれ。カリンくんは運転を」
「はい!」
 花は立ち上がり、後部座席のサンルーフから身を乗り出して備え付けられたライフルで敵へと照準を定める。
「さぁ、大人しくお家へお帰り」
 トリガーを引き、まずは一体。
 しかし、執拗に龍鉱石を狙って来る強欲竜達。
「……Uber-winden……」
 『万難を排せよ』そう花は静かに口にしながら、花は冷静に一体一体を狙い撃っていった。

「おぉ……これは予想以上……」
 同じく真からの情報を受け取りつつも崖に到着したテンシ・アガート(ka0589)は、地図を見直す。
 しかし、ここから引き返すとなるとやはりロスが大きい。
 幸い敵の姿が見えたという情報も無いことからこの道を進むことにした。
「車幅ギリギリの道とか、軍の訓練以来かも……?」
 リアルブルーにいた頃を思い出し、眉間にしわを寄せながらも華麗なハンドル捌きでなるべく速度を保ちつつ道を進んでいく。
「運転もお任せあれってな!」
 持ち前の前向きさで、悪路という困難にも立ち向かっていくテンシは、この後も狂気に襲われたり、スリップしたりパンクしたりと数々のアクシデントに見舞われたが、その全てを乗り越えて、着実にゴールへと向かって行ったのだった。

 メニエル(ka3428)、エイリア・ミルトン(ka3453)、ソルネイティア(ka5932)の3人は、3人それぞれが【運送屋】としてトラックを運転しながらも同じ道を行くという作戦を決行していた。
「悪路……っていうか崖だな。衝突しないように車間距離に注意しろ。事故りましたじゃ、笑い話にもならないぜ」
 先頭を行くメニエルがトランシーバー越しに2人に注意を促すと、真やカリン達が進んだ道を3人3台連れ添ってゆっくりと進んでいく。
「ふん、運転なんて簡単じゃない。あ、ちょっとそんなに速度上げないでよ」
 強がってみせたソルネイティアだが、前を行くエイリアが道の端を崩れさせながら走っているのを見て、あわわと声を上げる。
「敵の姿がないことだけが救いだねー。こんなところで襲われたらシャレにならないよー!」
 エイリアが努めて明るく告げる。
「前方はクリアだ。側面と後方……特に空の警戒も怠るなよ」
「「らじゃー!」」
 メニエルの注意に2人は応えつつ、慎重に崖っぷちを進んでいく。
 何とか崖を抜けると、そこはただっ広い氷原が広がっている。
「快適快適! これが美しい風景の南国だったらなぁ……たまには休み欲しいよー!」
 エイリアがリアルブルーの景色を思い浮かべながら愚痴る。
「あぁ、南の方角を見て見ろ、青のワイバーンだ」
 メニエルの声に、エイリアとソルネイティアも思わず視線をそちらへとやる。
「あー、飛竜の皆だ! おーい、皆どこいくのー?」
「へー、青の飛竜が自由に飛んでる姿は初めて見るわね。気持ち良さそう……私も乗りたいくらい」
 飛竜達は遠い所を飛んでいるため、恐らく自分達に気付く事は無さそうだが、それでも曇天の下を悠々と飛んで行く彼らの姿には引き付けられる物がある。
「っ!?」
「わっ!」
「きゃっ!!」
 3人が飛竜に心奪われている時に事態は起こった。
 ほぼ時を同じくして3台共がスリップを起こしたのだ。
 3人は自分のトラックが他の2名のトラックにぶつからないようにと懸命にハンドルとアクセルを操作して、何とか車体の暴走を食い止めた。
「はぁ……びっくりした……」
「待って……あれ、さっきの青のワイバーンじゃ無い……?」
「強欲竜だ……! 討って出るぞ!!」
 3台は車を停めて、それぞれ車載のライフル銃を構えると強欲竜の群れに向かって一斉射撃を開始したのだった。

「ずっとトラックの中ってことはぁ……脱いでてもいいんだよねぇ?」
 周囲にトラックの影が無い事を確認して、ニケ(ka3871)はうふふ、と微笑んだ。
 本当はトラックに乗り込んだ瞬間に脱ぎ捨てたかったローブをばさーっと取っ払う。
 下に着ているのはビキニアーマーのみ。
 窓を全開にすると肌を突き刺すような寒さが全身を襲うが、露出狂を患うニケにとってはそれすら快感だった。
「あぁ……気持ちいい……」
 うっとりと恍惚の表情を浮かべながらも、ハンドルはしっかりと握って、アクセルはベタ踏み。
 そんなニケを突然の車体の揺れが襲った。
「な、何……!?」
 サイドミラーを見ると、強欲のワイバーン達が龍鉱石を狙ってその足爪を荷台に掛けていた。
「ひええ、こっちこないでくださいよぉ」
 今までの楽しい気分が一気に吹っ飛び、ニケは慌ててどうにか敵を撒こうと前のめりになりながら、車体を左右に振って逃げ始めた。


●行こうぜ! ピリオドの向こうへ!(ぐるぐる目)
「いやぁ、順調だなぁ」
 藤堂研司(ka0569)は『研ちゃんキッチン・ザ・トラックの主として! ここで助けにゃ男がすたる!』と気合いを入れて望んだこのレース。
 しかし、出だしは拍子抜けするほど快調で、どれほどアクセルを踏み込んでも60km異常のスピードは出ないが、見通しの良い氷原を快適に爆走していた。
 その横には神薙玲那(ka6173)とザレム・アズール(ka0878)のペアチーム、更にはエリオ・アルファーノ(ka4129)も並んでいる。
「これでもあたしはリアルブルー時代は生粋の走り屋だったんだぜ」
 玲那の告白にザレムは心強く思いながら運転を任せていた。
「すごい、ただっ広いところだな」
 ザレムが窓を開けると、肌に突き刺さるような冷気が車内に流れ込んでくる。
「寒っ!」
「あぁ、すまん」
 慌てて窓を閉めてハンドルを握る玲那に謝罪する。
「相変わらず外は極寒だな」
 暖房のお陰で車内は快適な為、忘れそうになるが、ここは北の最果て。極寒の地なのだ。
 着物の袂をおもむろにまさぐって……そういえばザレムは吸わないのだったと気付いて、玲那は煙草から手を離した。
「こう、快調だと吸いたくなるな……」
 ザレムならきっとどうぞという気がしなくもなかったが、まぁ、運転中の1時間ちょっとぐらい禁煙してみるか、とヘビースモーカーの玲那は小さく笑ってハンドルを握り直した。
「魔導トラック野郎とは俺の事だ!」
 エリオは1年ほど前に三輪魔導トラックの試乗運転に協力したあの日のことを思い出し、安定した乗り心地に鼻歌交じりでアクセルを踏む。
 平坦かつ敵の影も見えない今のうちに距離を稼ぎたいと思っていた所だが、それは他の2台も同じらしく暫く仲良く3台が並んで走っていた。
「……このまま同じ道を進むのもな……」
 エリオはやや東側に進路を取り、2台と距離を開ける。

 この選択がこの先で大きな分岐となるなんて、この時は誰もが思わなかったのだ。

 とても順調だった研司と玲那&ザレムチームを突然のアクシデントが襲った。
 凍結していた地表にタイヤを取られ、2台が大きくスリップしたのだ。
「っ!?」
「っこのっ!」
 研司も玲那もアクセルはそのままにハンドルを後輪と同じ方向へ切る『カウンターステア』をあてようと対策を取る。
「うぉぉおぉおお!?」
 右へ左へと振られ、ザレムはアシストグリップを両手で掴みながら悲鳴を上げる。
「っち、やたら滑る……もしかして氷の上か!? しっかり捕まっとけよ!!」
 玲那は大胆にハンドルを操作しながら、車体を立て直していく。
「……ふぅ、吃驚したぜ……」
「……ぅぷ」
「……ザレム? 大丈ぶ……ちょ、待て、お前、ここで吐くなよ!?」
 真っ青な顔で口元を抑えているザレムを見て、玲那は速やかにトラックの速度を落とし、ゆるりと止まった。
 ザレムはトラックが止まると同時にトラックから飛び出ると冷たい大地に四つん這いになって嘔吐く。
 玲那は額に手を当てて天を仰ぎながら、肺いっぱいに凍てつく空気を吸い込んで、吐いた。

 一方の研司は、リアルブルーの交通安全の神様とクリムゾンウェストの似たような精霊に祈りながら、冷静にハンドルを捌き、アクセルをコントロールする。
 なんとか立て直し進行方向を確認すると、再びゴールを目指してロスを取り戻そうとアクセルを踏み込んだ。
「あーびっくりした。あれ? 他のトラック見えなくなっちゃったな……散り散りになっちゃったか」
 きょろきょろと周囲を伺うがトラックの影は見えない。どうやら氷上を違う方向に滑ってしまったらしい。
 その時、バックミラー越しに後方上空を飛ぶ影を見つけ、一瞬身構えたが、すぐにそれが青のワイバーンと気付いて窓を開けると手を振った。
 青の飛竜が低空飛行で研司の横についた。
「やぁ、他のトラックは順調なのかな?」
 研司が問うと、飛竜は首を傾げながらかすかに頷き、研司を追い抜くと再び舞い上がっていく。
「雄大だなぁ」
 のんびりと研司はそう口にして、窓を閉めるとすっかり冷え込んでしまった車内を暖めるために暖房を少し強めてから、しっかりとハンドルを握り直した。

 エリオはというと……
「ぬぉおおおおおおおおっ!!!!!」
 強欲のワイバーンに付け狙われていた。
 とにかく逃げる、逃げる、逃げるしか無いので逃げる。
 しかし、強欲のワイバーンからしてもこれほど沢山の龍鉱石はごちそうなのだろう。執拗に追ってくる。
 時折、岩に乗り上げ、大きく車体を揺らしながらも、エリオはとにかくアクセルを緩めず突っ切って逃げ続けた。


●闘え! 走れ! 積荷を守れ!!
「エイルさん、どうですか!?」
「あと、1体よ!!」
 崖を抜けたと思ったら立て続けに強欲竜に襲われた、カール・フォルシアン(ka3702)&エイル・メヌエット(ka2807)のペア。
 カールの問いにエイルがライフルのトリガーに指を掛けたまま叫び返すと、風に煽られる髪をしっかりと抑えながらスコープを覗き、狙いを定めていた。
「転移実験成功の為にも、あなた達に龍鉱石は渡さないわ……!」
 強い想いを込めてトリガーを引くと、銃弾は見事強欲竜の眉間を撃ち抜き、強欲竜は地面へ叩き付けられた。
「ナイスショットです!」
 ミラー越しにそれを見届けたカールは、エイルとチームを組めて良かったと心から感謝していた。
 そして、前方を確認して「ぐ……」と唸った。
「どうしたの……? あぁ……」
 敵影が無くなったことを確認して、サンルーフを閉めたエイルは、カールの顔を見て首を傾げたが、前方を見て納得した。
「雪山?」
「敵を撒く時に道を逸れたみたいです。地図を見る限り引き返したり、迂回するより突っ切ってしまった方が速そうなので、行きますね」
 トラックに運動強化を施しながらカールは雪山に挑む。
 その横顔を頼もしく思いながらエイルは表情を和らげた。
「えぇ、お願いするわ」
「任せて下さい、こう見えても転移前はレーシングゲーム得意だったんですよ」
「……え? ゲーム……?」
 カールの言葉に両目を瞬かせながらエイルは首を傾げつつも、ローギアに入れ替え慎重に雪山へ挑むカールを信じようとシートベルトを締め直して前を見た。

「事前に酔い止め薬を飲んでおいた方が良かったかな、こりゃあ……」
 胃の中をすっからかんにした後も、青い顔で窓にもたれ掛かっている久延毘 大二郎(ka1771)が虚ろな瞳のまま呟いた。
 初っ端から強欲竜に狙われ、何とか撃退に成功したものの、その先で車体は大きく大回転(スリップという意味で。決して横転したわけでは無い。だが、大二郎はリアルブルーの遊園地にあるコーヒーカップを思い出した。そのくらい重力に振り廻され回転していた。横の運転手は楽しそうに笑っていたが)。
 あー、ついに身体が勝手に傾ぐような気までしてきた……と大二郎はぐったりしながら思い……気のせいでは無い事に気付く。
「おいアル君、車体がとんでもなく傾いてるぞ!? これ大丈夫なのか!?」
「はっはー、これくらい余裕余裕」
 わりと結構な斜面を、機導の徒の補助を受けながらトラックを爆走させているアルファス(ka3312)が楽しげにハンドルを切る。
 ガゴン! と車体が大きく揺れ、シートベルトをしているにも関わらず大二郎の身体も大きく跳ねた。
「ひっ!」
「さあ、風になろう! アクセル全開で行くよ!」
 平坦な道に出た途端に、アルファスがギアを操作し、勢いよくアクセルを踏み込む。
 ぶぉぉぉぉぉんとエンジンの回転音が車内に轟くと同時に、大二郎は背もたれに身体が貼り付くようなGを感じた。
「こ、ここで手を離したら風ではなく星になってしまう……!」
 大二郎の声にならない悲鳴を連れて、アルファスは爛々と瞳を輝かせた笑顔で、楽しくて仕方が無いといわんばかりに気持ち良くハンドルを回した。

「こっちに転移してきてからトラブルまみれで悪運ばっかり強くなった気がするわ……」
 ロベリア・李(ka4206)が愚痴るように独りごちながら、手元のPDAを操作する。
 初っ端から派手にスリップしてしまい、PDAで地図を確認するも、そもそも周囲は一面の氷原もしくは雪景色で代わり映えもせず、車載されたコンパスで辛うじて方向だけは確認しながら走り続けていた。
 その後も強欲竜が襲ってくるわ、逃げる途中でパンクに見舞われるわ、また強欲竜が襲ってくるわと、トラブルと襲撃の波状攻撃を受けて、ぐったりしていた。
「走行距離と方角からこの辺だと思うんだけど…………っ!」
 ガッタンガッタンガタンと車体が大きく跳ねるように動き、ロベリアは慌ててハンドルを握り直し、前をしっかりと見る。
 一面白いため見づらいが、どうやら大小様々なコブ状の悪路らしい。
「ったく。いいわ。やってやろうじゃない。整備士舐めんじゃないわよ!」
 機導の徒で車体の特徴を掴みつつ、アクセルを緩めないままにロベリアは悪路を突っ走っていった。

「……おかしいと思ったんだよね……」
 Capella(ka2390)は初っ端から道に迷ってしまった事に肩を落としていた。
 どうやら地図を逆さまに見ていたらしい。通りで先に出発したはずのトラックを一台も見ないわけで、気付いてすぐに戻ったため、さほどのロスにはならずにすんだのだが、その後も強欲や狂気の集団に襲われたりと散々な目に遭って、予定到着時刻はとっくに過ぎているのに未だにゴールは見えない。
 車幅ギリギリの崖っぷちをそろそろと走り抜け、ようやく快適な道に出たらしいことに気付き、周囲を見る。
「はぁ……青のワイバーン達とも会えてないしなぁ」
 空は晴れてきている。この薄水色の空に青のワイバーン達が飛ぶ姿はきっと美しいに違いない。
 消沈するCapellaを励ますように、肩に乗せたパンダ柄のマウスがてちてちとちいさな手で首筋を叩く。
「ん、ありがと、リゲル、愛してるよッ!
 ほおずりするようにリゲルに顔を寄せ、リゲルの励ましに元気を取り戻したCapellaは小さく微笑みながら、前を向いてアクセルをこれ以上無く踏み込む。
 そうして、ついに長い道中を抜け、目の前にロッソの影が見え始めたのだった。


●ゴールフラッグ!
「イーヤホゥ!!」
 指定された場所へトラックを停めると、まりおは勢いよくトラックから飛び出した。
「んー……でも僕より速い人がいたんだね」
 横には4台のトラックが止まっているのを見て、まりおはちょっと肩を落とした。
 それでも最後に青のワイバーンと邂逅して、龍鉱石を分けて貰ったり、安全な道を教えてもらえたのは僥倖だった。
「まぁ、面白い体験をしたし、よしとしよう」
 先にゴールしている5人が室内から手招きしているのを見て、まりおはトレードマークの帽子を被り直すと意気揚々とロッソの中へと入っていった。

「いやぁ、酷い目に遭った!」
 到着した者達が待つ休憩室に着いた真が、空いていた椅子に腰掛けるなりそう言って笑った。
 トラブルも歓迎! と思っていた真だが、崖を切り抜けた後から狂気と強欲竜に付け狙われ、ひき逃げたりと色々な撃退方法を試してみたが、最初から自ら進んでチームを組んでみても良かったかも知れないと、失った龍鉱石の量を見て思う。
 それでも終盤で青のワイバーンと邂逅を果たし、進む道があっていたと解った時にはホッとしたものだった。
「俺なんてずーっと敵さんに狙われて散々だぜ……」
 げっそりと机につっぷしているのはエリオだ。
 快適だったのは最初だけ。あとはずーっと強欲と狂気の波状攻撃に遭い、終いには龍鉱石を全て奪われてしまい、途方に暮れていた所を青のワイバーンに発見されて、何とか200kgだけ運べた。
 それでもずっとアクセルは踏みっぱなしだったと言うのだから頼もしい。
 散々な目に遭ったエリオの話しを聞きながら真は心から「お疲れ様」と告げたのだった。

 ハナはゴールした先にザレムの姿を見つけてぴょこんと近寄った。
「わぁ、ザレムくん早かったんですねぇ」
「あぁ、星野、お疲れさん」
 本当は玲那にお願いしてこのまま空のトラックを飛ばしてとんぼ返りをする予定だったのだが、残りのトラックは第六師団だけでも運べそうだという連絡を聞き、ザレムもここで一休みしていたところだった。
 暖かいお茶を飲みながら、ザレムのここまでの道のりを聞く事が出来て、参加した労力が報われた気がしたハナだった。

「すごい、波瀾万丈な旅路だったんだね……」
 アルファスと大二郎の話を聞いて、研司は目を白黒させながら、熱いお茶をすすっていた。
「そうだね、まさか、最後の最後で強欲竜と狂気に襲われている青のワイバーンを助けに入ることになるとは思わなかったよ……」 
 大二郎の青息吐息といった様子を見て、研司は心底同乗しながらアルファスを見る。
「あそこで見捨てていくなんていう選択肢はないからね。幸い、僕たちは最初以外敵と遭遇せずに済んでいたし」
「……そうだな、『敵とは』遭遇しなかったな……」
 大二郎は、数々のアクシデントとそのたびに繰り広げられたアルファスの過激なドライビングテクニックを思い出し、更に顔色を失う。
「だ、大丈夫……?」
 大二郎の顔色を見てトラックに乗ることがトラウマにならなければいいけど……と心配になりながら、研司はどう思い返してもスリップ以降平和だった道中に、神様と精霊に感謝を捧げたのだった。


●到着順位及び輸送重量
 1位 藤堂研司(2・4・14・10・18・6) …… 70分 1910kg【最速及び最輸送重量賞】
 2位 神薙玲那&ザレム・アズール(2・4・8・13・15・19) …… 100分 1420kg
 3位 ニケ(3・5・8・10・13・18) …… 100分 1030kg
 4位 Capella(16・8・13・5・1・10) …… 110分 1050kg
 5位 超級まりお(8・9・11・13・14・18) …… 115分 1550kg
 6位 カリン&花(1・7・8・12・11・19) …… 115分 1480kg
 7位 カール・フォルシアン&エイル・メヌエット(1・3・7・9・13・17) …… 120分 1260kg
 8位 ロベリア・李(4・15・7・12・16・13) …… 120分 1140kg
 9位 エリオ・アルファーノ(2、3、5、7、11、13) …… 120分 200kg【最敵遭遇賞】
 10位 アルファス&久延毘 大二郎(3・4・20・12・8・16) …… 125分 1830kg【最トラブル遭遇賞】
 11位 鞍馬 真(1・5・7・11・14・15) …… 125分 740kg
 12位 星野 ハナ(7・19・5・3・6・9) …… 125分 440g
 13位 テンシ・アガート(1・4・16・5・12・8) …… 130分 1650kg
 14位 ルンルン・リリカル・秋桜(19・5・17・12・20・15) …… 130分 1350kg
 15位 エイリア・ミルトン(1・4・13・19・16・7) …… 140分 1210kg
 16位 メニエル(1・4・13・19・16・7) …… 140分 1150kg
 17位 ソルネイティア(1・4・13・19・16・7) …… 140分 1060kg

●リザルト~数字の秘密~
 1~20をまず、奇数と偶数に分けます。
 そこから奇数は素数とその他に分けます。
 ・悪路(3つ)
  1:崖っぷち(20分ロス)
  9:新雪な上り坂(20分ロス)
  15:ゴリゴリな氷塊(10分ロス&100~200kg紛失)
 ・強欲または狂気遭遇(7つ)
  3:強欲(積載重量から100~600kgを紛失&10分ロス)
  5:狂気(同上)
  7:強欲(同上)
  11:狂気(同上)
  13:強欲(同上)
  17:狂気(同上)
  19:強欲(同上)
 偶数は4の倍数とその他に分けます。
 ・快適な道中及び青のワイバーンとの邂逅(5つ)
  2:快適
  6:青のワイバーンと遭遇(-があれば+200kg回復&5分ロス)
  10:快適
  14:青のワイバーンと遭遇(-があれば+200kg回復&5分ロス)
  18:快適
 ・アクシデント(5つ)
  4:スリップ!!(残りの順番シャッフル)(10分ロス)
  8:突然の車酔い(10分ロス)
  12:パンク!(10分ロス)
  16:迷子(10分ロス)
  20:強欲と狂気に青の龍が狙われている!(20分ロス&-があれば+200kg回復)

 その他
 ・チームの場合、戦闘時の時短及び紛失量の軽減
 ・プレイング内容により時短・紛失量の軽減

依頼結果

依頼成功度成功
面白かった! 9
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MVP一覧

  • 龍盟の戦士
    藤堂研司ka0569
  • 飽くなき探求者
    久延毘 大二郎ka1771
  • 《聡明》なる天空の術師
    アルファスka3312
  • 威風の能弁者
    エリオ・アルファーノka4129

重体一覧

参加者一覧

  • 龍盟の戦士
    藤堂研司(ka0569
    人間(蒼)|26才|男性|猟撃士
  • 遥かなる未来
    テンシ・アガート(ka0589
    人間(蒼)|18才|男性|霊闘士

  •  (ka0824
    人間(蒼)|16才|女性|疾影士
  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • 飽くなき探求者
    久延毘 大二郎(ka1771
    人間(蒼)|22才|男性|魔術師
  • マウス、激ラブ!
    Capella(ka2390
    人間(紅)|15才|女性|機導師
  • 愛にすべてを
    エイル・メヌエット(ka2807
    人間(紅)|23才|女性|聖導士
  • 《聡明》なる天空の術師
    アルファス(ka3312
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 崑崙の壁
    メニエル(ka3428
    人間(蒼)|32才|男性|猟撃士
  • 冬に訪れた光
    エイリア・ミルトン(ka3453
    人間(蒼)|18才|女性|猟撃士
  • はじめての友達
    カール・フォルシアン(ka3702
    人間(蒼)|13才|男性|機導師

  • ニケ(ka3871
    人間(蒼)|22才|女性|疾影士
  • 威風の能弁者
    エリオ・アルファーノ(ka4129
    人間(紅)|40才|男性|疾影士
  • 軌跡を辿った今に笑む
    ロベリア・李(ka4206
    人間(蒼)|38才|女性|機導師
  • 鈴蘭の妖精
    カリン(ka5456
    エルフ|17才|女性|機導師
  • 忍軍創設者
    ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784
    人間(蒼)|17才|女性|符術師

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • エルフの魔術師
    ソルネイティア(ka5932
    エルフ|16才|女性|魔術師
  • 頼れるお姉さん
    神薙玲那(ka6173
    人間(蒼)|20才|女性|聖導士
  • 仕事が丁寧
    花(ka6246
    鬼|42才|男性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン チキチキ何たら(相談卓)
ロベリア・李(ka4206
人間(リアルブルー)|38才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2016/07/18 15:46:15
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/07/18 02:58:32