ゲスト
(ka0000)
珈琲サロンとぱぁず最後の依頼
マスター:佐倉眸

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/07/25 19:00
- 完成日
- 2016/07/31 00:19
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
蒸気工場都市フマーレから極彩色の街ヴァリオスへ続く街道の入り口、頼んだ馬車と依頼したハンターを待ちながらモニカは空を眺めていた。
早朝の晴れ渡った青い空に遠く、積乱雲がゆっくりと動いている。
「熱いねー」
「ついねー」
モニカの言葉に、最近よくしゃべるようになったピノが答える。
馬車の到着にはもう少し掛かりそうだった。
ヴァリオスで行く当てを無くしたモニカは彼女とピノを拾った老人に、彼が営んでいた喫茶店の職を紹介され、フマーレへ移ってきた。
冬場に体調を崩した老人を見舞い、調子が戻らないことからヴァリオスに帰ることを決め、諸諸の支度を調えていた矢先のこと、老人に店の経営を任されていた孫娘が歪虚に誘拐され、契約を強要される事件が起きた。
その契約のためか、或いは自失の内に歪虚の力を発動させて仕舞ったためか、彼女の視力は失われ、歪虚からの保護と回復のため、この前からハンターオフィスに保護されていた。
とても店を再開出来る状態では無いから、と閉店を決め、頼まれた片付けを終え、モニカも当初の予定通りフマーレを発つことになった。
昨晩、挨拶に訪れたオフィスで、彼女は転居を予定しているアパートで隣人となるらしい民間の警邏機関の青年と話しており、その手には贈り物だと言う杖が握られていた。
老人、彼女の祖父にも贈り物を預かっていると言うと、貰ってばかりねと、微笑んだ顔が、モニカが見る彼女の最後の笑顔になった。
街道から車輪の音が聞こえ、到着した馬車がフマーレの街中へと走って行く。
「もーか、まぁしゃん」
「そうだねー、お馬さんだねー」
「まぁしゃん、うーわー」
「そうだねー、お馬さん、大っきいねー……」
ばいばい、と小さな手を振っているピノは、同じ年頃の子ども達に比べて随分と小柄だ。
喫茶店で働いていた頃は、近所に住むピノより少し年上の子のお母さん達に心配されて、もう要らないからと読み込まれた育児書や古着を沢山譲って貰った。
それらを詰め込んだ鞄は来た時よりも倍以上に膨らんでいた。
一台、また一台と到着した馬車が街へ走って行き、或いは下りて馬を休ませている。
少し早く来すぎただろうかと思い始めた頃、小さな馬車がモニカの傍に停まった。
モニカの依頼を割安で引き受けた馭者の男は、送り届けた後ヴァリオスで休暇を過ごすのだという。
●
護衛を頼んだハンターの到着を待ちながら、モニカは荷台に荷物を積んで、助手席に座りピノを膝に座らせる。
「めーめ、めーめ」
モニカの服にしがみつき微睡んでいたピノが不意に弾かれたような声を上げて空へと手を伸ばす。
「どうしたの? 良い天気じゃない」
「いや、今は晴れているが……向こうの方はどうだろうな」
でかい雲もあるしと、馭者も空を眺めて言う。
折角の休暇に土砂降りは勘弁して欲しいなと歯を覗かせて笑いながら。
「だが夏の雨だ、すぐに止むさ。嬢ちゃん達はちっと草臥れる旅になるかも知れんが」
モニカはそれくらいなら大丈夫とピノを撫でる。ピノの合羽とタオルを荷物から出添うとした頃、ハンター達が集まった。
「今日はよろしくお願いします。何だか、向こうの方は雨みたいなんですが……大丈夫、ですよね……」
出発の間際に行き違った街道閉鎖の連絡、ゴブリンの大規模な群が発生しているらしい。
蒸気工場都市フマーレから極彩色の街ヴァリオスへ続く街道の入り口、頼んだ馬車と依頼したハンターを待ちながらモニカは空を眺めていた。
早朝の晴れ渡った青い空に遠く、積乱雲がゆっくりと動いている。
「熱いねー」
「ついねー」
モニカの言葉に、最近よくしゃべるようになったピノが答える。
馬車の到着にはもう少し掛かりそうだった。
ヴァリオスで行く当てを無くしたモニカは彼女とピノを拾った老人に、彼が営んでいた喫茶店の職を紹介され、フマーレへ移ってきた。
冬場に体調を崩した老人を見舞い、調子が戻らないことからヴァリオスに帰ることを決め、諸諸の支度を調えていた矢先のこと、老人に店の経営を任されていた孫娘が歪虚に誘拐され、契約を強要される事件が起きた。
その契約のためか、或いは自失の内に歪虚の力を発動させて仕舞ったためか、彼女の視力は失われ、歪虚からの保護と回復のため、この前からハンターオフィスに保護されていた。
とても店を再開出来る状態では無いから、と閉店を決め、頼まれた片付けを終え、モニカも当初の予定通りフマーレを発つことになった。
昨晩、挨拶に訪れたオフィスで、彼女は転居を予定しているアパートで隣人となるらしい民間の警邏機関の青年と話しており、その手には贈り物だと言う杖が握られていた。
老人、彼女の祖父にも贈り物を預かっていると言うと、貰ってばかりねと、微笑んだ顔が、モニカが見る彼女の最後の笑顔になった。
街道から車輪の音が聞こえ、到着した馬車がフマーレの街中へと走って行く。
「もーか、まぁしゃん」
「そうだねー、お馬さんだねー」
「まぁしゃん、うーわー」
「そうだねー、お馬さん、大っきいねー……」
ばいばい、と小さな手を振っているピノは、同じ年頃の子ども達に比べて随分と小柄だ。
喫茶店で働いていた頃は、近所に住むピノより少し年上の子のお母さん達に心配されて、もう要らないからと読み込まれた育児書や古着を沢山譲って貰った。
それらを詰め込んだ鞄は来た時よりも倍以上に膨らんでいた。
一台、また一台と到着した馬車が街へ走って行き、或いは下りて馬を休ませている。
少し早く来すぎただろうかと思い始めた頃、小さな馬車がモニカの傍に停まった。
モニカの依頼を割安で引き受けた馭者の男は、送り届けた後ヴァリオスで休暇を過ごすのだという。
●
護衛を頼んだハンターの到着を待ちながら、モニカは荷台に荷物を積んで、助手席に座りピノを膝に座らせる。
「めーめ、めーめ」
モニカの服にしがみつき微睡んでいたピノが不意に弾かれたような声を上げて空へと手を伸ばす。
「どうしたの? 良い天気じゃない」
「いや、今は晴れているが……向こうの方はどうだろうな」
でかい雲もあるしと、馭者も空を眺めて言う。
折角の休暇に土砂降りは勘弁して欲しいなと歯を覗かせて笑いながら。
「だが夏の雨だ、すぐに止むさ。嬢ちゃん達はちっと草臥れる旅になるかも知れんが」
モニカはそれくらいなら大丈夫とピノを撫でる。ピノの合羽とタオルを荷物から出添うとした頃、ハンター達が集まった。
「今日はよろしくお願いします。何だか、向こうの方は雨みたいなんですが……大丈夫、ですよね……」
出発の間際に行き違った街道閉鎖の連絡、ゴブリンの大規模な群が発生しているらしい。
リプレイ本文
●
小さな馬車だ。
荷台には荷物と、
「体力は温存しておくに越した事はないですからね! はい乗った乗ったーっ!」
松瀬 柚子(ka4625)に促されたカリアナ・ノート(ka3733)が大鎌を抱えてちょこんと腰掛ける。
マキナ・バベッジ(ka4302)とマリィア・バルデス(ka5848)は魔導バイクを押して前へ出る。
「有事の際、あなたは馬を宥めることに専念して下さい。……あなたのことも必ずお守りしますので」
「――そうね、それから外待雨さんがディヴァインウィルを使う時は指示に従ってほしい……結界は見えないから」
先行する2人がバイクに跨がりながら振り返る。
手を見せたら止まれ、とマリィアが10メートル程バイクを走らせながらハンドルを放す。斜めに伸ばした腕を曲げて、後ろ手の掌を後方のハンター達へ向け振り返る。
見えるかしらと尋ねると、馭者を含めた全員から見えたと答えが返る。
「いいわ。それとモニカさん、戦闘が始まったらしっかり弟さんを抱えていてね?」
助手席でモニカが頷くのを見ると、マリィアはそのままバイクを走らせる。
「では、僕も行きます。……先が雨模様ですし、合羽を用意しておいた方がいいですね」
馭者は荷台を振り返る。木の枝に渡せば簡易的なテントに出来る帆布は積んであるらしい。
マキナがマリィアに追い付く頃、馭者が手綱を揺らして馬を走らせる。
馬の歩みが定まると隣を歩く外待雨 時雨(ka0227)は心なしか上機嫌で空を見上げた。
「……今日は……良い雨に、なりそうですね……」
まだ遠い雨の匂いが薫って、さざめく音が聞こえるように瞼を伏せる。
見送りの日が雨というのも一つの縁なのだろうと、助手席で弟を抱える少女を、守れる場所を歩きながらそっと見上げる。
「新たなる旅路、ですか。いいですねぇ……」
松瀬が腕を伸ばして今はまだ明るい空を仰ぐ。
結わえた茶色の髪が揺れ、片目を隠した青い瞳を輝かせて笑う。
「しっかり護ってみせますよ!」
モニカに声を掛けると、瞬いたその腕の中からピノが小さな手を松瀬に伸ばして、幼い声で応える。
喜んでいるみたいだとモニカが訳し、よろしくお願いしますと頭を揺らした。
「馬車からは出さんようにな――ああ、聞こえとる……こっちの周りも、何もおらんで」
冬樹 文太(ka0124)がトランシーバーを肩と顎で支えながらその様子を窘め、ピノの手が引っ込むと先行しているマキナとの通信に戻る。
前方も暫くは安全なようだ。
●
道の左右をそれぞれ警戒しながらマキナとマリィアはバイクを走らせる。離れすぎないスピードを保って、進める駆動音が心地良く響く静かな街道。
懸念したゴブリンの痕跡も気配も、ここまではまだ至っていないように見える。
もう暫くこのまま走っても良さそうだと、ハンドルを握り直した。
「……罠にも、注意しましょう。馬の足や車輪が傷付きます」
「そうね、……」
マキナが道を見ながら走って行く僅かに後方をマリィアが走る。掛けられた言葉に答えながら、ふと頬に触れた冷たい感触に空を見上げる。
そろそろ降り出してきそうだ。
エンジンを軽く吹かして走らせる。緩やかなカーブを越えて周りを警戒しながら駐めると、ぽとりと雲間からもう一滴零れ落ちた。
重たく垂れ込める雲と影が近付いてくる。
その手前に見通しよく開けた場所を探す。このまま進めば雨に行き当たる前に間に合うだろう。
「あそこが良さそうね」
マキナがトランシーバーを執ると、馬車の方も雨の気配に気付いたらしく、止まろうと相談する声が返される。
停まれそうな場所をマリィアが見に行っていると伝え、マキナはそこまでの安全を確かめながら追った。
こっちだとマリィアがマキナを、馬車を呼んだ。
降り始めた雨は小雨に変わり、遠くの雲はまだ暗い。暫く待てば上がるだろうが、この中の行軍は控えた方が良い。
馭者が慌てて帆布を張る中で、モニカもピノに合羽を着せる。
冬樹は空を眺める外待雨に声を掛けた。
「交替で見張りやな。嬢ちゃん、行こか」
馬車の周りに4人のハンターを残して銃を担ぐ。白い肌を尚蒼白に、周囲への警戒を強めれば牙のように尖る己の歯が口腔を擽った。
「良い雨、ですね……」
ぽたりと外待雨の頬に落ちた雫は、果たして。
瞬きの間、纏う白無垢、寄り添う狐の面を雨音に溶かして、祈るように宝石を揺らす銀鎖を飾る手を組んだ。
「今日は気ぃ遣てはよ上げてもらう様頼んでくれや」
冬樹が冗談めかしてそう口角を上げる。濃い雨音の中、確実に何かいるようだ。こちらに気付いた様子も無いが、狙い定めて撃つのには少し遠い。
銃口をそちらへ向けながら他の気配も落とさぬように探る。
マリィアは馬車の横に駐めたバイクを銃架代わりに機関銃のスコープを覗いた。
湿気った髪を掻き上げて、スコープの狙点が雨をかいくぐるようにゴブリンの腹を捕らえた。こちらには1匹。
松瀬も交代に備えマントを羽織って帆布の外へ出る。
「こっちにもいるんですよね、狙えます?」
「……んー、もうちぃとやな……あ、動い、――――」
音を立てるなら一度に済ませた方が良いだろうと雨を庇う様に手を翳しながら遠くを覗う。
捕らえられるのは気配だけだ。隣でリアサイトを覗く冬樹に尋ねる。
冬樹は片目を瞑って呻るように喉を鳴らした。あと一歩近付けば射程内だ。
マテリアルを込めて打ち込む弾丸が、連射の音を立てて雨を裂く。
同時に射出されたマリィアの弾丸も的確にゴブリンを捉えた。
近くには他の気配を感じないが、音が聞こえたゴブリンや他の生き物が飛び出してきても困るからと外待雨が数秒間結界を張る。
銃弾の反響が引いて、遠く斃れたゴブリンの骸がその血を雨に流しきって。
結界の中から甘い香りが零れてきた。
馬車の荷台を少し開けて、小さなポットに数杯の湯を沸かす。小さな炎を保ちながら、カリアナは仲間のハンター達を見上げた。
「おねーさん達も冷えてしまうと思ったの」
温かいとモニカがカップを受け取る。見張りを交代して戻るハンターにも差し出しながら、カリアナは肩を竦めた。
「むぅ。やっぱりお姉ちゃんみたいに上手く淹れられないわ。もっと練習しないと……」
雨が染みたとフードを絞って松瀬は冬樹の居た場所から数歩前へ、先程の気配は既に無く新しく近付いてくる様子も無い。
外待雨はすぐに結界を張り直せるようにと、馬車の傍で警戒を解かぬまま静かに佇み、マリィアもスコープから目を離さない。
「交代しますよ、雨に打たれると体力を消耗しますから……」
「行軍は慣れてるし敵は最初に歓迎したいもの……ふふっ」
見付けた、と狙点を定めトリガーに指を掛けながらハンター達へ声を掛ける。
警戒の強まる中で3匹目のゴブリンが斃れた。
「雨って苦手な人もいるみたいだけど、私は好き! モニカおねーさんはどう?」
続いた銃声に驚く弟をあやすモニカにカリアナが声を掛ける。好きでは無いと言う様にモニカは首を横に揺らした。
カリアナが見張りを交代して暫くすると雨足が急に弱まり眩しい程の陽差しが覗く。
上がったかと馭者が布を解き馬の様子を見る。道の泥濘にさえ気を付ければすぐにでも走り出せそうだ。
●
雨上がりの道を馬が泥に足を取られない速度で進む。バイクもタイヤが水溜まりを跳ねさせないスピードで。
雨の中に見付けたゴブリンが斥候だったのだろうか、明るい道はとても静かだ。
先行する2人はその陽差しの中、屯する数匹のゴブリンを見付ける。斥候が戻らず雨で銃声も遮られ無警戒に道へ出てきた群のようだ。
しかし、見通しの良い道では同時にこちらの姿も露見している。
咄嗟に後方へ手の合図を向けながら、マリィアはバイクの速度を上げてその中を突っ切っていく。
慌てた鳴き声が飛び交うが、不意の遭遇に統率を乱した群を抜けることは易く、その後方で馬車のハンターと群を挟むように構える。
馬車の傍らで外待ち雨が手を翳し結界を張る。その結界の傍で冬樹とカリアナが敵に得物を向け、マキナはバイクを降りて鞭を構える。松瀬は前へと走る。
「……それじゃ、ちょっと……疾走りますか、ねッ!」
松瀬を囲み中空に並ぶカードの幻影、異なる意匠を描くシルエットの唯一枚へ指が吸い寄せられると、選ばれなかったカードが砕ける光り粒子の中で、そのカードが身体に吸い込まれていく。
マテリアルを脚から全身へ、熱をバネに変えて地面を蹴る。
経文を彫り込んだ退魔の刀、大振りのそれを逆手に構え。
「その命、殺った」
腹から首まで逆袈裟に切り上げ。次は胸を貫いて。
群の中を風のように、ゴブリンの注意を引き付けながら走り抜ける。
刈り残しを狙って、マリィアが的確に弾丸を叩き込み、まだ沸いてくるゴブリンへ、冬樹が弾丸の雨を降らせた。
一度に半数以上を削られた群が浮き足立って棍棒を振り回しながら前後へと走る。
飛び出してきた1匹の手に握られた石礫にマキナが咄嗟に鞭を振るう。
グローブに隠される左手の甲に浮かぶ幻影は、緻密に歯車を噛み合わせて針を回し、緩やかに覚醒の時を刻んでいく。
編まれた鋼線を伝うモーターの振動が、礫を腕ごと弾き飛ばす。そのまま向かってくるゴブリンの拳を背後に守る馬車へ至らせまいと腕に受け止めて手許で翻す鞭で反撃に転じる。
同じく飛び出して転がってきたゴブリンに脚を食い付かれたカリアナは、馴れない取り回しながら鎌の刃と重さでその身体を引き裂いた。
「もお! こんな時にこなくてもいいのにッ! ほんと、ゴブって野暮なんだからゴブって!」
不満を言いながらも鎌で刺しきったゴブリンをその場に、他にも近付くものが無いか見回した。
大丈夫ですよと、3人を宥めながら外待雨は結界に専念する。
「傍で守っております……」
まだ余裕は有る、無くとも彼等を庇うにはこの身一つでも十分にと見回しながら、深く祈りを込めた。
不可視の結界は強固に近付く者を阻む。
リロードした銃を構え、まだ動くゴブリンを狙いマテリアルを込めて放つ。
「アンタ達の相手は私ですよ! こっちを見ろってんです!」
「……おー、おおきに」
銃口を向けた冬樹へ攻撃を促す様に得物を掲げて、濁った声を発するゴブリンがいた。
松瀬は刃を向けて地面を蹴ると、その胴体を掻っ捌きながら他のゴブリンの気を引き付ける。一時注意を逸らしたゴブリン達を弾丸が貫き。
「……むぅ。ヴァリオスついたらお風呂入るぅ! もお! ゴブの所為なんだからっ!」
カリアナが泥濘の中で大鎌を振るい放つ水の礫に潰される。
「――まだいるみたい、警戒して!」
拳銃に持ち替えて茂みから覗く頭を撃ち抜き、マリィアは感覚を澄ませて周囲を見回す。
中央の残りを松瀬とマキナに任せると、茂みの中を馬車まで回り込んだ1匹に機関銃の照準を据える。
銃架がいる程の重さと長い銃身を持つその銃の射程は群の先からでも優に馬車へ届き、放たれる弾丸は一撃で迫ろうとするゴブリンを爆ぜる程に弾き飛ばした。
咄嗟にモニカがピノの目を覆ったが、それが最後の1匹だったらしい。
亡骸を数えてもそう多くは無く、恐らくまだ残党が潜んでいるのだろう。
「……先も警戒した方が良いでしょうね」
冬樹とマリィアが周囲への警戒を強めても、その目の届く範囲に敵の気配は見当たらない。
行きましょうかとマリィアがマキナに声を掛け、銃を担いでバイクに跨がる。
暫く走らせてから周囲を見回し、進めそうだと馬車に連絡を取る。
結界を解き、それぞれに得物を下ろす。
「ふう、一段落ですか……って冬樹さん顔色悪すぎでは!? 5秒後には死にそうな顔色してますよ!」
刀を収めて安堵の息を。覚醒した冬樹の青い頬を見上げ、松瀬の青い瞳が懐っこく笑む。
「んぁ?……あ゛ーまたか。平気や平気。ほんま、この姿嫌いやわ」
がしがしと金の髪を掻き乱し、眇めた目でぎこちなく笑う。
高揚が収まるに連れ、顔色も戻り唇の端から覗く犬歯も引っ込んでいく。
警戒を保って馬車は進む。
吃驚したと、冷えた指先を擦り合わせるモニカに、外待雨が話し掛けた。
「……翡翠のペンダントのご婦人は……元気にされてますでしょうか……」
あの時はありがとうとモニカの顔に表情が戻る。あれからそう経たずにフマーレに来てしまったからと轍を振り返りながら。
「もし……覚えて頂けていたのなら……。……嬉しいものやも、しれません……」
外待雨の穏やかな声に、そう思うと頷き、ピノも話を聞いていたのか手を揺らして何かを伝えようとする。
きっとお礼を言おうとしているのだと、モニカはピンの小さな頭を撫でた。
●
残党に行き合うことも無く無事に街道を越えヴァリオスに到着する。
ゴブリン出没の知らせを受けていた街道の警備に無事を問われ、道中の戦闘を伝えた。
「今日はありがとうございました。……本当に、すごく、すごく、……」
フマーレの件が過ぎったのだろう、滲んだ目を擦ってモニカはハンター達に頭を下げた。
「……雨は……何時だって過ぎ去り、忘れ行くもの……だからこそ……ふと見上げれば、出会えるものです……」
外待雨が肩へ手を伸ばし掛け、顔を上げてと促す様に話し掛ける。
「また、何処かで……お会い致しましょう……」
そう囁けば、明るさを取り戻す少女の声で、はい、と応えた。
「せや……道は続いてるし、また気ぃ向いたら会いに来てやってくれや」
また、な。と冬樹が目を細めると、モニカに抱えられたピノが「まぁな」と、その言葉を真似るように手を振った。
「よい未来を掴むことができるのを願っています……」
必要なら機械の修理も手伝うと買って出て、マキナが穏やかな声で告げる。
「トパーズは、勇気を持って未来に進む為のサポートをする石とよばれているんです」
不意に告げられたその名前に目を瞠って、はい、と小さな声で、けれど確りと頷いた。
「お供が出来てよかったです!」
新しい旅路だと聞いていたから、その始まりに添えたことを。松瀬の溌剌とした笑顔を眩しげに見る。
「また、ご縁が逢ったら。……新しい日々に、幸多からん事をお祈りしていますっ!」
松瀬の言葉に頷いてモニカがもう一度頭を下げる。
全員無事に付けて良かったと、マリィアがハンター達と依頼人、馭者と見回して肩の力を抜いた。
雨に湿気た髪も走る内に乾いたようだ。
ヴァリオスに帰ってきたモニカにエーレンフリートはその無事を喜んだ。
差し出された贈り物の包みを受け取り、見慣れぬ字で綴られた孫娘からの手紙を無言で読むと、暫く1人にして欲しいと部屋に籠もった。
一晩明けてモニカが部屋を覗くと、贈り物の包装が丁寧に解かれ、畳まれたその裏に試し書きのように、孫娘の名が綴られていた。
小さな馬車だ。
荷台には荷物と、
「体力は温存しておくに越した事はないですからね! はい乗った乗ったーっ!」
松瀬 柚子(ka4625)に促されたカリアナ・ノート(ka3733)が大鎌を抱えてちょこんと腰掛ける。
マキナ・バベッジ(ka4302)とマリィア・バルデス(ka5848)は魔導バイクを押して前へ出る。
「有事の際、あなたは馬を宥めることに専念して下さい。……あなたのことも必ずお守りしますので」
「――そうね、それから外待雨さんがディヴァインウィルを使う時は指示に従ってほしい……結界は見えないから」
先行する2人がバイクに跨がりながら振り返る。
手を見せたら止まれ、とマリィアが10メートル程バイクを走らせながらハンドルを放す。斜めに伸ばした腕を曲げて、後ろ手の掌を後方のハンター達へ向け振り返る。
見えるかしらと尋ねると、馭者を含めた全員から見えたと答えが返る。
「いいわ。それとモニカさん、戦闘が始まったらしっかり弟さんを抱えていてね?」
助手席でモニカが頷くのを見ると、マリィアはそのままバイクを走らせる。
「では、僕も行きます。……先が雨模様ですし、合羽を用意しておいた方がいいですね」
馭者は荷台を振り返る。木の枝に渡せば簡易的なテントに出来る帆布は積んであるらしい。
マキナがマリィアに追い付く頃、馭者が手綱を揺らして馬を走らせる。
馬の歩みが定まると隣を歩く外待雨 時雨(ka0227)は心なしか上機嫌で空を見上げた。
「……今日は……良い雨に、なりそうですね……」
まだ遠い雨の匂いが薫って、さざめく音が聞こえるように瞼を伏せる。
見送りの日が雨というのも一つの縁なのだろうと、助手席で弟を抱える少女を、守れる場所を歩きながらそっと見上げる。
「新たなる旅路、ですか。いいですねぇ……」
松瀬が腕を伸ばして今はまだ明るい空を仰ぐ。
結わえた茶色の髪が揺れ、片目を隠した青い瞳を輝かせて笑う。
「しっかり護ってみせますよ!」
モニカに声を掛けると、瞬いたその腕の中からピノが小さな手を松瀬に伸ばして、幼い声で応える。
喜んでいるみたいだとモニカが訳し、よろしくお願いしますと頭を揺らした。
「馬車からは出さんようにな――ああ、聞こえとる……こっちの周りも、何もおらんで」
冬樹 文太(ka0124)がトランシーバーを肩と顎で支えながらその様子を窘め、ピノの手が引っ込むと先行しているマキナとの通信に戻る。
前方も暫くは安全なようだ。
●
道の左右をそれぞれ警戒しながらマキナとマリィアはバイクを走らせる。離れすぎないスピードを保って、進める駆動音が心地良く響く静かな街道。
懸念したゴブリンの痕跡も気配も、ここまではまだ至っていないように見える。
もう暫くこのまま走っても良さそうだと、ハンドルを握り直した。
「……罠にも、注意しましょう。馬の足や車輪が傷付きます」
「そうね、……」
マキナが道を見ながら走って行く僅かに後方をマリィアが走る。掛けられた言葉に答えながら、ふと頬に触れた冷たい感触に空を見上げる。
そろそろ降り出してきそうだ。
エンジンを軽く吹かして走らせる。緩やかなカーブを越えて周りを警戒しながら駐めると、ぽとりと雲間からもう一滴零れ落ちた。
重たく垂れ込める雲と影が近付いてくる。
その手前に見通しよく開けた場所を探す。このまま進めば雨に行き当たる前に間に合うだろう。
「あそこが良さそうね」
マキナがトランシーバーを執ると、馬車の方も雨の気配に気付いたらしく、止まろうと相談する声が返される。
停まれそうな場所をマリィアが見に行っていると伝え、マキナはそこまでの安全を確かめながら追った。
こっちだとマリィアがマキナを、馬車を呼んだ。
降り始めた雨は小雨に変わり、遠くの雲はまだ暗い。暫く待てば上がるだろうが、この中の行軍は控えた方が良い。
馭者が慌てて帆布を張る中で、モニカもピノに合羽を着せる。
冬樹は空を眺める外待雨に声を掛けた。
「交替で見張りやな。嬢ちゃん、行こか」
馬車の周りに4人のハンターを残して銃を担ぐ。白い肌を尚蒼白に、周囲への警戒を強めれば牙のように尖る己の歯が口腔を擽った。
「良い雨、ですね……」
ぽたりと外待雨の頬に落ちた雫は、果たして。
瞬きの間、纏う白無垢、寄り添う狐の面を雨音に溶かして、祈るように宝石を揺らす銀鎖を飾る手を組んだ。
「今日は気ぃ遣てはよ上げてもらう様頼んでくれや」
冬樹が冗談めかしてそう口角を上げる。濃い雨音の中、確実に何かいるようだ。こちらに気付いた様子も無いが、狙い定めて撃つのには少し遠い。
銃口をそちらへ向けながら他の気配も落とさぬように探る。
マリィアは馬車の横に駐めたバイクを銃架代わりに機関銃のスコープを覗いた。
湿気った髪を掻き上げて、スコープの狙点が雨をかいくぐるようにゴブリンの腹を捕らえた。こちらには1匹。
松瀬も交代に備えマントを羽織って帆布の外へ出る。
「こっちにもいるんですよね、狙えます?」
「……んー、もうちぃとやな……あ、動い、――――」
音を立てるなら一度に済ませた方が良いだろうと雨を庇う様に手を翳しながら遠くを覗う。
捕らえられるのは気配だけだ。隣でリアサイトを覗く冬樹に尋ねる。
冬樹は片目を瞑って呻るように喉を鳴らした。あと一歩近付けば射程内だ。
マテリアルを込めて打ち込む弾丸が、連射の音を立てて雨を裂く。
同時に射出されたマリィアの弾丸も的確にゴブリンを捉えた。
近くには他の気配を感じないが、音が聞こえたゴブリンや他の生き物が飛び出してきても困るからと外待雨が数秒間結界を張る。
銃弾の反響が引いて、遠く斃れたゴブリンの骸がその血を雨に流しきって。
結界の中から甘い香りが零れてきた。
馬車の荷台を少し開けて、小さなポットに数杯の湯を沸かす。小さな炎を保ちながら、カリアナは仲間のハンター達を見上げた。
「おねーさん達も冷えてしまうと思ったの」
温かいとモニカがカップを受け取る。見張りを交代して戻るハンターにも差し出しながら、カリアナは肩を竦めた。
「むぅ。やっぱりお姉ちゃんみたいに上手く淹れられないわ。もっと練習しないと……」
雨が染みたとフードを絞って松瀬は冬樹の居た場所から数歩前へ、先程の気配は既に無く新しく近付いてくる様子も無い。
外待雨はすぐに結界を張り直せるようにと、馬車の傍で警戒を解かぬまま静かに佇み、マリィアもスコープから目を離さない。
「交代しますよ、雨に打たれると体力を消耗しますから……」
「行軍は慣れてるし敵は最初に歓迎したいもの……ふふっ」
見付けた、と狙点を定めトリガーに指を掛けながらハンター達へ声を掛ける。
警戒の強まる中で3匹目のゴブリンが斃れた。
「雨って苦手な人もいるみたいだけど、私は好き! モニカおねーさんはどう?」
続いた銃声に驚く弟をあやすモニカにカリアナが声を掛ける。好きでは無いと言う様にモニカは首を横に揺らした。
カリアナが見張りを交代して暫くすると雨足が急に弱まり眩しい程の陽差しが覗く。
上がったかと馭者が布を解き馬の様子を見る。道の泥濘にさえ気を付ければすぐにでも走り出せそうだ。
●
雨上がりの道を馬が泥に足を取られない速度で進む。バイクもタイヤが水溜まりを跳ねさせないスピードで。
雨の中に見付けたゴブリンが斥候だったのだろうか、明るい道はとても静かだ。
先行する2人はその陽差しの中、屯する数匹のゴブリンを見付ける。斥候が戻らず雨で銃声も遮られ無警戒に道へ出てきた群のようだ。
しかし、見通しの良い道では同時にこちらの姿も露見している。
咄嗟に後方へ手の合図を向けながら、マリィアはバイクの速度を上げてその中を突っ切っていく。
慌てた鳴き声が飛び交うが、不意の遭遇に統率を乱した群を抜けることは易く、その後方で馬車のハンターと群を挟むように構える。
馬車の傍らで外待ち雨が手を翳し結界を張る。その結界の傍で冬樹とカリアナが敵に得物を向け、マキナはバイクを降りて鞭を構える。松瀬は前へと走る。
「……それじゃ、ちょっと……疾走りますか、ねッ!」
松瀬を囲み中空に並ぶカードの幻影、異なる意匠を描くシルエットの唯一枚へ指が吸い寄せられると、選ばれなかったカードが砕ける光り粒子の中で、そのカードが身体に吸い込まれていく。
マテリアルを脚から全身へ、熱をバネに変えて地面を蹴る。
経文を彫り込んだ退魔の刀、大振りのそれを逆手に構え。
「その命、殺った」
腹から首まで逆袈裟に切り上げ。次は胸を貫いて。
群の中を風のように、ゴブリンの注意を引き付けながら走り抜ける。
刈り残しを狙って、マリィアが的確に弾丸を叩き込み、まだ沸いてくるゴブリンへ、冬樹が弾丸の雨を降らせた。
一度に半数以上を削られた群が浮き足立って棍棒を振り回しながら前後へと走る。
飛び出してきた1匹の手に握られた石礫にマキナが咄嗟に鞭を振るう。
グローブに隠される左手の甲に浮かぶ幻影は、緻密に歯車を噛み合わせて針を回し、緩やかに覚醒の時を刻んでいく。
編まれた鋼線を伝うモーターの振動が、礫を腕ごと弾き飛ばす。そのまま向かってくるゴブリンの拳を背後に守る馬車へ至らせまいと腕に受け止めて手許で翻す鞭で反撃に転じる。
同じく飛び出して転がってきたゴブリンに脚を食い付かれたカリアナは、馴れない取り回しながら鎌の刃と重さでその身体を引き裂いた。
「もお! こんな時にこなくてもいいのにッ! ほんと、ゴブって野暮なんだからゴブって!」
不満を言いながらも鎌で刺しきったゴブリンをその場に、他にも近付くものが無いか見回した。
大丈夫ですよと、3人を宥めながら外待雨は結界に専念する。
「傍で守っております……」
まだ余裕は有る、無くとも彼等を庇うにはこの身一つでも十分にと見回しながら、深く祈りを込めた。
不可視の結界は強固に近付く者を阻む。
リロードした銃を構え、まだ動くゴブリンを狙いマテリアルを込めて放つ。
「アンタ達の相手は私ですよ! こっちを見ろってんです!」
「……おー、おおきに」
銃口を向けた冬樹へ攻撃を促す様に得物を掲げて、濁った声を発するゴブリンがいた。
松瀬は刃を向けて地面を蹴ると、その胴体を掻っ捌きながら他のゴブリンの気を引き付ける。一時注意を逸らしたゴブリン達を弾丸が貫き。
「……むぅ。ヴァリオスついたらお風呂入るぅ! もお! ゴブの所為なんだからっ!」
カリアナが泥濘の中で大鎌を振るい放つ水の礫に潰される。
「――まだいるみたい、警戒して!」
拳銃に持ち替えて茂みから覗く頭を撃ち抜き、マリィアは感覚を澄ませて周囲を見回す。
中央の残りを松瀬とマキナに任せると、茂みの中を馬車まで回り込んだ1匹に機関銃の照準を据える。
銃架がいる程の重さと長い銃身を持つその銃の射程は群の先からでも優に馬車へ届き、放たれる弾丸は一撃で迫ろうとするゴブリンを爆ぜる程に弾き飛ばした。
咄嗟にモニカがピノの目を覆ったが、それが最後の1匹だったらしい。
亡骸を数えてもそう多くは無く、恐らくまだ残党が潜んでいるのだろう。
「……先も警戒した方が良いでしょうね」
冬樹とマリィアが周囲への警戒を強めても、その目の届く範囲に敵の気配は見当たらない。
行きましょうかとマリィアがマキナに声を掛け、銃を担いでバイクに跨がる。
暫く走らせてから周囲を見回し、進めそうだと馬車に連絡を取る。
結界を解き、それぞれに得物を下ろす。
「ふう、一段落ですか……って冬樹さん顔色悪すぎでは!? 5秒後には死にそうな顔色してますよ!」
刀を収めて安堵の息を。覚醒した冬樹の青い頬を見上げ、松瀬の青い瞳が懐っこく笑む。
「んぁ?……あ゛ーまたか。平気や平気。ほんま、この姿嫌いやわ」
がしがしと金の髪を掻き乱し、眇めた目でぎこちなく笑う。
高揚が収まるに連れ、顔色も戻り唇の端から覗く犬歯も引っ込んでいく。
警戒を保って馬車は進む。
吃驚したと、冷えた指先を擦り合わせるモニカに、外待雨が話し掛けた。
「……翡翠のペンダントのご婦人は……元気にされてますでしょうか……」
あの時はありがとうとモニカの顔に表情が戻る。あれからそう経たずにフマーレに来てしまったからと轍を振り返りながら。
「もし……覚えて頂けていたのなら……。……嬉しいものやも、しれません……」
外待雨の穏やかな声に、そう思うと頷き、ピノも話を聞いていたのか手を揺らして何かを伝えようとする。
きっとお礼を言おうとしているのだと、モニカはピンの小さな頭を撫でた。
●
残党に行き合うことも無く無事に街道を越えヴァリオスに到着する。
ゴブリン出没の知らせを受けていた街道の警備に無事を問われ、道中の戦闘を伝えた。
「今日はありがとうございました。……本当に、すごく、すごく、……」
フマーレの件が過ぎったのだろう、滲んだ目を擦ってモニカはハンター達に頭を下げた。
「……雨は……何時だって過ぎ去り、忘れ行くもの……だからこそ……ふと見上げれば、出会えるものです……」
外待雨が肩へ手を伸ばし掛け、顔を上げてと促す様に話し掛ける。
「また、何処かで……お会い致しましょう……」
そう囁けば、明るさを取り戻す少女の声で、はい、と応えた。
「せや……道は続いてるし、また気ぃ向いたら会いに来てやってくれや」
また、な。と冬樹が目を細めると、モニカに抱えられたピノが「まぁな」と、その言葉を真似るように手を振った。
「よい未来を掴むことができるのを願っています……」
必要なら機械の修理も手伝うと買って出て、マキナが穏やかな声で告げる。
「トパーズは、勇気を持って未来に進む為のサポートをする石とよばれているんです」
不意に告げられたその名前に目を瞠って、はい、と小さな声で、けれど確りと頷いた。
「お供が出来てよかったです!」
新しい旅路だと聞いていたから、その始まりに添えたことを。松瀬の溌剌とした笑顔を眩しげに見る。
「また、ご縁が逢ったら。……新しい日々に、幸多からん事をお祈りしていますっ!」
松瀬の言葉に頷いてモニカがもう一度頭を下げる。
全員無事に付けて良かったと、マリィアがハンター達と依頼人、馭者と見回して肩の力を抜いた。
雨に湿気た髪も走る内に乾いたようだ。
ヴァリオスに帰ってきたモニカにエーレンフリートはその無事を喜んだ。
差し出された贈り物の包みを受け取り、見慣れぬ字で綴られた孫娘からの手紙を無言で読むと、暫く1人にして欲しいと部屋に籠もった。
一晩明けてモニカが部屋を覗くと、贈り物の包装が丁寧に解かれ、畳まれたその裏に試し書きのように、孫娘の名が綴られていた。
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相談スレッド マリィア・バルデス(ka5848) 人間(リアルブルー)|24才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2016/07/24 22:48:53 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/07/21 19:22:15 |