ゲスト
(ka0000)
偽ハンター狩り
マスター:雪村彩人

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/08/06 15:00
- 完成日
- 2016/08/20 19:21
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「待て、小僧」
獰猛な面の男が叫んだ。その前、必死に逃走しているのは十歳ほどの少年であった。
と、少年がよろけた。小石に蹴躓いたのである。
「逃がさねえぞ」
男が少年の襟首を掴んだ。少年がもがく。
「は、放せ」
「放すものかよ」
男は笑った。
「てめえ。どこに行くつもりだ?」
「ハンターのところだ。お前たちをやっつけてもらうんだ」
「ハンターは俺たちだろうが」
「お前たちなんかハンターであるもんか」
「面倒だ。殺っちまうか」
男は手にした銃の銃口を少年の頭にむけた。が――。
男はそのまま凍結したように動きをとめた。
彼の背後。いつの間にか幾つもの人影が立っている。その人影から吹き付けてくる名伏すべからざる殺気に呪縛されてしまったのだ。
「おい」
人影から声が発せられた。
「今、ハンターといったか?」
人影が問う。刹那、男は振り向いた。その指がトリガーをしぼり――いや、すでに幾つかの人影が動いていた。男を襲う。幾許かの後、男は地に這っていた。
「何があった?」
人影が少年に問うた。
「それが」
ある日、村に数人の男達がやってきた。彼らはハンターであると名乗り、村に居着くようになった。
「あいつらは乱暴しはじめたんだ」
少年はいった。男たちがハンターであるというのは嘘であったのだ。
「やるか」
人影が振り向くと、他の者達が頷いた。
ハンター。人は彼らをそう呼んだ。
獰猛な面の男が叫んだ。その前、必死に逃走しているのは十歳ほどの少年であった。
と、少年がよろけた。小石に蹴躓いたのである。
「逃がさねえぞ」
男が少年の襟首を掴んだ。少年がもがく。
「は、放せ」
「放すものかよ」
男は笑った。
「てめえ。どこに行くつもりだ?」
「ハンターのところだ。お前たちをやっつけてもらうんだ」
「ハンターは俺たちだろうが」
「お前たちなんかハンターであるもんか」
「面倒だ。殺っちまうか」
男は手にした銃の銃口を少年の頭にむけた。が――。
男はそのまま凍結したように動きをとめた。
彼の背後。いつの間にか幾つもの人影が立っている。その人影から吹き付けてくる名伏すべからざる殺気に呪縛されてしまったのだ。
「おい」
人影から声が発せられた。
「今、ハンターといったか?」
人影が問う。刹那、男は振り向いた。その指がトリガーをしぼり――いや、すでに幾つかの人影が動いていた。男を襲う。幾許かの後、男は地に這っていた。
「何があった?」
人影が少年に問うた。
「それが」
ある日、村に数人の男達がやってきた。彼らはハンターであると名乗り、村に居着くようになった。
「あいつらは乱暴しはじめたんだ」
少年はいった。男たちがハンターであるというのは嘘であったのだ。
「やるか」
人影が振り向くと、他の者達が頷いた。
ハンター。人は彼らをそう呼んだ。
リプレイ本文
●
「何があった?」
男が少年に問うた。氷の瞳をもつ冷然たる青年だ。名をリカルド=イージス=バルデラマ(ka0356)という。ハンターであった。
「それが――」
ある日、村に数人の男達がやってきた。彼らはハンターであると名乗り、村に居着くようになった。
「あいつらは乱暴しはじめたんだ」
「そいつらはどんな装備をしていた?」
リカルドが問うと、少年は銃とこたえた。
「ふむ」
リカルドは唸った。装備だけではハンターであるのかどうかはわからない。が、やり口はハンターのものではなかった。人さまざまとはいえ、やはりハンターには誇りや矜持といったものがある。その者たちのやり口は破落戸のそれであった。
「おそらくは偽物。ハンターのふりをして村で大きい顔してるなんて……飽きれちゃうよね」
女がため息を零した。
長い黒髪を背に流した秀麗な美少女だ。名を多々良 莢(ka6065)という。
莢は腰におした大刀――暁の鞘をそっと撫でた。刹那、空気がぴしりっと鳴った。莢の裡でたわんだ殺気の成せる業だ。
「こういった輩は何時の時代もいるものだね、肩書だけで本性は隠せないというのに」
気を失って倒れた男をじろりと見下ろし、十歳ほどにみえる少女が吐き捨てた。
Holmes(ka3813)。ドワーフの老女である。
「では、この男から情報を聞き出そう」
「そうだな」
うなずいたのはがっしりした体躯の青年であった。生真面目そうな相貌の持ち主だ。名メンカル(ka5338)といい、人とエルフのハーフであった。
「おい」
メンカルがつま先で男の脇腹を蹴った。ううんと唸り、男が目を覚ます。それからギクリとし、ハンターたちを見回した。
「な、何だ、おめえらは?」
「同業者がわからないのかしら?」
ふふ、と女が冷笑した。
可愛らしい顔だち十歳ほどにみえる。が、そのトパーズの瞳にやどる光は若年のそれではない。名をブラウ(ka4809)といい、Holmesと同じくドワーフの女であった。
「同業者?」
「そう。ハンターよ」
「ハンター!」
男が息をひいた。
「で、だ」
メンカルが男を睨みつけた。
「訊きたいことがある」
「き、訊きたいこと?」
「はい」
うなずいたのは金髪碧眼、穏やかな物腰の美しい娘であった。名をアメリア・フォーサイス(ka4111)というその二十歳ほどに見える娘は問うた。
「貴方たちの目的は何なのですか。それと仲間の人数と配置は?」
ふん、と男はせせら笑った。
「馬鹿が。喋ると思うのか」
「誰がやる?」
「俺に任せろ」
問うメンカルにリカルドがいった。
何気ない一言。が、その場の全員が背に冷たいものを覚えた。
無理もない。彼こそはブギーマンと呼ばれ、組織から恐れられていた殺し屋であったのだから。
火をつけた葉巻を口にくわえると、リカルドはかがみ込んだ。そして男の手をとり、小指にスパイクグリップが付いたリアルブルー製のタクティカルコンバットナイフ――TCSGの刃をあてた。格闘戦のためにオーダーメイドしたカランビット仕様で、相手の腱や太い血管を切り裂きやすい構造になっている。もし切られたら男の指はただではすむまい。
「アメリアが訊いたことに五秒以内に答えろ、出なけりゃ、お前の小指を切り落とす。脅しじゃない。消毒はしてやるがな。五、四」
「は、はは」
男は強ばった笑いを顔にうかべた。
「や、やれるもんならやってみろ」
「三、二、一」
数え終えると、リカルドは無造作に男の小指を切断した。激痛に、気味悪い男の悲鳴が響いた。
「や、やりやがった。本当に切りやがった」
「いっただろう、脅しじゃないって」
男の傷口に葉巻の火を押し付け、消毒。リカルドは事務的に男の別の指にナイフの刃をおしあてた。
「コッチはサド趣味じゃないんだ、早く終わらせたいから答えてくれ、五、四、三」
「ま、待て」
男が悲鳴のような声をあげた。そしてアメリアの質問にこたえた。
「……よくしゃべったな。もう少しねばったら、靴紐が結べなくなっていたところだ」
面白くもなさそうに告げると、リカルドは男の足の腱を切断した。それから猿轡をかまし、草むらに転がした。
「やりすぎ……ってこともありませんわね」
ピンク色の髪の娘がちらりと男を見やった。端正な顔立ちの美少女である。尖った耳の持ち主であるところからみてエルフであろう。
少女――リリア・ノヴィドール(ka3056)にリカルドは目をむけると、
「まあ、子供に手を出そうとした分、コレぐらいの報いは当然だろ」
「そうですわね」
リリアはうなずいた。男たちのやり口は三下山賊。男に同情する気にはなれなかった。
「ちょっと待ってください」
アメリアが声をあげた。そして辺りを見回す。
「普通の依頼用の装備しかないから隠密……隠密……銃の音を消さないと使えないし……あっ」
アメリアの視線が男の上でとまった。走り寄ると男の衣服を剥ぎとる。
「……これを使えば銃音を幾分か消せますよね。ごめんなさい、ごめんなさい」
「ねえ」
莢がアメリアに声をかけた。声音に呆れたような響きを滲ませて。
「知ってる? そういうの、追い剥ぎっていうんだよ」
「じゃあ、いこうか」
男がいった。暗鬱な声音だ。どこか貴族的な顔立ちの持ち主なのだが、その暗さのためか美形であると気づかれることはあまりなかった。
彼の名はヨルムガンド・D・アルバ(ka5168)。八人めのハンターであった。
●
「……あれですね」
木陰。顔を覗かせたアメリアが目を眇めた。
広場と思しき場所をうろついている男の姿がある。手には拳銃。腰にはダガーを下げていた。
見張りの偽ハンター。少年のいった通りだ。
「それともう一人は……」
リリアが目を上げた。
屋根の上。男の姿が見える。もう一人の見張りだ。
八人は二組にわかれた。リカルド、アメリア、ブラウ、莢の四人は家屋の裏を伝って広場へ。残る四人は屋上で見張る男の家屋へむかった。
「俺の肩に乗れ」
メンカルがリリアを方の上に載せた。リリアが手をのばし、屋根の庇につかまる。ひらりと庇の上に躍り上がった。
リリアは身を伏せた。まさか襲撃されるとは思っていないのであろう。退屈そうに男は村を眺めている。手には酒のはいったボトルがあった。
同じ時、建物の陰からブラウはじっと見張りの男の様子を窺っていた。この男もまた酒のボトルを手にしている。酔っているか、足取りが覚束無い。
ブラウはほくそ笑んだ。これだから素人は困る。
「偽物とか偽物じゃないとかどうでもいいのよね。わたしはただ血の香りが嗅ぎたいだけなの。……だから、今日はどうかわたしを満たして頂戴」
ブラウは男にむかってダッシュした。瞬く間に間合いを詰める。
気配に気づいた男が振り向いた。が、遅い。すでにブラウは肉薄していた。
「き――」
男の叫びがとまった。首を日本刀の刃が貫いている。
虎徹。ブラウの愛刀だ。
「……五月蠅いとこの後が大変なのよ。だから、静かにお願いね」
ブラウは片目を瞑ってみせた。
「うん?」
男か屋根の上で立ち上がった。仲間の異変に気づいたようだ。
瞬間、リリアは疾った。マテリアルを両足に込め、機動力を上昇。男が気配で振り向いた時、すでにリリアは男の首筋に雨を司る精霊の羽から作られたと言われる薄い刃を持ったショートソード――ジュビアの刃を凝した。
「静かにしてくださいませね。騒ぐと口を封じなければならなくなりますから」
「な、なんだ、お前は?」
「ハンターですわ」
リリアは微笑んだ。
「何っ」
愕然として男は息をひいた。が、すぐに男の口元に嘲笑がういた。少女とみて侮ったのである。
男の手が腰のホルスターにおさめた拳銃にのびた。
刹那である。リリアのダガーが浅く男の首を切り裂いた。
「動いてもよろしいのよ。首を切り落とすだけですから。下衆にかける情けはありませんのよ」
リリアは冷たく告げた。さすがに男の手がとまった。リリアが本気であると悟ったのである。
男はがくりと肩をおとした。
「で、君に訊きたいことがあるんだ」
問う声。Holmesだ。
「仲間の居所が知りたい」
「誰がいうか」
「なら」
リリアがさらに首を切り裂いた。
「ま、待て。話す」
男が話しだした。Holmesは目を閉じてじっと耳を澄ませている。
「……嘘はめっだよ」
ややあってHolmesは目を開いた。
「う、嘘じゃない」
「だめだめ。ボクに嘘は通用しない。君の心拍が速くなった」
Holmesはいった。驚くべきことに神経を研ぎ澄ます事により、彼女は聴覚を大幅に上昇させることができるのであった。
「次に嘘をいうと」
Holmesが目を上げる、リリアは小さく笑ってみせた。
●
窓からアメリアは内部を覗き込んだ。
リビング。三人の姿があった。二人の男と一人の女だ。
女は二十歳ほど。おそらくは村の娘であろう。一人の男が馴れ馴れしく娘の肩に腕をまわしていた。もう一人は酒をあおっている。
アメリアはドアノブに手をかけた。ドアはロックされていない。音もなく開くと、アメリアとHolmesは身を滑り込ませた。足音を殺し、リビングにむかう。
Holmesがリビングの内部を窺った。男たちの様子に変わりはない。Holmesたちにはまるで気づいていない様子であった。
目配せすると二人は同時に襲った。アメリアの瞳は金色に輝き、Holmesの耳は獣のそれと変じている。覚醒の証だ。
気配に男たちもさすがに気づいたが、その時にはもう二人は間合いの内に迫っていた。
男たちが拳銃をひっ掴んだ。が、彼らがかまえきる前にアメリアの拳が喉に炸裂、Holmesは直刀の刃――ラティスムスを男に叩きつけた。
それは化物じみた刀であった。異常なほど重い。常人では持ち上げる事すら難しい代物であった。
それをHolmesは軽々と扱う。化物は彼女の方であった。
男の一人は喉をおさえて蹲った。もう一人は吹き飛び、壁に激突、気を失っている。蹲った男の後頭部にアメリアは銀製の銃身を持つ魔導拳銃――エア・スティーラーの銃口をおしつけた。
「さて、ハンター君。少し眠っていてもらうよ」
皮肉に笑うと、Holmesはラティスムスを男の首にうちおろした。
同じ時、莢もまた一軒の家屋の窓から内部を盗み見ていた。
リビング。ここには一人の男がいた。もう一人の姿は見えない。村の者らしい娘の顔をねじむけ、無理やり口を押し付けていた。
莢の顔にいら立ちの色が滲んだ。やはり偽物は偽物。男の品性は屑そのものであった。莢の身体に紫電がからみつく。
「俺は裏にまわる」
囁くと、リカルドは裏に回った。ドアに耳を押し当てると物音が聞こえた。おそらくはもう一人の男が酒でも物色しているのだろう。
リカルドはドアノブに手をかけた。開かない。ロックされていた。
「仕方ない。やるか」
リカルドはドアを蹴り上げた。中に飛び込むと、驚いた顔の男の姿が目にはいった。
反射的に男が拳銃をかまえた。が、その時にはすでに髪を白く変色させたリカルドは間合いに飛び込んでいる。
「くっ」
咄嗟に男は拳銃のトリガーをひいた。弾丸は天井にめり込んでいる。男の拳銃をナイトメアクローでリカルドがはねあげたからだ。
一瞬後、リカルドはナイトメアクローを翻し、男の喉に鉤爪を突き立てた。さらには胸、腹と流れるように攻撃を繰り出す。恐るべき殺人業であった。
「……悪いな。生かしておくわけにはいかないんだ」
冷笑すると、リカルドは膝を男にぶち込んで、離れた。
銃声に、はじかれたようにリビングにいた男が立ち上がった。その手には拳銃が握られている。
「いかせないよ」
莢がひらりと窓から飛び込んだ。
「なっ」
莢に気づいた男が棒立ちとなった。その隙をついてさらに莢は接近。その手の暁を繰り出した。
目にもとまらす刺突。なんで偽ハンターごときに躱せようか。
そう悟った男は発砲。同時に男の背から血をからませた刃が突き出た。声もあげえず男が仰け反る。
「これでハンターなんて笑わせてくれるよ」
告げると、腹の傷口を手でおさえた莢は暁を引き抜いた。
●
窓からリリアとブラウは内部を覗いていた。
寝室。二人の男が娘を弄んでいる。
見つめる二人のハンターの目には物騒な光が浮かんでいる。二人共偽ハンターの命など何とも思っていないのだった。
その時だ。銃声が轟いた。びくりとして二人の男が動きをとめる。
刹那である。リリアとブラウが窓から飛び込んだ。
二人の男は半裸であった。一人だけ武器に手をのばす。
発砲。被弾したものの、彼らを制圧することなど彼女たちにとっては造作もないことだった。
「つまらない」
ふん、と小さくブラウは鼻を鳴らした。そして娘を連れ出すリリアを見送ってから、ブラウは男の一人の襟首を掴んだ。ずるずると引きずり、裏の林の中へ。
ニタリと笑うと、ブラウは虎徹で男の首を刎ねた。むっと立ち込める濃い血臭を胸いっぱいに吸い込むと、
「……はぁあ…素晴らしいわ。ずっと……我慢してたの。愉しませてくれたっていいわよね?」
ブラウは解体を始めた。
ヨルムガンドとメンカルは村長宅の裏口から侵入した。二人共靴を脱いでいる。足音を殺すためだ。
その時、男が食堂に現れた。先に動いたのは、無論ヨルムガンドたちだ。
メンカルがカードを放った。光をはねたカードが男の首を裂く。
「くっ」
首の傷をおさえた男が背を返した。逃げるつもりだ。
刹那、銃声。ばたりと男が倒れた。
つまらなそうな顔でヨルムガンドは鼻を鳴らした。その手の砂岩のような色合いに塗装されたオートマチック拳銃――アレニスカの銃口からは硝煙が立ち上っている。
その時だ。再び銃声が鳴り響いた。ヨルムガンドではない。
今度はメンカルががくりと膝を折った。撃たれたのだ。
「何だ、貴様らは?」
リーダーらしき男が怒鳴った。反射的にヨルムガンドが銃をかまえた。男をポイントする。
「俺の友達に、手を出すな……!」
同時に発砲。同時にヨルムガンドと男は横に跳んだ。二つの弾丸が空しく流れ過ぎていく。いや――。
白光が下方から疾った。メンカルが刃をたばしらせたのだ。
さすがに男は避けきれない。メンカルの刀――ディモルダクスが男を逆袈裟に薙ぎ上げた。
ハンターたちが村を後にしようとしたのは、それから一時間ほど後のことであった。偽ハンターたちは捕縛し、村人に預けてある。
「もう飽きたから帰りましょ」
澄ました顔でブラウがいった。捨てた古着のように、すでに偽ハンターには興味はないようであった。
「何があった?」
男が少年に問うた。氷の瞳をもつ冷然たる青年だ。名をリカルド=イージス=バルデラマ(ka0356)という。ハンターであった。
「それが――」
ある日、村に数人の男達がやってきた。彼らはハンターであると名乗り、村に居着くようになった。
「あいつらは乱暴しはじめたんだ」
「そいつらはどんな装備をしていた?」
リカルドが問うと、少年は銃とこたえた。
「ふむ」
リカルドは唸った。装備だけではハンターであるのかどうかはわからない。が、やり口はハンターのものではなかった。人さまざまとはいえ、やはりハンターには誇りや矜持といったものがある。その者たちのやり口は破落戸のそれであった。
「おそらくは偽物。ハンターのふりをして村で大きい顔してるなんて……飽きれちゃうよね」
女がため息を零した。
長い黒髪を背に流した秀麗な美少女だ。名を多々良 莢(ka6065)という。
莢は腰におした大刀――暁の鞘をそっと撫でた。刹那、空気がぴしりっと鳴った。莢の裡でたわんだ殺気の成せる業だ。
「こういった輩は何時の時代もいるものだね、肩書だけで本性は隠せないというのに」
気を失って倒れた男をじろりと見下ろし、十歳ほどにみえる少女が吐き捨てた。
Holmes(ka3813)。ドワーフの老女である。
「では、この男から情報を聞き出そう」
「そうだな」
うなずいたのはがっしりした体躯の青年であった。生真面目そうな相貌の持ち主だ。名メンカル(ka5338)といい、人とエルフのハーフであった。
「おい」
メンカルがつま先で男の脇腹を蹴った。ううんと唸り、男が目を覚ます。それからギクリとし、ハンターたちを見回した。
「な、何だ、おめえらは?」
「同業者がわからないのかしら?」
ふふ、と女が冷笑した。
可愛らしい顔だち十歳ほどにみえる。が、そのトパーズの瞳にやどる光は若年のそれではない。名をブラウ(ka4809)といい、Holmesと同じくドワーフの女であった。
「同業者?」
「そう。ハンターよ」
「ハンター!」
男が息をひいた。
「で、だ」
メンカルが男を睨みつけた。
「訊きたいことがある」
「き、訊きたいこと?」
「はい」
うなずいたのは金髪碧眼、穏やかな物腰の美しい娘であった。名をアメリア・フォーサイス(ka4111)というその二十歳ほどに見える娘は問うた。
「貴方たちの目的は何なのですか。それと仲間の人数と配置は?」
ふん、と男はせせら笑った。
「馬鹿が。喋ると思うのか」
「誰がやる?」
「俺に任せろ」
問うメンカルにリカルドがいった。
何気ない一言。が、その場の全員が背に冷たいものを覚えた。
無理もない。彼こそはブギーマンと呼ばれ、組織から恐れられていた殺し屋であったのだから。
火をつけた葉巻を口にくわえると、リカルドはかがみ込んだ。そして男の手をとり、小指にスパイクグリップが付いたリアルブルー製のタクティカルコンバットナイフ――TCSGの刃をあてた。格闘戦のためにオーダーメイドしたカランビット仕様で、相手の腱や太い血管を切り裂きやすい構造になっている。もし切られたら男の指はただではすむまい。
「アメリアが訊いたことに五秒以内に答えろ、出なけりゃ、お前の小指を切り落とす。脅しじゃない。消毒はしてやるがな。五、四」
「は、はは」
男は強ばった笑いを顔にうかべた。
「や、やれるもんならやってみろ」
「三、二、一」
数え終えると、リカルドは無造作に男の小指を切断した。激痛に、気味悪い男の悲鳴が響いた。
「や、やりやがった。本当に切りやがった」
「いっただろう、脅しじゃないって」
男の傷口に葉巻の火を押し付け、消毒。リカルドは事務的に男の別の指にナイフの刃をおしあてた。
「コッチはサド趣味じゃないんだ、早く終わらせたいから答えてくれ、五、四、三」
「ま、待て」
男が悲鳴のような声をあげた。そしてアメリアの質問にこたえた。
「……よくしゃべったな。もう少しねばったら、靴紐が結べなくなっていたところだ」
面白くもなさそうに告げると、リカルドは男の足の腱を切断した。それから猿轡をかまし、草むらに転がした。
「やりすぎ……ってこともありませんわね」
ピンク色の髪の娘がちらりと男を見やった。端正な顔立ちの美少女である。尖った耳の持ち主であるところからみてエルフであろう。
少女――リリア・ノヴィドール(ka3056)にリカルドは目をむけると、
「まあ、子供に手を出そうとした分、コレぐらいの報いは当然だろ」
「そうですわね」
リリアはうなずいた。男たちのやり口は三下山賊。男に同情する気にはなれなかった。
「ちょっと待ってください」
アメリアが声をあげた。そして辺りを見回す。
「普通の依頼用の装備しかないから隠密……隠密……銃の音を消さないと使えないし……あっ」
アメリアの視線が男の上でとまった。走り寄ると男の衣服を剥ぎとる。
「……これを使えば銃音を幾分か消せますよね。ごめんなさい、ごめんなさい」
「ねえ」
莢がアメリアに声をかけた。声音に呆れたような響きを滲ませて。
「知ってる? そういうの、追い剥ぎっていうんだよ」
「じゃあ、いこうか」
男がいった。暗鬱な声音だ。どこか貴族的な顔立ちの持ち主なのだが、その暗さのためか美形であると気づかれることはあまりなかった。
彼の名はヨルムガンド・D・アルバ(ka5168)。八人めのハンターであった。
●
「……あれですね」
木陰。顔を覗かせたアメリアが目を眇めた。
広場と思しき場所をうろついている男の姿がある。手には拳銃。腰にはダガーを下げていた。
見張りの偽ハンター。少年のいった通りだ。
「それともう一人は……」
リリアが目を上げた。
屋根の上。男の姿が見える。もう一人の見張りだ。
八人は二組にわかれた。リカルド、アメリア、ブラウ、莢の四人は家屋の裏を伝って広場へ。残る四人は屋上で見張る男の家屋へむかった。
「俺の肩に乗れ」
メンカルがリリアを方の上に載せた。リリアが手をのばし、屋根の庇につかまる。ひらりと庇の上に躍り上がった。
リリアは身を伏せた。まさか襲撃されるとは思っていないのであろう。退屈そうに男は村を眺めている。手には酒のはいったボトルがあった。
同じ時、建物の陰からブラウはじっと見張りの男の様子を窺っていた。この男もまた酒のボトルを手にしている。酔っているか、足取りが覚束無い。
ブラウはほくそ笑んだ。これだから素人は困る。
「偽物とか偽物じゃないとかどうでもいいのよね。わたしはただ血の香りが嗅ぎたいだけなの。……だから、今日はどうかわたしを満たして頂戴」
ブラウは男にむかってダッシュした。瞬く間に間合いを詰める。
気配に気づいた男が振り向いた。が、遅い。すでにブラウは肉薄していた。
「き――」
男の叫びがとまった。首を日本刀の刃が貫いている。
虎徹。ブラウの愛刀だ。
「……五月蠅いとこの後が大変なのよ。だから、静かにお願いね」
ブラウは片目を瞑ってみせた。
「うん?」
男か屋根の上で立ち上がった。仲間の異変に気づいたようだ。
瞬間、リリアは疾った。マテリアルを両足に込め、機動力を上昇。男が気配で振り向いた時、すでにリリアは男の首筋に雨を司る精霊の羽から作られたと言われる薄い刃を持ったショートソード――ジュビアの刃を凝した。
「静かにしてくださいませね。騒ぐと口を封じなければならなくなりますから」
「な、なんだ、お前は?」
「ハンターですわ」
リリアは微笑んだ。
「何っ」
愕然として男は息をひいた。が、すぐに男の口元に嘲笑がういた。少女とみて侮ったのである。
男の手が腰のホルスターにおさめた拳銃にのびた。
刹那である。リリアのダガーが浅く男の首を切り裂いた。
「動いてもよろしいのよ。首を切り落とすだけですから。下衆にかける情けはありませんのよ」
リリアは冷たく告げた。さすがに男の手がとまった。リリアが本気であると悟ったのである。
男はがくりと肩をおとした。
「で、君に訊きたいことがあるんだ」
問う声。Holmesだ。
「仲間の居所が知りたい」
「誰がいうか」
「なら」
リリアがさらに首を切り裂いた。
「ま、待て。話す」
男が話しだした。Holmesは目を閉じてじっと耳を澄ませている。
「……嘘はめっだよ」
ややあってHolmesは目を開いた。
「う、嘘じゃない」
「だめだめ。ボクに嘘は通用しない。君の心拍が速くなった」
Holmesはいった。驚くべきことに神経を研ぎ澄ます事により、彼女は聴覚を大幅に上昇させることができるのであった。
「次に嘘をいうと」
Holmesが目を上げる、リリアは小さく笑ってみせた。
●
窓からアメリアは内部を覗き込んだ。
リビング。三人の姿があった。二人の男と一人の女だ。
女は二十歳ほど。おそらくは村の娘であろう。一人の男が馴れ馴れしく娘の肩に腕をまわしていた。もう一人は酒をあおっている。
アメリアはドアノブに手をかけた。ドアはロックされていない。音もなく開くと、アメリアとHolmesは身を滑り込ませた。足音を殺し、リビングにむかう。
Holmesがリビングの内部を窺った。男たちの様子に変わりはない。Holmesたちにはまるで気づいていない様子であった。
目配せすると二人は同時に襲った。アメリアの瞳は金色に輝き、Holmesの耳は獣のそれと変じている。覚醒の証だ。
気配に男たちもさすがに気づいたが、その時にはもう二人は間合いの内に迫っていた。
男たちが拳銃をひっ掴んだ。が、彼らがかまえきる前にアメリアの拳が喉に炸裂、Holmesは直刀の刃――ラティスムスを男に叩きつけた。
それは化物じみた刀であった。異常なほど重い。常人では持ち上げる事すら難しい代物であった。
それをHolmesは軽々と扱う。化物は彼女の方であった。
男の一人は喉をおさえて蹲った。もう一人は吹き飛び、壁に激突、気を失っている。蹲った男の後頭部にアメリアは銀製の銃身を持つ魔導拳銃――エア・スティーラーの銃口をおしつけた。
「さて、ハンター君。少し眠っていてもらうよ」
皮肉に笑うと、Holmesはラティスムスを男の首にうちおろした。
同じ時、莢もまた一軒の家屋の窓から内部を盗み見ていた。
リビング。ここには一人の男がいた。もう一人の姿は見えない。村の者らしい娘の顔をねじむけ、無理やり口を押し付けていた。
莢の顔にいら立ちの色が滲んだ。やはり偽物は偽物。男の品性は屑そのものであった。莢の身体に紫電がからみつく。
「俺は裏にまわる」
囁くと、リカルドは裏に回った。ドアに耳を押し当てると物音が聞こえた。おそらくはもう一人の男が酒でも物色しているのだろう。
リカルドはドアノブに手をかけた。開かない。ロックされていた。
「仕方ない。やるか」
リカルドはドアを蹴り上げた。中に飛び込むと、驚いた顔の男の姿が目にはいった。
反射的に男が拳銃をかまえた。が、その時にはすでに髪を白く変色させたリカルドは間合いに飛び込んでいる。
「くっ」
咄嗟に男は拳銃のトリガーをひいた。弾丸は天井にめり込んでいる。男の拳銃をナイトメアクローでリカルドがはねあげたからだ。
一瞬後、リカルドはナイトメアクローを翻し、男の喉に鉤爪を突き立てた。さらには胸、腹と流れるように攻撃を繰り出す。恐るべき殺人業であった。
「……悪いな。生かしておくわけにはいかないんだ」
冷笑すると、リカルドは膝を男にぶち込んで、離れた。
銃声に、はじかれたようにリビングにいた男が立ち上がった。その手には拳銃が握られている。
「いかせないよ」
莢がひらりと窓から飛び込んだ。
「なっ」
莢に気づいた男が棒立ちとなった。その隙をついてさらに莢は接近。その手の暁を繰り出した。
目にもとまらす刺突。なんで偽ハンターごときに躱せようか。
そう悟った男は発砲。同時に男の背から血をからませた刃が突き出た。声もあげえず男が仰け反る。
「これでハンターなんて笑わせてくれるよ」
告げると、腹の傷口を手でおさえた莢は暁を引き抜いた。
●
窓からリリアとブラウは内部を覗いていた。
寝室。二人の男が娘を弄んでいる。
見つめる二人のハンターの目には物騒な光が浮かんでいる。二人共偽ハンターの命など何とも思っていないのだった。
その時だ。銃声が轟いた。びくりとして二人の男が動きをとめる。
刹那である。リリアとブラウが窓から飛び込んだ。
二人の男は半裸であった。一人だけ武器に手をのばす。
発砲。被弾したものの、彼らを制圧することなど彼女たちにとっては造作もないことだった。
「つまらない」
ふん、と小さくブラウは鼻を鳴らした。そして娘を連れ出すリリアを見送ってから、ブラウは男の一人の襟首を掴んだ。ずるずると引きずり、裏の林の中へ。
ニタリと笑うと、ブラウは虎徹で男の首を刎ねた。むっと立ち込める濃い血臭を胸いっぱいに吸い込むと、
「……はぁあ…素晴らしいわ。ずっと……我慢してたの。愉しませてくれたっていいわよね?」
ブラウは解体を始めた。
ヨルムガンドとメンカルは村長宅の裏口から侵入した。二人共靴を脱いでいる。足音を殺すためだ。
その時、男が食堂に現れた。先に動いたのは、無論ヨルムガンドたちだ。
メンカルがカードを放った。光をはねたカードが男の首を裂く。
「くっ」
首の傷をおさえた男が背を返した。逃げるつもりだ。
刹那、銃声。ばたりと男が倒れた。
つまらなそうな顔でヨルムガンドは鼻を鳴らした。その手の砂岩のような色合いに塗装されたオートマチック拳銃――アレニスカの銃口からは硝煙が立ち上っている。
その時だ。再び銃声が鳴り響いた。ヨルムガンドではない。
今度はメンカルががくりと膝を折った。撃たれたのだ。
「何だ、貴様らは?」
リーダーらしき男が怒鳴った。反射的にヨルムガンドが銃をかまえた。男をポイントする。
「俺の友達に、手を出すな……!」
同時に発砲。同時にヨルムガンドと男は横に跳んだ。二つの弾丸が空しく流れ過ぎていく。いや――。
白光が下方から疾った。メンカルが刃をたばしらせたのだ。
さすがに男は避けきれない。メンカルの刀――ディモルダクスが男を逆袈裟に薙ぎ上げた。
ハンターたちが村を後にしようとしたのは、それから一時間ほど後のことであった。偽ハンターたちは捕縛し、村人に預けてある。
「もう飽きたから帰りましょ」
澄ました顔でブラウがいった。捨てた古着のように、すでに偽ハンターには興味はないようであった。
依頼結果
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相談卓 リカルド=フェアバーン(ka0356) 人間(リアルブルー)|32才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2016/08/06 14:31:28 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/08/02 11:50:51 |