ゲスト
(ka0000)
【夜煌】涅色のネクロダンス
マスター:惇克

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/09/14 19:00
- 完成日
- 2014/09/21 12:47
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●伝統復活の兆し
ラッツィオ島の戦いも収束した頃、辺境は再び活性化しつつあった。
ここ数年、途絶えていた平安を願う祭事……『夜煌祭』の話が持ち上がったのだ。
数日のうちにその話は商人や部族間を伝い、辺境内の各所へと届いていく。
祭りに呼応するように、ここでも新たな動きが出たようだった――
●
ドンドンドン、カカカッカ、ドドンガドン
昨日までは何もなかったというのに、今日になって突如、太鼓の音が響きだした。
「なんだぁか、ありゃ」
「なんだべぇねぇ」
祭事会場周辺の警備巡回に当たっていた部族の青年二人は、音の発信源を見つけて首をかしげた。
会場からそう遠く離れていない場所、岩と灌木が疎らに生える平原にぽつんと大きな太鼓が置かれ、それを一心不乱に叩く男がいた。
捻りはちまきに半被、白い半股引に足袋、顔には般若面をつけた異装の男。
「爺様から聞いた話、昔々、蒼の世界から来た男が、故郷の太鼓を広めるって旅に出たそうだげんちょ、志半ばで歪虚に殺られてちまって、ずっと彷徨ってるんだど」
「あれがほーかなぃ」
「たしかほうだ。久しぶりのずない祭りだん、誘われて出て来ちまったんだべ」
祭りと聞いて我慢できずに駆けつけた大昔の幽霊。
ただそれだけならばまだ良かったが、どうも魔法公害で歪虚化してしまったらしく、更に太鼓の音色は呪詛的な力でもあるのか、周囲に動物の死霊を呼び寄せていた。
ソンビウサギ、ゾンビハイエナ、ゾンビオオカミと、このまま放っておいては会場周辺がアニマルゾンビパニックになってしまう。
青年二人は、周辺の関係者に歪虚の出現を知らせると、ハンター達の協力を求めるため、ハンターオフィスへと向かった。
ラッツィオ島の戦いも収束した頃、辺境は再び活性化しつつあった。
ここ数年、途絶えていた平安を願う祭事……『夜煌祭』の話が持ち上がったのだ。
数日のうちにその話は商人や部族間を伝い、辺境内の各所へと届いていく。
祭りに呼応するように、ここでも新たな動きが出たようだった――
●
ドンドンドン、カカカッカ、ドドンガドン
昨日までは何もなかったというのに、今日になって突如、太鼓の音が響きだした。
「なんだぁか、ありゃ」
「なんだべぇねぇ」
祭事会場周辺の警備巡回に当たっていた部族の青年二人は、音の発信源を見つけて首をかしげた。
会場からそう遠く離れていない場所、岩と灌木が疎らに生える平原にぽつんと大きな太鼓が置かれ、それを一心不乱に叩く男がいた。
捻りはちまきに半被、白い半股引に足袋、顔には般若面をつけた異装の男。
「爺様から聞いた話、昔々、蒼の世界から来た男が、故郷の太鼓を広めるって旅に出たそうだげんちょ、志半ばで歪虚に殺られてちまって、ずっと彷徨ってるんだど」
「あれがほーかなぃ」
「たしかほうだ。久しぶりのずない祭りだん、誘われて出て来ちまったんだべ」
祭りと聞いて我慢できずに駆けつけた大昔の幽霊。
ただそれだけならばまだ良かったが、どうも魔法公害で歪虚化してしまったらしく、更に太鼓の音色は呪詛的な力でもあるのか、周囲に動物の死霊を呼び寄せていた。
ソンビウサギ、ゾンビハイエナ、ゾンビオオカミと、このまま放っておいては会場周辺がアニマルゾンビパニックになってしまう。
青年二人は、周辺の関係者に歪虚の出現を知らせると、ハンター達の協力を求めるため、ハンターオフィスへと向かった。
リプレイ本文
●
現場へと到着したハンター一行。
「あら! 盆踊りなんて懐かしいわねえ」
現場を目にした辰川 桜子(ka1027)は目を丸くして第一声をあげる。
歪虚化した男の幽霊が叩く太鼓のリズムと、動物ゾンビがそれを円形に囲みうろうろと彷徨っているという光景は、リアルブルーのジャパニーズ・ボン・ダンスを彷彿とさせるものがあった。
「最近全然踊ってないわ……子供の時なんて夏祭りに行くとよく踊っててねぇ……」
在りし日を懐かしみ、しみじみと呟く桜子だったが、漂ってくる死臭に眉をひそめ「……って、言ってる場合じゃないわよね」 と苦笑う。
「うん。夏に盆踊り、風流だね……。でも、ゾンビは土に帰るのが理、還してあげようか」
盆踊りの風情と郷愁に同意しつつ、今は解決が先、と星見 香澄(ka0866)は頷く。
「えっと、盆踊りって……生きた人が死んだ人の供養としてやるものだよね?」
困惑気味のシャル・ブルーメ(ka3017)が疑問を口にする。
死骸が動き回り、鎮魂の踊りを踊っているかのように見えるという異常事態なのだ、困惑するのも当然だと言えよう。
「歪虚の太鼓に釣られて踊るゾンビ達……か。まるで音楽を楽しんでるかのようだけれど……消えて貰いましょう、彼らには、ね」
ケイ・R・シュトルツェ(ka0242)は静かに歪虚の殲滅を宣言する。
「統率を失って暴れ出す可能性もある。早急に片付けた方がいいだろうな」
大量のゾンビが集まり続けている現状、周辺への被害を憂慮したユリアナ・スポルクシー(ka1024)は到着した直後、現場へと誰も近づけさせないよう、部族の青年達に人払いを頼んでいた。
「ゾンビってば、腐ってるよね? 周りの衛生環境上、のさばらせておくのはダメだから、きれいに排除しないと。『夜煌祭』の前に、疫病とか出たりしたら不味いもんね」
せっかくのお祭りだもの、楽しく過ごしたいよね、と気を取り直したシャルが意気込む。
「質はともかくこんだけ客を集めちまうんだから大したもんだ……。が、このまま自分で太鼓を誤解させるような真似をするのは不本意だろうな」
鳴神 真吾(ka2626)は死後に迷った男の魂に憐憫を抱く。
「うっし、今度こそ迷い出てこないよう派手に送ってやるか、覚醒!」
真吾の気合いの入った掛け声を合図に、ハンター達は戦闘の火ぶたを切った。
●
ハンター達が移動を開始する。
ユリアナとケイは装備の重さもあって、やや遅れての移動となったが、銃撃を主とする後衛としてはさほど影響はないのだろう。
(太鼓男の太鼓がゾンビを呼んでいるみたいね……。それならば、これ以上、ゾンビを増やさない為に太鼓を最優先して狙うしかない、か。それにしても周囲のゾンビ達が厄介だわ)
ケイは立体感覚を活かし、太鼓男を取り囲むゾンビの群れの薄い部分、威嚇射撃を行うために適した箇所を探す。
(……一瞬でも良い、射線を通さなくてはね)
前衛の援護を担当するシャルは、つかず離れずの位置で待機する。
真吾、桜子、香澄の三人はゾンビの群れへと斬り込んでいく。
それを受けてゾンビが動き出した。
囲まれては危険であり、徐々に排除するのが妥当だという認識はあったものの、如何せん敵の数が多い。
一匹を狙い攻撃可能な位置にまで前進すれば、それだけゾンビも反応してしまう。
「やっぱり数が多いね、面倒だ。太鼓男を集中攻撃したいがなかなか厄介だな」
乱戦になることを予測し、桜子の背中をカバーするように動きながら、香澄が舌を打つ。
前衛を担当する仲間と一点突破をと考え、タイミングを見計らい、小さい個体が集中していそうな箇所を探すが、ゾンビは今のところ大小入り乱れてしまっていた。
「出来れば半数は排除……といきたいところだけれど、これじゃ三分の一ぐらい倒せれば御の字かしら?」
お互いにカバーできるよう香澄と背中を合わせながら、桜子がフラメアを握り直す。
真吾も太鼓男への道を切り開こうとパイルバンカーを構える。
場合によっては消耗を度外視して強引に突破することも必要だろうと心を決めていた。
自分達の撃破速度より、太鼓の音に誘われて集まってくるゾンビの数が上回り続けるようなら、危険を承知で太鼓男を討たなければならない、と。
ゾンビに取り囲まれ始めた前衛を援護するために、ケイが威嚇射撃を行う。
足下を銃撃に穿たれ、移動を阻まれたゾンビは悔しげに呻き声を上げて蹈鞴を踏んだ。
ユリアナは味方から離れすぎて孤立しないよう注意しながら、猟銃で狙撃可能な射程へと移動し、場所を確保。
着ていた迷彩ジャケットを被り、周りと一体化するように気配を抑えて物陰へと潜み、視力の良さを活かして目を凝らし、太鼓男よりも太鼓へと狙いをつけ、機会を伺う。
まごついていたゾンビを真吾がパイルバンカーで仕留める。
桜子は手近にいるゾンビの手足や胴体を狙って攻撃を加え、動きを鈍せた所で頭部など急所を攻撃して無力化していく。
「敵が多いから、なるべく怪我しないようがんばってね♪」
前衛からやや後ろに下がった位置に陣取るシャルは、励ましながら真吾へとプロテクションを施す。
香澄はエレクトリックショックを放ち、ゾンビを麻痺させ、隙を作り出す。
ハンター達の流れるような攻撃は確実にゾンビの数を減らしていってはいるが、それでも尚、数に任せて押し寄せてくる。
更には新手がどこからともなくふらふらと出現する。
小動物と、大型の肉食動物のゾンビが戦列に加わる。
ケイはゾンビではなく太鼓を狙うため、先ほど目をつけていた場所へと移動。
太鼓に狙いを定めていたユリアナが、マテリアルを視力と感覚に集中させ引き金を引く。が、弾丸は太鼓男の側にいたゾンビに阻まれた。
「くっ……、まだ多いか。数とは厄介なものだ」
入念な準備と技術に裏打ちされた射撃は、正確無比に太鼓へと向かっていた。他のゾンビに押し出されるように射線上に出てきたゾンビさえいなければ、確実に太鼓を撃ち貫いていただろう。
真吾は牙をむいてくる狼ゾンビに負けじと機導剣を振るい、桜子は麻痺していたゾンビをフラメアで刺突、シャルが桜子へとプロテクションを用いてダメージの軽減を図り、香澄がエレクトリックショックでゾンビの足を止める。
それでもゾンビはまだまだ押し寄せてくる。
「ねぇ、其処に居られると邪魔なの……あたしの為に退いて頂戴」
位置についたケイがマテリアルを込め、威力と射程を伸ばした一撃を放つ。
ゾンビは太鼓男を護るようであったが、太鼓まで護るとは限らない。そう予測しての射撃だったが、射線に割って入ってきたゾンビによって太鼓を破壊するには至らなかった。
太鼓に未練を残した男の幽霊が歪虚化したのだ。太鼓と太鼓を叩く男は文字通り一心同体なのであった。
「その執念……恐れ入るわ」
この状況にユリアナは太鼓男への狙撃よりも周囲の敵の掃討をと考え、目標と定めた動物の弱点を狩猟知識から導き出し、的確に仕留めて行く。
前衛に立つ三人は、それぞれ顔を見合わせ頷いた。
このままではジリ貧である、よって、強行突破を行うべし。
ユリアナの射撃で開いた僅かな隙間をついて強引に突破する。
「深手負った人は、無理しないで一旦下がってね!」
香澄へとプロテクションを施したシャルが、前衛を励まし支えるように声をかけた。
太鼓男へと向かう三人へと追い縋るようにゾンビが攻撃を加える。
だが、三人は怯むことなく、足を止めることなく突き進む。
機導剣で切り払い、槍で薙ぎ払い、突き進む。
ケイが威嚇射撃を加え、追い縋るゾンビの足止めを行い、さらにユリアナも続く。
「君自身は生前も生後もただ太鼓を叩いているだけなのだろうが、それでも放っておくわけにはいかない。せめて手向けはこちらも盛大に送らせてもらう! マテリアルキャノンモード!!」
太鼓男を射程に捉えた真吾はハイエナと兎のゾンビに噛みつかれたまま機動砲を撃つ。
「ごめんなさい、太鼓男さん。貴方の演奏止めさせてもらうわね!」
桜子は勢いそのままに踏み込み、太鼓男に接近し、後に続く攻撃のために射線を切り開こうと周囲に群がるゾンビを薙ぎ払う。
前衛を支えるシャルはヒールを用いて香澄を癒やし、
「最大火力、とにかく一気にいくよ!!」
治癒を受けて体勢を立て直した香澄が機動砲を放つ。
強行突破により開けた射線、それを逃さずケイとユリアナが狙撃を行う。
マテリアルを変換したエネルギー光に撃たれ、既に消えかかっていた太鼓男が、とどめとばかりに二発の銃弾に撃ち抜かれ、ついにその音色を止める。
太鼓の音が消え、これまではまだ統制された動きをみせていたゾンビが暴れだし、同士討ちまで始めた。
「私達が貴方の執念を上回ったわ。静かにお眠りなさい」
消えて行く太鼓男に向けてケイは僅かに微笑んだ。
そして残ったゾンビを翻弄し、誘導し、手玉にとるかのように撃破して行く。無軌道に暴れ回るだけの敵なら火の粉を払うのと同じようなことだと。
ユリアナは残敵掃討、と淡々と狙いをつけ、引き金を引く。
「さあ、残っているゾンビ達のお片付けね。一匹漏らさず倒さないと!」
あともうひと頑張り、と桜子が努めて明るい声を上げた。
暴走するゾンビ達が祭の会場にまで行かないように注意を払い、攻撃を仕掛けて、敵はこちらだとゾンビ達を誘導する。
真吾も同様、周囲に被害が出ないようにと配慮しながら残ったゾンビを片付けて行った。
「大人しく土に還ってくれればいいんだけど、少し時間がかかりそうだね」
ゾンビを呼び起こし操っていた太鼓の呪力が切れるまでには、香澄の言う通りまだしばらくの時間がかかる。
それまで放置してもよかったのだろうが、祭りの会場にゾンビが乗り込んでしまう可能性は無視できなかった。
「面倒だ。だが、まあ、成仏することを願ってるよ」
香澄は魔導銃を手に動き回る骸へと引導を渡していった。
こうして、大量のゾンビアニマルは一匹残らず倒され、ただの骸と化して土へと還るのを待つばかりとなっていった。
原野に自然の静寂が戻る。
シャルは甲斐甲斐しく負傷した仲間の手当てを行い、一段落ついたところで衛生面の心配を軽く口にする。
「えーと、とりあえず、帰ったらお風呂に入ったほうが良いですよ?」
「そうねぇ、近くにいい温泉でもあると良いのだけれど」
桜子がほのぼのとした口調で希望を漏らす。どうせならゆっくり暖まって疲れを癒やしたい、と。
現場の後片付け、骸の埋葬の手伝いに来ていた部族の少女がその言葉に反応し、それならばとハンター達を近場の温泉まで案内する。
その場所は普段から湯治場としても利用されているらしく、きちんと男女別に湯が分かれ、粗末ではあったが脱衣場も設けられていた。
そこで戦闘の汗とゾンビの異臭をさっぱりと洗い流したハンター達は、湯上がりに辺境の手つかずの自然の景色を銘々に楽しんだ。
この、厳しくも美しい景色を自らの手で守ったことへの達成感を胸に抱きつつ。
やがて日が傾き、赤い残照を引きずりながら地平に沈む。
濃紺へと移り変わった空に星が瞬き始める。
「さて、夏の夜もそろそろ終わりだ。この夜を大事にしたいね」
草陰に鳴く虫の音を聞きながら夜空に浮かぶ夏の星座であろうものを見上げ、香澄はしみじみと過ぎゆく季節に思いを馳せていた。
その頃、真吾は現場へと戻り、後片付けをしていた部族の青年に太鼓を借りることはできないかと尋ねていた。
意図を察した青年はそれを快諾し、仲間と協力してその場に太鼓を用意する。
「太鼓なんて小学生のころに祭りで叩かせてもらったぐらいなんだが、こういうのは勢いと気持ちだろってね」
両手に樫の撥を握った真吾は、供養の想いを込めて盛大に打ち鳴す。
「あばよ、出来れば生きている時のあんたの太鼓を聞きたかったぜ。」
月と星の光が静かに照らす原野に染み渡るように、力強い音色が響いていった。
現場へと到着したハンター一行。
「あら! 盆踊りなんて懐かしいわねえ」
現場を目にした辰川 桜子(ka1027)は目を丸くして第一声をあげる。
歪虚化した男の幽霊が叩く太鼓のリズムと、動物ゾンビがそれを円形に囲みうろうろと彷徨っているという光景は、リアルブルーのジャパニーズ・ボン・ダンスを彷彿とさせるものがあった。
「最近全然踊ってないわ……子供の時なんて夏祭りに行くとよく踊っててねぇ……」
在りし日を懐かしみ、しみじみと呟く桜子だったが、漂ってくる死臭に眉をひそめ「……って、言ってる場合じゃないわよね」 と苦笑う。
「うん。夏に盆踊り、風流だね……。でも、ゾンビは土に帰るのが理、還してあげようか」
盆踊りの風情と郷愁に同意しつつ、今は解決が先、と星見 香澄(ka0866)は頷く。
「えっと、盆踊りって……生きた人が死んだ人の供養としてやるものだよね?」
困惑気味のシャル・ブルーメ(ka3017)が疑問を口にする。
死骸が動き回り、鎮魂の踊りを踊っているかのように見えるという異常事態なのだ、困惑するのも当然だと言えよう。
「歪虚の太鼓に釣られて踊るゾンビ達……か。まるで音楽を楽しんでるかのようだけれど……消えて貰いましょう、彼らには、ね」
ケイ・R・シュトルツェ(ka0242)は静かに歪虚の殲滅を宣言する。
「統率を失って暴れ出す可能性もある。早急に片付けた方がいいだろうな」
大量のゾンビが集まり続けている現状、周辺への被害を憂慮したユリアナ・スポルクシー(ka1024)は到着した直後、現場へと誰も近づけさせないよう、部族の青年達に人払いを頼んでいた。
「ゾンビってば、腐ってるよね? 周りの衛生環境上、のさばらせておくのはダメだから、きれいに排除しないと。『夜煌祭』の前に、疫病とか出たりしたら不味いもんね」
せっかくのお祭りだもの、楽しく過ごしたいよね、と気を取り直したシャルが意気込む。
「質はともかくこんだけ客を集めちまうんだから大したもんだ……。が、このまま自分で太鼓を誤解させるような真似をするのは不本意だろうな」
鳴神 真吾(ka2626)は死後に迷った男の魂に憐憫を抱く。
「うっし、今度こそ迷い出てこないよう派手に送ってやるか、覚醒!」
真吾の気合いの入った掛け声を合図に、ハンター達は戦闘の火ぶたを切った。
●
ハンター達が移動を開始する。
ユリアナとケイは装備の重さもあって、やや遅れての移動となったが、銃撃を主とする後衛としてはさほど影響はないのだろう。
(太鼓男の太鼓がゾンビを呼んでいるみたいね……。それならば、これ以上、ゾンビを増やさない為に太鼓を最優先して狙うしかない、か。それにしても周囲のゾンビ達が厄介だわ)
ケイは立体感覚を活かし、太鼓男を取り囲むゾンビの群れの薄い部分、威嚇射撃を行うために適した箇所を探す。
(……一瞬でも良い、射線を通さなくてはね)
前衛の援護を担当するシャルは、つかず離れずの位置で待機する。
真吾、桜子、香澄の三人はゾンビの群れへと斬り込んでいく。
それを受けてゾンビが動き出した。
囲まれては危険であり、徐々に排除するのが妥当だという認識はあったものの、如何せん敵の数が多い。
一匹を狙い攻撃可能な位置にまで前進すれば、それだけゾンビも反応してしまう。
「やっぱり数が多いね、面倒だ。太鼓男を集中攻撃したいがなかなか厄介だな」
乱戦になることを予測し、桜子の背中をカバーするように動きながら、香澄が舌を打つ。
前衛を担当する仲間と一点突破をと考え、タイミングを見計らい、小さい個体が集中していそうな箇所を探すが、ゾンビは今のところ大小入り乱れてしまっていた。
「出来れば半数は排除……といきたいところだけれど、これじゃ三分の一ぐらい倒せれば御の字かしら?」
お互いにカバーできるよう香澄と背中を合わせながら、桜子がフラメアを握り直す。
真吾も太鼓男への道を切り開こうとパイルバンカーを構える。
場合によっては消耗を度外視して強引に突破することも必要だろうと心を決めていた。
自分達の撃破速度より、太鼓の音に誘われて集まってくるゾンビの数が上回り続けるようなら、危険を承知で太鼓男を討たなければならない、と。
ゾンビに取り囲まれ始めた前衛を援護するために、ケイが威嚇射撃を行う。
足下を銃撃に穿たれ、移動を阻まれたゾンビは悔しげに呻き声を上げて蹈鞴を踏んだ。
ユリアナは味方から離れすぎて孤立しないよう注意しながら、猟銃で狙撃可能な射程へと移動し、場所を確保。
着ていた迷彩ジャケットを被り、周りと一体化するように気配を抑えて物陰へと潜み、視力の良さを活かして目を凝らし、太鼓男よりも太鼓へと狙いをつけ、機会を伺う。
まごついていたゾンビを真吾がパイルバンカーで仕留める。
桜子は手近にいるゾンビの手足や胴体を狙って攻撃を加え、動きを鈍せた所で頭部など急所を攻撃して無力化していく。
「敵が多いから、なるべく怪我しないようがんばってね♪」
前衛からやや後ろに下がった位置に陣取るシャルは、励ましながら真吾へとプロテクションを施す。
香澄はエレクトリックショックを放ち、ゾンビを麻痺させ、隙を作り出す。
ハンター達の流れるような攻撃は確実にゾンビの数を減らしていってはいるが、それでも尚、数に任せて押し寄せてくる。
更には新手がどこからともなくふらふらと出現する。
小動物と、大型の肉食動物のゾンビが戦列に加わる。
ケイはゾンビではなく太鼓を狙うため、先ほど目をつけていた場所へと移動。
太鼓に狙いを定めていたユリアナが、マテリアルを視力と感覚に集中させ引き金を引く。が、弾丸は太鼓男の側にいたゾンビに阻まれた。
「くっ……、まだ多いか。数とは厄介なものだ」
入念な準備と技術に裏打ちされた射撃は、正確無比に太鼓へと向かっていた。他のゾンビに押し出されるように射線上に出てきたゾンビさえいなければ、確実に太鼓を撃ち貫いていただろう。
真吾は牙をむいてくる狼ゾンビに負けじと機導剣を振るい、桜子は麻痺していたゾンビをフラメアで刺突、シャルが桜子へとプロテクションを用いてダメージの軽減を図り、香澄がエレクトリックショックでゾンビの足を止める。
それでもゾンビはまだまだ押し寄せてくる。
「ねぇ、其処に居られると邪魔なの……あたしの為に退いて頂戴」
位置についたケイがマテリアルを込め、威力と射程を伸ばした一撃を放つ。
ゾンビは太鼓男を護るようであったが、太鼓まで護るとは限らない。そう予測しての射撃だったが、射線に割って入ってきたゾンビによって太鼓を破壊するには至らなかった。
太鼓に未練を残した男の幽霊が歪虚化したのだ。太鼓と太鼓を叩く男は文字通り一心同体なのであった。
「その執念……恐れ入るわ」
この状況にユリアナは太鼓男への狙撃よりも周囲の敵の掃討をと考え、目標と定めた動物の弱点を狩猟知識から導き出し、的確に仕留めて行く。
前衛に立つ三人は、それぞれ顔を見合わせ頷いた。
このままではジリ貧である、よって、強行突破を行うべし。
ユリアナの射撃で開いた僅かな隙間をついて強引に突破する。
「深手負った人は、無理しないで一旦下がってね!」
香澄へとプロテクションを施したシャルが、前衛を励まし支えるように声をかけた。
太鼓男へと向かう三人へと追い縋るようにゾンビが攻撃を加える。
だが、三人は怯むことなく、足を止めることなく突き進む。
機導剣で切り払い、槍で薙ぎ払い、突き進む。
ケイが威嚇射撃を加え、追い縋るゾンビの足止めを行い、さらにユリアナも続く。
「君自身は生前も生後もただ太鼓を叩いているだけなのだろうが、それでも放っておくわけにはいかない。せめて手向けはこちらも盛大に送らせてもらう! マテリアルキャノンモード!!」
太鼓男を射程に捉えた真吾はハイエナと兎のゾンビに噛みつかれたまま機動砲を撃つ。
「ごめんなさい、太鼓男さん。貴方の演奏止めさせてもらうわね!」
桜子は勢いそのままに踏み込み、太鼓男に接近し、後に続く攻撃のために射線を切り開こうと周囲に群がるゾンビを薙ぎ払う。
前衛を支えるシャルはヒールを用いて香澄を癒やし、
「最大火力、とにかく一気にいくよ!!」
治癒を受けて体勢を立て直した香澄が機動砲を放つ。
強行突破により開けた射線、それを逃さずケイとユリアナが狙撃を行う。
マテリアルを変換したエネルギー光に撃たれ、既に消えかかっていた太鼓男が、とどめとばかりに二発の銃弾に撃ち抜かれ、ついにその音色を止める。
太鼓の音が消え、これまではまだ統制された動きをみせていたゾンビが暴れだし、同士討ちまで始めた。
「私達が貴方の執念を上回ったわ。静かにお眠りなさい」
消えて行く太鼓男に向けてケイは僅かに微笑んだ。
そして残ったゾンビを翻弄し、誘導し、手玉にとるかのように撃破して行く。無軌道に暴れ回るだけの敵なら火の粉を払うのと同じようなことだと。
ユリアナは残敵掃討、と淡々と狙いをつけ、引き金を引く。
「さあ、残っているゾンビ達のお片付けね。一匹漏らさず倒さないと!」
あともうひと頑張り、と桜子が努めて明るい声を上げた。
暴走するゾンビ達が祭の会場にまで行かないように注意を払い、攻撃を仕掛けて、敵はこちらだとゾンビ達を誘導する。
真吾も同様、周囲に被害が出ないようにと配慮しながら残ったゾンビを片付けて行った。
「大人しく土に還ってくれればいいんだけど、少し時間がかかりそうだね」
ゾンビを呼び起こし操っていた太鼓の呪力が切れるまでには、香澄の言う通りまだしばらくの時間がかかる。
それまで放置してもよかったのだろうが、祭りの会場にゾンビが乗り込んでしまう可能性は無視できなかった。
「面倒だ。だが、まあ、成仏することを願ってるよ」
香澄は魔導銃を手に動き回る骸へと引導を渡していった。
こうして、大量のゾンビアニマルは一匹残らず倒され、ただの骸と化して土へと還るのを待つばかりとなっていった。
原野に自然の静寂が戻る。
シャルは甲斐甲斐しく負傷した仲間の手当てを行い、一段落ついたところで衛生面の心配を軽く口にする。
「えーと、とりあえず、帰ったらお風呂に入ったほうが良いですよ?」
「そうねぇ、近くにいい温泉でもあると良いのだけれど」
桜子がほのぼのとした口調で希望を漏らす。どうせならゆっくり暖まって疲れを癒やしたい、と。
現場の後片付け、骸の埋葬の手伝いに来ていた部族の少女がその言葉に反応し、それならばとハンター達を近場の温泉まで案内する。
その場所は普段から湯治場としても利用されているらしく、きちんと男女別に湯が分かれ、粗末ではあったが脱衣場も設けられていた。
そこで戦闘の汗とゾンビの異臭をさっぱりと洗い流したハンター達は、湯上がりに辺境の手つかずの自然の景色を銘々に楽しんだ。
この、厳しくも美しい景色を自らの手で守ったことへの達成感を胸に抱きつつ。
やがて日が傾き、赤い残照を引きずりながら地平に沈む。
濃紺へと移り変わった空に星が瞬き始める。
「さて、夏の夜もそろそろ終わりだ。この夜を大事にしたいね」
草陰に鳴く虫の音を聞きながら夜空に浮かぶ夏の星座であろうものを見上げ、香澄はしみじみと過ぎゆく季節に思いを馳せていた。
その頃、真吾は現場へと戻り、後片付けをしていた部族の青年に太鼓を借りることはできないかと尋ねていた。
意図を察した青年はそれを快諾し、仲間と協力してその場に太鼓を用意する。
「太鼓なんて小学生のころに祭りで叩かせてもらったぐらいなんだが、こういうのは勢いと気持ちだろってね」
両手に樫の撥を握った真吾は、供養の想いを込めて盛大に打ち鳴す。
「あばよ、出来れば生きている時のあんたの太鼓を聞きたかったぜ。」
月と星の光が静かに照らす原野に染み渡るように、力強い音色が響いていった。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 6人 |
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MVP一覧
- ヒーローを目指す者
鳴神 真吾(ka2626)
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談 辰川 桜子(ka1027) 人間(リアルブルー)|29才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/09/14 12:42:25 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/09/09 23:57:05 |