ゲスト
(ka0000)
砂浜でのんびりと
マスター:天田洋介

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/08/11 19:00
- 完成日
- 2016/08/19 04:42
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
土地に根付く文化によって娯楽も変わる。リアルブルー出身者にとって海水浴はごく普通の行楽だ。だがこのクリムゾンウェストの地でそのままを行うには不都合がある。これが冒険都市リゼリオならば問題はないのだが。
グラズヘイム王国・港街【ガンナ・エントラータ】より遙か東の海岸線に『ミシナ海水浴場』がある。
切り立った崖下に広がる砂浜のおかげで、他人の目を気にせずに海水浴を楽しむことができる特別な地だ。土地を所有する貴族がリアルブルーの文化に好意的なところから、異世界式の海水浴が謳われていた。
去年の今頃、幻獣と思しき巨大マテガイが多数出没する事件が発生する。だがハンター一行によって一掃。新たに出没した場合でも退治方法が海水浴場の責任者へと伝えられて事なきを得た。
おかげで普通の人たちでも巨大マテガイを捕獲できるようになった。現在では干し巨大マテガイを使った創作料理が振る舞われている。
問題はただ一つ。ごく稀に出没する超大型マテガイばかりは普通の人たちでは対処不可能だった。
海開きの時期には見当たらず、誰もが安心していたのだがここに至って一匹出没。そのせいで海水浴場の砂浜半分が使えない状態になってしまった。
「ありゃ手に負えん……」
「やっぱり海開きのときに来てもらって退治してもらえばよかったのに」
困った砂浜の関係者はハンターに頼むことを決める。
砂浜の凹みには超大型マテガイが潜んでいた。目撃者によれば直径一メートル、長さは四メートルもあるという。
巨大マテガイは直径三十~六十センチメートル、長さは一、二メートル前後。その差は凄まじい。
砂浜の責任者は一番近い街で魔導伝話を借りる。そしてハンターズソサエティー支部と連絡をとった。
「ええ、そうなんです。超大型の一匹だけ倒してもらえれば、後はこちらで対処できます。退治した後は三、四日ほど滞在して様子を見て頂けると助かります。もちろん宿は用意しますし、様子見の間は海辺で遊んでもらうつもりです。食べ放題、飲み放題なのでどうかよろしくお願いします」
できる限りの好条件を伝えて依頼の申請は終わる。それから数日後、ハンター一行がミシナ海水浴場に到着するのだった。
グラズヘイム王国・港街【ガンナ・エントラータ】より遙か東の海岸線に『ミシナ海水浴場』がある。
切り立った崖下に広がる砂浜のおかげで、他人の目を気にせずに海水浴を楽しむことができる特別な地だ。土地を所有する貴族がリアルブルーの文化に好意的なところから、異世界式の海水浴が謳われていた。
去年の今頃、幻獣と思しき巨大マテガイが多数出没する事件が発生する。だがハンター一行によって一掃。新たに出没した場合でも退治方法が海水浴場の責任者へと伝えられて事なきを得た。
おかげで普通の人たちでも巨大マテガイを捕獲できるようになった。現在では干し巨大マテガイを使った創作料理が振る舞われている。
問題はただ一つ。ごく稀に出没する超大型マテガイばかりは普通の人たちでは対処不可能だった。
海開きの時期には見当たらず、誰もが安心していたのだがここに至って一匹出没。そのせいで海水浴場の砂浜半分が使えない状態になってしまった。
「ありゃ手に負えん……」
「やっぱり海開きのときに来てもらって退治してもらえばよかったのに」
困った砂浜の関係者はハンターに頼むことを決める。
砂浜の凹みには超大型マテガイが潜んでいた。目撃者によれば直径一メートル、長さは四メートルもあるという。
巨大マテガイは直径三十~六十センチメートル、長さは一、二メートル前後。その差は凄まじい。
砂浜の責任者は一番近い街で魔導伝話を借りる。そしてハンターズソサエティー支部と連絡をとった。
「ええ、そうなんです。超大型の一匹だけ倒してもらえれば、後はこちらで対処できます。退治した後は三、四日ほど滞在して様子を見て頂けると助かります。もちろん宿は用意しますし、様子見の間は海辺で遊んでもらうつもりです。食べ放題、飲み放題なのでどうかよろしくお願いします」
できる限りの好条件を伝えて依頼の申請は終わる。それから数日後、ハンター一行がミシナ海水浴場に到着するのだった。
リプレイ本文
●
崖下に広がるミシナ海水浴場。もしもを想定して開放されていた砂浜半分も立ち入り禁止にされる。
ハンター一行はじりじりと照りつける夏の陽光を浴びながら、石階段で砂浜へと降り立った。
「あのマテガイが最後の一体とは限らなかったわけだな」
ザレム・アズール(ka0878)が額から垂れた汗を手の甲で拭う。片腕で抱えていた細長い袋の中身は塩。青世界出身者達が話題にしていた巨大怪生物を思いだしつつ輝く砂浜を見渡す。
「今年の夏は消化試合に入りましたからぁ。幻獣はさっさとブッコロして食欲の秋ですぅ」
星野 ハナ(ka5852)は砂浜を楽しむための準備を怠らなかった。愛馬に積んできた道具類は仲間達にも担いでもらって、安全な砂浜の片隅に積んでいる。
「みんな頑張ろう。これが終わったら砂浜の平和を守れて、お泊まり海水浴が待っているよ。思い出も作れる、最高の冒険だもん!」
時音 ざくろ(ka1250)は自分を取り囲む四人に話しかける。アデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)、コーシカ(ka0903)、白山 菊理(ka4305)、アルラウネ(ka4841)は彼の冒険団仲間で恋人達だ。
「……ふうむ、なるほど。これは大物ですね」
アデリシアが拾った枝で砂上に超巨大マテガイの実寸図を描いてみる。
「今年も熱いわねぇ……え、敵がいるの……?」
そもそもコーシカは泊まりの旅行だと聞かされていた。それに馬車での移動中、ずっと寝ていたのである。「デートだけなんて甘いことはないわね……」といいながら木刀を抜く。西瓜割り用として持ってきたこれを武器として使う。
「今晩の宿予約は万全です。倒してから向かっても大丈夫です」
白山菊理が立てた旅行計画に隙はなかった。
「さぁ、さっさと片付けて堪能するわよ~!」
アルラウネが腰の大太刀鞘を握ったとき、「ちょっと待ってくださいです!」と声が轟く。
耳をつんざく激しいブレーキ音。誰もが後方の崖上を見あげると、ママチャリに跨がる八重 桜(ka4253)がギリギリのところで停まっていた。彼女もマテガイ退治に参加する。
「隠れていてもダメですよぉ」
星野ハナが危険を避けるために、ふよふよと式符を飛ばして探す。やがて波打ち際で巨大な窪みが見つかる。観察していると塩水が噴きだした。超巨大マテガイが隠れている証拠であった。
●
「スタートですぅ!」
「よしっ!」
星野ハナの合図でザレムがゴーグルをつけて猛ダッシュ。まるでフラッグレースのように全力疾走するザレムの両手には塩が掴まれていた。巣穴へと塩を投げ入れつつ通過。発射音と同時にザレムは砂の上に伏せる。
超巨大マテガイが斜めに飛びだしていた。
「行くよ、みんな!」
時音は大量の砂を浴びながら迫るマテガイにシールドを掠らせる。それによってマテガイの軌道が変わった。
(せーのっ!)
アルラウネが【空夜】による居合抜きで、すれ違いざまのマテガイに一太刀を刻んだ。
「これなら」
アデリシアはマテガイの頭部にシャドウブリットを叩き込む。黒い塊が当たることによってマテガイが砂浜に突っ込んで、さらなる砂塵を巻き上げる。
「ぶっ飛ぶのを恐れていられないのです!」
八重桜は叫びながら超巨大マテガイに抱きついた。
マテガイは地面へぶつかったボールが跳ねるように、青空へ向けて高く舞い上がる。上昇途中で八重桜の手が滑った八重桜は海面へ。
放物線を描きながら落下していくマテガイ。ライフルを構えた白山菊理は銃爪を絞って狙撃を開始。
「ブッコロぉ」
星野ハナはマテガイが落下しきるまでに五色光符陣を打つ。符で囲った光満ちる結界の中で焼いた。
「これでどうだ」
ザレムは砂浜に仰向けで寝転びながらライフルを構えている。殻の部分を避けて銃弾を叩き込んだ。
「西瓜割りの予行演習ね」
砂浜に落ちた超巨大マテガイは痙攣していた。近づいたコーシカが頭部を木刀で打つとそれが止めとなる。
戦闘を開始してわずか二分。海水浴場の邪魔物は退治されたのだった。
●
「ガンガンガンガン叩くのです!」
海からあがった八重桜は超硬合金刀で超巨大マテガイを叩く。
「折れたーのです!」
殻の部分を除けばマテガイの身はとても柔らかい。あまりにも手応えが感じられず、刀よりも早く八重桜の心が折れる。
「でかくなってるからどうかなあ……前の時は食べれたんだが」
ザレムが呟きながら超巨大マテガイの一部を切り取った。
「で、お宝はどうなりましたぁ!?」
星野ハナも駆けよって味を確かめたところ、ぶよぶよで美味しくはない。幸いに日射し溢れる夏の砂浜なので、干して水分を抜いてみることにした。
超巨大マテガイが退治されたので立ち入り禁止が解除。海水浴場にちらほらと客の姿が見かけられるようになる。
ハンター一行も各々遊ぶことに。水着に着替える者達は浜茶屋に併設された更衣室へと向かう。
「はわわわわ、みんな、いつの間に……」
上半身を脱いだ時音が振り向くと、アデリシア、コーシカ、アルラウネ、白山菊理が同じ更衣室内にいた。
「いっ、一緒に着替えって」
顔を真っ赤にした時音が彼女達を見ないよう背中を向ける。
「間違えられて案内されたのかしら? まぁ恋仲だしそのまま着替えても問題ないわね」
ビキニ水着に着替えたアルラウネは、貸し出し中のパレオも腰に巻く。
「あ、ざくろさんの相手は平等に、持ち回りです。ちゃんと時間割しますから、宜しくお願いします」
アデリシアが青と白のツートンビキニに着替えながら恋人仲間に予定を伝えておく。
「今回のは支給っていうかもらったものだし……私なんか見なくてよいのよ? 私よりよい体型の子を見てなさいよ……まったく」
時音の真横に立ったコーシカがトラ柄ビキニを取りだす。
「えっ、えっとあの……」
「……あ、違うわね、此処に居ること自体がおかしいのよね? まぁ……私達はいいのかしら。慣れって怖いわね?」
コーシカは時音に惚けてみせる。
(思ったよりも簡単に倒せたな。後はざくろとデート、だな)
白山菊理が着替えたのは白のワンピース水着。その上に薄手のスイムシャツを羽織った。
全員が着替え終わって砂浜へ。しばらくゆでだこのように顔を真っ赤にしていた時音だが、やがてニコッと笑顔に変わる。「みんな、よく似合ってる……水着、新調したんだ」と恋人達の艶姿を誉めるのであった。
●
星野ハナは海水浴場を離れて近場の漁村を訪れる。
「どれも美味しそうですねぇ。肉や野菜はどうにかなっても魚介は現地調達基本ですからぁ」
野菜を含めた地元食材を購入。海水浴場に戻ってパーカー付きの水着に着替えた。
「酒蒸し酒蒸しぃ♪」
足つきダッチオーブンを組み立てて、干したマテガイの一部分を試しに酒蒸しにしてみる。
その頃ザレムは小振りな幻獣マテガイを退治していた。超巨大マテガイが干してもダメな場合に備えてである。大部分は砂浜の関係者に引き渡す。
「あ、ザレムさん」
「美味しそうなにおいだな」
ザレムが野外調理の現場に戻ってきた頃、ちょうど酒蒸しが完成していた。星野ハナと一緒に試食すると歯ごたえも干す前と大違い。これならばいけると二人して本格的な調理に取りかかる。
小振りな幻獣マテガイを天日で干している間に燻製を準備。マテガイだけでなく、様々な食材をジャーキーにしてみた。
「部位で調理法を変えてみますかぁ」
「酢の物、煮物、焼き物、揚げ物と……うーん、デザートはどうするかな。ジャーキーだけでなくてクレープにもしてみっか」
星野ハナとザレムはマテガイの身を様々な料理に変えていく。
八重桜は波打ち際で修行をしていた。
「海水を真水に変えるのです……海水を真水に変えるのです……海水を真水に変えるのです…」
戦闘での反省から彼女は特訓としてピュアウォーターを繰り返す。しかし海水の中で真水に変えても無駄な努力。途中で気がついたものの、だからといってもう止められなかった。
最後の一回を残して砂面に膝を突く。迫る波に濡れながら「タライでも準備しておけばよかったのです。タライないかな……」と呟いた。
海辺の遊びを満喫したのは時音とその恋人達である。一人ずつ時音との甘い時間を過ごした。
「ざくろん、こっちもお願いね」
「こっ、こんな感じでいいかな」
シートに寝転がったアルラウネは時音にオイルを塗ってもらう。自分ではやりにくい背中だけでなく正面も彼に任せる。
そのとき時音の背後に忍び寄る人影が。悪戯心を芽生えさせたコーシカが彼の背中を軽く押した。
「はわぁ!」
アルラウネの上に倒れ込んだ時音の手が小さな布地の下へ。真っ赤な顔で「ごっ、ごめん」と謝る時音。「ちゃんと塗ってくれたらこっそり好きなだけ――」そんな時音の耳元でアルラウネが優しく囁く。
コーシカは自分でオイルを塗っていたが、それでもあらためて時音にお願いした。
「さっきは驚いたよ。後ろから押すなんて」
「まぁ、私が押さなくても自分で倒れてるんでしょうけど? ラキスケ得意だし」
コーシカに首を横に振る時音だが、オイルが垂れたシートの上で膝立ちを滑らせる。コーシカの上に重なって「ほら」と笑われた。
やがて白山菊理の番となる。
「オイルを塗る手がぎこちないような気がするのですが」
「実は、わざとじゃなかったんだけど――」
白山菊理は時音から先程のオイル塗りの失敗談を聞かされた。
そこへ近づくコーシカ。時音に教えようかどうか悩んだ白山菊理だが、経験するのも一興だと黙っておく。
再びコーシカに背中を押された時音は白山菊理の上へと被さる。砂浜に「どうして!」と時音の叫びが響いた。
アデリシアときには何事もなくオイルが塗り終わる。仲間達を集めた彼女はピーチボールを用意。波打ち際で遊んだ。
「水泳は体を鍛えるのにもいいですよ」
「あのブイを触って往復だね。負けないよ」
アデリシアと時音が一対一の水泳勝負に挑む。白波を掻き分けて全力で泳いだのだった。
●
茜色に染まった夕暮れ時に晩食となる。
「みなさーん、BBQの準備出来ましたよぅ」
星野ハナの酒蒸しとバーベキュー。そしてザレムが作ったマテガイ料理が野外に並べられた。
タレが絡まったマテガイの身が焼ける美味しそうなにおいが辺りに漂う。焼きたてパンや焼きそば。氷水で冷やされたワインも一同を出迎える。
「やっぱり酒蒸し、美味しいですぅ」
「こっちのもうまいぜ。フライが特にうまくいったな。他にもデザートがあるぞ。楽しみにしていてくれ」
ザレムと星野ハナが料理を頬張る。
マテガイ・フライは砂浜の関係者にもお裾分けされて好評を博す。酒蒸しは酒の肴にぴったりだ。
「お腹空いたのです!」
修行に疲れた八重桜はふらふらしながらバーベキューを頂いた。マテガイだけでなくホタテやハマグリなど、豪華な食材が舌を喜ばせてくれる。
「これがあのマテガイなのか。……うんっ美味い! みんなも食べたら。美味しいよ!」
箸をつけた時音が満面の笑顔を浮かべた。
「これは美味しいですね」
「大味かと思ったら結構いけるよね」
白山菊理とアルラウネがバーベキューで焼かれたマテガイの身を頬張る。
「殻を使ってワインで煮たのはどうなの?」
「ジャーキーもそうですけど、私は好きです」
コーシカとアデリシアも料理を味わいながら会話の花を咲かせた。
「塩クレープ、美味しいですぅ。ハムの代わりにジャーキーがアクセントになっているのですよぉ」
「バーベキューのタレ、すごく美味いな。どうやって作ったんだ?」
星野ハナとザレムが互いの料理を感想し合う。
晩食後は花火タイム。一部のハンターは浴衣に着替えて再び砂浜に集まった。
「よし!」
「綺麗ですぅ」
ザレムが打ち上げた花火を星野ハナが仰いだ。海岸線の夜空に赤と青の灯りがぱっと散るように輝いた。
「ああ! もう! 適当でいいわよこんなの!」
浴衣がうまく着られなかったコーシカが着崩したままの姿で現れる。時音が恥ずかしそうにそれを直した。
時音と恋人達は円を囲んで線香花火を始める。
(何度か目の夏ですが、やはり愛する方と過ごすのは良いものですね)
アデリシアが蝋燭の炎で点火。先端の小さな赤い球が火花を散らせた。
「儚い、人生のようだ……」
白山菊理が小さな輝球が落ちる様を眺めて呟く。
「綺麗だね……」
そう呟きつつ時音が恋人達全員に視線を送る。「いつも側に居てくれてありがとう、大好きだよ」花火に照らされる誰もが綺麗で胸がドキドキとときめいていた。
「……時って早いものね、昨日もこうしていたと思ったら、いつの間にか一年も経っていたなんて…ね。私達が愛していないわけないし、今更じゃないかしら? とは思うけどざくろってそういう子だもの、ちゃんと答えてあげないとね」
コーシカの言葉に恋人達が頷いた。
しばらくして時音に見惚れていたアルラウネが気づく。
「ざくろん、落ちた線香花火が裾に……!」
「えっ?!」
アルラウネにいわれて時音が腕をあげると、片裾が燃え上がっていた。慌てながらも用意済みのタライの水で消して事なきを得る。
(このタライ……)
八重桜はよかったといった後でタライに注目。借りる算段を取りつけた。
その晩、時音と恋人達は宿部屋で激しい枕投げをしたという。寝入るまでに何があったのかは、その者達だけの秘密である。
●
現地滞在は四日間に及んだ。
(いたいた。今日の晩食も豪華になるぞ。ブイヤベースなんてどうだろうか。よい出汁がでそうだ)
その間にザレムが銛を借りて素潜りを敢行。大量の魚介類を手に入れた。それらを使った料理で毎日豪華な食事が続く。
「次(の恋)に備えて英気貯めますぅ」
調理以外の星野ハナはぶっ倒れる寸前までただ泳いだという。
「やっぱりこれよね」
コーシカが望んでいた西瓜割りも行われる。よく冷えた西瓜を食べながら海辺の煌めく星空をみんなで眺めた。
待望のタライを手に入れた八重桜は、最後のピュアウォーターで海水を真水に変えてみる。ただそれだけで満足する彼女ではなかった。
「いざ行かん、大海の果てへーなのです」
気分が大きくなった八重桜はタライを舟して沖へ。夕日の中に消えていく。翌日、漂流中にたまたま通りがかった漁船によって運よく救出される。
最終日には観光客の数も以前と変わりない状況となる。砂浜の関係者達に感謝されながら、ハンター一行はリゼリオへの帰路に就いたのだった。
崖下に広がるミシナ海水浴場。もしもを想定して開放されていた砂浜半分も立ち入り禁止にされる。
ハンター一行はじりじりと照りつける夏の陽光を浴びながら、石階段で砂浜へと降り立った。
「あのマテガイが最後の一体とは限らなかったわけだな」
ザレム・アズール(ka0878)が額から垂れた汗を手の甲で拭う。片腕で抱えていた細長い袋の中身は塩。青世界出身者達が話題にしていた巨大怪生物を思いだしつつ輝く砂浜を見渡す。
「今年の夏は消化試合に入りましたからぁ。幻獣はさっさとブッコロして食欲の秋ですぅ」
星野 ハナ(ka5852)は砂浜を楽しむための準備を怠らなかった。愛馬に積んできた道具類は仲間達にも担いでもらって、安全な砂浜の片隅に積んでいる。
「みんな頑張ろう。これが終わったら砂浜の平和を守れて、お泊まり海水浴が待っているよ。思い出も作れる、最高の冒険だもん!」
時音 ざくろ(ka1250)は自分を取り囲む四人に話しかける。アデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)、コーシカ(ka0903)、白山 菊理(ka4305)、アルラウネ(ka4841)は彼の冒険団仲間で恋人達だ。
「……ふうむ、なるほど。これは大物ですね」
アデリシアが拾った枝で砂上に超巨大マテガイの実寸図を描いてみる。
「今年も熱いわねぇ……え、敵がいるの……?」
そもそもコーシカは泊まりの旅行だと聞かされていた。それに馬車での移動中、ずっと寝ていたのである。「デートだけなんて甘いことはないわね……」といいながら木刀を抜く。西瓜割り用として持ってきたこれを武器として使う。
「今晩の宿予約は万全です。倒してから向かっても大丈夫です」
白山菊理が立てた旅行計画に隙はなかった。
「さぁ、さっさと片付けて堪能するわよ~!」
アルラウネが腰の大太刀鞘を握ったとき、「ちょっと待ってくださいです!」と声が轟く。
耳をつんざく激しいブレーキ音。誰もが後方の崖上を見あげると、ママチャリに跨がる八重 桜(ka4253)がギリギリのところで停まっていた。彼女もマテガイ退治に参加する。
「隠れていてもダメですよぉ」
星野ハナが危険を避けるために、ふよふよと式符を飛ばして探す。やがて波打ち際で巨大な窪みが見つかる。観察していると塩水が噴きだした。超巨大マテガイが隠れている証拠であった。
●
「スタートですぅ!」
「よしっ!」
星野ハナの合図でザレムがゴーグルをつけて猛ダッシュ。まるでフラッグレースのように全力疾走するザレムの両手には塩が掴まれていた。巣穴へと塩を投げ入れつつ通過。発射音と同時にザレムは砂の上に伏せる。
超巨大マテガイが斜めに飛びだしていた。
「行くよ、みんな!」
時音は大量の砂を浴びながら迫るマテガイにシールドを掠らせる。それによってマテガイの軌道が変わった。
(せーのっ!)
アルラウネが【空夜】による居合抜きで、すれ違いざまのマテガイに一太刀を刻んだ。
「これなら」
アデリシアはマテガイの頭部にシャドウブリットを叩き込む。黒い塊が当たることによってマテガイが砂浜に突っ込んで、さらなる砂塵を巻き上げる。
「ぶっ飛ぶのを恐れていられないのです!」
八重桜は叫びながら超巨大マテガイに抱きついた。
マテガイは地面へぶつかったボールが跳ねるように、青空へ向けて高く舞い上がる。上昇途中で八重桜の手が滑った八重桜は海面へ。
放物線を描きながら落下していくマテガイ。ライフルを構えた白山菊理は銃爪を絞って狙撃を開始。
「ブッコロぉ」
星野ハナはマテガイが落下しきるまでに五色光符陣を打つ。符で囲った光満ちる結界の中で焼いた。
「これでどうだ」
ザレムは砂浜に仰向けで寝転びながらライフルを構えている。殻の部分を避けて銃弾を叩き込んだ。
「西瓜割りの予行演習ね」
砂浜に落ちた超巨大マテガイは痙攣していた。近づいたコーシカが頭部を木刀で打つとそれが止めとなる。
戦闘を開始してわずか二分。海水浴場の邪魔物は退治されたのだった。
●
「ガンガンガンガン叩くのです!」
海からあがった八重桜は超硬合金刀で超巨大マテガイを叩く。
「折れたーのです!」
殻の部分を除けばマテガイの身はとても柔らかい。あまりにも手応えが感じられず、刀よりも早く八重桜の心が折れる。
「でかくなってるからどうかなあ……前の時は食べれたんだが」
ザレムが呟きながら超巨大マテガイの一部を切り取った。
「で、お宝はどうなりましたぁ!?」
星野ハナも駆けよって味を確かめたところ、ぶよぶよで美味しくはない。幸いに日射し溢れる夏の砂浜なので、干して水分を抜いてみることにした。
超巨大マテガイが退治されたので立ち入り禁止が解除。海水浴場にちらほらと客の姿が見かけられるようになる。
ハンター一行も各々遊ぶことに。水着に着替える者達は浜茶屋に併設された更衣室へと向かう。
「はわわわわ、みんな、いつの間に……」
上半身を脱いだ時音が振り向くと、アデリシア、コーシカ、アルラウネ、白山菊理が同じ更衣室内にいた。
「いっ、一緒に着替えって」
顔を真っ赤にした時音が彼女達を見ないよう背中を向ける。
「間違えられて案内されたのかしら? まぁ恋仲だしそのまま着替えても問題ないわね」
ビキニ水着に着替えたアルラウネは、貸し出し中のパレオも腰に巻く。
「あ、ざくろさんの相手は平等に、持ち回りです。ちゃんと時間割しますから、宜しくお願いします」
アデリシアが青と白のツートンビキニに着替えながら恋人仲間に予定を伝えておく。
「今回のは支給っていうかもらったものだし……私なんか見なくてよいのよ? 私よりよい体型の子を見てなさいよ……まったく」
時音の真横に立ったコーシカがトラ柄ビキニを取りだす。
「えっ、えっとあの……」
「……あ、違うわね、此処に居ること自体がおかしいのよね? まぁ……私達はいいのかしら。慣れって怖いわね?」
コーシカは時音に惚けてみせる。
(思ったよりも簡単に倒せたな。後はざくろとデート、だな)
白山菊理が着替えたのは白のワンピース水着。その上に薄手のスイムシャツを羽織った。
全員が着替え終わって砂浜へ。しばらくゆでだこのように顔を真っ赤にしていた時音だが、やがてニコッと笑顔に変わる。「みんな、よく似合ってる……水着、新調したんだ」と恋人達の艶姿を誉めるのであった。
●
星野ハナは海水浴場を離れて近場の漁村を訪れる。
「どれも美味しそうですねぇ。肉や野菜はどうにかなっても魚介は現地調達基本ですからぁ」
野菜を含めた地元食材を購入。海水浴場に戻ってパーカー付きの水着に着替えた。
「酒蒸し酒蒸しぃ♪」
足つきダッチオーブンを組み立てて、干したマテガイの一部分を試しに酒蒸しにしてみる。
その頃ザレムは小振りな幻獣マテガイを退治していた。超巨大マテガイが干してもダメな場合に備えてである。大部分は砂浜の関係者に引き渡す。
「あ、ザレムさん」
「美味しそうなにおいだな」
ザレムが野外調理の現場に戻ってきた頃、ちょうど酒蒸しが完成していた。星野ハナと一緒に試食すると歯ごたえも干す前と大違い。これならばいけると二人して本格的な調理に取りかかる。
小振りな幻獣マテガイを天日で干している間に燻製を準備。マテガイだけでなく、様々な食材をジャーキーにしてみた。
「部位で調理法を変えてみますかぁ」
「酢の物、煮物、焼き物、揚げ物と……うーん、デザートはどうするかな。ジャーキーだけでなくてクレープにもしてみっか」
星野ハナとザレムはマテガイの身を様々な料理に変えていく。
八重桜は波打ち際で修行をしていた。
「海水を真水に変えるのです……海水を真水に変えるのです……海水を真水に変えるのです…」
戦闘での反省から彼女は特訓としてピュアウォーターを繰り返す。しかし海水の中で真水に変えても無駄な努力。途中で気がついたものの、だからといってもう止められなかった。
最後の一回を残して砂面に膝を突く。迫る波に濡れながら「タライでも準備しておけばよかったのです。タライないかな……」と呟いた。
海辺の遊びを満喫したのは時音とその恋人達である。一人ずつ時音との甘い時間を過ごした。
「ざくろん、こっちもお願いね」
「こっ、こんな感じでいいかな」
シートに寝転がったアルラウネは時音にオイルを塗ってもらう。自分ではやりにくい背中だけでなく正面も彼に任せる。
そのとき時音の背後に忍び寄る人影が。悪戯心を芽生えさせたコーシカが彼の背中を軽く押した。
「はわぁ!」
アルラウネの上に倒れ込んだ時音の手が小さな布地の下へ。真っ赤な顔で「ごっ、ごめん」と謝る時音。「ちゃんと塗ってくれたらこっそり好きなだけ――」そんな時音の耳元でアルラウネが優しく囁く。
コーシカは自分でオイルを塗っていたが、それでもあらためて時音にお願いした。
「さっきは驚いたよ。後ろから押すなんて」
「まぁ、私が押さなくても自分で倒れてるんでしょうけど? ラキスケ得意だし」
コーシカに首を横に振る時音だが、オイルが垂れたシートの上で膝立ちを滑らせる。コーシカの上に重なって「ほら」と笑われた。
やがて白山菊理の番となる。
「オイルを塗る手がぎこちないような気がするのですが」
「実は、わざとじゃなかったんだけど――」
白山菊理は時音から先程のオイル塗りの失敗談を聞かされた。
そこへ近づくコーシカ。時音に教えようかどうか悩んだ白山菊理だが、経験するのも一興だと黙っておく。
再びコーシカに背中を押された時音は白山菊理の上へと被さる。砂浜に「どうして!」と時音の叫びが響いた。
アデリシアときには何事もなくオイルが塗り終わる。仲間達を集めた彼女はピーチボールを用意。波打ち際で遊んだ。
「水泳は体を鍛えるのにもいいですよ」
「あのブイを触って往復だね。負けないよ」
アデリシアと時音が一対一の水泳勝負に挑む。白波を掻き分けて全力で泳いだのだった。
●
茜色に染まった夕暮れ時に晩食となる。
「みなさーん、BBQの準備出来ましたよぅ」
星野ハナの酒蒸しとバーベキュー。そしてザレムが作ったマテガイ料理が野外に並べられた。
タレが絡まったマテガイの身が焼ける美味しそうなにおいが辺りに漂う。焼きたてパンや焼きそば。氷水で冷やされたワインも一同を出迎える。
「やっぱり酒蒸し、美味しいですぅ」
「こっちのもうまいぜ。フライが特にうまくいったな。他にもデザートがあるぞ。楽しみにしていてくれ」
ザレムと星野ハナが料理を頬張る。
マテガイ・フライは砂浜の関係者にもお裾分けされて好評を博す。酒蒸しは酒の肴にぴったりだ。
「お腹空いたのです!」
修行に疲れた八重桜はふらふらしながらバーベキューを頂いた。マテガイだけでなくホタテやハマグリなど、豪華な食材が舌を喜ばせてくれる。
「これがあのマテガイなのか。……うんっ美味い! みんなも食べたら。美味しいよ!」
箸をつけた時音が満面の笑顔を浮かべた。
「これは美味しいですね」
「大味かと思ったら結構いけるよね」
白山菊理とアルラウネがバーベキューで焼かれたマテガイの身を頬張る。
「殻を使ってワインで煮たのはどうなの?」
「ジャーキーもそうですけど、私は好きです」
コーシカとアデリシアも料理を味わいながら会話の花を咲かせた。
「塩クレープ、美味しいですぅ。ハムの代わりにジャーキーがアクセントになっているのですよぉ」
「バーベキューのタレ、すごく美味いな。どうやって作ったんだ?」
星野ハナとザレムが互いの料理を感想し合う。
晩食後は花火タイム。一部のハンターは浴衣に着替えて再び砂浜に集まった。
「よし!」
「綺麗ですぅ」
ザレムが打ち上げた花火を星野ハナが仰いだ。海岸線の夜空に赤と青の灯りがぱっと散るように輝いた。
「ああ! もう! 適当でいいわよこんなの!」
浴衣がうまく着られなかったコーシカが着崩したままの姿で現れる。時音が恥ずかしそうにそれを直した。
時音と恋人達は円を囲んで線香花火を始める。
(何度か目の夏ですが、やはり愛する方と過ごすのは良いものですね)
アデリシアが蝋燭の炎で点火。先端の小さな赤い球が火花を散らせた。
「儚い、人生のようだ……」
白山菊理が小さな輝球が落ちる様を眺めて呟く。
「綺麗だね……」
そう呟きつつ時音が恋人達全員に視線を送る。「いつも側に居てくれてありがとう、大好きだよ」花火に照らされる誰もが綺麗で胸がドキドキとときめいていた。
「……時って早いものね、昨日もこうしていたと思ったら、いつの間にか一年も経っていたなんて…ね。私達が愛していないわけないし、今更じゃないかしら? とは思うけどざくろってそういう子だもの、ちゃんと答えてあげないとね」
コーシカの言葉に恋人達が頷いた。
しばらくして時音に見惚れていたアルラウネが気づく。
「ざくろん、落ちた線香花火が裾に……!」
「えっ?!」
アルラウネにいわれて時音が腕をあげると、片裾が燃え上がっていた。慌てながらも用意済みのタライの水で消して事なきを得る。
(このタライ……)
八重桜はよかったといった後でタライに注目。借りる算段を取りつけた。
その晩、時音と恋人達は宿部屋で激しい枕投げをしたという。寝入るまでに何があったのかは、その者達だけの秘密である。
●
現地滞在は四日間に及んだ。
(いたいた。今日の晩食も豪華になるぞ。ブイヤベースなんてどうだろうか。よい出汁がでそうだ)
その間にザレムが銛を借りて素潜りを敢行。大量の魚介類を手に入れた。それらを使った料理で毎日豪華な食事が続く。
「次(の恋)に備えて英気貯めますぅ」
調理以外の星野ハナはぶっ倒れる寸前までただ泳いだという。
「やっぱりこれよね」
コーシカが望んでいた西瓜割りも行われる。よく冷えた西瓜を食べながら海辺の煌めく星空をみんなで眺めた。
待望のタライを手に入れた八重桜は、最後のピュアウォーターで海水を真水に変えてみる。ただそれだけで満足する彼女ではなかった。
「いざ行かん、大海の果てへーなのです」
気分が大きくなった八重桜はタライを舟して沖へ。夕日の中に消えていく。翌日、漂流中にたまたま通りがかった漁船によって運よく救出される。
最終日には観光客の数も以前と変わりない状況となる。砂浜の関係者達に感謝されながら、ハンター一行はリゼリオへの帰路に就いたのだった。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/08/11 14:37:21 |