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【蒼乱】【詩天】僕の妖怪と戦ってみてよ!

マスター:赤山優牙

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/09/20 07:30
完成日
2016/09/25 19:12

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

◆???
 和風美女の姿をしている憤怒の歪虚が、丘の上で辺りの景色を眺めていた。
 髪があるはずの所には、髪の代わりに無数の蛇が生えており、チロチロと真っ赤な舌を好き勝手に出している。この歪虚の名は虚博。
「あの方は変わらず非情だよね~。弟を差し出すっていうし。このままだと、ボクも危険だよね~」
 独り言を呟く。
 虚博の心配ごとは、獄炎の後継者の性格が原因である。
 関心が無いというか興味が無いというのか、敵味方容赦ない所は“先代”と変わりない。
「一応、命令されていた通り、雑魔や仲間らを作り出したし。ボクの役目は終わりだよね」
 詩天への行商人を捕まえて脅し、色々な妖怪の話を聞き出した。
 いずれも斬新な話だったが、その中からいくつか気に入ったのを『実際に作ってみた』のだ。
 それをどこから得たのか大量の負のマテリアルを使って大量生産もしてみた。戦力の補強は済んだはずだ。
「性能のほども気になるけど、ボクが望むのはそこじゃないしね。見届けるつもりもないし……」
 どうしたものかと空を仰ぎ見た。
 真っ青な空はどこまでも続いている。噂によると、空の上には、また別の空間が広がっているというではないか。
 その話は、かつて、リアルブルーから転移したという堕落者から話を聞いた。その時は馬鹿馬鹿しいと思ったが、今となっては興味対象だ。
「リアルブルーってどうなっているのかな? どんな世界なのかな。ボクの知らない妖怪がいっぱいいるのかな」
 広げた両手の遥か先の空を、虚博が作った雑魔が飛んでいく。
 憤怒に属する歪虚の軍団に入っている以上、彼女の望みは叶わない。逃げ出すという事も可能だが、そうなると後々が面倒な事になる。
「どうするかなー。なにか良い案はないかなー」
 虚博はフラフラと歩き出した。
 人間達が奪い返した土地――長江――に向かって。

●長江のとある場所
 今年2月チョコレート解放戦線で人類は長江一帯を奪還した。
 カカオ豆以外にも貴重な香辛料も存在している訳であり、それらを求めて人が集まるのは当然の事。
 完全に安全という訳でもなく、商人達が護衛としてハンターを雇う事もあった。
 そして、ハンター達の中でも運が悪いハンターが、その雑魔らと遭遇した。
「なんだ、このでっかいサングラスみたいなのは」
「どうみても、負のマテリアルを感じるな」
 だだっ広い湿原にどんと置かれたような巨大なサングラス。
 左眼のカバーが鈍い音を立てて開かれようとしていた。
「それより、上を見ろ」
 上空には頭と足が鹿、胴体と翼が鳥の雑魔が数体飛んでいた。
 我が物顔で悠々とハンター達を見下ろしているが襲ってくる気配は感じられない。
「おい! サングラス野郎の蓋が開くぞ!」
 ようやっとしてサングラスのような雑魔の左眼を塞いでいた蓋が開いた。
 刹那、負のマテリアルのビームが放たれ、一人のハンターに直撃した。
「ぐ……あ……」
 バタンと蓋が閉じるのと同時に倒れるハンター。
「い、一撃だと……」
 驚いているハンター達の目の前で再び雑魔の左眼の蓋が――開かれようとしていた。
 びっくりする程、遅いが……。
「まずいぞ! 逃げるんだ!」
 誰かが言った言葉と共に走り出すハンター達。
 サングラス雑魔の謎ビームから逃れるように物陰に入ると、今度は上空を飛んでいた雑魔が襲いかかって来た。
「ちくしょう! なんなんだよ!」
 物陰から出ると襲って来なくなるが、そうなると、謎ビームが飛んでくる。
 ハンター達は命からがら、逃げ出したのであった。

●天ノ都
 いつも麺屋にタチバナは立ち寄った。
 入るなり、大慌てて常連の町民が声を掛けてきた。
「大変だよ! 旦那!」
「どうしたのですか、慌ただしいですね」
 微笑を浮かべ、座敷に腰を下ろすタチバナ。
 一方、町民は手に冊子のような物を持っていた。先日、ここの麺屋で行われたある依頼の話をまとめた冊子だ。
「この冊子に乗っているという雑魔とそっくりなのが出没したって!」
「それは当然ですね。百戦錬磨のハンターの皆さんがお話しになったのですから」
「呑気な事言ってる場合じゃねぇよ、旦那。こんなのに攻められたら、今度こそ終わりだ~」
 大袈裟に叫ぶ町民の頭を女将がおぼんで叩く。
「ほら、商売の邪魔だよ――タチバナさん、いつもので良いですか?」
「お願いします」
 お茶を受け取ったタチバナがゆっくりと湯呑を口につける前で女将が心配そうな表情を浮かべた。
「それにしても、噂じゃ、歪虚の軍団が動き出すって聞いたし、また、戦いになるのですかね」
「もう、勘弁だぜ!」
 震え上がる町民の頭をもう一度、おぼんで叩く女将。
「あんたも前に出て戦いな!」
「無理無理!」
 そこへ、別の接客を終えた看板娘が通りがかった。
「でも、戦なら、タチバナさん、仕官できるのじゃないですか?」
 その言葉に女将と町民は頷く。
「戦になるかどうかは、これから……という事ですからね」
 タチバナがやんわりとそう言った。

(まずは、敵の本拠地がどこにあるか――見当が付けば――攻め込む事も出来るのですが……)

 そんな事を心の中で思いながら。

リプレイ本文


「しのさん、ごきげんようですわー」
 集合場所でタチバナの姿を認め、元気な声で駆け出したのはチョココ(ka2449)だった。
 タチバナ――立花院 紫草(kz0126)――も、ハンター達の姿を確認して頭を軽く下げる。
「皆さん、お待ちしておりました。今回もよろしくお願いします」
「報酬は美味しいご飯がいいですの」
「それなら、依頼が終わって天ノ都に戻ったら、麺屋にでも行きますか」
 暖かく笑ったタチバナの横にそっと、天竜寺 詩(ka0396)が並ぶ。
「お姉ちゃんに、タチバナさんの事聞いたよ。でも、私にとっては、やっぱりタチバナさんは、タチバナさんかな」
 微笑を浮かべる詩の足元を1頭の犬が付いて離れない。
「この子は、牡丹だよ。今日の探索に同行するよ」
「それは、良い名前の子ですね」
 しゃがんだタチバナは詩の犬の頭を撫でた。
 そして、視線を龍崎・カズマ(ka0178)に向ける。その視線に気がついてカズマは声を掛けた。
「あの怪談話にそっくりな妖怪、ねえ……出来れば、妖怪の情報を得たいのだが」
「それに関しては、この冊子の通りのようですね」
 立ち上がったタチバナがある冊子をカズマに渡した。それは、先月妖怪の話をした内容そのままのものであった。
「あの怪談に似たような新種妖怪って事は……『他の』が居ても、不思議じゃねえんだろうなあ……」
「察しが良いですね。その通りなのです」
 調査は広範囲に行われているらしい。
 その中には、黒く長い髪を持つ雑魔――濡鳥魔女――や、眼窩にあるべきはずの目玉がない『瞳のない者』、巨人や白兎、植物のような雑魔など確認されている。
「タチバナさんの読み通りだが、ここまで忠実な再現となると、なにか勘ぐりたくなる」
 アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)が澄ました顔で言う。
 中には弱点が設定されたままの雑魔までいるのだ。新しく生み出す事が出来るのであれば、弱点を修正すればいいのに。
「もう一度、あの歪虚に出会えれば、なにか分かるかもしれませんね」
「絶対に探し出すさ」
 決意新たなアルトが居る一方で、ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)は、先程のタチバナの話を聞いてグッと親指を立てていた。
「私の殺人兎ちゃんを採用するとは、センスが良いのです」
 後は雑魔を探し出して、バッチリキッチリと退治するだけだ。
「それぞれ違う世界の話をした筈なのに、類似の雑魔発生。この事件の裏を絶対に、ズバット暴いちゃうんだから!」
 ちなみに、ルンルンは知るよしもないが、目撃されている件の雑魔らの中で、一番厄介な強さを持つのは、彼女の話が元になった雑魔である。
 この話の流れにライラ = リューンベリ(ka5507)は考えるような表情を浮かべた。
「この前、皆様がお話した妖怪を元にした雑魔ですか……」
 あの依頼では参加したほぼ全てのハンター達が妖怪や魔物の話をした。
「私のは不採用されるかと思ってお話ししたのですが……」
 植物のような雑魔は多分、自分だろうと見当がつく。
 大量生産されて大変な事にならなければいいのだが、些か不安にもなる。
「それでは、皆さん、参りましょうか」
 タチバナの言葉にハンター達は各々、頷いたのだった。


 湿地帯ではあるが、水の上を馬で疾走するハンター達。
 効果時間はさほど長くはないが、それでも一気に広範囲を走れるのは探索の幅を広げるのに意味はあるようだ。
「ウォーターウォークを足場の安定に使えるのですの」
 ニコニコとしながらチョココは言った。
 水の上を行けるのは、彼女の魔法の為だった。
「ノイズは言う程でもないな」
 カズマが伝話のノイズを確認していた。通話はクリアという訳ではないが、連絡を取り合うのに不都合な程ではない。
 伝話で別の班と連絡をとっている詩が地図を広げていた。
「なら、こっちも、もっと奥まで行ってみるよ」
 魔法が効いているうちにできる限り探索範囲を広げたい所。
 ハンター達はさらに湿地帯の奥へと走り出した。

 地図を用意して効率良く探索が出来るようにと提案したのはアルトだった。
 方位磁針で位置を確認しながら双眼鏡で周囲を確認している。
「これは……なにか、通った後か?」
 ふと足元の何かが這ったような不自然な筋が気になった。
「サングラスのような雑魔が、どうやってか、移動している跡でしょうか?」
 ライラが馬から降りて直接確認していた。
 ある一方に向かって伸びているそれは、これから向かう先と一致していた。
「ルンルン忍法分身の術! 走り難い湿地だって、これで周囲を見渡せるんだから」
 ヒューとルンルンの式神が飛んでいく。
 その青空の遠くに、なにやら、鳥の様な姿が幾つか見えた。方角は不自然な筋の先と重なる。
「見つけた、な」
 伝話のスイッチをアルトは入れたのだった。


 空は晴天。
 太陽の日差しが降り注ぐ中、サングラスのような雑魔に目掛けて突貫するカズマ。
「一発は貰うようだな」
 魔眼と名付けられた雑魔からの攻撃に対してだ。
 合流――発見――からの討伐ではあるが接敵するまでの距離は詰めなくてはならない。
「怪我した人の為にも、必ず倒します!」
「何をしてくるのか、知っている以上この場で倒させていただきます」
 カズマの後ろを続いていた詩とライラも武器を構えた。
 ゴウっと雑魔から強力な光が放たれる。幸運にも当たる事はなく通り過ぎたそれは、威力だけはかなりあるはずだ。
 一方、空を飛んでいる雑魔――影求怪鳥――が、影のない者を執拗に狙っていた。
「僕から見れば、タチバナさんも十分強そうに見えるけど」
 強烈な足爪の攻撃を払い除けて、苦もなく様子でアルトが言った。
 二人は岩場の影の中に入り、囮となっていた。影求怪鳥は影がない者のみを狙ってくる習性があるようだ。
「かなりの実力者と聞いていますので、今後の参考に、技を見せていただければ」
「参考になるかどうか分からないけど」
 その様に答えながらアルトは意識を全周囲に張り巡らせる。
 急降下してくる一体をフェイントを入れた素早い動きで避けるとタイミングをズラして迫る別の一体に対し、反撃する。
 雑魔が反撃を受けてよろよろと上昇する所に、チョココから放たれた電撃が直撃した。
「逃がさないの、ですのー」
 もはやボロボロな所を、眩い光が包み込んだ。ルンルンが放った符術の結界だ。
「ルンルン忍法五星花! 煌めいて星の花弁、周囲に影を作り、怪鳥よりの守りと成せ」
 光が収まると共に焼き尽くされた雑魔が塵と化した。
 アルトの目の前に別の雑魔が突如として落下する。タチバナがすれ違いざまに切りつけたようだ。
「飛べなければ、ただの的だね」
 容赦なく一瞬で切り刻む。空を飛んでいなければ、呆気ないものだ。
 上空には2体程残っているが、ここまで減らせればタチバナと二人でも問題ない筈だ。
「魔眼の援護に」
 だから、チョココとルンルンに告げた。
「分かったのですの~」
「忍術で移動を封じて、怪光線が一方行にしか飛ばないようにしちゃいます」
 二人が駆け出すと同時に再び雑魔が急降下して来た。

 一方、魔眼は先ほど射撃した為、左眼の蓋は閉じていた。
 急いでいるのか、ギリギリと音を立てながら、ゆっくりと開こうとしている。相当、遅い。
「ビームに撃たれそうなら、反対側に移動して回避できそうです」
 ライラが剣を魔眼雑魔に突き刺しながら言う。
 確かに狙われる事はないだろう。だが、雑魔の正面にはアルトらが居る。有効射程が如何程か分からないが、注意が空に向いている以上、危険である事に変わりはない。
 マテリアルを操りながらカズマは絶火槍を魔眼雑魔の左眼に向かって投げつけた。
「出来れば、魔眼を先に倒しておきたい所だ」
 大きな音を立て、蓋を突き破って左眼を貫通した。
 槍を手に戻さず、カズマは予備の武器を取り出した。魔眼雑魔はこうなってしまえば眼が開けないはず。
「魔眼さん、頑張り過ぎです」
 それでも蓋を傷つけながらも開こうとする雑魔に対し、詩はそんな事を言う。
 身体を揺らし移動しようとするので、詩が光の杭を打ち込んだ。これで身動きもできず、蓋も開けられずだ。
 そこへ応援として駆けつけたチョココの魔法が貫通した。
「むむっ、目からビーム、ですの? ヘンテコですのー。でも、油断すると痛い目に合うのですわ」
 警戒しながら放った電撃の魔法に続くように、ルンルンの符術も飛ぶ。
「既に移動が封じられている以上、後はルンルン忍法で倒すだけです!」

 結局、魔眼の左眼は二度と開く事はなく、ハンターらの集中攻撃を受けて倒された。
 影求怪鳥も敵わないと思ったのか、東の方角に向かって飛んで逃げていく。
 戦いは終わった。だが、安堵するまでもなく、新たな歪虚がハンターらの前に姿を現した。


 きっと、戦闘の様子は見ていたのだろう。笑みを浮かべて一行に近寄ってくる虚博。
 敵意が無い事を示すように両手を広げている。
「虚博様、ごきげんようですの」
 チョココも両手を広げた。
「最近どうでっか? ぼちぼちでんなー。ですのー?」
「そうだねー。ぼちぼちって所かな」
 それなりに広い間合いを取って虚博は立ち止まる。その視線はアルトに向いていた。
 視線に応じるようにアルトは口を開く。
「今回もまた、面白いというか奇妙なのを沢山作ったな」
「でしょでしょ! 君達には心当たりがあるようだけど?」
 心当たりがあるというか、もはや確信である。
 虚博が、ハンター達の話した内容で雑魔を作り出した事が。
「やっぱり貴方だったの?」
 頬を膨らませて憤慨しているのは詩だった。続けて虚博に訊く。
「でも、どうして、ほぼそのまま再現したの? 弱点があるって解ってるのに」
 攻撃するのに蓋を開けるまで時間の掛かる魔眼。
 影をある者には襲わない影求怪鳥。
 いずれも弱点であるのは、話が伝わった時から分かったはずだ。
「さぁ、何の事かな?」
 誤魔化すような琥珀の返答に、ルンルンがビシっと指を虚博に向けた。
 豊満な胸が豪快に揺れるが、今、そこにツッコミを入れる者はいない。
「一体、何を企んでいるの? 集めた話から妖怪雑魔を作り出す陰謀――なんちゃら先生が許しても、私が許さないんだから!」
「なんちゃら先生?」
 カクリと可愛げに首を傾げる虚博。
 髪を形作っている無数の蛇が一斉に真っ赤な舌を出す。
「そんなに『珍しい』妖怪を、作らなきゃならないのか?」
 特に敵意を向けた様子なくカズマが進み出て虚博へ質問する。
 なにか理由があるはずだ。
「そうだねー。例えば、理由があったとしても、それを僕の口からは言えない――としたら、どうかな?」
「……それは俺達が、その理由を推測しなければならない事なのか?」
「肯定するよ」
 虚博の返答にハンター達はお互いの顔を見合わせた。
「もしかして、知識そのままにしか再現できないのかな?」
 詩の質問に対し、虚博は首を横に振った。
「あなただけが出来る事が、特殊だから重用されているのしょうか?」
 続いて、ライラの質問にも虚博は首を振る。
「分かりました! わざと倒されるつもりで作ったんですね!」
 まるで明後日の方角に向いているようなルンルンの推理。
 だが、虚博は首を横に振らなかった。もちろん、肯定もない。
「……つまり、こういう事ですか……」
 それまで無言で成り行きを見守っていたタチバナが口を開いた。
「貴女はなにかの事情で、自らの勢力が負ける事を願っている。弱点がある雑魔を作り出したのは我々が倒しやすくする為。そして、珍しい雑魔を求めていたのは貴女の仲間を誤魔化す為」
 全員の視線が虚博に集まる。
 虚博にはニヤリと笑っただけだった。
「本当の答えには、君達自身で到達すれば良いと思うよ」
 数歩下がりながら虚博から負のマテリアルが放出される。
 同時に、どこからか、鼠娘のような姿をした雑魔と額に太刀の如き一本角を持つ龍人のような姿をした雑魔が姿を現した。
「珍しく憎めない奴ではあるんだが、雑魔を生み出しまくる以上退治しないとな」
「貴女を逃がしては、また新しい雑魔が作られ、罪のない人を殺す……なら、ここで倒させていただきます」
 アルトとライラが武器を構えた。
 憤怒の歪虚である虚博は、変な所もあるようだが、様々な雑魔を生み出せるのだ。それなりに強い部類に入るかもしれない。
 討伐できるに越したことはないが、倒すまではいかずとも、戦闘能力は測っておきたい所だ。
「君達には敵わないから逃げさせて貰うよ」
 笑みを浮かべたまま虚博は脱兎の如く逃げ出した。頭の無数の蛇から煙幕のようなものが張られていき、ハンター達の追撃を防ぐように雑魔が道を塞ぐ。
「演技が下手ですが、また会うのですのー」
 チョココの元気な声が響いた。
 虚博は地図のような何かを落としていったからだった。次、会う機会があるかどうか分からないが……。
 ともかく、再び戦闘開始だ。
 雑魔の数は二体。
 妖怪の冊子によると、『ジョシリョクタカイ』と『一本角』のようだ。弱点らしいものは無いタイプで、冊子の中では、それなりに強いと思われる。
 一行から素早く飛び出たカズマが鼠娘のような雑魔に向かう。
 その雑魔は全身を震わせ、稲妻を発生させた。しかし、刹那、雑魔の稲妻が消え去る。
「カウンターマジックですのー」
 雑魔の範囲魔法を打ち消したのはチョココの魔法だった。
 妖怪の冊子によると、自身を中心に強烈な稲妻を放つという。
「よし、一気に片を付ける」
 チョココの援護を受けながら、仲間に告げると、カズマはワイヤーウィップを巧みに操り、鼠娘の雑魔を捉えた。
 悶えて脱出しようとするそこへ、絶妙なタイミングでアルトが必殺の一撃を叩き込む。
「雑魔を用意していたのなら、先に出しておけばいいのに」
「虚博も会話したかったという事だったのかな」
 アルトの言葉に続くように詩の台詞。
 恐らくはその様な意図があっての事だろう。
 詩は光の波動を放って雑魔らにダメージを与え、トドメにライラが竜尾刀で貫いた。
「集中攻撃できれば驚異ではなさそうです」
 残った雑魔はルンルンが符術で拘束させていた。
「ルンルン忍法で移動を封じちゃいます!」
 こうなると勝負は明らかだ。だが、その間にも虚博の姿は消え去っていた。


 新たに現れた雑魔を倒し、一行は虚博が落とした地図らしき物を手に入れた。
 それは長江よりも先、憤怒の歪虚の本拠地の一帯を示す物であったのだった。
 これにより、エトファリカ連邦国は、ヴォイドゲートが存在されるという、憤怒の歪虚の本拠地へ向けて出陣する事になるのではあるが、それはまた、別の話である。


「罠って事はないかな?」
 心配する詩にタチバナは頷いた。
「罠があるとしても突破するのみです」
 タチバナは東の方角を見つめながら答えた。
 その顔は、素浪人ではなく、将軍の顔だった。


 おしまい

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  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマka0178
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニka3109

重体一覧

参加者一覧

  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマ(ka0178
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 征夷大将軍の正室
    天竜寺 詩(ka0396
    人間(蒼)|18才|女性|聖導士
  • 光森の太陽
    チョココ(ka2449
    エルフ|10才|女性|魔術師
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士
  • 【魔装】猫香の侍女
    ライラ = リューンベリ(ka5507
    人間(紅)|15才|女性|疾影士
  • 忍軍創設者
    ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784
    人間(蒼)|17才|女性|符術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/09/14 23:44:23
アイコン 質問卓
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
人間(クリムゾンウェスト)|21才|女性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2016/09/18 16:45:45
アイコン 【相談】探索と退治
龍崎・カズマ(ka0178
人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2016/09/20 00:31:10