ゲスト
(ka0000)
【月機】敵ミサイル基地を無力化せよ!
マスター:韮瀬隈則

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/09/25 09:00
- 完成日
- 2016/10/03 06:05
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
歪虚忍び寄る『おばけクルミの里』。
ついにコーリアスが包囲の輪を縮め、決戦に向けて動き出す。
ユキウサギ達は月天神法で結界を形成。里への侵入を阻む。
月天神法の消滅は、コーリアスが目的とするツキウサギの危機に繋がる。コーリアスの好きにさせれば、人類の敗北はまた一歩近づく。それは決して許してはならない。
ハンター達の死力を尽くした防衛戦が――今、開始される。
●
里まではるばると査収に来たオフィス出張所の受付嬢が、芳しくない面持ちで仮説テント内に設置されたテーブルに資料を置く。
「コーリアス協力者による包囲はご存知のとおりです。これにより、先のミサイル基地敷設のもうひとつの意図が判明したことになります」
はじめは恫喝。
戦術的には里への一斉砲火。
そして戦略的には──ハンター側の人手の漸減。おそらくこれが本命だろう。
とうてい無視の出来ない、里を睥睨するミサイル基地という存在。向けられた総数200というミサイル総数は、先に行われた威力偵察によりその勢いを殺いではいるが、依然とその威容をはなち、稼動を示す最初は数本だった白煙はいまや10本を大きく超えて立ち上っている。
偵察結果が反映されたものだという資料が配られる。
事はコーリアスの包囲宣言からはじまり、里を見下ろす丘頂上に、異様な建造物と兵器群が設置された。見た目はレーダー施設と大量のミサイルポッド、俗に言う陸上イージスを新旧とりまぜたリアルブルー兵器で構築したかにみえたそれは、先の偵察により、漂着物のコピーを錬金術と歪虚化で改修した代物を半手動運用していると判明している。
以下は資料掲載の概要、だ。
・中央の数階建て相当の円錐型ビル:
アンテナ基部にして、ミサイルポッド動力部
背面出入り口より薪を投入する巨大亜人がみられ、火力水蒸気炉と推測される
後述のミサイルポッドとは、水蒸気用の配管とデータ入力用のコードで繋がっている
中ほどにカウントダウンを行う時計があり、コーリアスの提示期限に連動し総攻撃を加えると推測される
・巨大アンテナ:
円錐ビル先端に取り付けられ、索敵角60度コーンで1分1回転する顔面型パラボラ
音波を発信し、1分毎のエコー差分による広範囲索敵を行い、視覚にて精度を向上
偵察により生体と判明、また、顔面半分を軽度だが破損している
・ミサイルポッド群:
リアルブルーの旧型ポッドに酷似し、8発装填用が25基設置、うち4基が消耗済み
実態は蒸気カタパルトとその欺瞞用カバーであり、円錐ビルからの蒸気配管で稼動する
射程に癖があり、基地直近200mには発射不能
手動操作盤が1基ごとに取り付けられており、アンテナから有線で入力用データを取得する
操作盤のコードは複数経路に冗長化されており、単純な1系統の切断のみでは停止しない
・小型誘導ミサイル:
リアルブルー旧型品に酷似するが、飛行型歪虚と判明
蒸気カタパルト射出で目標上空まで高速飛来、以後、3T飛行可能だが自身の速度は遅い
追尾は磁力を利用した誘導であり、該当物がない場合は自然落下地点で自爆(強化ファイアボール相当)する
・巨大亜人:
6体、うち2体が先の威力偵察により負傷していると思われる
巨大な斧を持ち警備に当たっていると思われたが、動力炉制御ならびにミサイル発射操作も兼任していると判明
過去の戦闘事例では、新人ハンター4名がかりで1体を討伐した個体と同種とされる
偵察中、攻撃されたミサイルポッドを庇うなど、ミサイル保護を最優先とする行動原理が観測された
●
「……つまり、雑なニコイチのパチモンを繋ぎ合わせて、半手動でポチってるってやつです」
偵察に従軍したプリケッタが、負けじと雑に要約する。
噂に聞くコーリアスに似合わぬ酷い基地の仕様だが、協力者がいたとなれば説明がつく。その者の入れ知恵だ。
「偵察により攻略難易度は大幅低下。次こそ基地の無力化を、となるのですが……状況の好転はおおきくはなさそうです」
受付嬢のため息。
性能低下していようが、ミサイルは依然と里に照準を向けている。
基地運用者以外の協力者が、多数、里への総攻撃を仕掛けている。
基地無力化に割ける人員は多くはない。
無視すれば里に被害は甚大であり、攻略失敗となればなお、コーリアスに渡った近代兵器による運用概念が有効であると協力者へも知らしめることとなる。
「時計が示す期限前に、少数精鋭によるミサイル基地の無力化。これが今回のミッションとなります」
受付嬢の一礼。
──残り時間は数時間を切る。
無茶の代わりといってはなんですが、とプリケッタに振る。
「あ、はい。えーと、私ともう一人が皆様の突入支援をやらせていただきます。それとコレ凄いンですけど、なんと!──」
プリケッタがじゃじゃーん、と紹介したのはユキウサギの一団、である。
『俺達の里を護ってくれるハンターさン達に助太刀しねぇで、なンの義理が立つものかッス。チンケな者どもでありゃスが、どうかお供に連れて行ってくンなせぇッス』
「……だそうです。ううう、翻訳したメモを音読したんですけど口調自信ないですよぅ」
歪虚忍び寄る『おばけクルミの里』。
ついにコーリアスが包囲の輪を縮め、決戦に向けて動き出す。
ユキウサギ達は月天神法で結界を形成。里への侵入を阻む。
月天神法の消滅は、コーリアスが目的とするツキウサギの危機に繋がる。コーリアスの好きにさせれば、人類の敗北はまた一歩近づく。それは決して許してはならない。
ハンター達の死力を尽くした防衛戦が――今、開始される。
●
里まではるばると査収に来たオフィス出張所の受付嬢が、芳しくない面持ちで仮説テント内に設置されたテーブルに資料を置く。
「コーリアス協力者による包囲はご存知のとおりです。これにより、先のミサイル基地敷設のもうひとつの意図が判明したことになります」
はじめは恫喝。
戦術的には里への一斉砲火。
そして戦略的には──ハンター側の人手の漸減。おそらくこれが本命だろう。
とうてい無視の出来ない、里を睥睨するミサイル基地という存在。向けられた総数200というミサイル総数は、先に行われた威力偵察によりその勢いを殺いではいるが、依然とその威容をはなち、稼動を示す最初は数本だった白煙はいまや10本を大きく超えて立ち上っている。
偵察結果が反映されたものだという資料が配られる。
事はコーリアスの包囲宣言からはじまり、里を見下ろす丘頂上に、異様な建造物と兵器群が設置された。見た目はレーダー施設と大量のミサイルポッド、俗に言う陸上イージスを新旧とりまぜたリアルブルー兵器で構築したかにみえたそれは、先の偵察により、漂着物のコピーを錬金術と歪虚化で改修した代物を半手動運用していると判明している。
以下は資料掲載の概要、だ。
・中央の数階建て相当の円錐型ビル:
アンテナ基部にして、ミサイルポッド動力部
背面出入り口より薪を投入する巨大亜人がみられ、火力水蒸気炉と推測される
後述のミサイルポッドとは、水蒸気用の配管とデータ入力用のコードで繋がっている
中ほどにカウントダウンを行う時計があり、コーリアスの提示期限に連動し総攻撃を加えると推測される
・巨大アンテナ:
円錐ビル先端に取り付けられ、索敵角60度コーンで1分1回転する顔面型パラボラ
音波を発信し、1分毎のエコー差分による広範囲索敵を行い、視覚にて精度を向上
偵察により生体と判明、また、顔面半分を軽度だが破損している
・ミサイルポッド群:
リアルブルーの旧型ポッドに酷似し、8発装填用が25基設置、うち4基が消耗済み
実態は蒸気カタパルトとその欺瞞用カバーであり、円錐ビルからの蒸気配管で稼動する
射程に癖があり、基地直近200mには発射不能
手動操作盤が1基ごとに取り付けられており、アンテナから有線で入力用データを取得する
操作盤のコードは複数経路に冗長化されており、単純な1系統の切断のみでは停止しない
・小型誘導ミサイル:
リアルブルー旧型品に酷似するが、飛行型歪虚と判明
蒸気カタパルト射出で目標上空まで高速飛来、以後、3T飛行可能だが自身の速度は遅い
追尾は磁力を利用した誘導であり、該当物がない場合は自然落下地点で自爆(強化ファイアボール相当)する
・巨大亜人:
6体、うち2体が先の威力偵察により負傷していると思われる
巨大な斧を持ち警備に当たっていると思われたが、動力炉制御ならびにミサイル発射操作も兼任していると判明
過去の戦闘事例では、新人ハンター4名がかりで1体を討伐した個体と同種とされる
偵察中、攻撃されたミサイルポッドを庇うなど、ミサイル保護を最優先とする行動原理が観測された
●
「……つまり、雑なニコイチのパチモンを繋ぎ合わせて、半手動でポチってるってやつです」
偵察に従軍したプリケッタが、負けじと雑に要約する。
噂に聞くコーリアスに似合わぬ酷い基地の仕様だが、協力者がいたとなれば説明がつく。その者の入れ知恵だ。
「偵察により攻略難易度は大幅低下。次こそ基地の無力化を、となるのですが……状況の好転はおおきくはなさそうです」
受付嬢のため息。
性能低下していようが、ミサイルは依然と里に照準を向けている。
基地運用者以外の協力者が、多数、里への総攻撃を仕掛けている。
基地無力化に割ける人員は多くはない。
無視すれば里に被害は甚大であり、攻略失敗となればなお、コーリアスに渡った近代兵器による運用概念が有効であると協力者へも知らしめることとなる。
「時計が示す期限前に、少数精鋭によるミサイル基地の無力化。これが今回のミッションとなります」
受付嬢の一礼。
──残り時間は数時間を切る。
無茶の代わりといってはなんですが、とプリケッタに振る。
「あ、はい。えーと、私ともう一人が皆様の突入支援をやらせていただきます。それとコレ凄いンですけど、なんと!──」
プリケッタがじゃじゃーん、と紹介したのはユキウサギの一団、である。
『俺達の里を護ってくれるハンターさン達に助太刀しねぇで、なンの義理が立つものかッス。チンケな者どもでありゃスが、どうかお供に連れて行ってくンなせぇッス』
「……だそうです。ううう、翻訳したメモを音読したんですけど口調自信ないですよぅ」
リプレイ本文
●
頭上に飛来音。そしてすぐ、後方で爆発音が鳴り響く。
振り向きもせず──
基地無力化へと向かう彼らは、進攻の足をより速めた。
「狙われるのは御免被ります、ので。査収は滞りなく。ええ」
マッシュ・アクラシス(ka0771)が道中に観測した敵索敵網の挙動と、前回偵察資料をつき合わせる。差分を見つけるのは得意だ。自称、小役人。破損が繕われていない現状を発見し、おやおやと苦笑する。
「元々、最先端とは計りかねる兵器ですが、補修不可とは枯れた技術すらも活用できぬこの惨状。是非、公知するべきですよねぇ」
我々だけでは勿体無い。
タイムキーパーに役立った、とマッシュは黒耀 (ka5677)へ資料複製の礼を言う。
「決算期はお忙しいものと決まってますでしょう?」
その決算は基地壊滅をもって支払って貰うことになりますが。カード決済でね? 黒耀がバインダーから符ではない紙片を取り出す。手招くはユキウサギ達。
「情報更新を書き込み済の資料写真です。ここ。ここも。手当たり次第壊してください」
覗き見れば、偵察で撮影した操作盤とコードの写真焼増しだ。『写真の写真』であるから鮮明とはいい難いが破壊指示には支障ない。一方通行の意思疎通でありながら一斉に頷くユキウサギに、受付嬢に持ってきて貰った甲斐があったと、カード使いである黒耀は笑う。カードとカルテ……書類は同義語だ。
ミサイル防御圏内少し手前。
「状況開始だ。複数発射開始が想定より早ェ」
再度のミサイル発射と迎撃音に、J・D(ka3351)は担いだ自転車を下ろし、低木の茂みから飛び出した。全速力──!
重い荷をここまで運んだ意味。それはもう一つの保険、二段構えの突入支援、である。無駄は承知。ペダルを踏む今でも博打である疑念は自ら拭えてはいない。
「さてさて今度は大所帯ェ。その面子を残らず運ンで、からくり仕掛けを黙らせるのが今回の仕事よ」
『顔』の回転まであと10秒……
(誰のためでもいい。ご生還を──)
そう見送ってくれたのは丑、だったか。前回切り残した鳴子と下生えに隠れた段差を回避する。
(立ち漕ぎは道交法違反だから危険なんですよ)
リアルブルーの法律を出し、要は心配してるんですと続けた柚子を思い出して苦笑する。
ライフル「ルインズタワー」の射程に踊りこむように達し、放たれた弾丸がいままさに振り向いた『顔』……索敵アンテナの健全であった片目を潰す。
「Jさん流石ぁ! でさ、ちょうど鳴子切れた所が目前だから、一気に持ち場に直行で構わないよね?」
錬金術は爆発だ! と大きな顔していたのが泣きっ面かくのは気持ち良い。
メイム(ka2290)の目にはもう何度と無くトレース練習した策定経路。言うより前に駆け出しているのはツッコミ所ではないだろう。今度J・Dが狙うのは、梟めいた丸顔のもう片目か嘴か。──しかし、次の攻撃が無事行われる保証は……無い。J・Dの行動が無駄となるか否か? 巨人即応の前に到達し状況継続、それが相互支援の最適解。
想定済みだと同じく走るマッシュが、メイムの意図を肯定している。気付かれたら終わり、ではない。気付かれても対処できない場所へ食い込み続ける。それが浸透戦術である。
またミサイルが打ち出され、今度は迎撃成功を示す爆音が続く。プリケッタとシモン──第一次作戦失敗での仇討ちが今回の支援部隊、だ。
●
「私に軽装を強いた報い、受けていただきましょうか? ええ、里を狙う罪も償って頂きますとも。ミサイルもどきめの殲滅。全てを破壊し尽くしても足りません」
エルバッハ・リオン(ka2434)は呪詛のように呟いている。
貸し、があるのだ。彼女には。
近代兵器を装う歪虚。その仕様があまりに稚拙で、しかし間違いなく重装備排除に効果的だったことも怒りに拍車をかけている。顕わとなった胸元の薔薇──
「もう始めてしまったが、宜しく」
無線に一言。
黒耀策定のルートを経て、白煙けぶる敵布陣片翼に到達したのが数秒前。なお、彼女の初撃はその更に前、ファイアーボール射程にポッドを捉えたと同時に行われている。軽装備の怪我の功名か体が軽い。
陽動である彼女達──黒耀とエルバッハ──は、ポッド、いや蒸気カタパルトの稼動状況を即座に把握にかかる。こちら側は迎撃用ふくめ全てが稼動!
「むしろ、稼働中のほうが挙動が判りやすくて僥倖、というものではありませんか?」
バインダーのカードは既に戦闘表示。黒耀の顔つきが挑発的なものに変わる。
「御身は私の瑞鳥なる下僕が護る。存分に暴れられよ」
直前まで写真と現物を引き合わせ、優しげにユキウサギに指示をしていた彼女が一転、彼らに激しく激をとばす。散開するユキウサギ2羽に、エルバッハも付け加える。
「よいですか? 無差別です。無差別に引きちぎれるものはなんでも。巨人が来れば跳ねて離れて。それだけで我々がどんなに助かるか……」
唐突にエルバッハに近いポッドの前面カバーが開く。一瞬驚き、それが各ポッドの操作盤ケーブル破断由来と把握して、好都合と口角をあげた。操作トラブル軽減のため、信号が切れればカバーを外す仕組みなのだろう。
「その調子です。忌々しいカタパルトを捻じ切るのには丁度よい。巨人をおびき寄せるにも判りやすい」
──そら来た!
半身が爛れたほうは、先日の仕留め損ねの個体か。今度こそトドメを見舞おうか。無防備となったポッド正面からカタパルトを歪虚ごと焼く。幾つかは残ってしまったが、シリンダーが歪めばもうミサイルは飛べまい。悲鳴のような咆哮をあげて、ポッドを護らんと突撃する巨人に、今度は黒耀の【五光】が襲う。
「結界に入ったが最後、五行相生の理に劫かれるがよいわ!」
「それ、レアカードたるキモはやはり行動阻害です。今度こそポッドごと奴を焼いた。次……ポッドも巨人も次が控えています」
散開、です。エルバッハの目配せ。
隣のポッドにさしかかる巨人に、しかし黒耀が風雷陣を投げる先は、接続された蒸気供給パイプと思われる配管だ。
一気に吹き上がる蒸気に隠れ、陽動の二人と2羽は次の目標へと散開する。蒸気に勢いが失われた頃、稲妻が最初につけた傷よりはるかに大きな亀裂が配管表面をのたうっていた。なるほどこれは効果的だ。黒耀は蒸気圧とはこういうことかとほくそ笑む。
「カバーを開かせて巨人を呼び挟撃、しとめ損ねたところで配管を破裂させて逃げれば、また奴の習性を衝ける」
蒸気は派手に吹き上げるべきでしょう。カタパルトにダメージが行くなら積極的に、とエルバッハの今度は風の斬撃。
「させぬわ! 我がサモンに付与された加護、貴様のライフごときの引き換えで傷つけるなど笑止! 強靭無敵にして最強なり!」
ユキウサギに襲い掛かる巨人の半裸の皮膚を切り裂き、黒耀が吼たえた。
●
もう片翼。仙堂 紫苑(ka5953)、メイム、マッシュの3名とユキウサギ3羽が、うねる配管と林立するポッドに身を隠す。白煙の把握──こちらに供給されているのは迎撃用の3基のみ。その発射管の中は空だ。
隠密行動で壊せるものを全て壊す。
……気付かれたら?
そのときは総力をもって巨人ごと壊す。
「厄介な侵入者として振舞う。人の嫌がることを進んでしましょう、という標語を思い出しますよ」
各自、得意な相手を得意な手法で壊すが宜しいかと。マッシュは、こう見えて私は速攻殲滅戦が得意でして、と大鎌「グリムリーパー」を配管に突き立てる。さぁ、皆さんもご遠慮なく。
応えてユキウサギが杵を握り締め、歯を食いしばる。
──緊張も無理はない。ほんの数週前まで彼らは戦闘と無縁の場所にいて、志願とはいえ始めて敵に対峙するのである。新人ハンター、いやそれ以上に不安と覚悟が彼らを震わせていた。
「大丈夫です。精鋭がついています。が、この作戦、場違いな駆け出しの自分でも可能と、そう説明したはずです」
数十分前──
仙堂は紹介された彼らの震えを目ざとく見つけている。
「当作戦のキモは2つ。一つは全員無傷で基地に到達すること。もうひとつは、襲撃時において巨人に制御盤に触れさせることなく制圧すること。です」
ミーティング時のことだ。テント内の黒板に仙堂のチョークが奔る。
総勢6名と6羽。数の上では巨人6体に対し2:1で挑むことが可能だが、待ち受ける相手は巨人だけではない。ポッド25基にミサイル残余160……護るは索敵網と強固たる動力炉ビルである。敵は巨大で多すぎる。
「いいえ。味方はその敵の数、ですよ」
ああなるほど。仙堂にマッシュがははぁんと頷く。
「合計で考えるのは辞めましょう。アンテナと動力とミサイルポッド25基、これを6体で回しているのです、敵は。そして巨人。知能と巨体は脅威ですが形状は人間と同じ。目と手と足は二つずつしかない」
翻弄するには力は要らない。跳ねて一撃を狙うユキウサギは──その任に最適、であった。
「確実にバレずに到達さえすれば、巨人ができるのは身を挺しての白兵防衛しかない。接近手法は確立され支援は万全です。ユキウサギの皆さん、よろしくお願いします」
黒板を背に仙堂の礼。
秘めた仙堂の一面……戦術狂いが最適解だと己に告げる。
──これが数十分前のことである。
巨人の大斧が振り上げられ、ピタリと静止する。
「どうしたの? 侵入者排除がお仕事じゃないのかな? ん?」
対するメイムの突きつけるのは、鋭利にして透明なる槌頭「クリスタロス」。小柄なメイムが巨人の咽喉元狙いなのは、その立地がミサイルポッド上だから、である。巨人が上に陣取るメイムに一撃を見舞えば、ポッドを自ら破壊することとなる。
「速度重視でいかせて貰うからね。見つかっちゃったから仕方ない。私は逃げ回って不意を衝くより、寄せてブン殴るほうが手っ取り早い」
でも仲間は違うから頑張って?
背後からユキウサギの渾身の痛撃が巨人の裏脛を打つ。
「ほらそこ。2匹がかりでこられてもこっちはむしろ好都合なんだよねぇ?」
圧倒的重力をもって回転する透明な殺意。ラウンドスウィングは当てる技ではなく当たらせる技、なのだ。重心を崩した1体と躊躇する1体。まとめて上半身を薙ぐ。──防ぎきれぬ片腕の巨人が首を落とす、しかしもう1体の胸を抉れども斃れず。コントロールを失う斧がポッドごとメイムに向かった。
「……って、シオンさんナイスアシスト!」
肩で息をつく仙堂のジェットブーツが雷撃を放つ射程を詰めたのだろう。大きく口を開けて硬直する巨人に今度こそとメイムはトドメの連撃を放つ。
「配管とコードの破断完了です。これよりメイン操作盤と思われるビル本体を落とします」
無線機とメイム両方に叫ぶと、仙堂は増援に来た巨人1体と周囲のポッドへ三筋の光線を放って……逃げる! 行き先は一路、先行するマッシュの待つ中央の基地ビルだ。
「どちらを護るかという岐路とは、身につまされるものがありますねぇ……」
太平楽の昼行灯めいた口調と裏腹に、大鎌を構えるはマッシュ、である。
ここは中央、アンテナ基部にして動力炉であるビル裏手──
増援戦力の逐次投入は愚策中の愚策……ではあるが、それを強いる状況下はやってくるものだ。背面に黒い顔が張り付いて、そこから繋がるのがメイン操作盤。顔直下の扉が燃料投入口だろう。それを動かしていた巨人が1体、先ほど襲撃班方面へ増援に向かった。残るは1体。戦力の分散という愚策にして悲しき習性だ。
「仙堂さんとメイムさん。お二方が合流するのと、騙された巨人が帰ってくるのと、どちらが先でもまずはコイツを削ぐのが宜しいですか」
ふぅと溜息。機と見た巨人が斧を振りかざしマッシュとの距離を詰める。
──どう。
無防備な両脚を曝していただき有難うございます。マッシュの慇懃無礼な一礼に、巨人はただ地を這うのみ。
「でさ、どっち優先?」
合流したメイムが残り巨人1体か、操作盤かを問う。
「……どうでもいいが、あンたら俺を忘れちゃいねぇか?」
卓越した腕による連続射撃音は銃声という形容詞を超える。
斧を取り落とし、顔を押さえる巨人に更に追撃。蹲った姿勢で凍結する巨人に、どうするね? 男を魅せるかい? と、どこからともなくふらりと現れたJ・Dは集まってきたユキウサギに問いかける。
「残るミサイル歪虚の始末は、エルバッハさんが着手済です。ユキウサギさん達、大丈夫ですよ。ヤってらっしゃい」
黒耀が、ほらねと盛大にあがる爆炎を指差した。私の分も残して欲しいのだけれどと笑う。
それじゃコッチを遠慮なく。メイン操作盤にメイムのとっておきの一撃。更にもう一撃。
「リアルブルーの友達に聞いたんだけど、操作盤のマスターキーって斧槌なんだってね」
●
「ミサイル歪虚、炉に放り込むべきでしたか?」
いやとんでもない! エルバッハの火力のほうが強い。
全ての配管とコードは破断され、ポッドは擱座し、ミサイル歪虚は引きずり出され焼き尽くされた。護る巨人ももういない。
「中途半端な運用というのは結局、弱点にしかなりえないのです。人力の良し悪しに留まらず」
つくづく身につまされますよ、負の遺産が残るのは厭なものです。
しかつめらしく呟くマッシュが睨むのは、歪虚と錬金術に侵された漂着物という始末に悪い残骸。
「終わってねェよな?」
「ええ。終わっていません」
調査結果では、自爆装置はなかった。けれども──
時計の針は未だ止まらず、未だ時を刻むのを止めず。
朽ちぬ残骸とともにエネルギーを供給し続けているのだ。この動力炉ビルは。
仙堂は幾重にも重なるヴェールのような、コーリアスと協力者の狙いに気付く。
そう簡単に手放しはしない、と。それはユキウサギとツキウサギにかける呪詛めいたトラウマだ。
J・Dはコーリアスがその執念の理由に、心の中で唾を吐く。
協力者いや怠惰歪虚への誇示、なのだ。自分の後に続け。そして幻獣を蹂躙せよ、と。
「見つけたゼ。ビルの中に樹木っぽいパイプが立っている。おそらくそれが地下水ポンプと蒸気機関だ」
仙堂さんに呼ばれて聴音してみりゃ、なんだこりゃ。
プリケッタとシモンが炉の燃料投入口を大きく開き、あれだと指差す。
J・Dの銃口が一点を狙う。
リアルブルーの友人に以前資料を見せてもらったことがある。啓一に礼を言わねばなるまい。相手は何のことだか意味不明だろうが……
そして一発の銃声。
止まった時計は、里のユキウサギ達に勇気を与え、協力者達が傍観をかこつ理由のひとつとなった。
総合的な勝敗が決するにはまだ足りず。
しかし局地的大勝利はユキウサギの里に勇気という大きな一歩を生み出した。
頭上に飛来音。そしてすぐ、後方で爆発音が鳴り響く。
振り向きもせず──
基地無力化へと向かう彼らは、進攻の足をより速めた。
「狙われるのは御免被ります、ので。査収は滞りなく。ええ」
マッシュ・アクラシス(ka0771)が道中に観測した敵索敵網の挙動と、前回偵察資料をつき合わせる。差分を見つけるのは得意だ。自称、小役人。破損が繕われていない現状を発見し、おやおやと苦笑する。
「元々、最先端とは計りかねる兵器ですが、補修不可とは枯れた技術すらも活用できぬこの惨状。是非、公知するべきですよねぇ」
我々だけでは勿体無い。
タイムキーパーに役立った、とマッシュは黒耀 (ka5677)へ資料複製の礼を言う。
「決算期はお忙しいものと決まってますでしょう?」
その決算は基地壊滅をもって支払って貰うことになりますが。カード決済でね? 黒耀がバインダーから符ではない紙片を取り出す。手招くはユキウサギ達。
「情報更新を書き込み済の資料写真です。ここ。ここも。手当たり次第壊してください」
覗き見れば、偵察で撮影した操作盤とコードの写真焼増しだ。『写真の写真』であるから鮮明とはいい難いが破壊指示には支障ない。一方通行の意思疎通でありながら一斉に頷くユキウサギに、受付嬢に持ってきて貰った甲斐があったと、カード使いである黒耀は笑う。カードとカルテ……書類は同義語だ。
ミサイル防御圏内少し手前。
「状況開始だ。複数発射開始が想定より早ェ」
再度のミサイル発射と迎撃音に、J・D(ka3351)は担いだ自転車を下ろし、低木の茂みから飛び出した。全速力──!
重い荷をここまで運んだ意味。それはもう一つの保険、二段構えの突入支援、である。無駄は承知。ペダルを踏む今でも博打である疑念は自ら拭えてはいない。
「さてさて今度は大所帯ェ。その面子を残らず運ンで、からくり仕掛けを黙らせるのが今回の仕事よ」
『顔』の回転まであと10秒……
(誰のためでもいい。ご生還を──)
そう見送ってくれたのは丑、だったか。前回切り残した鳴子と下生えに隠れた段差を回避する。
(立ち漕ぎは道交法違反だから危険なんですよ)
リアルブルーの法律を出し、要は心配してるんですと続けた柚子を思い出して苦笑する。
ライフル「ルインズタワー」の射程に踊りこむように達し、放たれた弾丸がいままさに振り向いた『顔』……索敵アンテナの健全であった片目を潰す。
「Jさん流石ぁ! でさ、ちょうど鳴子切れた所が目前だから、一気に持ち場に直行で構わないよね?」
錬金術は爆発だ! と大きな顔していたのが泣きっ面かくのは気持ち良い。
メイム(ka2290)の目にはもう何度と無くトレース練習した策定経路。言うより前に駆け出しているのはツッコミ所ではないだろう。今度J・Dが狙うのは、梟めいた丸顔のもう片目か嘴か。──しかし、次の攻撃が無事行われる保証は……無い。J・Dの行動が無駄となるか否か? 巨人即応の前に到達し状況継続、それが相互支援の最適解。
想定済みだと同じく走るマッシュが、メイムの意図を肯定している。気付かれたら終わり、ではない。気付かれても対処できない場所へ食い込み続ける。それが浸透戦術である。
またミサイルが打ち出され、今度は迎撃成功を示す爆音が続く。プリケッタとシモン──第一次作戦失敗での仇討ちが今回の支援部隊、だ。
●
「私に軽装を強いた報い、受けていただきましょうか? ええ、里を狙う罪も償って頂きますとも。ミサイルもどきめの殲滅。全てを破壊し尽くしても足りません」
エルバッハ・リオン(ka2434)は呪詛のように呟いている。
貸し、があるのだ。彼女には。
近代兵器を装う歪虚。その仕様があまりに稚拙で、しかし間違いなく重装備排除に効果的だったことも怒りに拍車をかけている。顕わとなった胸元の薔薇──
「もう始めてしまったが、宜しく」
無線に一言。
黒耀策定のルートを経て、白煙けぶる敵布陣片翼に到達したのが数秒前。なお、彼女の初撃はその更に前、ファイアーボール射程にポッドを捉えたと同時に行われている。軽装備の怪我の功名か体が軽い。
陽動である彼女達──黒耀とエルバッハ──は、ポッド、いや蒸気カタパルトの稼動状況を即座に把握にかかる。こちら側は迎撃用ふくめ全てが稼動!
「むしろ、稼働中のほうが挙動が判りやすくて僥倖、というものではありませんか?」
バインダーのカードは既に戦闘表示。黒耀の顔つきが挑発的なものに変わる。
「御身は私の瑞鳥なる下僕が護る。存分に暴れられよ」
直前まで写真と現物を引き合わせ、優しげにユキウサギに指示をしていた彼女が一転、彼らに激しく激をとばす。散開するユキウサギ2羽に、エルバッハも付け加える。
「よいですか? 無差別です。無差別に引きちぎれるものはなんでも。巨人が来れば跳ねて離れて。それだけで我々がどんなに助かるか……」
唐突にエルバッハに近いポッドの前面カバーが開く。一瞬驚き、それが各ポッドの操作盤ケーブル破断由来と把握して、好都合と口角をあげた。操作トラブル軽減のため、信号が切れればカバーを外す仕組みなのだろう。
「その調子です。忌々しいカタパルトを捻じ切るのには丁度よい。巨人をおびき寄せるにも判りやすい」
──そら来た!
半身が爛れたほうは、先日の仕留め損ねの個体か。今度こそトドメを見舞おうか。無防備となったポッド正面からカタパルトを歪虚ごと焼く。幾つかは残ってしまったが、シリンダーが歪めばもうミサイルは飛べまい。悲鳴のような咆哮をあげて、ポッドを護らんと突撃する巨人に、今度は黒耀の【五光】が襲う。
「結界に入ったが最後、五行相生の理に劫かれるがよいわ!」
「それ、レアカードたるキモはやはり行動阻害です。今度こそポッドごと奴を焼いた。次……ポッドも巨人も次が控えています」
散開、です。エルバッハの目配せ。
隣のポッドにさしかかる巨人に、しかし黒耀が風雷陣を投げる先は、接続された蒸気供給パイプと思われる配管だ。
一気に吹き上がる蒸気に隠れ、陽動の二人と2羽は次の目標へと散開する。蒸気に勢いが失われた頃、稲妻が最初につけた傷よりはるかに大きな亀裂が配管表面をのたうっていた。なるほどこれは効果的だ。黒耀は蒸気圧とはこういうことかとほくそ笑む。
「カバーを開かせて巨人を呼び挟撃、しとめ損ねたところで配管を破裂させて逃げれば、また奴の習性を衝ける」
蒸気は派手に吹き上げるべきでしょう。カタパルトにダメージが行くなら積極的に、とエルバッハの今度は風の斬撃。
「させぬわ! 我がサモンに付与された加護、貴様のライフごときの引き換えで傷つけるなど笑止! 強靭無敵にして最強なり!」
ユキウサギに襲い掛かる巨人の半裸の皮膚を切り裂き、黒耀が吼たえた。
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もう片翼。仙堂 紫苑(ka5953)、メイム、マッシュの3名とユキウサギ3羽が、うねる配管と林立するポッドに身を隠す。白煙の把握──こちらに供給されているのは迎撃用の3基のみ。その発射管の中は空だ。
隠密行動で壊せるものを全て壊す。
……気付かれたら?
そのときは総力をもって巨人ごと壊す。
「厄介な侵入者として振舞う。人の嫌がることを進んでしましょう、という標語を思い出しますよ」
各自、得意な相手を得意な手法で壊すが宜しいかと。マッシュは、こう見えて私は速攻殲滅戦が得意でして、と大鎌「グリムリーパー」を配管に突き立てる。さぁ、皆さんもご遠慮なく。
応えてユキウサギが杵を握り締め、歯を食いしばる。
──緊張も無理はない。ほんの数週前まで彼らは戦闘と無縁の場所にいて、志願とはいえ始めて敵に対峙するのである。新人ハンター、いやそれ以上に不安と覚悟が彼らを震わせていた。
「大丈夫です。精鋭がついています。が、この作戦、場違いな駆け出しの自分でも可能と、そう説明したはずです」
数十分前──
仙堂は紹介された彼らの震えを目ざとく見つけている。
「当作戦のキモは2つ。一つは全員無傷で基地に到達すること。もうひとつは、襲撃時において巨人に制御盤に触れさせることなく制圧すること。です」
ミーティング時のことだ。テント内の黒板に仙堂のチョークが奔る。
総勢6名と6羽。数の上では巨人6体に対し2:1で挑むことが可能だが、待ち受ける相手は巨人だけではない。ポッド25基にミサイル残余160……護るは索敵網と強固たる動力炉ビルである。敵は巨大で多すぎる。
「いいえ。味方はその敵の数、ですよ」
ああなるほど。仙堂にマッシュがははぁんと頷く。
「合計で考えるのは辞めましょう。アンテナと動力とミサイルポッド25基、これを6体で回しているのです、敵は。そして巨人。知能と巨体は脅威ですが形状は人間と同じ。目と手と足は二つずつしかない」
翻弄するには力は要らない。跳ねて一撃を狙うユキウサギは──その任に最適、であった。
「確実にバレずに到達さえすれば、巨人ができるのは身を挺しての白兵防衛しかない。接近手法は確立され支援は万全です。ユキウサギの皆さん、よろしくお願いします」
黒板を背に仙堂の礼。
秘めた仙堂の一面……戦術狂いが最適解だと己に告げる。
──これが数十分前のことである。
巨人の大斧が振り上げられ、ピタリと静止する。
「どうしたの? 侵入者排除がお仕事じゃないのかな? ん?」
対するメイムの突きつけるのは、鋭利にして透明なる槌頭「クリスタロス」。小柄なメイムが巨人の咽喉元狙いなのは、その立地がミサイルポッド上だから、である。巨人が上に陣取るメイムに一撃を見舞えば、ポッドを自ら破壊することとなる。
「速度重視でいかせて貰うからね。見つかっちゃったから仕方ない。私は逃げ回って不意を衝くより、寄せてブン殴るほうが手っ取り早い」
でも仲間は違うから頑張って?
背後からユキウサギの渾身の痛撃が巨人の裏脛を打つ。
「ほらそこ。2匹がかりでこられてもこっちはむしろ好都合なんだよねぇ?」
圧倒的重力をもって回転する透明な殺意。ラウンドスウィングは当てる技ではなく当たらせる技、なのだ。重心を崩した1体と躊躇する1体。まとめて上半身を薙ぐ。──防ぎきれぬ片腕の巨人が首を落とす、しかしもう1体の胸を抉れども斃れず。コントロールを失う斧がポッドごとメイムに向かった。
「……って、シオンさんナイスアシスト!」
肩で息をつく仙堂のジェットブーツが雷撃を放つ射程を詰めたのだろう。大きく口を開けて硬直する巨人に今度こそとメイムはトドメの連撃を放つ。
「配管とコードの破断完了です。これよりメイン操作盤と思われるビル本体を落とします」
無線機とメイム両方に叫ぶと、仙堂は増援に来た巨人1体と周囲のポッドへ三筋の光線を放って……逃げる! 行き先は一路、先行するマッシュの待つ中央の基地ビルだ。
「どちらを護るかという岐路とは、身につまされるものがありますねぇ……」
太平楽の昼行灯めいた口調と裏腹に、大鎌を構えるはマッシュ、である。
ここは中央、アンテナ基部にして動力炉であるビル裏手──
増援戦力の逐次投入は愚策中の愚策……ではあるが、それを強いる状況下はやってくるものだ。背面に黒い顔が張り付いて、そこから繋がるのがメイン操作盤。顔直下の扉が燃料投入口だろう。それを動かしていた巨人が1体、先ほど襲撃班方面へ増援に向かった。残るは1体。戦力の分散という愚策にして悲しき習性だ。
「仙堂さんとメイムさん。お二方が合流するのと、騙された巨人が帰ってくるのと、どちらが先でもまずはコイツを削ぐのが宜しいですか」
ふぅと溜息。機と見た巨人が斧を振りかざしマッシュとの距離を詰める。
──どう。
無防備な両脚を曝していただき有難うございます。マッシュの慇懃無礼な一礼に、巨人はただ地を這うのみ。
「でさ、どっち優先?」
合流したメイムが残り巨人1体か、操作盤かを問う。
「……どうでもいいが、あンたら俺を忘れちゃいねぇか?」
卓越した腕による連続射撃音は銃声という形容詞を超える。
斧を取り落とし、顔を押さえる巨人に更に追撃。蹲った姿勢で凍結する巨人に、どうするね? 男を魅せるかい? と、どこからともなくふらりと現れたJ・Dは集まってきたユキウサギに問いかける。
「残るミサイル歪虚の始末は、エルバッハさんが着手済です。ユキウサギさん達、大丈夫ですよ。ヤってらっしゃい」
黒耀が、ほらねと盛大にあがる爆炎を指差した。私の分も残して欲しいのだけれどと笑う。
それじゃコッチを遠慮なく。メイン操作盤にメイムのとっておきの一撃。更にもう一撃。
「リアルブルーの友達に聞いたんだけど、操作盤のマスターキーって斧槌なんだってね」
●
「ミサイル歪虚、炉に放り込むべきでしたか?」
いやとんでもない! エルバッハの火力のほうが強い。
全ての配管とコードは破断され、ポッドは擱座し、ミサイル歪虚は引きずり出され焼き尽くされた。護る巨人ももういない。
「中途半端な運用というのは結局、弱点にしかなりえないのです。人力の良し悪しに留まらず」
つくづく身につまされますよ、負の遺産が残るのは厭なものです。
しかつめらしく呟くマッシュが睨むのは、歪虚と錬金術に侵された漂着物という始末に悪い残骸。
「終わってねェよな?」
「ええ。終わっていません」
調査結果では、自爆装置はなかった。けれども──
時計の針は未だ止まらず、未だ時を刻むのを止めず。
朽ちぬ残骸とともにエネルギーを供給し続けているのだ。この動力炉ビルは。
仙堂は幾重にも重なるヴェールのような、コーリアスと協力者の狙いに気付く。
そう簡単に手放しはしない、と。それはユキウサギとツキウサギにかける呪詛めいたトラウマだ。
J・Dはコーリアスがその執念の理由に、心の中で唾を吐く。
協力者いや怠惰歪虚への誇示、なのだ。自分の後に続け。そして幻獣を蹂躙せよ、と。
「見つけたゼ。ビルの中に樹木っぽいパイプが立っている。おそらくそれが地下水ポンプと蒸気機関だ」
仙堂さんに呼ばれて聴音してみりゃ、なんだこりゃ。
プリケッタとシモンが炉の燃料投入口を大きく開き、あれだと指差す。
J・Dの銃口が一点を狙う。
リアルブルーの友人に以前資料を見せてもらったことがある。啓一に礼を言わねばなるまい。相手は何のことだか意味不明だろうが……
そして一発の銃声。
止まった時計は、里のユキウサギ達に勇気を与え、協力者達が傍観をかこつ理由のひとつとなった。
総合的な勝敗が決するにはまだ足りず。
しかし局地的大勝利はユキウサギの里に勇気という大きな一歩を生み出した。
依頼結果
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サポート一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 エルバッハ・リオン(ka2434) エルフ|12才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2016/09/24 20:00:42 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/09/22 14:55:59 |