ゲスト
(ka0000)
増殖お猫様を抱きしめて
マスター:霜月零

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/10/03 07:30
- 完成日
- 2016/10/08 03:15
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
幻獣巨猫さまの住み着く温泉の村は、今日も今日とて平和なはずだった。
「あれは、なんだべか~?」
露天風呂を掃除しに来た村人が、はてと首を傾げる。
幻獣巨猫さまの周囲に、まぁるくて白い何かがいっぱい落ちている。
手の平サイズのそれは、よくよく見ると、もぞもぞと動いているような?
「まぁ、なんとかわぇぇ子猫だべ~」
「んだんだ、めんこいのぅ」
幻獣巨猫さまの周囲に落っこちているのは、子猫だった。
手の平にすくうと、普通の子猫のようにゴロゴロと喉を鳴らしている。
「巨猫さまも、子供を産むんだのぅ~」
「お相手は誰かのぅ~。この村に、巨猫さまのお相手がおったんじゃのぅ」
巨猫さま、露天風呂に今日もみっちりと詰まっていて、いつ産んだのかさっぱりわからない。
むしろこんな巨大な巨猫さまのお相手。
同じぐらい大きいのだろうか。
それとも幻獣だから、大きさは関係ないのだろうか。
もふっ。
もふもふもふっ☆
村人が見守る前で、幻獣巨猫さまの周囲に白い塊が出現する。
ふわふわ、ころころ。
何もない露天風呂の淵に雪のようにぽとぽとと出現するそれは、やっぱり子猫。
「巨猫さま、子沢山だべ~」
「かわえぇ子がいっぱいだべ~。お餅みたいだべ~」
そう、見守っていられる間はよかった。
巨猫さまの周囲には、どんどんどんどん、真っ白い子猫が増えてゆく。
その内、子猫の上にも子猫が生まれてゆき、慌てて村人が子猫を広い場所に連れてゆくけど後の祭り。
増え続ける子猫は留まる所を知らない!
「おぉっ? 撫でていたら消えたべ~」
「それは大発見だべ! こっちの子猫も撫でていたら満足そうに鳴いて消えたべ~」
次々と溢れてゆく子猫。
これを止めないと、村が子猫の山に飲み込まれるのも時間の問題?!
「うぉっ? 子猫の中に、怖い子が混じってるベー。撫でると怒るだよ」
「んだんだ、撫でていい子が殆どじゃけんど、怖いこを撫でると大きく育つべ~」
真っ白い中に、たまに、なでてはいけない子猫がいる模様。
けれど撫でて満足してもらえないと、村が埋もれてしまうわけで。
「ハンターを呼ぶベー!」
――村人が叫ぶのに、そう時間はかからなかった。
「あれは、なんだべか~?」
露天風呂を掃除しに来た村人が、はてと首を傾げる。
幻獣巨猫さまの周囲に、まぁるくて白い何かがいっぱい落ちている。
手の平サイズのそれは、よくよく見ると、もぞもぞと動いているような?
「まぁ、なんとかわぇぇ子猫だべ~」
「んだんだ、めんこいのぅ」
幻獣巨猫さまの周囲に落っこちているのは、子猫だった。
手の平にすくうと、普通の子猫のようにゴロゴロと喉を鳴らしている。
「巨猫さまも、子供を産むんだのぅ~」
「お相手は誰かのぅ~。この村に、巨猫さまのお相手がおったんじゃのぅ」
巨猫さま、露天風呂に今日もみっちりと詰まっていて、いつ産んだのかさっぱりわからない。
むしろこんな巨大な巨猫さまのお相手。
同じぐらい大きいのだろうか。
それとも幻獣だから、大きさは関係ないのだろうか。
もふっ。
もふもふもふっ☆
村人が見守る前で、幻獣巨猫さまの周囲に白い塊が出現する。
ふわふわ、ころころ。
何もない露天風呂の淵に雪のようにぽとぽとと出現するそれは、やっぱり子猫。
「巨猫さま、子沢山だべ~」
「かわえぇ子がいっぱいだべ~。お餅みたいだべ~」
そう、見守っていられる間はよかった。
巨猫さまの周囲には、どんどんどんどん、真っ白い子猫が増えてゆく。
その内、子猫の上にも子猫が生まれてゆき、慌てて村人が子猫を広い場所に連れてゆくけど後の祭り。
増え続ける子猫は留まる所を知らない!
「おぉっ? 撫でていたら消えたべ~」
「それは大発見だべ! こっちの子猫も撫でていたら満足そうに鳴いて消えたべ~」
次々と溢れてゆく子猫。
これを止めないと、村が子猫の山に飲み込まれるのも時間の問題?!
「うぉっ? 子猫の中に、怖い子が混じってるベー。撫でると怒るだよ」
「んだんだ、撫でていい子が殆どじゃけんど、怖いこを撫でると大きく育つべ~」
真っ白い中に、たまに、なでてはいけない子猫がいる模様。
けれど撫でて満足してもらえないと、村が埋もれてしまうわけで。
「ハンターを呼ぶベー!」
――村人が叫ぶのに、そう時間はかからなかった。
リプレイ本文
●情報とは、こうやって得ればいいのよ?
「さあ、村人さん達。ボクに気持ちよーくお話してくれるかな?」
桃色の瞳を赤く染め、ミルティア・ミルティエラ(ka0155)はピシリと触手を放つ。
鞭の様にしなるそれに、村人その一が「ひいっ?!」と後ずさった。
「ミルティアさん、それ、村人が怯えていますよ」
悠里(ka6368)がそっとミルティアの触手を止めた。
ピシピシと唸るそれに攻撃力はないけれど、見た目は武器そのものだから、村人が怯えるのも無理はない。
「ボクはね、撫でると大きくなってしまう猫の情報を知りたいだけなの。その為だったら……」
びしりっ!
ミルティアの触手が村人の肩に当たる。
悠里が止める間もなかった。
びしびしびしびしっ!
凄まじい速さでミルティアの触手が肩を叩く叩く叩くっ。
「はぁ~。気持ちいいべ~」
「肩が解れるべ~」
「幸せだべぇ~」
「そうでしょうそうでしょう。触手捌きには自信があるの。さぁ、解して貰いたい村人さん達! 一列に並ぶといんだよ!」
一本だった触手が数本現れ、勢いよくテンポ良く、村人達の肩を叩き始める。
そしてミルティアの触手肩たたきで気持ちよーくなった村人達に、悠里が事情聴取を始めた。
「……そうですか。確かに村がこの状態では、安心して過ごす事は出来ませんね」
「んだんだ~。撫で疲れて、みーんな肩こりだべぇ~」
「撫でで怒り出す猫さんの特徴はありましたか? 落ち着いていた時や、満足して消えた時の様子を見た方はいらっしゃるでしょうか」
「難しいべ~。怒る猫は撫でて喜ぶ猫と大差ないべぇ~。たんだ、もんのすごく強暴だべ~」
言いながら、村人は両手を悠里にかざす。
「これは、見事な引っかき傷ですね」
「んだんだ。あまりの痛みに、思わずお猫様を落っことしちまったべ。悪い事したべ~」」
「こんなに血まみれになっても、猫を思っているのですね」
悠里が精霊に祈りを捧げると、柔らかな光が村人の手を包み込んだ。
「ほぇ~。癒しの光だべぇ~」
「すぐに良くなりますよ。他にも怪我をした方がいらっしゃるようなら、名乗り出てくださいね。治療させていただきます」
「さすがハンター様だべぇ」
「んだんだ」
「一列に並んでくださいね。順番に癒しをかけてゆきますから」
「なーんか、順番でこう、なんかあったような気がするべ~?」
「そうだそうだ、あったべ!」
「順番で思い出したべ! 怒ったお猫様は、一列に並んで順番に撫でると怒らなかったべ~」
「順番……」
いまいち良く分からない。
猫が何かに順番に並ぶのだろうか?
「お一人お一人、心をこめて癒させていただきます」
順番についてもう少し詳しく話を伺いつつ、悠里は癒しをかけて回った。
●子猫集団?
「ねこチャンねこチャンちょっと抱かせテヨ。オレちゃん世界もねこチャンも救っちゃうわ。オレとオレがオレでイクゥ!」
フォォウクーーーール!
そんな雄叫びを上げて、ライラック(ka4616)は増殖お猫様に抱きついた。
ぎゅううううううっ!
一匹といわず数匹いっぺんにだ。
「アッヒャッヒャッヒャッヒャ!! もふってキューーーーート、抱いてトカァ?! 撫でて撫でで撫でまくルゥっ!」
子猫の集団に埋もれて叫ぶライラックを、妻崎 五郷(ka0559)と柄永 和沙(ka6481)がぽかーんと見つめていた。
次々と抱きしめ撫でてはしゃぐその姿に、どうしていいか分からない。
いや、どうにもしないほうがいいのか。
撫でる速度が素早くて、次々と子猫が幸せそうに消えてゆく。
「……なぁ、あれ、止めなくていいのか」
「無理。あたしはすずたろーの面倒で手一杯なの」
「……あー、あっちもかぁ」
五郷はそっと目の前の光景から目をそらす。
ライラックだけでもヒャッハー☆ なのだが、大伴 鈴太郎(ka6016)が青い瞳を肉球マークに輝かせ、幸せの絶頂に浸っていた。
「よーしよしよし、一匹一匹名前付けて丹精込めてじっくり丁寧にモフってやっからなぁ♪」
「名前つけてる暇なんてあんの?」
「むしろつけなくてどーするよ? 見分けつかねーじゃん。オレはつくけど!」
愛らしいのがシラタマで、可愛いのがダイフクで、綺麗なのがシルクで、ちっこいのがミルク。
うん、全部真っ白だね!
「どれもこれも一緒でしょ。撫でれば消えるんだからさ」
「消すなよ! みんなみんな可愛いだろ? こんなに小さくて可愛いのに、消すなんて可愛そうじゃんっ」
「……あんたねぇ、何しにここに来たか忘れてない? この子猫達を満足させてあげないと、村が潰れるでしょ」
涙目で猫を抱きしめる鈴太郎と、心底呆れる和沙。
「……俺は、ここで撫でるしかないのか?」
濃ゆい、濃すぎるメンツに胃痛を感じながら、五郷はふらふらと猫に向かって歩き出した。
数歳、歳をとった気がする。
●怒れる猫
五郷は後悔した。
心の底から後悔した。
「……いってぇえええええええええええええ!!!」
がぶぅうううううっ!
叫ぶ五郷の手を、猫が思いっきり噛み付いていた。
「あっ、そんなにぶんぶん降っちゃだめじゃん! シュガーが怪我するだろ!」
「シュガーって何だ」
「甘ったるく可愛い顔してるからシュガー。さっきオレが名付けてたじゃん! とにかく、シュガーを振り落とすなっ」
「そんなこと言ったってな、マジで痛いんだよ、見ろよこの傷を」
「それこそ名誉の負傷じゃん。猫に右手引っかかれたら左手も差し出せ!」
「すずたろー、無茶苦茶すぎ。五郷さん泣いちゃうわ」
「泣かねーよ! あー、もう……」
本格的に胃痛になるレベルでイライラしながら、五郷は猫を見る。
タバコは、こいつらの前じゃ流石に吸えない。
なんで五郷だけ撫でる猫なでる猫怒るのか。
見分けがまったくつかない。
なでて喜ぶ猫も、怒る猫も、見た目は同じ真っ白だし、撫でるまでは普通に大人しいのだ、
まったくもって意味不明。
「ねこチャンねこちゃん、俺にもチョット怒ってよ? ナデテ撫でてすりすりすりすり、最高で感動のチョーすぺしゃるターイムっ☆」
ぎゅうぎゅう、すりすり。
一匹一匹恐る恐る撫でている五郷と違って、本能の赴くまま抱きしめ撫でるライラックは今のところ無傷。
数匹いっぺんに抱きしめて撫でているというのにだ。
まったく一匹も怒り出さない。
それに引き換え五郷は……あ、また噛まれた。
「五郷チャン、そのねこちゃんチョット俺によこしナヨ! なでてなでてなでまくるぅ!」
「あ、おいっ、撫でたらでかくなるだろ?!」
遅かった。
五郷の反応速度より、猫に突進するライラックが一瞬早かったのだ。
「ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、引っかく姿もカワイイネ! どんどんでっかく育ってくトカァ? 最高!」
ライラックが嬉しそうに撫でまくり、怒る猫は「フシャーーーー!」っと威嚇しながらぐんぐん育っていく。
「ちょ、ちょっと、拙いんじゃない? でかくなり過ぎって言うか、育つ速度がやばいんだけど?!」
「まてまて、ほんとに待て。どれだけ撫でれば気が済むんだ」
「すーぱーみらくるねこチャンもふもふしちゃうゾ☆ ろーりんぐさんだーなでなでまーくつー」
怒る猫を奪おうとする五郷の手をさっとかいくぐり、ライラックは必殺技を繰り出した!
その手がものすんごい速さで怒る猫を撫でる撫でる撫でるっ!
「怒ってるハニーも可愛いネ! でもちょっと抱っこが限界、すりすりするヨ!」
ライラックの両手でも抱えきれない大きさに育った怒れる猫は、ずっしりと地面に足を下ろし、ぐんぐんずんずん巨大化に!
「うぉー、でっかい巨大ダイフク可愛いじゃん!」
「すずたろー、ぼけっと見てんな、とっとと離れろ!」
和沙が鈴太郎の手を引いて後ろに下がる。
丁度二人がいた位置に、ずしーんと巨大化した猫の尻尾が振り下ろされた。
ライラックと五郷が咄嗟にその下敷きになりそうな子猫達を抱きかかえて飛びのく。
「でかくなるって、限度ないのか?」
「わーわー、可愛いなぁ、でも、子猫たちまで危険じゃん」
「どーすんのこれ……」
「アヒャヒャヒャヒャ☆」
「ボク達、もしかしてグットタイミングかな」
「そのようですね」
打つ手無く唖然としている四人の背後から、ミルティアと悠里が現れた。
「真打ち登場救世主トカァ? 巨大なねこチャンなンかしら情報手にはいったンだろォ?」
「そうね、期待してもらっていいわ。この怒り狂ってる巨大猫以外に、怒る猫はいたかしら」
「どの子だったかな。すずたろー、分かる?」
「ダイフク以外だと、ショートケーキと雪がそうじゃん」
「そうじゃんって、どれだよ」
「あっちに行ったのとお前の足元!」
ビシッと鈴太郎が巨大猫の奥のほうで丸まってる白猫と、和沙の足元でつんとしている白猫を指差した。
「俺が行く」
ばさりと上着を脱いで、五郷はそっと巨大猫の脇をすり抜ける。
そしてショートケーキと名付けられた白猫を上着で包んで……。
ぶんっ!
巨大化した猫の尻尾が五郷に振り下ろされる。
「そんなオイタも惚れるトカァ? ナァ!」
「ライラック?!」
どっかーーーーーーーーーーーーーーんっ☆
ライラックが渾身の力で巨大猫に抱きついて攻撃を止めた。
ショックで固まる巨大猫。
「今のうちに、巨大猫の後にその猫を並べて!」
「こ、こうか?」
「和沙さんはこちらへ。足元の猫をそっと、巨大猫の前に並べてください」
「……触れただけなら引っかかれないのね」
五郷の置いた猫、巨大猫、和沙の猫。
三匹が真っ直ぐに並んだ瞬間、ふわぁっと猫達が掻き消えた。
「ああぁああああっ?! 巨大ダイフクが、俺のダイフクに雪にショートケーキがモフっと消えちまうよぉ……」
「泣かないの。ほら、消えない猫もいるみたいだよ?」
「えっ、ほんと?」
「さっきから悠里さんが撫でている猫は消えていないよね」
「そうですね。どうやらこの子は本物の猫のようです」
「野良ねこトカァ?」
「そういうライラックさんのパーカーにも、猫が入っていますね」
「ワォ! すーぱーみらくるねこチャンもふもふろーりんぐさんだーなでなでまーくつーリバーーースゥ!」
「……なんで即座に撫でれるんだよ」
「五郷さん」
「……俺にはいないぜ?」
「現実を見なさいよ。背中にしょってる猫は何」
「あ?」
慌てて首をひねる五郷。
「……マジか」
にゃーん。
かなり目つきの悪い猫が、「今すぐ引っかいてやるぜ!」と言わんばかりに五郷の背中に乗っかっていた。
●果樹園
美味しそうな果物だなぁ。
そんな事を思いながら、ミルティアは果実をもぐ。
強引に引っ張るのではなく、実のついた枝を摘まみ、実を枝に対して直角になるように何度か上下に動かして枝を折る。
「本当に簡単に取れるわね」
「ミルティアさん上手ですね」
「そんなこと言ってる悠里の収穫量、ボクの倍はあるんじゃない? そのカゴ何個目よ」
「まだ四個目ですよ」
「はやっ。ボクは二個目だよ。どうやったらそんなに採れるのかな」
「僕の方が多少背があるので、上のほうも採りやすいからではないでしょうか」
「そんなもんか」
「そういえば、村人達が言っていましたね。熟れ過ぎてしまった果物は食べていいと」
「ボクらから見ると丁度美味しいのにね」
「丁度よいということは、運搬して街で売る間に熟れすぎてしまうということですからね」
二人が上を見上げると、和沙が木の上で美味しそうに果実を齧っている。
彼女曰く「すずたろーはもう無理。美味しい果物を頂いとくね」との事。
梯子を借りて木の上のほうまで登って和沙は次々とカゴに果物を収穫していく。
和沙がミルティアと悠里の目線に気づいて笑顔を向ける。
「二人とも、ちゃんと食べてるの? みんなの食べる分も収穫しておいたんだよ」
「だいじょーぶ、ボクは一番最初に食べたんだよ」
「僕もですね。大変美味しく頂きました」
「じゃあとは、戻るだけだね。……うん、大分猫も減った感じなんだよ」
木の上から村を見渡す和沙には、村を覆う白いふわふわの数が明らかに減ったことが見て取れた。
ある程度状況が落ち着いてから、収穫の遅れが出ている果樹園の手伝いに来たから、村が猫に埋もれる心配はないのだけれど。
「五郷さんが少し心配でしょうか」
「あー、まぁ、なんとかなってるんじゃないかな」
「ボク達にはどうにも出来ないしね」
うんうんと顔を見合わせて頷く三人。
沢山の収穫物を持って、村に戻った。
●おまけ?
「まてまてまてまて、頼むから、な?」
「駄目、待てないじゃん?」
「アヒャヒャヒャヒャ☆」
じりっ、じりっ、じりっ、じりっ。
鈴太郎とライラックに壁際に追い詰められる五郷。
その両手には、凶暴なお猫様ががっしがっしと噛み付いたままぶら下がっている。
「その腕の猫チャン、も一回撫でて巨大モフして抱きシメテェ!」
「あの興奮をもう一度じゃん?」
「いやいやいやいや、ヤバイだろ。そろそろ果樹園組みも戻ってくるぞ」
「戻ってくる前に巨大化ヒャッハー!」
「そうだそうだ、もふらせろーーーー!」
「ぎゃーーーーーーーーーーーーーっ!」
ばりばりばりばりっ!
撫でたのは鈴太郎とライラックなのに、なぜか五郷が引っかかれた。
倒れ伏す五郷の背中の上で、とどめとばかりに本物の猫ががぶぅうっと噛んだ。
もう決して離れないと言いたげな噛み具合に、五郷は「あーぁ」と溜息をつくのだった。
「さあ、村人さん達。ボクに気持ちよーくお話してくれるかな?」
桃色の瞳を赤く染め、ミルティア・ミルティエラ(ka0155)はピシリと触手を放つ。
鞭の様にしなるそれに、村人その一が「ひいっ?!」と後ずさった。
「ミルティアさん、それ、村人が怯えていますよ」
悠里(ka6368)がそっとミルティアの触手を止めた。
ピシピシと唸るそれに攻撃力はないけれど、見た目は武器そのものだから、村人が怯えるのも無理はない。
「ボクはね、撫でると大きくなってしまう猫の情報を知りたいだけなの。その為だったら……」
びしりっ!
ミルティアの触手が村人の肩に当たる。
悠里が止める間もなかった。
びしびしびしびしっ!
凄まじい速さでミルティアの触手が肩を叩く叩く叩くっ。
「はぁ~。気持ちいいべ~」
「肩が解れるべ~」
「幸せだべぇ~」
「そうでしょうそうでしょう。触手捌きには自信があるの。さぁ、解して貰いたい村人さん達! 一列に並ぶといんだよ!」
一本だった触手が数本現れ、勢いよくテンポ良く、村人達の肩を叩き始める。
そしてミルティアの触手肩たたきで気持ちよーくなった村人達に、悠里が事情聴取を始めた。
「……そうですか。確かに村がこの状態では、安心して過ごす事は出来ませんね」
「んだんだ~。撫で疲れて、みーんな肩こりだべぇ~」
「撫でで怒り出す猫さんの特徴はありましたか? 落ち着いていた時や、満足して消えた時の様子を見た方はいらっしゃるでしょうか」
「難しいべ~。怒る猫は撫でて喜ぶ猫と大差ないべぇ~。たんだ、もんのすごく強暴だべ~」
言いながら、村人は両手を悠里にかざす。
「これは、見事な引っかき傷ですね」
「んだんだ。あまりの痛みに、思わずお猫様を落っことしちまったべ。悪い事したべ~」」
「こんなに血まみれになっても、猫を思っているのですね」
悠里が精霊に祈りを捧げると、柔らかな光が村人の手を包み込んだ。
「ほぇ~。癒しの光だべぇ~」
「すぐに良くなりますよ。他にも怪我をした方がいらっしゃるようなら、名乗り出てくださいね。治療させていただきます」
「さすがハンター様だべぇ」
「んだんだ」
「一列に並んでくださいね。順番に癒しをかけてゆきますから」
「なーんか、順番でこう、なんかあったような気がするべ~?」
「そうだそうだ、あったべ!」
「順番で思い出したべ! 怒ったお猫様は、一列に並んで順番に撫でると怒らなかったべ~」
「順番……」
いまいち良く分からない。
猫が何かに順番に並ぶのだろうか?
「お一人お一人、心をこめて癒させていただきます」
順番についてもう少し詳しく話を伺いつつ、悠里は癒しをかけて回った。
●子猫集団?
「ねこチャンねこチャンちょっと抱かせテヨ。オレちゃん世界もねこチャンも救っちゃうわ。オレとオレがオレでイクゥ!」
フォォウクーーーール!
そんな雄叫びを上げて、ライラック(ka4616)は増殖お猫様に抱きついた。
ぎゅううううううっ!
一匹といわず数匹いっぺんにだ。
「アッヒャッヒャッヒャッヒャ!! もふってキューーーーート、抱いてトカァ?! 撫でて撫でで撫でまくルゥっ!」
子猫の集団に埋もれて叫ぶライラックを、妻崎 五郷(ka0559)と柄永 和沙(ka6481)がぽかーんと見つめていた。
次々と抱きしめ撫でてはしゃぐその姿に、どうしていいか分からない。
いや、どうにもしないほうがいいのか。
撫でる速度が素早くて、次々と子猫が幸せそうに消えてゆく。
「……なぁ、あれ、止めなくていいのか」
「無理。あたしはすずたろーの面倒で手一杯なの」
「……あー、あっちもかぁ」
五郷はそっと目の前の光景から目をそらす。
ライラックだけでもヒャッハー☆ なのだが、大伴 鈴太郎(ka6016)が青い瞳を肉球マークに輝かせ、幸せの絶頂に浸っていた。
「よーしよしよし、一匹一匹名前付けて丹精込めてじっくり丁寧にモフってやっからなぁ♪」
「名前つけてる暇なんてあんの?」
「むしろつけなくてどーするよ? 見分けつかねーじゃん。オレはつくけど!」
愛らしいのがシラタマで、可愛いのがダイフクで、綺麗なのがシルクで、ちっこいのがミルク。
うん、全部真っ白だね!
「どれもこれも一緒でしょ。撫でれば消えるんだからさ」
「消すなよ! みんなみんな可愛いだろ? こんなに小さくて可愛いのに、消すなんて可愛そうじゃんっ」
「……あんたねぇ、何しにここに来たか忘れてない? この子猫達を満足させてあげないと、村が潰れるでしょ」
涙目で猫を抱きしめる鈴太郎と、心底呆れる和沙。
「……俺は、ここで撫でるしかないのか?」
濃ゆい、濃すぎるメンツに胃痛を感じながら、五郷はふらふらと猫に向かって歩き出した。
数歳、歳をとった気がする。
●怒れる猫
五郷は後悔した。
心の底から後悔した。
「……いってぇえええええええええええええ!!!」
がぶぅうううううっ!
叫ぶ五郷の手を、猫が思いっきり噛み付いていた。
「あっ、そんなにぶんぶん降っちゃだめじゃん! シュガーが怪我するだろ!」
「シュガーって何だ」
「甘ったるく可愛い顔してるからシュガー。さっきオレが名付けてたじゃん! とにかく、シュガーを振り落とすなっ」
「そんなこと言ったってな、マジで痛いんだよ、見ろよこの傷を」
「それこそ名誉の負傷じゃん。猫に右手引っかかれたら左手も差し出せ!」
「すずたろー、無茶苦茶すぎ。五郷さん泣いちゃうわ」
「泣かねーよ! あー、もう……」
本格的に胃痛になるレベルでイライラしながら、五郷は猫を見る。
タバコは、こいつらの前じゃ流石に吸えない。
なんで五郷だけ撫でる猫なでる猫怒るのか。
見分けがまったくつかない。
なでて喜ぶ猫も、怒る猫も、見た目は同じ真っ白だし、撫でるまでは普通に大人しいのだ、
まったくもって意味不明。
「ねこチャンねこちゃん、俺にもチョット怒ってよ? ナデテ撫でてすりすりすりすり、最高で感動のチョーすぺしゃるターイムっ☆」
ぎゅうぎゅう、すりすり。
一匹一匹恐る恐る撫でている五郷と違って、本能の赴くまま抱きしめ撫でるライラックは今のところ無傷。
数匹いっぺんに抱きしめて撫でているというのにだ。
まったく一匹も怒り出さない。
それに引き換え五郷は……あ、また噛まれた。
「五郷チャン、そのねこちゃんチョット俺によこしナヨ! なでてなでてなでまくるぅ!」
「あ、おいっ、撫でたらでかくなるだろ?!」
遅かった。
五郷の反応速度より、猫に突進するライラックが一瞬早かったのだ。
「ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、引っかく姿もカワイイネ! どんどんでっかく育ってくトカァ? 最高!」
ライラックが嬉しそうに撫でまくり、怒る猫は「フシャーーーー!」っと威嚇しながらぐんぐん育っていく。
「ちょ、ちょっと、拙いんじゃない? でかくなり過ぎって言うか、育つ速度がやばいんだけど?!」
「まてまて、ほんとに待て。どれだけ撫でれば気が済むんだ」
「すーぱーみらくるねこチャンもふもふしちゃうゾ☆ ろーりんぐさんだーなでなでまーくつー」
怒る猫を奪おうとする五郷の手をさっとかいくぐり、ライラックは必殺技を繰り出した!
その手がものすんごい速さで怒る猫を撫でる撫でる撫でるっ!
「怒ってるハニーも可愛いネ! でもちょっと抱っこが限界、すりすりするヨ!」
ライラックの両手でも抱えきれない大きさに育った怒れる猫は、ずっしりと地面に足を下ろし、ぐんぐんずんずん巨大化に!
「うぉー、でっかい巨大ダイフク可愛いじゃん!」
「すずたろー、ぼけっと見てんな、とっとと離れろ!」
和沙が鈴太郎の手を引いて後ろに下がる。
丁度二人がいた位置に、ずしーんと巨大化した猫の尻尾が振り下ろされた。
ライラックと五郷が咄嗟にその下敷きになりそうな子猫達を抱きかかえて飛びのく。
「でかくなるって、限度ないのか?」
「わーわー、可愛いなぁ、でも、子猫たちまで危険じゃん」
「どーすんのこれ……」
「アヒャヒャヒャヒャ☆」
「ボク達、もしかしてグットタイミングかな」
「そのようですね」
打つ手無く唖然としている四人の背後から、ミルティアと悠里が現れた。
「真打ち登場救世主トカァ? 巨大なねこチャンなンかしら情報手にはいったンだろォ?」
「そうね、期待してもらっていいわ。この怒り狂ってる巨大猫以外に、怒る猫はいたかしら」
「どの子だったかな。すずたろー、分かる?」
「ダイフク以外だと、ショートケーキと雪がそうじゃん」
「そうじゃんって、どれだよ」
「あっちに行ったのとお前の足元!」
ビシッと鈴太郎が巨大猫の奥のほうで丸まってる白猫と、和沙の足元でつんとしている白猫を指差した。
「俺が行く」
ばさりと上着を脱いで、五郷はそっと巨大猫の脇をすり抜ける。
そしてショートケーキと名付けられた白猫を上着で包んで……。
ぶんっ!
巨大化した猫の尻尾が五郷に振り下ろされる。
「そんなオイタも惚れるトカァ? ナァ!」
「ライラック?!」
どっかーーーーーーーーーーーーーーんっ☆
ライラックが渾身の力で巨大猫に抱きついて攻撃を止めた。
ショックで固まる巨大猫。
「今のうちに、巨大猫の後にその猫を並べて!」
「こ、こうか?」
「和沙さんはこちらへ。足元の猫をそっと、巨大猫の前に並べてください」
「……触れただけなら引っかかれないのね」
五郷の置いた猫、巨大猫、和沙の猫。
三匹が真っ直ぐに並んだ瞬間、ふわぁっと猫達が掻き消えた。
「ああぁああああっ?! 巨大ダイフクが、俺のダイフクに雪にショートケーキがモフっと消えちまうよぉ……」
「泣かないの。ほら、消えない猫もいるみたいだよ?」
「えっ、ほんと?」
「さっきから悠里さんが撫でている猫は消えていないよね」
「そうですね。どうやらこの子は本物の猫のようです」
「野良ねこトカァ?」
「そういうライラックさんのパーカーにも、猫が入っていますね」
「ワォ! すーぱーみらくるねこチャンもふもふろーりんぐさんだーなでなでまーくつーリバーーースゥ!」
「……なんで即座に撫でれるんだよ」
「五郷さん」
「……俺にはいないぜ?」
「現実を見なさいよ。背中にしょってる猫は何」
「あ?」
慌てて首をひねる五郷。
「……マジか」
にゃーん。
かなり目つきの悪い猫が、「今すぐ引っかいてやるぜ!」と言わんばかりに五郷の背中に乗っかっていた。
●果樹園
美味しそうな果物だなぁ。
そんな事を思いながら、ミルティアは果実をもぐ。
強引に引っ張るのではなく、実のついた枝を摘まみ、実を枝に対して直角になるように何度か上下に動かして枝を折る。
「本当に簡単に取れるわね」
「ミルティアさん上手ですね」
「そんなこと言ってる悠里の収穫量、ボクの倍はあるんじゃない? そのカゴ何個目よ」
「まだ四個目ですよ」
「はやっ。ボクは二個目だよ。どうやったらそんなに採れるのかな」
「僕の方が多少背があるので、上のほうも採りやすいからではないでしょうか」
「そんなもんか」
「そういえば、村人達が言っていましたね。熟れ過ぎてしまった果物は食べていいと」
「ボクらから見ると丁度美味しいのにね」
「丁度よいということは、運搬して街で売る間に熟れすぎてしまうということですからね」
二人が上を見上げると、和沙が木の上で美味しそうに果実を齧っている。
彼女曰く「すずたろーはもう無理。美味しい果物を頂いとくね」との事。
梯子を借りて木の上のほうまで登って和沙は次々とカゴに果物を収穫していく。
和沙がミルティアと悠里の目線に気づいて笑顔を向ける。
「二人とも、ちゃんと食べてるの? みんなの食べる分も収穫しておいたんだよ」
「だいじょーぶ、ボクは一番最初に食べたんだよ」
「僕もですね。大変美味しく頂きました」
「じゃあとは、戻るだけだね。……うん、大分猫も減った感じなんだよ」
木の上から村を見渡す和沙には、村を覆う白いふわふわの数が明らかに減ったことが見て取れた。
ある程度状況が落ち着いてから、収穫の遅れが出ている果樹園の手伝いに来たから、村が猫に埋もれる心配はないのだけれど。
「五郷さんが少し心配でしょうか」
「あー、まぁ、なんとかなってるんじゃないかな」
「ボク達にはどうにも出来ないしね」
うんうんと顔を見合わせて頷く三人。
沢山の収穫物を持って、村に戻った。
●おまけ?
「まてまてまてまて、頼むから、な?」
「駄目、待てないじゃん?」
「アヒャヒャヒャヒャ☆」
じりっ、じりっ、じりっ、じりっ。
鈴太郎とライラックに壁際に追い詰められる五郷。
その両手には、凶暴なお猫様ががっしがっしと噛み付いたままぶら下がっている。
「その腕の猫チャン、も一回撫でて巨大モフして抱きシメテェ!」
「あの興奮をもう一度じゃん?」
「いやいやいやいや、ヤバイだろ。そろそろ果樹園組みも戻ってくるぞ」
「戻ってくる前に巨大化ヒャッハー!」
「そうだそうだ、もふらせろーーーー!」
「ぎゃーーーーーーーーーーーーーっ!」
ばりばりばりばりっ!
撫でたのは鈴太郎とライラックなのに、なぜか五郷が引っかかれた。
倒れ伏す五郷の背中の上で、とどめとばかりに本物の猫ががぶぅうっと噛んだ。
もう決して離れないと言いたげな噛み具合に、五郷は「あーぁ」と溜息をつくのだった。
依頼結果
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/09/28 17:13:24 |
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相談卓 大伴 鈴太郎(ka6016) 人間(リアルブルー)|22才|女性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2016/10/03 00:17:26 |