ゲスト
(ka0000)
【蒼乱】ルビーは大渓谷の夢を見るか?
マスター:cr

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/10/07 12:00
- 完成日
- 2016/10/15 02:56
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「ここの廊下は左側の壁に背中をつけるようにして進んでください」
廊下の中心で一人の少女が指示を出していた。その言葉に従い他の者達が動く。
少女の名はルビー。この遺跡で発見された少女で、己のことをこの遺跡のインターフェースと名乗る者だった。そんな彼女が何故今指示を出しているのか。
話は少し前に遡る。ゲートを求めての大渓谷内の調査の最中、ハンター達はとある遺跡を発見した。早速中を調べるため乗り込む彼ら。しかしその結果は散々だった。
とんでもない強敵が居たからではない。彼らに牙を向いたのは、各種趣向を凝らして作られたトラップの数々だった。電撃を浴び、矢が刺さり、転がる岩に追いかけられ……ともかく彼らはほうほうの体で逃げ出してきたのだった。
そこでルビーに白羽の矢が立った。このトラップだらけの遺跡、無理やり踏破しようとしても体がいくつ合っても持たない。しかしそのトラップが何処にあるかがわかれば? そしてそれを知っている者が居たとしたら?
ハンターオフィスの要請に、ルビーは応じた結果がこういう状況であった。
●
結論から言えばこのアイデアは大正解だった。ルビーは全てのトラップを知っているわけではない、正しくは全てのトラップを開示できるわけではないにせよ、彼女の存在はハンター達に大きな助けとなった。ハンター達は手違いで数個のトラップは起動してしまったとは言え、順調に先を進んでいた。
そんな彼らの視界が開ける。20m四方程度の部屋であろうか。この先には何があるのだろう。足を進めようとしたときだった。
彼らの直感がそのまま歩き続けるのを止めた。次の瞬間、そこに光線が飛び、部屋の中に何かが飛び出した。
彼らが見たのは各種自動人形だった。人形、蜘蛛型、幾つかの形があるがこちらを排除しようとしているのは間違いない。
「おかしいです。ここの自動人形は動かないはずなのですが」
ルビーが疑問を述べるが、ハンター達にできることはそんなルビーをかばうことだった。なぜなら自動人形は容赦なくルビーにもその砲身を向けたのだから。
「ここの廊下は左側の壁に背中をつけるようにして進んでください」
廊下の中心で一人の少女が指示を出していた。その言葉に従い他の者達が動く。
少女の名はルビー。この遺跡で発見された少女で、己のことをこの遺跡のインターフェースと名乗る者だった。そんな彼女が何故今指示を出しているのか。
話は少し前に遡る。ゲートを求めての大渓谷内の調査の最中、ハンター達はとある遺跡を発見した。早速中を調べるため乗り込む彼ら。しかしその結果は散々だった。
とんでもない強敵が居たからではない。彼らに牙を向いたのは、各種趣向を凝らして作られたトラップの数々だった。電撃を浴び、矢が刺さり、転がる岩に追いかけられ……ともかく彼らはほうほうの体で逃げ出してきたのだった。
そこでルビーに白羽の矢が立った。このトラップだらけの遺跡、無理やり踏破しようとしても体がいくつ合っても持たない。しかしそのトラップが何処にあるかがわかれば? そしてそれを知っている者が居たとしたら?
ハンターオフィスの要請に、ルビーは応じた結果がこういう状況であった。
●
結論から言えばこのアイデアは大正解だった。ルビーは全てのトラップを知っているわけではない、正しくは全てのトラップを開示できるわけではないにせよ、彼女の存在はハンター達に大きな助けとなった。ハンター達は手違いで数個のトラップは起動してしまったとは言え、順調に先を進んでいた。
そんな彼らの視界が開ける。20m四方程度の部屋であろうか。この先には何があるのだろう。足を進めようとしたときだった。
彼らの直感がそのまま歩き続けるのを止めた。次の瞬間、そこに光線が飛び、部屋の中に何かが飛び出した。
彼らが見たのは各種自動人形だった。人形、蜘蛛型、幾つかの形があるがこちらを排除しようとしているのは間違いない。
「おかしいです。ここの自動人形は動かないはずなのですが」
ルビーが疑問を述べるが、ハンター達にできることはそんなルビーをかばうことだった。なぜなら自動人形は容赦なくルビーにもその砲身を向けたのだから。
リプレイ本文
●
「……ねぇ、ルビー。パティ達はドコに行けばよいでしょか?」
パトリシア=K=ポラリス(ka5996)はルビーにそう尋ねていた。ルビーの指示により罠にかからずに進めているが、文字通り遺跡の中を右往左往するハメになっている。
「ここをしばらく進んだ先には部屋があります。そこを右に出て廊下を進み左へ曲がります。その後……」
「頭が痛くなってきたんダヨ」
パティが弱音を思わず吐いた時、八原 篝(ka3104)はつまり、と一つ前置きしてから話し始めた。
「この罠の数から言って、ここら辺一体は侵入者を排除する為だけに用意した区域ね。何かめぼしいものがあったとしても、全て罠だと考えた方がいいわ」
「確かにこの区域は人が入ることを想定していないのですが……」
重苦しい空気が周囲を包む。つまり無駄足と言うことなのか。
「この区域は記録したデータを集約する為に存在します」
「つまりデータの流れが見れるってことか」
ルビーの言葉に岩井崎 メル(ka0520)は少し思案して答える。
「するとゲートがある場所を絞りこめるかもしれないね」
その彼女の気付きに一同がざわめく。ルビーも余り表情は変わらずとも、少し驚いたかのように口を開けていた。
「今度はさ、弟子になってみない? 『ししょう』って呼んでくれても良いんだよ」
そんな風にお姉さん振るメル。
「私は踏み出す。第三の文明の謎を解き明かすために新たなる知識を記録することこそが私の本懐なのだから」
雨を告げる鳥(ka6258)のそんな言葉とともに一行は奥へと進んでいった。廊下を歩きながら、天王寺茜(ka4080)は一人思っていた。
(ルビーが私たちを手伝ってくれるのは、彼女が見聞きしたものから出してくれた解答だと思う)
だから。
「その答えに、報いたいわ」
●
「春日さん、一つお聞きしたいことがあったのですが」
通路を歩きながらルビーは春日 啓一(ka1621)に尋ねた。
「私とまた会えて楽しいですか?」
それは確かに春日の偽らざる気持ちではあったが、こう面と向かって言われると照れてしまう。彼はこういうときは態度で示す方が向いていた。
「ルビー、もしもの時は俺を盾代わりに使え」
そうやって後ろに下がらせた所で、央崎 遥華(ka5644)も助け舟を出した。
「ルビーさんのこと、親友が嬉しそうに話してたんだ」
彼女に再会を望んだ者が居たように、彼女に再会を望んでも会えなかった者も居る。遥華にルビーのことを託した親友も
「あああ、こんな時に祈るしか出来ねーなンてもどかしいぜ! 頼むハルカ! オレの代わりにルビーを護ってやってくれよ! そンで、みんな一緒に無事で帰って来てくれッ! 信じてっからな!」
と別の場所でひたすら祈っていた。
「いつでもまた会えると思ったのですが」
ルビーの述べた疑問に遥華は首を振った。
「明日どうなるかなんて誰にもわからない。だから今は私は、彼女のためにも、ルビーさんを護る!」
そう強い決意を示す。
そんな様子を横目に見ながら、テオバルト・グリム(ka1824)は注意しつつも進んでいた。彼の鋭い感覚は左右の壁のほんの少しの違和感を感じていた。正確な直線で構成された壁面の一部が僅かに欠けている。コツ、コツといった足音に混ざってほんの少し、何かがこすれる様な音がした。
テオは一旦全員を止まらせ、静かにさせて状況を確認する。それを受けてメルと茜も周囲を見渡す。何が動いているのだろう……。
そして次の瞬間、メルが叫んだ。
「走って!」
その声に合わせるかのように左右の壁が突如として迫ってきた。ハンター達は一斉に走り出す。戸惑っていたルビーの手を篝とパティが握り共に駆け出す。息を切らし、振り向きもせずハンター達が走り抜けるのとほぼ同時に二つの壁は轟音を立てて閉じた。
閉じた壁が彼らの後ろで沈黙している。そんな中、ルビーは静かに声を上げた。
「……どういうことなのでしょうか。ここの罠は基本的に動かないはずなのですが」
「あー……あれかな。どこかで起動的なスイッチでも押しちまったかな。まさかルビーまで……遺跡の事はよく分からないぜ」
頭を掻きながらそうつぶやくテオ。重い空気が支配する。しかし、ハンター達は前に進まなければいけない。
「まああのラプラスとかいういけすかねえ奴の差し金だろうがな、しかし、こんな所で立ち止まってる暇は無い」
そしてハンター達は再び移動を開始した。
篝が一同を静止する。壁に継ぎ目に紛れて細いスリットが開いている。それを見た春日は盾を掲げ前へと踏み出す。次の瞬間軽い音と共に彼の盾には矢が一本突き刺さっていた。
遥華は一旦一同を止めて、床を見る。その後おもむろに仲間たちと手を繋いだ。右手にレイン、左手にパティ。彼女が何をしようとしているのか勘付いた篝が彼女の体にロープを結びつける。
そして遥華は一歩踏み出した。次の刹那その床がいきなり抜け、彼女の体が宙に浮く。しかししっかりと繋いだ二人の手に引き止められ、篝のロープで引き上げられた。
メルが指差した床を茜も目を凝らしてみていた。そして一つ頷くと、彼女は銃を取り出しそこに目掛けて撃った。銃声が鳴って着弾した瞬間、ハンター達が見たのは天井が落ちてくる姿だった。
「私は確認する。先に調査した者たちが遭遇した罠についてを。マッピングをすれば罠を格納する空間に気付けるだろうか。ルビーの助言を併せて推測しよう」
レインとパティは大きな紙にルビーからの情報と以前潜ったハンター達からの報告を記録していった。彼らが踏み出した足あとはそのまま紙に書き加えられ、少しずつではあるがこの一帯の構造が示されていく。
そんな二人の様子を、ルビーは伏し目がちに見ていた。
「どうしたの? ダヨ」
ルビーの変化をパティは感じ取る。ルビーにもわからないことがここで起きている。それは案内役だと認識していた彼女にとっては、自分が求められた役割を果たせてないということだった。少なくとも彼女はそう捉えていた。そしてそれは彼女が思う彼女自身の存在意義に傷を付ける。
「ほんとはネ、ルビーやみんなと探険できるのが今はちょっと、楽し」
パティはルビーに微笑んだ顔を近づける。
「でも、みんなが探してるゲートを、パティもちゃんと探さなきゃって思い出しなおしなんダヨ」
「でしたらやはり私では……」
「だから探索、がんばるんダヨっ」
ルビーのネガティブな言葉を遮って、パティはポジティブな言葉を投げかける。彼女の明るい笑顔と共にかけられた言葉に、今確かにルビーの中の何かが変わった。そしてぎこちなくではあるが表情を動かし、彼女に対して笑顔を見せた。
「私は思案する。罠の種類を」
そんな二人を見ながら、レインはこの先の探索について語っていた。そこに遥華がメモを読み上げる。それは彼女が記録していたここまでに出会った罠とその対処の種類だ。それらの情報を整理しながら、レインは更に奥に進むためのアイデアを出していた。
「罠の起動には接触型と感知型がある。設置場所は床、壁、天井だ。長い棒に松明をくくり、踏み出す先を突けば熱源感知による罠の誘発ができると考える」
結果、松明付き棒が一同の行く先を確かめるため先に進むのであった。
●
一同は扉の前にたどり着いた。早速開こうとするところを篝は制する。まず盾を持ってドアノブの前に立ちそこに罠が仕掛けられていないかを警戒する。そしてくさびを一本取り出す。扉を開け中に入った後、自動的に閉まって閉じ込められるのを警戒してだ。
だがその必要はなかった。十分な警戒と共に部屋の中に入ると同時に自動人形達が飛び出し、こちらに向かって攻撃を仕掛けてきた。
「おかしいです。ここの自動人形は動かないはずなのですが」
戦いに慣れないルビーが疑問を述べていたが、春日はすかさずルビーの視線を塞ぐように前に出た。構えた盾に自動人形達が発射した光線が当たる。彼が盾にならなければこの光線は容赦なくルビーを焼いたであろう。
「ルビーは下がって! レイン、お願い!」
茜が叫んだ。それと同時にレインは呪文の詠唱を開始する。するとルビーのその目の前に土壁が一つそびえ立った。ルビーの手をパティは引き、二人揃って篝と土壁の後ろに動く。
「ルビー。貴方も排除対象と認識されている。私の傍から離れないようにすべきだ」
土壁の後ろに入ったその側にレインは立つ。そんな三人の脇を更に固めるようにテオと篝が構える。
「仕方ない。せっかく起きた所悪いけど、襲ってくるなら壊させて貰うぜ。ごめんな」
テオは鞭を抜いた。土壁の向こうで自動人形達が蠢きこちらに迫ってくる。部屋の反対側には人形のそれが光線を放ってくる。そして。
「き、機械でも蜘蛛の形は気持ち悪いぃ……」
茜は天井に引っかかるようにして這い寄ってくるその姿にかなり引いていた。しかし自動人形達は容赦無く這い寄り、こちらに向かってくる。
メルは素早く魔導機械を操作した。彼女の前に光の三角形が出現し、三本の光線が蜘蛛達を貫いていく。弾き飛ばされ地面に落ちるが、蜘蛛はすぐに起き上がりまたもや壁を駆け回る。
その間に遥華はじっとルビーの目を見つめ、そして呪文を詠唱した。するとルビーの体に緑色の風がまとわりつく。これが彼女の身を守る風となる、それを確認するや前を向き、迫り来る蜘蛛へめがけ風の刃を放った。
そんな中でも遥華は脚を止めず動く。人形たちが放つ光線がこの部屋を飛び交っている。そんな人形の正面に立たないようにして光線を避けようと試みる。しかしあまりの光線の数にとうとうその一発が彼女の脚をかすめた。だが、それで遥華はひるまない。再び呪文を唱え、風の刃を巻きおこす。
飛び交う光線に紛れるように、蜘蛛はこの部屋のすべてを足場としてこちらに迫ってくる。前後左右に加え上下も伴ったその動きは簡単に把握できるようなものではない。しかし、前に立つ春日はそれでもその動きに細心の注意を払っていた。
そして突如、天井を動いていた蜘蛛がこちらへと降ってきた。重力に乗せたその鋭い爪が振り下ろされる。しかしそれが食い込んだ先は春日の盾であった。
爪が食い込み、脚をばたつかせる蜘蛛人形の近くで風を切る音が鳴る。テオが伸ばした鞭が蜘蛛人形の胴体に絡みつく。その時春日の拳が淡く輝いた。そして次に見たのは、彼のその淡く輝く拳が蜘蛛人形にめり込んでいる姿だった。見事なクロスカウンターが炸裂し、床を二、三度弾んで蜘蛛人形は飛んでいく。
そしてその蜘蛛人形が転がるのを止めた所で、それを中心に一体が色とりどりの光りに包まれた。パティはタイミングを合わせ、手に揃えた五枚のカードを投げていた。それぞれのカードから放たれる光が一帯を染め、蜘蛛人形のカメラを誤動作させる。
サポートが上手く行きすこし笑顔になるパティ。しかし全ての蜘蛛をこれで排除できたわけではなかった。人間には不可能な異様な動きで蜘蛛は走り、壁の上を抜けて降ってきた。
「あんなのに組み付かれるとか考えたくないし」
魔導機械を操作し電撃を放つ茜。その一本は蜘蛛を捉える。電撃がまとわりつく。機械の身体にそれは酷だったようだ。悶えるような動きを見せる。
「少しの間、痺れてなさいっ!」
だが全ての蜘蛛をそれだけで止めきることは叶わなかった。ハンター達の網を抜けた蜘蛛は一瞬のうちに天井を駆け抜け、春日達の頭を越え、落ちてくる。
そこに居たのはルビー。そして
「ひっ……」
最も組み付かれることを恐れていた茜だった。
のしかかられた茜は気丈にも電撃を纏ったパンチを何発も何発も叩き込んで振りほどく。ようやく逃れた彼女だったが、その目には涙が浮かんでいた。
一方ルビーの方に降ってきた蜘蛛、それに対して動けるのはレインしか居なかった。気づいたときには動いていた。覆いかぶさるようにその身を投げ出すと、蜘蛛の爪が腕に食い込む。
さらにそこに光線が飛んできた。土壁の隙間をかすめるように飛んできたそれがパティの腕を貫く。腕がもげたかのような痛みに顔は苦痛に歪む。ルビーが駆け寄る。しかし、パティはそれを制して笑顔を見せた。
「ルビーは戦い、ハジメテでしょか」
一つ頷くルビー。その体は心なしか震えていた。
「『こわい』『かなしい』気持ちは、危ないに気付く大事なセンサー。ケガをしたら痛いし、たったひとつの命を落としちゃわないよーに」
そしてパティはルビーの手を握った。
「みんなと一緒ナラだいじょうぶ。手を繋いで、進めるように」
再び敵に向き直る。
そこにテオが駆け込んできた。レインを捉えている蜘蛛を手にした刀で斬り払い、その勢いで茜に弾き飛ばされた蜘蛛も斬り捨てる。
続いて篝がライフルを一発放った。その銃弾が奥にいる人形を捉えれば、撒き散らされていた光線が突如として止まる。動作が鈍くなる。彼女が銃弾を介して込めたマテリアルが冷気と成って人形の動きを妨げる。
そしてレインは腕から流れる血を拭おうともせず呪文を唱えた。程なくして詠唱は完成し、稲妻が彼女の前からほとばしる。それは一直線にこの部屋を貫き、蜘蛛と人形をまとめて貫いた。
春日はまだルビーの前に立っていた。少女を狙った光線を受け止めた代償が腹部に広がっていた。急所に入った一撃が彼の身体を血で染める。しかし彼の気力は衰えていなかった。ルビーを護るためにそこに立つ。
そんな春日のために遥華が二枚目の土壁を立てる。そして
「こっちよ!」
押し出されるように飛び出したメルがそう叫ぶ。人形たちが反応し、そちらの方を向いたとき、彼女の前には既に光の三角形が現れていた。程なくして発射された光線がそれぞれ人形を貫き、それでこの部屋の中は沈黙した。
●
戦いが終わり探索を始める。春日はルビーに人形達の調査を依頼した。その結果は
「……警戒レベルが何者かによって上げられたようです。警戒レベルに干渉できるアカウントはそう無いはずなのですが……」
「なるほど。おそらくラプラスだろうな……そういや何となく思ったんだが歪虚と黙示騎士ってのはルビーには同じ感じでやっぱ脅威なのか?」
「黙示騎士? それは何でしょうか」
それは驚くべき反応だった。
一方他の者達はマッピングの結果から推測される空間につながる壁を調べる。しばらく色々触っているうちに、突如としてその壁が開いた。中にはデータの流れが刻々と表示されている。それは同時にゲートの位置が半分にまで絞られていたことを示していた。
ハンター達の顔が綻ぶ。それを見ながら、テオはルビーに話しかけた。
「皆がいたから楽しかったと思うけど、面白……興味深いものは見つかったか」
「……はい」
ややあって彼女は答えた。
「こうやって皆さんの役に立つことが、私には面白いです」
「……ねぇ、ルビー。パティ達はドコに行けばよいでしょか?」
パトリシア=K=ポラリス(ka5996)はルビーにそう尋ねていた。ルビーの指示により罠にかからずに進めているが、文字通り遺跡の中を右往左往するハメになっている。
「ここをしばらく進んだ先には部屋があります。そこを右に出て廊下を進み左へ曲がります。その後……」
「頭が痛くなってきたんダヨ」
パティが弱音を思わず吐いた時、八原 篝(ka3104)はつまり、と一つ前置きしてから話し始めた。
「この罠の数から言って、ここら辺一体は侵入者を排除する為だけに用意した区域ね。何かめぼしいものがあったとしても、全て罠だと考えた方がいいわ」
「確かにこの区域は人が入ることを想定していないのですが……」
重苦しい空気が周囲を包む。つまり無駄足と言うことなのか。
「この区域は記録したデータを集約する為に存在します」
「つまりデータの流れが見れるってことか」
ルビーの言葉に岩井崎 メル(ka0520)は少し思案して答える。
「するとゲートがある場所を絞りこめるかもしれないね」
その彼女の気付きに一同がざわめく。ルビーも余り表情は変わらずとも、少し驚いたかのように口を開けていた。
「今度はさ、弟子になってみない? 『ししょう』って呼んでくれても良いんだよ」
そんな風にお姉さん振るメル。
「私は踏み出す。第三の文明の謎を解き明かすために新たなる知識を記録することこそが私の本懐なのだから」
雨を告げる鳥(ka6258)のそんな言葉とともに一行は奥へと進んでいった。廊下を歩きながら、天王寺茜(ka4080)は一人思っていた。
(ルビーが私たちを手伝ってくれるのは、彼女が見聞きしたものから出してくれた解答だと思う)
だから。
「その答えに、報いたいわ」
●
「春日さん、一つお聞きしたいことがあったのですが」
通路を歩きながらルビーは春日 啓一(ka1621)に尋ねた。
「私とまた会えて楽しいですか?」
それは確かに春日の偽らざる気持ちではあったが、こう面と向かって言われると照れてしまう。彼はこういうときは態度で示す方が向いていた。
「ルビー、もしもの時は俺を盾代わりに使え」
そうやって後ろに下がらせた所で、央崎 遥華(ka5644)も助け舟を出した。
「ルビーさんのこと、親友が嬉しそうに話してたんだ」
彼女に再会を望んだ者が居たように、彼女に再会を望んでも会えなかった者も居る。遥華にルビーのことを託した親友も
「あああ、こんな時に祈るしか出来ねーなンてもどかしいぜ! 頼むハルカ! オレの代わりにルビーを護ってやってくれよ! そンで、みんな一緒に無事で帰って来てくれッ! 信じてっからな!」
と別の場所でひたすら祈っていた。
「いつでもまた会えると思ったのですが」
ルビーの述べた疑問に遥華は首を振った。
「明日どうなるかなんて誰にもわからない。だから今は私は、彼女のためにも、ルビーさんを護る!」
そう強い決意を示す。
そんな様子を横目に見ながら、テオバルト・グリム(ka1824)は注意しつつも進んでいた。彼の鋭い感覚は左右の壁のほんの少しの違和感を感じていた。正確な直線で構成された壁面の一部が僅かに欠けている。コツ、コツといった足音に混ざってほんの少し、何かがこすれる様な音がした。
テオは一旦全員を止まらせ、静かにさせて状況を確認する。それを受けてメルと茜も周囲を見渡す。何が動いているのだろう……。
そして次の瞬間、メルが叫んだ。
「走って!」
その声に合わせるかのように左右の壁が突如として迫ってきた。ハンター達は一斉に走り出す。戸惑っていたルビーの手を篝とパティが握り共に駆け出す。息を切らし、振り向きもせずハンター達が走り抜けるのとほぼ同時に二つの壁は轟音を立てて閉じた。
閉じた壁が彼らの後ろで沈黙している。そんな中、ルビーは静かに声を上げた。
「……どういうことなのでしょうか。ここの罠は基本的に動かないはずなのですが」
「あー……あれかな。どこかで起動的なスイッチでも押しちまったかな。まさかルビーまで……遺跡の事はよく分からないぜ」
頭を掻きながらそうつぶやくテオ。重い空気が支配する。しかし、ハンター達は前に進まなければいけない。
「まああのラプラスとかいういけすかねえ奴の差し金だろうがな、しかし、こんな所で立ち止まってる暇は無い」
そしてハンター達は再び移動を開始した。
篝が一同を静止する。壁に継ぎ目に紛れて細いスリットが開いている。それを見た春日は盾を掲げ前へと踏み出す。次の瞬間軽い音と共に彼の盾には矢が一本突き刺さっていた。
遥華は一旦一同を止めて、床を見る。その後おもむろに仲間たちと手を繋いだ。右手にレイン、左手にパティ。彼女が何をしようとしているのか勘付いた篝が彼女の体にロープを結びつける。
そして遥華は一歩踏み出した。次の刹那その床がいきなり抜け、彼女の体が宙に浮く。しかししっかりと繋いだ二人の手に引き止められ、篝のロープで引き上げられた。
メルが指差した床を茜も目を凝らしてみていた。そして一つ頷くと、彼女は銃を取り出しそこに目掛けて撃った。銃声が鳴って着弾した瞬間、ハンター達が見たのは天井が落ちてくる姿だった。
「私は確認する。先に調査した者たちが遭遇した罠についてを。マッピングをすれば罠を格納する空間に気付けるだろうか。ルビーの助言を併せて推測しよう」
レインとパティは大きな紙にルビーからの情報と以前潜ったハンター達からの報告を記録していった。彼らが踏み出した足あとはそのまま紙に書き加えられ、少しずつではあるがこの一帯の構造が示されていく。
そんな二人の様子を、ルビーは伏し目がちに見ていた。
「どうしたの? ダヨ」
ルビーの変化をパティは感じ取る。ルビーにもわからないことがここで起きている。それは案内役だと認識していた彼女にとっては、自分が求められた役割を果たせてないということだった。少なくとも彼女はそう捉えていた。そしてそれは彼女が思う彼女自身の存在意義に傷を付ける。
「ほんとはネ、ルビーやみんなと探険できるのが今はちょっと、楽し」
パティはルビーに微笑んだ顔を近づける。
「でも、みんなが探してるゲートを、パティもちゃんと探さなきゃって思い出しなおしなんダヨ」
「でしたらやはり私では……」
「だから探索、がんばるんダヨっ」
ルビーのネガティブな言葉を遮って、パティはポジティブな言葉を投げかける。彼女の明るい笑顔と共にかけられた言葉に、今確かにルビーの中の何かが変わった。そしてぎこちなくではあるが表情を動かし、彼女に対して笑顔を見せた。
「私は思案する。罠の種類を」
そんな二人を見ながら、レインはこの先の探索について語っていた。そこに遥華がメモを読み上げる。それは彼女が記録していたここまでに出会った罠とその対処の種類だ。それらの情報を整理しながら、レインは更に奥に進むためのアイデアを出していた。
「罠の起動には接触型と感知型がある。設置場所は床、壁、天井だ。長い棒に松明をくくり、踏み出す先を突けば熱源感知による罠の誘発ができると考える」
結果、松明付き棒が一同の行く先を確かめるため先に進むのであった。
●
一同は扉の前にたどり着いた。早速開こうとするところを篝は制する。まず盾を持ってドアノブの前に立ちそこに罠が仕掛けられていないかを警戒する。そしてくさびを一本取り出す。扉を開け中に入った後、自動的に閉まって閉じ込められるのを警戒してだ。
だがその必要はなかった。十分な警戒と共に部屋の中に入ると同時に自動人形達が飛び出し、こちらに向かって攻撃を仕掛けてきた。
「おかしいです。ここの自動人形は動かないはずなのですが」
戦いに慣れないルビーが疑問を述べていたが、春日はすかさずルビーの視線を塞ぐように前に出た。構えた盾に自動人形達が発射した光線が当たる。彼が盾にならなければこの光線は容赦なくルビーを焼いたであろう。
「ルビーは下がって! レイン、お願い!」
茜が叫んだ。それと同時にレインは呪文の詠唱を開始する。するとルビーのその目の前に土壁が一つそびえ立った。ルビーの手をパティは引き、二人揃って篝と土壁の後ろに動く。
「ルビー。貴方も排除対象と認識されている。私の傍から離れないようにすべきだ」
土壁の後ろに入ったその側にレインは立つ。そんな三人の脇を更に固めるようにテオと篝が構える。
「仕方ない。せっかく起きた所悪いけど、襲ってくるなら壊させて貰うぜ。ごめんな」
テオは鞭を抜いた。土壁の向こうで自動人形達が蠢きこちらに迫ってくる。部屋の反対側には人形のそれが光線を放ってくる。そして。
「き、機械でも蜘蛛の形は気持ち悪いぃ……」
茜は天井に引っかかるようにして這い寄ってくるその姿にかなり引いていた。しかし自動人形達は容赦無く這い寄り、こちらに向かってくる。
メルは素早く魔導機械を操作した。彼女の前に光の三角形が出現し、三本の光線が蜘蛛達を貫いていく。弾き飛ばされ地面に落ちるが、蜘蛛はすぐに起き上がりまたもや壁を駆け回る。
その間に遥華はじっとルビーの目を見つめ、そして呪文を詠唱した。するとルビーの体に緑色の風がまとわりつく。これが彼女の身を守る風となる、それを確認するや前を向き、迫り来る蜘蛛へめがけ風の刃を放った。
そんな中でも遥華は脚を止めず動く。人形たちが放つ光線がこの部屋を飛び交っている。そんな人形の正面に立たないようにして光線を避けようと試みる。しかしあまりの光線の数にとうとうその一発が彼女の脚をかすめた。だが、それで遥華はひるまない。再び呪文を唱え、風の刃を巻きおこす。
飛び交う光線に紛れるように、蜘蛛はこの部屋のすべてを足場としてこちらに迫ってくる。前後左右に加え上下も伴ったその動きは簡単に把握できるようなものではない。しかし、前に立つ春日はそれでもその動きに細心の注意を払っていた。
そして突如、天井を動いていた蜘蛛がこちらへと降ってきた。重力に乗せたその鋭い爪が振り下ろされる。しかしそれが食い込んだ先は春日の盾であった。
爪が食い込み、脚をばたつかせる蜘蛛人形の近くで風を切る音が鳴る。テオが伸ばした鞭が蜘蛛人形の胴体に絡みつく。その時春日の拳が淡く輝いた。そして次に見たのは、彼のその淡く輝く拳が蜘蛛人形にめり込んでいる姿だった。見事なクロスカウンターが炸裂し、床を二、三度弾んで蜘蛛人形は飛んでいく。
そしてその蜘蛛人形が転がるのを止めた所で、それを中心に一体が色とりどりの光りに包まれた。パティはタイミングを合わせ、手に揃えた五枚のカードを投げていた。それぞれのカードから放たれる光が一帯を染め、蜘蛛人形のカメラを誤動作させる。
サポートが上手く行きすこし笑顔になるパティ。しかし全ての蜘蛛をこれで排除できたわけではなかった。人間には不可能な異様な動きで蜘蛛は走り、壁の上を抜けて降ってきた。
「あんなのに組み付かれるとか考えたくないし」
魔導機械を操作し電撃を放つ茜。その一本は蜘蛛を捉える。電撃がまとわりつく。機械の身体にそれは酷だったようだ。悶えるような動きを見せる。
「少しの間、痺れてなさいっ!」
だが全ての蜘蛛をそれだけで止めきることは叶わなかった。ハンター達の網を抜けた蜘蛛は一瞬のうちに天井を駆け抜け、春日達の頭を越え、落ちてくる。
そこに居たのはルビー。そして
「ひっ……」
最も組み付かれることを恐れていた茜だった。
のしかかられた茜は気丈にも電撃を纏ったパンチを何発も何発も叩き込んで振りほどく。ようやく逃れた彼女だったが、その目には涙が浮かんでいた。
一方ルビーの方に降ってきた蜘蛛、それに対して動けるのはレインしか居なかった。気づいたときには動いていた。覆いかぶさるようにその身を投げ出すと、蜘蛛の爪が腕に食い込む。
さらにそこに光線が飛んできた。土壁の隙間をかすめるように飛んできたそれがパティの腕を貫く。腕がもげたかのような痛みに顔は苦痛に歪む。ルビーが駆け寄る。しかし、パティはそれを制して笑顔を見せた。
「ルビーは戦い、ハジメテでしょか」
一つ頷くルビー。その体は心なしか震えていた。
「『こわい』『かなしい』気持ちは、危ないに気付く大事なセンサー。ケガをしたら痛いし、たったひとつの命を落としちゃわないよーに」
そしてパティはルビーの手を握った。
「みんなと一緒ナラだいじょうぶ。手を繋いで、進めるように」
再び敵に向き直る。
そこにテオが駆け込んできた。レインを捉えている蜘蛛を手にした刀で斬り払い、その勢いで茜に弾き飛ばされた蜘蛛も斬り捨てる。
続いて篝がライフルを一発放った。その銃弾が奥にいる人形を捉えれば、撒き散らされていた光線が突如として止まる。動作が鈍くなる。彼女が銃弾を介して込めたマテリアルが冷気と成って人形の動きを妨げる。
そしてレインは腕から流れる血を拭おうともせず呪文を唱えた。程なくして詠唱は完成し、稲妻が彼女の前からほとばしる。それは一直線にこの部屋を貫き、蜘蛛と人形をまとめて貫いた。
春日はまだルビーの前に立っていた。少女を狙った光線を受け止めた代償が腹部に広がっていた。急所に入った一撃が彼の身体を血で染める。しかし彼の気力は衰えていなかった。ルビーを護るためにそこに立つ。
そんな春日のために遥華が二枚目の土壁を立てる。そして
「こっちよ!」
押し出されるように飛び出したメルがそう叫ぶ。人形たちが反応し、そちらの方を向いたとき、彼女の前には既に光の三角形が現れていた。程なくして発射された光線がそれぞれ人形を貫き、それでこの部屋の中は沈黙した。
●
戦いが終わり探索を始める。春日はルビーに人形達の調査を依頼した。その結果は
「……警戒レベルが何者かによって上げられたようです。警戒レベルに干渉できるアカウントはそう無いはずなのですが……」
「なるほど。おそらくラプラスだろうな……そういや何となく思ったんだが歪虚と黙示騎士ってのはルビーには同じ感じでやっぱ脅威なのか?」
「黙示騎士? それは何でしょうか」
それは驚くべき反応だった。
一方他の者達はマッピングの結果から推測される空間につながる壁を調べる。しばらく色々触っているうちに、突如としてその壁が開いた。中にはデータの流れが刻々と表示されている。それは同時にゲートの位置が半分にまで絞られていたことを示していた。
ハンター達の顔が綻ぶ。それを見ながら、テオはルビーに話しかけた。
「皆がいたから楽しかったと思うけど、面白……興味深いものは見つかったか」
「……はい」
ややあって彼女は答えた。
「こうやって皆さんの役に立つことが、私には面白いです」
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
依頼相談掲示板 | |||
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探索相談 岩井崎 メル(ka0520) 人間(リアルブルー)|17才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2016/10/07 00:02:05 |
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質問卓 春日 啓一(ka1621) 人間(リアルブルー)|18才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2016/10/04 09:58:36 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/10/04 17:25:24 |