• 夜煌祭

【夜煌】山猫団、お祭りに行く

マスター:水貴透子

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/09/22 19:00
完成日
2014/10/01 00:10

みんなの思い出

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オープニング

●伝統復活の兆し

 ラッツィオ島の戦いも収束した頃、辺境は再び活性化しつつあった。
 ここ数年、途絶えていた平安を願う祭事……『夜煌祭』の話が持ち上がったのだ。
 数日のうちにその話は商人や部族間を伝い、辺境内の各所へと届いていく。
 祭りに呼応するように、ここでも新たな動きが出たようだった――

※※※

「お頭! 何でも【夜煌祭】なるものが開催されるみたいです!」
「お頭! 今、準備してるみたいで色々と人が集まっています!」
「お頭! 自分達も混ぜてもらいましょう!」

「馬鹿野郎! 山を追われたとはいえ山賊・山猫団! カタギの連中と祭なんか楽しめると思うか!」

自分の部下であるビッグ、ミドル、スモールに向かって叫ぶのは山猫団お頭のキャット。
カタギの連中とは楽しめないと言いながらも、そわそわしているのはやはり子供だからだろう。

「お頭! この道は会場に向かう道ですよ!」
「お頭! 自分達には偉そうに説教だけど、結局行きたいんですか!」
「お頭! いい加減お頭としての尊厳とか色んなモノを持って下さい!」

「うるさいうるさい! 私が向かっているのは飯を食うためだ! 配給くらいあるかもしれんだろう!」

祭は楽しむつもりがないが、ご飯は頂きに行く――何とも悲しい山賊である。

「とにかく! 行くぞー!」

「お頭! 背後から何か来ます!」
「お頭! ……おっきなお猿さんです! でかすぎです!」
「お頭! ただでさえ小さいお頭が更に小さくなりました!」

人間の4倍はあるであろう巨大な猿に山猫団は慌てて逃げ始める。
とりあえずわかる事、山猫団が動く時に必ず雑魔の影がある、という事――。


リプレイ本文

●現れたぞ、山猫団!

 夜の任務という事もあり、ハンター達はテントで休息を取っていた。
 ……が、静かな荒野に似つかわしくない声が響いてきて、ハンター達はテントから出る。
「お頭! お猿さんです!」
「お頭! あれをやっつければ、自分達も英雄です!」
「お頭! けど、殉職という形の英雄しか思い浮かびません!」
「その前に私達に役職はないから、殉職もないだろうが! あぁ、もう!」
 ぎゃあぎゃあ、と騒ぎ立てながら山猫団がハンター達のいる場所へと向かってきた。
「……まさか、またあの腹ペコ山賊に会うとはな――というか、山を降りてるから、もう山賊ですらないんだけど、雑魔もいるし、餌付けで大人しくさせるしか、ないか?」
 シン・コウガ(ka0344)は大きなため息を吐きながら呟く。
「話には聞いていたが、あいつらが山猫団か……確かに愉快な連中だぜ、ったく」
 エヴァンス・カルヴィ(ka0639)が引きつった笑みを浮かべている。雑魔が現れたのだから、もっと緊張感があるはずなのだが、山猫団がその緊張をすべて台無しにしている。
「げげっ! 山猫団……! と、とりあえず助けないと……」
 天川 麗美(ka1355)は山猫団の4人を見て、苦笑を漏らす。
 むしろ天川いる所に山猫団あり、と言ってもいいくらいの遭遇率だ。
 それが嬉しいか嬉しくないかは、天川本人にしかわからないのだけど。
「……また、あいつらか……猫っぽくないのに、猫の名前を持つ……山猫だ」
「おおおい! そこの奴! 山猫だ、じゃなくて! 山猫団! 山猫団だぞ!」
 アレン=プレアール(ka1624)の小さな呟きに、山猫団首領のキャットが叫ぶ。
 どれだけ地獄耳なのだろう、とアレンは素朴な疑問と共にかくりと首を傾げた。
「……なんか、でけぇ猿が来るなぁ……折角の祭だってーのに、お猿さんとお遊戯か……さっさと終わらせて宴会に混じりたいぜ」
 ルリ・エンフィールド(ka1680)は盛大なため息を吐きながら呟く。
 とりあえず彼女は猿雑魔の前にいる山猫団が見えないのか、はたまた視界に入れるつもりがないのか、ナイスシカトである。
「さてはて、どうしたもんかな、この猫達と猿は……」
 守原 由有(ka2577)は苦笑気味に呟く。
 彼女はキャット以外の3人も『猫』とひとくくりにしているが、外見的にはマッチョであり、とてもじゃないが猫とは結びつかない。
「あんな所にいられても迷惑だし、適当に扱って怪我させないようにすればいいんじゃないかな?」
 ラブリ”アリス”ラブリーハート(ka2915)は、にっこりと微笑みながら呟く。
 ハンター達の想いはそれぞれだが、山猫団邪魔なんですけど、という想いは同じらしい。
「お頭! ハンターです!」
「お頭! 腹黒シスターもいます!」
「お頭! 助けてもらうチャーンスです!」
 どうやら、天川の存在にいち早く気づいたようで、ビッグ・ミドル・スモール……略して大中小の3人が叫んでいる。
「……天川、何かあの3人がすげぇ勢いで手ぇ振ってんだけど」
 エヴァンスが呟くと「他人のふりさえもさせてくれないなんて」と低い声で天川が呟く。
「……猿はともかくとして、猫とかいう奴らはうるせぇなぁ」
 チッ、と舌打ちをしながらシャトン(ka3198)が忌々しげに呟く。
 確かに彼女の言う通りだろう、雑魔退治にあんなハチャメチャな人間がいればどんな危険な事になるか分からないのだから。
 ハンター達はそれぞれが自分の命をかけ、日々雑魔との戦いに身を置いている。
 山猫団は、ハンター達の危険度をあげるだけの存在でしかない。
「あなた達、あそこのテントに入って待っていてくれる? イイコで、分かったわね?」
 天川がにっこりと笑みを浮かべながら山猫団に話しかけるけど……。
「お頭! 笑顔なのに黒いです!」
「お頭! シスターは白がイメージなのに、何か黒いです!」
「お頭! この人、腹黒です! 怖いです! きゃあああ」
(きゃああって……ムキマッチョが可愛く叫んでも可愛くもなんともないんだが……)
 くねくねと身体を捩るスモールに、シンは自分の腕に鳥肌が立っているのを見る。
「とりあえず黙れ、生き残りたいならな」
 シャトンがドスのきいた声で山猫団に話しかけるが――。
「お頭! この人も怖いです!」
「お頭! ハンターって黒い人ばかりですか!?」
「お頭! こう見ると、お頭が結構まともに見えます!」
「……黙れって言っただろうが」
「へぶちんっ!」
 黙れ、と言ったにも関わらず騒ぎ続ける大中小に、シャトンは思わず鳩尾を殴って気絶させた。
「あー、多少手荒にして勘弁な~……って、もう聞こえてねぇか」
「……」
「……」
「……」
「……」
 間抜けな声と共に気絶したスモールを見て、キャットはもちろん大中も黙りこくる。
「ほら、あのテントに食い物があるから、それ食ってろ」
 シンが山猫団に向けて話しかけると「きゃほーいっ!」と騒ぎながらテントへと向かう。
「……」
 だが、シャトンの睨みで山猫団は黙り込み、抜き足差し足忍び足でテントに入った。
「とりあえず、あたしは後衛で山猫団の護衛&牽制かな」
 守原が呟き、ハンター達はそれぞれ本来の敵である猿雑魔との戦いに向かい始めた。

●戦闘開始! 敵は後方にもあり!

「やっぱり拳銃よりもライフルの方がしっくりくるな……まぁ、取り回しは拳銃の方が上だけどな……」
 前衛で戦うハンター達の灯りを頼りに、シンは『アサルトライフル』で射撃を行う。
「お頭! このお菓子、うんまーです!」
「お頭! 自分達、物乞いの方が向いてる気がします!」
「お頭! 一人で干し肉食べないで下さい!」
「……山賊とはいえ、祭の日に死ぬのは後味が悪いからな、こっちを向いてもらうぜ」
 素っ気ない態度を取ってはいるものの、シンは山猫団を見捨てきれないのだろう。
「タバコとか吸ってないのに、どうしてバレたのかしら……シスターなんて似たような格好なのに即バレって……」
 天川は疑問を口にしながら『機導砲』で猿雑魔の足止めを行って『防御障壁』で前衛をガードする。
「悪いがな……お前の攻撃は、俺以外には通らないと思え」
 アレンはダブルシールドの試みを行っており、猿雑魔の攻撃を一身に受けている。
 ただし、すべてを受け持つ事は出来なかった――が、アレンのシールドのおかげで、他のハンター達も随分と受ける傷が減っているように思える。
「ってぇぇぇっ、あの人達、テントの中の食糧食べてるって!? あの中にはボクのポテチもあるんだぜ!? ……うぅっ、いいもん! 宴会で腹いっぱい食うから!」
 ルリはポテチを食べられた恨みを猿雑魔に向けるが、猿雑魔としては『それ、俺関係ない』と言いたい事だろう、雑魔だし、猿なので話せないけれど。
「ほら! ゆっくり噛んで、ちゃんと水も飲む!」
 守原は山猫団のお守りも受けており、仕方なく面倒を見ていた。
「お頭! この子可愛いです!」
「お頭! 出会いは突然です!」
「お頭! この子、山猫団に誘いましょう!」
「……黙れって言われたの、覚えてる? っていうか、何気に尻触んな」
「ビーッグッ!」
 守原にセクハラを働いたビッグは鳩尾を打たれて、何かピクピクしている。
「手加減してあげたんだから感謝してよ、本気なら心臓麻痺か破裂狙うよ、あたし」
 冗談など一切感じさせない言葉に、山猫団は震えあがる。
「……何か、私達の出会うハンターって凶暴度が増してきていないか?」
 ポテチを食べながらキャットが呟くが、その言葉は誰の耳にも届かなかった。
「とりあえず、お猿さんに退場願わなくちゃね」
 アリスは『プロテクション』を使用して、前衛の防御力を強化する。
 そして一番ダメージを受けているアレンに『ヒール』を使用して、中距離から前衛者に対する支援を行っていた。
「ちょこまか動くんじゃねぇよ、うぜぇな」
 シャトンは眉をひそめ『オートマチックピストル』で猿雑魔の頭を狙う――が、巨大であること、そして予想以上に動きが素早い事から、上手く頭を撃ちぬけずにいた。
「あんなお間抜け山賊を追っかけても、何にもならねぇだろうが」
 エヴァンスは猿雑魔の腕に狙いを定めて『ツヴァイハンダー』を大きく振り上げ『攻めの構え』と『渾身撃』を使用する。
 攻めの構えで守りを捨てた状態からの渾身撃は強力な一撃を与え、猿雑魔はぐらりとよろめく。
 その隙を見逃さず、シャトンは武器を『メリケンサック』に持ち替え『闘心昂揚』を使用して、猿雑魔に攻撃を仕掛けた。
「お前があいつらを連れて来たから、ボクのポテチが食われたんだぜ……!? その報い、受けさせてやんよ……!」
 ルリは『ツヴァイハンダー』を振り上げ『渾身撃』で攻撃を行う。
 ハンター達よりも遥かに大きな雑魔であるにも関わらず、多少傷は深いけれど、それ以上の苦労がないように思えるのは何故だろうか。
 もしかしたら、山猫団という邪魔者がハンター達のやる気を出させていたり……なんて、ありえるはずもないのだけれど。
「さて、そろそろ倒れてくれるかな?」
 守原は『水中拳銃』を構え、猿雑魔の胴や腕を狙って、射撃を行い、前衛のハンター達が動きやすいように、僅かだけど貴重な隙を作っていた――。

●何でここに、山猫団!

「お前ら、ここに来たって事は夜煌祭に参加したいからなんだろ?」
 猿雑魔を退治した後、シンが山猫団に言葉を投げかける。
「お頭! バレてます!」
「お頭! 何で行動が読まれたんでしょう!」
「お頭! なんて言うか、ハンター達の言う通りにしましょう!」
「ばっかやろう! 私達は山賊だぞ! カタギの人間の言う事になんざ耳を貸せるか!」
 キャットの言葉を聞き、シンは深いため息を吐く。
「美味い物が食べたいなら、手伝いくらいしろ……働かない物食うべからず! これはどこの世界でも同じだ……!」
「はんっ、私の世界に『働く』って言葉はありませーん!」
 生意気な物言いに、山猫団に更生を求めるシンも拳に力が入る。
「お前ら、祭を壊しに来たわけでもないんだろ? 何もしないならとっとと行ってこい」
 エヴァンスはひらひらと手を振りながら、山猫団に言葉を投げかける。
「お頭! この人シブいっす!」
「お頭! 初めての理解者ですよ!」
「お頭! あの人の事、兄貴って呼んでもいいですか!」
(どれだけ、こいつらの周りに理解者がいなかったんだよ……)
 目を輝かせる大中小に、エヴァンスもやや引き気味になる。
「けど、一緒じゃないと入場できないかもしれないしぃ、一緒に行く?」
「お頭! 腹黒が何か企んでいます!」
「お頭! 自分、この人に着いて行ったら怖い気がします!」
「お頭! 自分達、黒のオーラで動けません!」
「ちょっと! 何もしてないでしょう!」
 言いがかりをつける大中小に、さすがの天川も大きな声を出してしまう。
 そんな中、アレンは、てふてふ、とキャットに近づき――……。
「ん」
 何故か猫耳カチューシャをキャットの頭に被せた。
「な、何だよ。これっ……!」
「……猫っぽくなるかと、思って……山猫団、だし」
 意味が分からん、と叫ぶキャットを見ながら、アレンは満足そうに頷く。
「けど、安全のためにも更生施設に……そうだ、四肢外せば逃げられないね――って、こら、逃げようとするなっ!」
 守原の怖い呟きに、山猫団は顔色を青ざめさせながら逃げようとするが、首根っこを掴まれ、逃げるに逃げられない状況になった。
「でも、更生するんですか? 更生させるにしても、まず頭の方を何とかしないと……」
「お頭! バカ娘って言われています!」
「お頭! 確かにお頭はちょっと残念な子です!」
「お頭! こうなったら見返してやりましょう!」
「てめぇら! そこまで言ってねぇだろうが!」
 アリスの言葉を何倍にもした大中小の発言に、キャットがブチッと切れる。
「あー、そういや忘れてた。さっきは殴って悪かったな、うるさすぎて耐えらんなかった」
 シャトンが軽く謝るけれど、山猫団はビクッと肩を震わせていた。

 結局、山猫団はハンター達と一緒に夜煌祭に向かったのだが、途中の人混みに紛れて、どこかに消えてしまっていた。
 私らは施しなんか受けないんだからな! というメモ1枚を残して――……。
 しかし、施しを受けないと言いながらも、メモにはポテチの油でべっとりだった。
「……俺は断言する、あいつら絶対また現れる」
「消えていく姿は、猫っぽい……」
「どうでもいいけど、ボクのポテチ、食われ損じゃねーの?」
「やっぱり四肢外しとけばよかった……」
「あいつら、どれだけ働くのが嫌だったんだよ……」
「やれやれ、今回はいつも以上に疲れた気がします」
 ハンター達は依頼達成の報告に向かう途中、口々に呟いている。
「山猫団に会うたび、食費がかさむのは気のせいかしら、これじゃ割に合わない……」
「……そういえば、何気に残しておいた最後の1つのポテチもなくなっていますわ、山猫団……中々やりますわね」
 荷物から消えたポテチに想いを馳せながら、アリスが呟く。
 結局、山猫団が何のために現れたのかなど、ハンター達は誰1人として知る事が出来なかった――。
 それもそのはずだ、何故なら理由などないのだから。
 食料ある所に山猫団現れる、まさにこの言葉が適切だと言えるだろう。

END

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 山猫団を更生させる者
    シン・コウガ(ka0344
    人間(蒼)|18才|男性|猟撃士
  • 赤髪の勇士
    エヴァンス・カルヴィ(ka0639
    人間(紅)|29才|男性|闘狩人
  • 心の友(山猫団認定)
    天川 麗美(ka1355
    人間(紅)|20才|女性|機導師
  • 拓けし世界
    アレン=プレアール(ka1624
    人間(紅)|21才|男性|闘狩人
  • 大食らいの巨剣
    ルリ・エンフィールド(ka1680
    ドワーフ|14才|女性|闘狩人
  • 銀紫の蜘蛛
    守原 由有(ka2577
    人間(蒼)|22才|女性|機導師
  • ハートの“お嬢さま”
    ラブリ”アリス”ラブリーハート(ka2915
    人間(紅)|16才|女性|聖導士
  • 小さな望み
    シャトン(ka3198
    人間(蒼)|16才|女性|霊闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 作戦相談室!
守原 由有(ka2577
人間(リアルブルー)|22才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2014/09/22 17:06:50
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/09/18 03:50:24