ゲスト
(ka0000)
阿鼻叫喚のスパリゾート
マスター:小宮山

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 4日
- 締切
- 2014/09/21 19:00
- 完成日
- 2014/09/29 06:02
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「あの……いくらリニューアルオープンだからって、名前盛り過ぎじゃないですかね……?」
「いぃーのよぉゥ!! 多少大げさな方がお客さんも解っててくるんだからァ!!」
掲げられた看板には、ヤマダスパリゾートの文字がでかでかと書かれている。
数週間前。
すだれハゲの幸薄そうな中年男性が、リニューアルプロデューサーを名乗る、外見はどう見ても女性の、この「男」に、温泉施設の改装依頼を出した。
予算内で見違える様な外装、内装共に見違える様な仕上げとなった。
しかし、元が温泉旅館な為、敷地の広さだけはどうしようもなく。施設は男湯と女湯に別れた巨大な露天風呂のみである。
「元が温泉旅館なのに、スパリゾートっていうのはちょっと……」
「あーもゥ!! 解ったわよゥッ!! アタシがコネでお客呼んであげるから、その人達に感想聞いてみればいいんじゃないかしらッ?!」
「いや、お客はありがたいんですが、名前とはあまり関係な……あぁ……帰ってしまった。
「アタシも当日はお客としてくるからァ!!」
外から大きな声が聞こえ、ケバケバしい馬車が音を立てて走り去っていくのが解る。
「腕も確か、値段も安い。ネーミングセンスだけが難有りか……」
大きな溜息と共に応接室のソファへと腰をかけると、応接室の扉がノックされた。
「どうぞ……」
「お父さん、飲み物持ってきたよ。お客さんは帰っちゃった……?」
現れたのは給仕服を身に纏った実に可愛らしい主人の娘──ではなく、息子である。
「またお前、そんな格好をして……」
「給仕っていったらコレかなって。でも、可愛いでしょう?」
飲み物をテーブルに置いて、くるりと回ってみせる。
「確かに、可愛いけどな……」
どうしてこうなった。
そんな台詞ばかりが主人の脳裏に泳ぐばかりである。
いや、そんな事よりも。男の事だから、すぐに客を寄越すだろう。
「晶、大急ぎで掃除と客室の準備だ。団体客が来るらしいからな」
「解った!!」
輝く笑顔で返事をする息子の背を眺め、主人は再度心で呟いた。
「(──どうしてこうなった──)」
その後、ハンターオフィス前。
「ねークリス! プレオープンの感想が欲しいから温泉無料で報酬有りだって! 行ってみよーよ!!」
「んー、そうだなぁ。ここの所、色々あったし。たまにはゆっくりするか」
市場で買ったリンゴを齧りながら、クリス・アドレとティア・グラッジの二人は、先程渡されたチラシを眺めていた。
「それにしても奇麗な人だったね! チラシくれた人」
「バッカお前、アレは男だろ」
「えぇー!?」
騒々しい二人の話し声も、街の喧噪でかき消されていった──
「いぃーのよぉゥ!! 多少大げさな方がお客さんも解っててくるんだからァ!!」
掲げられた看板には、ヤマダスパリゾートの文字がでかでかと書かれている。
数週間前。
すだれハゲの幸薄そうな中年男性が、リニューアルプロデューサーを名乗る、外見はどう見ても女性の、この「男」に、温泉施設の改装依頼を出した。
予算内で見違える様な外装、内装共に見違える様な仕上げとなった。
しかし、元が温泉旅館な為、敷地の広さだけはどうしようもなく。施設は男湯と女湯に別れた巨大な露天風呂のみである。
「元が温泉旅館なのに、スパリゾートっていうのはちょっと……」
「あーもゥ!! 解ったわよゥッ!! アタシがコネでお客呼んであげるから、その人達に感想聞いてみればいいんじゃないかしらッ?!」
「いや、お客はありがたいんですが、名前とはあまり関係な……あぁ……帰ってしまった。
「アタシも当日はお客としてくるからァ!!」
外から大きな声が聞こえ、ケバケバしい馬車が音を立てて走り去っていくのが解る。
「腕も確か、値段も安い。ネーミングセンスだけが難有りか……」
大きな溜息と共に応接室のソファへと腰をかけると、応接室の扉がノックされた。
「どうぞ……」
「お父さん、飲み物持ってきたよ。お客さんは帰っちゃった……?」
現れたのは給仕服を身に纏った実に可愛らしい主人の娘──ではなく、息子である。
「またお前、そんな格好をして……」
「給仕っていったらコレかなって。でも、可愛いでしょう?」
飲み物をテーブルに置いて、くるりと回ってみせる。
「確かに、可愛いけどな……」
どうしてこうなった。
そんな台詞ばかりが主人の脳裏に泳ぐばかりである。
いや、そんな事よりも。男の事だから、すぐに客を寄越すだろう。
「晶、大急ぎで掃除と客室の準備だ。団体客が来るらしいからな」
「解った!!」
輝く笑顔で返事をする息子の背を眺め、主人は再度心で呟いた。
「(──どうしてこうなった──)」
その後、ハンターオフィス前。
「ねークリス! プレオープンの感想が欲しいから温泉無料で報酬有りだって! 行ってみよーよ!!」
「んー、そうだなぁ。ここの所、色々あったし。たまにはゆっくりするか」
市場で買ったリンゴを齧りながら、クリス・アドレとティア・グラッジの二人は、先程渡されたチラシを眺めていた。
「それにしても奇麗な人だったね! チラシくれた人」
「バッカお前、アレは男だろ」
「えぇー!?」
騒々しい二人の話し声も、街の喧噪でかき消されていった──
リプレイ本文
街中で配られていたチラシを手にしたハンター達が、集合時間に旅館、もとい。「山田スパリゾート」と掲げられた看板の前に集まっていた。
元はどこにでもある宿屋だった筈なのだが、今やイザベラの手によって南国リゾートを彷彿とさせる外観に仕上がっている。最早元の建物は骨組みしか残っていないのではなかろうかというレベルなのだが、ハンター達は知る由もない。
「これが『すぱりぞーと』というやつか。南国風とは手が込んでいるな……」
ロビーを見回してしきりにコクコクと頷きながら感心しているアルメイダ(ka2440)の横では、サーシャ・V・クリューコファ(ka0723)が俯いて呟いていた。
「……やってしまった……くっ」
支配人の名前をチラシで見たサーシャはてっきり和風旅館だと思っていた様で、建物を見た瞬間に後悔していた。和装でバッチリ決めて来たのだが、目の前にはヤシの木が似合いそうな南国アジアンリゾートである。
後ろに現れた影が、ふるふると震えるサーシャの頭をポンポンと撫でる。
「似合ってるからいいじゃない。可愛いわよ? 楽しみよねーv 露天風呂にお料理、地酒、それにお・と・k──」
「ほへぇ…こう言う所来るのは初めてっすよ! 何時も大体、適当な所で水浴びだったっすからねぇ…楽しみっすっ!」
「タダメシ目的で金策しに来ました」
カミーユ・鏑木(ka2479)の一部気になる発言が、エステラ・クルース(ka1104)の元気な声にかき消され、更に最上 風(ka0891)の不穏な呟きが続く。
「…まぁアレよ、しっかり楽しんじゃいましょうv」
各々腹に一物抱えていたりする物も居る様だが、ハンター達は山田スパリゾートの受付へと向かっていった。
「あらァ! 来てくれたのねェ! 待ってたわ!」
まずハンター達をやけにハスキーな声で出迎えたのは、彼らにチラシを配って回っていた女性……に見えている物も多いかもしれないが、漢イザベラである。勿論性別を明かしたりはしていない。
「なにこれ超アタシ得! 評価ははじめっからリアルブルー温泉スパ最高よもう! 100点!」
ティラ・ンダイハ(ka2699)が目を輝かせながら爽やかな内装を見回し応えるのだが、イザベラがそれに言葉を返す。
「うぅーん……施工した立場として、見た目でそういってもらえるのは嬉しいんだけどォ……ちゃんと実際にこの施設の評価は体験してからつけてくれなきゃ、ダ・メv」
バチィーン☆ と音がしそうなウィンクと共にティラの唇に人差し指をあて、妖艶な笑みを見せる。
「スパリゾート……旅館の事か」
同じくキョロキョロと周囲を見回していたルイ・シュヴァリエ(ka1106)は、子猫の様に纏わり付くエステラを去なしながら呟く。この手の話には珍しく只一人の男性客である。
フロントの呼び鈴を鳴らすと、奥から支配人であろう中年男性が現れた。
「遠い所、ようこそいらっしゃいました。ご不便をおかけするかもしれませんが、ゆっくり楽しんでいって下さい。案内はこちらの晶がさせていただきますので、御用がありましたら何なりと仰って下さいませ」
定型文の様な挨拶をしながら、すだれハゲの支配人の横に歩み出たのは、息子の晶。ちなみに服装は給仕服。所謂メイド服である。
「今回お客様の案内役を預からせていただきます。山田晶です。 それでは、みなさんお部屋の方へ案内致しますね。その後すぐ温泉となります。準備がお済みになられましたら私にお声かけ下さいね」
小首を傾げながら花の咲く様な笑顔で接客対応をする晶は、端から見れば間違いなく美少女である。しかも親が息子と紹介しない上に自身も生別を明かさないあたり、軽い闇を感じるのだが、それもハンター達には解らない事である。
「さて、行くわよ! お風呂があたし達を待ってるわ!」
カミーユが近くにある民芸品の像に語りかけている姿を見て、ルイが聞く。
「カミーユ、誰と話してるんだ……?」
「あら。もう一人居たと思ったんだけど……気のせいかしら……ヤダ、あたしったら」
軽く自己完結した後、ルイの肩を軽く叩いて晶の方へ向かうカミーユ。彼は晶の性別に気がついている様だが、口には出さず親しげに会話をしている。
そんな姿を目で追っていたルイの後ろから、エステラが戯れ付く。
「さぁさ! ルイ兄、お風呂行くっすよー! ……とと、その前に」
エステルはルイに戯れ付いたかと思うと、直ぐさま晶の方へと駆け寄り、用意した卵を温泉卵にしたい事を伝える。
「すみません……源泉が直接湯船に来ている訳ではないので、浴室で作る事は出来ませんね……後、お酒くらいならいいのですけど、衛生的な面でも食べ物はちょっとご遠慮頂きたいのです」
「そうっすかー……」
しゅんとして落ち込むエステラの顔を見て、慌てて晶が付け足す。
「あ、卵をこちらでお預かりして、皆さんがお風呂に入っていらっしゃる間に温泉卵を作っておく事は出来ますけど──」
「じゃあ、宜しくお願いするっす!」
エステラのコロコロと変わるテンションについていくのがやっとな感じで、晶が差し出された卵を受け取った。
「ところであたし、どっちに入れば良いのかしら?」
さあ、入浴といった所で、カミーユが当面の疑問に突き当たる。
「カミーユさんは男性でいらっしゃるんですよね? じゃあ、男湯で──」
晶が応えたのだが、カミーユの目線がルイを舐める様に動く。
「身の危険を感じる……」
「…あたしゲイだけど本当に良いの!? じゃあ一緒に入る事になるわね、ルイちゃんv」
そのやり取りを「いいなー」と言いたげな視線で眺めるエステラ。ちなみに先程ルイと一緒に男湯に向かって放り出された所だ。
●女湯にて
女湯前では既に他のメンバーが浴場に入っていった所で、エステラが首を傾げていた。
「んー、でもこういう所、来た事ないっすし……ぁ……晶さんみっけ!」
「わっ! エステラさん、どうかなさいましたか?」
温泉卵の仕込みが終わったのか、フロントの方へ向かおうとしていた晶を呼び止める。
「あたし、温泉の作法とかわかんないっすから、晶さん一緒に入って教えて欲しいんっす!」
ぐいぐいと晶を脱衣所に引っ張り込み、手早くスポポーンと服を脱ぎ捨てるエステラ。
「あ、いえ、その、ボク──」
「さあさあ!」
「すいません!! ボク、男なんです!!」
真っ赤になってぽろぽろと涙を流しながら走り去る晶と、裸で固まるエステラ。
走り去る姿は正に乙女だった。
「えええええええええええええええ?!」
悲鳴ではなく盛大な疑問符が浴場に響いたのはそれから数十秒後の事だった。
「どうしたの? エステラちゃん。おっきい声だったけど?」
ティラに何があったのかを早口で告げると──
エステラを笑いながら、手を引いて浴場へと連れて行った。
「大丈夫よ、アタシがちゃんと教えてあげるから」
それと入れ違いに最上が浴場から上がろうとする。
「どうした? 忘れ物か?」
アルメイダが最上に問いかけると、最上はくるりと振り向いて大真面目に言い放つ。
「浴場の視察は終わったので、次はタダメ……施設内の見学に行ってきます」
「ず、ずいぶん早いんだな……」
最上の背中を見送りながら、アルメイダは再び湯船に身体を沈める。すると、鼻歌が聞こえて来た。音を辿ると、そこにはサーシャ。
竪琴の演奏を嗜むアルメイダは、その鼻歌に合わせて、頭の中で伴奏をつけていった。
「男女の間に壁があるって切ないわよね──」
と言いながらティラは板壁をチェックし始める。
「? なにやってるんっすか?」
エステラが首を傾げてティラに問うと、ティラが目を輝かせて応えた。
「鏑木ちゃんとルイ君の二人の急接近が超気になっちゃってねー……覗きスポットが無いかなーって」
「ソレはあたしも気になるっす!!」
ティラとはまた違う気になり方の様だが、やる事は変わらない。一般的な此の様なイベントでは男女が逆の様な気もするのだが、コレはコレで新鮮である。
──その時。
男湯から怒号が聞こえて来たかと思うと、大きな音を立てて仕切り壁が破壊されたのだった。
●幕間
フロント前で風呂上がりの最上が支配人こと山田繁氏を呼び止める。
「支配人さん、支配人さん」
「はい、何でしょう?」
「コーヒー牛乳は無いのですか?」
「牛乳ならあるのですけど……お作りしましょうか?」
「是非。手作りはポイント高いです」
最上のリクエストにフロント横のバーカウンターでコーヒー牛乳を作り始める支配人。
その姿を見ながら最上が更に話しかける。
「名物的な物を用意してはどうですか? 夜になったら花火を打ち上げてみたり」
「うーん……ウチは山の中ですからね……打ち上げる花火は山火事にもなりかねませんので──」
ショットバーのマスターと客の様な繁氏と最上の意見のやり取りは続く──
●ちょっと前の男湯
なるべくカミーユと距離を取ろうとしたルイは、さっさと支度を済ませると浴場へ。
カミーユは漢女の恥じらいを見せたのか、準備に手間取っている様だった。
「ふぅ……」
軽く身体を洗い、かけ湯をしていると、背後より人の近付く気配。カミーユだった。
水着の着用はNGとの事だったため、タオルで身体を隠すのだが……何故か胸から縦に身体を隠すカミーユ。セクシーである。
「お・ま・たv あら、背中流してあげるわよv」
軽くしなを作りながらルイの背中を優しくタ泡立てたタオルで洗おうとすると、ルイは慌てて湯船に逃げ込もうとする。
「なーに? そんなに警戒しちゃってもう! 何にもしないわよ──」
と言いながらもにじり寄るカミーユ。そして後ずさるルイ。
「そんなにあたしがコ・ワ・イ?」
カミーユがふぅっとルイの耳元に息を吹きかけると、ルイの全身に鳥肌が浮き出した。
「俺に……近寄るなぁ!」
全力でカミーユを突き飛ばしたその先には板壁が。そう、お約束の展開である。
突き飛ばされたカミーユは、片手にタオルを握りしめてうっとりとした顔で飛んで行く。その視線はルイの身体に釘付けである。そして手に握ったタオルは、カミーユの物ではない。ルイの腰に巻いていたソレだった。
●そして、混浴へ
盛大な音を立てて崩れ落ちた板壁。
そして唖然とその方向を向く女性陣。
更に両手を突き出し、カミーユを突き飛ばした格好で一糸纏わぬ姿のルイ。
「ぁ……失礼」
女性陣からの盛大な叫び声が上がるかと思われたのだが、何故か一番恥じらいを見せたのはルイだった。
「今の音は何……ってああ……壁、壊れてるな」
「カミーユが飛んで来たという事は、何が起こったのかすぐ解るな……」
サーシャとアルメイダ。二人とも自身に魅力が無いと悟った様に考えている為、タオルを巻く等恥じらいはする物の、声を上げる事は無い。
「ぁ、ルイ兄だー、やっぱり一緒に入ってくれる気n…ほべぶ!?」
最初から一緒に入りたかったエステラは、嬉々としてルイに駆け寄る──が、慌てて湯船に身を沈めたルイから盛大にお湯をぶっかけられた。
只一人一般的な女性らしい反応──っぽい物を見せたのは、ティラ。
きゃーきゃーと声を上げているのだが、どこかわざとらしい。というか、目を塞いでいる手、指の隙間が大きすぎやしませんか?
お約束とばかりに力一杯投げた手桶が、背を向けたルイの後頭部にヒットする。
後頭部に鈍痛を感じながらも、ルイの口元は少しだけ緩んでいた。少しだけ。
「何の音ですか?!」
「やァだ! アタシの作った内装、ボロボロになってるじゃなァい!!」
騒ぎ……は起こらなかったので、板壁の崩れる音で晶とイザベラが慌てて駆け込んでくる。
そして見事に破壊された板壁を見て溜息をついた。
「……いや、その……すまない……」
ルイが謝罪をすると、今まで沈んでいたカミーユが突然大きな水音を立てて立ち上がる。
「ううん! ルイちゃんだけが悪いんじゃないの! あたしも悪いの!!」
「どうしましょう……」
困惑する晶の横で何やら考えていたイザベラは、何かを思い付いた様に顔を上げた。
「そうよ! 混浴を売りにしちゃえば良いのよォ!!」
「……はい?」
「修繕にもお金かかるでしょ? 混浴にしちゃえば、お金もかからないし、名物にもなるって訳! アタシ冴えてるわァ!!」
「そ、そこはお父さんと相談して下さいね……」
「オッケ、任せておいて! ……ソレはおいておいて。でもやっぱりアタシが頑張って作った内装を壊されちゃったのは、悲しいわァ……」
ルイを責める様な眼差し。それは獲物を狙う肉食獣の様な輝き。
「アタシと洗いっこしてくれたら許してア・ゲ・ル」
「あたしも洗いっこしたーい!」
「あたしもっすー!!」
イザベラが加わった事によって、阿鼻叫喚の様相が激しくなり、ルイの受難はまだ暫く続く事となった──
●幕間其の二
コーヒー牛乳を飲みながら、繁氏に話しかける最上。
「男湯から壁に触ると、高圧電流が流れるとかどうですか?」
「人死にが出ちゃいますね……」
「じゃあ、食事前に軽食をお願いします。一番高い物から出して下さい。勿論経費で落とします」
「お手柔らかにお願いしますね……」
引き攣った笑みでカウンター内で軽食を作り始める繁氏。頑張れ。超頑張れ。
●温泉後のピンポンバトル
「支配人さん連れて来たっすよー!」
エステラの元気な声が遊戯室に響く。
少し前まではほてった身体を休める為に、サーシャのリュートとアルメイダの竪琴によるセッションが行われていた。
サーシャの穏やかな歌が未完なのが少し残念だったが、皆で飲み物を傾けながら聞き入っていた。
「いよぉーっし! 繁さん、晶ちゃん、勝負よ!!」
既に卓球台の前で臨戦態勢になっているのはティラとカミーユ。浴衣もはだけてお色気プレイの準備もバッチリである。勿論カミーユもお色気準備はバッチリだ。
「そんじゃはじめるっすよー! ルールは適当! みんな頑張るっす! 繁さんサーブからっすー!」
ボールを受け取った繁氏、ゆっくりとボールをトスしたかと思うと……「パキャッ」という音と共に、ハンターチームの背後へボールが瞬間移動した様に見えた。
「昔、少し鳴らしましてね……」
揺らめく身体、揺らめくすだれハゲ。この親父、ただ者じゃない。
「上等! あたし達も負けてないんだからね! 鏑木ちゃん、ハンターの底力みせてやんないとね!!」
「ふふっ──南米の黒豹と呼ばれた実力、見せてあげる!」
しっとりとした演奏会から、卓球大会へ。
後には楽しみな食事だって待っている。
ちょっとしたハプニングはあったが、これだけ楽しめるのなら成功ではなかろうか。
名前は、ちょっとおいておくとして。
元はどこにでもある宿屋だった筈なのだが、今やイザベラの手によって南国リゾートを彷彿とさせる外観に仕上がっている。最早元の建物は骨組みしか残っていないのではなかろうかというレベルなのだが、ハンター達は知る由もない。
「これが『すぱりぞーと』というやつか。南国風とは手が込んでいるな……」
ロビーを見回してしきりにコクコクと頷きながら感心しているアルメイダ(ka2440)の横では、サーシャ・V・クリューコファ(ka0723)が俯いて呟いていた。
「……やってしまった……くっ」
支配人の名前をチラシで見たサーシャはてっきり和風旅館だと思っていた様で、建物を見た瞬間に後悔していた。和装でバッチリ決めて来たのだが、目の前にはヤシの木が似合いそうな南国アジアンリゾートである。
後ろに現れた影が、ふるふると震えるサーシャの頭をポンポンと撫でる。
「似合ってるからいいじゃない。可愛いわよ? 楽しみよねーv 露天風呂にお料理、地酒、それにお・と・k──」
「ほへぇ…こう言う所来るのは初めてっすよ! 何時も大体、適当な所で水浴びだったっすからねぇ…楽しみっすっ!」
「タダメシ目的で金策しに来ました」
カミーユ・鏑木(ka2479)の一部気になる発言が、エステラ・クルース(ka1104)の元気な声にかき消され、更に最上 風(ka0891)の不穏な呟きが続く。
「…まぁアレよ、しっかり楽しんじゃいましょうv」
各々腹に一物抱えていたりする物も居る様だが、ハンター達は山田スパリゾートの受付へと向かっていった。
「あらァ! 来てくれたのねェ! 待ってたわ!」
まずハンター達をやけにハスキーな声で出迎えたのは、彼らにチラシを配って回っていた女性……に見えている物も多いかもしれないが、漢イザベラである。勿論性別を明かしたりはしていない。
「なにこれ超アタシ得! 評価ははじめっからリアルブルー温泉スパ最高よもう! 100点!」
ティラ・ンダイハ(ka2699)が目を輝かせながら爽やかな内装を見回し応えるのだが、イザベラがそれに言葉を返す。
「うぅーん……施工した立場として、見た目でそういってもらえるのは嬉しいんだけどォ……ちゃんと実際にこの施設の評価は体験してからつけてくれなきゃ、ダ・メv」
バチィーン☆ と音がしそうなウィンクと共にティラの唇に人差し指をあて、妖艶な笑みを見せる。
「スパリゾート……旅館の事か」
同じくキョロキョロと周囲を見回していたルイ・シュヴァリエ(ka1106)は、子猫の様に纏わり付くエステラを去なしながら呟く。この手の話には珍しく只一人の男性客である。
フロントの呼び鈴を鳴らすと、奥から支配人であろう中年男性が現れた。
「遠い所、ようこそいらっしゃいました。ご不便をおかけするかもしれませんが、ゆっくり楽しんでいって下さい。案内はこちらの晶がさせていただきますので、御用がありましたら何なりと仰って下さいませ」
定型文の様な挨拶をしながら、すだれハゲの支配人の横に歩み出たのは、息子の晶。ちなみに服装は給仕服。所謂メイド服である。
「今回お客様の案内役を預からせていただきます。山田晶です。 それでは、みなさんお部屋の方へ案内致しますね。その後すぐ温泉となります。準備がお済みになられましたら私にお声かけ下さいね」
小首を傾げながら花の咲く様な笑顔で接客対応をする晶は、端から見れば間違いなく美少女である。しかも親が息子と紹介しない上に自身も生別を明かさないあたり、軽い闇を感じるのだが、それもハンター達には解らない事である。
「さて、行くわよ! お風呂があたし達を待ってるわ!」
カミーユが近くにある民芸品の像に語りかけている姿を見て、ルイが聞く。
「カミーユ、誰と話してるんだ……?」
「あら。もう一人居たと思ったんだけど……気のせいかしら……ヤダ、あたしったら」
軽く自己完結した後、ルイの肩を軽く叩いて晶の方へ向かうカミーユ。彼は晶の性別に気がついている様だが、口には出さず親しげに会話をしている。
そんな姿を目で追っていたルイの後ろから、エステラが戯れ付く。
「さぁさ! ルイ兄、お風呂行くっすよー! ……とと、その前に」
エステルはルイに戯れ付いたかと思うと、直ぐさま晶の方へと駆け寄り、用意した卵を温泉卵にしたい事を伝える。
「すみません……源泉が直接湯船に来ている訳ではないので、浴室で作る事は出来ませんね……後、お酒くらいならいいのですけど、衛生的な面でも食べ物はちょっとご遠慮頂きたいのです」
「そうっすかー……」
しゅんとして落ち込むエステラの顔を見て、慌てて晶が付け足す。
「あ、卵をこちらでお預かりして、皆さんがお風呂に入っていらっしゃる間に温泉卵を作っておく事は出来ますけど──」
「じゃあ、宜しくお願いするっす!」
エステラのコロコロと変わるテンションについていくのがやっとな感じで、晶が差し出された卵を受け取った。
「ところであたし、どっちに入れば良いのかしら?」
さあ、入浴といった所で、カミーユが当面の疑問に突き当たる。
「カミーユさんは男性でいらっしゃるんですよね? じゃあ、男湯で──」
晶が応えたのだが、カミーユの目線がルイを舐める様に動く。
「身の危険を感じる……」
「…あたしゲイだけど本当に良いの!? じゃあ一緒に入る事になるわね、ルイちゃんv」
そのやり取りを「いいなー」と言いたげな視線で眺めるエステラ。ちなみに先程ルイと一緒に男湯に向かって放り出された所だ。
●女湯にて
女湯前では既に他のメンバーが浴場に入っていった所で、エステラが首を傾げていた。
「んー、でもこういう所、来た事ないっすし……ぁ……晶さんみっけ!」
「わっ! エステラさん、どうかなさいましたか?」
温泉卵の仕込みが終わったのか、フロントの方へ向かおうとしていた晶を呼び止める。
「あたし、温泉の作法とかわかんないっすから、晶さん一緒に入って教えて欲しいんっす!」
ぐいぐいと晶を脱衣所に引っ張り込み、手早くスポポーンと服を脱ぎ捨てるエステラ。
「あ、いえ、その、ボク──」
「さあさあ!」
「すいません!! ボク、男なんです!!」
真っ赤になってぽろぽろと涙を流しながら走り去る晶と、裸で固まるエステラ。
走り去る姿は正に乙女だった。
「えええええええええええええええ?!」
悲鳴ではなく盛大な疑問符が浴場に響いたのはそれから数十秒後の事だった。
「どうしたの? エステラちゃん。おっきい声だったけど?」
ティラに何があったのかを早口で告げると──
エステラを笑いながら、手を引いて浴場へと連れて行った。
「大丈夫よ、アタシがちゃんと教えてあげるから」
それと入れ違いに最上が浴場から上がろうとする。
「どうした? 忘れ物か?」
アルメイダが最上に問いかけると、最上はくるりと振り向いて大真面目に言い放つ。
「浴場の視察は終わったので、次はタダメ……施設内の見学に行ってきます」
「ず、ずいぶん早いんだな……」
最上の背中を見送りながら、アルメイダは再び湯船に身体を沈める。すると、鼻歌が聞こえて来た。音を辿ると、そこにはサーシャ。
竪琴の演奏を嗜むアルメイダは、その鼻歌に合わせて、頭の中で伴奏をつけていった。
「男女の間に壁があるって切ないわよね──」
と言いながらティラは板壁をチェックし始める。
「? なにやってるんっすか?」
エステラが首を傾げてティラに問うと、ティラが目を輝かせて応えた。
「鏑木ちゃんとルイ君の二人の急接近が超気になっちゃってねー……覗きスポットが無いかなーって」
「ソレはあたしも気になるっす!!」
ティラとはまた違う気になり方の様だが、やる事は変わらない。一般的な此の様なイベントでは男女が逆の様な気もするのだが、コレはコレで新鮮である。
──その時。
男湯から怒号が聞こえて来たかと思うと、大きな音を立てて仕切り壁が破壊されたのだった。
●幕間
フロント前で風呂上がりの最上が支配人こと山田繁氏を呼び止める。
「支配人さん、支配人さん」
「はい、何でしょう?」
「コーヒー牛乳は無いのですか?」
「牛乳ならあるのですけど……お作りしましょうか?」
「是非。手作りはポイント高いです」
最上のリクエストにフロント横のバーカウンターでコーヒー牛乳を作り始める支配人。
その姿を見ながら最上が更に話しかける。
「名物的な物を用意してはどうですか? 夜になったら花火を打ち上げてみたり」
「うーん……ウチは山の中ですからね……打ち上げる花火は山火事にもなりかねませんので──」
ショットバーのマスターと客の様な繁氏と最上の意見のやり取りは続く──
●ちょっと前の男湯
なるべくカミーユと距離を取ろうとしたルイは、さっさと支度を済ませると浴場へ。
カミーユは漢女の恥じらいを見せたのか、準備に手間取っている様だった。
「ふぅ……」
軽く身体を洗い、かけ湯をしていると、背後より人の近付く気配。カミーユだった。
水着の着用はNGとの事だったため、タオルで身体を隠すのだが……何故か胸から縦に身体を隠すカミーユ。セクシーである。
「お・ま・たv あら、背中流してあげるわよv」
軽くしなを作りながらルイの背中を優しくタ泡立てたタオルで洗おうとすると、ルイは慌てて湯船に逃げ込もうとする。
「なーに? そんなに警戒しちゃってもう! 何にもしないわよ──」
と言いながらもにじり寄るカミーユ。そして後ずさるルイ。
「そんなにあたしがコ・ワ・イ?」
カミーユがふぅっとルイの耳元に息を吹きかけると、ルイの全身に鳥肌が浮き出した。
「俺に……近寄るなぁ!」
全力でカミーユを突き飛ばしたその先には板壁が。そう、お約束の展開である。
突き飛ばされたカミーユは、片手にタオルを握りしめてうっとりとした顔で飛んで行く。その視線はルイの身体に釘付けである。そして手に握ったタオルは、カミーユの物ではない。ルイの腰に巻いていたソレだった。
●そして、混浴へ
盛大な音を立てて崩れ落ちた板壁。
そして唖然とその方向を向く女性陣。
更に両手を突き出し、カミーユを突き飛ばした格好で一糸纏わぬ姿のルイ。
「ぁ……失礼」
女性陣からの盛大な叫び声が上がるかと思われたのだが、何故か一番恥じらいを見せたのはルイだった。
「今の音は何……ってああ……壁、壊れてるな」
「カミーユが飛んで来たという事は、何が起こったのかすぐ解るな……」
サーシャとアルメイダ。二人とも自身に魅力が無いと悟った様に考えている為、タオルを巻く等恥じらいはする物の、声を上げる事は無い。
「ぁ、ルイ兄だー、やっぱり一緒に入ってくれる気n…ほべぶ!?」
最初から一緒に入りたかったエステラは、嬉々としてルイに駆け寄る──が、慌てて湯船に身を沈めたルイから盛大にお湯をぶっかけられた。
只一人一般的な女性らしい反応──っぽい物を見せたのは、ティラ。
きゃーきゃーと声を上げているのだが、どこかわざとらしい。というか、目を塞いでいる手、指の隙間が大きすぎやしませんか?
お約束とばかりに力一杯投げた手桶が、背を向けたルイの後頭部にヒットする。
後頭部に鈍痛を感じながらも、ルイの口元は少しだけ緩んでいた。少しだけ。
「何の音ですか?!」
「やァだ! アタシの作った内装、ボロボロになってるじゃなァい!!」
騒ぎ……は起こらなかったので、板壁の崩れる音で晶とイザベラが慌てて駆け込んでくる。
そして見事に破壊された板壁を見て溜息をついた。
「……いや、その……すまない……」
ルイが謝罪をすると、今まで沈んでいたカミーユが突然大きな水音を立てて立ち上がる。
「ううん! ルイちゃんだけが悪いんじゃないの! あたしも悪いの!!」
「どうしましょう……」
困惑する晶の横で何やら考えていたイザベラは、何かを思い付いた様に顔を上げた。
「そうよ! 混浴を売りにしちゃえば良いのよォ!!」
「……はい?」
「修繕にもお金かかるでしょ? 混浴にしちゃえば、お金もかからないし、名物にもなるって訳! アタシ冴えてるわァ!!」
「そ、そこはお父さんと相談して下さいね……」
「オッケ、任せておいて! ……ソレはおいておいて。でもやっぱりアタシが頑張って作った内装を壊されちゃったのは、悲しいわァ……」
ルイを責める様な眼差し。それは獲物を狙う肉食獣の様な輝き。
「アタシと洗いっこしてくれたら許してア・ゲ・ル」
「あたしも洗いっこしたーい!」
「あたしもっすー!!」
イザベラが加わった事によって、阿鼻叫喚の様相が激しくなり、ルイの受難はまだ暫く続く事となった──
●幕間其の二
コーヒー牛乳を飲みながら、繁氏に話しかける最上。
「男湯から壁に触ると、高圧電流が流れるとかどうですか?」
「人死にが出ちゃいますね……」
「じゃあ、食事前に軽食をお願いします。一番高い物から出して下さい。勿論経費で落とします」
「お手柔らかにお願いしますね……」
引き攣った笑みでカウンター内で軽食を作り始める繁氏。頑張れ。超頑張れ。
●温泉後のピンポンバトル
「支配人さん連れて来たっすよー!」
エステラの元気な声が遊戯室に響く。
少し前まではほてった身体を休める為に、サーシャのリュートとアルメイダの竪琴によるセッションが行われていた。
サーシャの穏やかな歌が未完なのが少し残念だったが、皆で飲み物を傾けながら聞き入っていた。
「いよぉーっし! 繁さん、晶ちゃん、勝負よ!!」
既に卓球台の前で臨戦態勢になっているのはティラとカミーユ。浴衣もはだけてお色気プレイの準備もバッチリである。勿論カミーユもお色気準備はバッチリだ。
「そんじゃはじめるっすよー! ルールは適当! みんな頑張るっす! 繁さんサーブからっすー!」
ボールを受け取った繁氏、ゆっくりとボールをトスしたかと思うと……「パキャッ」という音と共に、ハンターチームの背後へボールが瞬間移動した様に見えた。
「昔、少し鳴らしましてね……」
揺らめく身体、揺らめくすだれハゲ。この親父、ただ者じゃない。
「上等! あたし達も負けてないんだからね! 鏑木ちゃん、ハンターの底力みせてやんないとね!!」
「ふふっ──南米の黒豹と呼ばれた実力、見せてあげる!」
しっとりとした演奏会から、卓球大会へ。
後には楽しみな食事だって待っている。
ちょっとしたハプニングはあったが、これだけ楽しめるのなら成功ではなかろうか。
名前は、ちょっとおいておくとして。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/09/17 21:09:34 |
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相談卓 最上 風(ka0891) 人間(リアルブルー)|10才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2014/09/21 16:29:20 |