ゲスト
(ka0000)
【神森】神隠し
マスター:雪村彩人

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 8日
- 締切
- 2016/11/20 09:00
- 完成日
- 2016/12/03 15:52
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
樹上から舞い降りてきたのは人間ではなかった。
しなやかな体躯。人間離れした美貌。尖った耳。――エルフであった。
が、そのことに少年は気づかなかったろう。音もなく舞い降りたエルフが素早く少年の腹に当身をくらわせたからだ。
少年の名はアンディ。遠くまで遊びにいくなと親から注意されていたが、子供がきくはずもない。それが間違いであった。
くたりとなった少年を抱き、エルフは走り出した。やがてたどり着いたのは森の奥の洞窟だ。
樹上の見張りに合図すると、エルフは洞窟に歩み寄っていった。
中は薄暗い。所々に篝火がおかれてあった。
エルフは奥に進んだ。三十メートルほど。そこは広い空間になっていた。二人のエルフが立っている。足元には十数人の子供が転がされていた。全員縄で縛られている。
「一人、さらってきた」
告げると、エルフは子供をおろした。
「他の連中は?」
「お前と同じだ。近くの村の子供を拐いにいった。もうすぐ戻るだろう」
別のエルフがこたえた。すると三人めのエルフがニヤリとした。
「かなり集まったな」
「まだ儀式には足りん」
二人めのエルフがいうと、アンディをさらってきたエルフがこたえた。
「が、一度エルフハイムに連れて行った方がよかろう。今宵は月もない。ちょうどいい」
●
木の陰。
じっと潜む者があった。ハンターである。エルフの行動に不審を覚え、後をつけてきたのであった。
その時、洞窟の入口からエルフが出てきた。そして樹上にむかって声を発した。今宵、ここを発つと。
刹那、ハンターの脳裏に蘇ったものがある。神隠しの噂だ。
「……そういうことか」
背を返すと、ハンターは駆け出した。
樹上から舞い降りてきたのは人間ではなかった。
しなやかな体躯。人間離れした美貌。尖った耳。――エルフであった。
が、そのことに少年は気づかなかったろう。音もなく舞い降りたエルフが素早く少年の腹に当身をくらわせたからだ。
少年の名はアンディ。遠くまで遊びにいくなと親から注意されていたが、子供がきくはずもない。それが間違いであった。
くたりとなった少年を抱き、エルフは走り出した。やがてたどり着いたのは森の奥の洞窟だ。
樹上の見張りに合図すると、エルフは洞窟に歩み寄っていった。
中は薄暗い。所々に篝火がおかれてあった。
エルフは奥に進んだ。三十メートルほど。そこは広い空間になっていた。二人のエルフが立っている。足元には十数人の子供が転がされていた。全員縄で縛られている。
「一人、さらってきた」
告げると、エルフは子供をおろした。
「他の連中は?」
「お前と同じだ。近くの村の子供を拐いにいった。もうすぐ戻るだろう」
別のエルフがこたえた。すると三人めのエルフがニヤリとした。
「かなり集まったな」
「まだ儀式には足りん」
二人めのエルフがいうと、アンディをさらってきたエルフがこたえた。
「が、一度エルフハイムに連れて行った方がよかろう。今宵は月もない。ちょうどいい」
●
木の陰。
じっと潜む者があった。ハンターである。エルフの行動に不審を覚え、後をつけてきたのであった。
その時、洞窟の入口からエルフが出てきた。そして樹上にむかって声を発した。今宵、ここを発つと。
刹那、ハンターの脳裏に蘇ったものがある。神隠しの噂だ。
「……そういうことか」
背を返すと、ハンターは駆け出した。
リプレイ本文
●
「夜陰に紛れて人さらいとはエルフも地に落ちたものよの」
闇に黒々とした木陰から声が忍び出た。
声の主は女だ。十三歳どに見える。右目に眼帯をつけたドワーフであった。
ミグ・ロマイヤー(ka0665)という名のその女は右の拳を握りしめた。ギシギシと異音がする。義手なのであった。
「エルフってそんなにアクティブだったかねえ……」
ソレル・ユークレース(ka1693)という名の若者が首をひねった。どこかとぼけた雰囲気のある男だ。それでも精悍さをあわせもっているのは彼が傭兵であるからで。そのソレルはかつてエルフの集落で暮らしたことがあった。
「俺の知るエルフっていうのは……こう物静かで穏やかで……。いや、割とアクティブだったわ」
ソレルは傍らの男を見た。二十歳ほど。ぞくりとするほどの美貌の持ち主だ。
リュンルース・アウイン(ka1694)。エルフの若者だ。
視線を戻すと、ソレルは続けた。
「ま、今のは冗談として、エルフも人間もそんなに違ってるようには思わんがね。ただなあ、何の罪も無い子供を利用しようってのは気にいらねえな?」
「しかし、何故エルフが……?」
リュンルースもまた首を傾げた。
「エルフハイムは不可侵条約を破棄したわけではない……はず。人の中で暮らしていても、エルフハイムに大きな動きがあればわかるものだし……」
わからない。リュンワースは声を途切れさせた。
「何を企んでるんだか知らないが」
闇の中、淡々とした声がながれた。声の主は十八歳の少年。クラン・クィールス(ka6605)という。
「子供は親と……家族と、一緒にあるべきだ。……返してもらうぜ」
クランは独語した。その瞳に一瞬閃いたのは孤独の光だ。
誰も知らぬことであったが、彼は数年前に家族を歪虚の襲撃で失っていた。その後、クランは親戚に引き取られたのだが、馴染めず、独り彼は出奔した。だから、思う。子供は、やはり家族とともに在るべきだと。
「エルフのことだけれど……」
ふと思いついたように女が口を開いた。二十代半ばほどで、鋭い目の持ち主だ。
女――マリィア・バルデス(ka5848)は冷徹な声音で続けた。
「一人は生かしておかなければね。聞き出したいことがあるから」
「確かに聞きたいことはたくさんあるけれど」
辛そうにリアリュール(ka2003)という名の少女は口を開いた。妖精めいた美少女だ。彼女もまたエルフであった。
「けれど話してくれるかしら。今回の犯人たちの組織やボス、理由と目的と、他に仲間がどれだけいて何してるかとか……何より、攫った子らをどこに連れて行っているのか等、知りたいことはたくさんあるけれど」
「吐かなければ、吐かせるまでよ」
マリィアの碧の瞳が冷たく光った。さすがにリアリュールの顔色が変わった。
「それは……暴力で訊きだすということ?」
「そうよ。よその国から子供を浚う軍事工作員に人権なんてあるとは思えないわ。どんな手を使ってでも必要なことは訊きだす。でも、まあ死兵は困るし、情報は欲しいから、降伏手段はとりあえず残すわ」
「そう」
リアリュースは声をとぎれさせた。
彼女はハンターの立場でいられることを良しとしなくてはと思っている。森都と帝国の両方の情報が得られるし、何が正しいのか客観的に考えることができるからであった。今回もリアリュースはできるだけ公平な立場で臨もうとかんがえている。
その時だ。
「あっ」
アリア(ka2394)という名の少女が痛みに顔をしかめた。怪我をしているのである。
大丈夫か、と声をかけたのは、全身を鎧で包んだ巨漢であった。その鎧はかなりの重量であるばなのに、それを感じさせない身ごなしの軽さがある。――ユルゲンス・クリューガー(ka2335)という。
ユルゲンスは元帝国軍人で、小隊長として騎兵隊を率いていた。その過去故か、どうしても気になるのだ。仲間の体調が。
「怪我をしているようだが」
「うん」
アリアはうなずくと、
「痛いけど……供達はもっと怖いはず。見過ごすことなんてできないよ!」
「ふむ、では征くとしよう」
戦馬にまたがると、ユルゲンスは腹を蹴った。
●
「……あれか」
木陰からリュンルースは顔を覗かせた。
やや離れた樹上。潜む影があった。見張りのエルフだろう。
ちらりとリュンルースは視線を動かした。闇の中、ソレルが潜んでいるはずである。
「いつもならソル(ka1693)と動くけれど、今回は別々だな。あまり無茶しなければいいのだけれど……」
つぶやくと、リュンルースはライトの光を上げた。無論、エルフは気づいた。
銃声。リュンルースの肩に激痛がはしった。
「正確な射撃だな」
「派手にいこう」
ユルゲンスが突撃した。見張りのエルフが再び射撃。
キンッ。
弾丸がはじかれた。ユルゲンスの鎧によって。
ソリッドハート。頭の先からつま先まで、全身を覆うプレートアーマーだ。『堅牢な心』の名を冠し、最高の防御力をそのままに、可能な限りの軽量化が試みられている代物であった。そう簡単に銃弾は通らない。
馬をとめると、ユルゲンスは叫んだ。
「帝国に仇為す不遜なるエルフ共、我が剣で叩き斬ってくれるわ!」
その時だ。洞窟の入口に四つの人影が現れた。エルフだ。手に銃、背に剣を負っている。
「……知られた上は生かしては帰せぬ。殺れ」
エルフの一人が命じた。すると他の三人が散った。そしてユルゲンスを除く四人のハンターも。ミグとリュンルース、リアリュールとクランだ。
一斉にエルフたちは発砲した。リアリュースとクランの口から呻きがもれる。被弾したのだ。
「そんなものが効くものかよ」
銃弾をはじいたミグが笑った。その身を強力な魔力力場が覆っている。右目の眼帯の下からは紅蓮の炎状のオーラが吹き上がっていた。
ギガンティックフェアリー。マテリアルを集束、継続放出することで自身を覆う防御膜を形成する魔法であった。
「さて、しばしの間ミグの舞に付き合ってもらうでな。ふふふ。」
ミグは炎を噴出させた。紅蓮の奔流が洞窟の入口をなめる。
その時、エルフが地を滑るように駆けた。馬を降りたユルゲンスに接近。
「銃は効かぬと悟ったか」
ユルゲンスは両手剣――クレイモアを横殴りにはしらせた。エルフの胴を薙ぐ。
同時。エルフもまた剣をはしらせた。鋭い刺突がユルゲンスの鎧の隙間を貫く。
「やるではないか」
鮮血を口からたらたらと滴らせたユルゲンスは笑った。
●
「……中は明るいようね」
するりと洞窟内に潜入した三つの人影。その中の一人が低く声をもらした。マリィアである。
洞窟の内部には所々篝火が設置されていた。暗くはない。
「この奥に浚われた子供達がいるんだよね」
アリアは足元の柴犬の頭を撫でた。
「少なくとも一人はね」
「エルフが全員おびき出されてくれればいいんだが……そう上手くはいかないだろうな」
ソレルはごちた。そして足音を忍ばせつつ、歩み始めた。
距離にして約三十メートル。やがて三人のハンターは足をとめた。奥から潜めた声が届いてきたからだ。
「一体何があったんだ」
「わからん」
二人の声。残ったエルフだろう。
陰からマリィアが内部の様子を窺った。
そこは洞窟の奥。広い空間になっている。
二人のエルフが立っていた。共に銃と剣で武装している。その足元には幾人もの子供たちが転ばされていた。浚われてきた子供達だろう。
ハンターたちは目配せした。次の瞬間だ。彼らは襲った。
反射的にエルフたちは銃をかまえた。が、光が彼らの目を眩ませた。アリアがライトの光をむけたのだ。
エルフか怯んだ隙をつき、ハンターたちは肉薄した。いや――。
特筆すべきはアリアだ。一瞬間で間合いをつめると、彼女はエルフの腹に銃――オートマチックST43の銃口を押し当てた。
響く鈍い音。鮮血をしぶかせてエルフがよろめいた。
直後だ。ソレルが踏み込んだ。ロングソードの刃をぶち込む。吹き飛ばされたエルフが洞窟の壁に激突。喪神した。
同じ時。マリィアもまた攻撃をしかけていた。銃をかまえたエルフにデルガード――軽機関銃をむけ、弾丸をばらまく。エルフと壁を幾つもの弾丸が穿った。
「命だけは助けてやる。訊きたいことがあるからな」
子供達の目から隠すように佇み、ソレルは倒れたエルフにロングソードの刃を突きつけた。
●
瞳をプリズムと化し、リュンルースの口が呪を紡いだ。
次の瞬間、彼の眼前に明滅する魔法円が転回。凝縮された呪力塊は氷の矢となって撃ちだされた。
「あっ」
矢に射抜かれたエルフが樹上から転げ落ちた。それでも猫のように着地したのはさすがである。
が、すぐには動けなかった。突き刺さった矢を中心に、エルフの身体が凍りついていたからである。
「次はこれだよ」
リュンルースの口が別の呪を紡いだ。すると再び彼の眼前で魔法円が明滅。今度は先ほどとは色が違った。
刃の鋭さをもった疾風にエルフが切り裂かれたのは、次の瞬間であった。
「一人たりとて逃さぬぞ」
ミグは炎で辺りを炙った。
その時だ。銃声が轟き、着弾の衝撃にミグはよろめいた。
息継ぎのようにあいた魔法発動の隙。そこを狙って撃たれたのである。
再び銃声。が、今度はミグの全身を覆った魔法の防護膜にはじかれた。
振り向いたミグはニンマリと笑った。
「ようもやってくれた。今度はミグの番じゃ」
ミグから炎が噴き、エルフが松明と化した。
樹間の薄闇をリアリュールは走った。その背後の樹の幹が爆ぜる。リアリュールが跳んだ。
樹の背後に回り込んだ彼女の髪が虹色に輝いている。藪から顔を覗かせたエルフを狙撃。
銃弾は空しく流れすぎた。が、エルフは地に伏した。好機だ。
リアリュールは風のように動いた。再びエルフが顔を覗かせた時、すでに彼女はエルフの死角に回り込んでいる。
リアリュールの手の白色のリボルバー拳銃――グラソンが吼えた。
「ぐあっ」
呻きつつ、エルフは発砲。が、狙いもせぬ射撃が当たるはずもない。
頬をかすめた弾丸に怯むことなく、再びリアリュールはエルフをポイント。撃った。
クランの手のデリンジャーが火を噴いた。マズルフラッシュが闇を一瞬切り裂く。
正確な狙撃。エルフの左肩が爆ぜた。
「ぬっ」
呻きつつ、エルフは走った。威力を抑えたデリンジャーのマンストッピンパワーは低い。間合いを詰めたエルフは剣をたばしらせた。
ギンッ。
闇に火花が散った。エルフの刃をクランが透き通った水晶の刃もつ長剣――クリスタルマスターで受け止めたのだ。いや――。
受け止めたのではない。むしろクランは踏み込んだ。凄まじい斬撃はエルフの剣をはじき、それでもとまらずエルフを斬り下げた。
●
死亡したエルフは三人。二人逃げ、二人捕らえられた。
「よく頑張ったわね……さぁ、おうちへ帰りましょう?」
戒めを解かれた子供達にマリィアは微笑みかけた。元軍人とは思えぬ優しい笑顔である。
「貴方たちは、だめよ」
リアリュースは冷たく見下ろした。そこには縛られたエルフの姿がある。
「聞かせて。何が目的なのか。そして組織は何なのか。またボスは誰なのか。それから他に仲間がどれだけいて、何してるのか。何より、攫った子らをどこに連れて行っているのか」
「いうと思うか」
ニヤリとエルフは笑った。
「いわないなら」
マリィアがエタンドルE66――リアルブルーで作られたオートマチック拳銃の銃口をエルフにむけた。
「こうよ」
「やってみろ」
エルフの笑みが深くなった。マリィアの目が殺気に光る。
「やれないと思っているの?」
「殺せ」
「わかったわ。お望み通りにしてあげる」
「待て」
ソレルがマリィアの手を掴んだ。
「そんなことでエルフは口を割らない。あいつらは頑固だからな」
ちらりとリュンルースを見やってから、ソレルはエルフにしかめた顔をむけた。
「しかし、何の罪も無い子供を利用しようってのは気にいらねえな? 何故だ。何故、誘拐などという卑劣な真似をする?」
「帝国の犬め。せいぜい図に乗っているがいい。もうすぐお前たちは浄化の火に焼き尽くされるのだ」
狂ったようにエルフは哄笑をあげた。
「夜陰に紛れて人さらいとはエルフも地に落ちたものよの」
闇に黒々とした木陰から声が忍び出た。
声の主は女だ。十三歳どに見える。右目に眼帯をつけたドワーフであった。
ミグ・ロマイヤー(ka0665)という名のその女は右の拳を握りしめた。ギシギシと異音がする。義手なのであった。
「エルフってそんなにアクティブだったかねえ……」
ソレル・ユークレース(ka1693)という名の若者が首をひねった。どこかとぼけた雰囲気のある男だ。それでも精悍さをあわせもっているのは彼が傭兵であるからで。そのソレルはかつてエルフの集落で暮らしたことがあった。
「俺の知るエルフっていうのは……こう物静かで穏やかで……。いや、割とアクティブだったわ」
ソレルは傍らの男を見た。二十歳ほど。ぞくりとするほどの美貌の持ち主だ。
リュンルース・アウイン(ka1694)。エルフの若者だ。
視線を戻すと、ソレルは続けた。
「ま、今のは冗談として、エルフも人間もそんなに違ってるようには思わんがね。ただなあ、何の罪も無い子供を利用しようってのは気にいらねえな?」
「しかし、何故エルフが……?」
リュンルースもまた首を傾げた。
「エルフハイムは不可侵条約を破棄したわけではない……はず。人の中で暮らしていても、エルフハイムに大きな動きがあればわかるものだし……」
わからない。リュンワースは声を途切れさせた。
「何を企んでるんだか知らないが」
闇の中、淡々とした声がながれた。声の主は十八歳の少年。クラン・クィールス(ka6605)という。
「子供は親と……家族と、一緒にあるべきだ。……返してもらうぜ」
クランは独語した。その瞳に一瞬閃いたのは孤独の光だ。
誰も知らぬことであったが、彼は数年前に家族を歪虚の襲撃で失っていた。その後、クランは親戚に引き取られたのだが、馴染めず、独り彼は出奔した。だから、思う。子供は、やはり家族とともに在るべきだと。
「エルフのことだけれど……」
ふと思いついたように女が口を開いた。二十代半ばほどで、鋭い目の持ち主だ。
女――マリィア・バルデス(ka5848)は冷徹な声音で続けた。
「一人は生かしておかなければね。聞き出したいことがあるから」
「確かに聞きたいことはたくさんあるけれど」
辛そうにリアリュール(ka2003)という名の少女は口を開いた。妖精めいた美少女だ。彼女もまたエルフであった。
「けれど話してくれるかしら。今回の犯人たちの組織やボス、理由と目的と、他に仲間がどれだけいて何してるかとか……何より、攫った子らをどこに連れて行っているのか等、知りたいことはたくさんあるけれど」
「吐かなければ、吐かせるまでよ」
マリィアの碧の瞳が冷たく光った。さすがにリアリュールの顔色が変わった。
「それは……暴力で訊きだすということ?」
「そうよ。よその国から子供を浚う軍事工作員に人権なんてあるとは思えないわ。どんな手を使ってでも必要なことは訊きだす。でも、まあ死兵は困るし、情報は欲しいから、降伏手段はとりあえず残すわ」
「そう」
リアリュースは声をとぎれさせた。
彼女はハンターの立場でいられることを良しとしなくてはと思っている。森都と帝国の両方の情報が得られるし、何が正しいのか客観的に考えることができるからであった。今回もリアリュースはできるだけ公平な立場で臨もうとかんがえている。
その時だ。
「あっ」
アリア(ka2394)という名の少女が痛みに顔をしかめた。怪我をしているのである。
大丈夫か、と声をかけたのは、全身を鎧で包んだ巨漢であった。その鎧はかなりの重量であるばなのに、それを感じさせない身ごなしの軽さがある。――ユルゲンス・クリューガー(ka2335)という。
ユルゲンスは元帝国軍人で、小隊長として騎兵隊を率いていた。その過去故か、どうしても気になるのだ。仲間の体調が。
「怪我をしているようだが」
「うん」
アリアはうなずくと、
「痛いけど……供達はもっと怖いはず。見過ごすことなんてできないよ!」
「ふむ、では征くとしよう」
戦馬にまたがると、ユルゲンスは腹を蹴った。
●
「……あれか」
木陰からリュンルースは顔を覗かせた。
やや離れた樹上。潜む影があった。見張りのエルフだろう。
ちらりとリュンルースは視線を動かした。闇の中、ソレルが潜んでいるはずである。
「いつもならソル(ka1693)と動くけれど、今回は別々だな。あまり無茶しなければいいのだけれど……」
つぶやくと、リュンルースはライトの光を上げた。無論、エルフは気づいた。
銃声。リュンルースの肩に激痛がはしった。
「正確な射撃だな」
「派手にいこう」
ユルゲンスが突撃した。見張りのエルフが再び射撃。
キンッ。
弾丸がはじかれた。ユルゲンスの鎧によって。
ソリッドハート。頭の先からつま先まで、全身を覆うプレートアーマーだ。『堅牢な心』の名を冠し、最高の防御力をそのままに、可能な限りの軽量化が試みられている代物であった。そう簡単に銃弾は通らない。
馬をとめると、ユルゲンスは叫んだ。
「帝国に仇為す不遜なるエルフ共、我が剣で叩き斬ってくれるわ!」
その時だ。洞窟の入口に四つの人影が現れた。エルフだ。手に銃、背に剣を負っている。
「……知られた上は生かしては帰せぬ。殺れ」
エルフの一人が命じた。すると他の三人が散った。そしてユルゲンスを除く四人のハンターも。ミグとリュンルース、リアリュールとクランだ。
一斉にエルフたちは発砲した。リアリュースとクランの口から呻きがもれる。被弾したのだ。
「そんなものが効くものかよ」
銃弾をはじいたミグが笑った。その身を強力な魔力力場が覆っている。右目の眼帯の下からは紅蓮の炎状のオーラが吹き上がっていた。
ギガンティックフェアリー。マテリアルを集束、継続放出することで自身を覆う防御膜を形成する魔法であった。
「さて、しばしの間ミグの舞に付き合ってもらうでな。ふふふ。」
ミグは炎を噴出させた。紅蓮の奔流が洞窟の入口をなめる。
その時、エルフが地を滑るように駆けた。馬を降りたユルゲンスに接近。
「銃は効かぬと悟ったか」
ユルゲンスは両手剣――クレイモアを横殴りにはしらせた。エルフの胴を薙ぐ。
同時。エルフもまた剣をはしらせた。鋭い刺突がユルゲンスの鎧の隙間を貫く。
「やるではないか」
鮮血を口からたらたらと滴らせたユルゲンスは笑った。
●
「……中は明るいようね」
するりと洞窟内に潜入した三つの人影。その中の一人が低く声をもらした。マリィアである。
洞窟の内部には所々篝火が設置されていた。暗くはない。
「この奥に浚われた子供達がいるんだよね」
アリアは足元の柴犬の頭を撫でた。
「少なくとも一人はね」
「エルフが全員おびき出されてくれればいいんだが……そう上手くはいかないだろうな」
ソレルはごちた。そして足音を忍ばせつつ、歩み始めた。
距離にして約三十メートル。やがて三人のハンターは足をとめた。奥から潜めた声が届いてきたからだ。
「一体何があったんだ」
「わからん」
二人の声。残ったエルフだろう。
陰からマリィアが内部の様子を窺った。
そこは洞窟の奥。広い空間になっている。
二人のエルフが立っていた。共に銃と剣で武装している。その足元には幾人もの子供たちが転ばされていた。浚われてきた子供達だろう。
ハンターたちは目配せした。次の瞬間だ。彼らは襲った。
反射的にエルフたちは銃をかまえた。が、光が彼らの目を眩ませた。アリアがライトの光をむけたのだ。
エルフか怯んだ隙をつき、ハンターたちは肉薄した。いや――。
特筆すべきはアリアだ。一瞬間で間合いをつめると、彼女はエルフの腹に銃――オートマチックST43の銃口を押し当てた。
響く鈍い音。鮮血をしぶかせてエルフがよろめいた。
直後だ。ソレルが踏み込んだ。ロングソードの刃をぶち込む。吹き飛ばされたエルフが洞窟の壁に激突。喪神した。
同じ時。マリィアもまた攻撃をしかけていた。銃をかまえたエルフにデルガード――軽機関銃をむけ、弾丸をばらまく。エルフと壁を幾つもの弾丸が穿った。
「命だけは助けてやる。訊きたいことがあるからな」
子供達の目から隠すように佇み、ソレルは倒れたエルフにロングソードの刃を突きつけた。
●
瞳をプリズムと化し、リュンルースの口が呪を紡いだ。
次の瞬間、彼の眼前に明滅する魔法円が転回。凝縮された呪力塊は氷の矢となって撃ちだされた。
「あっ」
矢に射抜かれたエルフが樹上から転げ落ちた。それでも猫のように着地したのはさすがである。
が、すぐには動けなかった。突き刺さった矢を中心に、エルフの身体が凍りついていたからである。
「次はこれだよ」
リュンルースの口が別の呪を紡いだ。すると再び彼の眼前で魔法円が明滅。今度は先ほどとは色が違った。
刃の鋭さをもった疾風にエルフが切り裂かれたのは、次の瞬間であった。
「一人たりとて逃さぬぞ」
ミグは炎で辺りを炙った。
その時だ。銃声が轟き、着弾の衝撃にミグはよろめいた。
息継ぎのようにあいた魔法発動の隙。そこを狙って撃たれたのである。
再び銃声。が、今度はミグの全身を覆った魔法の防護膜にはじかれた。
振り向いたミグはニンマリと笑った。
「ようもやってくれた。今度はミグの番じゃ」
ミグから炎が噴き、エルフが松明と化した。
樹間の薄闇をリアリュールは走った。その背後の樹の幹が爆ぜる。リアリュールが跳んだ。
樹の背後に回り込んだ彼女の髪が虹色に輝いている。藪から顔を覗かせたエルフを狙撃。
銃弾は空しく流れすぎた。が、エルフは地に伏した。好機だ。
リアリュールは風のように動いた。再びエルフが顔を覗かせた時、すでに彼女はエルフの死角に回り込んでいる。
リアリュールの手の白色のリボルバー拳銃――グラソンが吼えた。
「ぐあっ」
呻きつつ、エルフは発砲。が、狙いもせぬ射撃が当たるはずもない。
頬をかすめた弾丸に怯むことなく、再びリアリュールはエルフをポイント。撃った。
クランの手のデリンジャーが火を噴いた。マズルフラッシュが闇を一瞬切り裂く。
正確な狙撃。エルフの左肩が爆ぜた。
「ぬっ」
呻きつつ、エルフは走った。威力を抑えたデリンジャーのマンストッピンパワーは低い。間合いを詰めたエルフは剣をたばしらせた。
ギンッ。
闇に火花が散った。エルフの刃をクランが透き通った水晶の刃もつ長剣――クリスタルマスターで受け止めたのだ。いや――。
受け止めたのではない。むしろクランは踏み込んだ。凄まじい斬撃はエルフの剣をはじき、それでもとまらずエルフを斬り下げた。
●
死亡したエルフは三人。二人逃げ、二人捕らえられた。
「よく頑張ったわね……さぁ、おうちへ帰りましょう?」
戒めを解かれた子供達にマリィアは微笑みかけた。元軍人とは思えぬ優しい笑顔である。
「貴方たちは、だめよ」
リアリュースは冷たく見下ろした。そこには縛られたエルフの姿がある。
「聞かせて。何が目的なのか。そして組織は何なのか。またボスは誰なのか。それから他に仲間がどれだけいて、何してるのか。何より、攫った子らをどこに連れて行っているのか」
「いうと思うか」
ニヤリとエルフは笑った。
「いわないなら」
マリィアがエタンドルE66――リアルブルーで作られたオートマチック拳銃の銃口をエルフにむけた。
「こうよ」
「やってみろ」
エルフの笑みが深くなった。マリィアの目が殺気に光る。
「やれないと思っているの?」
「殺せ」
「わかったわ。お望み通りにしてあげる」
「待て」
ソレルがマリィアの手を掴んだ。
「そんなことでエルフは口を割らない。あいつらは頑固だからな」
ちらりとリュンルースを見やってから、ソレルはエルフにしかめた顔をむけた。
「しかし、何の罪も無い子供を利用しようってのは気にいらねえな? 何故だ。何故、誘拐などという卑劣な真似をする?」
「帝国の犬め。せいぜい図に乗っているがいい。もうすぐお前たちは浄化の火に焼き尽くされるのだ」
狂ったようにエルフは哄笑をあげた。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 リュンルース・アウイン(ka1694) エルフ|21才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2016/11/19 16:42:28 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/11/13 02:19:49 |