ゲスト
(ka0000)
ダウンタウンの誘拐事件
マスター:STANZA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/09/26 15:00
- 完成日
- 2014/10/06 04:50
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
港町ポルトワールに隣接する下町、ダウンタウン。
そこに住む子供達の多くが何かしらの形で関わりを持つのが、ダウンタウンの便利屋「カナイオ・スイーパー(直訳:騒動の掃除屋)」だ。
それは子供だけの自警団の様なものだが、実際の活動はその名が示す通り、子供同士の喧嘩の仲裁や、ご近所のお悩み解決、町の掃除といった可愛いものだ。
そして目下のところ、彼等の任務は——遊ぶ事。
子供なのだから当たり前と言えば当たり前なのだが、学校も事件もない時の彼等は、ほぼ一日中ひたすら遊び回っていた。
現在、彼等の間でブームなのが、先日ハンターのお兄さんに教えてもらった「めんこ」遊びだ。
技を磨いて相手と競う事も楽しいが、それ以上に「勝てば相手から一枚貰える」というコレクション性が、特に男の子達の心を引き付けた様だ。
めんこの絵は、主にお絵描きが得意な子供達が描いている。
作り方を教えて貰ったお陰で、カードはいくらでも増やす事が出来た。
他にも缶蹴りは男女共に人気がある。
ごっこ遊びが好きな子には、好きな設定を作って遊べる「怪盗とハンター」が人気だった。
料理やお菓子作り、銀細工に興味を示した子供達もいる。
他にも教えて貰った遊びを自分達でアレンジしたり、新しく考えたり、当分は遊びの材料には事欠かないだろう。
ダウンタウンには保護者がいなかったり、いても何かと問題があるという理由で、施設で暮らしている子供達が多い。
カナイオのメンバーも、大部分はそうした子供達だ。
しかし彼等の顔に暗さはなかった。
少なくとも、昼間こうして皆と一緒に遊んでいる所を見る限りでは。
「でも、昔に比べれば随分良くなったわよ、ねぇ?」
そんな子供達の様子をのんびり眺めながら、寮母は午後のお茶をすする。
この施設で子供を預かるようになって二十年ほどになる。
最初の頃は、状態の良くない子供が多かったものだ——栄養面でも、精神面でも。
だが、ダウンタウンの改革が行われてからというもの、この町で荒んだ目をした子供を見かける事は滅多になくなった。
とは言え——
ダウンタウンの全てが安全になった訳ではない。
まだまだ治安の悪い場所は残されているし、遊ぶ事を知らない子供達もいる。
そして近頃、そんな子供達が次々と町から姿を消しているという噂があった。
「怖い人さらいがウロついてるらしいの」
その日の夜、寮母は子供達を集めて言った。
彼等に捕まると、どこかに売り飛ばされてしまうらしい。
被害に遭うのはダウンタウンでも特に治安の悪い地区に住む、身寄りのない子供達。
「この辺りは大丈夫だと思うけど、みんな危ない場所には近付かないでね?」
その言葉に、子供達は素直に「はーい」と良いお返事を返した。
だが、カナイオ・スイーパーのリーダー、アルド・サンテ(kz0043)は浮かない顔。
彼には、その「治安が悪い」とされる地区にも友人が大勢いるのだ。
特につい最近までこの施設で暮らしていた、ニコラ・テッサの事が心配でならなかった。
数年前に保護されたものの、結局はここの生活に馴染めずに、また元の暮らしに戻ってしまった友人。
「あいつ、大丈夫かな……」
今、どうしているのだろう。
無事でいるのだろうか。
『毒を抜かれて飼い慣らされんのはゴメンだ』
ニコラはそう言って、この施設を出て行った。
自分の力だけで生きていくのが性に合っているのだと。
『俺には、あそこの汚ぇドブみてぇな水が合ってんだよ』
お前とは違う、そうも言われた。
仲が良かったとは言えない。
寧ろ相性は最悪だった気がする。
でも、もし何か困っているなら。
自分が助けになれるなら。
手を伸ばしたい。
例えそれが、荒々しく撥ね除けられたとしても。
「それに、これもダウンタウンで起きてる事件だもんな」
少し場所は違うけれど、無関係ではない。
被害に遭っているのは、いなくなっても探してくれる親さえいない子供達だ。
でも、誰も探してくれなくても、オレ達が探す。
取り返してやる。
「子供をさらって売り飛ばそうとする奴等なんか、のさばらせて良い筈もないしな」
しかしカナイオの子供達を関わらせる訳にはいかない。
今回はハンター達の力を借りた方が良さそうだ。
恐らく、盗賊団の様な連中が副業か何かでやっているのだろう。
子供が現場をうろついていれば、きっと向こうから食い付いて来る筈だ。
それを囮に、見失わない様に後をつけて……上手くすれば、それでアジトに潜入出来るだろう。
危険な仕事だし、自分が囮になっても良い。
後はどうにかして外の仲間に内部の様子を知らせて、タイミングを見計らって踏み込んで貰い、賊達を一網打尽——に、出来れば良いのだが。
その際、まだ売り飛ばされていない子供がいれば助けるのは勿論、もう手遅れだったとしても、どこかに記録が残されている筈だ。
そこから先の追跡は、自分達の手には負えないだろうけれど。
ハンターの仕事で稼いだ貯金を握り締め、アルドはハンターオフィスへと急いだ。
リプレイ本文
「久し振りだねェ、ここらで仕事すンのも」
サンカ・アルフヴァーク(ka0720)は、アルドの背中をポンと叩く。
「ま、よろしく頼むぜアル君よ。お前の街だしな」
「うん。こっちこそ、よろしく」
ぺこりと下げたアルドのツンツン頭を、リアリュール(ka2003)がくしゃっと撫でた。
「話してくれてありがとう、頼ってくれて嬉しいわ」
誘拐なんて許せないし、見逃していたら治安もよくならない。
「アルくんはそういうの熱心よね」
ところで、お願いがあるんだけど。
「アルくんには今回、囮以外の事でいろいろと力を借りたいの」
「街の事をよく知ってるアルドお兄さんが捕まっちゃったら、困ると思うんだー」
その代わりに、とユノ(ka0806)が囮に立候補する。
「じゃあ、僕も囮でお願いします」
シグリッド=リンドベリ(ka0248)が手を挙げた。
「追跡には土地勘のある人が必要ですからね」
「アルくんは今回の作戦の要だよ」
リアリュールが続ける。
「町に不案内な私たちの補助、仲間内の繋ぎ役に、手が空いた時は見張りにも加わって欲しいし」
それと、もうひとつ。
「このことは私たちの中でだけで終わらせてはいけないわ。ヴァネッサ女史に今回の事件のことを知らせてね」
捕縛後の賊の処遇も頼みたいし。
「わかった。すぐ引き渡せるように頼んどくな」
助けた子供達は、とりあえず施設で預かれば良いだろう。
数刻後。
囮の二人はパルムと装備品を仲間に預ける。
シグリッドのパルムは、小さなリュックを背負っていた。
「荷物運びのお手伝い、よろしくお願いしますね」
中身は筆記用具とカッターの刃、それにミニライトだ。
「危なくなったらユノさんちのパルムさんと一緒に全力で逃げて下さいね?」
『きゅー』
そして、二人は薄暗い路地裏に足を踏み入れた。
「迷子のペットを探すフリでもしておけば食いついてくれるでしょうか……」
二人は捨てる寸前のボロ服や靴を借り、髪はボサボサ、肌も泥で汚し、今やどこから見ても下町の浮浪児だ。
「シグお兄さん、ここ行き止まりだよ?」
ユノがシグリッドの腕を引っ張り、元来た道を戻ろうとした、その時。
「今日はなかなか良い獲物がかかったじゃねぇか」
人相の悪い男達が行く手を塞いだ。
「な、何です――なんだ、お前ら!」
つい普段の丁寧口調で言いそうになり、シグリッドは慌てて言い直す。
「噂の人攫いか!」
「人さらいって悪い人だよね? きゃー! 変態さんだっー! 助けてー!」
声を限りに叫ぶユノ。
しかし、誰も助けには来なかった。
下卑た笑みを浮かべた賊達は、二人に猿轡をかませ、目隠しをし、手足を縛って荷物の様に担ぎ上げる。
確かに助けは来ない。
しかし密かに後をつけている者達がいる事に、賊達は気付いていなかった。
「これは、絶対助けなくては、ですね」
ネージュ(ka0049)とサンカは少し距離を置いて、物陰に身を隠しながら尾行する。
暫く行ったら、怪しまれない様に他の組と交代だ。
次に引き継いだエアルドフリス(ka1856)とジュード・エアハート(ka0410)は、フラフラとあちこちの建物を覗くふりをしながら付いて行った。
「まったくもって……胸糞悪い」
エアルドフリスが小声で吐き捨てる。
裏通りにも守るべき矜持はある筈だが、彼等はそれさえも捨ててしまったのだろうか。
「やれ、人攫いは感心しないね」
三組目、リアリュールと組んだリョースアールヴァル(ka0427)は苦笑いを浮かべる。
「悪い子には、少々お仕置きをしないとね」
屋根の上を渡って賊を追いつつ、セレナイト・アインツヴァイア(ka0900)は鼻の頭に皺を寄せた。
「……ここはホント空気悪ィな」
実際に悪臭が淀んでもいるが、それ以上に雰囲気が悪い。
「何が起こるかわからねぇし、気ィ抜かねぇようにしないとな……」
賊の動きを上から見て尾行が交代するタイミングを割り出し、同行したアルドに先回りのルートを訊きながら、地上の仲間に伝話で指示を出す。
「匂いはここで途切れてるか」
囮の匂いを柴犬に追わせていたルシエド(ka1240)は、賊の方に対象を切り替える。
「この匂い、追えるか?」
柴犬は暫く足跡の周辺を嗅ぎ周ると、その先へと歩き出した。
人ひとりがやっと通れる程の細い路地を縫って、何度も角を曲がり、やがて着いたのは比較的大きな通りに面した三階建ての建物だった。
「囮のやつ、うまくやれるといいが……」
セレナイトが呟く。
どこかにパルムが侵入出来そうな穴はあるだろうか。
建物の裏手に面した細い路地には裏口があり、その脇に小さな通気口があった。
恐らくトイレだろう。
しかしそこを塞ぐ鉄格子がなかったとしても、身長50cm程と意外に大きいパルムは通れそうもない。
と、表の方から犬の吠える声が聞こえた。
何事かと驚いた賊達が次々に顔を出し――
「悪い、こいつオレの犬なんだ」
飛び出したルシエドが柴犬を呼び寄せる。
「なんかヤバそうな匂いでもしたのかな。こいつそういうトコ鼻が利くからさ!」
余計な事を言ったのは、自分と犬に賊達の注意を向けさせる為だ。
「よォし、この隙に潜り込んじまえ!」
サンカが囮から預かったパルムをそっとリリース、犬に気を取られた賊達の背後から玄関に滑り込ませた。
それを見届け、ルシエドは柴犬と共に一目散。
パルムの潜入はとりあえず成功、後は上手く行く事を祈るしかない。
見張りは二人一組で表と裏に一組ずつ、手の空いた組は休憩と情報収集に当たる事になった。
アルドを含めて全部で九人だから、少しずつ組み合わせを変えれば常に誰か一人は完全に休めるだろう――ただし、組み合わせは戦力が偏らない様に。
「前の建物に空きがあれば一番なのだけれどね?」
リョースアールヴァルの問いに、ルシエドが答えた。
「こういう所は出すモノさえ出しゃ融通が利くもんさ」
見返りが充分なら密告もしない、法律も良識も通用しない、全てはカネ次第の世界。
わかりやすいと言えば非常にわかりやすくシンプルだ。
それを良しとはしないが、場のルールには従うしかないのも事実。
いくらかの金を握らせ、彼等はアジトの表と裏それぞれに見張り場所を確保した。
一方、こちらはアジトの中。
縄と猿轡を解かれた囮の二人は、身体検査もされずに地下室に放り込まれた。
どうせ何も持っている筈がないと思われたのだろう、お陰でユノは様々な道具を中に持ち込む事が出来た。
(ぼくも素直に隠し持って来た方が良かったでしょうか……)
シグリッドの頼みの綱、パルムはまだ来ない。
しかし、待っている時間も無駄にする事は出来なかった。
中は真っ暗、他の子供達の様子もわからない。
「ぼく達どうなるの? どこかに売られるの? ねえ、お願いだから何か喋ってよ!」
戸口の外に立った見張りに向かって、涙声で訴えかけてみる。
上手く同情を引く事が出来れば、雑談の中でうっかり口を滑らせるかもしれない。
そこで少しでも情報を――と思ったのだが。
「うるせぇぞガキ、またふん縛って猿轡かまされてぇか!」
それは困る。困るけれど黙っている訳にもいかないのだ。
泣き落としが通じないなら、次はユノのワガママおばか作戦だ。
「お腹空いたー! のど渇いたー! 死んじゃうー!」
叫びながらじたばた暴れてみる。
「黙りやがれ!」
バァン!
力任せに開けられたドアから、大きな影が現れた。
手にしたランタンの明かりで室内が照らされた隙に、シグリッドが素早く室内を確認する。
「もう少し待ってろ!」
「あーーーっ!」
「今度は何だ!?」
「おしっこ!!」
他にも真っ暗は怖いと騒いでは明かりを確保し、自分を高く売れとアピールしては子供の値段を聞き出し、その傍若無人な態度に元気づけられた他の子供達も一緒に騒ぎ出した。
騒ぎの中から有用な情報を選り分けたシグリッドは、ユノから受け取った紙にこっそりメモを取っていく。
やがて余りの騒がしさに閉口した見張りは任務を放棄して何処かへ行ってしまった。
外に残った仲間達は、それぞれに時間を作って情報収集に当たる。
「ねえ、あそこで商売って出来るの?」
サンカと組んだジュードは、近くの酒場で近隣の住民と思しき者達に話を聞いていた。
「誰に話を付ければ良いのかな? それってどういう人達?」
だが彼等は、余所者に対しては一様に口が硬かった。
「なに、それなら酒を注いでやりゃァ良いのさ」
適当に酒を奢りながら、サンカは慣れた様子で話を聞き出していく。
ルシエドはリョースアールヴァルと組んで、アジト近くの食料品店や酒屋を回っていた。
「組織立って動いてるなら、食料とか纏まった品数の買い物してる可能性もあるよな」
そこから彼等の人物像や人数がわかるかもしれない。
「きみは随分、こういう事に慣れている様だね」
「まあな」
ルシエドは適当に金を掴ませては情報を得ていく。
「ただし、この手のネタで足元を見てくる奴は大抵ガセだかンな」
そういうのは無視だ、無視。
「最近流れてきたばかりでね。色々教えて欲しい」
エアルドフリスは街角に立つ曰くありげな女性に声をかけてみた。
しかし。
「あんた客? 冷やかしならお断りだよ!」
情報が欲しいなら、まずは買ってから――という事だが。
さて、どうしよう。
「子供の姿が見えないわね」
リアリュールは近所の子供達に話を聞こうと考えていたのだが、外を出歩いている姿は殆ど見かけなかった。
たまに見かけても、素早く姿を消してしまう。
人攫いを警戒してるのだとすれば、彼等の脅威は既に浸透しているのだろう。
それで被害に遭う子供が減れば良いが、今度は強引な手段を使うようになるかもしれない。
或いは活動範囲を拡大するか――
いずれにしても、早く潰さなくては。
やがて夜中。
持ち込んだ道具で鍵を開けたユノは、そっと廊下に忍び出た。
「僕が下見して来るから、待ってて」
他の子供達にそう言って、昼間連れて行かれた一階のトイレまで手探りで進む。
その奥にある通気口から丸めたメモを投げ、後は見付かって連れ戻されるまで内部の確認を――
通気口から投げ出された小さな紙玉を、通りかかったサンカがさりげなく拾い上げた。
見張り場所に戻って、皆の前でそれを広げる。
そこに書かれた内容と、聞き込みで得た情報、見張り中の観察結果などを合わせると……
「子供は囮を含めて七人、賊は20人程度、うち数人が覚醒者、という事になるでしょうか」
ネージュが言った。
アジトからは「荷物」が定期的に運び出され、次は二日後の夜になるらしい事も。
パルム達が戻って来ないのは気になるが、恐らく途中で何か彼等の琴線に触れるものに出くわしたのだろう。
秘密の会議か、極秘資料か。パルムを探せば、きっとそれも見付かるだろう。
二日後の夜。
アジトの表玄関に、荷馬車が静かに停まった。
それが再び動き出すのを、ネージュ、サンカ、セレナイト、リアリュール、そしてアルドの五人が少し離れた所で待ち伏せる。
裏口にはジュード、ルシエド、表にはリョースアールヴァル、エアルドフリスの二組が待機していた。
「エアさん、やり過ぎないでね?」
表と裏に別れる前、ジュードがエアルドフリスに声をかける。
「自分こそ、熱くなりすぎるなよ」
「大丈夫、情報源は残しとかないとね」
その価値がある間だけは。
やがて中から「荷物」が運び出される。
手足を縛られ猿轡をかまされて、あれではユノも現状を知らせる暗号のメンコを落とす事は出来ないだろう。
だがそれで作戦に変更が加えられる事はなかった。
あらゆる事態を想定しておけば、何が起きても対処は可能だ。
「身寄りのない子供が攫われ、売り物にされる……貧民街じゃ、よくある事だろうさ」
次々と運び出される子供達の姿を見て、ルシエドが呟く。
「けど、子供だからって蹂躙されて当然な訳無ぇ」
ジュードの脳裏には、昔の自分と、自分と同じ境遇だった子達の記憶がちらついていた。
(大人に好き勝手にされる子ども――助けるから。絶対に)
やがて七人の子供を乗せた荷馬車が静かに走り出す。
角を曲がって姿を消した、その直後……伝話が鳴った。
突入の合図だ。
リョースアールヴァルと共に表玄関から飛び込んだエアルドフリスは、まず見張りを黙らせる。
眠りのガスに包まれた賊は、あっさり崩れ落ちた。
「こいつは一般人の様だな」
縄を掛けて猿轡をかませ、念の為に伝話も取り上げて、二人は奥の部屋へ。
一仕事を終えて安心しきった様子の賊達に、再びのスリープクラウド。
「おや、君は強いのだね?」
眠らなかった賊の足を、踏み込んだリョースアールヴァルがフラメアで打ち払う。
だが敵も覚醒者、踏み留まって反撃に出た。
片手の銃を連射しつつ、長剣を振り回して来る。
「少し静かにしてもらえると、助かるね」
抵抗するなら容赦はしない。
中ほどを持った槍を鋭く一閃、致命傷の一歩手前まで追い詰める。
「一人も逃がさんよ」
エアルドフリスは魔法で追撃、やりすぎて殺してしまったとしても不可抗力だ。
表への通路を塞がれ、残った賊達は裏口へと逃げる。
だがそこではジュードとルシエドが待ち構えていた。
「悪党にゃ、目には目を、だ」
素早く身を屈めたルシエドは、走って来る賊に片っ端から足払いをかける。
「人を食い物にする奴は、何されたって文句は言えねえよな?」
ニヤリ。
一般人でも容赦なくぶちのめす、覚醒者なら尚更だ。
ランアウトからのスラッシュエッジで先手必勝、転がした所にジュードが強弾を撃ち込む。
リロードする間も惜しいと弾が切れたら武器を持ち替え、足を狙ってひたすら連射だ。
「これ以上先には進ませません!」
荷馬車の前に、両腕を広げたネージュが立ちはだかる。
御者が思わず手綱を引いた瞬間、他の仲間達が一斉に周囲を取り囲んだ。
「おーおーよく頑張った。もう一息だから気ィ抜くなよ? きっちり助けちゃる」
サンカが子供達に声をかけ、リアリュールがまず囮二人の縄を切る。
「もう大丈夫ですよ」
自由になったシグリッドは他の子供達を次々に解放していった。
「腹ペコの怨みを思い知るがいいのーっ!!」
脱走の罰として飯抜きの刑を食らっていたユノが、武器を受け取りざま賊に飛び掛かる。
「目潰しーっ!」
顔面に魔法をぶつけ、更にはご丁寧に指まで突っ込む。続けて足に噛み付き、腰の伝話を奪って粉々に踏みつけ――
「アルくん、子供達をお願い」
リアリュールの指示で、アルドは御者から手綱を奪う。
荷馬車ごと避難させようという訳だ。
「ぼくも御一緒します」
子供達を奥に寄せ、シグリッドがその前に立ちはだかる。
リアリュールが間に入って牽制する間に、荷馬車は遠く離れて行った。
「はァい残念賞ォーゥ。両手が後ろに回る準備はオーケー?」
それでも追いすがろうとした賊達に、サンカが銃を突き付ける。
「ま、うまくやれなかったアンタらのミスだ。子供ナメすぎてンだよ」
賊は五人、うち二人が覚醒者だ。
「おっと、逃がしゃしねぇぜ?」
逃げようとした賊達の足元に、セレナイトが威嚇の矢を射かける。
「未来ある子供を使った商売なんざ、反吐が出るぜ……根絶するには時間かかりそうだが、絶対にほうってはおけねぇよ!」
それでも逃げるなら次は強弾をぶち込むが、良いんだな?
「投降すンなら命だけは勘弁してやるが、どうする?」
サンカの銃弾は威嚇だけに留まらず、一人の足の甲を撃ち砕いた。
一般人だが、この程度で死にはしないだろう。
それがただの脅しではないと悟った三人は、戦意を失い両手を上げる。
リアリュールがそれを素早く縛り上げた。
だが、残る二人は執拗に食い下がる。
「……あいにくですが、因果応報です。あなた方も、その先の人たちも」
相手が同類なら遠慮はいらないと、ネージュは全力で容赦なく刃を叩き付けた。
太刀に持ち替えたサンカが攻めの構えから踏み込んで、渾身の一撃を叩き込む。
「――真ッ二ツだ」
これで死んでも、知ったこっちゃない。
アジトを抑えた彼等は、内部を虱潰しに探して関係書類を押収、ついでに檻の中のパルムを救出。
だが、証拠となる筈の書類には符丁が使われている為、そのままでは取引先もわからなかった。
「これまで子ども達をどこへ売った?」
ジュードはロープで縛り上げた賊の眉間に銃口を押し当てる。
鳴かない鳥は殺す――それで、売られてしまった子どもに繋がる情報が一つでも多く手に入るなら。
「俺はこの手がいくら汚れても構わないんだよ?」
だが、エアルドフリスがそれを止めた。
「手を汚す価値は無い」
爪を剥がす位で勘弁してやろうじゃないか。
「買い手を教えれば然るべき筋に執り成してやらん事も無い」
だが彼等は、ただ港に運んでるだけでその先は知らないと言い張った。
「仕方ない。俺は慈悲深いんでね、焼死か溺死か選ばせて差し上げよう」
「待てよ、本当に知らねぇんだって!」
どうやら、ここから先は然るべき組織の管轄になる様だ。
「しかし、ヴァネッサ女史へ引き渡して終わりという訳にはいくまいな。あんたの友達……ニコラといったか」
彼の行方も、まだわからないことだし。
「ま、乗りかかった船なのでね」
港に帰るのは、もう少し先の事になりそうだ――
サンカ・アルフヴァーク(ka0720)は、アルドの背中をポンと叩く。
「ま、よろしく頼むぜアル君よ。お前の街だしな」
「うん。こっちこそ、よろしく」
ぺこりと下げたアルドのツンツン頭を、リアリュール(ka2003)がくしゃっと撫でた。
「話してくれてありがとう、頼ってくれて嬉しいわ」
誘拐なんて許せないし、見逃していたら治安もよくならない。
「アルくんはそういうの熱心よね」
ところで、お願いがあるんだけど。
「アルくんには今回、囮以外の事でいろいろと力を借りたいの」
「街の事をよく知ってるアルドお兄さんが捕まっちゃったら、困ると思うんだー」
その代わりに、とユノ(ka0806)が囮に立候補する。
「じゃあ、僕も囮でお願いします」
シグリッド=リンドベリ(ka0248)が手を挙げた。
「追跡には土地勘のある人が必要ですからね」
「アルくんは今回の作戦の要だよ」
リアリュールが続ける。
「町に不案内な私たちの補助、仲間内の繋ぎ役に、手が空いた時は見張りにも加わって欲しいし」
それと、もうひとつ。
「このことは私たちの中でだけで終わらせてはいけないわ。ヴァネッサ女史に今回の事件のことを知らせてね」
捕縛後の賊の処遇も頼みたいし。
「わかった。すぐ引き渡せるように頼んどくな」
助けた子供達は、とりあえず施設で預かれば良いだろう。
数刻後。
囮の二人はパルムと装備品を仲間に預ける。
シグリッドのパルムは、小さなリュックを背負っていた。
「荷物運びのお手伝い、よろしくお願いしますね」
中身は筆記用具とカッターの刃、それにミニライトだ。
「危なくなったらユノさんちのパルムさんと一緒に全力で逃げて下さいね?」
『きゅー』
そして、二人は薄暗い路地裏に足を踏み入れた。
「迷子のペットを探すフリでもしておけば食いついてくれるでしょうか……」
二人は捨てる寸前のボロ服や靴を借り、髪はボサボサ、肌も泥で汚し、今やどこから見ても下町の浮浪児だ。
「シグお兄さん、ここ行き止まりだよ?」
ユノがシグリッドの腕を引っ張り、元来た道を戻ろうとした、その時。
「今日はなかなか良い獲物がかかったじゃねぇか」
人相の悪い男達が行く手を塞いだ。
「な、何です――なんだ、お前ら!」
つい普段の丁寧口調で言いそうになり、シグリッドは慌てて言い直す。
「噂の人攫いか!」
「人さらいって悪い人だよね? きゃー! 変態さんだっー! 助けてー!」
声を限りに叫ぶユノ。
しかし、誰も助けには来なかった。
下卑た笑みを浮かべた賊達は、二人に猿轡をかませ、目隠しをし、手足を縛って荷物の様に担ぎ上げる。
確かに助けは来ない。
しかし密かに後をつけている者達がいる事に、賊達は気付いていなかった。
「これは、絶対助けなくては、ですね」
ネージュ(ka0049)とサンカは少し距離を置いて、物陰に身を隠しながら尾行する。
暫く行ったら、怪しまれない様に他の組と交代だ。
次に引き継いだエアルドフリス(ka1856)とジュード・エアハート(ka0410)は、フラフラとあちこちの建物を覗くふりをしながら付いて行った。
「まったくもって……胸糞悪い」
エアルドフリスが小声で吐き捨てる。
裏通りにも守るべき矜持はある筈だが、彼等はそれさえも捨ててしまったのだろうか。
「やれ、人攫いは感心しないね」
三組目、リアリュールと組んだリョースアールヴァル(ka0427)は苦笑いを浮かべる。
「悪い子には、少々お仕置きをしないとね」
屋根の上を渡って賊を追いつつ、セレナイト・アインツヴァイア(ka0900)は鼻の頭に皺を寄せた。
「……ここはホント空気悪ィな」
実際に悪臭が淀んでもいるが、それ以上に雰囲気が悪い。
「何が起こるかわからねぇし、気ィ抜かねぇようにしないとな……」
賊の動きを上から見て尾行が交代するタイミングを割り出し、同行したアルドに先回りのルートを訊きながら、地上の仲間に伝話で指示を出す。
「匂いはここで途切れてるか」
囮の匂いを柴犬に追わせていたルシエド(ka1240)は、賊の方に対象を切り替える。
「この匂い、追えるか?」
柴犬は暫く足跡の周辺を嗅ぎ周ると、その先へと歩き出した。
人ひとりがやっと通れる程の細い路地を縫って、何度も角を曲がり、やがて着いたのは比較的大きな通りに面した三階建ての建物だった。
「囮のやつ、うまくやれるといいが……」
セレナイトが呟く。
どこかにパルムが侵入出来そうな穴はあるだろうか。
建物の裏手に面した細い路地には裏口があり、その脇に小さな通気口があった。
恐らくトイレだろう。
しかしそこを塞ぐ鉄格子がなかったとしても、身長50cm程と意外に大きいパルムは通れそうもない。
と、表の方から犬の吠える声が聞こえた。
何事かと驚いた賊達が次々に顔を出し――
「悪い、こいつオレの犬なんだ」
飛び出したルシエドが柴犬を呼び寄せる。
「なんかヤバそうな匂いでもしたのかな。こいつそういうトコ鼻が利くからさ!」
余計な事を言ったのは、自分と犬に賊達の注意を向けさせる為だ。
「よォし、この隙に潜り込んじまえ!」
サンカが囮から預かったパルムをそっとリリース、犬に気を取られた賊達の背後から玄関に滑り込ませた。
それを見届け、ルシエドは柴犬と共に一目散。
パルムの潜入はとりあえず成功、後は上手く行く事を祈るしかない。
見張りは二人一組で表と裏に一組ずつ、手の空いた組は休憩と情報収集に当たる事になった。
アルドを含めて全部で九人だから、少しずつ組み合わせを変えれば常に誰か一人は完全に休めるだろう――ただし、組み合わせは戦力が偏らない様に。
「前の建物に空きがあれば一番なのだけれどね?」
リョースアールヴァルの問いに、ルシエドが答えた。
「こういう所は出すモノさえ出しゃ融通が利くもんさ」
見返りが充分なら密告もしない、法律も良識も通用しない、全てはカネ次第の世界。
わかりやすいと言えば非常にわかりやすくシンプルだ。
それを良しとはしないが、場のルールには従うしかないのも事実。
いくらかの金を握らせ、彼等はアジトの表と裏それぞれに見張り場所を確保した。
一方、こちらはアジトの中。
縄と猿轡を解かれた囮の二人は、身体検査もされずに地下室に放り込まれた。
どうせ何も持っている筈がないと思われたのだろう、お陰でユノは様々な道具を中に持ち込む事が出来た。
(ぼくも素直に隠し持って来た方が良かったでしょうか……)
シグリッドの頼みの綱、パルムはまだ来ない。
しかし、待っている時間も無駄にする事は出来なかった。
中は真っ暗、他の子供達の様子もわからない。
「ぼく達どうなるの? どこかに売られるの? ねえ、お願いだから何か喋ってよ!」
戸口の外に立った見張りに向かって、涙声で訴えかけてみる。
上手く同情を引く事が出来れば、雑談の中でうっかり口を滑らせるかもしれない。
そこで少しでも情報を――と思ったのだが。
「うるせぇぞガキ、またふん縛って猿轡かまされてぇか!」
それは困る。困るけれど黙っている訳にもいかないのだ。
泣き落としが通じないなら、次はユノのワガママおばか作戦だ。
「お腹空いたー! のど渇いたー! 死んじゃうー!」
叫びながらじたばた暴れてみる。
「黙りやがれ!」
バァン!
力任せに開けられたドアから、大きな影が現れた。
手にしたランタンの明かりで室内が照らされた隙に、シグリッドが素早く室内を確認する。
「もう少し待ってろ!」
「あーーーっ!」
「今度は何だ!?」
「おしっこ!!」
他にも真っ暗は怖いと騒いでは明かりを確保し、自分を高く売れとアピールしては子供の値段を聞き出し、その傍若無人な態度に元気づけられた他の子供達も一緒に騒ぎ出した。
騒ぎの中から有用な情報を選り分けたシグリッドは、ユノから受け取った紙にこっそりメモを取っていく。
やがて余りの騒がしさに閉口した見張りは任務を放棄して何処かへ行ってしまった。
外に残った仲間達は、それぞれに時間を作って情報収集に当たる。
「ねえ、あそこで商売って出来るの?」
サンカと組んだジュードは、近くの酒場で近隣の住民と思しき者達に話を聞いていた。
「誰に話を付ければ良いのかな? それってどういう人達?」
だが彼等は、余所者に対しては一様に口が硬かった。
「なに、それなら酒を注いでやりゃァ良いのさ」
適当に酒を奢りながら、サンカは慣れた様子で話を聞き出していく。
ルシエドはリョースアールヴァルと組んで、アジト近くの食料品店や酒屋を回っていた。
「組織立って動いてるなら、食料とか纏まった品数の買い物してる可能性もあるよな」
そこから彼等の人物像や人数がわかるかもしれない。
「きみは随分、こういう事に慣れている様だね」
「まあな」
ルシエドは適当に金を掴ませては情報を得ていく。
「ただし、この手のネタで足元を見てくる奴は大抵ガセだかンな」
そういうのは無視だ、無視。
「最近流れてきたばかりでね。色々教えて欲しい」
エアルドフリスは街角に立つ曰くありげな女性に声をかけてみた。
しかし。
「あんた客? 冷やかしならお断りだよ!」
情報が欲しいなら、まずは買ってから――という事だが。
さて、どうしよう。
「子供の姿が見えないわね」
リアリュールは近所の子供達に話を聞こうと考えていたのだが、外を出歩いている姿は殆ど見かけなかった。
たまに見かけても、素早く姿を消してしまう。
人攫いを警戒してるのだとすれば、彼等の脅威は既に浸透しているのだろう。
それで被害に遭う子供が減れば良いが、今度は強引な手段を使うようになるかもしれない。
或いは活動範囲を拡大するか――
いずれにしても、早く潰さなくては。
やがて夜中。
持ち込んだ道具で鍵を開けたユノは、そっと廊下に忍び出た。
「僕が下見して来るから、待ってて」
他の子供達にそう言って、昼間連れて行かれた一階のトイレまで手探りで進む。
その奥にある通気口から丸めたメモを投げ、後は見付かって連れ戻されるまで内部の確認を――
通気口から投げ出された小さな紙玉を、通りかかったサンカがさりげなく拾い上げた。
見張り場所に戻って、皆の前でそれを広げる。
そこに書かれた内容と、聞き込みで得た情報、見張り中の観察結果などを合わせると……
「子供は囮を含めて七人、賊は20人程度、うち数人が覚醒者、という事になるでしょうか」
ネージュが言った。
アジトからは「荷物」が定期的に運び出され、次は二日後の夜になるらしい事も。
パルム達が戻って来ないのは気になるが、恐らく途中で何か彼等の琴線に触れるものに出くわしたのだろう。
秘密の会議か、極秘資料か。パルムを探せば、きっとそれも見付かるだろう。
二日後の夜。
アジトの表玄関に、荷馬車が静かに停まった。
それが再び動き出すのを、ネージュ、サンカ、セレナイト、リアリュール、そしてアルドの五人が少し離れた所で待ち伏せる。
裏口にはジュード、ルシエド、表にはリョースアールヴァル、エアルドフリスの二組が待機していた。
「エアさん、やり過ぎないでね?」
表と裏に別れる前、ジュードがエアルドフリスに声をかける。
「自分こそ、熱くなりすぎるなよ」
「大丈夫、情報源は残しとかないとね」
その価値がある間だけは。
やがて中から「荷物」が運び出される。
手足を縛られ猿轡をかまされて、あれではユノも現状を知らせる暗号のメンコを落とす事は出来ないだろう。
だがそれで作戦に変更が加えられる事はなかった。
あらゆる事態を想定しておけば、何が起きても対処は可能だ。
「身寄りのない子供が攫われ、売り物にされる……貧民街じゃ、よくある事だろうさ」
次々と運び出される子供達の姿を見て、ルシエドが呟く。
「けど、子供だからって蹂躙されて当然な訳無ぇ」
ジュードの脳裏には、昔の自分と、自分と同じ境遇だった子達の記憶がちらついていた。
(大人に好き勝手にされる子ども――助けるから。絶対に)
やがて七人の子供を乗せた荷馬車が静かに走り出す。
角を曲がって姿を消した、その直後……伝話が鳴った。
突入の合図だ。
リョースアールヴァルと共に表玄関から飛び込んだエアルドフリスは、まず見張りを黙らせる。
眠りのガスに包まれた賊は、あっさり崩れ落ちた。
「こいつは一般人の様だな」
縄を掛けて猿轡をかませ、念の為に伝話も取り上げて、二人は奥の部屋へ。
一仕事を終えて安心しきった様子の賊達に、再びのスリープクラウド。
「おや、君は強いのだね?」
眠らなかった賊の足を、踏み込んだリョースアールヴァルがフラメアで打ち払う。
だが敵も覚醒者、踏み留まって反撃に出た。
片手の銃を連射しつつ、長剣を振り回して来る。
「少し静かにしてもらえると、助かるね」
抵抗するなら容赦はしない。
中ほどを持った槍を鋭く一閃、致命傷の一歩手前まで追い詰める。
「一人も逃がさんよ」
エアルドフリスは魔法で追撃、やりすぎて殺してしまったとしても不可抗力だ。
表への通路を塞がれ、残った賊達は裏口へと逃げる。
だがそこではジュードとルシエドが待ち構えていた。
「悪党にゃ、目には目を、だ」
素早く身を屈めたルシエドは、走って来る賊に片っ端から足払いをかける。
「人を食い物にする奴は、何されたって文句は言えねえよな?」
ニヤリ。
一般人でも容赦なくぶちのめす、覚醒者なら尚更だ。
ランアウトからのスラッシュエッジで先手必勝、転がした所にジュードが強弾を撃ち込む。
リロードする間も惜しいと弾が切れたら武器を持ち替え、足を狙ってひたすら連射だ。
「これ以上先には進ませません!」
荷馬車の前に、両腕を広げたネージュが立ちはだかる。
御者が思わず手綱を引いた瞬間、他の仲間達が一斉に周囲を取り囲んだ。
「おーおーよく頑張った。もう一息だから気ィ抜くなよ? きっちり助けちゃる」
サンカが子供達に声をかけ、リアリュールがまず囮二人の縄を切る。
「もう大丈夫ですよ」
自由になったシグリッドは他の子供達を次々に解放していった。
「腹ペコの怨みを思い知るがいいのーっ!!」
脱走の罰として飯抜きの刑を食らっていたユノが、武器を受け取りざま賊に飛び掛かる。
「目潰しーっ!」
顔面に魔法をぶつけ、更にはご丁寧に指まで突っ込む。続けて足に噛み付き、腰の伝話を奪って粉々に踏みつけ――
「アルくん、子供達をお願い」
リアリュールの指示で、アルドは御者から手綱を奪う。
荷馬車ごと避難させようという訳だ。
「ぼくも御一緒します」
子供達を奥に寄せ、シグリッドがその前に立ちはだかる。
リアリュールが間に入って牽制する間に、荷馬車は遠く離れて行った。
「はァい残念賞ォーゥ。両手が後ろに回る準備はオーケー?」
それでも追いすがろうとした賊達に、サンカが銃を突き付ける。
「ま、うまくやれなかったアンタらのミスだ。子供ナメすぎてンだよ」
賊は五人、うち二人が覚醒者だ。
「おっと、逃がしゃしねぇぜ?」
逃げようとした賊達の足元に、セレナイトが威嚇の矢を射かける。
「未来ある子供を使った商売なんざ、反吐が出るぜ……根絶するには時間かかりそうだが、絶対にほうってはおけねぇよ!」
それでも逃げるなら次は強弾をぶち込むが、良いんだな?
「投降すンなら命だけは勘弁してやるが、どうする?」
サンカの銃弾は威嚇だけに留まらず、一人の足の甲を撃ち砕いた。
一般人だが、この程度で死にはしないだろう。
それがただの脅しではないと悟った三人は、戦意を失い両手を上げる。
リアリュールがそれを素早く縛り上げた。
だが、残る二人は執拗に食い下がる。
「……あいにくですが、因果応報です。あなた方も、その先の人たちも」
相手が同類なら遠慮はいらないと、ネージュは全力で容赦なく刃を叩き付けた。
太刀に持ち替えたサンカが攻めの構えから踏み込んで、渾身の一撃を叩き込む。
「――真ッ二ツだ」
これで死んでも、知ったこっちゃない。
アジトを抑えた彼等は、内部を虱潰しに探して関係書類を押収、ついでに檻の中のパルムを救出。
だが、証拠となる筈の書類には符丁が使われている為、そのままでは取引先もわからなかった。
「これまで子ども達をどこへ売った?」
ジュードはロープで縛り上げた賊の眉間に銃口を押し当てる。
鳴かない鳥は殺す――それで、売られてしまった子どもに繋がる情報が一つでも多く手に入るなら。
「俺はこの手がいくら汚れても構わないんだよ?」
だが、エアルドフリスがそれを止めた。
「手を汚す価値は無い」
爪を剥がす位で勘弁してやろうじゃないか。
「買い手を教えれば然るべき筋に執り成してやらん事も無い」
だが彼等は、ただ港に運んでるだけでその先は知らないと言い張った。
「仕方ない。俺は慈悲深いんでね、焼死か溺死か選ばせて差し上げよう」
「待てよ、本当に知らねぇんだって!」
どうやら、ここから先は然るべき組織の管轄になる様だ。
「しかし、ヴァネッサ女史へ引き渡して終わりという訳にはいくまいな。あんたの友達……ニコラといったか」
彼の行方も、まだわからないことだし。
「ま、乗りかかった船なのでね」
港に帰るのは、もう少し先の事になりそうだ――
依頼結果
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作戦相談卓 エアルドフリス(ka1856) 人間(クリムゾンウェスト)|30才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2014/09/26 14:22:07 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/09/22 16:29:13 |
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リーダーに質問卓 シグリッド=リンドベリ(ka0248) 人間(リアルブルー)|15才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2014/09/25 21:57:36 |