綿津見に光る赤

マスター:黒木茨

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/09/27 15:00
完成日
2014/10/05 10:11

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 穏やかな海であった。白波が船底を打ち、船員の頭上には太陽が燦々と輝いている。ある船員がふと甲板から海を覗き込んだところ、青い海の中に五匹、エビらしきものが見えた。奇妙なことに、そのエビは船の上からでもわかるほどに目立つような赤い色をし……非常に、巨大であった。
「なんだあのエビ、でけえな」
「エビ? なんでこんなところに」
 船員が口々に言う中、巨大なエビの群れは船に向かって進む。接近したエビはそれぞれ鋏を突き立てて船体を大きく揺らした。船員は予想だにしていなかった襲撃に、怯え叫びながら震えるだけだった。何度目かの揺れの後、誰かがふと思い出して船内に控えていた女性ハンターを呼び出す。
「おい、ハンターさんよお……なんとかしてくれよ!」
「えええっ!? あの数は無理!」
 呼び出された女性ハンターは件のエビの様子を覗き込んで言う。彼女は新米も新米であり、この船への同乗もきっと何も起こらないはずなので、居るだけで大丈夫だからと言われたからしたようなものだ。
「無理かどうかじゃない、やってくれ!」
「溺れたときは俺たちが助けるから!」
 そう懇願されて水音と飛沫を上げながら、戦場となる海へ落ちる女性ハンター。多数の相手に苦戦しつつも、どうにか群れの中の一匹を倒したところで彼女に異変が起こる。それを見た船員たちが叫んだ。
「……浮かんでこない……どころか」
「沈んでいくぞ! 引き上げろ!」 
 時間切れだった。失神したまま沈み行く女性ハンターを船員は揺れる船に耐えながら急いで引き上げる。
「やっぱり……無理だった……」
 その後、意識を取り戻した女性ハンターが呟いたのだった。数を減らしてもなおエビは船を襲っている。
 どうにかエビの潜む海域を抜け、逃げ切った彼らが巨大エビの情報を報告するまでに時間はかからなかった。

●依頼ですよ
「……で、簡単にまとめると巨大エビが出た。たぶん雑魔。何でか知らないけど群れで行動してるっぽくて今は海域内に四匹いる、エビは船を襲うけどその海域を通れないと困るから倒してこい……って書いてあった。手紙に」
 ジト目の受付嬢が投げやりに説明を終えた。受付嬢は、暫く間をあけてふー、と溜息をついて付け加える。
「まあ新人一人が頑張って一匹倒せたし。溺れなければ大丈夫だよ。たぶん」
 溺れなければ……とは。ともかく、この巨大エビ退治。請けるかどうかはあなた次第だ

リプレイ本文

●深更の赤
 星が夜空に煌く頃、船はエビの出現地点を目指して進んでいた。船員の一人が弓月 幸子(ka1749)の指示で篝火を灯す。揺らめく炎は赤く、その光が夜の海を彩っている。
 秋の色を乗せた涼しい風が吹く甲板の上で、猫耳カチューシャを頭に、顔に華美な仮面を付けた男が立つ。
「仮面の海賊シーキャット参上!!」
 高らかに叫ぶのはロジャー=ウィステリアランド(ka2900)であるが、幸子の頭にもある猫耳カチューシャを見て出掛かっていた更なる口上を押し込め、換わりにこう言う。
「って被ってる!?」
 ……仮面はかろうじて被っていない! きっと大丈夫!
「効果あるといいんですけどねぇ……」
 ロジャーがちょっとした寸劇? を演じている中、聖盾(ka2154)はランタンに火を灯して腰に吊るしてみる。灯された篝火や、龍崎・カズマ(ka0178)が今吊るしているランタンもあって、船は海原の中でぱぁっとスポットライトでも浴びたようになっている。
 最後に、セレナ・デュヴァル(ka0206)がリトルファイアで生み出した火球を宙に浮かべた。
「ロジャーさん頑張りましょうね! 目指せ大成功ですよ!」
「おうよ!」
 エビとの戦闘を前にして、聖盾とロジャーは気合を入れた。
「まるでお祭りみたいだね」
 そして傍らでは幸子が船の様子を見て言った。それぞれが準備を進めている。ロジャーは投げ縄の作成を終えた後、銃のバレルにライトを括りつけていた。
 ロジャーはこれを凄いアイデアだろ! とでも言いそうな得意げなドヤ顔でカズマを見つめるものの。
「……そういうの、リアルブルーではもうあるぜ」
「な、なんだって!?」
 ツッコミを受けて驚くロジャーをスルーしつつ、カズマは海の様子を眺める。船の周りこそ明るいが遠くとなるとそうもいかない。
 カズマが目視での索敵は苦しいことを確認したその時、船員が船が目的地周辺に突入したことを告げた。
「そろそろだな」
 カズマが事前に前任の女性ハンターから聞いていた話によれば、エビは船に接近した後に、その鋏で船を攻撃するという。もしも、とはいえ夜の海に飛び込むなどということは出来るだけ避けたいものだ。
(生憎と、今までの俺の人生で楽観視ってものは存在しなくてな)
 そう心の中で呟くカズマの持つLEDライトから放たれた細い光が海面を照らす。探照灯のように動きまわる光の一端に、鮮やかな赤が見えた。

●大海老退治
「居たぜ! まだ気付かれてねぇ」
 敵を確認したカズマはそれを仲間に伝え、水中銃を構えた。巨大エビの頭を狙って放たれた銃弾は甲殻を凹ませ、群れの一匹に傷を与える。
「さーてエビさん退治ですよ~」
 次いで知らせを受けた聖盾は船に備え付けられた大砲の前に立ち、エビの群れへと狙いを定めて砲弾の雨を降らせていく。しかし、元の大砲の精度が悪いこともあるのか砲弾のほとんどはエビの横をすり抜けて海の中へ沈んでいった。
 それをフォローすべくすかさずロジャーの強弾が跳ぶ。狙い通りエビの鋏部分に当たったその弾は鋏を粉砕させるというほどではないにしても、エビに大きくダメージを与えるには充分な威力だった。
「随分美味しそうな敵ですが……食べれないのが残念ですね……」
「ボクのターン!」
 セレナが、幸子がアースバレットを発動する。幸子がデッキホルダーからカードを引き出して、ちらりとカードを見ると同時に現れた二人分の魔法、大量の石礫はエビの群れの一匹に降りかかり、やがてそれを跡形もなく消し去った。
「……折角茹で上がったような色味もしているのに……無念です」
 セレナが先ほどの言葉の続きを言い終わり、
「水には土だったよね」
 と、幸子が呟いたところで、残された三匹の巨大エビが船に向かって大移動を行った。接近した群れがその鋏で船を突き、揺らす。そしてハンターが降りてこないことを確認した巨大エビのうち一匹が甲板まで登ってきた。
 後続の二匹は未だ慣れない動きに手間取りながらも、船体にしがみ付くようによじ登ろうとしている。カズマは登ってきた敵に対応すべく武器をナイフに持ち替える。
「少し眩しいですよぉ」
 聖盾がホーリーセイバーでカズマの持つナイフを光り輝かせた。白い光を纏わせたナイフは瞬時に甲板の巨大エビを貫き、殻を砕いていく。
「来たな! これを使うときが!」
 その言葉とともに、ロジャーが銃に括りつけていたライトを点ける。敵の目に光を当てるよう照準を合わせ、瞬間的に強化した弾をお見舞いする。その射撃によりエビは致命傷を負い、消滅した。
「まだ居るよ!」
 幸子が前衛に立つカズマにウィンドガストをかけ甲板での戦闘に備えるところを見ながら、セレナは自分と船の間に命綱を繋ぎ、海へ飛び込んだ。甲板にどうにか登ることを試みていた二匹のエビはセレナに注意を向け、その結果見事アースバレットを受けることになる。
 一匹にしか当たらなかったものの、甲板に上がっても海に居ても攻撃を免れないこの状況が巨大エビに焦りを感じさせたのだろうか。
 詳細は知ることができないが、二匹は一か八かで船体を登り、ハンターへ直接攻撃する手段に出た。
「……これで離れてくれるといいのですが」
 セレナがマジックアローで牽制するが、もう少しのところでエビに回避され、届かずに甲板への侵入を許してしまう。船の上で巨大エビはその脚を動かし、ハンターに接近した。エビのうち一匹は掲げた鋏を聖盾に振り下ろし、もう一匹は鋏でカズマの腹部を突こうと試みた。
「危ないですね!」
 こう口走った聖盾が寸でのところで、カズマは周囲に吹いた魔法の風に助けられた形でエビの鋏を回避し、反撃に移る。聖盾の魔法によって生み出された黒い塊の打撃によってエビの片割れが倒され、またもう一体はカズマのナイフを受けて消滅した。
 敵の殲滅を確認したセレナが命綱を手繰り、海中から船に戻ってくる。
「昼間なら風景を楽しめたんだけど、少し残念だよ」
 長いようで短かった戦闘が終わり、静かになった海を眺めながら幸子が言った。海風がハンターたちの肌を撫でる。目的地を変えた船のその中から、一人の船員が出てきた。
「皆さんお疲れ様でした。船はこのまま港へ戻ります」
 船員が告げ、船内に戻っていった暫く後、白んだ東の空と海の隙間から太陽が覗いた。
「殲滅しといて何だが、あのエビ達も歪虚に憑かれただけ、運が悪かっただけなんだよな……ガラじゃあねぇがせめて祈りくらいは」
 朝焼けの色に染まる空の下、今までつけていた猫耳と仮面を外し、ロジャーが祈りを捧げる。聖盾も続くように神に祈った後、
「ロジャーさん、なんだか船の上にいる姿が妙に様になってますねぇ」
 と、ロジャーの様子を見て一言。
「ところで」
 聖盾のそんな一言を頂いたロジャーはふと先ほどまでの調子を崩し、いつものペースに戻った。
「前に奴等と戦ったっていう女ハンターちゃんに顛末を報告したいんだけど、誰か連絡先知らない?」
 ロジャーの言っていることはまともなように見えるが……しかし、その端にどこか下心が見え隠れするのは気のせいだろうか……。

●前任者のその後
「……うーん……今回はいいです。どうぞ」
 巨大エビ退治の後日、受付嬢は少し考えた後、セレナを前任の女性ハンターの元へ案内した。突然の来訪者に女性ハンターは縮こまる。彼女の警戒が解けるのを待ってセレナは淡々と告げた。
「敵は私たちが殲滅しました。……貴方が一人で立ち向かった勇気。そして、一人で一体倒せた事は、凄い事……なのですから。なので、あまり気に病まず……」
 その言葉を聞いた女性ハンターはゆっくりと頷き、言う。
「……そうですか。前にもハンターの人が来て……龍崎さんって人だったんですけど、船乗りを守りきれたんだから誇っていいっていってくれて……。それにあなたも……ありがとうございます」
 ありがとうございます、と頭を下げた女性ハンターは動きを止めて顔を上げ、最後にこう言った。
「やめようかと思ってたけど……このままハンター、続けてみます……」

依頼結果

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MVP一覧

  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマka0178

重体一覧

参加者一覧

  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマ(ka0178
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士

  • セレナ・デュヴァル(ka0206
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 爆炎を超えし者
    ネフィリア・レインフォード(ka0444
    エルフ|14才|女性|霊闘士
  • デュエリスト
    弓月 幸子(ka1749
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • うすいほんがよみたくて
    聖盾(ka2154
    エルフ|24才|女性|聖導士
  • Xカウンターショット
    ロジャー=ウィステリアランド(ka2900
    人間(紅)|19才|男性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
ロジャー=ウィステリアランド(ka2900
人間(クリムゾンウェスト)|19才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2014/09/27 11:37:59
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/09/22 19:20:34