ゲスト
(ka0000)
百体のコボルド殲滅戦
マスター:鳴海惣流

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/12/01 07:30
- 完成日
- 2016/12/07 02:14
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●グラズヘイム王国ラスリド領郊外
コボルドの大群が現れた。なんとかしてほしい。
領民からの懇願を受け、領主のラスリド伯爵は腹心の部下を派遣した。
それが現在領主の私兵を預かる疾影士のザスターだった。
彼は唖然として前方に広がる平原を眺める。
普段なら穏やかな風が木々を揺らし、自然豊かな景色と爽やか空気を堪能できる場所だという。
それがどうだ。増えに増えたコボルドに占拠されているではないか。
産めや増やせやと励んだ結果、さほど長い日数も経ずに草原を埋め尽くすほどの軍勢になったのである。
「これは……殲滅するのに骨が折れそうだ」
とはいえラスリド領の兵士はコボルドに比べれば質も士気も高い。さほど苦戦はしないように思えた。
「時間はかかるが生命力の維持を優先し、防御と戦闘を繰り返して着実に敵の数を削っていくか」
呟くザスターのもとに、偵察の兵士が戻って来た。
「ご報告します。敵の背後にどうやらコボルドどもの巣があるようです」
「巣だと? 放置しておけんな」
だがザスターが進軍を告げる前に、新たな報告を持った別の兵士が駆け寄る。
「大変です。南の村にコボルドの一団が押し寄せている模様です!」
「どうしますか?」
尋ねられたザスターは忌々しげに舌打ちをする。
「巣を潰しても村が壊滅させられては意味がない。我らは領主の兵なのだ。住民の無事を優先する」
「はっ! ではコボルドの巣は後回しに?」
「いや。ハンターへ支援を要請しよう。彼らであれば、コボルドの大群を薙ぎ倒し、奥にあるという巣も潰してくれるだろう」
●ラスリド領内小さな村
ハンターズソサエティで依頼を受けたハンターたちを出迎えたのは、今回の雇用主となるザスターだった。
「よく来てくれた。聞き及んでいると思うが、この地より北に草原があり、そこにコボルドが巣を作ったようだ」
借りた村長の家で、テーブルの上に現場の地図を広げたザスターの説明をハンターたちは真剣な表情で聞く。
「小さな草原とはいえ、敵は全面に広がっている。そこを突破しなければ奥の巣には辿り着けない。恐らくコボルドの数は百体にも及ぶだろう」
ザスターは一度言葉を切り、椅子に座っているハンターたち一人一人の顔を見た。
「敵は何の変哲もないコボルドで、一体一体は弱い。だが脅威となるのはその数だ。気をつけてほしい。それと、一体でも逃せば他の場所でまた数を増やすかもしれない。巣も含めて全滅させてほしい。我々は村を守るために離れられない。どうかよろしくお願いする」
コボルドの大群が現れた。なんとかしてほしい。
領民からの懇願を受け、領主のラスリド伯爵は腹心の部下を派遣した。
それが現在領主の私兵を預かる疾影士のザスターだった。
彼は唖然として前方に広がる平原を眺める。
普段なら穏やかな風が木々を揺らし、自然豊かな景色と爽やか空気を堪能できる場所だという。
それがどうだ。増えに増えたコボルドに占拠されているではないか。
産めや増やせやと励んだ結果、さほど長い日数も経ずに草原を埋め尽くすほどの軍勢になったのである。
「これは……殲滅するのに骨が折れそうだ」
とはいえラスリド領の兵士はコボルドに比べれば質も士気も高い。さほど苦戦はしないように思えた。
「時間はかかるが生命力の維持を優先し、防御と戦闘を繰り返して着実に敵の数を削っていくか」
呟くザスターのもとに、偵察の兵士が戻って来た。
「ご報告します。敵の背後にどうやらコボルドどもの巣があるようです」
「巣だと? 放置しておけんな」
だがザスターが進軍を告げる前に、新たな報告を持った別の兵士が駆け寄る。
「大変です。南の村にコボルドの一団が押し寄せている模様です!」
「どうしますか?」
尋ねられたザスターは忌々しげに舌打ちをする。
「巣を潰しても村が壊滅させられては意味がない。我らは領主の兵なのだ。住民の無事を優先する」
「はっ! ではコボルドの巣は後回しに?」
「いや。ハンターへ支援を要請しよう。彼らであれば、コボルドの大群を薙ぎ倒し、奥にあるという巣も潰してくれるだろう」
●ラスリド領内小さな村
ハンターズソサエティで依頼を受けたハンターたちを出迎えたのは、今回の雇用主となるザスターだった。
「よく来てくれた。聞き及んでいると思うが、この地より北に草原があり、そこにコボルドが巣を作ったようだ」
借りた村長の家で、テーブルの上に現場の地図を広げたザスターの説明をハンターたちは真剣な表情で聞く。
「小さな草原とはいえ、敵は全面に広がっている。そこを突破しなければ奥の巣には辿り着けない。恐らくコボルドの数は百体にも及ぶだろう」
ザスターは一度言葉を切り、椅子に座っているハンターたち一人一人の顔を見た。
「敵は何の変哲もないコボルドで、一体一体は弱い。だが脅威となるのはその数だ。気をつけてほしい。それと、一体でも逃せば他の場所でまた数を増やすかもしれない。巣も含めて全滅させてほしい。我々は村を守るために離れられない。どうかよろしくお願いする」
リプレイ本文
●草原にて
依頼を受けて現場に到着したハンターたちが見たのは、文字通り草原を埋め尽くすコボルドの大群だった。敵は好戦的らしく、姿を現した一行を見て、続々と殺意を目に宿らせる。
涼やかなはずの風が生暖かく感じられる奇妙な緊張感の真ん中で、夢路 まよい(ka1328)が額に手を当て、軽く背伸びをして無限に続きそうなコボルドの隊列を眺める。
「わぁ、コボルドがわらわらいっぱい~♪ これがいわゆる百匹わんちゃんってやつ? 一発で何匹倒せるかな?」
純粋な好奇心に胸を躍らせるまよいは、心からワクワクしていた。
「コボルドの繁殖力は相変わらず脅威ね」
呟くように言ったコントラルト(ka4753)は、コボルドの大群を見渡したあと、過去の出来事を思い出す。
「リーランで見た鴉に似た顔の黒衣の歪虚。アレがやっているのが成功すると、この速度で強いのが増える可能性があるのよね」
若干の警戒を抱くも、コントラルトは考え事をやめて前方のコボルドへ視線を戻す。
「まあ、とにかく、ここに関してはさっくりと片付けてしまいましょう」
「コボルドも人間も、どちらも共存できればこうはならないのに……」
言ったのは羊谷 めい(ka0669)だ。基本的に戦いを望まない彼女は、どこかおどおどとしながらも、悲しげに睫毛を伏せた。
セレス・フュラー(ka6276)が、すぐにめいへ同調する。
「本当よね。それに巣で大人しくしてればいいものを、こんなところに出てくるからさ……」
嘆息したあと、セレスは言葉を続ける。
「ま、コボルドにも生活があるから仕方ないんだけど、それは村民も同じことだからさ。……ごめんね」
「はい。わたしたちを優先させてもらいます。あなたたちは人を襲ってしまう、悲しみを生んでしまうから」
顔を上げためいには、決意が満ちていた。
「おぉ~これはまた圧巻だなぁ……。まさに大軍勢……いや、死兵の軍勢と言った所か?」
「これだけ増えると、さすがに壮観だな」
ゼクス・シュトゥルムフート(ka5529)が口にした僅かな感嘆を含んだ感想に、鞍馬 真(ka5819)が頷いた。
敵の数は事前に聞いていたが、実際に目の当たりにすると、インパクトは想像以上だった。
「とはいえ、練度からすれば新兵以下って所か……やれやれ」
着火の指輪で紙巻煙草に火をつけたゼクスは、軽く肩を竦めた。
「確かに数は脅威だが……、練度が相応に伴って初めて成立するものだ。戦いってのは、ただ愚直に進めば良いってものではない事を教えてやるとするか」
●戦闘開始
牙から涎を滴らせ、今にも飛びかかってきそうなコボルドから目を離さず、簡易な話し合い行うハンターの中でまよいが手を上げる。
「私の魔法ならほぼ一網打尽にできると思うわよ」
自信ありげに言ったあとで、髪を風になびかせるまよいはでも、と付け加える。
「少し時間がかかって、その間は無防備になるのよね」
「それならあたしが、まよい君の護衛を引き受けるよ」
親指を立てた笑顔のセレスが、白い歯を輝かせた。
セレスだけでなく、真も前衛に立つのを選択する。
「他にも術師がいるし、魔法を撃ち込むまでの間、私も後衛のガードに専念しよう」
前衛をセレスと真が務めるのが決まり、各ハンターはそれぞれのタイミングで動き出す。
■
「かすり傷以上の怪我人は出したくありません。そのために傷を癒し、守るための力を振るいます」
コボルドがハンターへ群がろうとする前に、最前列で皆を守ってくれる前衛のうち、セレスにプロテクションをかける。
「ありがとう、めい君。これで百人力だよ。不安なく、先手を取りにいけるからね」
投具のこうもりを狙ったコボルドの頭部へ命中させ、セレスは最初の一体を片付けた。
隣で見ていた真も後衛の守りを優先しつつ、薙ぎ払いで前方にいる複数のコボルドを斬り捨てる。
「防衛の間は守りに専念し、あまり前へ出すぎないように気をつけないとな」
術者たちの位置を改めて確認する真の背中に守られながら、コントラルトはファイアスローワーを発動する。
「危険だから巻き込まれないように少し離れて。巣にはちょっと届かないだろうけど、一気に敵を減らす大掃除を試みるわ」
マテリアルチャージャーで威力が上乗せされた炎の力を持つ破壊エネルギーが、二十体以上ものコボルドをただの肉塊に変えた。
吹いてくる風で舞い上がりそうになる髪を軽く手で押さえ、コントラルトはクールに微笑む。
「この調子でガンガン減らしていきましょう。大掃除するときも、まずは大雑把にでもゴミを減らすものね」
■
数は減っても、まだ敵は大群。
紫煙をくゆらせていたゼクスは、コボルドをギリギリまで引きつけたタイミングで、肺を満たした煙を吐きながら煙草を指で弾く。
「さて……んじゃまあ、お仕事に取り掛かるとしましょうか。サボってたら、嫁さんに怒られるのでね」
くるくると宙で回転する煙草が地面へ落ちると同時に、噴き上げるように炎の波が荒れ狂う。
「煙草を吸う時は火の元に気をつけろよ。もっとも俺の炎は、火というには過激だがな」
放ったファイアスローワーで十体以上ものコボルドを死滅させたゼクスは、そう言うと軽く口端を吊り上げた。
■
エクステンドキャストで集中力を高めるまよい。
「魔法を撃つまではもう少しかかるよ。だから、そのままの位置で防戦をお願いするね」
コントラルトとゼクスのおかげで中央方面の敵は減少したが、草原にはまだまだコボルドが存在する。一体たりとも逃がさないようにするためにも、まよいの広範囲攻撃は有効だ。
護衛を頼まれている真とセレスが前に出ると、攻撃の機会を窺っていたコボルドがわらわらと二人へ群がってきた。
「油断をする訳では無いが、これくらいの攻撃であれば……まぁ、問題ないだろう」
冷静に敵との実力差を分析した真は、囲むように配置を取るコボルドから繰り出される爪や牙をひらりひらりとかわしていく。
だが中には過去最高の一撃を、偶然にもこの機会に放つ者も現れる。そうしたクリティカルな爪撃を、真は焦らずに腕の防具で受け止め、難なく無傷で切り抜ける。
セレスにも、コボルドの集団は攻撃の手を伸ばす。四方八方から叩きつけるように振ってくる腕を、彼女はしなやかな体躯を草原に躍らせてかろやかにすり抜けていく。
華麗なマルチステップを披露するセレスに、共に前衛で多数のコボルドの爪や牙を引き受けている真が目を細める。
「見事な身のこなしだな。コボルドたちも、きっと攻撃を当てられる気がしてないだろう」
「ありがと。普通にやっても十分避けられそうな気もするけど、ほら、アレだよ。カッコイイ方がいいじゃない!」
回避しながらポーズを決めるセレスに、挑発されたと感じたコボルドがムキになる。
一方で、少し離れた位置で見ているめいは、控えめだが拍手をしていた。
「はい。カッコイイです。でも、怪我をしたらすぐに言ってくださいね。わたしが治しますから」
「了解。頼りにしてるよ!」
■
セレスたちが敵を引き受けている間に、まよいはさらに集中を高めていた。威力だけではなく、効果が及ぶ範囲までさらに拡大させるための準備に入る。
「もう少しだよ。残ってるコボルドを、ほぼ全部巻き込めるくらいのがいくからね」
ヒールが必要な状況になっていないのもあり、セレスに続いて真にもプロテクションをかけ終えためいも、コボルドの迎撃に加わることにした。
「わたしの信念は、悲しみから人々を守ること。だから、この力を振るうことに迷いません」
力強く言い放つ。確固たる彼女の覚悟が輝く断罪の杭となり、コボルドに打ち込まれる。
胴を貫かれ、悲鳴を上げる暇もなくコボルドが倒れた。めいは悲しそうに見つめて呟く。
「ごめんなさい……。でも、手は抜きません、です」
■
数の上ではまだまだコボルドが有利でも、個々の実力が違いすぎた。
戦局は五分と五分どころか、すでにハンターが押し気味である。
しかし油断は禁物だ。状況を確認するためにも、コントラルトは遠くまで見渡そうと馬上で軍用双眼鏡を覗く。
コボルド以外に異変はないかと思いきや、双眼鏡が遠くの木の枝からこちらを見下ろす小さな鴉を捉えた。詳しく確認しようとするも、鴉はすぐに飛び去ってしまう。
「今のは……。黒衣の歪虚ではなかったけれど……もういないわね」
他も注意深く観察してみるが、他に目を引くものはない。コントラルトは敵の現状のチェックを終える。
ここでまよいの魔法が発動する。
■
全員に退避を促したまよいは、威力と効果範囲を増幅させたグラビティフォールを、戦場の中央を中心に炸裂させた。
解き放たれた魔力が紫に染まる重力波を発生させる。
エクステンドキャストによって強化された魔法は威力、範囲ともに強力で、巣から出ていたのも含めて、生き残っていたすべてのコボルドに襲い掛かった。
草原に散らばっていたコボルドたちの顔が苦しげに歪む。自分たちに何が起きているのかもわからないままに、腕がひしゃげ、足が潰れ、命を奪われていく。
髪と衣服を舞い踊らせ、瞳を輝かせるまよいが見ている前で、実に四十体を超えるコボルドがその生涯を終えた。
だが、それでも十体ほどが重力の牢獄から、脱獄囚よろしくなんとか逃れていた。
「少し逃げられたけど、こんなものだよね」
悔しさに舌打ちすることもなく、まよいは淡々と事実を受け入れる。その上で彼女は、早くも次の魔法のための準備に入っていた。
■
まよいの超範囲重力波が放たれた影響で、軽く錯乱したコボルドが同胞の骸を蹴散らすように走り回る。そのうちの一体を、漆黒の蝙蝠が鋭い牙で切り裂く。
「逃げたコボルドには、あたしのコウモリをお見舞いするよっ」
本物ではなく、狙いを定めたセレスが投げ放った投具であった。
脚を奪われたコボルドの断末魔の悲鳴が響く。
確かにかなりの数ではあったが、あくまでもコボルドはコボルド。まともな力勝負であれば、セレスを始め、ハンターたちが後れを取るはずもなかった。
「もしピンチの人がいたらって思ったけど、どうやら大丈夫そうだね」
味方の様子を確認してから、セレスは他のコボルドを標的にする。
■
掃討戦へ移行したのを受け、前へ出る真はより威力の高い振動刀に持ち替えていた。間合いに捉えたコボルドを、彼はソウルエッジで強化した武器で着実に撃破していく。
先にある巣を見据えた時、真の横をどこからか伸びてきた光が瞬く間に駆け抜けていった。
敵の数が減って塊がなくなったことで、個体狙いに切り替えたゼクスのデルタレイだ。
巣の前にいた一体が頭部を貫かれて倒れる。
「巣への道は切り開いたぜ。早めの利用をお勧めだ」
「では好意に甘えて、一気に叩いてしまおう」
軽く手を上げてゼクスへ礼を告げた真に、そばにいたセレスも同意する。
「賛成。さくっと巣を攻撃して破壊、だね。他にすることないし」
一直線に巣へ向かおうとするハンターを、食い止めるだけの戦力はもうコボルドたちには残っていなかった。
■
「戦いは避けられるに越したことはありません。でも必要なら、わたしにだって覚悟はあります」
クリムゾンウェストに来て以降、めいが持ち得たものだった。
戦う力が彼女に真っ直ぐ前を見据えさせ、信念の光がコボルドを滅ぼす。
「逃げないで向かってくるなら、このままグラビティフォールで攻めるよ。巣には仲間が行ってるし、私は討ち漏らしたのを仕留めるね」
まよいの魔法攻撃もあり、コボルドの数はさらに減少していく。
「残っているコボルドもあと僅かね。こうなると個体をしっかりと潰していった方がいいわね」
完全に敵の位置がバラバラになったのもあり、コントラルトもデルタレイで残存のコボルドを討伐していった。
■
巣に到着した真は慎重な足取りで、視線を油断なく周囲に飛ばした。
「不意討ちは無し。幼体も居ないな。心置きなくと言っては変だが、駆除するとしよう」
真の刀で、数多くのコボルドを繁殖させてきた巣が破壊された。
同行していたセレスがとどめを刺し、もはや修復不可能なのは明らかだ。
だというのに、コボルドたちはそれでも戦いをやめようとはしなかった。
■
顔に苦笑を張りつけたゼクスが、小さく肩を上下させる。
彼の視界には、雄叫びを上げて迫る一体のコボルドが映っていた。
普通の人間であれば恐怖で身をすくませるだろうが、機導師として経験を積んでいるゼクスを怯ませるのは不可能だった。
「やれやれ。諦めが肝心なんだが、コボルドだから人の理屈は通じないか。仕方ない。最後まで付き合ってやるよ」
ゼクスのデルタレイが向かってきた一体と他のコボルドを貫く。
それが草原に本来の静けさが戻った瞬間だった。
●戦闘後
「とりあえず、ここはもう大丈夫そうね。無事に依頼を達成できてよかったわ。少し気になる点もあったけれど、ね」
全員で生き残りがいないか見回ったあと、コントラルトは安堵しながらも、戦闘中に見かけた奇妙な鴉を思い出していた。結局はもう現れず、単なる鴉だったのかどうかの判別もつかなかったのだが。
近くでは倒れたコボルドの、奪った命の安息を祈るめいの姿があった。
自己満足とわかっていても、彼女はそうせずにはいられなかったのである。
「どうか、いまは安らかに……」
コボルドの魂を導くかのように、草原の空へと煙が昇っていく。
近くの木に背中を預け、ゼクスは煙草を吸っていた。
「ふぅ……仕事の後の一服は悪くないな」
大量発生したコボルドを退治したのであれば、それだけ骸も増える。
見下ろす真は、どこか申し訳なさそうに言う。
「……このコボルド達も、生きたくて必死に増えたのだろうが……。人々の生活を脅かすのなら見逃す訳にはいかない。悪く思うな」
■
仕事を終えたハンターたちが村へ戻ると、丁度ザスターたちも任務を果たし終えていた。
「無事に依頼を達成してくれたみたいだな。心から感謝する。それにしても、あれだけのコボルドを短時間で全滅させるとは」
驚きと感心の混じる笑みを浮かべるザスターに差し出された右手を、ハンターたちはしっかりと握っていく。
コボルドの脅威が去り、村には普段の平穏が戻っている。
息を潜めるように家の中に籠っていた村人たちが、楽しそうに会話を交わす。その顔は皆一様に明るい。
爽やかさを増したかのような日の光を浴びるハンターの近くを、この時を待ちかねていたように子供たちが駆けていく。
手にそれぞれの好きな玩具を持ち、大きな声ではしゃぎながら外を走り回る。
取り戻した平和を象徴するような子供たちの笑顔を見ているうちに、自然とハンターたちの頬も緩んでいた。
依頼を受けて現場に到着したハンターたちが見たのは、文字通り草原を埋め尽くすコボルドの大群だった。敵は好戦的らしく、姿を現した一行を見て、続々と殺意を目に宿らせる。
涼やかなはずの風が生暖かく感じられる奇妙な緊張感の真ん中で、夢路 まよい(ka1328)が額に手を当て、軽く背伸びをして無限に続きそうなコボルドの隊列を眺める。
「わぁ、コボルドがわらわらいっぱい~♪ これがいわゆる百匹わんちゃんってやつ? 一発で何匹倒せるかな?」
純粋な好奇心に胸を躍らせるまよいは、心からワクワクしていた。
「コボルドの繁殖力は相変わらず脅威ね」
呟くように言ったコントラルト(ka4753)は、コボルドの大群を見渡したあと、過去の出来事を思い出す。
「リーランで見た鴉に似た顔の黒衣の歪虚。アレがやっているのが成功すると、この速度で強いのが増える可能性があるのよね」
若干の警戒を抱くも、コントラルトは考え事をやめて前方のコボルドへ視線を戻す。
「まあ、とにかく、ここに関してはさっくりと片付けてしまいましょう」
「コボルドも人間も、どちらも共存できればこうはならないのに……」
言ったのは羊谷 めい(ka0669)だ。基本的に戦いを望まない彼女は、どこかおどおどとしながらも、悲しげに睫毛を伏せた。
セレス・フュラー(ka6276)が、すぐにめいへ同調する。
「本当よね。それに巣で大人しくしてればいいものを、こんなところに出てくるからさ……」
嘆息したあと、セレスは言葉を続ける。
「ま、コボルドにも生活があるから仕方ないんだけど、それは村民も同じことだからさ。……ごめんね」
「はい。わたしたちを優先させてもらいます。あなたたちは人を襲ってしまう、悲しみを生んでしまうから」
顔を上げためいには、決意が満ちていた。
「おぉ~これはまた圧巻だなぁ……。まさに大軍勢……いや、死兵の軍勢と言った所か?」
「これだけ増えると、さすがに壮観だな」
ゼクス・シュトゥルムフート(ka5529)が口にした僅かな感嘆を含んだ感想に、鞍馬 真(ka5819)が頷いた。
敵の数は事前に聞いていたが、実際に目の当たりにすると、インパクトは想像以上だった。
「とはいえ、練度からすれば新兵以下って所か……やれやれ」
着火の指輪で紙巻煙草に火をつけたゼクスは、軽く肩を竦めた。
「確かに数は脅威だが……、練度が相応に伴って初めて成立するものだ。戦いってのは、ただ愚直に進めば良いってものではない事を教えてやるとするか」
●戦闘開始
牙から涎を滴らせ、今にも飛びかかってきそうなコボルドから目を離さず、簡易な話し合い行うハンターの中でまよいが手を上げる。
「私の魔法ならほぼ一網打尽にできると思うわよ」
自信ありげに言ったあとで、髪を風になびかせるまよいはでも、と付け加える。
「少し時間がかかって、その間は無防備になるのよね」
「それならあたしが、まよい君の護衛を引き受けるよ」
親指を立てた笑顔のセレスが、白い歯を輝かせた。
セレスだけでなく、真も前衛に立つのを選択する。
「他にも術師がいるし、魔法を撃ち込むまでの間、私も後衛のガードに専念しよう」
前衛をセレスと真が務めるのが決まり、各ハンターはそれぞれのタイミングで動き出す。
■
「かすり傷以上の怪我人は出したくありません。そのために傷を癒し、守るための力を振るいます」
コボルドがハンターへ群がろうとする前に、最前列で皆を守ってくれる前衛のうち、セレスにプロテクションをかける。
「ありがとう、めい君。これで百人力だよ。不安なく、先手を取りにいけるからね」
投具のこうもりを狙ったコボルドの頭部へ命中させ、セレスは最初の一体を片付けた。
隣で見ていた真も後衛の守りを優先しつつ、薙ぎ払いで前方にいる複数のコボルドを斬り捨てる。
「防衛の間は守りに専念し、あまり前へ出すぎないように気をつけないとな」
術者たちの位置を改めて確認する真の背中に守られながら、コントラルトはファイアスローワーを発動する。
「危険だから巻き込まれないように少し離れて。巣にはちょっと届かないだろうけど、一気に敵を減らす大掃除を試みるわ」
マテリアルチャージャーで威力が上乗せされた炎の力を持つ破壊エネルギーが、二十体以上ものコボルドをただの肉塊に変えた。
吹いてくる風で舞い上がりそうになる髪を軽く手で押さえ、コントラルトはクールに微笑む。
「この調子でガンガン減らしていきましょう。大掃除するときも、まずは大雑把にでもゴミを減らすものね」
■
数は減っても、まだ敵は大群。
紫煙をくゆらせていたゼクスは、コボルドをギリギリまで引きつけたタイミングで、肺を満たした煙を吐きながら煙草を指で弾く。
「さて……んじゃまあ、お仕事に取り掛かるとしましょうか。サボってたら、嫁さんに怒られるのでね」
くるくると宙で回転する煙草が地面へ落ちると同時に、噴き上げるように炎の波が荒れ狂う。
「煙草を吸う時は火の元に気をつけろよ。もっとも俺の炎は、火というには過激だがな」
放ったファイアスローワーで十体以上ものコボルドを死滅させたゼクスは、そう言うと軽く口端を吊り上げた。
■
エクステンドキャストで集中力を高めるまよい。
「魔法を撃つまではもう少しかかるよ。だから、そのままの位置で防戦をお願いするね」
コントラルトとゼクスのおかげで中央方面の敵は減少したが、草原にはまだまだコボルドが存在する。一体たりとも逃がさないようにするためにも、まよいの広範囲攻撃は有効だ。
護衛を頼まれている真とセレスが前に出ると、攻撃の機会を窺っていたコボルドがわらわらと二人へ群がってきた。
「油断をする訳では無いが、これくらいの攻撃であれば……まぁ、問題ないだろう」
冷静に敵との実力差を分析した真は、囲むように配置を取るコボルドから繰り出される爪や牙をひらりひらりとかわしていく。
だが中には過去最高の一撃を、偶然にもこの機会に放つ者も現れる。そうしたクリティカルな爪撃を、真は焦らずに腕の防具で受け止め、難なく無傷で切り抜ける。
セレスにも、コボルドの集団は攻撃の手を伸ばす。四方八方から叩きつけるように振ってくる腕を、彼女はしなやかな体躯を草原に躍らせてかろやかにすり抜けていく。
華麗なマルチステップを披露するセレスに、共に前衛で多数のコボルドの爪や牙を引き受けている真が目を細める。
「見事な身のこなしだな。コボルドたちも、きっと攻撃を当てられる気がしてないだろう」
「ありがと。普通にやっても十分避けられそうな気もするけど、ほら、アレだよ。カッコイイ方がいいじゃない!」
回避しながらポーズを決めるセレスに、挑発されたと感じたコボルドがムキになる。
一方で、少し離れた位置で見ているめいは、控えめだが拍手をしていた。
「はい。カッコイイです。でも、怪我をしたらすぐに言ってくださいね。わたしが治しますから」
「了解。頼りにしてるよ!」
■
セレスたちが敵を引き受けている間に、まよいはさらに集中を高めていた。威力だけではなく、効果が及ぶ範囲までさらに拡大させるための準備に入る。
「もう少しだよ。残ってるコボルドを、ほぼ全部巻き込めるくらいのがいくからね」
ヒールが必要な状況になっていないのもあり、セレスに続いて真にもプロテクションをかけ終えためいも、コボルドの迎撃に加わることにした。
「わたしの信念は、悲しみから人々を守ること。だから、この力を振るうことに迷いません」
力強く言い放つ。確固たる彼女の覚悟が輝く断罪の杭となり、コボルドに打ち込まれる。
胴を貫かれ、悲鳴を上げる暇もなくコボルドが倒れた。めいは悲しそうに見つめて呟く。
「ごめんなさい……。でも、手は抜きません、です」
■
数の上ではまだまだコボルドが有利でも、個々の実力が違いすぎた。
戦局は五分と五分どころか、すでにハンターが押し気味である。
しかし油断は禁物だ。状況を確認するためにも、コントラルトは遠くまで見渡そうと馬上で軍用双眼鏡を覗く。
コボルド以外に異変はないかと思いきや、双眼鏡が遠くの木の枝からこちらを見下ろす小さな鴉を捉えた。詳しく確認しようとするも、鴉はすぐに飛び去ってしまう。
「今のは……。黒衣の歪虚ではなかったけれど……もういないわね」
他も注意深く観察してみるが、他に目を引くものはない。コントラルトは敵の現状のチェックを終える。
ここでまよいの魔法が発動する。
■
全員に退避を促したまよいは、威力と効果範囲を増幅させたグラビティフォールを、戦場の中央を中心に炸裂させた。
解き放たれた魔力が紫に染まる重力波を発生させる。
エクステンドキャストによって強化された魔法は威力、範囲ともに強力で、巣から出ていたのも含めて、生き残っていたすべてのコボルドに襲い掛かった。
草原に散らばっていたコボルドたちの顔が苦しげに歪む。自分たちに何が起きているのかもわからないままに、腕がひしゃげ、足が潰れ、命を奪われていく。
髪と衣服を舞い踊らせ、瞳を輝かせるまよいが見ている前で、実に四十体を超えるコボルドがその生涯を終えた。
だが、それでも十体ほどが重力の牢獄から、脱獄囚よろしくなんとか逃れていた。
「少し逃げられたけど、こんなものだよね」
悔しさに舌打ちすることもなく、まよいは淡々と事実を受け入れる。その上で彼女は、早くも次の魔法のための準備に入っていた。
■
まよいの超範囲重力波が放たれた影響で、軽く錯乱したコボルドが同胞の骸を蹴散らすように走り回る。そのうちの一体を、漆黒の蝙蝠が鋭い牙で切り裂く。
「逃げたコボルドには、あたしのコウモリをお見舞いするよっ」
本物ではなく、狙いを定めたセレスが投げ放った投具であった。
脚を奪われたコボルドの断末魔の悲鳴が響く。
確かにかなりの数ではあったが、あくまでもコボルドはコボルド。まともな力勝負であれば、セレスを始め、ハンターたちが後れを取るはずもなかった。
「もしピンチの人がいたらって思ったけど、どうやら大丈夫そうだね」
味方の様子を確認してから、セレスは他のコボルドを標的にする。
■
掃討戦へ移行したのを受け、前へ出る真はより威力の高い振動刀に持ち替えていた。間合いに捉えたコボルドを、彼はソウルエッジで強化した武器で着実に撃破していく。
先にある巣を見据えた時、真の横をどこからか伸びてきた光が瞬く間に駆け抜けていった。
敵の数が減って塊がなくなったことで、個体狙いに切り替えたゼクスのデルタレイだ。
巣の前にいた一体が頭部を貫かれて倒れる。
「巣への道は切り開いたぜ。早めの利用をお勧めだ」
「では好意に甘えて、一気に叩いてしまおう」
軽く手を上げてゼクスへ礼を告げた真に、そばにいたセレスも同意する。
「賛成。さくっと巣を攻撃して破壊、だね。他にすることないし」
一直線に巣へ向かおうとするハンターを、食い止めるだけの戦力はもうコボルドたちには残っていなかった。
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「戦いは避けられるに越したことはありません。でも必要なら、わたしにだって覚悟はあります」
クリムゾンウェストに来て以降、めいが持ち得たものだった。
戦う力が彼女に真っ直ぐ前を見据えさせ、信念の光がコボルドを滅ぼす。
「逃げないで向かってくるなら、このままグラビティフォールで攻めるよ。巣には仲間が行ってるし、私は討ち漏らしたのを仕留めるね」
まよいの魔法攻撃もあり、コボルドの数はさらに減少していく。
「残っているコボルドもあと僅かね。こうなると個体をしっかりと潰していった方がいいわね」
完全に敵の位置がバラバラになったのもあり、コントラルトもデルタレイで残存のコボルドを討伐していった。
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巣に到着した真は慎重な足取りで、視線を油断なく周囲に飛ばした。
「不意討ちは無し。幼体も居ないな。心置きなくと言っては変だが、駆除するとしよう」
真の刀で、数多くのコボルドを繁殖させてきた巣が破壊された。
同行していたセレスがとどめを刺し、もはや修復不可能なのは明らかだ。
だというのに、コボルドたちはそれでも戦いをやめようとはしなかった。
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顔に苦笑を張りつけたゼクスが、小さく肩を上下させる。
彼の視界には、雄叫びを上げて迫る一体のコボルドが映っていた。
普通の人間であれば恐怖で身をすくませるだろうが、機導師として経験を積んでいるゼクスを怯ませるのは不可能だった。
「やれやれ。諦めが肝心なんだが、コボルドだから人の理屈は通じないか。仕方ない。最後まで付き合ってやるよ」
ゼクスのデルタレイが向かってきた一体と他のコボルドを貫く。
それが草原に本来の静けさが戻った瞬間だった。
●戦闘後
「とりあえず、ここはもう大丈夫そうね。無事に依頼を達成できてよかったわ。少し気になる点もあったけれど、ね」
全員で生き残りがいないか見回ったあと、コントラルトは安堵しながらも、戦闘中に見かけた奇妙な鴉を思い出していた。結局はもう現れず、単なる鴉だったのかどうかの判別もつかなかったのだが。
近くでは倒れたコボルドの、奪った命の安息を祈るめいの姿があった。
自己満足とわかっていても、彼女はそうせずにはいられなかったのである。
「どうか、いまは安らかに……」
コボルドの魂を導くかのように、草原の空へと煙が昇っていく。
近くの木に背中を預け、ゼクスは煙草を吸っていた。
「ふぅ……仕事の後の一服は悪くないな」
大量発生したコボルドを退治したのであれば、それだけ骸も増える。
見下ろす真は、どこか申し訳なさそうに言う。
「……このコボルド達も、生きたくて必死に増えたのだろうが……。人々の生活を脅かすのなら見逃す訳にはいかない。悪く思うな」
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仕事を終えたハンターたちが村へ戻ると、丁度ザスターたちも任務を果たし終えていた。
「無事に依頼を達成してくれたみたいだな。心から感謝する。それにしても、あれだけのコボルドを短時間で全滅させるとは」
驚きと感心の混じる笑みを浮かべるザスターに差し出された右手を、ハンターたちはしっかりと握っていく。
コボルドの脅威が去り、村には普段の平穏が戻っている。
息を潜めるように家の中に籠っていた村人たちが、楽しそうに会話を交わす。その顔は皆一様に明るい。
爽やかさを増したかのような日の光を浴びるハンターの近くを、この時を待ちかねていたように子供たちが駆けていく。
手にそれぞれの好きな玩具を持ち、大きな声ではしゃぎながら外を走り回る。
取り戻した平和を象徴するような子供たちの笑顔を見ているうちに、自然とハンターたちの頬も緩んでいた。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/11/26 12:49:46 |
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相談卓 通りすがりのSさん(ka6276) エルフ|18才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2016/11/26 13:15:03 |