• 猫譚

【猫譚】少年、歌い光に手を伸ばす

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2016/12/05 09:00
完成日
2016/12/12 01:01

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●掃除
 プエルは半年ぶりに隠れ家に帰った。大変荒れていたが、住めそうだったので掃除をすることにした。
 それと並行して、先日ハンターが言っていたことを実行してみる。音楽祭に遊びに行くから「護衛」をお願いするのだった。お金はあるし、ソサエティが受理するかは別。
「楽しそうだな」
 べリアルの動向は不明。死亡に近い状況と聞くが、生存していることには変わりない。傲慢の彼がプエルの行動を知った場合どうするか考えると不安で仕方がない。
「僕は独りだし」
 人形を操れるといってもたかが知れている戦力。
「もっとマテリアルがあれば、僕は強くなれるのかな。レチタティーヴォ様みたいに……」
 隠れ家の掃除を進める。
 レチタティーヴォが描いていた「プエルの終幕」は彼が死んだことで消えていたはずだった。残っていた配下の一部が進め、舞台は調う。しかし、生前の記憶を取り戻してしまったプエルの大嫌いな要素を見つけ阻止に動いた。
 そのために、プエルは生き延び、今がある。
「……はあ……掃除するのは結構大変」
 プエルのマテリアルによって動いているプエル人形たちもいるが、小さいためにごみ集めくらいしかしない。
「あはは、でも、楽しいや」
 人形たちはプエルが楽しそうなためか調子に乗り始めた。組体操のようなことをはじめ、衣装箱をひっくり返した。
「……あ、これは」
 プエルサイズに作ったレチタティーヴォとお揃いの衣類。作り手がレチタティーヴォ亡きあと送ってきたものだった。
「……レチタティーヴォ様」
 服を手にすると抱きしめた。
「……レチタティーヴォ様……僕を怒るのかな? それともほめてくださるのかな?」

●音楽祭
 依頼を受けたハンターは、グラズヘイム王国の音楽祭に本当に歪虚がやってくるなど思わなかった。
 負のマテリアルを抑えているのか、一見すると貴族の若君がお忍びで来た雰囲気である。貴族の礼服にフード付きのマント。大きなカバンを肩に下げ、大剣も下げている。
 武器を取り上げることも考えるが、取り上げると怒って攻撃をしてくるかもしれない。穏便に楽しんで帰ってもらうほうが良いだろうとなる。
 プエルは素直に従ってついてくる。露店や辻に立つ音楽家を見ると、目を輝かせ走り出し、足を止める。
 プエルはただの少年に見えるが、武力を持たぬ人間を多く殺し、兵士も手にかけてきている。
 一方でユグディラを愛で、きちんと約束も守っていた。
 歪虚であり、倒さないといけない相手であるのは間違いない。
 ハンターはプエルのマントを握ったり、手をつかんで迷子を防止する。
「あれする」
 射的を指さしてプエルが走る。
「当たらない……ええっ! 何で当たるの、お前!」
 ハンターが景品を入手するとプエルは怒る。なだめる途中にプエルは近くの露店の菓子が気になり始め、怒りは持続しなかった。
 お菓子を食べて満面の笑みになる。
 音楽が漂う。
 露店で区切られたスペースに簡易の舞台がある。舞台のそででは「出演者募集中! 人間でもユグディラでもドーンと来い」とあった。
「僕も、僕も!」
 プエルは行く。顔を出さない彼に受け付けは少し不安そうであったが、ハンターの顔を見て納得する。
「名前は……えとー、プエ……もご」
 ハンターが素直なプエルの口を手でふさいだ。
「プエ?」
「……ニコラス」
「あ、はい」
 プエルはハンターの意図を察して、生前の名を告げた。

●名代
 リシャール・べリンガーは父親の代わりにその友人のウィリアム・クリシスを訪ねていた。陣中見舞いであるが、すでに大掛かりな戦闘は終わっているから息子を送り出したということだ。
「シャールズの子は大きくなったな……私が見たときはこのくらいだったはず。風邪をこじらせて寝込んでいると」
 五年以上前に会った記憶がリシャールにはあった。
 近況を話しつつ、露店の中を歩いていく。町中の舞台から音楽が聞こえる。
 きれいな歌声でリシャールも教会で教わった合唱曲だとわかった。うまいし、懐かしいと舞台を見る。
 リシャールより背丈のある貴族の少年に見えた。
「……ニコラス」
 ウィリアムの視線の先は舞台である。伴奏は流れる中、少年の歌声が止まった。
「ウィリアムさん!」
 リシャールはウィリアムの袖をつかんで揺さぶる。
 ニコラスが誰かリシャールは知っている。ウィリアムの子で五年ほど前にレチタティーヴォに殺されたという少年の名前だということを。
「父上! 何、その子!」
 舞台からキンとした声が響いた。
 伴奏も止まる。
 舞台の周囲から雑音が消える。
 視線が動きまわり、ぽつりぽつりと声が響く。
「逃げないと! 皆さん、しっかりしてください。警備の方々! 誘導を!」
 リシャールが声を上げた。
 が、負のマテリアルに当てられた多くの人々は動けなくなり、悲鳴すらなく震える。
 脇差に手をかけ、ウィリアムを守るように前に出る。

●激怒
 プエルが歌うのを楽しんでいるのがわかる。ハンターも安堵していたが、何事もなく終わると思っていたがプエルの様子が一転した。
 観衆に父親を見つけてしまった。
「……父上! その子は何だよ! イノアのお婿さん? 違うよね。べリンガーさんの家の子に似てるよ? 僕、馬鹿にされていたけど、一回見た子の顔位覚えているよ? ちっちゃかったけどね、イノアより年下だよね。でもさ、なんで二人きりなの、父上と? その子、今回何かしてくれたの? 其れなら僕もお礼言わなきゃね? ねえ、父上、べリアルのことは僕、頑張ったよ? 父上に僕の回りの部隊の位置とか状況を教えてあげたでしょ? ユグディラだって可愛いから、僕守ってあげたよ? いい子だよね? 僕、父上やレチタティーヴォ様に褒めてもらえるくらいいい子だよね! 父上のために、王女様のためにべリアル殺してあげられるようにしたのに! 音楽祭だって楽しいよね! 歌うの楽しいもの! でもね、父上が僕以外の子を連れている時点でそれは終わりだけどね」
 周りにいるハンターはプエルに声を掛ける。しかし、彼はウィリアムしか見ていない。
 プエルの荷物の中から人形が5体出てくる。プエルに似たそれらは手にバタフライナイフを持つ。
「ねえ、父上、僕は初めからいらない子だった?」
 プエルは弓に矢をつがえるしぐさをした。負のマテリアルで紡がれた弓と矢がそこにある。狙う先は――。

リプレイ本文

●瞬間
 アルマ・A・エインズワース(ka4901)は音が消えたように感じ、蒼白な顔でプエルと客席を見る。手にしていた楽器を落としそうになり、舞台の上に下すのが精一杯だった。
 愛しい人の声が届くまで。

 プエルの手が矢を離す。

 ミリア・エインズワース(ka1287)は舞台の袖から飛び出す。
「畜生! ボクはこんなことのためにお前を誘ったわけじゃないぞ、クソッタレ」
 プエルにタックルする。それた矢がミリアの足を貫いた。

 舞台にいて一緒に演奏をしていたメイム(ka2290)はすぐに指示を出す。仲間で協力しないと被害は大きくなる。
「千秋さんっ、ミグさんを手伝って!」
 メイムはマテリアルを活性化させプエルに集中し「ふりぃぃーず!」と大声をかけた。びくりとプエルが震えるのが見えた。

 小宮・千秋(ka6272)は露店で買ったおやつなどを持って客席にいた。楽しかった状況が一転し、メイムの指示が聞こえる。
「全力で楽しむ……つもりでしたが、わかりましたー」
 口の中に入っていた物を飲み込んで、大きな声で了解を示し仲間のほうに目を向けた。

 ミグ・ロマイヤー(ka0665)はメイムの指示したときには動いていた。
「やはりこうなったか」
 歪虚もまた人間と共存できるのではないかと少しは期待し、依頼を受けた。現在の状況に歪虚は歪虚と割り切ることができると安堵しつつ、どこか残念さも浮かぶ。
「疾く、早くこの場から立ち去るのじゃ。落ち着いて整然と、女子供老人から先に慌てず避難せよ。この場は我らハンターが治める故」
 叫び、術を使う準備をした。

 レイオス・アクアウォーカー(ka1990)は舞台のそでで見ており、走り出す。
 プエルの矢を放つような魔法が単体攻撃に見えるが、ぶつかったところで弾けて周囲に影響が出ると知っているため、余計にヒヤッとした。
 ハンターのような少年が受けたとしても、余波でウィリアムが死ぬ可能性が高かった。
 幸い、ミリアがとびかかったため舞台上で力は消える。
「ウィリアム・クリシス、退いてくれ。今かかわるとば娘や領民まで不幸にすることになる」
 舞台から声をかけつつ、プエルの方に向かった。

 カイン・マッコール(ka5336)は舞台の袖から上がり、動き始めたプエル人形に対して武器を構える。
「やはりこうなってしまったのか、人間と歪虚も変わらないな……ヒト型故か……。だからこそ、決して交わらないのか」
 親子関係、人間と歪虚、思考が絡み合い悲劇が見える。絡まった糸を解くには難しい。
 カインの前の人形の表情は変わらない。笑顔でバタフライナイフを開いた。

 ジョージ・ユニクス(ka0442)は親友たちと依頼に参加し、意外と和やかな状況であったため気が緩んでいたかもしれない、と自省する。
「……これはやるしかないか」
 とはいえ、プエルを説得しようとしているミリアとアルマを待つつもりはある。失敗すれば、戦闘となるだろうから目をそらさない。
 舞台袖にいるカインともに人形を見据えた。

●少年の悲鳴
「おい、ルール違反だ!」
「うるさい! 放せ」
「ここで暴れりゃどうなるかわかるだろうが! 頼む、できれば討ちたくない」
 ミリアはしがみついていたが、プエルに抜け出されてしまう。すぐにプエルは離れない上、動きが鈍い。メイムの【響】が効いているのだろうか。
 家族を殺すという状況を見て硬直していたアルマはミリアの行動を見て慌てつつも、彼女がプエルに対して説得を試みているのに気づき、冷静になろうと努める。ウィリアムたちが見えないように立ち位置を変えた。
「……お父さんが他の子を連れいてた時点でおしまいだっていうなら、あなたがヒト……いえ、家族を殺した時点で楽しいこともおしまいですよね」
「だって! 僕は……僕とは全然話してくれなかったのに!」
 プエルは叫ぶ。
 レイオスは武器を抜き、状況を見守る。
「ニコラス・クリシスが初めからいらない存在なら、あの元領主もその娘は、今も心を痛めることはなかっただろうよ……オレが言うのもなんだがな」
 これまで見ていた家族の状況からの推測。プエルを倒すつもりであっても、生者の思いが届かないのもつらい。
「分からないよ!」
 プエルは大剣の柄に手を掛けるが抜かない。
「これ以上何もなければ、町の外には出してやるから」
 ミリアは淡々と言う。
「……そうですよ。あなたを守るために武器も盾も持ってきたのに。あなたに使わせないでください。プエルさんを『敵』にしてしまいたくない」
 プエルの怒りは静まったのか、無表情でじっとしている。彼より背の高いミリア、アルマとレイオスにより、囲まれているため、周囲が見えにくいのが良いのか。父親のほうを見ようとしてもアルマで全く見えない。
「演出家になりたいとか言う割には、勢いまかせに父親殺す、それがお前のしたいことだったのか?」
 レイオスは地雷かと思いつつも、プエルの気をそらせるために告げる。民衆がまだいる為、戦闘になることは遅らせたい。
「そ、それは……レチタティーヴォ様みたいになりたいよ……う、でも……」
 プエルは動揺した。

●避難誘導
 謎のところから掃除機のような物体を取り出したミグは空間に向かって機導を使う。
「よし、発動は成功したのう。【機導浄化術・白虹】じゃ」
 ミグの周辺の空気が変わっていく。プエルのマテリアルに当てられた人たちが少し生気を取り戻したようだ。
「さあ、今のうちに逃げるのじゃ」
 ミグはプエルが狙う可能性があるウィリアムがいないほうにできるだけ誘導する。
 メイムは舞台の前の客をミグの方へ誘導する。浄化が進めば逃げるくらいはできるだろう。舞台から人形が下りてくることもあり得る為、全体を見渡す。
「順調だね」
 耳に届くのは舞台の上での説得。失敗すれば戦闘。戦うのは構わないが、少しでも移動すれば町中と言う悪条件は変わらない。
 メイムはもう一つの避難ルートを見る。千秋がウィリアムの方に向かっているのが見えた。
「お客様に罪はありませんー」
 千秋は呟きながら、一生懸命誘導しつつ、プエルが激怒の原因のところにいく。
 千秋から見てリシャールは、ウィリアムを支えるのが精いっぱいかつ自分の行動をどうすべきか困っているようだ。
「逃げてくださいねー」
「そうですね。私がもっとしっかりしていれば」
「とは言っている場合ではないですよ」
「そうですね」
 リシャールは千秋に諭され、バツが悪そうな表情になる。困惑しているウィリアムを引っ張り、周囲の人を誘導して道に向かって行く。
 観客は時間はかかりそうだが、着実に逃げている。

 舞台の上から人形たちを下さないように、カインとジョージは戦いを挑む。
「脇役は脇役らしく舞台袖でやり合いましょうか。誰のところにも行かせるわけにはいかない」
 カインが【ソウルトーチ】を使うと、人形たちはキョトンとなる。それらは無音で殺到して来た。
「アルマ達……状況によっては……」
 ジョージは苦虫をつぶしたような顔になる。戦いになれば、心に傷を負うのではないかという危惧もある。親友だからこそ信じたいし心配になる。
「僕は弱いかもしれないが……」
 カインは歪虚相手の戦闘不足を不安がるが、武器を叩き込む。必要ならばカウンターに回ろうと考えつつも。
 人形は動きは素早いが真っ二つに両断され、綿をまき散らし倒れた。
「こっちからも行きますよ」
 ジョージの攻撃もあたり、人形は綿をまき散らして倒れる。
 残っている人形たちはカインに向かってやってくる、三体一緒にフェイントを交えて。
「……っ!?」
 カインは避け損ねたが、鎧がすべてを受け止めた。
「弱いのか?」
「油断大敵と言います」
「そうだな。一般人に向かえば、被害が増える」
 カインの言葉にジョージはうなずいた。
「こっちから行くぞ」
 カインが剣を振おうとしたとき、人形の動きが変わった。
 おろおろしている様子。
「アルマ、ミリアっ!」
 ジョージはプエル説得に入っている親友たちを見た。

●仲間に
 プエルはアルマをじっと見る。
「僕と『敵』じゃないの?」
「楽しいことの方がいいですよね?」
 アルマにプエルはうなずく。
(プエルが小さくなったみたいに見えるが……いつもと大きさは同じだ)
 レイオスは油断はしない。プエルが突然攻撃に転じることも考えている。プエルの見え方が違うのは、身長が変わっているわけではなく、弱弱しく小さく感じるだけだ。
「ほら、衛兵が来ると厄介だろう。歪虚、であるお前は、特に面倒だろう」
 ミリアは幼子を見ている気分になってきた。
「……いいの? 僕、帰って」
 アルマがうなずくと、プエルは彼に抱き着いた。
「うん、帰る……お前も一緒においで」
 ニコリと見上げるプエルに一同は顔を引きつらせる。
「お前、レチタティーヴォ様と同じくらいの身長」
「……それは」
 アルマの喉がカラカラに乾く。

 避難誘導がほぼ終わったところで、ミグと千秋は舞台の方を見る。
「衛兵が来る前に倒すか、追い出すかじゃのう」
「そうですねー。プエルさんを怒らすことを言わないように気を付けます」
「言ったことあるのかの?」
「ちょっと……」
「まあ、わっぱ同士勉強が必要ということじゃの」
 ミグは小さく笑った後、気を引き締めた。
「ちょっと……変なことになってきたかも」
 舞台の下でメイムが小声で告げつつ、手招きをしている。合流したミグと千秋は状況をかいつまんで聞いた。

 人形たちの動きが変わったため、ジョージとカインは攻撃を一旦止める。
「あれは……」
 プエルがアルマに抱き着いているのが見える。
「バタフライナイフを閉じた」
 人形たちは戦意をなくした表示のようだとカインは思う。
「お、おい」
「何をするつもりだ」
 ジョージとカインは慌ててプエル人形を追った。
 人形たちはアルマによじ登り始めたのだった。

 よじ登り始めた人形を見てミリアはそれをはたき落とす。
「ひどい」
 アルマを離さず、抗議するプエル。
「何がひどいだ! こら、アルマもじっとしていないで」
「は、はい、ミリア」
 アルマは足にくっつくプエル人形を引っ張った。ちょうど手が回るらしく離すのに時間がかかるがすっと抜ける。
 人形はつままれたままじたばたしている。
「プエル、いい加減にしろ」
「……お前に用はない」
「ほお、そうか。お前は倒すつもりだからな、ここでやり合ってもいいんだぞ」
 プエルがアルマの首に手を伸ばしたため、レイオスが手首を抑えて引っ張った。
「プエルさん……僕はミリアのものですので、友達になるのはいいのですが、それはちょっと」
 プエルがミリアをにらみつける。
「ほら、外に送るから」
 ミリアが憮然として告げる。
 プエルは集まったハンターを見て、無言のまま人形をカバンの中にしまった。
「いいの?」
 メイムが尋ねる、アルマとミリアに。

●別離
 始終無言のまま町の外までやってくる。
 よくしゃべっていたプエルが黙っているのも気味が悪い。力を解き放つタイミングを待っているのか、ただ単に考え事をしているのか。ハンターは緊張の中歩く。
 人の出入りがあるため、少し離れるところまでいかないとまずい様子はあった。街道には人がそれなりにいる。
「楽しかったのか、馬鹿野郎」
 ミリアは怒気を抑え込んだ声で告げる。
 プエルは感情のうかがえない目でハンターを見る。
「ここでやるの?」
「帰る気があるならやらない、今は」
 ミリアの声にプエルはうなずいた。
「欲望のままに行動するなら、僕はあなたの敵だ……敵になろう」
 ジョージの言葉にプエルの目に感情が浮かぶ。
「欲望のまま、ね。僕は歪虚だし」
「人間だったのだろう」
「それはそうだけど、今は歪虚だよ」
 その割には生前の父親に固執している。
「プエルさん……」
「お前、変」
「変でも結構です。どうしても仲良くできないのですか」
 途中まではうまく行っていたとアルマは思う。
「そうじゃの。面白い試みだったのは確かじゃ」
 ミグはダダをごねる子を見るようにプエルを見る。
「歪虚は歪虚だと言えるが良いか、人と共生できるのかと期待する依頼の初めに戻った感じじゃな」
 ミグは続けて言い、苦笑した。
「そうですー、これ途中で買ったお菓子ですー」
 千秋はたくさん持つ袋から小麦粉を揚げた菓子が入った紙袋を取り出す。
「仲直りはできませんでしょうかー」
 千秋は緊張しつつ笑顔で袋を差し出した。
 プエルは疲れたように笑いながら受け取る。
「仲直り、ね。ふふっ、面白いなぁ、本当」
 プエルはハンターを見回す。
「演出しなおすよ。冷静って重要だよね……お茶会も楽しそうだ」
「演出ね……」
「お前が言ったから、思い出した。父上も王国も!」
「……」
 まずいことを言ったのかなとレイオスは考えたが、プエルを倒しやすくなる可能性もある。
「では、ごきげんよう」
 お辞儀をしてから軽やかに立ち去った。
「なーんか、釈然としない……とはいえ、これで、ひとまず良かったのよね」
 メイムは溜息をもらす。被害は出なかったが、討伐できていない。いや、討伐しようとすれば、薄い壁の向こうに影響が出るかもしれない。
「ああ、ウィリアムと一緒にいたやつに説明しないとな」
 レイオスは手をたたく。
「あの中途半端な子、どっかの若君?」
「はい、リシャールさんは、べリンガーさんちの跡取りです」
 千秋が顔見知りと言うことで説明をした。
「それより、ミリア、怪我はどうなんですか」
「……痛いけれど、アルマの痛みよりはないよ」
「そんなことは!」
 アルマはミリアに微笑んだ。
「僕の剣も歪虚の通じるのでしょうか……ゴブリン以外を滅するにはもう少し剣を学ぶべきか……」
 カインの剣は人形は斬れたとはいえ、手ごたえが薄かった。人形自体が弱かったと考えると足元をすくわれそうだ。
 プエルが立ち去ったほうを見つめた。

●???
「お茶会かぁ……うーん、もっとマテリアルもほしい。僕は演出しないと……父上たちのことは考えすぎなくてもいいのかも」
 プエルは歩きながら考える。
「だって、べリアルは状況分からないけれど結構やられてたし……僕独り……」
 プエルはどうにかしないと、と考え始めたのだった。

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MVP一覧

  • 英雄譚を終えし者
    ミリア・ラスティソードka1287
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカーka1990
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワースka4901

重体一覧

参加者一覧

  • カコとミライの狭間
    ジョージ・ユニクス(ka0442
    人間(紅)|13才|男性|闘狩人
  • 伝説の砲撃機乗り
    ミグ・ロマイヤー(ka0665
    ドワーフ|13才|女性|機導師
  • 英雄譚を終えし者
    ミリア・ラスティソード(ka1287
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカー(ka1990
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • タホ郷に新たな血を
    メイム(ka2290
    エルフ|15才|女性|霊闘士
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワース(ka4901
    エルフ|26才|男性|機導師
  • イコニアの夫
    カイン・A・A・カーナボン(ka5336
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 一肌脱ぐわんこ
    小宮・千秋(ka6272
    ドワーフ|6才|男性|格闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談
カイン・A・A・カーナボン(ka5336
人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2016/12/05 03:12:37
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/12/05 03:35:30