ゲスト
(ka0000)
秋鮭の逆襲
マスター:赤山優牙

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/10/07 12:00
- 完成日
- 2014/10/10 23:43
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●異変の始まり
ある所にある村があった。
秋になると川を鮭が遡上してくるのだが、その年は様子がおかしかった。
「またか……」
山に入った猟師は、川沿いに、熊の死体を見つけた。
この時期、熊は長い冬眠に備える為、遡上してくる鮭を、たらふく喰らうのだ。その熊がなにかによって殺されていた。
初めは、熊同士のなわばり争いかと思っていたのだが、三度、熊の死体を見て、確信した。
「これは、自然の生き物ができるものじゃねぇ」
長年、山に入って仕事をしていた経験がそう告げていた。
ついで言うと、独り言も、独りで猟師をしていたから癖になっている。
「なにか川の中にいるんだ」
猟師は不気味に思い、川には近づかなかった。
そして、その直感は正しかったと後で知る事になる。
●凶暴な鮭
川沿いに転がる熊の変死体。
猟師は村人に相談したが、単になわばり争いだろうという風に、誰もがそう思った。だが、この猟師は、ベテランな上に、根が真面目な性格でもあるという事は村人の全員が知っている事でもあった。
そこで、試しに、猟師と村人数名が川を見張る事になった。
数日間、特に変わった事はなかったが、ある日、遡上してくる鮭を取りにきた熊を見つける事ができた。
「おぉ。でっかい熊だな~」
木の陰から村人がそんな感想を呟く。
「川に近づくぞ」
熊は瞬く間に、鮭を取っては食べていた。
その光景を見て、村人が
「普通だな」
と言った。
この時期なら、そこそこ、見かける事ができる自然の光景。
次の瞬間、熊が大きく仰け反る。
突然、川から飛び出してきた鮭に、逆襲を受けたのだ。
次に、飛び出してきた鮭は、熊の胴体を貫通する。
「お、おい! あれ!」
村人が驚きの声をあげる。
猟師も同様で、声が出ないようだ。口をそれこそ陸に打ち上げられた魚の様に、パクパクさせている。
川から飛び出してきて、熊を襲った鮭は数匹だった。
熊は、あっという間に肉塊へと変わる。
「う、うわぁ……」
陸に上がった鮭が『立ちあがった』のだ。
胴体から人間の様な手足が生えている。
「これは、雑魔だ。間違いない」
猟師はゴクリと唾を飲み込んだ。
●村人達の事情
「な、なんたる事じゃ……」
猟師からの報告を聞いた村長の顔が真っ青になった。
村は近く行われる秋鮭祭の準備に追われている。
秋鮭祭とは、この時期だけに行われる特別な祭りで、十数年前に村に現れた転移者が発案したという。
なにかするという事ではなく、脂の乗った極上の鮭を、色々料理して、観光客に振舞う村おこしだ。
生で食べてもよし、焼いてもよし、蒸してもよし、揚げてもよし、ほぐして具材としてもよしで、毎年大好評である。
それなのに、そんな凶暴な鮭がいるのでは、祭りどころではない。
「その鮭の様な雑魔は、村の漁場まで遡上してきている。それ以上は、遡上できない様だ」
「しかし、漁場が使えないと、祭りの鮭を用意できん」
村長が頭を抱える。
「ここは、村長、ハンターに依頼しましょう」
猟師と共に鮭を見に言った村人が告げる。
確かに、一般人で解決できる様には思えない。なにしろ、大きな熊をわずかな間で肉塊に変えてしまうのだ。
「わ、わかった。さっそく、依頼の文を書こう」
村長は真っ青な顔のまま、そう宣言したのだった。
ある所にある村があった。
秋になると川を鮭が遡上してくるのだが、その年は様子がおかしかった。
「またか……」
山に入った猟師は、川沿いに、熊の死体を見つけた。
この時期、熊は長い冬眠に備える為、遡上してくる鮭を、たらふく喰らうのだ。その熊がなにかによって殺されていた。
初めは、熊同士のなわばり争いかと思っていたのだが、三度、熊の死体を見て、確信した。
「これは、自然の生き物ができるものじゃねぇ」
長年、山に入って仕事をしていた経験がそう告げていた。
ついで言うと、独り言も、独りで猟師をしていたから癖になっている。
「なにか川の中にいるんだ」
猟師は不気味に思い、川には近づかなかった。
そして、その直感は正しかったと後で知る事になる。
●凶暴な鮭
川沿いに転がる熊の変死体。
猟師は村人に相談したが、単になわばり争いだろうという風に、誰もがそう思った。だが、この猟師は、ベテランな上に、根が真面目な性格でもあるという事は村人の全員が知っている事でもあった。
そこで、試しに、猟師と村人数名が川を見張る事になった。
数日間、特に変わった事はなかったが、ある日、遡上してくる鮭を取りにきた熊を見つける事ができた。
「おぉ。でっかい熊だな~」
木の陰から村人がそんな感想を呟く。
「川に近づくぞ」
熊は瞬く間に、鮭を取っては食べていた。
その光景を見て、村人が
「普通だな」
と言った。
この時期なら、そこそこ、見かける事ができる自然の光景。
次の瞬間、熊が大きく仰け反る。
突然、川から飛び出してきた鮭に、逆襲を受けたのだ。
次に、飛び出してきた鮭は、熊の胴体を貫通する。
「お、おい! あれ!」
村人が驚きの声をあげる。
猟師も同様で、声が出ないようだ。口をそれこそ陸に打ち上げられた魚の様に、パクパクさせている。
川から飛び出してきて、熊を襲った鮭は数匹だった。
熊は、あっという間に肉塊へと変わる。
「う、うわぁ……」
陸に上がった鮭が『立ちあがった』のだ。
胴体から人間の様な手足が生えている。
「これは、雑魔だ。間違いない」
猟師はゴクリと唾を飲み込んだ。
●村人達の事情
「な、なんたる事じゃ……」
猟師からの報告を聞いた村長の顔が真っ青になった。
村は近く行われる秋鮭祭の準備に追われている。
秋鮭祭とは、この時期だけに行われる特別な祭りで、十数年前に村に現れた転移者が発案したという。
なにかするという事ではなく、脂の乗った極上の鮭を、色々料理して、観光客に振舞う村おこしだ。
生で食べてもよし、焼いてもよし、蒸してもよし、揚げてもよし、ほぐして具材としてもよしで、毎年大好評である。
それなのに、そんな凶暴な鮭がいるのでは、祭りどころではない。
「その鮭の様な雑魔は、村の漁場まで遡上してきている。それ以上は、遡上できない様だ」
「しかし、漁場が使えないと、祭りの鮭を用意できん」
村長が頭を抱える。
「ここは、村長、ハンターに依頼しましょう」
猟師と共に鮭を見に言った村人が告げる。
確かに、一般人で解決できる様には思えない。なにしろ、大きな熊をわずかな間で肉塊に変えてしまうのだ。
「わ、わかった。さっそく、依頼の文を書こう」
村長は真っ青な顔のまま、そう宣言したのだった。
リプレイ本文
●村の魚場にて
「やるぜ、俺はやるぜ!」
伊出 陸雄(ka0249)が、やたらハイなテンションで叫んでいた。
「雑魔をサクっと片付けて、秋鮭祭を開催してもらうしかありやせんな! だって秋鮭ですぜ、秋鮭!」
そんな伊出の言葉に頷く、ユキヤ・S・ディールス(ka0382)。
「折角のお祭り、出来なくなるのは困るでしょうし、残念でもありますね」
雑魔の被害は今の所、不幸な熊だけだが、川でも地上でも行動が可能な雑魔の様だ。
人を襲う可能性もあるから、ここは早々に退治したいもの。
「帝都も大変だが、だからこそこういった草の根仕事で一般の人を安心させるのが重要になるんだよな」
そう言ったのは、十文字 勇人(ka2839)だった。
剣機が暴れ大変な時期だが、歪虚の脅威は剣機だけではない。雑魔程度であっても一般の人には脅威である事には変わりはないのだ。
それに、今回は、秋鮭祭も雑魔退治後に控えている。仲間達への被害も抑え、無事に祭に参加しようと改めて気合いを入れる。
「早速、雑魔退治と行きますか」
後ろから吹いた風で、長い黒髪が風で揺れ、顔を覆ったので、それを払いながら、椥辻 ヒビキ(ka3172)が口を開いた。
「相手は魚型の雑魔。相手の土俵で戦うより、こちらの土俵へ引き釣りこむのが定跡」
川に居るであろう、雑魔を陸にひっぱりあげる作戦なのだ。
「お祭りの邪魔をするなんて悪い子ねー」
ノアール=プレアール(ka1623)が横で、装備を確認している弟に声をかける。
「話によると随分と……変な姿の雑魔……だな……」
アレン=プレアール(ka1624)が答えた。
魚場に現れた雑魔は、鮭の胴体に人間の様な細い手足がついているそうである。
(……何であれ、姉さんは俺が守らないと……)
そう決意をして、姉を見た。ノアールはなにかブツブツと言っている。
「アル君と一緒の依頼は初めてだし、姉らしい所を見せてあげたいし、あ。でも、鮭雑魔の骨格とかどうなってるか調べたい……」
姉として良い所をみせてあげたいという思いと、研究者としての探究心が色々せめぎ合っているようだった。
●誘い出し
鮭雑魔は魚場の川の中にいるはず。
そこで、ハンター達は鮭雑魔を陸上におびき出そうと考えた。
陸上で待ち伏せて戦おうという事だが……。
「来ない……」
アレンがボーと空を見上げる。
先程から、誘き出す為に、ユキヤやノアール、椥辻が、石を投げてみたり、マテリアルを打ちこんだり、矢を射かけたり、色々工夫するが、出てくる気配がない。
「さぁ出てらっしゃい。私達はこっちよー!」
「ヘイ、カモ~ン!」
ノアールと伊出の声が辺りに虚しく響いた。
「気長に待つという訳にもいきませんしね。僕が囮になってきます」
苦笑を浮かべ、聖導士であるユキヤは川に近づこうとする。
それを十文字が制止した。
「俺が行こう。ユキヤは回復を頼む」
そして、川に向かって歩き出す。
もちろん、警戒を怠らない。
「敵が陸に上がったら、徐々に引きつけて」
椥辻が川に向かって歩く十文字の背中に向かって話しかける。
任せろと言わんばかりに、彼は右拳を高々と掲げた。
●鮭雑魔との死闘
十文字のブーツの底が少し川の水に浸かる。
急所をガードしたまま立つ十文字。
そこからやや後方に、アレンと伊出が、さらに、その後ろに、ユキヤとノアールと椥辻が待ち構える。
唐突にそれはやってきた。
突然、十文字の正面から鮭が飛び出してきたのだ。
それを、打ち払う。
一匹目が河川敷に打ち上げられた。
続けて二匹目、三匹目が川から突撃して十文字に襲いかかる。
上体を動かし避けると、二匹目が十文字の後方に転がっていった。
だが、三匹目は十文字のガードしている腕に直撃する。
続けて、四匹目、五匹目と連続して十文字に襲いかかった。
「十文字さん!」
慌ててユキヤが十文字を回復する。
相当のダメージを受けているはずなのだが、十文字は姿勢を崩さす、作戦通り、少しずつ後退した。
十文字の後方に転がった鮭雑魔が立ち上がると、後衛に向かって突撃しようとした。
「……妙な、雑魔……。……何と言うか、キモい、な……。」
その前に、アレンが立ち塞がると、剣と盾を構える。
突撃してくる以外の能力は解明されていない。
十分に警戒する必要があった。もちろん、後衛への突撃も防ぐつもりなのだ。
「おいこっちだ! 逃げんな、ゴルァ!」
伊出がピストルを撃ち、最初に陸上に上がってきた鮭雑魔が川に戻ろうとする動きを牽制する。
手足の様な物が胴体から生えている鮭雑魔が頭をハンター達に向けるため、方向転換する。
どんな身体の作りになっているのか、興味津々だったノアールだが、今は知的好奇心を抑え、アレンに自身のマテリアルをエネルギーとして送り込む。
(アル君、普段はおっとりしてるけど、戦闘になると目の色が変わっちゃうのよね~。無茶しないといいんだけど)
アレンと対峙している鮭雑魔に矢が突き刺さる。
椥辻が放ったものだが、致命傷にはなっていないようだ。
致命傷にはなっていない様だが、明らか、動きが緩慢である事に椥辻が気がつく。
一方、川近くで十文字に襲いかかっている鮭の動きは素早い。
「この雑魔……川から離れれば弱体化しているようですね」
「ちょうど、魚っぽい雑魔でもありますしね~」
椥辻の言葉に、ノアールが応える。
川へ逃げられない様に誘き出して戦うというハンター達の作戦は思わぬ効果があったようだ。
鮭雑魔を川から離す為に、十文字がゆっくりと後退する。
それに気がつきもせず、ただ目の前の獲物に飛びかかってくる三匹の鮭雑魔。
頭を掠め、胴にぶつかり、足に当たりと着実に十文字にダメージを重ねていく。
「これ以上は、回復が間に合いません」
後方から十文字に回復を飛ばすユキヤの方が不安になっていた。
「もう少しだ!」
後少し、川から遠ざければ、すぐには逃げられる心配はない。
川にでも戻られようならば、余計に手を焼く事になるはずだ。
鮭雑魔が頭を掠めていった時のものか、額から血が流れている。
と、一匹の鮭雑魔がアレン達の方に向かって突撃した。
「そっち、行ったぞ!」
十文字は残り二匹からの猛攻に耐えながら叫んだ。
突撃した鮭雑魔は後衛のうち、ノアールの方に襲いかかった。
避けようとした所、河川敷の河原に足を取られ、盛大に転ぶノアール。
だが、幸運にもその動きで、鮭雑魔が頭上を飛んで行った。
ホッとして顔をあげたノアールの視界に弟の背中が見えた。
「姉さんに、手を出したんだ……一度や二度、死ぬ位で済むと思うなよ……!」
アレンが恐ろしい程の気迫で、その雑魔に向かって剣を構えた。
次の瞬間、強く踏み込みマテリアルの力を武器に込めた一撃を鮭雑魔に叩きこんだ。
同時に、椥辻が矢を放ち、ノアールも転がったまま、魔導銃を放つ。
ビタンビタンと、その場でもがきながら、鮭雑魔が塵となって崩れていく。
陸地に上がって弱体化しているようであっても、三人のハンターが攻撃してようやく倒せるのだ。
川の中で戦っていたら、どうなっていた事か。
アレンが、普段のボーとした雰囲気とは一転、怒り狂う野獣の様な瞳を次の標的に向けた。
それが伝わったのか、その鮭雑魔が川に向かって逃げ出そうとする。
「単純な相手には単純な策を、これが定跡です。あなた方はすでにチェックです」
椥辻の放った強烈な矢の一撃は、鮭雑魔の身体を貫通し、河川敷に転がっている古木に鮭雑魔ごと突きささる。
身動きのできなくなった鮭雑魔に、ノアールの魔導銃が放たれる。
しかし、まだ雑魔は拘束から逃れようと暴れまわり、ついには古木ごと動き出す。
だが、アレンは古木ごと雑魔に剣を叩きこんだ。
古木もろとも、ボロボロと塵となって消える鮭雑魔。
一方、アレンが前線から抜けた分は、伊出が対峙していた。
エストックを突き出し、的確に当てる。鮭雑魔は至る所、穴だらけだ。
穴だらけではあるが、動きが止まらない。
「この一撃、外さねぇっつの!」
より一歩踏み込んだ一撃は、鮭雑魔の口から尾びれまで貫く。
「鮭の串刺し!」
そのまま、石の隙間を突いて、地面にエストックを突き立てた。
気持ち悪く手足をバタつかせる鮭雑魔。
そこに、椥辻が放った矢とノアールの魔導銃が打ちこまれる。
ボロボロと鮭雑魔が崩れ落ちた。
囮の役目も果たし、目の前には二匹の鮭雑魔のみ。
十文字は十分に体重の乗った一撃を鮭雑魔の胴体に叩きこむ。
そこに、ユキヤが光の魔法を合わせて放った。
鮭雑魔が消し飛んだ。
最後に残った鮭雑魔は後ろ足で直立すると、酸をまき散らしながら十文字に襲いかかってくる。
矢やらマテリアルの弾やら飛んできて、鮭雑魔はフラフラになりながらも十文字に迫る。
「私のパンチを受けてみろ!」
強烈な一撃で宙を吹き飛ぶ鮭雑魔。
空中で塵となって消えていく。
これで、全ての鮭雑魔を倒したのだ。
「あの雑魔達、捕獲して解剖してみたかったわ」
ノアールがそんな感想をもらす。
確かに、どんな構造になっていたのやら。
「さぁ、村に報告に行くか」
十文字の言葉に頷き、村へと戻る一行。
激しい戦闘だったが、十文字以外は怪我人はいなかった。
それは、彼にとっては、望むべき事だったかもしれない。
「ほら、アル君も~」
一行から遅れて、ボーと周囲を見渡すアレンにノアールの声が届いた。
「……熊、いない……」
残念そうな呟きは、誰にも聞こえなかった。
●秋鮭祭!
無事に雑魔が退治され、秋鮭祭が始まる事になった。
「退治のみならず、お手伝いまで、ありがとうございます」
屋台で準備をするハンター達に依頼主である村長が声をかけてきた。
祭を手伝うと申し出た所、観光客に食事を提供する屋台の一つを任されたからだ。
「僕達もお邪魔して宜しければ、嬉しいですので」
ユキヤが微笑を浮かべながら丁寧に村長に告げる。
「食材も、鮭だけではなく、旬の野菜やキノコも用意しましたので、ご自由にお使い下さい」
「ありがとうございます~」
エプロン姿のノアールがお玉を持ったまま感謝の言葉を口にした。
食材だけではなく、本来は入手が難しい香辛料やリアルブルーの調味料なんかもあった。
「この祭の為に、色々の調味料も集めたかいがありました。存分に使いきって下さい」
そう言って、村長が立ち去った。
リゼリオや様々な地域まで足を運び、貴重な食材やお酒、調味料等もわずかにだが用意したのも村長の指示だ。
「さぁ、アル君も、手伝うのよ」
「……熊、見にいきたかった……」
肩を落としながらも、姉の言う事に素直に従うアレン。
「僕も食材用意するの手伝いますね」
ユキヤは腕まくりをする。
「俺は薪を用意してこよう」
十文字は火を熾すのに必要な薪を取りに行く事にした。
他の屋台からは、既に煙も上がっている。それを見て、知人への見上げに燻製を作ってもいいなと思いつく。
「鮭ステーキうめぇ。ハーブと岩塩が決め手? なるほどなぁ」
伊出が鮭の切り身を焼いた物を美味しそうに頬張る。
祭料理も地酒も楽しみにしていたようで、先程から満面の笑みだ。
「あなた、私達は他の屋台の進行具合を見に来たのに食べてばっかりですね」
椥辻が呆れた様に言うが、そんな彼女も手には透明な液体が入ったグラスを持っていた。
「飯がうめぇって、それだけで幸せですぜぃ。いやいやマジで!」
「それには否定はしませんけど。先程から日本酒に合う肴ばかりですし」
どうやら手に持っているのはリアルブルーのある国のお酒だ。
「に、日本酒!?」
伊出が驚く。
「村で、わずかだけど用意してきたみたいですよ」
椥辻から差し出されたグラスを手に取り、口をつける。
「う、うっめぇ~」
雑魔を退治しに来たかいがあったと言うものだ。
カレー作りは、途中、熊の着ぐるみ着た村人を追いかけそうになったアレンを引きとめたり、十文字のペットの柴犬コロが川から鮭を咥えてきたりと色々あったが、無事に完成した。
「出来たわ~。名付けて、秋鮭雑魔カレー」
そのネーミングはどうなんだろうというツッコミを誰もが心の中で思ったが、口に出す事ができなかった。
それほど、ノアールの楽しそうな笑顔は眩しかったから。
鮭の切り身をカレー味のムニエルにし、それが野菜や茸で作ったカレーの上に置かれているだけではなく、エノキで手足を表現している。
待っていましたとばかりに、伊出が喰らいつく。よほど、楽しみだったのだろう。
きっと、本物の雑魔だったとしても、彼なら同じように喰らいついたはずだ。
「山の幸キノコと川の幸鮭、秋の味覚のゴールデンコンビ……たまんねーぜ! うまい!」
そう言いながら、持参したビールとともに舌鼓を打つ。
その様子を見て、他のハンター達は笑みを浮かべ、食べ始める。
「みんなで作って食べる料理は美味しいわね~」
美味しそうにカレー食べるアレンを見ながら満足気にノアールが言う。
少しはお姉さんらしい所も見せられただろうか。
「美味しいよ、姉さん」
ノアールの視線に気がつき、アレンが笑顔を見せた。
「これは、俺達の屋台が大人気になるな」
「頑張った甲斐がありましたね」
十文字の言葉に、椥辻が頷く。
「早速、お客さんが来たようですね。僕が店番に出ます~」
楽しそうなハンター達を見て、さっそくお客がやってきた様だ。
ユキヤが店番に立つと、秋鮭雑魔カレーを渡していく。
鮭雑魔を模したカレーを見て笑っていた客だが、一口食べて、その美味しさに驚いた様子で笑顔になる。
「美味しいご飯を作ってくれた人と秋の恵みに感謝っすね」
伊出の言葉に一行は深く頷いた。
おしまい。
「やるぜ、俺はやるぜ!」
伊出 陸雄(ka0249)が、やたらハイなテンションで叫んでいた。
「雑魔をサクっと片付けて、秋鮭祭を開催してもらうしかありやせんな! だって秋鮭ですぜ、秋鮭!」
そんな伊出の言葉に頷く、ユキヤ・S・ディールス(ka0382)。
「折角のお祭り、出来なくなるのは困るでしょうし、残念でもありますね」
雑魔の被害は今の所、不幸な熊だけだが、川でも地上でも行動が可能な雑魔の様だ。
人を襲う可能性もあるから、ここは早々に退治したいもの。
「帝都も大変だが、だからこそこういった草の根仕事で一般の人を安心させるのが重要になるんだよな」
そう言ったのは、十文字 勇人(ka2839)だった。
剣機が暴れ大変な時期だが、歪虚の脅威は剣機だけではない。雑魔程度であっても一般の人には脅威である事には変わりはないのだ。
それに、今回は、秋鮭祭も雑魔退治後に控えている。仲間達への被害も抑え、無事に祭に参加しようと改めて気合いを入れる。
「早速、雑魔退治と行きますか」
後ろから吹いた風で、長い黒髪が風で揺れ、顔を覆ったので、それを払いながら、椥辻 ヒビキ(ka3172)が口を開いた。
「相手は魚型の雑魔。相手の土俵で戦うより、こちらの土俵へ引き釣りこむのが定跡」
川に居るであろう、雑魔を陸にひっぱりあげる作戦なのだ。
「お祭りの邪魔をするなんて悪い子ねー」
ノアール=プレアール(ka1623)が横で、装備を確認している弟に声をかける。
「話によると随分と……変な姿の雑魔……だな……」
アレン=プレアール(ka1624)が答えた。
魚場に現れた雑魔は、鮭の胴体に人間の様な細い手足がついているそうである。
(……何であれ、姉さんは俺が守らないと……)
そう決意をして、姉を見た。ノアールはなにかブツブツと言っている。
「アル君と一緒の依頼は初めてだし、姉らしい所を見せてあげたいし、あ。でも、鮭雑魔の骨格とかどうなってるか調べたい……」
姉として良い所をみせてあげたいという思いと、研究者としての探究心が色々せめぎ合っているようだった。
●誘い出し
鮭雑魔は魚場の川の中にいるはず。
そこで、ハンター達は鮭雑魔を陸上におびき出そうと考えた。
陸上で待ち伏せて戦おうという事だが……。
「来ない……」
アレンがボーと空を見上げる。
先程から、誘き出す為に、ユキヤやノアール、椥辻が、石を投げてみたり、マテリアルを打ちこんだり、矢を射かけたり、色々工夫するが、出てくる気配がない。
「さぁ出てらっしゃい。私達はこっちよー!」
「ヘイ、カモ~ン!」
ノアールと伊出の声が辺りに虚しく響いた。
「気長に待つという訳にもいきませんしね。僕が囮になってきます」
苦笑を浮かべ、聖導士であるユキヤは川に近づこうとする。
それを十文字が制止した。
「俺が行こう。ユキヤは回復を頼む」
そして、川に向かって歩き出す。
もちろん、警戒を怠らない。
「敵が陸に上がったら、徐々に引きつけて」
椥辻が川に向かって歩く十文字の背中に向かって話しかける。
任せろと言わんばかりに、彼は右拳を高々と掲げた。
●鮭雑魔との死闘
十文字のブーツの底が少し川の水に浸かる。
急所をガードしたまま立つ十文字。
そこからやや後方に、アレンと伊出が、さらに、その後ろに、ユキヤとノアールと椥辻が待ち構える。
唐突にそれはやってきた。
突然、十文字の正面から鮭が飛び出してきたのだ。
それを、打ち払う。
一匹目が河川敷に打ち上げられた。
続けて二匹目、三匹目が川から突撃して十文字に襲いかかる。
上体を動かし避けると、二匹目が十文字の後方に転がっていった。
だが、三匹目は十文字のガードしている腕に直撃する。
続けて、四匹目、五匹目と連続して十文字に襲いかかった。
「十文字さん!」
慌ててユキヤが十文字を回復する。
相当のダメージを受けているはずなのだが、十文字は姿勢を崩さす、作戦通り、少しずつ後退した。
十文字の後方に転がった鮭雑魔が立ち上がると、後衛に向かって突撃しようとした。
「……妙な、雑魔……。……何と言うか、キモい、な……。」
その前に、アレンが立ち塞がると、剣と盾を構える。
突撃してくる以外の能力は解明されていない。
十分に警戒する必要があった。もちろん、後衛への突撃も防ぐつもりなのだ。
「おいこっちだ! 逃げんな、ゴルァ!」
伊出がピストルを撃ち、最初に陸上に上がってきた鮭雑魔が川に戻ろうとする動きを牽制する。
手足の様な物が胴体から生えている鮭雑魔が頭をハンター達に向けるため、方向転換する。
どんな身体の作りになっているのか、興味津々だったノアールだが、今は知的好奇心を抑え、アレンに自身のマテリアルをエネルギーとして送り込む。
(アル君、普段はおっとりしてるけど、戦闘になると目の色が変わっちゃうのよね~。無茶しないといいんだけど)
アレンと対峙している鮭雑魔に矢が突き刺さる。
椥辻が放ったものだが、致命傷にはなっていないようだ。
致命傷にはなっていない様だが、明らか、動きが緩慢である事に椥辻が気がつく。
一方、川近くで十文字に襲いかかっている鮭の動きは素早い。
「この雑魔……川から離れれば弱体化しているようですね」
「ちょうど、魚っぽい雑魔でもありますしね~」
椥辻の言葉に、ノアールが応える。
川へ逃げられない様に誘き出して戦うというハンター達の作戦は思わぬ効果があったようだ。
鮭雑魔を川から離す為に、十文字がゆっくりと後退する。
それに気がつきもせず、ただ目の前の獲物に飛びかかってくる三匹の鮭雑魔。
頭を掠め、胴にぶつかり、足に当たりと着実に十文字にダメージを重ねていく。
「これ以上は、回復が間に合いません」
後方から十文字に回復を飛ばすユキヤの方が不安になっていた。
「もう少しだ!」
後少し、川から遠ざければ、すぐには逃げられる心配はない。
川にでも戻られようならば、余計に手を焼く事になるはずだ。
鮭雑魔が頭を掠めていった時のものか、額から血が流れている。
と、一匹の鮭雑魔がアレン達の方に向かって突撃した。
「そっち、行ったぞ!」
十文字は残り二匹からの猛攻に耐えながら叫んだ。
突撃した鮭雑魔は後衛のうち、ノアールの方に襲いかかった。
避けようとした所、河川敷の河原に足を取られ、盛大に転ぶノアール。
だが、幸運にもその動きで、鮭雑魔が頭上を飛んで行った。
ホッとして顔をあげたノアールの視界に弟の背中が見えた。
「姉さんに、手を出したんだ……一度や二度、死ぬ位で済むと思うなよ……!」
アレンが恐ろしい程の気迫で、その雑魔に向かって剣を構えた。
次の瞬間、強く踏み込みマテリアルの力を武器に込めた一撃を鮭雑魔に叩きこんだ。
同時に、椥辻が矢を放ち、ノアールも転がったまま、魔導銃を放つ。
ビタンビタンと、その場でもがきながら、鮭雑魔が塵となって崩れていく。
陸地に上がって弱体化しているようであっても、三人のハンターが攻撃してようやく倒せるのだ。
川の中で戦っていたら、どうなっていた事か。
アレンが、普段のボーとした雰囲気とは一転、怒り狂う野獣の様な瞳を次の標的に向けた。
それが伝わったのか、その鮭雑魔が川に向かって逃げ出そうとする。
「単純な相手には単純な策を、これが定跡です。あなた方はすでにチェックです」
椥辻の放った強烈な矢の一撃は、鮭雑魔の身体を貫通し、河川敷に転がっている古木に鮭雑魔ごと突きささる。
身動きのできなくなった鮭雑魔に、ノアールの魔導銃が放たれる。
しかし、まだ雑魔は拘束から逃れようと暴れまわり、ついには古木ごと動き出す。
だが、アレンは古木ごと雑魔に剣を叩きこんだ。
古木もろとも、ボロボロと塵となって消える鮭雑魔。
一方、アレンが前線から抜けた分は、伊出が対峙していた。
エストックを突き出し、的確に当てる。鮭雑魔は至る所、穴だらけだ。
穴だらけではあるが、動きが止まらない。
「この一撃、外さねぇっつの!」
より一歩踏み込んだ一撃は、鮭雑魔の口から尾びれまで貫く。
「鮭の串刺し!」
そのまま、石の隙間を突いて、地面にエストックを突き立てた。
気持ち悪く手足をバタつかせる鮭雑魔。
そこに、椥辻が放った矢とノアールの魔導銃が打ちこまれる。
ボロボロと鮭雑魔が崩れ落ちた。
囮の役目も果たし、目の前には二匹の鮭雑魔のみ。
十文字は十分に体重の乗った一撃を鮭雑魔の胴体に叩きこむ。
そこに、ユキヤが光の魔法を合わせて放った。
鮭雑魔が消し飛んだ。
最後に残った鮭雑魔は後ろ足で直立すると、酸をまき散らしながら十文字に襲いかかってくる。
矢やらマテリアルの弾やら飛んできて、鮭雑魔はフラフラになりながらも十文字に迫る。
「私のパンチを受けてみろ!」
強烈な一撃で宙を吹き飛ぶ鮭雑魔。
空中で塵となって消えていく。
これで、全ての鮭雑魔を倒したのだ。
「あの雑魔達、捕獲して解剖してみたかったわ」
ノアールがそんな感想をもらす。
確かに、どんな構造になっていたのやら。
「さぁ、村に報告に行くか」
十文字の言葉に頷き、村へと戻る一行。
激しい戦闘だったが、十文字以外は怪我人はいなかった。
それは、彼にとっては、望むべき事だったかもしれない。
「ほら、アル君も~」
一行から遅れて、ボーと周囲を見渡すアレンにノアールの声が届いた。
「……熊、いない……」
残念そうな呟きは、誰にも聞こえなかった。
●秋鮭祭!
無事に雑魔が退治され、秋鮭祭が始まる事になった。
「退治のみならず、お手伝いまで、ありがとうございます」
屋台で準備をするハンター達に依頼主である村長が声をかけてきた。
祭を手伝うと申し出た所、観光客に食事を提供する屋台の一つを任されたからだ。
「僕達もお邪魔して宜しければ、嬉しいですので」
ユキヤが微笑を浮かべながら丁寧に村長に告げる。
「食材も、鮭だけではなく、旬の野菜やキノコも用意しましたので、ご自由にお使い下さい」
「ありがとうございます~」
エプロン姿のノアールがお玉を持ったまま感謝の言葉を口にした。
食材だけではなく、本来は入手が難しい香辛料やリアルブルーの調味料なんかもあった。
「この祭の為に、色々の調味料も集めたかいがありました。存分に使いきって下さい」
そう言って、村長が立ち去った。
リゼリオや様々な地域まで足を運び、貴重な食材やお酒、調味料等もわずかにだが用意したのも村長の指示だ。
「さぁ、アル君も、手伝うのよ」
「……熊、見にいきたかった……」
肩を落としながらも、姉の言う事に素直に従うアレン。
「僕も食材用意するの手伝いますね」
ユキヤは腕まくりをする。
「俺は薪を用意してこよう」
十文字は火を熾すのに必要な薪を取りに行く事にした。
他の屋台からは、既に煙も上がっている。それを見て、知人への見上げに燻製を作ってもいいなと思いつく。
「鮭ステーキうめぇ。ハーブと岩塩が決め手? なるほどなぁ」
伊出が鮭の切り身を焼いた物を美味しそうに頬張る。
祭料理も地酒も楽しみにしていたようで、先程から満面の笑みだ。
「あなた、私達は他の屋台の進行具合を見に来たのに食べてばっかりですね」
椥辻が呆れた様に言うが、そんな彼女も手には透明な液体が入ったグラスを持っていた。
「飯がうめぇって、それだけで幸せですぜぃ。いやいやマジで!」
「それには否定はしませんけど。先程から日本酒に合う肴ばかりですし」
どうやら手に持っているのはリアルブルーのある国のお酒だ。
「に、日本酒!?」
伊出が驚く。
「村で、わずかだけど用意してきたみたいですよ」
椥辻から差し出されたグラスを手に取り、口をつける。
「う、うっめぇ~」
雑魔を退治しに来たかいがあったと言うものだ。
カレー作りは、途中、熊の着ぐるみ着た村人を追いかけそうになったアレンを引きとめたり、十文字のペットの柴犬コロが川から鮭を咥えてきたりと色々あったが、無事に完成した。
「出来たわ~。名付けて、秋鮭雑魔カレー」
そのネーミングはどうなんだろうというツッコミを誰もが心の中で思ったが、口に出す事ができなかった。
それほど、ノアールの楽しそうな笑顔は眩しかったから。
鮭の切り身をカレー味のムニエルにし、それが野菜や茸で作ったカレーの上に置かれているだけではなく、エノキで手足を表現している。
待っていましたとばかりに、伊出が喰らいつく。よほど、楽しみだったのだろう。
きっと、本物の雑魔だったとしても、彼なら同じように喰らいついたはずだ。
「山の幸キノコと川の幸鮭、秋の味覚のゴールデンコンビ……たまんねーぜ! うまい!」
そう言いながら、持参したビールとともに舌鼓を打つ。
その様子を見て、他のハンター達は笑みを浮かべ、食べ始める。
「みんなで作って食べる料理は美味しいわね~」
美味しそうにカレー食べるアレンを見ながら満足気にノアールが言う。
少しはお姉さんらしい所も見せられただろうか。
「美味しいよ、姉さん」
ノアールの視線に気がつき、アレンが笑顔を見せた。
「これは、俺達の屋台が大人気になるな」
「頑張った甲斐がありましたね」
十文字の言葉に、椥辻が頷く。
「早速、お客さんが来たようですね。僕が店番に出ます~」
楽しそうなハンター達を見て、さっそくお客がやってきた様だ。
ユキヤが店番に立つと、秋鮭雑魔カレーを渡していく。
鮭雑魔を模したカレーを見て笑っていた客だが、一口食べて、その美味しさに驚いた様子で笑顔になる。
「美味しいご飯を作ってくれた人と秋の恵みに感謝っすね」
伊出の言葉に一行は深く頷いた。
おしまい。
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依頼相談用スレッド アレン=プレアール(ka1624) 人間(クリムゾンウェスト)|21才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/10/06 20:37:25 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/10/03 00:01:48 |