その死の価値は

マスター:瀬川綱彦

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/06/16 12:00
完成日
2014/06/22 04:56

みんなの思い出

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オープニング

●その商人が死に、そして村が危機に陥るまでのいきさつ
 ニックが人生最大の不幸に遭遇し絶望を味わうこととなったのは、取引を終え村へ帰るために馬車を曳いている際の出来事だった。月のない夜のことであった。

 ニックは商いを生業とする気の弱い男であり、およそ商才のあるとは言い難い者であった。けれど、その優しい物腰が取引先から一定の信頼を得ていた。良い人であった。
 そのニックがこの日、急いで馬車を走らせていたのは大事な一人娘の誕生日が今日この日であったからに他ならない。先方のトラブルで納品が遅れた食糧を荷に詰め込むと、彼は陽が落ちようとしているにも関わらず、急いで馬を走らせたのだ。彼は気の弱い男であったが、娘の事となるとおよそ普段と及びも付かぬ行動力を発揮していた。
 その懐には、胸にしまえるほどの小さな木箱があり、娘の首に似合うペンダントが秘められている。彼は娘にペンダントを渡すときの事を想像すると、つい苦笑を漏らしてしまう。
 きっと、こんな恥ずかしい物を渡すなんて、と頬を膨らませて妻に似た怒り顔を見せるに違いない。もう躯も大人になりつつある、難しい年頃である。ニックがどんな言葉で祝おうとも、きっとまともに聞いてはくれないに違いない。彼にできるささやかな抵抗といえば、祝いの言葉を綴った手紙を渡して是が非にも祝福させてもらうことだけだった。
 だが、ニックが小さな、しかし愛しき村にたどり着くことは生涯なかった。

「あれは……?」
 ニックが遠方に人影を見たのは、それからすぐのことだった。
 いや、それは人ではない。夜でなければもっと早く気づけただろうが、不幸にも彼は暗く闇沈む夜を駆けていた。
 あっという間にニックの表情は驚愕に変わる。
 三体のゴブリン。そしてその倍以上の数はいるであろうコボルドの、それは亜人の集団であった。
 凶暴な亜人たちの姿にニックの血の気が引いたのは、なにも自分の身の安全を案じたからでは断じてなかった。彼の頭の中には、家族と村人の身に危険が及ぶ可能性を読み取ったのだ。
 ニックが村を出る数日前、ある農家の畑が荒らされる事件があった。人のような足跡であったから村人の仕業かと疑われたが、結局犯人は見つからず、畑に歩哨を立てる事で凌いだのだが――。
 コボルドたちのほとんどは、最近産まれたばかりと思われる矮躯を晒していた。そして、どれも腹を空かせているのか目を血走らせている。
 あの畑を襲ったのは奴らだったのだ。おそらく、ゴブリンたちがコボルドたちを繁殖させて、その食糧をまかない切れなくなって。
 ゴブリンたちがニックに気づく。
 ニックは今が夜であって良かったと思った。彼らが村に向かう前に出会えたから。
 彼は胸に手をあて、祈るように懐にある感触を確かめた。
 
●それでも人には他人事
「依頼です」
 事務的な声で、眼鏡をかけた受付の女性は話を切り出した。
「ここから北へ行った所にある村に、ゴブリンとそれに指揮されたコボルドの集団が現れるとの報告がありました」
 女性は書類をめくりながら、淡々と続ける。
「その村に向かっていた商人が取引先の街まで引き返して事態は発覚しました。ゴブリンたちは飢えているそうです。商人が機転を利かせて荷馬車を捨てたお陰で、積み荷の食糧で当面は耐えるでしょうが、近いうち村を襲うでしょう。そこで貴方たちに、ゴブリンたちの退治をお願いします」
 書類から顔を上げた彼女が、君たちを見回して告げる。
「どうやら無知蒙昧人未満の畜生であるところのゴブリンにも多少頭のまわる個体がいるようで、多少の面倒が予想されます。その辺りのことは報告書に記しておきましたので、熟読の程よろしくおねがいします」
 説明は終わったとばかりに話を打ち切ろうとする女性に、説明を聞いていたハンターのひとりが訊ねた。ゴブリン襲来の一報を伝えに来た商人はどうなったのかと。
「商人ですか? 彼なら死にました。これが遺品です」
 そういって女性がカウンターに差し出したのは、血で紅く染め上げられた小さな木箱だった。
 一緒に白い――かつて白だった――便箋が添えられている。そこには娘の誕生日を祝う文言がしたためられていた。
「それではよろしくお願いします」
 受付の女性は最後まで顔色ひとつ変えることなく、流れ作業のように説明を終えた。

リプレイ本文

「仕事に私情は禁物とは言うけれど、さすがにあれは如何なものかと思うわ」
 ハンターズソサエティ、その組織が拠点とする建物の一画で、依頼を請け負ったばかりのハンター――コーシカ(ka0903)がぼやいていた。
 なぜ憤懣を抱いているかと言えば、自分たちに仕事を伝えてきた受付嬢の態度があまりにも淡々としていたからである。
 依頼の内容とは別に不愉快そうにしているコーシカをなだめたのは、メイリアス=フロストフォール(ka0869)であった。
「あれもお仕事ですから。それに商人の方の無念はわたくしたちが晴らしてさしあげれば良いのです」
「そう、仕事、仕事ね。ここから先は私たちの仕事ってわけね」
 怒りを落ち着かせれば、次に声音に混じるのは緊張である。彼女は今回の依頼が初陣であり、声をわずかばかり震わせても仕方がないだろう。だが、緊張はしても臆してはいないようだった。
「そういえば、商人の娘さんはデイジーさんと言うみたいですね」
 ミリア・コーネリウス(ka1287)が手元の手紙に目を落としていた。手紙や木箱といったニックの最低限の遺品は預かっていたのだ。
 デイジーの誕生日を祝福する文面は、便箋が商人の血で赤く濡れていても可読性は損なわれていなかった。
「こうも綺麗に読み取れると執念が取り憑いてるみたいね。さて、でも冥福を祈るのはゴブリンたちを倒してからにしましょうね」
 横から手紙を覗き込むと、セリス・アルマーズ(ka1079)は鬱屈気味な空気を打ち払うように明るい声を口にする。
 それにリック=ヴァレリー(ka0614)の掌に拳を叩きつける音が答えた。
「そうだな、ゴブリンの奴らなんてぶちのめして、村にも指一本触れさせねえ!」

●街道を行く
「で、街道を突っ切って行くことになったってわけか」
 Zwolf(ka1885)が街道を進みながら相談を思い返せば、彼は億劫さを隠しもしなかった。
 亜人は二手に分かれており、数体のコボルドは街道にとどまり、残りのゴブリンたちは村へと進むルートを取っていた。そのため、街道を迂回する手もあった。
 が、結果としては街道を進むことに決まったのである。
「やれるだけやるさ。ここで異を唱えんのも逆にめんどくせえ」
「いやー、素直じゃないんだから!」
「ひとりだけ抵抗しても非効率的だろ」
「そう言うことにしておいてあげましょう。さて、ゴブリンたちに天罰を下しにいくわよ!」
 セリスは皆の先頭に立つと、率先して街道を先へ先へと進んでいった。足取りは一行の中で一番軽快である。
「よくもそんなに元気が出るものよね」
 すぐ後に続くコーシカは呆れ混じりにセリスを見ていた。
「当然よ、村にゴブリンたちが攻め入らないように急がないとね。だって」
「だって?」
「ボーナス出そうじゃない!」
「シスターとは思えない台詞ですね……」
「貰えるものは貰っておかないとね」
 ミリアもツッコミを入れてしまったが、以前としてセリスの目はキラキラと光っていた。
 それに難色を示したのはリックだ。
「俺は余計な謝礼を貰うくらいなら、商人の家族に渡してほしいけどなあ」
「大丈夫よ、ソサエティからだってボーナスは出るでしょう。なかったらゴブリンたちの鎧でも剥げばいいの。私の物は神様のモノ、お前の物も神様のモノ、亜人の物は金目のモノよ!」
「世間話はその辺りにしておいてください。見えてきましたよ」
 弓を得意とするメイリアスは、街道の先に目をこらしながら話し声を制止した。彼女の視力は、めざとく道の先にうち捨てられた荷馬車を見つけていた。
 はたしてそこにコボルドたちはいた。

●幼き人柱
 荷馬車の周囲をコボルドたちが徘徊していた。その手に武器はなく、素手だ。
 その姿、四つ。情報通りである。荷馬車に伏兵が紛れ込んでいるということがないのも、壊れた扉から中が容易に覗けることから判った。
「それじゃあ、あとは手筈通りに」
「はい」
 セリスの言葉にメイリアスが応えれば、他の者たちも皆各々に戦闘準備を整えていた。
 メイリアスが矢を放つ。それが戦いの嚆矢となった。
 コボルドの一匹が眉間を矢で射抜かれる。
 その一矢でコボルドたちもハンターたちの出現に気がついた。
 仲間が絶命し地面に斃れ伏したのを見ると、残った三匹のコボルドは顔を怒りに歪める。ぎいぎいと耳に入るのも不快な音が人間の嫌悪感と危機感を刺激した。
 その音を聞きながらコーシカは戦場を駆けていた。
 躯に漲るのは緊張ではなく闘志。精霊に捧げられた祈りによってわき上がる戦闘意欲が血に溶け血流を巡り、彼女の肉体を突き動かしていた。
 味方の前衛がコボルドに肉薄するよりも早く、コーシカの手首がスナップを利かせ放ったのはナイフだ。
 剣の射程に入っていない。そう油断していたコボルドの喉に、ナイフの刃は根本まで深々と突き刺さった。
 コボルドは驚き、しかしあの不愉快な声を上げることすらできなかった。
「くたばれ」
 いったいいつ動いたのか。ナイフの刺さったコボルドの横をZwolfがすり抜けていた。
 無造作に、しかし正確無比なダガーの一閃がコボルドの喉を音もなく切り裂く。
 そして最後の一体をミリアが鋭い一太刀で切って捨てたとき、彼女の口を突いたのはあまりの手応えのなさを不思議がるものだった。
「……あれ? もう終わりですか?」
 弓を持ってやってきたメイリアスも荷馬車の周りに斃れるコボルドたちを見回す。その頃には、コボルドを知っている者たちだけは得心がいった。
「こりゃ、生まれて間もない子供じゃない」
 セリスの言った通り、ここにいたコボルドたちは皆一様に躯が小さい。一メートルほどの体躯があるはずなのに、どう見てもそれより一回りは小さかった。
「そういえば、彼らは急遽食糧が必要で略奪に走ったのでしたね。ということは、生まれたばかりの子供をここに配置したわけですか」
「はっ、ガキのために食糧取りに行って、肝心のガキたちが殺されてちゃ世話無いな。所詮ゴブリンってとこか?」
「単に弱いから置き去りにしたのかもしれませんよ。戦力にならないなら価値がありませんから」
 メイリアスのつぶやきに、セリスが苦笑した。
「案外、私たちを迂回させようとするためだけに捨てられたのかもね」
「ともかく、急いでゴブリンたちを追いましょう。これなら追いつけますよ」
 ミリアの提案に頷き、コーシカはコボルドから投げたナイフを引き抜いた。

●首魁に挑む
 日も陰り始めようという頃、一行はついに街道の先に亜人の集団を見つけることができた。
 コボルドが三体、今度こそ成熟した個体である。小さい姿のあとに改めて見ると、確かに遠目でも大きさが違う。
 コボルドを扇動するゴブリンが三体。ゴブリンたちだけは粗末ながら革の鎧をつけ、手には折れた木を削って作った棍棒が握られていた。原始的な武器だが侮れない。数も多く、今度こそ油断できない相手だ。
 ただハンターは全員無傷でここまでたどり着いている、勝機は充分すぎるほどにあった。
「じゃあ、ちょっと気を引いてみるわ」
 コーシカが革の袋から取り出したのは、何枚もの干し肉だ。
 足音を殺してゴブリンたちの方へと近づくと、何枚かの肉をゴブリンたちの近くへと投げて岩陰に身を隠す。
 亜人たちは食糧を求めて歩いていたのだ、彼らの研ぎ澄まされた嗅覚はすぐに干し肉の存在に気づいた。
 ――食いついた!
 ゴブリンは警戒したのか近づきはしなかったが、コボルドの三体はそこに食料が落ちていることに疑いもせず吸い寄せられていく。コボルドが干し肉を無防備に拾うのを確認すると、コーシカは身振り手振りで仲間たちに合図を送る。
 既にメイリアスは弓を引き絞っていた。
(集中――)
 呼吸を整え、震えひとつない指先から矢が放たれた。
 干し肉に食らい付いていたコボルドの頭部を矢は軽々と貫いた。絶命である。
「当たり所が良ければ、こんなものですね」
 騒ぎ始めた遠方の亜人と、それに向かって駆け出したハンターたちの背中を見ながら、メイリアスは二の矢を継いだ。

 まず一番最初にコボルドと接触したのは、一番敵に近づいており身軽に動けるコーシカであった。
 岩の陰から飛び出すのとナイフを投擲するのはほぼ同時。
 刃は二匹目のコボルドの胸を貫き、手から干し肉を取りこぼしながら敵は地面に横臥した。
 失ったナイフの代わりにダガーを取り出すコーシカに向けて、仲間の仇とばかりに最後のコボルドが襲い掛かる。その爪を打ち払ったのは割って入ったセリスだ。
「おっと、私を無視してもらっちゃ困るのよね! 私は盾、消して砕けぬ黄金の鉄の塊! 君たちの命、裏世界でひっそりと幕を閉じさせてあげるわ!」
「お前たちにやられた奴の弔い合戦だ! 行くぜぇ!」
 攻撃を止められて動きが鈍ったコボルドにリックが突っ込んだ。
 剣の柄を握りしめる。街道では戦い損ねたが、こうして剣を手にしてみて――判る。躯が軽く、そのうえ全身には空さえ飛べそうだと思えるほどの全能感が充ち満ちている。
(はじめて覚醒したときと同じだ……今なら、やれるかもしれねえ!)
 その予感は真実その通りだった。
 地面を抉るほど強く踏み込んで斬りかかれば、その剣の早さにコボルドは受けることすらできず袈裟に斬られた。血を噴きながら悲鳴をあげる。
 よろめいたコボルドを剣で薙ぎ払いミリアがトドメを刺せば、ゴブリンを残すだけとなる。
 コボルドがこうも容易いならばゴブリンも――そんな心の隙を咆吼が遮った。
 ハンターたちの注意が自分たちからコボルドに移っている瞬間、ゴブリンがセリスへ飛びかかったのだ。
 一匹だけ鳥の羽をあしらった兜を被ったゴブリンの強襲に、セリスはとっさに防御しようと腕で身を庇う。が、間に合わない。棍棒が急所を打った。
「いったいわねぇ! 絶対に奥歯ガタガタ言わせてやるわ!」
 堪らず膝をつきながらも威嚇するが、言葉ほどに余裕はない。運悪くその一撃は防具の守りのない箇所に命中したのだ。受け損なったセリスは歯を食いしばり、意識の喪失を耐える。
「セリスさん!」
 代わりにと残りのゴブリンの攻撃を引き受けるためミリアが前に出た。
 続くゴブリンの棍棒を剣で攻撃を叩き落とし、腕の痺れを無視してそのゴブリンを切り伏せようと踏み込む。だがその足を三体目のゴブリンが棍棒で打ち据えた。
「……ッ! 最後の晩餐はしっかり味わったんだろうね? しっかり冥土まで送迎してあげるよ!」
 この攻防で、ハンターたちに判ったことがある。
 ゴブリンたちの首魁は、あの羽兜の個体だ。身体能力こそ大差ないが、他のゴブリンに守られている。
「邪魔だ!」
 Zwolfが岩陰などを利用してゴブリンの背後に現れた。
 彼は食糧でおびき寄せる作戦との兼ね合いで、奇襲のつもりだった背後から攻撃するタイミングを見計らっていたのだ。
 ゴブリンが身を反らして躱そうとするが、その肩口をダガーが大きく切り裂く。
 傷ついたゴブリンは喉を鳴らすと、目を血走らせながらハンターのひとりへ飛びかかる。
 それは知能が発達した亜人らしい発想であり、つまり小柄で与しやすそうに見えたコーシカを狙ったものだった。
「やらせるかよ!」
 そのゴブリンの攻撃を腕で受け止め、リックは顔を苦悶でゆがめる。同時に、その目には怒りも籠もっていた。
 リックの中には、LH44で人が無残に死んでいったときの光景が蘇っていた。噎せ返りそうな血臭が芋づる式に記憶を呼び覚まし、そのふつふつとした怒りが腕に力となって現れる。
「あんなのまともじゃねえ……だから俺は戦うんだ! 誰かをみすみす傷つかせるかよ!」
 リックが片手で剣を振り下ろす。それはこれまで以上に華麗な軌跡でゴブリンの首に吸い込まれた。
「あの商人の想いも絶対無駄にしねえ! あとはお前らだ!」
 そうしてゴブリンを切り伏せて吠えるリックの隣から、別のゴブリンが飛びかかった。
 それでも次の瞬間、そのゴブリンは口から血液をはき出していた。
 革の鎧に守られた胴体を矢に貫かれたのである。
「目の前だけを見ていてはいけませんね」
 戦場まで距離をつめていたメイリアスの矢が、一瞬の隙を見逃さずにゴブリンを撃ち抜いていたのだ。
「まったくだな、おい」
 負傷したゴブリンは背後にZwolfの声を聞く頃には、延髄をダガーで貫かれ意識を刈り取られていた。
「お前まで我を忘れたらどうすんだ」
「悪い、助かったぜZwolf、メイリアス!」
 最後の部下を失って、リーダー格のゴブリンも劣勢を悟りたじろいだ。
「こいつさえおわりゃ、依頼は達成だ。気を引き締めろよ」
 油断無くダガーを構えるZwolfのうしろで、セリスは自分にヒールを使用しながら立ち上がった。 
「ええ、ラストスパートといきましょうか!」

 残るはゴブリンは一体、そしてハンターたちは全員健在。
 勝負は、ここに決したといってよかった。

●決着、そして
 リックが真っ向から振り下ろした剣がリーダー/ゴブリンの頭をかち割ったのは、それから程なくの事だった。
 斃れ伏したそのゴブリンを最後に、村へ襲撃を企てていた亜人は全滅することとなった。
「これで任務完了! だよな」
 ふう、と息を吐くと、リックは躯から力を抜いて戦闘状態を解いた。
「ええ。ですが、死体が腐ると困りますから埋めるなりしたいところですね」
「その辺りのことも含めて、村で相談でもしましょうか」
 ミリアは持っていた血塗れの木箱を確認しながら言うと、ハンターたちは村へと歩いて行く。
 幸い、日が落ちる前に村にたどり着くことができた。
 村の入り口には、ひとりの少女が立ち惚けていた。
「貴方たちは……?」
「私たちはハンターよ。貴女はここの村人さんかしら?」
 セリスが訊ねると、少女が頷いた。
「ええ、デイジーと言います」
 話を聞くと、彼女はここで何日も帰らない父を待っていたという。もし村にゴブリンたちがついていれば、彼女は最初に殺され――胃袋の中にいただろう。
「これ、貴女に渡しておくわ。この村の救世主からの贈り物よ」
 メイリアスとセリスが、ニックの残した手紙と、新しい箱に入れ替えたプレゼントを彼女に手渡す。その間に、リックは村人たちにニックを丁重に葬ってほしいと伝えていた。
「この村を守りきったのは、間違いなくニックさんだった。だから、誇りに思って」
 ミリアは、今は何も入っていない血に濡れた木箱をデイジーに差し出す。
 ネックレスを手にとって言葉を失っているデイジーに、コーシカは小さく声をかけた。
「きっと、似合ってるはずよ。大切にしなさい」
「……ありがとうございます。父の価値は、貶めません」
 商人の娘らしい決意を述べて頭を下げる。
 ペンダントのチャームの中では、在りし日の家族たちは仲良くほほえみあっていた。
 村の夜は更けていく。それが勝利の証だった。

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MVP一覧


  • ルーティア・ルーka0903
  • 歪虚滅ぶべし
    セリス・アルマーズka1079

重体一覧

参加者一覧

  • 一日パパ
    リック=ヴァレリー(ka0614
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人

  • メイリアス=フロストフォール(ka0869
    人間(紅)|20才|女性|猟撃士

  • ルーティア・ルー(ka0903
    エルフ|12才|女性|霊闘士
  • 歪虚滅ぶべし
    セリス・アルマーズ(ka1079
    人間(紅)|20才|女性|聖導士
  • 英雄譚を終えし者
    ミリア・ラスティソード(ka1287
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人

  • Zwolf(ka1885
    エルフ|24才|男性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/06/11 06:18:28
アイコン 相談場所
Zwolf(ka1885
エルフ|24才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2014/06/16 01:49:37