ゲスト
(ka0000)
逃がさず仕留めよう
マスター:笹村工事

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/10/05 07:30
- 完成日
- 2014/10/08 03:40
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
死体が、周囲一帯に散らばっていた。
武装した無数のそれらは、全てがゴブリンである。
ハンターでもある商人集団と呼ばれる事もある、クルキャット商連合が行っている観光馬車ルート周辺の脅威排除を目的とした広域殲滅作戦。それにより殲滅されたゴブリン達だった。
それを行ったのは三人組の青年である。殲滅戦を行う上で、打ちもらしが無いように外周部を包囲する『檻』としての部隊ではなく、『檻』の中で遊撃部隊として柔軟に動き回っていた。
「完全に逃げられたな」
平坦な声で、赤毛の双剣士が仲間の二人に告げる。それに黒髪の魔術師は返した。
「逃げられたというよりは、一手遅かったって所だろ。包囲網が完成する前に、既にこの辺りには居なかったと見た方が良いな」
これに茶髪の剣士は続ける。
「頭の良いゴブリンなんざ洒落にならねぇから潰しておきたかったが。今回は無理だな」
いま三人が話している相手は、以前起こった狂気の歪虚騒動、それにより動けるハンターが少なった際に、ジェオルジ内のとある村を襲った略奪ゴブリン団の中核をなしていたと思われる数体のゴブリン達の事である。
逃げ延びた村人たちの証言から、明らかに他のゴブリン達よりも能力が高いと推測されるそれらを、今回を機に殲滅できればという思惑が三人組と、彼らの所属するクルキャット商連合にはあったが、それは失敗してしまったという事であった。
「仕方ねぇ。無理な物は無理だからな、俺らは俺らでやるべき事をしよう」
気持ちを切り替えるように言う赤毛の言葉に、黒髪と茶髪の二人も同意する。
「だな。こんな所で止まってたら、『檻』の役目を引き受けてくれたハンターの人達にも悪いしな」
「とはいえ、昔のノリに戻る前にさっさと終わらせたいもんだ。子供に怯えられるのは、もうまっぴらだからな」
茶髪のその言葉に、残りの二人は頷き、そして再び遊撃部隊として進撃を開始した。
そうした殲滅作戦が続く中、その作戦に参加していたアナタ達の前にゴブリン達が現れました。
30mほどの幅のある馬車道に沿う林の中から出てきたゴブリン達はアナタ達に気付き、ある者は襲い掛かろうと、またある者は逃げ出そうとします。
林の中で追い立てられた敵に対する『檻』の役割として配置について居たアナタ達は、配置についている範囲から逃げ出した敵に関しては追いかける訳にはいきません。
逃げ出そうとするゴブリンも居る中、アナタ達の取った対応は――?
武装した無数のそれらは、全てがゴブリンである。
ハンターでもある商人集団と呼ばれる事もある、クルキャット商連合が行っている観光馬車ルート周辺の脅威排除を目的とした広域殲滅作戦。それにより殲滅されたゴブリン達だった。
それを行ったのは三人組の青年である。殲滅戦を行う上で、打ちもらしが無いように外周部を包囲する『檻』としての部隊ではなく、『檻』の中で遊撃部隊として柔軟に動き回っていた。
「完全に逃げられたな」
平坦な声で、赤毛の双剣士が仲間の二人に告げる。それに黒髪の魔術師は返した。
「逃げられたというよりは、一手遅かったって所だろ。包囲網が完成する前に、既にこの辺りには居なかったと見た方が良いな」
これに茶髪の剣士は続ける。
「頭の良いゴブリンなんざ洒落にならねぇから潰しておきたかったが。今回は無理だな」
いま三人が話している相手は、以前起こった狂気の歪虚騒動、それにより動けるハンターが少なった際に、ジェオルジ内のとある村を襲った略奪ゴブリン団の中核をなしていたと思われる数体のゴブリン達の事である。
逃げ延びた村人たちの証言から、明らかに他のゴブリン達よりも能力が高いと推測されるそれらを、今回を機に殲滅できればという思惑が三人組と、彼らの所属するクルキャット商連合にはあったが、それは失敗してしまったという事であった。
「仕方ねぇ。無理な物は無理だからな、俺らは俺らでやるべき事をしよう」
気持ちを切り替えるように言う赤毛の言葉に、黒髪と茶髪の二人も同意する。
「だな。こんな所で止まってたら、『檻』の役目を引き受けてくれたハンターの人達にも悪いしな」
「とはいえ、昔のノリに戻る前にさっさと終わらせたいもんだ。子供に怯えられるのは、もうまっぴらだからな」
茶髪のその言葉に、残りの二人は頷き、そして再び遊撃部隊として進撃を開始した。
そうした殲滅作戦が続く中、その作戦に参加していたアナタ達の前にゴブリン達が現れました。
30mほどの幅のある馬車道に沿う林の中から出てきたゴブリン達はアナタ達に気付き、ある者は襲い掛かろうと、またある者は逃げ出そうとします。
林の中で追い立てられた敵に対する『檻』の役割として配置について居たアナタ達は、配置についている範囲から逃げ出した敵に関しては追いかける訳にはいきません。
逃げ出そうとするゴブリンも居る中、アナタ達の取った対応は――?
リプレイ本文
●現場到着前に配置会議
観光馬車道周辺の脅威排除。その一環である、追い立てた敵を逃がさないための檻の役割。その依頼を引き受けたハンター達は現場に向かう馬車の中で話し合いを進めていた。
「提案があるんだけど、良い?」
依頼人であるクルキャット商連合が用意した観光馬車に揺られながら皆に言ったのは、メイム(ka2290)。
彼女は馬車の中に用意された、簡素な現場地図を見ながら提案する。
「現場は100mほど横幅があるよね。これを10mごとに区切って、あたし達から見て左から0で始まって9で終わる区画に分けて配置を考えてみようと思うんだよ」
「それは良いの、配置は大事じゃからな。私は、端の方を任せて貰おうかのう。他の射撃手と射線が被らないようにしたいんじゃ」
最初に返事したのはレーヴェ・W・マルバス(ka0276)。それに続けて、次々に発言が出た。
「ならミセリは、レーヴェから20mは離れた方が良いね。他にも射撃手がいたら、それも考えた方が良いけど」
ミセリコルデ(ka2864)がそう言うと、カーミン・S・フィールズ(ka1559)も続ける。
「それなら私も弓を使うつもりだから、その辺も配置で考えないとね。でも私の場合は足止めの牽制が目的だから、端よりも全体に届く真ん中あたりが良いかも。牽制した後は、前衛として直接叩きに行くつもり」
さらに、マコト・タツナミ(ka1030)が意見を出す。
「私達は敵を逃さない檻の役割だから、固まり過ぎないである程度距離は取った方が良いかな。私は近接戦闘担当だから、同じ近接戦闘担当の人からは20から30m程度の距離はとっておいた方が良いかも。檻の役目、果たさなきゃいけないから、がんばるね」
こうして意見が次々に出る中、一生懸命さが伝わるような声で夏葵(ka3229)も意見を口にする。
「あたしは今回が初依頼じゃが、皆の足を引っ張らないようにしたいんじゃ。じゃから皆の動きを見ながら、牽制や足止めを中心にしようと思う。他にもあたしのできることはなんでもやるのじゃよ。ひよっこで世話をかけるが、よろしく頼むのじゃ」
これに返したのはレーヴェ。
「任せておくのじゃ。誰でも最初はひよっこじゃ、肝心なのは、それを自覚し助けを求められるかどうかじゃよ。それが出来るおぬしは、立派じゃと思うぞ」
励ますような、あるいは助けるような言葉をかけたのは他のハンター達も同様だ。
「現場では、声を上げて状況報告を欠かさないように気を付けた方が良いと思う。情報共有ができるから」
マコトが現場でのコツを言えば、カーミンは現場での柔軟さに言及する。
「牽制だって重要な役割なのよ。だから現場に着いたら、この馬車の屋根に乗って、射撃をしている所を敵に見えるようにするつもり。聞いてみたら、馬車の客車部分はどう使っても良いって言ってくれたしね。それを最初にして、あとは状況に応じてその場に合った行動をとるつもり。そういうのも、ハンターとして大事だからね」
これに続けて、ミセリコルデは下準備について話す。
「念のため荒地には時間稼ぎ用のトラップをしかけておこうと思う。ロープを持って来ているし、草も生えていたらそれを使ってトラップも仕掛けたい」
この言葉に、夏葵は協力を申し出た。
「それなら、あたしにも手伝わせてくれぬか? 出来る事なら、なんでもやりたいのじゃよ」
「いいよ。なら手伝って」
淡々とした口調で話すミセリコルデは、ひとつ頷いた。
こうして出た意見をまとめ、レーヴェはメイムへと言葉を繋げる。
「これで皆の意見は一通り出たと思うのじゃが、実際の配置はどうするのかのう?」
この問い掛けにメイムは少しだけ地図を前にして黙考したあと、応えを口にした。
「横幅が100mだから、大体30mごとの区画で考えた方が良いと思うの。だから両端と真ん中にそれぞれ二名ずつ配置が良いかな。
具体的には、狙撃役のレーヴェさんとミセリコルデさんが両端付近について貰って、接近戦が出来る人が一緒に居て貰えると良いと思う。
真ん中付近はカーミンさんが馬車の上から牽制役として、それと夏葵さんは今回が初依頼だから、何かがあった時にみんなでフォローが入れ易い事も考えて、近くでついていて貰えると良いと思うんだけれど、これで良いかな?」
「私はそれで良いと思うのじゃ」
メイムの案にレーヴェは頷き返す。
「私は狙撃役じゃからな、地図で言うと左端の1、かの? そこにつこうと思う」
「あたしもそこに行くから、よろしくね」
レーヴェとメイムの配置が決まると、残りの4人もそれぞれの配置を申告。
「私は真ん中だから4か5だけど、5にしようかな。馬車もそこに止めておくつもり」
カーミンが自分の配置を口にすれば、それに続ける形で夏葵も口にする。
「それならあたしは4じゃな。お前様方の足を引っ張らないように頑張るのじゃよ」
そして残りの二人も確認のために告げた。
「ミセリは右端の8だね。マコトは同じ配置につくことになるから、よろしく」
「うん。こちらこそ、よろしくね」
こうしてそれぞれの配置が決まる中、現場へと到着した。
●ゴブリンを逃がさず倒そう
前任のハンター達と交代し、ミセリコルデと夏葵が簡易の罠を作り終えた後に配置につき、間もなくの事だった。
林の中から一斉に6体のゴブリンが現れる。彼らは右寄りの中央付近に固まっていた。
メイムが事前に区分けした数字で言えば、左端寄りの2に1体、残りは右寄りの中央付近である。
真ん中付近の5に2体、その右隣の6に2体が、その右隣の7からは残りの1体が現れた。
そんな中、最初に行動を起こしたのはカーミンだった。
「へぇ、逃げてきたってことは、勘のいいヤツらなのかしら?」
即座に弓を引き絞り狙いを付ける。
「でも、運は悪そうね。だって、私たちの方に逃げてきたんだもの!」
馬車の屋根から牽制も込めた一撃を放つ。距離がそれなりにある上に初めて扱った武器ではあったが、足止めを意識して射られたそれは正面付近に居たゴブリンの足を貫いた。
「勘は案外いいほうなのよっ!」
命中にカーミンが快声を上げる中、敵の動きを見極めていたミセリコルデが叫ぶ。
「3体、左に向かって逃げようとしてる。1体はカーミンの一撃で動きが鈍ってるから、手の空いている人は止めを刺して。ミセリは逃げ出そうとしているのをどうにかするから、こっちに向かってきてる1体はマコトにお願いする」
「こっちは任せて! 状況に合わせて声で知らせるから、その時はお願いね!」
マコトは即座に応え、ゴブリンに向かって走り出す。
そのタイミングと同じく、初依頼のため周囲の状況を把握していた夏葵は、逃げ出そうとするゴブリン達の進路へと向かった。
「あたしのできることはなんでもやるのじゃよ!」
気合の声を上げる頃、左端寄りの林から現れたゴブリンは倒されつつあった。
「右に敵が偏り過ぎてる。こっちは1体だけだから向こうの援護をお願い」
メイムの呼び掛けに即座にレーヴェは応える。
「分かったのじゃ。じゃが不測の事態が起こったならすぐに呼ぶのじゃぞ」
「ありがとう。その時はお願い」
声だけをレーヴェに返し、メイムはゴブリンへと向かう。
彼女の進む先にいるゴブリンは孤立していることに気付き、左端の荒野に逃げようと走り出した。射撃されることを恐れてジグザグに走るそれを追い詰めんと、メイムはまっすぐに走って接近する。
「ふり~ず!」
敵の逃走を防ぐため、ブロウビートと共に大声を上げる。それにより、ゴブリンは恐慌を起こしたように混乱し、動きを止めた。
その隙を逃さずメイムは鞭の一撃を放つ。その瞬間、今回の依頼の成功と無事を祈り応援してくれた友人たちの姿が心に浮かんだ。
「皆の応援、無駄にしない。当れ~」
友人たちの祈りと応援に応えるために放った一撃はゴブリンの目をえぐるように命中、それにより視界を奪った。そこから間髪入れず放った2撃目はゴブリンの喉元を潰すように命中し、一気に止めを刺す。
こうして左端寄りの林から現れたゴブリンが倒された頃、乱戦じみた右中央寄りの戦闘も決着が付きつつあった。
「馬車道の安全は確保しなきゃいけないの。だから、ごめんなさい。逃がさないよ」
マコトは、血走った眼差しで向かってくるゴブリンに自分から近づく。直接戦闘の距離まで詰めると、敵の逃走を防ぐためにエレクトリックショックを使った。
「ごめんなさい、ちょっと痺れててね?」
カウンター狙いで一撃を受ける覚悟を決めていたゴブリンは、それが仇となりマコトの一撃をまともに食らう。それにより動きが止まった敵に、マコトは惜しみなく全力を費やした。
「ごめんなさい! 全力でいきます!」
アルケミックパワーで威力と命中力を上げた一撃を胸元に叩き込む。敵は防具がないため、エレクトリックショックにより防御もできないので攻撃をまともに食らった。なんとかギリギリで生き延びたゴブリンは反射的に動くが、苦し紛れの一撃は簡単に避けられ、即座に止めを刺される。
「こっちは終わりました! 援護に行きます!」
情報共有のために声を上げ現状を伝えたマコトは、即座に仲間の元に走り出す。その時には、ほぼ決着はつきつつあった。
「さーち、あんど、ですとろい、だね」
敵出現とほぼ同時に状況把握をしたミセリコルデは、自分以外の後衛では対応が難しい敵に向かって狙撃を行う。全力で走り最適の位置取りをした彼女は、敵の動きも予想しながらスキルを惜しみなく使い攻撃を放つ。
威力はあるが扱いの難しいバトルライフルを巧みに操り、無防備なゴブリンの胸元に弾丸を命中させ、一撃必殺の威力で殲滅した。
これにより逃走の動きを見せたゴブリンは残り2体になる。彼らもまた同じ運命を辿るのは火を見るよりも明らかだ。
「確実に当てるのじゃ」
味方への誤射に注意し、リロードの隙も作らないよう一発ずつ確実に当てる事を意識しつつ、レーヴェは左端から狙撃を行う。
ダメージを与え移動力を削ぐ事を目的なので、足及び胴に照準を定めた。遠射のスキルと共に放たれた一撃はゴブリンの足に命中、ダメージと共に移動力をも奪う。
そこへ追撃をかける形で、夏葵は接敵し攻撃を放った。
「この好機、逃さんのじゃ!」
仲間のハンターたちの足を引っ張らないよう周囲の状況を見極めていた夏葵は、自分が取り得る最善を行う。
レーヴェの一撃により動きが止まったゴブリンへ、闘心昂揚のスキルを駆使した戦斧の一撃を放った。敵はそれを避けることなどできず、あっけなく止めを刺された。
これで逃げに走ったゴブリンは残り1体。しかしそれも、カーミンにより殲滅されつつあった。
「逃がさないわよ。私本来の持ち味は弓じゃなくて、実は機動力だって所を見せてあげる」
最初に牽制も込めた一撃を弓で放ったカーミンだったが、即座に近接戦闘へと切り替え、最後の1体との間合いを詰める。
馬車の屋根から飛び降りると瞬脚を使い加速、更にランアウトも使い、通常の3倍は速いのではないかと思わせる動きを見せた。
ゴブリンにしてみれば一瞬で距離を詰められて驚き、それにより足が止まり、キョロキョロと視線を動かして逃げる場所を探す。
「ほら、余所見してていいの?」
声をかけながら、カーミンは流れるような滑らかさで攻撃する。
逃走を防ぐことを第一に、スクアーロナイフの一撃を腿へと振るう。部位狙いのスキルと共に振るわれたそれは、迷っていたゴブリンに対してまともに動けなくなるほどのダメージを与えた。
「これでお終い」
「クロスファイアじゃ」
そこにミセリコルデとレーヴェの集中砲火を食らい、止めを刺された。
こうして、今回の依頼における戦闘は終わりを告げた。
戦闘後、周囲への警戒をしつつ死体の片づけなどを行った後に再び配置についたハンター達ではあったが、その後依頼終了の時間まで襲撃は無かった。
そして依頼終了後、用意された観光馬車に揺られながらハンター達は帰途についた。
●ごくろうさまでした
「疲れたのじゃ~。じゃが、お蔭で御菓子が美味いのじゃ。どうじゃお前様も一緒に」
本来は十人以上が乗れる馬車の中、ゆったりと座りながら夏葵は持って来ていたポテチを依頼仲間であるハンター達に勧める。それにレーヴェとミセリコルデは応えた。
「おお、良いのう。折角じゃから貰うのじゃ」
「少し貰う。ありがとう」
「どういたしましてなのじゃ。お前様方もどうじゃ?」
残りの3人にも勧める夏葵に、和やかな空気の中、応えが返ってくる。
「ありがとー。折角だから勝利の祝杯と一緒に……――
は~。おいし~。やっぱり仕事終わりのお酒は美味しいね」
持って来ていた缶ビールで喉を潤しながら夏葵からポテチを貰うマコト。残り二人の内、カーミンは1枚取り礼を返す。
「折角だから、少し貰うね」
そして残りの一人、メイムはLEDライトで照らされた客車内で、依頼前に広げていた地図を見ながら返した。
「ありがとう、あとで貰うね。ちょっと今日の配置とか敵の動きとか、検証してみたいから」
戦略や戦術を構想するのが好きな彼女は、楽しげに今日の戦いの検証を行っていた。
その後、客車内に取り付けられたトランシーバーで、御者についていたクルキャット商連合の一員から連絡が入る。
内容は、客車内の中央に固定された箱型テーブルの中に観光馬車用の食事やお酒があり、後で感想を聞かせて欲しいので良かったら食べて欲しい、という物だった。
そうして、彼女達はちょっとした観光馬車の旅を楽しんだという。
こうして、彼女達の依頼は終わりを告げた。
戦闘地域の範囲や状況を考慮に入れた配置を事前に考えるなどの準備を行い、その上でそれぞれが配置についた場所から適切な戦闘を行い、そして後に残るようなダメージを受けなかった今回の依頼は大成功であると言えた。
次に関わる依頼もまた、今回と同じ結果をもたらすのであろう。そんな明るい兆しを感じさせた。
観光馬車道周辺の脅威排除。その一環である、追い立てた敵を逃がさないための檻の役割。その依頼を引き受けたハンター達は現場に向かう馬車の中で話し合いを進めていた。
「提案があるんだけど、良い?」
依頼人であるクルキャット商連合が用意した観光馬車に揺られながら皆に言ったのは、メイム(ka2290)。
彼女は馬車の中に用意された、簡素な現場地図を見ながら提案する。
「現場は100mほど横幅があるよね。これを10mごとに区切って、あたし達から見て左から0で始まって9で終わる区画に分けて配置を考えてみようと思うんだよ」
「それは良いの、配置は大事じゃからな。私は、端の方を任せて貰おうかのう。他の射撃手と射線が被らないようにしたいんじゃ」
最初に返事したのはレーヴェ・W・マルバス(ka0276)。それに続けて、次々に発言が出た。
「ならミセリは、レーヴェから20mは離れた方が良いね。他にも射撃手がいたら、それも考えた方が良いけど」
ミセリコルデ(ka2864)がそう言うと、カーミン・S・フィールズ(ka1559)も続ける。
「それなら私も弓を使うつもりだから、その辺も配置で考えないとね。でも私の場合は足止めの牽制が目的だから、端よりも全体に届く真ん中あたりが良いかも。牽制した後は、前衛として直接叩きに行くつもり」
さらに、マコト・タツナミ(ka1030)が意見を出す。
「私達は敵を逃さない檻の役割だから、固まり過ぎないである程度距離は取った方が良いかな。私は近接戦闘担当だから、同じ近接戦闘担当の人からは20から30m程度の距離はとっておいた方が良いかも。檻の役目、果たさなきゃいけないから、がんばるね」
こうして意見が次々に出る中、一生懸命さが伝わるような声で夏葵(ka3229)も意見を口にする。
「あたしは今回が初依頼じゃが、皆の足を引っ張らないようにしたいんじゃ。じゃから皆の動きを見ながら、牽制や足止めを中心にしようと思う。他にもあたしのできることはなんでもやるのじゃよ。ひよっこで世話をかけるが、よろしく頼むのじゃ」
これに返したのはレーヴェ。
「任せておくのじゃ。誰でも最初はひよっこじゃ、肝心なのは、それを自覚し助けを求められるかどうかじゃよ。それが出来るおぬしは、立派じゃと思うぞ」
励ますような、あるいは助けるような言葉をかけたのは他のハンター達も同様だ。
「現場では、声を上げて状況報告を欠かさないように気を付けた方が良いと思う。情報共有ができるから」
マコトが現場でのコツを言えば、カーミンは現場での柔軟さに言及する。
「牽制だって重要な役割なのよ。だから現場に着いたら、この馬車の屋根に乗って、射撃をしている所を敵に見えるようにするつもり。聞いてみたら、馬車の客車部分はどう使っても良いって言ってくれたしね。それを最初にして、あとは状況に応じてその場に合った行動をとるつもり。そういうのも、ハンターとして大事だからね」
これに続けて、ミセリコルデは下準備について話す。
「念のため荒地には時間稼ぎ用のトラップをしかけておこうと思う。ロープを持って来ているし、草も生えていたらそれを使ってトラップも仕掛けたい」
この言葉に、夏葵は協力を申し出た。
「それなら、あたしにも手伝わせてくれぬか? 出来る事なら、なんでもやりたいのじゃよ」
「いいよ。なら手伝って」
淡々とした口調で話すミセリコルデは、ひとつ頷いた。
こうして出た意見をまとめ、レーヴェはメイムへと言葉を繋げる。
「これで皆の意見は一通り出たと思うのじゃが、実際の配置はどうするのかのう?」
この問い掛けにメイムは少しだけ地図を前にして黙考したあと、応えを口にした。
「横幅が100mだから、大体30mごとの区画で考えた方が良いと思うの。だから両端と真ん中にそれぞれ二名ずつ配置が良いかな。
具体的には、狙撃役のレーヴェさんとミセリコルデさんが両端付近について貰って、接近戦が出来る人が一緒に居て貰えると良いと思う。
真ん中付近はカーミンさんが馬車の上から牽制役として、それと夏葵さんは今回が初依頼だから、何かがあった時にみんなでフォローが入れ易い事も考えて、近くでついていて貰えると良いと思うんだけれど、これで良いかな?」
「私はそれで良いと思うのじゃ」
メイムの案にレーヴェは頷き返す。
「私は狙撃役じゃからな、地図で言うと左端の1、かの? そこにつこうと思う」
「あたしもそこに行くから、よろしくね」
レーヴェとメイムの配置が決まると、残りの4人もそれぞれの配置を申告。
「私は真ん中だから4か5だけど、5にしようかな。馬車もそこに止めておくつもり」
カーミンが自分の配置を口にすれば、それに続ける形で夏葵も口にする。
「それならあたしは4じゃな。お前様方の足を引っ張らないように頑張るのじゃよ」
そして残りの二人も確認のために告げた。
「ミセリは右端の8だね。マコトは同じ配置につくことになるから、よろしく」
「うん。こちらこそ、よろしくね」
こうしてそれぞれの配置が決まる中、現場へと到着した。
●ゴブリンを逃がさず倒そう
前任のハンター達と交代し、ミセリコルデと夏葵が簡易の罠を作り終えた後に配置につき、間もなくの事だった。
林の中から一斉に6体のゴブリンが現れる。彼らは右寄りの中央付近に固まっていた。
メイムが事前に区分けした数字で言えば、左端寄りの2に1体、残りは右寄りの中央付近である。
真ん中付近の5に2体、その右隣の6に2体が、その右隣の7からは残りの1体が現れた。
そんな中、最初に行動を起こしたのはカーミンだった。
「へぇ、逃げてきたってことは、勘のいいヤツらなのかしら?」
即座に弓を引き絞り狙いを付ける。
「でも、運は悪そうね。だって、私たちの方に逃げてきたんだもの!」
馬車の屋根から牽制も込めた一撃を放つ。距離がそれなりにある上に初めて扱った武器ではあったが、足止めを意識して射られたそれは正面付近に居たゴブリンの足を貫いた。
「勘は案外いいほうなのよっ!」
命中にカーミンが快声を上げる中、敵の動きを見極めていたミセリコルデが叫ぶ。
「3体、左に向かって逃げようとしてる。1体はカーミンの一撃で動きが鈍ってるから、手の空いている人は止めを刺して。ミセリは逃げ出そうとしているのをどうにかするから、こっちに向かってきてる1体はマコトにお願いする」
「こっちは任せて! 状況に合わせて声で知らせるから、その時はお願いね!」
マコトは即座に応え、ゴブリンに向かって走り出す。
そのタイミングと同じく、初依頼のため周囲の状況を把握していた夏葵は、逃げ出そうとするゴブリン達の進路へと向かった。
「あたしのできることはなんでもやるのじゃよ!」
気合の声を上げる頃、左端寄りの林から現れたゴブリンは倒されつつあった。
「右に敵が偏り過ぎてる。こっちは1体だけだから向こうの援護をお願い」
メイムの呼び掛けに即座にレーヴェは応える。
「分かったのじゃ。じゃが不測の事態が起こったならすぐに呼ぶのじゃぞ」
「ありがとう。その時はお願い」
声だけをレーヴェに返し、メイムはゴブリンへと向かう。
彼女の進む先にいるゴブリンは孤立していることに気付き、左端の荒野に逃げようと走り出した。射撃されることを恐れてジグザグに走るそれを追い詰めんと、メイムはまっすぐに走って接近する。
「ふり~ず!」
敵の逃走を防ぐため、ブロウビートと共に大声を上げる。それにより、ゴブリンは恐慌を起こしたように混乱し、動きを止めた。
その隙を逃さずメイムは鞭の一撃を放つ。その瞬間、今回の依頼の成功と無事を祈り応援してくれた友人たちの姿が心に浮かんだ。
「皆の応援、無駄にしない。当れ~」
友人たちの祈りと応援に応えるために放った一撃はゴブリンの目をえぐるように命中、それにより視界を奪った。そこから間髪入れず放った2撃目はゴブリンの喉元を潰すように命中し、一気に止めを刺す。
こうして左端寄りの林から現れたゴブリンが倒された頃、乱戦じみた右中央寄りの戦闘も決着が付きつつあった。
「馬車道の安全は確保しなきゃいけないの。だから、ごめんなさい。逃がさないよ」
マコトは、血走った眼差しで向かってくるゴブリンに自分から近づく。直接戦闘の距離まで詰めると、敵の逃走を防ぐためにエレクトリックショックを使った。
「ごめんなさい、ちょっと痺れててね?」
カウンター狙いで一撃を受ける覚悟を決めていたゴブリンは、それが仇となりマコトの一撃をまともに食らう。それにより動きが止まった敵に、マコトは惜しみなく全力を費やした。
「ごめんなさい! 全力でいきます!」
アルケミックパワーで威力と命中力を上げた一撃を胸元に叩き込む。敵は防具がないため、エレクトリックショックにより防御もできないので攻撃をまともに食らった。なんとかギリギリで生き延びたゴブリンは反射的に動くが、苦し紛れの一撃は簡単に避けられ、即座に止めを刺される。
「こっちは終わりました! 援護に行きます!」
情報共有のために声を上げ現状を伝えたマコトは、即座に仲間の元に走り出す。その時には、ほぼ決着はつきつつあった。
「さーち、あんど、ですとろい、だね」
敵出現とほぼ同時に状況把握をしたミセリコルデは、自分以外の後衛では対応が難しい敵に向かって狙撃を行う。全力で走り最適の位置取りをした彼女は、敵の動きも予想しながらスキルを惜しみなく使い攻撃を放つ。
威力はあるが扱いの難しいバトルライフルを巧みに操り、無防備なゴブリンの胸元に弾丸を命中させ、一撃必殺の威力で殲滅した。
これにより逃走の動きを見せたゴブリンは残り2体になる。彼らもまた同じ運命を辿るのは火を見るよりも明らかだ。
「確実に当てるのじゃ」
味方への誤射に注意し、リロードの隙も作らないよう一発ずつ確実に当てる事を意識しつつ、レーヴェは左端から狙撃を行う。
ダメージを与え移動力を削ぐ事を目的なので、足及び胴に照準を定めた。遠射のスキルと共に放たれた一撃はゴブリンの足に命中、ダメージと共に移動力をも奪う。
そこへ追撃をかける形で、夏葵は接敵し攻撃を放った。
「この好機、逃さんのじゃ!」
仲間のハンターたちの足を引っ張らないよう周囲の状況を見極めていた夏葵は、自分が取り得る最善を行う。
レーヴェの一撃により動きが止まったゴブリンへ、闘心昂揚のスキルを駆使した戦斧の一撃を放った。敵はそれを避けることなどできず、あっけなく止めを刺された。
これで逃げに走ったゴブリンは残り1体。しかしそれも、カーミンにより殲滅されつつあった。
「逃がさないわよ。私本来の持ち味は弓じゃなくて、実は機動力だって所を見せてあげる」
最初に牽制も込めた一撃を弓で放ったカーミンだったが、即座に近接戦闘へと切り替え、最後の1体との間合いを詰める。
馬車の屋根から飛び降りると瞬脚を使い加速、更にランアウトも使い、通常の3倍は速いのではないかと思わせる動きを見せた。
ゴブリンにしてみれば一瞬で距離を詰められて驚き、それにより足が止まり、キョロキョロと視線を動かして逃げる場所を探す。
「ほら、余所見してていいの?」
声をかけながら、カーミンは流れるような滑らかさで攻撃する。
逃走を防ぐことを第一に、スクアーロナイフの一撃を腿へと振るう。部位狙いのスキルと共に振るわれたそれは、迷っていたゴブリンに対してまともに動けなくなるほどのダメージを与えた。
「これでお終い」
「クロスファイアじゃ」
そこにミセリコルデとレーヴェの集中砲火を食らい、止めを刺された。
こうして、今回の依頼における戦闘は終わりを告げた。
戦闘後、周囲への警戒をしつつ死体の片づけなどを行った後に再び配置についたハンター達ではあったが、その後依頼終了の時間まで襲撃は無かった。
そして依頼終了後、用意された観光馬車に揺られながらハンター達は帰途についた。
●ごくろうさまでした
「疲れたのじゃ~。じゃが、お蔭で御菓子が美味いのじゃ。どうじゃお前様も一緒に」
本来は十人以上が乗れる馬車の中、ゆったりと座りながら夏葵は持って来ていたポテチを依頼仲間であるハンター達に勧める。それにレーヴェとミセリコルデは応えた。
「おお、良いのう。折角じゃから貰うのじゃ」
「少し貰う。ありがとう」
「どういたしましてなのじゃ。お前様方もどうじゃ?」
残りの3人にも勧める夏葵に、和やかな空気の中、応えが返ってくる。
「ありがとー。折角だから勝利の祝杯と一緒に……――
は~。おいし~。やっぱり仕事終わりのお酒は美味しいね」
持って来ていた缶ビールで喉を潤しながら夏葵からポテチを貰うマコト。残り二人の内、カーミンは1枚取り礼を返す。
「折角だから、少し貰うね」
そして残りの一人、メイムはLEDライトで照らされた客車内で、依頼前に広げていた地図を見ながら返した。
「ありがとう、あとで貰うね。ちょっと今日の配置とか敵の動きとか、検証してみたいから」
戦略や戦術を構想するのが好きな彼女は、楽しげに今日の戦いの検証を行っていた。
その後、客車内に取り付けられたトランシーバーで、御者についていたクルキャット商連合の一員から連絡が入る。
内容は、客車内の中央に固定された箱型テーブルの中に観光馬車用の食事やお酒があり、後で感想を聞かせて欲しいので良かったら食べて欲しい、という物だった。
そうして、彼女達はちょっとした観光馬車の旅を楽しんだという。
こうして、彼女達の依頼は終わりを告げた。
戦闘地域の範囲や状況を考慮に入れた配置を事前に考えるなどの準備を行い、その上でそれぞれが配置についた場所から適切な戦闘を行い、そして後に残るようなダメージを受けなかった今回の依頼は大成功であると言えた。
次に関わる依頼もまた、今回と同じ結果をもたらすのであろう。そんな明るい兆しを感じさせた。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
依頼相談掲示板 | |||
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作戦スレッド ミセリコルデ(ka2864) エルフ|12才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2014/10/05 01:13:56 |
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プレイング メイム(ka2290) エルフ|15才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2014/10/04 22:15:41 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/10/02 07:43:28 |