ゲスト
(ka0000)
切り落とされた大樹の跡に
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/01/01 19:00
- 完成日
- 2017/01/08 21:18
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●雑魔に脅かされるエルフの集落
リンダールの森。
狼雑魔の脅威が消え、森に落ち着きが取り戻されたように見えたが、雑魔自体の脅威が完全に消え去ったわけではない。
とあるエルフの集落では、近くに現れた雑魔の姿に住民から不安の声が上がっている。
先日、この集落にヤギ雑魔が襲い掛かりそうになる事件があった。依頼を受けて駆けつけたハンターが討伐してくれた為、集落への被害はほぼなかったのだが……。
「雑魔か……」
冬場ということもあって遠方へと出稼ぎに出ていたエルフの男性達だったが、故郷の危機を聞きつけて徐々に戻りつつある。
戻ってきて状況を聞いていたエルフの男性が唸りこむ。
「グラズヘイムの狼雑魔がいなくなったというのに……」
年老いたエルフの集落の長が眉間にしわを寄せる。
この森には、何がいるのだろうか。動植物を雑魔とさせる何かが……。
「ともあれ、森に何が起こっているのか、確認する必要があるだろう」
別のエルフがそう告げる。ぼやぼやしていると、また雑魔が集落を襲ってくるかもしれない。集落の守りも固めねばならないが、森の探索も必要だ。
この間攻めてきたヤギ雑魔がやってきた方向を顧みて、エルフ達はある程度異変のありそうな場所に、当たりをつけていたのだが……。
「依頼は出そう。さすがに我々だけでどうにかできる状況とは思えん……」
長はそのまま、集落にあるハンターズソサエティへと向かって行ったのだった。
ハンターズソサエティにて。
「雑魔、減りませんね……」
ハンターがやってくると、そこにはファリーナ・リッジウェイ(kz0182)の姿があった。
聖堂戦士団にて、小隊を任されるようになった彼女。ハンターとしても活動する彼女にはそのまま、国内で起きている雑魔など、懸念される脅威の排除、状況報告の任が与えられた。
近場では、彼女の指令を待つ若い隊員達も控えてくれている。まだまだ頼りないが、彼らを導くのもファリーナの任務だ。
閑話休題。
ファリーナも、リンダールの森に出現している雑魔が気になっていたらしい。彼女はエルフから出されたある依頼書を指差す。
「森の調査……が主な依頼のようですけれど」
依頼者であるエルフが指定した場所は、木々が拓けている場所だ。集落に向けて、ヤギ雑魔が向かってきた元となる場所だと推察されている。
依頼書によれば、そこには大樹があったそうなのだが、最近、それが切り倒されて大樹がなくなったのだという。そこが今どうなっているのかは分からないが、雑魔がいるのは間違いない。その調査の為、エルフ達はハンターの手を借りたいのだそうだ。
「隊員の皆に村の護衛を任せて、私は皆様と現場に向かおうと考えています」
こうすることで集落のエルフ達を安心させつつ、調査を行うことも出来る。
依頼書は調査とあるが、雑魔の出現は濃厚だ。戦いの準備はしっかりと行いたい。
「何が起こってもいいように、万全の準備を行いましょう」
よろしくお願いしますと、ファリーナは丁寧にハンター達へと頭を下げるのだった。
リンダールの森。
狼雑魔の脅威が消え、森に落ち着きが取り戻されたように見えたが、雑魔自体の脅威が完全に消え去ったわけではない。
とあるエルフの集落では、近くに現れた雑魔の姿に住民から不安の声が上がっている。
先日、この集落にヤギ雑魔が襲い掛かりそうになる事件があった。依頼を受けて駆けつけたハンターが討伐してくれた為、集落への被害はほぼなかったのだが……。
「雑魔か……」
冬場ということもあって遠方へと出稼ぎに出ていたエルフの男性達だったが、故郷の危機を聞きつけて徐々に戻りつつある。
戻ってきて状況を聞いていたエルフの男性が唸りこむ。
「グラズヘイムの狼雑魔がいなくなったというのに……」
年老いたエルフの集落の長が眉間にしわを寄せる。
この森には、何がいるのだろうか。動植物を雑魔とさせる何かが……。
「ともあれ、森に何が起こっているのか、確認する必要があるだろう」
別のエルフがそう告げる。ぼやぼやしていると、また雑魔が集落を襲ってくるかもしれない。集落の守りも固めねばならないが、森の探索も必要だ。
この間攻めてきたヤギ雑魔がやってきた方向を顧みて、エルフ達はある程度異変のありそうな場所に、当たりをつけていたのだが……。
「依頼は出そう。さすがに我々だけでどうにかできる状況とは思えん……」
長はそのまま、集落にあるハンターズソサエティへと向かって行ったのだった。
ハンターズソサエティにて。
「雑魔、減りませんね……」
ハンターがやってくると、そこにはファリーナ・リッジウェイ(kz0182)の姿があった。
聖堂戦士団にて、小隊を任されるようになった彼女。ハンターとしても活動する彼女にはそのまま、国内で起きている雑魔など、懸念される脅威の排除、状況報告の任が与えられた。
近場では、彼女の指令を待つ若い隊員達も控えてくれている。まだまだ頼りないが、彼らを導くのもファリーナの任務だ。
閑話休題。
ファリーナも、リンダールの森に出現している雑魔が気になっていたらしい。彼女はエルフから出されたある依頼書を指差す。
「森の調査……が主な依頼のようですけれど」
依頼者であるエルフが指定した場所は、木々が拓けている場所だ。集落に向けて、ヤギ雑魔が向かってきた元となる場所だと推察されている。
依頼書によれば、そこには大樹があったそうなのだが、最近、それが切り倒されて大樹がなくなったのだという。そこが今どうなっているのかは分からないが、雑魔がいるのは間違いない。その調査の為、エルフ達はハンターの手を借りたいのだそうだ。
「隊員の皆に村の護衛を任せて、私は皆様と現場に向かおうと考えています」
こうすることで集落のエルフ達を安心させつつ、調査を行うことも出来る。
依頼書は調査とあるが、雑魔の出現は濃厚だ。戦いの準備はしっかりと行いたい。
「何が起こってもいいように、万全の準備を行いましょう」
よろしくお願いしますと、ファリーナは丁寧にハンター達へと頭を下げるのだった。
リプレイ本文
●エルフの懸念を払拭する為
グラズヘイム王国内、リンダールの森。
一度、エルフの集落へと集まったハンター達は、エルフのハンター達と合流する。
「近頃エルフの集落が騒がしいようだが、この私に戦えという天のお告げのようだな」
不動シオン(ka5395)が言っているのは、エルフハイムでの戦いのこと。こちらはその余波をそれほど強くは受けていないようだが、ひっそりと暮らすエルフ達は別の懸念を抱いている。
「リンダ―ルの森……。他の依頼でも、ちょっと気になることがあったのよね」
この森の中でもエルフがひっそりと暮らしていることに、同じエルフのリアリュール(ka2003)は驚く。王都イルダーナや古都アークエルス、自由都市のフマーレといった街からは遠いが、緑に囲まれてほっとできる場所だ。
「また雑魔か……」
南護 炎(ka6651) は前回も、この集落から出された依頼に参加している。あのときの相手はヤギ雑魔だったが、今回もそうなのだろうか。
「平和な暮らしを脅かす雑魔……。正義のニンジャでプロカードゲーマーとしては、放っておけないです!」
リアルブルーでの経験を活かし、このファナティックブラッドにて夢にまで描いていた冒険を楽しむ、ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)。彼女はルンルン忍法とカードの力を駆使し、この森の調査と雑魔退治に臨む。
「とりあえず、それを使ってみるといい」
クリスティン・ガフ(ka1090)は出発の前に、今回同行する聖堂戦士団のファリーナ・リッジウェイ (kz0182)へと振動刀を差し出す。
「はい、ありがとうございます!」
彼女はそれを手にし、幾度かその振って手になじませていた。
「それでは、よろしく頼む」
エルフ達が改めてハンター達へと挨拶を交わした後、一行は集落を後にしていくのである。
●切り倒された切り株は……
メンバー達はその後、エルフの案内を受けて現地へと向かう。調査対象は、切り倒されたという大樹跡だ。
基本、徒歩のメンバーも多いが、炎、セツナ・ウリヤノヴァ(ka5645)、いったメンバーは馬を駆っている。
(大樹を切り倒したのは何故? 雑魔が出た前後に他に異変は?)
リアリュールはそんな疑問を抱いており、集落のエルフから情報を得ていた。
作物については例年より多少不作ではあったが、天候の影響とみられている。動物に関しては森から出ようとはせず、逆に怯えて動かないでいたようだ。これは、森の外で最近まで狼雑魔が活動していたこともあったのだが……。
「つまり、直接の原因は分からないということかしらね」
だからこそ、リアリュールは気を抜くことなく、森を進む。
森には、ヤギ雑魔が潜んでいる可能性も大きい。炎は現れそうな場所の目星をつけながら、周囲を見回す。
(実に格好の餌だな、この雑魔騒動は……)
戦場こそ、最高の楽園と豪語するシオン。強敵の鼻柱を砕く為ならば、どんな荒事でさえも彼女は引き受ける所存だ。
「雑魔が沸いてくる場所ならば、何か秘密があるかもしれない」
強敵との戦いを求めるシオン。見えてきた現場には、自身の闘争心を満たしてくれる大型雑魔はいるだろうか。
現場は開けた場所だ。
そこには元々大樹があった為に木陰となっていたこともあり、木々が生息していないのだろう。しかし、今やそこに樹はなく、中央には大きな切り株が残るのみ。
その場に到着したメンバーはゆっくりとその場へと踏み出す。セツナは馬を降り、シオンもその近辺の調査を始めるのだが、彼女達はすぐにこの場のマテリアルに異常を感じた。
「何かいるわね。あそこ……」
直感視を活かし、リアリュールが何らかの気配を感じ取る。
遠目で見ると、大樹の切り株には人が出入りできるほどの穴が開いているらしい。この場からでは、穴の深さは分からないが……。
「明らかに何かが内側にいるって分かるのでしたら、対策も立てやすいです」
ヤギの雑魔が集落に襲い掛かりそうになったという話もある。調査の邪魔をされないようにと念の為、ルンルンは仲間が切り株へと近づく前に、その近辺へと符術を張り巡らす。
「ジュゲームリリカル、ルンルン忍法土蜘蛛の術! カードを場に伏せてターンエンドです」
地縛符は不可視の結界を展開する。これならルンルンの狙い通り、周囲から雑魔が現れても時間は稼げるだろう。
そして、切り株へと近づいていくハンター達。しかし、一定の距離をとり、そのまま待機する。
前に駆け出すディーナ・フェルミ(ka5843)は覚醒し、構えを取ってから呼びかける。
「火を使わなくても問題ないから任せるの、さっさと突っ込んできなさいなの、歪虚」
相手も奇襲はできないと踏んだのか、ゆらりゆらりと切り株の中から姿を現す。現れたのは、枯れ木のような者に蔓草が巻きついたもの。雑魔であるのは間違いない。
「大樹がなくなった原因かしらね……」
神を虹色に輝かせ、気合を入れたリアリュールが敵を見据える。続々と覚醒していくハンター達。同行するエルフ達も頼もしさを覚えながらも弓や杖を構える。
クリスティンはそれなりの力を抱くエルフに外側の警戒を任せ、そばの聖導士へと声をかけた。
「狼の時のように母体モドキもいるのかも知れんが、一先ずはこいつ等を片付けよう。行くぞ、ファリーナ」
「はい……!」
譲り受けた刀を握る聖導士の姿を確認し、クリスティンも覚醒して表情を引き締めるのである。
●2種の雑魔に挟まれて
人型となった木の雑魔。襲い来るそいつらを、ハンター達は駆除へと回る。
すでに、構えの態勢にあったディーナ。彼女は自らを中心に光の波動を発し、雑魔へと浴びせかけていく。
シールド「エスペランサ」を構え、ディーナは雑魔の枝による殴打を受け止める。
「出し惜しみはしないよ」
ディーナはさらに光を発するべく、詠唱を始めていた。
その後ろでは、ルンルンが大量の符を掲げて叫ぶ。
「今、神を呼んじゃいます……。いでよ、ニンジャガミ!」
自らの体力を削ることで、召喚された式神。ルンルンはさらにもう1体を呼び出し、共に植物雑魔に向かっていく。
近づく敵に対し、クリスティンは守りを捨てて敵へと飛び込む。
クリスティンは斬魔刀「祢々切丸」へとマテリアルを伝達して強化し、その体に切りかかる。見た目通りならば、タフな相手だろう。彼女は攻撃を重ねることで、確実な撃破を目指す。
「きゃあっ!」
そこで、体に巻きつく蔓触手を伸ばす植物雑魔。ファリーナがそれに絡まれてしまう。
「振動刀なら、伐採にも使える筈だ。斬り払えファリーナ!」
クリスティンの呼びかけに応じ、彼女は刀を振り払う。そうして、攻める為の一手を見出していたようだ。
そばでは、セツナが静かに抜刀し、自身の周囲を縦横無尽に動いて敵に刃を叩き込んでいく。そうすることで、彼女は自らが戦う為のスペースを確保していた。
赤く発光させた瞳で敵を見据えたシオン。セツナの刃を浴びた1体に狙いを定めた彼女は黒いオーラを含む紫焔を纏い、振動を起こした刃を植物雑魔の頭に当たる部分へと叩き込んだ。
その瞬間、マテリアルによって起こる爆炎のような閃光。雑魔はかなりのダメージを受けていたようだ。
その間、エルフ達は植物雑魔には手を出さず、この空間の外側へと警戒を強める。リアリュール、炎も植物雑魔から距離を置き、周辺から近づく何かを察して身構えていた。
「来るわ」
リアリュールの言葉とほぼ同時に木陰から飛び出してきたのは、炎が気にかけていた4体のヤギ雑魔だ。それらは、四方から現れ、切り株周辺にいるハンターへと突っ込んでくる。
「やっぱり、ヤギ雑魔か……。いい加減しつこいんだよ!!」
向かい来る雑魔に、目つきを鋭くした炎が叫びかけた。
「ここで、トラップカード発動!」
しかしながら、ヤギ雑魔が近づいてくるのを見計らい、ルンルンが張った結界が発動する。それにより、ヤギ達は足を泥状に固められ、移動を封じられてしまう。
これは戦況として、ハンター達に大きく優勢に傾く。植物と交戦するルンルンが鼻を高くしている中、周囲の警戒を行っていたメンバー達がヤギへと攻撃を仕掛ける。
シオンは出来る限り雑魔両種を巻き込むことが出来るように立ち回り、纏めて刀で薙ぎ払っていた。
リアリュールはロングボウとリボルバーを持ち替えながらも連続射撃を行い、弾幕を張る。
足が止まったとはいえ、呪いを発しての攻撃など、ヤギが攻撃の手を止めるわけではない。
「絶対に、エルフのみんなを傷つけさせやしない!!」
弓や魔法で応戦するエルフを護るように炎は素早く踏み出し、ユナイテッド・ドライブ・ソードを振り下ろす。
そうして、ハンター達が攻撃を続けるうちに。ディーナが放つ幾度目かの光が植物雑魔の体を包み、そいつを消滅させた。
「まだまだいくの」
スキルはまだまだ使うことが出来る。雑魔が活動を止めてしまうまで、ディーナは光の波動を発し続けていく。
雑魔達はただ、目の前に現れた人間を襲う。
植物とヤギが連携しているようにはとても見えないが、両者共に人に害無そうとしているのは違いない。
ハンター達はその両者へと同時に対処を行う。距離はさほど開いてはいない。メンバーの中にはトランシーバーを用意する者もいたが、戦闘で起こる音が無ければ、声も届きそうな距離ではある。
ファリーナが少しずつ持っている刀に慣れながら、攻撃を仕掛ける間。自らの剣技、敵の攻撃の捌き方。クリスティンはそれを見せ付けつつも、刃を植物に叩き付けた。そいつは左右に真っ二つに裂け、虚空へと消え去っていく。
こちらはルンルン。彼女は式神に寄ってくる植物を狙っていた。
「ジュゲームリリカル、ルンルン忍法五星花! 煌めけ、星の花びら☆」
ルンルンは符によって結界を張り、その中にいる植物雑魔の体を眩い光で焼き払う。植物は光に包まれて完全に消滅してしまった。
こうなれば、後は足の止まったヤギ雑魔のみ。しかも、ルンルンが敷いた符の力で敵は動けずにいる。ハンターとエルフはそれらを1体ずつ叩いていく。
リアリュールが矢を飛ばして応戦する反対方向では、セツナがヤギを攻め立てていた。
敵の足は封じている。それなら、狙うは敵の角だとセツナは考え、間合いを取りながらも彼女は順調に攻め立てる。
足を封じられても、敵は頭を大きく動かして角を突き出し、体を大きく動かすことで体当たりを行うこともある。しかし、それはセツナによってあっさりと躱されてしまう。
(先手を執るつもりだったようですが、残念ですね)
低い姿勢から、セツナは地面を擦り上げるように降魔刀を叩き込む。摩擦熱によって刀身は刹那赤く光り、宙に赤い軌道が残った。
それに断ち切られたヤギは頭と上半身を断ち切られ、無へと帰して行った。
残る敵は散開する形だ。それもあり、ディーナは光を発するも、多数の敵へと浴びせかけられないことも多い。
また、彼女は、しっかりと仲間の状態も観察していた。雑魔の攻撃は仲間の体力を着実に削っている。
とりわけ、前線に立ち、かつ、式神を作るのに体力を使ったルンルンはかなり消耗している。ディーナは祈りを捧げてマテリアルの力を引き出し、彼女の傷を癒していたようだ。
クリスティン達のそばにいたエルフを護るように戦う炎。敵が動かない、いや動けないこともあり、炎は上手く敵の注意を引き、出来る限り攻撃を受け流す。
ヤギが突き出す角を捌ききれず、炎は腹を貫かれてしまうが、赤くした片目で敵を見つめる彼は反撃を繰り出すべく呼吸を整える。
「やらせねえぞ!! 俺だって、もう半人前じゃ無い!!」
以前は後れを取ったが、今回は。炎は素早く踏み出し、敵の体に剣を叩き込む。角をへし折られ、白目を向くヤギはそのまま果ててしまい、森の中へと消えていく。
その反対では、シオンがヤギを相手にしていた。
「奇襲を仕掛けておきながら、この程度の実力か……」
折角強い手合いと戦うことができると考えながら、銃での発砲を繰り返していたが、こちらの罠に掛かって動けないなどとは、なんともお粗末過ぎる相手だ。
「貴様らのような雑魚どもに用はない。ここで散れ!」
大きく敵へと踏み込むシオン。彼女は手にする剣でヤギの胸を貫き、そいつの活動を止めてしまった。
残るは1体。仲間の撃破報告をトランシーバーで耳にしながら、リアリュールはリボルバー「グラソン」で撃ち抜く。
時折飛んで来る呪いは厄介ではあるが、後方からすぐに仲間が来る。さほどダメージが積み重なる心配も無いだろう。
ゆっくりとロングボウ「センティール」に矢を番える彼女は、これが最後とトドメの一射を投じたのだった。
●不気味な切り株の穴
全ての雑魔を討伐し終えたハンター達。
「これだけの雑魔が湧くからには、大物がいると期待していたのだがな。今回も大外れだ」
首を振り、ややしらけたようにして、シオンはクールダウンする。
ディーナによる応急処置を受けたメンバー達は改めて、周囲の探索を始めていた。
「ヤギ歪虚には大物がいるって聞いたから、ヤギ歪虚が出てきたなら自然発生じゃなくて、命じられたものじゃないかと思ったの」
仲間への処置を終えたディーナはそう考え、歪虚をここに呼び寄せた者の痕跡がないかと探す。炎やエルフ達がそれに応じ、大樹を中心に同心円的に探索方向を広げ、この周囲を調べる。ただ、この周辺で最もあ怪しい場所はただ一点のみ。
「やっぱり、ここ……ですかね」
ぱしゃりとルンルンが魔導カメラでシャッターを切ったのは、大きく穴の開いた切り株。穴は根を突き破り、地中にまで続いているようだ。
「こういう場合は浄化か?」
「……そうですね」
クリスティンの言葉にファリーナが応じ、後ほど集落にいる部下と一緒に清めてみると告げる。
(場合によっては、ハンターズソサエティか?)
底の見えぬ切り株の穴を見下ろしながら、クリスティンは新たな雑魔の発生も起こりうるのではと懸念していたのだった。
グラズヘイム王国内、リンダールの森。
一度、エルフの集落へと集まったハンター達は、エルフのハンター達と合流する。
「近頃エルフの集落が騒がしいようだが、この私に戦えという天のお告げのようだな」
不動シオン(ka5395)が言っているのは、エルフハイムでの戦いのこと。こちらはその余波をそれほど強くは受けていないようだが、ひっそりと暮らすエルフ達は別の懸念を抱いている。
「リンダ―ルの森……。他の依頼でも、ちょっと気になることがあったのよね」
この森の中でもエルフがひっそりと暮らしていることに、同じエルフのリアリュール(ka2003)は驚く。王都イルダーナや古都アークエルス、自由都市のフマーレといった街からは遠いが、緑に囲まれてほっとできる場所だ。
「また雑魔か……」
南護 炎(ka6651) は前回も、この集落から出された依頼に参加している。あのときの相手はヤギ雑魔だったが、今回もそうなのだろうか。
「平和な暮らしを脅かす雑魔……。正義のニンジャでプロカードゲーマーとしては、放っておけないです!」
リアルブルーでの経験を活かし、このファナティックブラッドにて夢にまで描いていた冒険を楽しむ、ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)。彼女はルンルン忍法とカードの力を駆使し、この森の調査と雑魔退治に臨む。
「とりあえず、それを使ってみるといい」
クリスティン・ガフ(ka1090)は出発の前に、今回同行する聖堂戦士団のファリーナ・リッジウェイ (kz0182)へと振動刀を差し出す。
「はい、ありがとうございます!」
彼女はそれを手にし、幾度かその振って手になじませていた。
「それでは、よろしく頼む」
エルフ達が改めてハンター達へと挨拶を交わした後、一行は集落を後にしていくのである。
●切り倒された切り株は……
メンバー達はその後、エルフの案内を受けて現地へと向かう。調査対象は、切り倒されたという大樹跡だ。
基本、徒歩のメンバーも多いが、炎、セツナ・ウリヤノヴァ(ka5645)、いったメンバーは馬を駆っている。
(大樹を切り倒したのは何故? 雑魔が出た前後に他に異変は?)
リアリュールはそんな疑問を抱いており、集落のエルフから情報を得ていた。
作物については例年より多少不作ではあったが、天候の影響とみられている。動物に関しては森から出ようとはせず、逆に怯えて動かないでいたようだ。これは、森の外で最近まで狼雑魔が活動していたこともあったのだが……。
「つまり、直接の原因は分からないということかしらね」
だからこそ、リアリュールは気を抜くことなく、森を進む。
森には、ヤギ雑魔が潜んでいる可能性も大きい。炎は現れそうな場所の目星をつけながら、周囲を見回す。
(実に格好の餌だな、この雑魔騒動は……)
戦場こそ、最高の楽園と豪語するシオン。強敵の鼻柱を砕く為ならば、どんな荒事でさえも彼女は引き受ける所存だ。
「雑魔が沸いてくる場所ならば、何か秘密があるかもしれない」
強敵との戦いを求めるシオン。見えてきた現場には、自身の闘争心を満たしてくれる大型雑魔はいるだろうか。
現場は開けた場所だ。
そこには元々大樹があった為に木陰となっていたこともあり、木々が生息していないのだろう。しかし、今やそこに樹はなく、中央には大きな切り株が残るのみ。
その場に到着したメンバーはゆっくりとその場へと踏み出す。セツナは馬を降り、シオンもその近辺の調査を始めるのだが、彼女達はすぐにこの場のマテリアルに異常を感じた。
「何かいるわね。あそこ……」
直感視を活かし、リアリュールが何らかの気配を感じ取る。
遠目で見ると、大樹の切り株には人が出入りできるほどの穴が開いているらしい。この場からでは、穴の深さは分からないが……。
「明らかに何かが内側にいるって分かるのでしたら、対策も立てやすいです」
ヤギの雑魔が集落に襲い掛かりそうになったという話もある。調査の邪魔をされないようにと念の為、ルンルンは仲間が切り株へと近づく前に、その近辺へと符術を張り巡らす。
「ジュゲームリリカル、ルンルン忍法土蜘蛛の術! カードを場に伏せてターンエンドです」
地縛符は不可視の結界を展開する。これならルンルンの狙い通り、周囲から雑魔が現れても時間は稼げるだろう。
そして、切り株へと近づいていくハンター達。しかし、一定の距離をとり、そのまま待機する。
前に駆け出すディーナ・フェルミ(ka5843)は覚醒し、構えを取ってから呼びかける。
「火を使わなくても問題ないから任せるの、さっさと突っ込んできなさいなの、歪虚」
相手も奇襲はできないと踏んだのか、ゆらりゆらりと切り株の中から姿を現す。現れたのは、枯れ木のような者に蔓草が巻きついたもの。雑魔であるのは間違いない。
「大樹がなくなった原因かしらね……」
神を虹色に輝かせ、気合を入れたリアリュールが敵を見据える。続々と覚醒していくハンター達。同行するエルフ達も頼もしさを覚えながらも弓や杖を構える。
クリスティンはそれなりの力を抱くエルフに外側の警戒を任せ、そばの聖導士へと声をかけた。
「狼の時のように母体モドキもいるのかも知れんが、一先ずはこいつ等を片付けよう。行くぞ、ファリーナ」
「はい……!」
譲り受けた刀を握る聖導士の姿を確認し、クリスティンも覚醒して表情を引き締めるのである。
●2種の雑魔に挟まれて
人型となった木の雑魔。襲い来るそいつらを、ハンター達は駆除へと回る。
すでに、構えの態勢にあったディーナ。彼女は自らを中心に光の波動を発し、雑魔へと浴びせかけていく。
シールド「エスペランサ」を構え、ディーナは雑魔の枝による殴打を受け止める。
「出し惜しみはしないよ」
ディーナはさらに光を発するべく、詠唱を始めていた。
その後ろでは、ルンルンが大量の符を掲げて叫ぶ。
「今、神を呼んじゃいます……。いでよ、ニンジャガミ!」
自らの体力を削ることで、召喚された式神。ルンルンはさらにもう1体を呼び出し、共に植物雑魔に向かっていく。
近づく敵に対し、クリスティンは守りを捨てて敵へと飛び込む。
クリスティンは斬魔刀「祢々切丸」へとマテリアルを伝達して強化し、その体に切りかかる。見た目通りならば、タフな相手だろう。彼女は攻撃を重ねることで、確実な撃破を目指す。
「きゃあっ!」
そこで、体に巻きつく蔓触手を伸ばす植物雑魔。ファリーナがそれに絡まれてしまう。
「振動刀なら、伐採にも使える筈だ。斬り払えファリーナ!」
クリスティンの呼びかけに応じ、彼女は刀を振り払う。そうして、攻める為の一手を見出していたようだ。
そばでは、セツナが静かに抜刀し、自身の周囲を縦横無尽に動いて敵に刃を叩き込んでいく。そうすることで、彼女は自らが戦う為のスペースを確保していた。
赤く発光させた瞳で敵を見据えたシオン。セツナの刃を浴びた1体に狙いを定めた彼女は黒いオーラを含む紫焔を纏い、振動を起こした刃を植物雑魔の頭に当たる部分へと叩き込んだ。
その瞬間、マテリアルによって起こる爆炎のような閃光。雑魔はかなりのダメージを受けていたようだ。
その間、エルフ達は植物雑魔には手を出さず、この空間の外側へと警戒を強める。リアリュール、炎も植物雑魔から距離を置き、周辺から近づく何かを察して身構えていた。
「来るわ」
リアリュールの言葉とほぼ同時に木陰から飛び出してきたのは、炎が気にかけていた4体のヤギ雑魔だ。それらは、四方から現れ、切り株周辺にいるハンターへと突っ込んでくる。
「やっぱり、ヤギ雑魔か……。いい加減しつこいんだよ!!」
向かい来る雑魔に、目つきを鋭くした炎が叫びかけた。
「ここで、トラップカード発動!」
しかしながら、ヤギ雑魔が近づいてくるのを見計らい、ルンルンが張った結界が発動する。それにより、ヤギ達は足を泥状に固められ、移動を封じられてしまう。
これは戦況として、ハンター達に大きく優勢に傾く。植物と交戦するルンルンが鼻を高くしている中、周囲の警戒を行っていたメンバー達がヤギへと攻撃を仕掛ける。
シオンは出来る限り雑魔両種を巻き込むことが出来るように立ち回り、纏めて刀で薙ぎ払っていた。
リアリュールはロングボウとリボルバーを持ち替えながらも連続射撃を行い、弾幕を張る。
足が止まったとはいえ、呪いを発しての攻撃など、ヤギが攻撃の手を止めるわけではない。
「絶対に、エルフのみんなを傷つけさせやしない!!」
弓や魔法で応戦するエルフを護るように炎は素早く踏み出し、ユナイテッド・ドライブ・ソードを振り下ろす。
そうして、ハンター達が攻撃を続けるうちに。ディーナが放つ幾度目かの光が植物雑魔の体を包み、そいつを消滅させた。
「まだまだいくの」
スキルはまだまだ使うことが出来る。雑魔が活動を止めてしまうまで、ディーナは光の波動を発し続けていく。
雑魔達はただ、目の前に現れた人間を襲う。
植物とヤギが連携しているようにはとても見えないが、両者共に人に害無そうとしているのは違いない。
ハンター達はその両者へと同時に対処を行う。距離はさほど開いてはいない。メンバーの中にはトランシーバーを用意する者もいたが、戦闘で起こる音が無ければ、声も届きそうな距離ではある。
ファリーナが少しずつ持っている刀に慣れながら、攻撃を仕掛ける間。自らの剣技、敵の攻撃の捌き方。クリスティンはそれを見せ付けつつも、刃を植物に叩き付けた。そいつは左右に真っ二つに裂け、虚空へと消え去っていく。
こちらはルンルン。彼女は式神に寄ってくる植物を狙っていた。
「ジュゲームリリカル、ルンルン忍法五星花! 煌めけ、星の花びら☆」
ルンルンは符によって結界を張り、その中にいる植物雑魔の体を眩い光で焼き払う。植物は光に包まれて完全に消滅してしまった。
こうなれば、後は足の止まったヤギ雑魔のみ。しかも、ルンルンが敷いた符の力で敵は動けずにいる。ハンターとエルフはそれらを1体ずつ叩いていく。
リアリュールが矢を飛ばして応戦する反対方向では、セツナがヤギを攻め立てていた。
敵の足は封じている。それなら、狙うは敵の角だとセツナは考え、間合いを取りながらも彼女は順調に攻め立てる。
足を封じられても、敵は頭を大きく動かして角を突き出し、体を大きく動かすことで体当たりを行うこともある。しかし、それはセツナによってあっさりと躱されてしまう。
(先手を執るつもりだったようですが、残念ですね)
低い姿勢から、セツナは地面を擦り上げるように降魔刀を叩き込む。摩擦熱によって刀身は刹那赤く光り、宙に赤い軌道が残った。
それに断ち切られたヤギは頭と上半身を断ち切られ、無へと帰して行った。
残る敵は散開する形だ。それもあり、ディーナは光を発するも、多数の敵へと浴びせかけられないことも多い。
また、彼女は、しっかりと仲間の状態も観察していた。雑魔の攻撃は仲間の体力を着実に削っている。
とりわけ、前線に立ち、かつ、式神を作るのに体力を使ったルンルンはかなり消耗している。ディーナは祈りを捧げてマテリアルの力を引き出し、彼女の傷を癒していたようだ。
クリスティン達のそばにいたエルフを護るように戦う炎。敵が動かない、いや動けないこともあり、炎は上手く敵の注意を引き、出来る限り攻撃を受け流す。
ヤギが突き出す角を捌ききれず、炎は腹を貫かれてしまうが、赤くした片目で敵を見つめる彼は反撃を繰り出すべく呼吸を整える。
「やらせねえぞ!! 俺だって、もう半人前じゃ無い!!」
以前は後れを取ったが、今回は。炎は素早く踏み出し、敵の体に剣を叩き込む。角をへし折られ、白目を向くヤギはそのまま果ててしまい、森の中へと消えていく。
その反対では、シオンがヤギを相手にしていた。
「奇襲を仕掛けておきながら、この程度の実力か……」
折角強い手合いと戦うことができると考えながら、銃での発砲を繰り返していたが、こちらの罠に掛かって動けないなどとは、なんともお粗末過ぎる相手だ。
「貴様らのような雑魚どもに用はない。ここで散れ!」
大きく敵へと踏み込むシオン。彼女は手にする剣でヤギの胸を貫き、そいつの活動を止めてしまった。
残るは1体。仲間の撃破報告をトランシーバーで耳にしながら、リアリュールはリボルバー「グラソン」で撃ち抜く。
時折飛んで来る呪いは厄介ではあるが、後方からすぐに仲間が来る。さほどダメージが積み重なる心配も無いだろう。
ゆっくりとロングボウ「センティール」に矢を番える彼女は、これが最後とトドメの一射を投じたのだった。
●不気味な切り株の穴
全ての雑魔を討伐し終えたハンター達。
「これだけの雑魔が湧くからには、大物がいると期待していたのだがな。今回も大外れだ」
首を振り、ややしらけたようにして、シオンはクールダウンする。
ディーナによる応急処置を受けたメンバー達は改めて、周囲の探索を始めていた。
「ヤギ歪虚には大物がいるって聞いたから、ヤギ歪虚が出てきたなら自然発生じゃなくて、命じられたものじゃないかと思ったの」
仲間への処置を終えたディーナはそう考え、歪虚をここに呼び寄せた者の痕跡がないかと探す。炎やエルフ達がそれに応じ、大樹を中心に同心円的に探索方向を広げ、この周囲を調べる。ただ、この周辺で最もあ怪しい場所はただ一点のみ。
「やっぱり、ここ……ですかね」
ぱしゃりとルンルンが魔導カメラでシャッターを切ったのは、大きく穴の開いた切り株。穴は根を突き破り、地中にまで続いているようだ。
「こういう場合は浄化か?」
「……そうですね」
クリスティンの言葉にファリーナが応じ、後ほど集落にいる部下と一緒に清めてみると告げる。
(場合によっては、ハンターズソサエティか?)
底の見えぬ切り株の穴を見下ろしながら、クリスティンは新たな雑魔の発生も起こりうるのではと懸念していたのだった。
依頼結果
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作戦相談卓 不動 シオン(ka5395) 人間(リアルブルー)|27才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2017/01/01 17:17:05 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/12/28 21:25:17 |