• 蒼乱

【蒼乱】崑崙の空を行く

マスター:鹿野やいと

シナリオ形態
イベント
難易度
普通
オプション
  • duplication
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~50人
サポート
0~0人
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/01/01 07:30
完成日
2017/01/17 13:40

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 大規模戦闘の後、サルヴァトーレ・ロッソはクリムゾンウェストとリアルブルーを頻繁に行き来していた。
 クリムゾンウェスト側で生産できないCAM関連の部品を始めとする様々な資材を補給するためだ。近々正式な配備を控えるR7エクスシアの数を揃えるためでもある。
  同時に補給の間、ロッソは搭載するCAM・魔導アーマー部隊を月面防衛部隊に出向させていた。惑星間航行用『戦略』宇宙戦艦の名前は伊達ではなく、搭載された大部隊は月面の情勢の安定に大きく貢献していた。
 情勢が安定すれば物資も行き届きやすくなり、自然と人の営みは活発になる。年末を迎えた月面基地は、いつも以上に穏やかな空気が流れていた。



 CAMパイロット達のたまり場になっているレクリエーションルームの一つは、壁の一面が巨大なモニターとなっている。
 モニターは月面基地を見渡す管制塔の一つより送られた画像を常に表示しており、飛び立つ艦艇やCAMを見ることが出来た。
 その画面中央付近に移る港に今日は巨大な船の影が見える。サルヴァトーレ・ロッソだ。部屋に入ったばかりのフリオ中尉は横目でその巨大な船影を見ながら、馴染みの顔の陣取る部屋の端のソファー席へと進んだ。
 部屋の角にある上等なソファーと4人掛けのテーブルにはいつものメンバー、隊長のブラッドリー、狙撃手のイングリッド、フリオと同じく前衛を務めるササカワの姿があった。
「やあ。みんなお揃いだね」
「遅かったわね。今日は寝坊?」
 イングリッドだけが手を挙げて返事をしてくれる。他の2人は視線を少し上げるだけだ。ササカワは腕組みをしたまま再び目を閉じて瞑想に戻る。日本人は内気で引っ込み思案が多いようなイメージを伝え聞いていたが、プライベートの彼はどこまでも強気に自分のペースを崩さない。これで後輩の面倒見は良いと聞くから恐れ入る。ブラッドリーは趣味のクロスワードに思考を戻す。彼は骨ばった顔におおよそ感情を表さない男で、こうして何かに取り組む時も楽しそうには見えなかった。イングリッドは食後の楽しみである苦いコーヒーを片手に、手元にタブレットで電子化された資料を読み込んでいる。色気のない軍服に身を包んでいるが、時折長い髪をかきあげる仕草が艶っぽい。
「起きてたよ。書類作成が終わってなくてね」
 抗議のつもりで大きい声で説明するが、男二人に変化はない。フリオは諦めて溜息をつきながら余った最後の椅子に腰を下ろす。
「ロッソはまた来てるんだね。毎度腹一杯積んで帰って、そんなに物不足だったのかな?」
「それもあるみたいだけど、最近は避難した民間人も載せているのよ」
「民間人? どこの?」
「LH044よ。覚えてるでしょ。それ以外も居るらしいけど、その民間人の希望者を月面に移住させているのよ」
 そういえば、と市街地の様子を思い出す。仮設住宅を用意するとかなんとか、空き地の前に張り紙があった。そこに入れば明日から生活がそのままスタートするわけもなく、調整に手間取っているのだろう。フリオとイングリッドの雑談はいつもの通り特に意味の無い会話であったが、この日は珍しくブラッドリーが単語に反応した。
「ロッソで一つ、思い出した。明日には隊員全てに告知するが、彼らの慣熟訓練を受け持つことになった」
「慣熟って……必要ですか?」
「必要だ。ロッソは経験者をやりくりしているようだが、ロッソの搭乗員の総数から見れば経験者は少ない。宇宙空間や低重力環境での訓練施設も向こうに無い上に、そもそも異世界の者は宇宙という概念を理解してない人もいる。だからこそ訓練だ。慣熟訓練さえ実施しておけば、有事に動ける人間が増える」
 年の瀬にもなって面倒事が増える。良いニュースに囲まれて年を越えられそうな気がしていたが、未来はそこまで無条件に明るいわけでもない。
 フリオは暗澹とする感情で顔を憮然とさせながらも、懐から煙草の箱とライターを取り出した



 世界を転移したロッソが月面基地上空に差し掛かると、すぐさま管制室から連絡が届いた。一つは型通りの航路指定、もう一つは事前に協議していた訓練への誘導である。
「ようこそ、サルヴァトーレ・ロッソの搭乗員諸君。私が今回の訓練を担当する事となった、ガーゴイル大隊の指揮官ゴーラム中佐だ」
 そこには無表情で骨ばった印象の男が居た。声も抑揚が少なく、よく出来た機械音声を聞いているような気分になった。
「知っての通り我々の使える時間は少ない。慌ただしくて申し訳ないが早速始めさせてもらう。訓練参加者はまずブリーフィングルームへ集合。説明の後に個別に誘導させてもらう。説明の間にCAM及び魔導アーマーは訓練用の装備に換装しておく」
 ハンター達は一方的な説明を聞き終えると、ロッソを出て事前配布された地図の通りに月面基地を移動した。
 慣れない環境に戸惑いながら、それでも期待や予感に胸を膨らませて。

リプレイ本文

 月面の情勢は安定しつつある。以前は基地を少し離れれば「野良」とも言える遊撃の役目を負った歪虚も散見していたであろう。丁寧に丁寧にそれらを排除した結果、一足飛びに月面基地崑崙を強襲可能な位置に敵は存在しなくなった。今日、 クオン・サガラ (ka0018)が軌道上までシャトルを飛ばす許可を得られたのも、サルヴァトーレ・ロッソの貢献への恩返しという部分が大きかった。流石に操縦席は譲ってもらえなかったが、彼にとっては充分な手配であった。
「そろそろですよ」
 操縦席のパイロットが窓を見るように促してくる。クオンが見た窓の外には人類最初の月面着陸地点「静かの海」。
(ここが、宇宙開発にとって記念すべき聖地。静かの基地か)
 灰色の地平には何もない。碑文が刻まれるわけもなく、そこはただの荒涼とした大地でしかなかった。それでも誰もがこの地に想いを馳せるのだろう。
(本当は火星のテラフォーミングだって進んでたはずなのに、歪虚が来てから酷い有様ですね。これから……どうなるのでしょうか)
 続いていく灰色の景色は気持ちを無遠慮に撫でさする。安住の地は遠い。もしかしたら、クリムゾンウェストに残るほうが近道なのではないか。そんな妄念すら聞こえてくるようだった。
 物思いに沈むクオンであったが、思考は断ち切られる。この場に居るのは彼だけではない。
「テストクリア。次の動作テストに移行する」
 通信機から聞こえる声はシャトルの横を通過したデュミナスからのものだ。
機体の肩にはガーゴイル大隊の名の通り、翼の生えた怪物をモチーフとした部隊章をあしらっている。これを追うようにヒース・R・ウォーカー (ka0145)のデュミナス「ウェスペル」が姿を現す。やや暗いナイトブルーに塗装された機体は先導する機体を追って真っすぐに飛ぶ、ように見えて時折軌道修正をかける。真っすぐに飛ぶにはまだ少し動きにぶれがあるようだ。彼の飛行訓練の実施が、このコースへの移動を承認されたもう一つの理由であった。
「仮想敵のドローン、飛ばしますか?」
「いや、必要ない。このままもう少し飛ばしてみる」
「了解です」
 大隊のデュミナスは他の訓練参加者の様子を見るためにウェスペルから離れていく。遠くではドローンの撃つペイント弾相手にのろのろよたよたと訓練をする者達の姿が見えていた。
「宇宙空間での実戦経験はないし、ねぇ。まずは基礎をしっかり身に着けてからじゃないとねぇ」
 模擬戦や回避機動を試すのはまた今度で良い。それは欲張りすぎだと彼は思っていた。同時に、この時間が貴重な時間であるとも認識していた。
「重さは感じられず、背負っているモノも縛るモノも忘れられる……と言うと大げさかぁ」
 ヒースは通信機の音量を落とす。機体が姿勢制御の為に身じろぎする以外は何の音も聞こえなくなった。見上げた先には今は遠い青の星が浮かんでいる。リアルブルー出身の彼にはある意味見慣れた光景のはずだが、欠落した彼には何かが違って見えた。
「……ボクの忘れモノ、あそこにあるのかなぁ。………なんて、お前に聞いても分かるわけないか、ウェスペル」
 ヒースは1人、苦笑する。それが自問自答だったのか、相棒が本当に答えてくれると思ったのか。ほんの少しだけ、後者を期待していたのかもしれない。
「忘れてしまったモノを思い出すのも、新しくて手にした大切なモノを護るのも、戦い続けなければ成せない事。
 だからボクらはもっと強くならないとねぇ。そうだろ、ウェスペル」
 ヒースが通信機の音量を戻すと、元の喧騒がコクピット内に戻ってくる。ヒースは遠景の地球に背を向け、訓練の続く区域へと機体を進ませた。



 月面の荒野にアクティブスラスターの噴射炎が白い軌跡を描く。動体は二つ。一方は角ばった紫の装甲が印象的な魔導型デュミナス、キヅカ・リク (ka0038)の「インスレーター」。
もう一方はガーゴイルの隊章を肩にペイントした通常型のデュミナス、パイロットはブラッドリー・ゴーラム中佐だ。
 2機は高速で移動し続けながらもマシンガンで互いを狙い撃つ。銃弾をかわし、あるいは盾で弾き、一進一退の戦いが続いていた。
(思った通り……強い!)
キヅカは急旋回の度にかかるGに必死に耐えながら、懸命にスティックを操作する。キヅカが事前に抱いた印象の通りゴーラム中佐は隙の無い相手。些細なミスが命取りになるのは間違いない。この戦いにおいて総合的な機体性能ではインスレーターに分があるのだが、軽装化されているゴーラム中佐の機体と射撃戦をするのはやや分が悪かった。移動速度と射程距離の分だけ、ゴーラム中佐の側に攻撃の機会が多い。インスレーターのほうが装甲が厚い事、スキルトレースによるマテリアルヒーリング(を使ったという判定)で長くは戦えているが、決め手に欠けている事は否めない。あと一手、目の前の強敵を打ち破るには手が届かないのだ。
 キヅカも黙って手詰まりのまま戦いに挑んだわけではない。敵の隙を作るために機体に策を仕込んで来た。その策を使う為にも、ここは耐えて凌がなければならない。
(……けど、思ったよりしぶといな)
 キヅカは中佐の攻撃に合わせて下がりながら銃弾を撃ち返し、中佐が動くのを待つ。仕掛けた伏線は複数ある。キヅカの機体は近接武器を装備していない。この状況で敵の接近には必ず後退した。また、中佐に見えるように機体の傷を修復(とする判定を)した。中佐が接近戦を選べばその時が勝負時、隠し武器であるディブラを使って一気にダメージを増やす。至近距離からなら防御も間に合わないはず。その予定だった。しかし―――。
「……何を待っている?」
 通信機から中佐の声が響く。戦闘機動と銃撃をやめないままだ。距離はアサルトライフルの適正距離を守り、キヅカの動きを注視している。
「欲をかいたな、キヅカ・リク。私の判断ミスを期待したか?」
 言われてキヅカは瞠目した。隙が無いと自身で評した相手が失敗することを期待する、その矛盾に気づいた。思い返せばこの作戦は、この中佐に対してはあまりに分の悪い作戦だ。
「……続けよう」
中佐は警戒を解くことなくそれ以上の接近はしなかった。キヅカ機はそれまでの後退の演技の際に受けた小さなダメージが蓄積し、最後は推進器をやられて敗北した。
作戦の都合とはいえ、受け身になってしまったことが敗因となった。中佐の人格と技量を正しく見抜いた上であっただけに、痛恨のミスと言えた。



 訓練の開始前にガーゴイル大隊は訓練の強度の希望を取っていた。段階にはいくつかあるが模擬戦においてハンデをいくつ引き受けるか、という点で差がつけられている。
キヅカの相対した「本気」というのはハンデ無し。 クラーク・バレンスタイン (ka0111)率いるシャスール・ド・リスの戦った「強」は「戦闘開始からしばらく攻勢に出ない」というものだった。このハンデは1体機体が減れば戦況が傾くようなチーム戦ではかなり大きい。
 シャスール・ド・リスはクラークの他に近衛 惣助 (ka0510)、サーシャ・V・クリューコファ (ka0723)シン・コウガ (ka0344)の3名を含む4名のチームで参加した。このチームの機体は全て肩に百合の花を象ったエンブレムが装飾されている。機体カラーも統一して白とダークブルー、シンの機体のみ白一色という配色だ。ガーゴイル大隊側はシャスール・ド・リスよりゴーラム中佐以下ササカワ大尉、ヘッグ中尉、リースマン中尉の4名のチームという指定があり、その通りの編成で臨んでいる。このチームには1機エクスシアを加えて欲しいと希望があったが、大隊にはエクスシアの配備がされていない為にこれはかなえられなかった。支援機を含むことも考慮して両者は400m離れた位置から戦闘を開始した。
「【CdL】隊、戦闘開始。向こうもベテラン、気を引き締めていきましょう」
 訓練開始と同時にシャスール・ド・リスはサーシャのデュミナスE型を中心にY字の陣形を取った。後方にクラークのCdLカラーのデュミナス、前衛は右にシンのデュミナス「ウルフイェーガー」、左に近衛のドミニオン「真改」がついた。前方3名は密集して敵の1機を狙い、クラークは後方から砲撃で支援に徹する。陣形は前後に長いものとなり二又の槍と言ったほうが正しい。
 対するガーゴイル大隊も同じくY字ではあるが、支援機と前衛の距離は近く、前衛は左右に離れるため各機の距離は均等だ。戦闘開始後すぐ、射程に優れるクラーク機が先んじて砲撃を開始した。
「127mmがただのデカ物でないところを見せましょう」
 この戦闘において射程距離では彼が圧倒的に長く、狙いも正確だ。ガーゴイル大隊は接近の速度を落とし、回避に集中する。そこにシャスール・ド・リスの前衛が襲いかかった。
「狙いはゴーラム中佐の指揮官機。行きますよ!」
 クラークが砲撃に専念する間、前衛ではサーシャが代理で指揮官を務めていた。サーシャの号令で両翼の2機が前に出る。近衛機とシン機はどちらも接近戦仕様。強力な近接武器を持つ。2機による交差攻撃で最初の1機を撃破する。その予定だった。
「侍らしく…突貫するぜ…、うおおおおぉぉーー!!」
 シンが気勢を上げて突撃する。迎撃するガーゴイル隊の銃撃を刀で受けながら、デュミナスの全速でゴーラム機に迫った。だが無策に突っ込んでも接近を許すパイロット達ではない。
「散開」
 ゴーラム機は跳ねるように後方に下がる。クラークの砲撃をかわしながら、3機の追撃を振り切ってあっという間に距離を離していく。
「! 軽装仕様かよ!」
 シンは悪態をつきながら武器をライフルに持ち替えた。シャスール・ド・リスの前衛は標的に追い付けない。アサルトライフルで足止めの牽制をしてはいるが効果は薄かった。シンは魔導鉤を捨てて機体を軽くするがそれでも足りない。アクティブスラスターを使っても互角以下。ゴーラム中佐はスラスターを温存している。手詰まりの追撃を続ける間にも、周囲の機体は銃弾を容赦なく浴びせてくる。
 近衛の機体が盾を持たない僚機2機を守るが、三方から撃たれては守り切るのは難しかった。サーシャはすぐさま作戦を変更した。
「狙いを変えます」
 最初に決めた攻撃の優先順位は指揮官>支援機>前衛の順。サーシャは機体を後方に下げながら周囲を見渡す。優先順位2番の支援機は距離が遠く、どうやら速度も落としていない。追いかけるのは現実的ではないだろう。前衛のササカワ機は足が早く指揮官機と同じ結果になる。残るはリースマンの機体を狙うしか選択肢がないのだが、比較的重装甲とはいえこちらも速度は遅くはない。その思惑も中佐は見抜いて潰しに掛かって来た。
「乗せられるな。得意の接近戦に付き合う必要は無い」
 ガーゴイル大隊は移動しながらの射撃でシャスール・ド・リスを翻弄した。狙われた機体は逃げ、それ以外の機体は射撃攻撃でじわじわと前衛を追い込んでいく。クラークの支援を受けつつ シャスール・ド・リスも反撃するが、接近戦仕様に偏った機体を2機含む為に分が悪い。サーシャ機の電子支援、近衛機の防御能力、クラークの砲撃、それらを合わせて前線はぎりぎり持ちこたえていた。分散して対応する手もあるが、その場合は防御能力に乏しいシン機とサーシャ機が揃って撃墜されるだろう。
(これでもまだ、向こうは本気じゃないってこと?)
 本気ではない、とはまさにその通りだった。中佐はこの状況で会話をする程度に余裕を残していた。全体に向けて通信が開かれたのがその証拠だ。
「慢心したな、バレンスタイン元少尉。君が距離を取るように、我々も自分に都合の良い距離を選ぶ。当然のことだ。デュミナスの全性能は開示されているのだから、事前に対策はできたはずだ」
軽装化、ハイマニューバ、ハイパーブースター、装備重量の調整。接近戦に必要な装備は明確だ。それさえ揃っていれば、敵の思惑をねじ伏せることは容易だったはずだ。
「時間だ。攻勢に出る。ササカワ、指揮官を狙え。他は足止めだ」
 中佐の指揮で防戦一方だったガーゴイル隊が牙を剥く。軽装化とハイマニューバの改装を施されたササカワ機がシャスール・ド・リスの前衛を迂回して全速で移動。一気に指揮官であるクラークへと迫る。速度は通常装備のデュミナスの1.5倍以上、とても対応はできない。
「行かせるな!」
 サーシャはこの可能性も予期していた為に対応は早い。が、シャスール・ド・リスの前衛3機に追撃可能な機体は存在しない。揃ってアサルトライフルでササカワ機に発砲。動きに気づいたクラークも127mm砲でササカワを狙う。しかしアクティブスラスターを使用して回避機動に専念するササカワ機には十分な圧力足り得ない。辛うじて着弾もあったがかわし切れないものは盾で防いでいる。砲の最低射程をすり抜けたササカワ機にクラーク機はマシンガンで応戦。それもすり抜けたササカワ機は刀を振り上げクラーク機に迫る。
「やらせるかっ!」
 クラーク機はエクステンドを射出する。ササカワ機は慌てず刀で切り払い、クラーク機を袈裟懸けに切り下す。装甲に助けられてすぐに機能不全とならなかったものの、逃げることも躱すことも出来ないままではすぐに大破と判定されるだろう。
「隊長、こちらへ!」
 近衛機が盾を構えて救援に向かってくる。クラークはすぐさまその場を放棄し、近衛機との連携を回復した。クラーク機の攻撃が届く射程ぎりぎりの遠方でなくて助かった、と言えるだろうか。
4機は合流してそれぞれに全方位へ対応する陣形をとった。これで勝ち目は無くなった。
 近接攻撃の目が無いことは前述の通り。クラークの砲撃も必要な距離が取れない。主力の武器を封じられた機体が3機。シャスール・ド・リスはそれでもしばらくは耐えたが、シン、サーシャと順に脱落して勝敗は決した。
 ガーゴイル大隊は確かに強いが、実際には無敵というわけではない。いくらパイロットが優秀とは言ってもあくまで非覚醒者でありスキルトレースは使えない。デュミナスは全て通常型で、装備はリアルブルー製のみしか対応していない。ゆえに限界はおのずと知れる。スキルトレースや魔導技術由来の装備を持つハンター達とは大きな差があるのだ。優位があるとすれば1点、CAMの運用実績が長いということだけ。この優位が大きいことを、はからずも証明する事となってしまっていた。



 模擬戦を選んだチームがガーゴイル大隊に連敗したことで、否応なしに緊張は高まった。それは戦意とも言い換えられる。続くチームも打倒ガーゴイルに向けて「本気」での模擬戦を希望した。次のチームはフィルメリア・クリスティア (ka3380)をリーダーとして、ゼクス・シュトゥルムフート (ka5529) 、四十八願 星音 (ka6128)の3名のチームだ。
 対するガーゴイル大隊の編成は対戦者3名の機体に対応して、軽装化・高機動の機体を1機、射撃を得意とする前衛1機、後列からの支援機1機とした。
 戦闘開始後、口火を切ったのはガーゴイル大隊側の支援機、イングリッド中尉の機体による狙撃であった。105mmスナイパーライフルの一撃が前衛のゼクス機を脅かす。クルーアルとの有効射程の差は100m以上。デュミナスではその差を埋めるのに20秒以上かかる。軽装化・高機動のフィルメリアの機体も射程が短い為、結局同じぐらい時間はかかるだろう。
「いきなりやってくれるわね」
 機先を制されたものの損害は大きくない。構わず突入したフィルメリア機「グラキアーリス」とゼクス機「フライクーゲル」はガーゴイルの前衛2機と衝突した。フィルメリアは速度の近いササカワ機へ、ゼクス機はリースマンの機体を狙う。フィルメリアの初撃は砲撃から。射程に入り次第遠距離攻撃を仕掛ける。砲撃にかまわず突入してきたササカワ機と剣と剣でぶつかり合う。
「流石…これまで戦い抜いてきただけはある…けれど、最古参のCAM乗りとしては、個人的に負けられないのよね」
グラキアーリスは打ち合った剣を押し返すと、更に連続して攻撃を加えた。接近戦に優れたササカワ機だが、武器の間合いと威力で遅れを取っていた。速度は同じで盾と装甲の厚さで優れている為、なんとか互角に持ち込んだが、ササカワ機には制約がついて回った。距離を離せばグラキアーリスの砲撃は別の機体を狙う。ササカワに向けられても撃ち合いではササカワが不利。いつ抜けても不利にならないフィルメリア、戦闘を継続しなければ後がないササカワ。差は打ち合いの差としてじわじわと現れてくる。
 一方、ゼクスは苦戦していた。前衛に対して最初の一撃を加えたところまでは良かったのだが、接近を許してからは一転して不利な状況が続いている。刀と盾で接近戦をするリースマンの機体を振りほどけない。爪のみで応戦するには分の悪い相手だった。
「流石はガーゴイル大隊…。曲がりなりにも軍に居たんで噂には聞いていたが、相当出来るみたいだな」
「お褒めに与り光栄だけども、君と射撃戦はしたくないんだ。格闘戦もしたくないけどさ!」
「お互い様だな。こっちもはぐれ者部隊の意地ってのがあるんでね!」
 リースマンの機体に蹴りを入れて距離を取るフライクーゲル。追いかけるリースマン機だが、横合いから四十八願のデュミナス「ヨイチ」が牽制の一撃を加える。回避はしたリースマン機だが、フライクーゲルを間合いから逃してしまった。
「……外しましたか」
「いや、上出来だぜ!」
 もう一度距離を取り射撃戦へ。しかしゼクスの思惑はほどなくして阻まれる。イングリッドの狙撃がフライクーゲルを狙ったのだ。乱数回避で事なきを得たが、動きが鈍ったところをリースマンに再び接敵される。
 2機対2機の戦いはこうして位置取りを変えての戦闘が繰り返された。膠着状態に持ち込んだようにも見えたフィルメリアのチームだが、泣き所が2か所ある。ゼクス機の射程の穴、全機共通して防御能力の欠如。この二つは攻勢に出ている時は問題にならないのだが、いざ攻撃を受け止め切られると弱点として露呈する。
 変化は戦闘が持久戦になったあたりから現れた。全機盾を標準装備するガーゴイル隊とダメージの蓄積量が広がっていったのだ。性能に大きな差の無い機体同士の戦いで、銃のみで射撃戦に挑むのと、盾を持って射撃戦に挑むのでは天地の開きがある。正確に言えば、大隊の装備はそれ以外に選択肢がないという実情を反映しているに過ぎないのだが、攻撃に特化したチームではこれは大きな差となった。直撃を巧みにかわすガーゴイル隊に対して、フィルメリアのチームは劣勢を覆そうと試みるが、速度は互角であるために相手を突き放して射程外からという作戦は取れない。結果、ゼクス機が撃墜判定を受け、ついで 四十八願機も撃墜判定。フィルメリアはその間善戦したが、味方の脆さを自身の火力で補うことはできず、1機撃墜までは健闘したがそこで撃墜判定を受けた。性能差で負けたのではない。性能を生かしたほうが勝つのだ。



 勝ち負けに拘らないのであればガーゴイル大隊も手心を加えて参加者を迎える。正直なところ、覚醒者のパイロットは強力だ。戦うには骨が折れる。フラン・レンナルツ (ka0170)、葛音 水月 (ka1895)を交えての訓練は観戦する部隊員も現れ、先の戦いとはまた違いのんびりとした風景となった。
フランと葛音の連携訓練は陽動となる機動の練習でもあったが、陽動そのものは何度やっても上手く行かなかった。本人としては派手に動いてるつもりなのだが、仮想敵の隊員が釣られて動く事が無い。時間一杯撃ち合って、何度も仕切り直しての結果だ。
「なんでそんなに腰重いんだよ」
「なんでって言われてもなあ」
 訓練後に疲労で目の据わって来たフランに詰められ、仮想敵役の隊員は自身のCAMから撮影した動画を見せることにした。その上で原因に関してはフランの行動にあると説明した。近接を嫌うように下がりつつ牽制射撃。自分から姿を現し、その上で逃げるのであればこれは陽動を疑われても仕方ない。彼女は近寄れば近接武器で戦う予定ではあるが、牽制射撃が効いてることもありそこまでに至らない。後衛を囮にするパターンの場合は仮想敵は接近はしてくるが、砲撃が怖いので慎重に迂回行動をとっていた。これでは奇襲の隙が無い。
「全体的にわかりやすいんだよ。やる気無さそうだし」
「酷い言われようだね。じゃあどうすれば良かったのさ」
「ばれたら終わり、の作戦を立てるからそうなる。なら、ばれても無視できない作戦を立てればいい。
そうだな、俺達が出てこない時は俺達の隠れた場所だけ確認して、そっちの坊主に砲撃で吹き飛ばしてもらうとかな」
 あるいは自身で攻勢に出る必要を作る。何らかの損害が出れば動かざるを得ない。戦場の主導権を取るとはそういう戦術になる。敵に選択の余地が無い作戦ほど優れている。
この場合は逃げる余裕を与えたことが作戦が上手く行かない原因だった。失敗しても次善の策、という話ではあるが。
「隠密行動もそうだ。ばれても挽回できる作戦を立てたほうがいい。砲撃機だから一発撃てば位置なんかすぐばれる」
「僕の方も、改善点が?」
「いや、葛音のほうは特に問題が無い」
「そうですか?」
 そう言われても、攻撃を避けられ続けていた身としては不安になる。連携の確認に来ているのだから、何もないでは困るのだ。彼は戦場ではフランの要請で射撃を行う以外は、遮蔽を確保しながら移動し、常に砲撃の距離を保っていた。前衛の様子が分かりにくいため、仕事をこなせていたかに不安が残る。
「前提条件から話すとだな、こういう状況では砲撃機は不利なんだ」
 砲はそもそも個人を狙うのに向いていない。建物や動きの鈍い敵、大きい敵、密集した集団を狙うのに適している。砲撃機は更に装備の重さで様々な不利を抱えてしまう。この不利を覆すには戦線を支える仲間が何より欠かせない。葛音の機体は細かな調整と強化処置でその傾向を克服しているが、基本的には動き回って戦う事が仕事ではないのだ。
「砲撃機は居るってわかった段階から、乱数回避するからね。軽装化した機体なら飛び込んで切りに行くし、」
 この点で言えば葛音の機体は完成度が高く、大隊の標準的な機体とパイロットでは歯が立たない。同じ状況なら仲間を呼ぶか逃げるか、105mm狙撃砲でなんとかするか、ぐらいしかないだろう。最後まで続けていれば葛音とフランは勝てていただろうが、それは単に機体の性能でごり押ししただけで連携の訓練という目的は達成できない。
「だからこの戦い方は、大規模戦闘でこそ生きてくる。こういう小さい戦いじゃ、本領を発揮できないよ」
「大規模戦闘ですか……」
 必要だからと大規模戦闘を望むというのでは本末転倒だ。お墨付きをもらったことでひとまず満足しつつ、葛音は整備されるデュミナスを眺めていた。装備と改装をやりかえればまた違う結果になるということなら、試すことは幾らでもある。強い装備なら勝てるというわけではない。適した装備が必要なのだと実感する訓練となった。



 続いてクレーターの試験地へ入ったのはキャリコ・ビューイ (ka5044)のバーグラリーウルフと、狭霧 雷 (ka5296)のファフニール。実戦形式の訓練を希望した2機に、大隊は編成に揃える形で仮想敵に前衛を1機、支援機を1機用意した。仮想敵の2機はロッソ艦内でも見かける装備で出撃してきたが、彼らがその扱いに長けているのはここまででよくわかっている。徐々に迫る敵の像をとらえ、狭霧は操縦用のグリップを握りなおした。
「特殊部隊出身の隊長と違って、私は陸軍の歩兵出身ですからね。多少の知識はあれど、実際に操縦したのはごく最近なんですよね」
「緊張しているのか?」
「まさか」
「なら始めよう。 新装備のお披露目だ」
「了解です」
 答えてファフニールは前衛に出る。バーグラリーウルフは後衛となり、同じ陣形の敵を迎え撃った。序盤は接近するまで銃での応酬が起こる。ファフニールは銃撃の後に、ある程度接近した段階で直上に飛んだ。注目を引くためでもあるが、敵を分断するための策でもある。しかし当初の目論見通りとは行かなかった。直上に飛んだ段階で大隊の2機は狙いやすくなった狭霧機を狙いつつ後方へ移動。ハンター側2機を視界内に収めようと移動を始めたのだ。
「第一目標は敵の足止め!! 次いで、敵戦力の分散が主目的になります!!」
 ひとまず分散させることには成功した為、ハンター側も予定通り1機ずつで対応するために散開した。狭霧機と大隊前衛機では、狭霧の側に分があった。機体性能もさることながら、スキルトレースによる機動性の強化で行動に隙が無い。最初の接触でそれを察した大隊のパイロットは牽制と防戦に徹する事とした。即座に決着とは行かないものの、 狭霧機は充分に勝ちに持っていける状態となった。
 一方でキャリコは苦戦していた。分断作戦が成功し、キャリコも1:1の状況となったのだが、接近戦に移行して以後の撃ち合いで後れを取ってしまう。その差を分けたのは支援機として選んだ銃火器2種とは別に用意した武器の選択だ。キャリコはショットアンカーを最後の一つの枠に装備していた。これを敵に巻き付けたり打ち込んだり、そういう使用方法を考えていた。しかし敵も簡単にそれには乗らない。大隊の支援機はこれに対して距離を維持しつつ迎撃。ショットアンカーの射程まで近づく気配はなく、近寄られても後退を繰り返す。一度は使用の機会もあったが、盾によって防がれてしまった。
 元よりショットアンカーは地面や壁に打ち付けて使う機動補佐の装備であり、通常通りでない運用には相応の準備が必要であった。2次元機動から3次元機動へのフェイントも試してはみたが、デュミナスの機動力をよく知る彼らには通用しなかった。結果、アンカーが死重量と化し、盾を持たないという不利だけが残った。
 防御と回避においては手を尽くしたハンター二人だが、肝心の攻め手という部分では冴えない結果となった。盾を使った足止め、分断という点では上手く行って1:1の状況を二つ維持することが出来た。しかしそれをもって、片方の動きを封じたまま片方に集中攻撃とは行かなかった。CAMは移動速度が早く射程も長い。足止めしたところで火砲の射線は通る。そうなった場合、ファフニールの射程は短かく、ただ敵の足を止めるだけでは逆に敵側の集中攻撃を許した。攻め手を欠いたところで持久戦となり、持久戦となるとバランスの良い装備で臨む大隊に分があった。バーグラリーウルフが撃墜され戦闘は1:2となり、まもなくファフニールも撃墜された。



 CAMに対して生身で戦闘しても良い。覚醒者の歩兵はそれを許すだけの火力がある。ボルディア・コンフラムス (ka0796)はその許可を得てほくほく顔で戦闘に臨んだ。敵は標準的な装備のCAMが1機。戦闘が始まって数分、ボルディアの機嫌は時間と共に急速に下降線を描いていく。月面の凹凸に身を隠しながら、ボルディアは通信機越しにCAMパイロットに罵声を浴びせ始めた。
「この〇〇無し野郎!! でかい図体で逃げてばっかりか!?」
「ふざけんな! 逃げるだろ誰だって!! 怖いに決まってんだろ!」
 パイロットの逆切れが返ってきて、ボルディアも渋々状況を認めざるを得なかった。ボルディアはCAMとの移動力差を弁えており、電動のバイク(持ち込んだバイクは月面で動作保証が出来ない為、現地の物を借りた物)で追撃しようと考えていた。だが問題は、ボルディアを隠せるだけの凹凸があるということは、バイクはそれを迂回して走らせる必要があるということだ。一方CAMはというと、軽く跳躍するだけで軽々とそれを飛び越える。最悪ブースターなんかも使えば戦場の凹凸は無に等しい。射撃で業を煮やして突っ込んでくるかともすこし期待したが、欠片もそんな気配がない。パイロットの台詞の通り、彼らは覚醒者の瞬間的な膂力がいかに凄まじいか理解している。突っ込んで負けるのが分かり切っているなら、ボルディアが根負けするまで射撃を続けるほうが良い。
 というわけでCAMは逃げまくっていた。勝ち方にはこだわらないが、勝ち負けにこだわるという軍人らしい対応である。つまるところ勝てば官軍なり。
「だぁー! もー、めんどくせぇー!」
 叫んでも状況が変わるわけもないが、叫びたい気持ちだ。心底つまらない。とはいえ防衛目標もないCAMはそうなる。中に乗ってるのは戦士ではなく軍人だ。ボルディアはそれでも戦闘を続行したが、度重なる銃撃を幾度か受け止め損ね、ついには戦闘不能判定を受けた。ボルディアの戦いは長丁場になり地味な戦闘とはなったが、パイロットに言わせれば何度も危うい場面があったという。
 この時、同じ条件で戦闘を行ったアルマ・A・エインズワース (ka4901)の戦闘は、これらの弱点を克服していた為に違った結果となった。バイクでの移動が制限される点に関しては同様だったのだが、アルマには紺碧の流星がある。30mmライフルの射程と比べて短いが、立ち回り次第では十分に当てていける。放ってしまえば紺碧の流星は一度に3発中1~2発は命中する。4発も食らえば大隊の標準的なCAMは耐えきれない。戦闘開始から終了まではあっと言う間だった。バイクでの接近、撤退前に紺碧の流星による砲撃。それを2回繰り返して終了である。火力や移動手段・あるいは射程距離を補えば、覚醒者はCAMとも戦える。覚醒者の選択の幅は広いことを示した。
 とはいえ、ボルディアやアルマのような際立った覚醒者は全体のごく一部に過ぎない。際立った彼らを基準に物事を考えては物事に不都合が増える。興味深いデータでありながら、扱いに困るデータにもなった。そして、問題がもう一つ。
「大丈夫ですか? 怪我、ありませんでした?」
 アルマはふわふわと漂いながら、今しがた焼き払ったばかりのCAMに近づいていく。パイロットらしき男は何やら体育すわりの姿勢のまま浮かんでいた。
「酷い目にあった」
 二人との対戦を終えて戻って来たパイロットの一言目がそれだった。顔を覗き込むと、目が死んでいる。いや、据わっている。
「そりゃこっちのセリフだ」
 ボルディアがCAMの足元から抗議の声をあげるも、パイロットには聞こえないようだった。
「ご……ごめんなさい。手加減したつもりだったんですけど」
 それは事実で実際には命中と同時に相応のダメージが入ったという判定に切り替えた為、装甲の表面が焦げてるだけなのだが、たとえそうだとしても最新のマテリアルライフルと比べても威力が倍以上の光線が飛び交ったのだ。それはもう肝も冷える。
「もうやだ。次からハイパーブースト積んだスナイパー仕様にしてきっちり引き撃ちするから」
「えー……」
 だいぶ深めの心の傷を作ってしまったらしい。ふわふわ泳ぐアルマの横で、パイロットは体育すわりのままふわふわとしばらく浮かんでいた。



 訓練はメンバーを替えつつ過密スケジュールで進む。時間が惜しい。基本的には予定通りの進行なのだが、いくつかは急遽予定を挟みこんだ場合もあった。アニス・テスタロッサ (ka0141) とウーナ (ka1439)の2人の対戦がそれである。アニスが声をかけ、ウーナが承諾する形でこの戦いは成立した。設定は中距離以遠。CAMの機動力を生かした射撃戦である。
「じゃ、始めようぜ。ルールはさっき言ったとおりだ」
「良いわよ。いつでもかかって来なさい」
 ウーナの挑発的な言動にアニスは笑って答える。戦闘開始と同時にアニスのデュミナスは先制してスナイパーライフルで敵の移動予測地点目掛けて銃弾を撃ち込む。本来なら序盤を確認の為に費やすところではあったが、敵は同じ狙撃機体。自分と同じ得物なら銃の性能も射程距離も把握している。ウーナのアゼルも同様に考えていたが、ハイパーブーストを使う必要は無さそうだった。アクティブスラスターで回避しつつ、反撃にと銃撃を加える。
 単発の狙撃銃同士の戦いの為に持久戦になりつつあったが、データが取れた以上は不毛な戦いと判断したアニスは攻勢に出た。アニス機は速力を増してウーナ機へ接近する機動を取る。ウーナ機はハイパーブーストで離脱することも可能だったが、あえて挑戦を受けた。テストしたい装備は狙撃砲だけではない。アニス機はスラスターライフルでウーナ機の周囲に牽制射撃。対するウーナ機はマテリアルライフルで迎撃した。マテリアルライフルから放たれた光条(正確にはそう見える画像処理だが)がアニス機を掠める。
「!?」
 武装の弾道が変わったために予測が甘くなった。気を引き締めなおして損害の判定を確認し、アニス機は戦闘機動を続ける。勝敗の判定自体はハイパーブースト未使用、試験の為の武器変更をした分だけウーナが不利となったため、順当にアニスの勝利となった。必要に応じて手を抜いた事はアニスにも理解できた為、特に勝敗をどうこう言うこともなく2機はCAMの格納庫へと戻って来た。一悶着はその後に残っていた。
「オウ、お疲れ。長距離以遠でマトモに撃ち合える奴ぁそうそういねぇし、久しぶりに楽しめた。やっぱり対人と対機動兵器はやりようが違うねぇ」
 声を掛けたがウーナはちらりと視線を上げたあと、またデータのログに視線を戻す。
「……不満そうだな?」
「別に貴女との戦闘に不満があるわけじゃないわ。マテリアル兵器の弱さに納得いかないだけよ」
 ウーナが示して見せたのは最後に使ったマテリアルライフルの判定だ。アニスの機体にダメージはほとんど入っていない。アニスもそれを理解していたが、テストであるため特に指摘せずに戦闘を続けていた。
「やっぱりマテリアルライフルの威力しょっぱくない? あれ、直撃したのに全然効いてないよ」
「無茶言うなよ嬢ちゃん、デュミナスで使いこなせるはずないだろ」
 中年の整備兵は疲れた声でウーナに応じた。何度かやりとりを繰り返したのか、顔も上げずに仕事を続けている。
「エクスシアならカタログ上はいつもの物理兵装と同じぐらいの威力が出るはずだぜ」
 同じならカートリッジ分で圧迫する分だけ物理武器に対して不利とも見えるが、実際にはマテリアル兵器で遠近両用の対応を行うため、単一の機能向上であらゆる距離に対応可能となる。
このため、エクスシアは装備への適応力の高さから、万能の機体になる可能性を秘めている。
「って、話だ。多分な」
「希望的観測じゃないそれ!」
 何か良い話聞けたような雰囲気が台無しになってウーナが抗議の色を強める。アニスはそのやり取りを聞いて苦笑しながら、整備される自身の愛機を見上げた。



 一部のハンターはそもそもCAMに不慣れという話は時間が経つほどに方々で聞こえるようになった。アーシュラ・クリオール (ka0226)はその典型例とも言えるだろうか。
ヘイムダルの「グレンヴィル」を駆る彼女はドローン相手に戦闘機動を試行錯誤していたが、途上何度も不自然に停止する姿が目撃されていた。
「どうかしましたか?」
 手伝っていた大隊の所属の青年が見かねて訊ねた頃には、機械の説明書を開いているところだった。
「それが……スキルトレースが上手く作動しないのよ」
 アーシュラの予定ではジェットブーツやデルタレイの運用を試すつもりだったのだが、機械はうんともすんとも答えない。機体を寄せた兵士が資料を借りて読み込んでいく。目をすがめて読み込んでいた兵士だが、答えを見つけ出してアーシュラに該当の文章を指で示した。
 スキルトレースシステム、搭乗者のスキルをユニットで再現する。条件は装備条件のレベルがスキルトレースのレベル以下。
「…………」
 ジェットブーツはスキルトレースでLv10が必要。デルタレイは現在の技術では使用不可。現在で使用可能なのはムーバブルシールド以下に限られる。
「………予定が大分狂ったわ」
「ははは。仕方ありません」
 苦笑しながら兵士は自分の機体に戻っていく。予定を大分潰してしまったが、実際にCAMと比べることでヘイムダルの利点が分かったことは大きい。
機動性では難が残るヘイムダルだが、武器の取り回しでは優れた点も多い。アーシュラは的になって逃げるデュミナス相手に、時間一杯射撃訓練をすることで残る時間を潰すことにした。
 射撃訓練といえばちょっとした事件もあった。ラスティ (ka1400)がデュミナス「ウィルオ・O・ウィスプ」を使用して訓練している最中のことであった。ラスティは戦闘機動での正確な射撃を実現するために、回避を意識した乱数機動を行いながら、空中を浮遊するドローン目掛けて模擬弾を撃ち込んでいく。ペイントがドローンの持つ的に着弾し、そのたびにドローンは入れ替わるように基地に戻っていく。
「よし。次はドローンの速度をあげてくれ」
「あいよっ」
 通信機の向こうで リコ・ブジャルド (ka6450) が元気よく返事をする。彼女は観測機を借りてラスティの訓練の補助をしていた。大隊も人手不足というわけではないが過密スケジュールには違いなく、この手の協力は快く迎えられた。
「なんだよ、女の子連れて訓練か?」
 ラスティにからかうように話しかけてきたのはケンジ・ヴィルター (ka4938)。彼も同じ場所で戦闘機動の訓練をドローン相手に続けていた。ラスティは虚を突かれて返事が遅れたが、うっかり笑ってしまっていた。確かにリコの外見は他人から魅力的に映るのかもしれないが、口を開けばその辺の悪ガキと大差がない。女連れというニュアンスに笑ってしまったのも無理からぬことだ。
「そんなんじゃねーよ」
 ラスティはそう言ってみたが、一言で説明できる間柄でもない。長い付き合いにもなると公私の境は曖昧になるものだ。周囲が邪推したような恋愛感情が有るわけでもないが、友達と一言で済ませるのも何かが違う。
「でも、間違ってはないな」
「何がだ?」
「よく考えたら女連れだ」
「何の答えにもなってねえよ」
 人間関係なんてそんなものだ。ラスティにはそう思えた。その話題になったリコだが、そろそろもて余した暇にうんざりしていた。
「ヒマだなぁ…」
 当初はリコも普段見られない大規模演習ではしゃいでいたのだが、流石に何時間も続くと見飽きる。練習とか訓練とかはそういう性質のものだ。今は入力の作業だけはしているが、ほとんどの作業をブリジット・B・バートランド (ka1800)に押し付け、もとい、任せてしまっている。
「あら、段々色が落ち着て来たわね」
 ブリジットの差しているのはミオレスカ (ka3496)のマテリアルライフルの軌跡だ。七色の斑の光線が、今は収束されて単色に変わってきている。あれは感情に左右されていると聞いたが、寒色と暖色は見ていて懐かしい気分になる。同時に眠くなる。リコは光を見ながら物思いに沈んでいた。
(退屈過ぎる。もっと何か刺激が……刺激が……)
 リコは跳ね起きる。良いことを思い付いた、というように顔にはにやけた笑みが浮かんでいる。早速彼女は手元のキーボードからドローンの行動を手動で入力。元々プログラムに強い彼女には簡単な仕事だ。彼女の新しい指示でドローンはラスティとケンジの待つ区域と群れを成して飛んで行った。
「お、ようやく準備が終わったか」
 何も知らないラスティはマシンガンでドローンを撃つ。単純な機動であったドローンはすぐに撃墜判定、のはずだった。
「……へ」
 ドローンが判定を無視して突っ込んでくる。ラスティとケンジは慌ててスティックを動かし、咄嗟の回避行動をとった。
「おおお!?」
「ほっ! だっ!」
 急なことで変な声をあげながら回避するラスティとケンジ。ドローンの群れは2機の側を通り過ぎると、何事も無かったかのように通常の軌道へと戻っていった。通信機の向こうからは、リコの爆笑が聞こえて来た。
「おなか……くるし……変な声出し過ぎ……」
「おいこらリコ! お前の仕業か!」
 リコから返事は無い。というより、掠れた笑い声がまだ続いている。笑いすぎて呼吸困難になっているようだった。
「……どうなっても知らねーぞ」
 ドローンも安いものではないし、月面基地の大事な備品だ。一応壊れるような事はなかったが、危険な行動はしっかりとログに残っている。
 そして案の定、リコはテストの後からドローンの管理者にこってり怒られた。特に怒られる理由もないのに一緒に怒られに行くラスティだったが、これこそ関係性が曖昧な証拠でもあった。
 頭を下げに行ったラスティだが、戻ってくるころには笑顔が戻っていた。



 訓練となれば撃つ方というのが定番だが、それ以外の申し出もある。岩井崎 メル (ka0520)は撃たれる側を希望した。それも1対多数で、いろんな武器で自身のドミニオンアンサーを打ち据えてほしいという内容だった。慣れないパイロットを多く含むため実弾での演習は問題ありとして通らなかったが、システムを通じて実戦に近い形式での戦闘は許可された。
意気揚々と訓練を開始した岩井崎であったが、大隊の砲撃は彼女の想像以上に過酷であった。
「思ったよりこれきつい……!」
 何しろ狙撃砲が絶え間なく砲弾を撃ち込んでくる。距離を詰めるどころではない。彼女の機体の足の遅さも相まって、反撃は絶望的とも思えた。メルは建造物をペンチでネジ曲げ盾にし、なんとか場を凌いでいた。この時メル本人は精一杯で周囲の様子を見る余裕もなかったのだが、それを撃つ大隊側もそれどころではなかった。
「ねえちょっと、本当にこの判定であってるの?」
「合ってるつってんだろ!!」
 何度目かのイングリッドと整備士達のやりとりである。盾で受けたとはいえ、スナイパーライフルの攻撃が「無効」と判定された当たりでまたも疑義が飛んでいた。他のパイロットも同様に、固さに辟易しながら銃撃を繰り返していた。観戦する分にはドミニオンアンサーが撃たれる一方の状況だったが、ゴーラム中佐はその様子を興味深く見つめていた。
「なるほど、徹底した重装甲か。その分足が遅いが、拠点防衛という状況にでもなれば脅威になる」
 ドミニオンアンサーは大隊のCAM数機の攻撃を完全に受けきっている。それは本来であれば驚異的なことだ。
「良い機体だ。パイロットとしては平凡だが、整備士としては良い腕をしている」
「そうですか? 他にも強い機体はあったでしょう?」
「強いだけならな。あれは有る物を上手に使っている点と、真似しやすいというのが実に良い。資材と時間を無限に使えるなら、装備は当然強くなる。だが実際には無限ではない。無いところをどう補うかが大事だ。あとはまあ、余剰のハードポイントに射撃武器でも積めば拠点防衛としては充分だな」
 中佐の評価は割とべた褒めだったのだが公式記録に残ることもなく、その時間のメルは一杯一杯で気づくこともなかった。最後は当たり所の悪い何発かが致命打となり、ドミニオンアンサーは行動不能の判定を受けた。



CAMを使う者の中には射撃でなく格闘戦のテストを申し出る者もいた。須磨井 礼二 (ka4575)の持ち込んだCAMがそれにあたる。彼の機体に装備された武器はたった一つ、拳につけたガントレットのみである。これに応じたのは武術にも覚えのあるササカワ。機体は装備を取り外し、盾一つで須磨井のデュミナスの前に立った。
「好きなように打ってくれ」
「……良いのか?」
「使う機会はないが興味はある」
「そうか」
 須磨井はデュミナスを一歩下がらせると、一拍置いてからササカワ機にラッシュをしかけた。ナックルによるジャブ、ストレート、腰を低くしてのタックルにはアクティブスラスターを用いて緩急を付け、蹴りを当てた反動で距離を取る。デュミナスらしい軽やかな動きで文字通りの格闘戦を演じる。CAMは人の動きを模しては居るが人ではない。再現する必要がなければ再現せず、必要であれば人よりも精緻に動く。こなれてくると拳は更に鋭さを増すが、須磨井は同時に物足りなさも感じていた。
(……読まれてるわけではない。だが……)
 ササカワは須磨井の攻撃を的確に防御していく。このレベルの相手には打撃だけでは決定打足り得ない。この手の武器はCAMにとっての副兵装としての性格が強いのだろう。
「どうせなら、懐に踏み込むぐらいはしてみたかったな」
「それは贅沢だ。俺にも意地がある」
 ササカワの返答に須磨井は苦笑して、それ以上のテストは益も少ないと切り上げることにした。テスト結果はデータを整理していた者達にも共有されたが、ブリジットはこのデータを見て言いようのない既視感を覚えていた。
「パイロットのクセが顕著に出てるのかしら。……このクセ、どこかで??」
 言いようのないざわつきを感じる。もしかすると、もしかするのではないかと。ブリジットは胸に燻る感覚に突き動かされ、帰還するCAMの入った格納庫へと走っていった。問題のCAMのパイロットは整備士に何事か指示を出すと、慣れた動作で低重力の通路を進んでくる。
「ねえ、あなたは……」
 ブリジットが呼びかけた一瞬、仮面の下の眼と視線が合う。だが須磨井は何も反応を示さず、小さく会釈して横を通り過ぎていく。



 大よそ希望通りの対戦を用意した大隊であったが、唯一龍崎・カズマ (ka0178)の要望への対応には苦慮した。彼の希望は1対複数。「対多数攻撃」と「明らかに上の技量の相手」を希望してきた。岩井崎の依頼と似通った依頼ではあるが大きな違いがある。問題は機材にあった。
「技量はともかく、機体がな」
 龍崎の機体が強すぎる。充分に強化されたこの機体では大隊の標準的なCAMが歯が立たない。ごり押しが効いてしまうので訓練にならないのだ。内容を妥協するかとも考えた龍崎だが、しばらく考えこんだ中佐はこれも同じく承諾した。
「難易度に関しては善処しよう。君の機体に枷を付けないように」
 この会話が2時間前。準備は整ったと案内され、龍崎はデュミナス「ヴァーチェ」に乗って訓練用のビルが建つ区画へと侵入した。
(訓練で負ける事も勝つ事も唯の結果でしかない。大事なのは、そこから何を得たいか、何を学びたいかだ。真に勝たなきゃいけない場は、訓練じゃない)
生き延びるため、生き延びさせるため、極限状態に自分を追い込み自分の限界を知らなければならない。
「……それはそれとして」
 周囲の振動から仮想敵であるCAMの配備を知る。建物の陰に隠れて見えないが、音の数はそう多くはない。機体の性能差を数以外の手段でどう補ったのか気になるところだ。
 敵の機体は走りながらこちらに向かってくる。龍崎は身構えた。ビルの陰から姿を現したのは丸みを帯びた装甲を身にまとった女性的なシルエットのデュミナス。大隊のCAMではない。これは――。
「 さぁー行くのだカンナさん! いまこそカンナさんの実力を見せつけるとき、なんだよ! 」
「!!」
 ヴァーチェは振り下ろされた機棍「プリスクス」 の一撃をすんででかわす。現れたのはリュミア・ルクス (ka5783)のデュミナス「カンナ」さん。龍崎は思わぬ敵に不敵に笑みを作った。
「なるほど。これは厳しい」
 大隊はリュミアのように大隊と武器の性能試験をしていたパイロット達に協力を要請していた。ドローンよりも訓練に良い的がある、とそそのかして。事実逃げ回る龍崎はその通りの存在で、リュミアは喜んで参加した。
「力こそぱわーで物理が最強! なんだよ!!」
  プリスクスが幾度もヴァーチェを掠める。 長い間合いを生かして 棍を振り回す「カンナ」さんは脅威だ。更には持ち手を変えることで間合いを微妙に変化させてくるプリスクスは狭い街路では厄介なことこの上ない。龍崎は間合いに踏み込み祢々切丸を振るうが、カンナさんの左腕に装備されたまてるマテリアルシールドで防がれてしまう。
「……?」
このシールドの防御力の硬さに龍崎は違和感を覚えたが、すぐに槌の攻撃が来た為にその思考を隅に追いやった。それもそのはずでシールドは仮の物であり、別の装備の代替品として据え付けられていた。
(仲間内でも秘密にはしたいもんね)
その本来の品の試験結果は上々であった。これで心残りはない。あとは全力で戦うのみ。リュミアの攻撃は苛烈さを極めていた。しばらく接近戦をつづけた龍崎だが別の事に気づく。ハンターを担ぎ出すのは良い案だが、リュミアの1機だけではレギュレーションには足りない。その答えを証明するように右側面より警告が響く。直後、砲弾の着弾。装甲の一部に損傷と判定が出た。リュミアの間合いから引き上げ、周囲を見渡す龍崎。
「砲撃、どこだ?」
 敵はすぐに発見できた。この砲撃を行ったのは ルナリリル・フェルフューズ (ka4108)。パピルザグXに搭載されたスフィーダ99によるものだ。
「確かにドローンを狙うよりも練習になりますね」
 砲撃を続けながらルナリリルは淡々と評する。接近戦まで含めて戦闘のテストをしてみたが、パピルザグXは相性次第で大敗もある。仲間がいるテストのほうがより実戦に近い結果が得られるだろう。ヴァーチェは砲撃をかわしながら近づいてくる。砲撃で足止めをしているが、足の速い機体にはやはり分が悪い。
 この戦闘より前に一度大隊の標準的な機体と戦っているのだが、機動性の低さが枷となり接近されて以降の戦果が芳しくなかった。これはその評価を覆すための戦いでもある。射程は100mを割り、ヴァーチェからの砲撃がルナリリルに向けられる。ルナリリルは動かず、彼女を守るように横合いから更にもう1機CAMが現れた。
 これも大隊のCAMではない。菫色を基調としたこのカラーリングのドミニオン、岩井崎の「ドミニオンアンサー」だ。
「ごめんね、龍崎君」
「ああ。だいぶ絶望したぜ」
 格闘戦であればヴァーチェはドミニオンアンサーに十分にダメージを与えられるが、彼女の機体は砲弾を完全に防ぎきる。しかも悪い事に誰の入れ知恵か、アサルトライフルを積んでいた。先程の訓練と違い、足が遅いことを克服する位置取りだ。分が悪いと後方に飛ぼうとした龍崎機だが、別方向からの警報で姿勢を低くせざるを得なかった。銃撃が彼の頭上を通り過ぎる。ケンジのファルコンアイにラスティのウィル・O・ウィスプ、ミオレスカのシルバーレードル。3機がルナリリルと十字砲火となる位置取りで銃撃を浴びせかけてきていた。
「そうそう、悪いと思ってるんだぜ」
「本当かよ」
 ケンジの軽口に龍崎は毒づきながらも、自分の求めた条件が満たされていることを肌身で感じていた。攻撃は単調でなく、逃げるか進むかしなければ死神のように「カンナさん」が追いかけてくる。この状況で龍崎は一つ後悔していた。足回りである。引くも進むも、移動速度の問題で選択肢がどんどん狭まっていく。生き残る為に必要な素養には頑丈さは当然含まれるだろうが、逃げ足というのも必要だ。重装化でなく軽装化を施していれば、乱戦に持ち込んで敵の火器を無力化することもできた。乱戦となれば彼の 「祢々切丸」も猛威を振るっただろう。勿論、安易に軽装化すれば良いというものでなく調整には苦労するだろうが、少なくとも今この瞬間の彼には足の速さが足りていなかった。
 ヴァーチェはそれでも長く耐え続けたが、ミオレスカの牽制射撃により足を止められ、弾幕を避けきれずに大破の判定を受けた。



何事も新しい事に慣れるというのもやはり相性がある。その点に関してオウカ・レンヴォルト (ka0301)は低重力環境との相性に恵まれていた。彼は自身のドミニオン「夜天一式」でしばらく訓練場を飛び回っていたが、それほど時間もかけずに訓練場の中央に戻って来た。デュミナスに乗って待機していたササカワ機の前に機体を止めると、武器のセーフティを外す。
「よし、始めてくれ」
「いいのか?」
「構わん。もう慣れた」
 余計な言葉をかわすことなく、静かに2機の戦いは始まった。夜天一式が刃を抜き放つ。答えてササカワ機も刀を抜いた。装備は両者、刀一本と盾のみ。本来ならアサルトライフルも装備するササカワ機だが、オウカの希望を反映して取り外してあった。軽装化された機体同士、無用の駆け引きはせずに駆け足で近づきあい、接触と同時に激しい刀の応酬を始める。
充分な強化を施された機体に熟練の刀術使いの組み合わせである。斬撃は数十合に渡って繰り広げられた。序盤こそ周囲からは優劣のわからない攻防が続いていたが、数十合の切り合いの後にはそれも明らかになった。
 追いつめられつつあるのはオウカであった。決め手となったのは剣の長さ、3m半の祢々切丸に対してCAM用の刀は5m。そして機体の性能差。後発のデュミナスはドミニオンよりも運動性能で優れている。祢々切丸の威力はすさまじく命中すれば容赦なく装甲を削るのだが、当たらないのでは意味がない。この二つの差が重なり、オウカは徐々に押し負けて後方へ下がる場面が増えた。
 だがオウカもそれで諦めるほど素直でもない。
(ならこれでどうだ)
 オウカはササカワ機が深く踏み込んだタイミングを見計らい、盾を投げ捨てて手甲部に内蔵されたワークスドリルを展開。迫るササカワ機にタイミングを合わせ拳を振りぬいた。
「!」
 しかし攻撃は空振る。ササカワは小さく後ろに下がって攻撃をかわし、突き出た腕を狙い澄まして切りつける。左腕部損傷、使用不可能判定。盾を持つ腕を失えばもはや戦えない。勝敗は決した。
「……ぬかったな」
「間合いで勝っているのだ。不用意に近づく理由はない」
 剣道で小手打ちが有効なように、武器戦闘とは敵の戦闘力を削ぐ技術も発達している。その為、西洋剣術もノルドヴァイキングの斧でさえ手足を狙う。手足を落とせば、殺したも同じであるからだ。
「まだ続けるか?」
「充分だ」
 課題さえ見つかれば結果に拘る必要は無い。互いに礼をかわすと、何事もなかったように2機は格納庫へ向かって歩き出した。



 パイロット達の訓練が休憩に入り、機体の点検が始まった頃。整備用のハンガーの前でちょっとした人だかりができていた。人だかりの中心にいるのはミグ・ロマイヤー (ka0665)と、彼女の愛機であるドミニオン「ハリケーン・バウ」。背の低いミグは人だかりにまぎれ何をしているのか外側から見えなかったが、ハリケーン・バウがどんな状態かはよく見える。ハリケーン・バウは軽快なステップで踊っていた。正確には、足元の前のミグの動きをトレースしていた。
「手の動きがなっとらん。もっとこう、軽やかにこう……じゃ」
ミグは手本を示すようゆったりとした動きでくるりくるりと回り、足を高くあげる。人間であっても体の硬い人間には厳しい動きだがCAMだとどうなるか。
「無茶ですよ! 装甲が干渉しあってそんな風には動けませんから!」
 無理だった。言い返しているのはミグの代わりにコクピットに乗る整備士の青年だ。先程から何度かこのやり取りが繰り返されている。
「なんと。近頃の若いもんは出来ん出来んと努力する前から諦めおって」
「ドミニオンでそれやったら股関節の軸からぼっきり行きますよ」
「老人じゃったか……」
 それでもめげずに、機動の徒の補助を受けながらドミニオンに再現可能な範囲で見栄えのする動きに作り変えていく。ダンスに邁進するミグだが、最初からこの予定だったわけではない。最初は慣熟飛行の予定でCAMを運び込んだのだが、途中の時間つぶしに見た3Dグラフィックの踊り子達が舞う動画を見て、急遽予定を変更したのである。自分もこれを作ろう。ミグの心には火がついていた。
 整備兵達は黙ってその作業を見上げていたが、不安も無くはなかった。
「無駄に値の張るダンサーだな……」
「いいのかな?」「よくないよきっと」「じゃあどうします?」
「班長」「班長!」「班長……?」
「……面白いからもうちょっと見ていよう」
 結局のところ、この機体を壊しても彼らの責任ではないし、そもそも今日は訓練名目なので少々壊れても想定範囲内だ。訓練で壊したのではない、となれば少しは怒られもするだろうが、やはり彼らの責任ではない。周囲の機材にぶつけないように、それだけ言い残して責任者は立ち去った。人間らしい動きをさせるデータとしては意味がある。すぐさま何に役立つというものでもないが、CAMが人間らしい動作をするだけでも和むものだ。
「ええい! 腰のひねりが甘い! 手のキレがない! もっと軽快に!」
「ドミニオンには無理ぃぃぃぃぃ!」
 付き合わされた整備士には気の毒だが、これを変わろうとする猛者はいなかった。結局、装甲の干渉やモーターと軸の配置で物理的に不可能な動きは別の動作に置き換えられ、ダンスの動画は一通り完成した。この時の画像と動画はパイロット本人の意向により、艦内放送などで共有された。匿名での投稿ではあったがハリケーン・バウの外見が特徴的であったために匿名の意味はなく、ほどなくして関係者一同はこってり絞られるはめになった。合掌。



 閑話休題。その日の訓練は多少の誤差を含みつつも滞りなく進む。パイロットの練度に差があるのは仕方ないとしても、共通の課題はいくつか浮かんできた。パイロット達はCAMの性能、特に個人向け調整や強化の内容を把握していない。未だにCAMの何が強いのか、手探り状態にある。盾を持たないという選択も、おそらくはそれまでに培ったものが原因だろう。
 この状況のなかで藤堂研司 (ka0569)は「覚醒者の操るCAM」として最適解を示した。デュミナス「パリス」のOSの更新を済ませると研司は早速、訓練用の市街地へと機体を引き出した。パリスの改装は一部古い部品を使っているものの、度重なる強化で同型機よりも高い性能を有している。1:1の戦闘ではあったが、そのままでは訓練にならないため、あえてパリスには重しを載せることにした。
(軍に居たのは半年…ガーゴイル大隊とは、大人と赤子くらいの経験差がある)
 研司は自身の未熟をそう捉えていた。CAM運用の面ではその通りかもしれないが、彼の腕はその枠には収まらない。
「確認するが、全力で構わないな」
 管制室より中佐の確認が届く。研司は息を吸い込むと拡声器いらずの大きな声で返事をした。
「本気のタイマンで、お願いします! 胸を貸してください!」
「……了解した。リースマン中尉、始めろ」
 レーダーに移る光点が動き出す。リースマンの機体はバランスの良い装備で隙がない。中佐本人ほどでないにせよ、自分の実力を測るには最適の相手と言える。
「俺も、遊んでたわけじゃない…! 全力で行くぞ、パリス!」
 2機は互いの建造物を盾に射撃を繰り返した。パリスの固有兵装である「研司砲」は大隊の使う30mmライフルに射程で劣る。その分威力に勝る近~中距離用の武装であるが、彼が頼みとするのはこの武器ではない。
(よし、今だ)
 研司はリースマンが基本戦術として距離を維持することを確認した後、ブレードを抜き放ち、ビルに直接突き刺した。
「……?」
 リースマンはこの行動の意味を理解できなかった。装備重量には余裕がある。今必要でない武器にしても、捨てるほどではないはずだ。
「……一体何だ?」
 リースマンは疑問に思いながらも銃を撃ち続ける。無駄な1行動なら利用しなければならない。油断なく銃撃を続ける。しかし意図が読めないのでは、パリスの機動を防ぐことは出来ない。研司は少ない労力で必要なポジションを制することができた。
「よし、行くぞ! スキルトレースシステム、ドライブ!」
 シャープシューティング、跳弾、高速演算。パリスの銃は捨てたように見せかけたブレードを狙い撃つ。ブレードに反射した弾頭は盾をすり抜けリースマンの機体に直撃した。
「えええええ!?」
 リースマンの情けない声が聞こえる。研司は彼が怯んだ隙を見逃さず、牽制射撃をしつつ接近した。ショットアンカーでブレードを回収するには位置が遠すぎるが、この際ブレードは必要ない。
「もらったぁぁぁっ!」
 至近距離からの研司砲を直撃させ、リースマンの機体は大破判定。そこで戦闘は終了となった。システムが状況の終了を告げ、エンジンは回転数を落としていく。ようやく深呼吸した研司の耳に誰かが手を叩く音が聞こえた。
「素晴らしい。それでこそだ」
 拍手をしていたのはゴーラム中佐であった。
「我々はいつも、自分達よりも強い敵と戦っている。君達も同じだろう。強い者が自分より弱い者を倒すのは当然だ。ごく普通の機能を発揮したに過ぎない。君はそれを覆した。君自身の努力でだ」
 1:1のCAMによる戦闘での敵機撃破は彼だけだ。彼の機体より強い機体は存在する。彼より操縦の上手いパイロットもいるだろう。中佐の評価は彼自身の力を、作戦や準備でどれだけ伸ばしたかという一点だ。
「君の姿勢を私は評価する。君の持つ強さこそ、私達に必要なものだ。我々の敵は我々など束になっても紙くずのように吹き飛ぶほどに強大だ。そんな絶望の折にこそ、君の力は希望となるだろう」
 その言葉の半分も、研司の頭に入ってこなかった。処理が追い付かない。パリスに整備士達がとりついたころに、ようやく研司は勝利を実感する。システムが通常モードに移行して、照度が落ちていくコクピット内で、研司は拳を握りしめていた。



 サルヴァトーレ・ロッソがリアルブルーに転移して11時間。
乗組員の退去が始まる前に、ロッソはクリムゾンウェストへの転移を始めた。月の空を飛ぶロッソを大隊のCAMが見送るように先導する。敬礼をするCAM各機に元軍人であるハンター達は揃って敬礼を返した。習性でもあり、彼らなりの敬意の表し方でもある。家路はまだ遠い。それでも帰還を待ち望む人が居る。随行する機影はその証拠でもあった。

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MVP一覧

  • 龍盟の戦士
    藤堂研司ka0569

重体一覧

参加者一覧

  • 課せられた罰の先に
    クオン・サガラ(ka0018
    人間(蒼)|25才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    フォボス
    Phobos(ka0018unit001
    ユニット|CAM
  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    ファイナルフォーム
    インスレーター・FF(ka0038unit001
    ユニット|CAM
  • Adviser
    クラーク・バレンスタイン(ka0111
    人間(蒼)|26才|男性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    シャスール・ド・リスカラー
    デュミナス:CdLカラー(ka0111unit001
    ユニット|CAM
  • 赤黒の雷鳴
    アニス・テスタロッサ(ka0141
    人間(蒼)|18才|女性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    マドウガタデュミナス
    レラージュ(ka0141unit001
    ユニット|CAM
  • 真水の蝙蝠
    ヒース・R・ウォーカー(ka0145
    人間(蒼)|23才|男性|疾影士
  • ユニットアイコン
    ウェスペル
    ウェスペル(ka0145unit002
    ユニット|CAM

  • フラン・レンナルツ(ka0170
    人間(蒼)|23才|女性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    マドウガタドミニオン
    魔導型ドミニオン(ka0170unit003
    ユニット|CAM
  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマ(ka0178
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • ユニットアイコン
    ヴァーチェ
    VIRTUE(ka0178unit002
    ユニット|CAM
  • ボラの戦士
    アーシュラ・クリオール(ka0226
    人間(蒼)|22才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    グレンヴィル
    グレンヴィル(ka0226unit001
    ユニット|魔導アーマー
  • 和なる剣舞
    オウカ・レンヴォルト(ka0301
    人間(蒼)|26才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    ヤテンイチシキ センキ
    夜天一式改「戦鬼」(ka0301unit003
    ユニット|CAM
  • 山猫団を更生させる者
    シン・コウガ(ka0344
    人間(蒼)|18才|男性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    ウルフイェーガー
    ウルフイェーガー(ka0344unit001
    ユニット|CAM
  • 双璧の盾
    近衛 惣助(ka0510
    人間(蒼)|28才|男性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    シンカイ
    真改(ka0510unit002
    ユニット|CAM
  • 「ししょー」
    岩井崎 メル(ka0520
    人間(蒼)|17才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    ドミニオンアンサー
    DMk4(m)Answer(ka0520unit003
    ユニット|CAM
  • 龍盟の戦士
    藤堂研司(ka0569
    人間(蒼)|26才|男性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    パリス
    パリス(ka0569unit002
    ユニット|CAM
  • 伝説の砲撃機乗り
    ミグ・ロマイヤー(ka0665
    ドワーフ|13才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    ハリケーンバウユーエスエフシー
    ハリケーン・バウ・USFC(ka0665unit002
    ユニット|CAM
  • まないた(ほろり)
    サーシャ・V・クリューコファ(ka0723
    人間(蒼)|15才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    デュミナス イーガタ
    デュミナスE型(ka0723unit002
    ユニット|CAM
  • 自爆王
    紫月・海斗(ka0788
    人間(蒼)|30才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    マドウガタデュミナス
    魔導型デュミナス(ka0788unit002
    ユニット|CAM
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • all-rounder
    ラスティ(ka1400
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 青竜紅刃流師範
    ウーナ(ka1439
    人間(蒼)|16才|女性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    アゼル・デュミナス
    アゼル・デュミナス(魔導型)(ka1439unit001
    ユニット|CAM
  • 機械整備の魂
    ブリジット・B・バートランド(ka1800
    人間(蒼)|26才|女性|機導師
  • 黒猫とパイルバンカー
    葛音 水月(ka1895
    人間(蒼)|19才|男性|疾影士
  • ユニットアイコン
    フロージ(ジュウカヘイソウ)
    フロージ(重火兵装)(ka1895unit004
    ユニット|CAM
  • 世界より大事なモノ
    フィルメリア・クリスティア(ka3380
    人間(蒼)|25才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    イス・レギナ
    Is Regina(ka3380unit001
    ユニット|CAM
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    シルバーレードル
    シルバーレードル(ka3496unit001
    ユニット|CAM
  • 竜潰
    ルナリリル・フェルフューズ(ka4108
    エルフ|16才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    パピルサグイクス
    パピルサグX(ka4108unit001
    ユニット|CAM
  • 崑崙の壁
    須磨井 礼二(ka4575
    人間(蒼)|25才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    マドウガタデュミナス
    魔導型デュミナス(ka4575unit002
    ユニット|CAM
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワース(ka4901
    エルフ|26才|男性|機導師
  • 頼れるアニキ
    ケンジ・ヴィルター(ka4938
    人間(蒼)|21才|男性|舞刀士
  • ユニットアイコン
    ファルコンアイ
    ファルコンアイ(ka4938unit002
    ユニット|CAM
  • 自在の弾丸
    キャリコ・ビューイ(ka5044
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    バーグラリーウルフ
    バーグラリーウルフ(ka5044unit001
    ユニット|CAM
  • 能力者
    狭霧 雷(ka5296
    人間(蒼)|27才|男性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    ファフニール
    ファフニール(ka5296unit001
    ユニット|CAM
  • 【ⅩⅢ】死を想え
    ゼクス・シュトゥルムフート(ka5529
    人間(蒼)|25才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    フライクーゲル
    Freikugel(ka5529unit002
    ユニット|CAM
  • ドラゴンハート(本体)
    リュミア・ルクス(ka5783
    人間(紅)|20才|女性|魔術師
  • ユニットアイコン

    カンナさん(ka5783unit001
    ユニット|CAM
  • 竜潰
    四十八願 星音(ka6128
    人間(蒼)|10才|女性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    ヨイチ
    DymMM41(ka6128unit001
    ユニット|CAM
  • 《キルアイス》
    リコ・ブジャルド(ka6450
    人間(蒼)|20才|女性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 月面訓練の予定
フィルメリア・クリスティア(ka3380
人間(リアルブルー)|25才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2016/12/31 20:02:45
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/12/31 17:20:09