ゲスト
(ka0000)
【初心】狂える竜騎士
マスター:四方鴉

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/01/09 12:00
- 完成日
- 2017/11/20 19:55
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●悪意の茶会
「へぇ、実に興味深いねぇ、その計画。うん、とっても楽しみだよ」
「されど準備に今しばらくの時間がかかろう。それまでは何も起こらぬよ」
「いいじゃないかぁ、何もなくても。怠惰に過ごすってのは最高の贅沢だよぉ」
「ぇー、わたし、暇なのすきじゃなーい」
屋根に空いた穴から差し込む月明かり。
ボロボロに朽ち果てた廃墟の中、似つかわしくない磨き上げられた円卓と人数分の豪奢な茶器。
不釣合いな組み合わせの中、茶会を開くは異形の存在、多種に渡る歪虚の小集団。
各々の考えを語らい、談笑する様は上流階級のサロンの如く。
されど彼らが弄するモノは、人々を脅かし命すらも平然と奪う危険極まりない享楽の宴となる。
和やかな空気の中、進む会談。しかしその空気はすぐに打ち砕かれていた。
「遅参した、面目ない。さあさあ、俺の仕事は何になる?」
動くたびに金属鎧が音鳴らし、携えし長槍煌かせその場に来るはドラッケンが騎士。
優雅な歓談の場を乱す無骨な容貌の彼を前に、居並ぶ歪虚は眉ひそめまるでお呼びでないとばかりの態度であるが、遅参した騎士たる彼はその空気の変化にも気付かず語り続けた。
「どこだ、どこを滅ぼせば良い? 何なら、お前らが望んだ物以上の破壊を見せてやろう。俺にとっては破壊こそが全て。それはこの会にとっても……」
「ちょっと静かにしてくれないかなぁー、わたしたちのジャマしないでよねー」
早口でまくし立てた騎士に対し、一人の歪虚が口挟みその弁舌を遮った。
「そも、あなたはお呼びじゃないのよねー、会うたび会うたび破壊、破壊。ただ潰すだけじゃつっまんないのー」
「なっ……小娘が、何を」
「そこまでだ、2人とも。面倒ごとはここに持ち込まないでくれよぉ」
少女の姿をとった歪虚に竜騎士が食って掛かろうとするも、すぐに別の歪虚が口を挟んで制止する。
一触即発の空気の中、この場を諌めるためか更に別の歪虚が口を開いた。
「君に仕事を与えよう。望むがまま、彼の地で破壊し、殺しつくせ。君が事を成せば、我々も動けるのだ」
「フン、腰抜けの陰謀屋どもが! せいぜい、自分の企みが成就することでも祈っておくんだな!」
自らがのけ者にされていることに気付き、苛立ちを隠さず槍を振り上げ円卓目掛け叩き付ける竜騎士。
轟音と共に円卓は叩き割られ、茶器は砕け液体がぶちまけられる。
怒りを物にぶつける大人気ない態度を取った竜騎士はそのまま踵を返し、廃墟を後にするのであった。
肩すくめ、呆れや嘲笑を浮かべた歪虚の視線を背に受けて……
●竜騎士の猛攻
「どうした、人間がぁ! 逃げろ逃げろ、そして俺に殺されろぉ! 俺の力を貴様らにも、そしてあいつ等にも思い知らせてやる!」
叫びながら槍振るい、騎馬駆る竜騎士は殺戮に興じていく。
逃げ惑う人々の中を駆け抜け、気まぐれに振るった槍で打ち倒し、家屋を砕き隠れた人を暴き出す。
幾度も振るわれた長槍は地をえぐり、返り血にて鎧を染め上げる竜騎士であったが数名のハンターが到着、激しい戦いとなる。
戦いの最中、騎馬は射抜かれその機動力は奪われるも槍術の冴えは衰え知らず、幾合もの打ち合いの最中家々が砕け散り、吐き出される炎は生活の痕跡を焼き尽くす。
双方、消耗の後ハンターが一時後退、竜騎士もまた騎馬を失ったことにより移動力を失い、また村を監視するハンター達を前に強行突破をする事もせず、にらみ合いが続くのであった。
●程よい戦闘? そんなわけはない
「ほいほーい、とーってもお得なお仕事のご紹介ですよーっと」
異様なまでにハイテンション、受付嬢が集まった新米ハンター達に仕事の案内を見せていた。
「いきなりドラッケンが暴れだしてるんでやっつけて下さいな、ってお仕事でーす。新人の人には荷が重いんですが今回は!
なな、なーんと相手は消耗済みアーンド熟練ハンターが同行してくれるのでやられる心配は先ずないという素敵仕様!
皆さんも、今後活動をしていく中で、いつ強敵と不意に遭遇するかも分かりません。そのときに!
強敵とであった経験もなく、うろたえてやられてしまわない様、良い経験を積むチャンスですよこれは」
拳を突き上げ熱く語る受付嬢。
ハイテンションに語るのには少々問題があるも、強敵を前にしての立ち回りを安全、かつ確実に経験するのにはまたとない機会。
人的被害に関しての対策も既に終了しており、倒しきれなくとも協力しているハンターが手を下すので問題はないとの事だ。
「ま、経験を積むためって部分がありますから限界ギリギリまで手助けは無いと思ってくださいな。
敵に逃げ切られないように、って時だけは手助けはありますけど、基本的には皆さんだけの力で、手負いとはいえ歪虚を倒す事に違いはありません。
何の対策もせずにただ単に殴り合ってちゃ、大怪我まではしないけどかーなーり、痛い目にあう可能性もありますからねー?」
ぺらぺらと状況を語り、分かっている情報が記載された紙を配っていく受付嬢。
先に戦ったハンターのおかげかかなり詳細な情報までわかっており、敵情報をしっかりと知り自分達以外の手助けもあるという事を考えれば確かに美味しい仕事と言えるだろう。
だからといって気を抜けば逸れ相応に危険性はある、妙な軽口に紛れていたが受付嬢も危険性についてはしっかりと説明をしており、無策で挑めば逸れ相応の被害もありえるであろう。
「情報としてはこんな感じですねー。それじゃ皆さん、頑張って。朗報をお待ちしてますですよー」
全ての情報を伝えた後、受付嬢は笑顔で手を振りハンター達を送り出す。
妙なハイテンションと軽口が入り混じるも、危険性には念押しし。無事の帰還と成功を彼女は待つのであった。
「へぇ、実に興味深いねぇ、その計画。うん、とっても楽しみだよ」
「されど準備に今しばらくの時間がかかろう。それまでは何も起こらぬよ」
「いいじゃないかぁ、何もなくても。怠惰に過ごすってのは最高の贅沢だよぉ」
「ぇー、わたし、暇なのすきじゃなーい」
屋根に空いた穴から差し込む月明かり。
ボロボロに朽ち果てた廃墟の中、似つかわしくない磨き上げられた円卓と人数分の豪奢な茶器。
不釣合いな組み合わせの中、茶会を開くは異形の存在、多種に渡る歪虚の小集団。
各々の考えを語らい、談笑する様は上流階級のサロンの如く。
されど彼らが弄するモノは、人々を脅かし命すらも平然と奪う危険極まりない享楽の宴となる。
和やかな空気の中、進む会談。しかしその空気はすぐに打ち砕かれていた。
「遅参した、面目ない。さあさあ、俺の仕事は何になる?」
動くたびに金属鎧が音鳴らし、携えし長槍煌かせその場に来るはドラッケンが騎士。
優雅な歓談の場を乱す無骨な容貌の彼を前に、居並ぶ歪虚は眉ひそめまるでお呼びでないとばかりの態度であるが、遅参した騎士たる彼はその空気の変化にも気付かず語り続けた。
「どこだ、どこを滅ぼせば良い? 何なら、お前らが望んだ物以上の破壊を見せてやろう。俺にとっては破壊こそが全て。それはこの会にとっても……」
「ちょっと静かにしてくれないかなぁー、わたしたちのジャマしないでよねー」
早口でまくし立てた騎士に対し、一人の歪虚が口挟みその弁舌を遮った。
「そも、あなたはお呼びじゃないのよねー、会うたび会うたび破壊、破壊。ただ潰すだけじゃつっまんないのー」
「なっ……小娘が、何を」
「そこまでだ、2人とも。面倒ごとはここに持ち込まないでくれよぉ」
少女の姿をとった歪虚に竜騎士が食って掛かろうとするも、すぐに別の歪虚が口を挟んで制止する。
一触即発の空気の中、この場を諌めるためか更に別の歪虚が口を開いた。
「君に仕事を与えよう。望むがまま、彼の地で破壊し、殺しつくせ。君が事を成せば、我々も動けるのだ」
「フン、腰抜けの陰謀屋どもが! せいぜい、自分の企みが成就することでも祈っておくんだな!」
自らがのけ者にされていることに気付き、苛立ちを隠さず槍を振り上げ円卓目掛け叩き付ける竜騎士。
轟音と共に円卓は叩き割られ、茶器は砕け液体がぶちまけられる。
怒りを物にぶつける大人気ない態度を取った竜騎士はそのまま踵を返し、廃墟を後にするのであった。
肩すくめ、呆れや嘲笑を浮かべた歪虚の視線を背に受けて……
●竜騎士の猛攻
「どうした、人間がぁ! 逃げろ逃げろ、そして俺に殺されろぉ! 俺の力を貴様らにも、そしてあいつ等にも思い知らせてやる!」
叫びながら槍振るい、騎馬駆る竜騎士は殺戮に興じていく。
逃げ惑う人々の中を駆け抜け、気まぐれに振るった槍で打ち倒し、家屋を砕き隠れた人を暴き出す。
幾度も振るわれた長槍は地をえぐり、返り血にて鎧を染め上げる竜騎士であったが数名のハンターが到着、激しい戦いとなる。
戦いの最中、騎馬は射抜かれその機動力は奪われるも槍術の冴えは衰え知らず、幾合もの打ち合いの最中家々が砕け散り、吐き出される炎は生活の痕跡を焼き尽くす。
双方、消耗の後ハンターが一時後退、竜騎士もまた騎馬を失ったことにより移動力を失い、また村を監視するハンター達を前に強行突破をする事もせず、にらみ合いが続くのであった。
●程よい戦闘? そんなわけはない
「ほいほーい、とーってもお得なお仕事のご紹介ですよーっと」
異様なまでにハイテンション、受付嬢が集まった新米ハンター達に仕事の案内を見せていた。
「いきなりドラッケンが暴れだしてるんでやっつけて下さいな、ってお仕事でーす。新人の人には荷が重いんですが今回は!
なな、なーんと相手は消耗済みアーンド熟練ハンターが同行してくれるのでやられる心配は先ずないという素敵仕様!
皆さんも、今後活動をしていく中で、いつ強敵と不意に遭遇するかも分かりません。そのときに!
強敵とであった経験もなく、うろたえてやられてしまわない様、良い経験を積むチャンスですよこれは」
拳を突き上げ熱く語る受付嬢。
ハイテンションに語るのには少々問題があるも、強敵を前にしての立ち回りを安全、かつ確実に経験するのにはまたとない機会。
人的被害に関しての対策も既に終了しており、倒しきれなくとも協力しているハンターが手を下すので問題はないとの事だ。
「ま、経験を積むためって部分がありますから限界ギリギリまで手助けは無いと思ってくださいな。
敵に逃げ切られないように、って時だけは手助けはありますけど、基本的には皆さんだけの力で、手負いとはいえ歪虚を倒す事に違いはありません。
何の対策もせずにただ単に殴り合ってちゃ、大怪我まではしないけどかーなーり、痛い目にあう可能性もありますからねー?」
ぺらぺらと状況を語り、分かっている情報が記載された紙を配っていく受付嬢。
先に戦ったハンターのおかげかかなり詳細な情報までわかっており、敵情報をしっかりと知り自分達以外の手助けもあるという事を考えれば確かに美味しい仕事と言えるだろう。
だからといって気を抜けば逸れ相応に危険性はある、妙な軽口に紛れていたが受付嬢も危険性についてはしっかりと説明をしており、無策で挑めば逸れ相応の被害もありえるであろう。
「情報としてはこんな感じですねー。それじゃ皆さん、頑張って。朗報をお待ちしてますですよー」
全ての情報を伝えた後、受付嬢は笑顔で手を振りハンター達を送り出す。
妙なハイテンションと軽口が入り混じるも、危険性には念押しし。無事の帰還と成功を彼女は待つのであった。
リプレイ本文
●
潰れた家々、砕かれた井戸。通りのいたる所に赤黒い染みが飛び散っている。先行したハンター達を撤退させる事に成功した竜騎士は、今なお破壊の限りを尽くしていた。
「ハンターなど口ほどにもない! 腰抜けどもめ、遠目に窺うばかりか!?」
それでも周辺を囲み続けるハンターの気配に苛立ち、建物の残骸へがむしゃらに槍を叩きつける。
だが衝動のままたて続ける破壊音が仇となり、彼は気付かなかった――新手のハンター達が接近している事に。
「……酷い……」
無残な村の有様に、羊谷 めい(ka0669)は指が白むほど聖杖を強く握りしめる。倒壊した家屋の下、子供が可愛がっていたのだろう人形が押しつぶされているのを見つけ、唇を噛んだ。
「暴れるのは構わないけど……周りに人がいないところでやってもらいたいものだ。迷惑極まりない」
ウィーダ・セリューザ(ka6076)も足許の瓦礫をコツンと蹴飛ばし吐き捨てる。死者を出さず後片付けしてくれれば良いけど、とシニカルな笑みで呟きもしたが、めいの視線の先を追い、哀れな人形に気付くと僅かに眉根を寄せる。
納戸の陰に身を寄せ、暴れ回る竜騎士をじっと見据えているのは鍛島 霧絵(ka3074)。
「……あら、随分強そうね。確かにこれはいい経験になりそうだわ」
瓦礫をたやすく打ち砕く膂力は健在でも、竜騎士の鎧には亀裂が走り、遠目でも傷を負っているのが確認できた。手負いとは言え、れっきとした強欲竜に駆け出しのハンターが挑める機会など滅多にない。己の腕が鈍るのを厭いロッソを退艦した彼女は、この好機に密かに胸を躍らせていた。金の瞳で竜騎士をつぶさに観察する。
「本当は万全の調子で戦り合いたいけれど……未熟な私では無理でしょうし、また次の機会かしら。今は今の私に出来る事をするとしましょう」
言って、ホルスターから鉄塊の如き大型リボルバーを引き抜く。『スレッジハンマーSS』――巨獣狩りに用いられるという銃は、開戦の刻を告げるよう静かに光った。それを機に全員覚醒、臨戦態勢に入る。
ソティス=アストライア(ka6538)の口の端が、好戦的に吊り上がる。
「手強い相手だが所詮は蜥蜴。狼たる私が狩るのは当然の道理だ」
「せっかくだからぶっ倒してぇとこだな」
和音・歩匡(ka6459)も白銀の神罰銃を手の中で弄びながら頷く。
それまで黙って聞いていたクラン・クィールス(ka6605)は、『莫邪宝剣』へ光の刀身を現し、ひとつ深く息を吸い、吐く。
「……行こう」
そうして、竜騎士へ向け踏み出した。
●
背後から接近する6人の気配をようやく察知した竜騎士は、一行から感じるマテリアルが先程のハンター達よりも小さいと気付き、残忍な笑みを閃かせる。
「馬鹿め、自ら死にに来たか」
「生憎、そんなつもりはさらさらない」
竜騎士の独白に応えが返る。振り向くが早いか、音もなく飛び来た矢が竜騎士を襲う!
「!」
消音性に優れた『エルヴィン・アロー』を用いた、ウィーダによる先制の一矢だった。
「今のうちだよ」
弓の長い射程と矢の特性を活かした制圧射撃は、油断していた竜騎士にとって奇襲に等しかった。まんまと行動不能に陥った隙に、5人は各々の射程に納めるべく駆け、布陣する。
今回、クラスに加え各々の得手を踏まえると、純たる前衛はクランただひとりだった。けれど竜騎士の前に立ちはだかったのは3人。
「大した動きは出来ないけれど。こんな機会滅多に無いでしょうし、動けなくなるまで頑張ってみるわ」
「わたしも、です。戦いが嫌い、なんて言っていられないですよね……癒やすだけでは守れないのなら、わたしが盾にもなりましょう」
ベスト状のボディアーマーを着込んだ霧絵と、プロテクションで防御力を高めためいだ。事前に相対したハンター達から、竜騎士が長槍乱舞――4連撃を使用するという情報が得られていた。その連撃がクランひとりに集中するのを防ぐべく、ふたりは思い思いの対策をし、共に前線を担う事にしたのだ。
「舐めおって」
竜騎士は再度飛び来たウィーダの矢から素早く身を躱した。
「同じ手は食わん!」
「そうかよ、ならコイツはどうだ?」
前衛3人の後方。咥え煙草の歩匡、神罰銃『パニッシュメント』を媒体にマテリアルを込め、光の杭を出現させる! 前へ出ない代わりに、高い魔力を維持した歩匡の強力な光の杭は、竜騎士の足を確実に地へ縫い留めた。
「俺は強欲みてぇな戦闘狂相手に、正面から殴り合うほど肉体派じゃないんでな」
歩匡、竜騎士の悪態ににやりと唇を歪め、短くなった煙草をブーツの踵で踏み消す。
「あら……吸殻、あとでちゃんと拾ってね? ――それじゃ、一緒に踊りましょうか」
音だけで歩匡の動きを把握した霧絵、軽く窘めてから金の双眸を光らせた。歩匡は軽く肩を竦めていたが、もう振り向かない。範囲攻撃を警戒し、サイドステップで横に逸れながら引き金を引く。弾きだされた猛獣用の銃弾は、竜騎士の左肩当に着弾! 鋼と鉄とがぶつかり合う硬質な音が響き、先の戦いで損傷していた肩当は耐えられず砕け散る。
瑠璃の瞳に燐光を灯しためいは、再び防御強化の術を組み、柔らかな光でクランを包んだ。それに目礼で応えたクラン、守りの構えをとると大きく踏み出し、袈裟懸けに斬る! 光の刃による一撃は、竜騎士の鎧に一際大きなヒビを生じさせた。
それを忌々しい思いで見下ろした竜騎士の視界の端に、ちらと赤い光が映る。急ぎ顔を上げれば、燃え盛る炎の矢が真っ直ぐに向かっているではないか! 炎の矢は竜騎士の顔面へ直撃し、盛大な火の粉を振りまいた――ソティスだ!
幻影の青き炎狼を喚びだしたソティスは、扇状に広げた陰陽符を口許に当て、不敵に嗤う。
「ほう? 火の属性を持つかと思ったが杞憂だったか……それは好都合。さあ、狩りの時間だ。トカゲ風情が、黒焼きにしてくれるわ! 舐めていたのはどちらか、身をもって知るが良い!」
そう言い残し、ソティスは倒壊した家々の合間に姿を消した。弾除けとして使える程の強度はなくとも、視線を遮る事はできる。
「ま、そういう事で」
歩匡のジャッジメントの残り時間を勘定していたウィーダ、大ぶりの『乾坤弓』をよっぴき、再度制圧射撃を放つ。
「瓦礫の片付けしてくれるなら別だけど、してくれそうもないし。早い所倒れて欲しいものだね」
再び動きを止めた竜騎士を認めると、纏わせた微風に遊ぶ緑髪をぱさりと掻き上げた。
●
「ええい、次から次に鬱陶しい!」
序盤、6人は事前に得た情報により用意して来た様々な阻害術を駆使し、竜騎士を翻弄した。
しかし疲弊していても相手は強欲の眷属。技を喰らい、使い手と技を見極めると、その精神力で阻害術を弾くようになってきた。
ソティスの氷の呪縛を打ち破ると、正面のクランへ槍を突き出す。例の4連撃だ!
「……っ、この程度か」
脚、腕と立て続けに喰らうも、その威力にはむらがあるらしい。胴へ突き出された3突き目は、シールドとアーマーとでしっかりと受けきった。
その時、そばで何かがカチリと鳴る。霧絵が起こした撃鉄だった。気付いた竜騎士は上体を捻ると霧絵へ標的を変え、4突き目を繰り出す! 霧絵は寸での所で地に転がり難を逃れ、風を切り裂き飛来したウィーダの矢に被弾のタイミングを合わせるよう、伏臥の姿勢で発砲した。
体勢を立て直し、再び踏み込もうとするクランを柔らかな光が包む。目だけを動かし、
「悪いな」
短く礼を告げたクランに、純白の銃を構えた歩匡はにやりと目を眇める。
「気にするな。聖導士は味方を扱き使……もとい癒してこそだしな」
軽口を飛ばす歩匡。だが彼の高い効果を持つヒールを浴びたクランは、気にする風もなく口の端を持ち上げる。
「言ってろ……前衛の役目は果たすさ」
何故それほど歩匡が回復術を強化しているかに思い巡らせれば、腹を立てる気も起こらないというものだ。真面目なのか根が優しいのかは不明だが、それを悪態で隠すのが彼のスタイルらしい。
そんなやりとりをしていると、竜騎士が激昂し槍を振り回す。
「余所見をするとは良い度胸だ!」
「その言葉、そっくりそのまま貴様に返す!」
瓦礫の陰から躍り出たソティスが氷結の魔術を繰り出した! 氷の呪縛に囚われたその身体へ、クランがすかさず大上段に振りかぶった剣を振り下ろす。呪縛を逃れるや、飛び来たのは霧絵の冷気を纏った弾丸。身を捩り回避するも、姿勢を崩したところへ和音の光球が直撃する。
連携のとれた6人の攻撃に、竜騎士の鎧は次々に剥がれて行き、もはや兜を残すのみとなった。
「ええい、鬱陶しい……――!」
業を煮やした竜騎士は、カッと大きく顎を開く。その口腔が眩く光ったかと思うと、次の瞬間逆巻く焔が吐き出された! ドラゴンブレス――前方を広く焼き払う苛烈な焔の吐息は、狙った獲物に回避の隙を与えない。クランと霧絵が巻き込まれ、身を焼かれる痛みにふたりは堪らず膝をつく。
「霧絵さんっ、クランさん!」
めいはすぐに治癒術を組もうとし、ハッと息を飲む。竜騎士の双眸が見据える先にある、崩落した家――その陰には、恐らくまだソティスがいるはずだった。
回復手には和音がいてくれる。けれど、今竜騎士を止められるのは自分しかいない。
めいは意を決して竜騎士の視界に割り込むと、
「どうしました? まだ私が残っています。あなたにわたしは倒せませんっ」
震えそうになる心を蹴飛ばし、慣れない挑発を試みる。短気な竜騎士はそうとは気付かず、
「小娘、良い度胸だ!」
翼を広げると、めいの小さな身体を弾き飛ばして、そのままソティスへの突進しようとした――だが。
「!」
めいにぶつかる手前で、何かに強か弾かれた。めいが自身の周囲に展開した不可視の境界が、竜騎士の侵入を阻んだのだ!
「ドラッケンもこの程度なのですか」
「ぐっ……おのれ小娘ぇ!」
だがその境界はあくまで『敵』の侵入を阻むもの。長槍乱舞の射程をもってすれば、めいに届かす事は可能だ。竜騎士がぐっと槍の柄を握る。めいは負傷を覚悟し、衝撃に備え熾天使を象る盾を構えた。けれど怯みは見せず、竜の双眸をキッと睨み据える。
そこへ横合いから飛び込んで来た影がひとつ――再び歩匡の回復術を得、持ち直したクランだった!
クランは障壁を回り込み、無防備な竜騎士の脇腹へ光の刃をめり込ます。
「クランさん!」
「……よく持ちこたえてくれたな」
「もう好きにはさせないわ」
同じく復帰した霧絵も、レイターコールドショットでダメージを与えつつ竜騎士の動きを奪う。そして身を捩る事すら困難になった竜騎士の背へ、狙い澄ました矢が突き刺さる! 鎧を失い、あらわになっていた翼の付け根。そこを狙ったウィーダのターゲッティングだった。
「飛ばせはしないよ。随分背中がおろそかだったじゃないか」
響いたウィーダの嘲笑に、
「!」
力なく地に垂れた己が翼を見、竜騎士はこの時になって初めて、直に斬り結んでいたクランが背を狙わなかった訳に気付いた。憎悪に燃えた瞳で厳しくクランを睨みつける。
「小僧、俺の意識を翼から逸らせる為に!?」
「今更気付いたところで、もう遅い……さあ、もういい加減終わりにしよう」
「そうね。あなたはもう充分踊ったわ――これでラストダンスにしましょう」
ちらりと無残な町並みに目をやった霧絵、竜騎士討伐の意思を新たにし、凍てつく銃弾を竜騎士の頭部へ向け放つ! とうとう兜が弾き飛ばされ、怒りに歪んだまま凍りついた竜の顔が、陽の許に暴かれる。そして――
「動けないまま焼かれて狩られるがいい……!」
強烈な威力を誇るソティスの紅蓮の矢が、竜騎士の身体を包んだ。
一瞬激しく燃え盛った焔が消えた後、もう竜騎士の姿はなく、ただ地面に黒い塵だけが残されていた。
●
「……ったく。手負いだったクセに、強欲の竜ってのは随分硬ぇな」
歩匡、足許に転がしていた吸殻拾うと、また新たな煙草に火を点けた。
「さすがに全ては治りませんね……痛みますか?」
めいがブレスを浴びたクランと霧絵を気づかわし気に見やる。残っていた歩匡とめいの治癒術を全て用いても、ふたりの傷を完全に癒すには足りなかったのだ。
「充分だ、帰還に支障はない」
頷くクランの隣で、霧絵も乱れた髪を指で梳きつつ頷く。
「ええ、ありがとうふたりとも」
それから金の双眸を細め、破壊し尽された通りを眺めた。僅かに切なさが滲むその眼差しを見てとって、ウィーダが肩を竦めた。
「人間ってのは案外しぶといからね。理不尽な破壊者さえいなくなれば、直に戻って来てまた村を立て直すだろう」
豊かな銀の髪を揺らし、ソティスも頷く。
「そうとも。今は、手負いだったとは言え、その破壊者を無事討伐せしめた事を誇ろうじゃないか」
その言葉で、各々思い思いに瓦礫の原を眺める。
そう。もうドラッケンはいないのだ。時間はかかるだろうが、きっと村はまた息を吹き返す。賑わいを取り戻した通りの様子を思い浮かべた6人は、周囲のハンター達に報告すべく、揃って腰を上げた。
(代筆:鮎川 渓)
潰れた家々、砕かれた井戸。通りのいたる所に赤黒い染みが飛び散っている。先行したハンター達を撤退させる事に成功した竜騎士は、今なお破壊の限りを尽くしていた。
「ハンターなど口ほどにもない! 腰抜けどもめ、遠目に窺うばかりか!?」
それでも周辺を囲み続けるハンターの気配に苛立ち、建物の残骸へがむしゃらに槍を叩きつける。
だが衝動のままたて続ける破壊音が仇となり、彼は気付かなかった――新手のハンター達が接近している事に。
「……酷い……」
無残な村の有様に、羊谷 めい(ka0669)は指が白むほど聖杖を強く握りしめる。倒壊した家屋の下、子供が可愛がっていたのだろう人形が押しつぶされているのを見つけ、唇を噛んだ。
「暴れるのは構わないけど……周りに人がいないところでやってもらいたいものだ。迷惑極まりない」
ウィーダ・セリューザ(ka6076)も足許の瓦礫をコツンと蹴飛ばし吐き捨てる。死者を出さず後片付けしてくれれば良いけど、とシニカルな笑みで呟きもしたが、めいの視線の先を追い、哀れな人形に気付くと僅かに眉根を寄せる。
納戸の陰に身を寄せ、暴れ回る竜騎士をじっと見据えているのは鍛島 霧絵(ka3074)。
「……あら、随分強そうね。確かにこれはいい経験になりそうだわ」
瓦礫をたやすく打ち砕く膂力は健在でも、竜騎士の鎧には亀裂が走り、遠目でも傷を負っているのが確認できた。手負いとは言え、れっきとした強欲竜に駆け出しのハンターが挑める機会など滅多にない。己の腕が鈍るのを厭いロッソを退艦した彼女は、この好機に密かに胸を躍らせていた。金の瞳で竜騎士をつぶさに観察する。
「本当は万全の調子で戦り合いたいけれど……未熟な私では無理でしょうし、また次の機会かしら。今は今の私に出来る事をするとしましょう」
言って、ホルスターから鉄塊の如き大型リボルバーを引き抜く。『スレッジハンマーSS』――巨獣狩りに用いられるという銃は、開戦の刻を告げるよう静かに光った。それを機に全員覚醒、臨戦態勢に入る。
ソティス=アストライア(ka6538)の口の端が、好戦的に吊り上がる。
「手強い相手だが所詮は蜥蜴。狼たる私が狩るのは当然の道理だ」
「せっかくだからぶっ倒してぇとこだな」
和音・歩匡(ka6459)も白銀の神罰銃を手の中で弄びながら頷く。
それまで黙って聞いていたクラン・クィールス(ka6605)は、『莫邪宝剣』へ光の刀身を現し、ひとつ深く息を吸い、吐く。
「……行こう」
そうして、竜騎士へ向け踏み出した。
●
背後から接近する6人の気配をようやく察知した竜騎士は、一行から感じるマテリアルが先程のハンター達よりも小さいと気付き、残忍な笑みを閃かせる。
「馬鹿め、自ら死にに来たか」
「生憎、そんなつもりはさらさらない」
竜騎士の独白に応えが返る。振り向くが早いか、音もなく飛び来た矢が竜騎士を襲う!
「!」
消音性に優れた『エルヴィン・アロー』を用いた、ウィーダによる先制の一矢だった。
「今のうちだよ」
弓の長い射程と矢の特性を活かした制圧射撃は、油断していた竜騎士にとって奇襲に等しかった。まんまと行動不能に陥った隙に、5人は各々の射程に納めるべく駆け、布陣する。
今回、クラスに加え各々の得手を踏まえると、純たる前衛はクランただひとりだった。けれど竜騎士の前に立ちはだかったのは3人。
「大した動きは出来ないけれど。こんな機会滅多に無いでしょうし、動けなくなるまで頑張ってみるわ」
「わたしも、です。戦いが嫌い、なんて言っていられないですよね……癒やすだけでは守れないのなら、わたしが盾にもなりましょう」
ベスト状のボディアーマーを着込んだ霧絵と、プロテクションで防御力を高めためいだ。事前に相対したハンター達から、竜騎士が長槍乱舞――4連撃を使用するという情報が得られていた。その連撃がクランひとりに集中するのを防ぐべく、ふたりは思い思いの対策をし、共に前線を担う事にしたのだ。
「舐めおって」
竜騎士は再度飛び来たウィーダの矢から素早く身を躱した。
「同じ手は食わん!」
「そうかよ、ならコイツはどうだ?」
前衛3人の後方。咥え煙草の歩匡、神罰銃『パニッシュメント』を媒体にマテリアルを込め、光の杭を出現させる! 前へ出ない代わりに、高い魔力を維持した歩匡の強力な光の杭は、竜騎士の足を確実に地へ縫い留めた。
「俺は強欲みてぇな戦闘狂相手に、正面から殴り合うほど肉体派じゃないんでな」
歩匡、竜騎士の悪態ににやりと唇を歪め、短くなった煙草をブーツの踵で踏み消す。
「あら……吸殻、あとでちゃんと拾ってね? ――それじゃ、一緒に踊りましょうか」
音だけで歩匡の動きを把握した霧絵、軽く窘めてから金の双眸を光らせた。歩匡は軽く肩を竦めていたが、もう振り向かない。範囲攻撃を警戒し、サイドステップで横に逸れながら引き金を引く。弾きだされた猛獣用の銃弾は、竜騎士の左肩当に着弾! 鋼と鉄とがぶつかり合う硬質な音が響き、先の戦いで損傷していた肩当は耐えられず砕け散る。
瑠璃の瞳に燐光を灯しためいは、再び防御強化の術を組み、柔らかな光でクランを包んだ。それに目礼で応えたクラン、守りの構えをとると大きく踏み出し、袈裟懸けに斬る! 光の刃による一撃は、竜騎士の鎧に一際大きなヒビを生じさせた。
それを忌々しい思いで見下ろした竜騎士の視界の端に、ちらと赤い光が映る。急ぎ顔を上げれば、燃え盛る炎の矢が真っ直ぐに向かっているではないか! 炎の矢は竜騎士の顔面へ直撃し、盛大な火の粉を振りまいた――ソティスだ!
幻影の青き炎狼を喚びだしたソティスは、扇状に広げた陰陽符を口許に当て、不敵に嗤う。
「ほう? 火の属性を持つかと思ったが杞憂だったか……それは好都合。さあ、狩りの時間だ。トカゲ風情が、黒焼きにしてくれるわ! 舐めていたのはどちらか、身をもって知るが良い!」
そう言い残し、ソティスは倒壊した家々の合間に姿を消した。弾除けとして使える程の強度はなくとも、視線を遮る事はできる。
「ま、そういう事で」
歩匡のジャッジメントの残り時間を勘定していたウィーダ、大ぶりの『乾坤弓』をよっぴき、再度制圧射撃を放つ。
「瓦礫の片付けしてくれるなら別だけど、してくれそうもないし。早い所倒れて欲しいものだね」
再び動きを止めた竜騎士を認めると、纏わせた微風に遊ぶ緑髪をぱさりと掻き上げた。
●
「ええい、次から次に鬱陶しい!」
序盤、6人は事前に得た情報により用意して来た様々な阻害術を駆使し、竜騎士を翻弄した。
しかし疲弊していても相手は強欲の眷属。技を喰らい、使い手と技を見極めると、その精神力で阻害術を弾くようになってきた。
ソティスの氷の呪縛を打ち破ると、正面のクランへ槍を突き出す。例の4連撃だ!
「……っ、この程度か」
脚、腕と立て続けに喰らうも、その威力にはむらがあるらしい。胴へ突き出された3突き目は、シールドとアーマーとでしっかりと受けきった。
その時、そばで何かがカチリと鳴る。霧絵が起こした撃鉄だった。気付いた竜騎士は上体を捻ると霧絵へ標的を変え、4突き目を繰り出す! 霧絵は寸での所で地に転がり難を逃れ、風を切り裂き飛来したウィーダの矢に被弾のタイミングを合わせるよう、伏臥の姿勢で発砲した。
体勢を立て直し、再び踏み込もうとするクランを柔らかな光が包む。目だけを動かし、
「悪いな」
短く礼を告げたクランに、純白の銃を構えた歩匡はにやりと目を眇める。
「気にするな。聖導士は味方を扱き使……もとい癒してこそだしな」
軽口を飛ばす歩匡。だが彼の高い効果を持つヒールを浴びたクランは、気にする風もなく口の端を持ち上げる。
「言ってろ……前衛の役目は果たすさ」
何故それほど歩匡が回復術を強化しているかに思い巡らせれば、腹を立てる気も起こらないというものだ。真面目なのか根が優しいのかは不明だが、それを悪態で隠すのが彼のスタイルらしい。
そんなやりとりをしていると、竜騎士が激昂し槍を振り回す。
「余所見をするとは良い度胸だ!」
「その言葉、そっくりそのまま貴様に返す!」
瓦礫の陰から躍り出たソティスが氷結の魔術を繰り出した! 氷の呪縛に囚われたその身体へ、クランがすかさず大上段に振りかぶった剣を振り下ろす。呪縛を逃れるや、飛び来たのは霧絵の冷気を纏った弾丸。身を捩り回避するも、姿勢を崩したところへ和音の光球が直撃する。
連携のとれた6人の攻撃に、竜騎士の鎧は次々に剥がれて行き、もはや兜を残すのみとなった。
「ええい、鬱陶しい……――!」
業を煮やした竜騎士は、カッと大きく顎を開く。その口腔が眩く光ったかと思うと、次の瞬間逆巻く焔が吐き出された! ドラゴンブレス――前方を広く焼き払う苛烈な焔の吐息は、狙った獲物に回避の隙を与えない。クランと霧絵が巻き込まれ、身を焼かれる痛みにふたりは堪らず膝をつく。
「霧絵さんっ、クランさん!」
めいはすぐに治癒術を組もうとし、ハッと息を飲む。竜騎士の双眸が見据える先にある、崩落した家――その陰には、恐らくまだソティスがいるはずだった。
回復手には和音がいてくれる。けれど、今竜騎士を止められるのは自分しかいない。
めいは意を決して竜騎士の視界に割り込むと、
「どうしました? まだ私が残っています。あなたにわたしは倒せませんっ」
震えそうになる心を蹴飛ばし、慣れない挑発を試みる。短気な竜騎士はそうとは気付かず、
「小娘、良い度胸だ!」
翼を広げると、めいの小さな身体を弾き飛ばして、そのままソティスへの突進しようとした――だが。
「!」
めいにぶつかる手前で、何かに強か弾かれた。めいが自身の周囲に展開した不可視の境界が、竜騎士の侵入を阻んだのだ!
「ドラッケンもこの程度なのですか」
「ぐっ……おのれ小娘ぇ!」
だがその境界はあくまで『敵』の侵入を阻むもの。長槍乱舞の射程をもってすれば、めいに届かす事は可能だ。竜騎士がぐっと槍の柄を握る。めいは負傷を覚悟し、衝撃に備え熾天使を象る盾を構えた。けれど怯みは見せず、竜の双眸をキッと睨み据える。
そこへ横合いから飛び込んで来た影がひとつ――再び歩匡の回復術を得、持ち直したクランだった!
クランは障壁を回り込み、無防備な竜騎士の脇腹へ光の刃をめり込ます。
「クランさん!」
「……よく持ちこたえてくれたな」
「もう好きにはさせないわ」
同じく復帰した霧絵も、レイターコールドショットでダメージを与えつつ竜騎士の動きを奪う。そして身を捩る事すら困難になった竜騎士の背へ、狙い澄ました矢が突き刺さる! 鎧を失い、あらわになっていた翼の付け根。そこを狙ったウィーダのターゲッティングだった。
「飛ばせはしないよ。随分背中がおろそかだったじゃないか」
響いたウィーダの嘲笑に、
「!」
力なく地に垂れた己が翼を見、竜騎士はこの時になって初めて、直に斬り結んでいたクランが背を狙わなかった訳に気付いた。憎悪に燃えた瞳で厳しくクランを睨みつける。
「小僧、俺の意識を翼から逸らせる為に!?」
「今更気付いたところで、もう遅い……さあ、もういい加減終わりにしよう」
「そうね。あなたはもう充分踊ったわ――これでラストダンスにしましょう」
ちらりと無残な町並みに目をやった霧絵、竜騎士討伐の意思を新たにし、凍てつく銃弾を竜騎士の頭部へ向け放つ! とうとう兜が弾き飛ばされ、怒りに歪んだまま凍りついた竜の顔が、陽の許に暴かれる。そして――
「動けないまま焼かれて狩られるがいい……!」
強烈な威力を誇るソティスの紅蓮の矢が、竜騎士の身体を包んだ。
一瞬激しく燃え盛った焔が消えた後、もう竜騎士の姿はなく、ただ地面に黒い塵だけが残されていた。
●
「……ったく。手負いだったクセに、強欲の竜ってのは随分硬ぇな」
歩匡、足許に転がしていた吸殻拾うと、また新たな煙草に火を点けた。
「さすがに全ては治りませんね……痛みますか?」
めいがブレスを浴びたクランと霧絵を気づかわし気に見やる。残っていた歩匡とめいの治癒術を全て用いても、ふたりの傷を完全に癒すには足りなかったのだ。
「充分だ、帰還に支障はない」
頷くクランの隣で、霧絵も乱れた髪を指で梳きつつ頷く。
「ええ、ありがとうふたりとも」
それから金の双眸を細め、破壊し尽された通りを眺めた。僅かに切なさが滲むその眼差しを見てとって、ウィーダが肩を竦めた。
「人間ってのは案外しぶといからね。理不尽な破壊者さえいなくなれば、直に戻って来てまた村を立て直すだろう」
豊かな銀の髪を揺らし、ソティスも頷く。
「そうとも。今は、手負いだったとは言え、その破壊者を無事討伐せしめた事を誇ろうじゃないか」
その言葉で、各々思い思いに瓦礫の原を眺める。
そう。もうドラッケンはいないのだ。時間はかかるだろうが、きっと村はまた息を吹き返す。賑わいを取り戻した通りの様子を思い浮かべた6人は、周囲のハンター達に報告すべく、揃って腰を上げた。
(代筆:鮎川 渓)
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トカゲ狩り相談卓 ウィーダ・セリューザ(ka6076) エルフ|17才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2017/01/08 17:41:36 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/01/04 21:45:05 |