ゲスト
(ka0000)
【万節】南瓜雑魔。そして、仮装大会。
マスター:赤山優牙

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/10/14 09:00
- 完成日
- 2014/10/19 21:41
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●ピースホライズンにて
眠らない街、ピースホライズン。昼は商売に活気づき、夜は人々の心を楽しませる歓楽街となる。
そんなピースホライズンの一角に、ある衣装屋があった。
「この時期は、大事な稼ぎ時だ」
衣装屋の主が胸を張る。
「その通りです。旦那様」
執事が追随した。
ピースホライズンはこの時期になると、ハロウィンが開催される。
万霊節とも呼ばれ、その年の恵みを精霊に捧げ、次の一年の豊穣を願う、お祭りだ。
街中のあちこちで、仮装もされる。
当然、仮装する衣装の需要も高まるので、主が言う通り、大事な稼ぎ時なのだ。
●仮装大会
「我らが主催の仮装大会の件だが、進捗はどうだ?」
「はい。滞りなく」
毎年、この衣装屋の庭で仮装大会を行っている。
宣伝も兼ねた仮装大会であり、今年も大勢の商人や市民を招待する予定だ。
「実はな、今年の大会を更に盛り上げりの為に、一工夫をしようと思うのだが」
その言葉に執事が驚く。
「い、今からですか!」
準備は大詰めだ。
従業員達は連日徹夜で仮装大会の準備に臨んでいる。
「そう、慌てるな。準備はほとんどいらない」
「と、いいますと?」
不思議そうな執事に、主がニヤリと笑った。
「今回の仮装大会には、ハンター枠も作るのだ」
「……それは、どうしてでしょうか?」
これまでにも、仮装大会には男女枠や子供枠、高齢者枠等設けてきた。
それなのに、なぜ、ハンター枠なのか。
「ラッツィオ島での歪虚、そして、帝国での剣機。今後もハンター達の力は更に必要だ。しかし、彼らに任せっきりではダメだ。我々商人のみならず、一般市民も皆、今以上に彼らと連携し、助け合う事が大事なのだ」
その為のハンター枠。
大会には大勢の一般市民も来る。きっと、ハンター達にとっても、良い場となるに違いない。
●南瓜の雑魔
「さすが、旦那様。そのような深い考えがあったとは」
執事が感動した表情を浮かべた。
「まぁ、市長の目にも留まっていただき、我が衣装屋を利用していただければ、なお良いのだがな」
「……主、それは、絶対に口外しないで下さいね。下心が見え見えです」
さっきまで、感動していたのが嘘の様に、呆れる。
商人魂も立派というべきかもしれないが。
その時、部屋に従業員が飛び込んできた。
「た、大変です!」
「なにごとか?」
従業員の次の言葉で、執事は、その表情を凍てつかせた。
それは、ここまで準備してきた仮装大会の開催が危ぶまれる内容だったからだ。
「ざ、雑魔が……カボチャの形をした雑魔が、庭に現れました!」
ピースホライズンは平和な街だ。
だが、この時期は、人や物の往来も多い。
なにが原因であったのか、特定する事は難しいだろう。もしくは、なにか、よくない事が起こる前触れなのか。
どちらにせよ、このままでは仮装大会が開催できない。
「あ、主、如何なさいましょう」
「慌てる事はない。それこそ、ハンター達の出番ではないか」
雑魔が出現したら、倒せばいいだけの事だ。
主は、依頼書を書き始めるのであった。
眠らない街、ピースホライズン。昼は商売に活気づき、夜は人々の心を楽しませる歓楽街となる。
そんなピースホライズンの一角に、ある衣装屋があった。
「この時期は、大事な稼ぎ時だ」
衣装屋の主が胸を張る。
「その通りです。旦那様」
執事が追随した。
ピースホライズンはこの時期になると、ハロウィンが開催される。
万霊節とも呼ばれ、その年の恵みを精霊に捧げ、次の一年の豊穣を願う、お祭りだ。
街中のあちこちで、仮装もされる。
当然、仮装する衣装の需要も高まるので、主が言う通り、大事な稼ぎ時なのだ。
●仮装大会
「我らが主催の仮装大会の件だが、進捗はどうだ?」
「はい。滞りなく」
毎年、この衣装屋の庭で仮装大会を行っている。
宣伝も兼ねた仮装大会であり、今年も大勢の商人や市民を招待する予定だ。
「実はな、今年の大会を更に盛り上げりの為に、一工夫をしようと思うのだが」
その言葉に執事が驚く。
「い、今からですか!」
準備は大詰めだ。
従業員達は連日徹夜で仮装大会の準備に臨んでいる。
「そう、慌てるな。準備はほとんどいらない」
「と、いいますと?」
不思議そうな執事に、主がニヤリと笑った。
「今回の仮装大会には、ハンター枠も作るのだ」
「……それは、どうしてでしょうか?」
これまでにも、仮装大会には男女枠や子供枠、高齢者枠等設けてきた。
それなのに、なぜ、ハンター枠なのか。
「ラッツィオ島での歪虚、そして、帝国での剣機。今後もハンター達の力は更に必要だ。しかし、彼らに任せっきりではダメだ。我々商人のみならず、一般市民も皆、今以上に彼らと連携し、助け合う事が大事なのだ」
その為のハンター枠。
大会には大勢の一般市民も来る。きっと、ハンター達にとっても、良い場となるに違いない。
●南瓜の雑魔
「さすが、旦那様。そのような深い考えがあったとは」
執事が感動した表情を浮かべた。
「まぁ、市長の目にも留まっていただき、我が衣装屋を利用していただければ、なお良いのだがな」
「……主、それは、絶対に口外しないで下さいね。下心が見え見えです」
さっきまで、感動していたのが嘘の様に、呆れる。
商人魂も立派というべきかもしれないが。
その時、部屋に従業員が飛び込んできた。
「た、大変です!」
「なにごとか?」
従業員の次の言葉で、執事は、その表情を凍てつかせた。
それは、ここまで準備してきた仮装大会の開催が危ぶまれる内容だったからだ。
「ざ、雑魔が……カボチャの形をした雑魔が、庭に現れました!」
ピースホライズンは平和な街だ。
だが、この時期は、人や物の往来も多い。
なにが原因であったのか、特定する事は難しいだろう。もしくは、なにか、よくない事が起こる前触れなのか。
どちらにせよ、このままでは仮装大会が開催できない。
「あ、主、如何なさいましょう」
「慌てる事はない。それこそ、ハンター達の出番ではないか」
雑魔が出現したら、倒せばいいだけの事だ。
主は、依頼書を書き始めるのであった。
リプレイ本文
●依頼主の屋敷にて
眠らない街、ピースホライズン。
依頼を受けたハンター達が依頼主である衣装屋の屋敷に到着したのは、昼前の事であった。
「ジャック・オ・ランタン型の雑魔ですか~。まさに季節物ですね~」
フィーネル・アナステシス(ka0009)が、窓の外、屋敷の庭を飛び回るかぼちゃの雑魔を見ながら、そんな感想をついた。
ハンター達は、余計な被害が出ない様に、昼間のうちに、雑魔を退治するつもりだ。
キヅカ・リク(ka0038)は、外の雑魔を見ながら、
「ピースホライズンがどんなところかなって見に来たら……やっぱり沸いてるんだね」
と何か諦めた様な表情で呟く。
仮装大会は見物……と思ったが、依頼主からの『参加してくれますよね』オーラに押されてしまった。
どんな仮装か良いか思いつかなかったが、化け物であればいいかと考える。
「はい。色気を強調しないもので」
J(ka3142)が丁寧に仮装衣装の話をする。
仮装大会の衣装や小道具等の準備の為、戦闘前に使用人達がハンター達に確認しているのだ。
色気狙いにならないように、清楚で礼節な所を前面に出すつもりなのだ。
一方、リアルブルーの昔のお姫様の様な着物を用意してるのは、ルリ・エンフィールド(ka1680)だ。
「仮装なんかしたことねえけど、出店も出てるだろうし……美味しい物いっぱい食えそうだからでてみてもいいかなぁ……」
彼女にとっては、仮装より食事の方がメインの様だが。
その横で、エルフの女性が不敵な笑みを浮かべていた。
「仮装大会! いーじゃん! アタシの美を世の中に知らしめる好機!」
ティラ・ンダイハ(ka2699)は大会への準備が特に念入りだった様子で、かぼちゃ雑魔は早々に輪切りにしちゃいたい気分の様だ。
ハンター達の仮装への準備の為に、慌ただしく部屋内を駆けまわる使用人達の間を、1人の執事が進み出た。
「衣装の準備の程はよろしいでしょうか?」
ハンター達は執事の質問に頷く。
「では、よろしくお願い致します」
いよいよ、仮装大会の会場である屋敷の庭を飛び回るジャック・オ・ランタン型の雑魔退治が始まるのだ。
この雑魔を退治しないことには、仮装大会が開催できない。
●かぼちゃ雑魔退治
屋敷の庭は広く、仮装大会の舞台がある以外は、なにもなく、ただ、かぼちゃ雑魔が三体、ふわふわ飛び回っていた。
ハンター達はかぼちゃ雑魔を逃がさないために、包囲する様に近付く。
こうする事で、宙を飛び回るかぼちゃ雑魔の機動範囲を狭める意味もあった。
「気持ち良くふわふわしてるとこ、わりいけどさっさと終わらせて美味しいも……じゃなかった……仮装大会開かせてもらうぜ」
ルリの頭の中では、美味しいものが、ふわふわとしている様だ。
自身の身長を超える両手剣を構えると、前に進み出る。雑魔がまとまっていたら、まとめて狙おうと思ったが、三体ともバラバラだった。
ルリの向かい側に立つのは、ティラだ。
一番手前のかぼちゃ雑魔との間合いを一気に詰めると、輪切りにしようと剣を振るう。
だが、当たる直前で、ふわっとかぼちゃ雑魔が上昇して、その攻撃を避けた。
「当たらないじゃん!」
見た目はとろそうに見えるのだが、ただのかぼちゃではないようだ。
Jはその様子を見ながら、魔導機械からマテリアルを自身に流入させる。
かぼちゃ雑魔に、特殊な能力があるのか、どんな風に攻撃してくるのか、こちらの攻撃をどの様に避けるのかと、雑魔の動きを注意深く見つめた。雑魔とはいえ、油断できない。
キヅカが放った射撃を、かぼちゃ雑魔がスーと降下して避ける。
それは、フィーネルの炎の矢も同様だった。
ふわふわと飛んでいて当て易そうなのだが、簡単にはいかない。
ハンター達の攻撃は当たらなかったものの、かぼちゃ雑魔は攻撃されていると感じた様だ。
二体のかぼちゃ雑魔がそれぞれ、前衛のルリとティラに襲いかかってきた。
ふわふわしているのが、突如として体当たりしてきたのだが、その緩急な動きに、二人の反応が遅れた。
「このぉ!」
体当たりされた衝撃の痛みに耐えつつ、ルリが両手剣を振りかぶり反撃する。
が、ふわっと上昇して両手剣を避けるかぼちゃ雑魔。
ティラの方も同様だった。かぼちゃ雑魔の攻撃に耐え、反撃を試みるも、上昇して剣を当てる事ができない。
フィーネルが放った二発目の炎の矢は、攻撃してこなかった雑魔に向けられたが、ササっと降下し避けられる。
炎の矢が虚しく宙を飛んで行った。
「ふわふわと!」
キヅカが苛立ちの声をあげた。フィーネルの魔法に合わせて放った彼の銃撃も当たらなかったからだ。
「前衛の動きに合わせて、私達後衛は火力を集中させましょう」
Jが、ここまでの雑魔の動きを分析して、その様に仲間に告げる。
どうも、前衛が攻撃したら上昇し、後衛が攻撃したら下降しているようだと。
フィーネルとキヅカが頷く。
「なら、あたしに任せて!」
ティラが素早い動きでかぼちゃ雑魔の下に潜り込み、剣を突き立てる。
かぼちゃ雑魔が、ふわっと上昇した。その瞬間を見逃さず、後衛三人が一斉に攻撃を放つ。
炎の矢と銃撃、そしてマテリアルの光がかぼちゃ雑魔に交差する。
ボトっと音を立てて、ティラの目の前に落下した。
「もらったじゃん!」
嬉々として、かぼちゃ雑魔を文字通り切り刻むと、塵となって崩れ去った。
「おっと、危ない」
ルリがかぼちゃ雑魔の体当たりを両手剣で受け止める。
そして、返す刀で、ぶおんと音を立てて巨大な刀身を振り回した。
悠々と上昇して避けるかぼちゃ雑魔。
そこに、後衛の攻撃が集中した。
「あと一体です」
後衛の攻撃が集中し、地面に落下したかぼちゃ雑魔がルリの両手剣によって叩き潰されたのを見て、Jが、ふわふわと浮かぶ最後の一体を武器で指した。
突然、その最後の一体がキヅカの方に突進してくる。
それを紙一重で避けると、くり抜かれているかぼちゃの中に銃口を突き付けて、引き金をひいた。
鈍い音と共に、宙をくるくると回転しながら、今度は、フィーネルの方へ向かう。
彼女は杖を構えていた。まるで、ヤキュウと呼ばれるリアルブルーのスポーツの打者の様に。
カコーン!
と、かぼちゃ雑魔をティラの方へ打ち返した。
「こういう時って、『た~まや~』とか言ったほうが良いんでしょうか?」
「それでも、いーじゃん!」
彼女の疑問にティラが笑顔で返事をすると、向かって来たかぼちゃ雑魔をノーモーションで斬り付けた。
文字通り、輪切りになりながら、かぼちゃ雑魔は塵と化していく。
「討伐完了だ! さぁ、屋台の美味しい……じゃなくて、仮装大会だ!」
ルリの頭の中では、戦闘が終わっても、まだ、美味しい食べ物が浮いているようだった。
●仮装大会
ハロウィンの様々な衣装を着たモデルが舞台の上を行きかう。
それを招待された近隣の一般市民や、衣装関係の商人達が楽しみながら見ていた。
「お待たせ致しました。これより、仮装大会ハンター枠の開始です」
アナウンスと共に、会場が拍手に包まれた。
最初に舞台に現れたのはルリだった。
着物を着て黒髪ロングのカツラをつけ、頭にはかんざし。
「こういう時じゃねえと可愛い格好とかできねえからなぁ……ほらほら、リアルブルーのお姫様だぜ!」
口調が衣装の雰囲気と離れている様な感じもしたが、それはそれで、可愛くもあった。
クルクルっと、その場でまわり、扇を開く。
流し目を観客席に向けながら、扇の端を口に当てる。
「佳きに計らえ」
と台詞を決めると、会場から「おぉ~」と歓声と共に拍手が巻き起こった。
次に舞台に上がったのは、フィーネルだ。
彼女の衣装は、首から下を首・手首・足首部分と大事な部分に、申し訳ない程度のフワモコの付いた黒い全身タイツだ。
ちょっとサイズが小さく透け具合はかなり際どく、エロい化け猫とも思われてしまいそうだ。
猫耳のカチューシャ、尻尾、肉球が付いたグローブとブーツも身に付けて、仮装としての完成度も高い。
フィーネルの名の紹介と共に、採点者たる観客達に向けて、前屈みになると、片手を突き出し、
「トリック・オア・トリート! お菓子をくれないといたずらしちゃうにゃ~」
と甘ったるい声をあげた。
会場からの歓声を聞きながら、次に、背を観客席に向けると、身体を捻り、腰と胸に手を当てる。
「トリックを希望する人も受け付けてるにゃ~」
と誘惑する様に、舞台から退場した。
観客席の野郎共からひときわ大きな歓声と拍手が、会場に響き渡る。
Jが舞台にあがる。
その姿はこの衣装屋の執事……の服装によく似ている。
清楚、そして、礼節なイメージの通り、舞台の中央で、深く頭を下げる。
会場からは、「あんな美女執事なら、絶対にウチで雇う!」「いや、俺の店に来てもらう!」等と、主に商人達の声があがった。
Jは、かつて総合商社の秘書課勤務で磨かれたであろう、営業スマイルを観客席に向けると、丁寧に一礼し、退場した。
商人達から惜しみない歓声を拍手が沸き起こる。
三角帽子にマントを身体に纏った魔女の格好をしたティラが舞台に上がった。
「ハロウィン王道モンスターコスプレ早変わり!」
着込んだ状態から、衣装を脱いで色々な仮装をしようと工夫したのだ。
三角帽子を投げ飛ばし、マントを広げる。そこには、牙の作り物をはめ込んだ貴族風シャツにスカート姿、口の端にルージュで赤い血のラインを引いている女吸血鬼が現れた。
妖艶な笑みを浮かべると、今度は、シャツとスカートを脱いで、包帯ぐるぐる巻きの身体を露出した。ミイラ女だ。
包帯が全身に絡まった様な仕草を見せると、包帯をむしり取って水着姿になり、猫耳カチューシャを被った。
「にゃお」と声を上げると、サっと兎耳カチューシャに付け替え、ピョンと跳ねながら、ウィンクと投げキッスを観客達に向けた。
次々に変わる衣装と色気のある演技に、会場全体から、大きな歓声と拍手が響き渡った。
最後に舞台に上がったのはキヅカだ。
普通の仮装ではインパクトに欠けるかなと思い、記憶を頼りに大きいお面と藁のミノを再現した。
手には、金棒ではなく、釘バットを持つ。
「大丈夫。バレないバレない」
ナマハゲをイメージしているのだが、その姿はツッコミ処が満載だった。
ごつい外見からは想像もできない、力強い踏み込みとアクロバティックな動きで、舞台と観客席の間に釘バットを振り下ろしながら着地する。
地面を凹ませ、土煙りの中、ゆっくりと顔をあげた。
「わ゛る゛い゛こ゛は゛い゛ね゛ぇ゛か゛」
ギラついた目を会場に向けると、恐怖のあまり、子供達が一斉に泣きだした。
だが、それをかき消す様に、大人の歓声と拍手も同時に響く。間近で見るアクションが斬新だった様だ。
とりあえず、最前列にいた子供がマジ泣きしている様子を見て、仮装が終わったら、あれは僕じゃないと言い張ろうかとも思うキヅカであった。
さっそく、採点が行われる。
評価方法は、主催者主観の仮装点、演劇点に加え、会場の観客達による評価によって決められる。
「皆さん、お待たせしました。これより、仮装大会ハンター枠の優勝者を発表します!」
大げさな身振りで、主催者である衣装屋の主が発表する。
「ハンターの皆様の仮装は、優劣付けにくく、誰しも優勝する可能性がありました」
実際、会場での反応も似たり寄ったりだった。
僅差であったのは事実だ。
「仮装点、演劇点。そして、皆様の評価……その結果、わずかな差でしたが、一位が決まりました」
会場内に太鼓の音が響きわたる。
「優勝者は……ナマハゲを仮装したキヅカさんです!」
観客達から歓声と拍手の両方がこれほどかという程、巻き起こる。
一度、主がそれを制した。
「他の方もとても良かった。ですが、その中でもナマハゲは皆様の心を掴んだのです。知り合いの転移者に聞いた所によると、ナマハゲは、災いを祓うといった意味もあるそうです。歪虚という災いに立ち向かう今の時勢にはまさしく相応しいものなのです」
力の入った主催者の台詞に、再び会場が拍手に包まれる。
「今日それを仮装したキヅカさんと、そして、素晴らしい仮装をしてくださったハンターの皆さんに、もう一度大きな拍手を!」
割れんばかりの歓声と拍手。
それは仮装の結果だけではない。
歪虚という災いを祓うハンター達に、市民達から向けられた期待と祝福でもあるのだった。
おしまい。
眠らない街、ピースホライズン。
依頼を受けたハンター達が依頼主である衣装屋の屋敷に到着したのは、昼前の事であった。
「ジャック・オ・ランタン型の雑魔ですか~。まさに季節物ですね~」
フィーネル・アナステシス(ka0009)が、窓の外、屋敷の庭を飛び回るかぼちゃの雑魔を見ながら、そんな感想をついた。
ハンター達は、余計な被害が出ない様に、昼間のうちに、雑魔を退治するつもりだ。
キヅカ・リク(ka0038)は、外の雑魔を見ながら、
「ピースホライズンがどんなところかなって見に来たら……やっぱり沸いてるんだね」
と何か諦めた様な表情で呟く。
仮装大会は見物……と思ったが、依頼主からの『参加してくれますよね』オーラに押されてしまった。
どんな仮装か良いか思いつかなかったが、化け物であればいいかと考える。
「はい。色気を強調しないもので」
J(ka3142)が丁寧に仮装衣装の話をする。
仮装大会の衣装や小道具等の準備の為、戦闘前に使用人達がハンター達に確認しているのだ。
色気狙いにならないように、清楚で礼節な所を前面に出すつもりなのだ。
一方、リアルブルーの昔のお姫様の様な着物を用意してるのは、ルリ・エンフィールド(ka1680)だ。
「仮装なんかしたことねえけど、出店も出てるだろうし……美味しい物いっぱい食えそうだからでてみてもいいかなぁ……」
彼女にとっては、仮装より食事の方がメインの様だが。
その横で、エルフの女性が不敵な笑みを浮かべていた。
「仮装大会! いーじゃん! アタシの美を世の中に知らしめる好機!」
ティラ・ンダイハ(ka2699)は大会への準備が特に念入りだった様子で、かぼちゃ雑魔は早々に輪切りにしちゃいたい気分の様だ。
ハンター達の仮装への準備の為に、慌ただしく部屋内を駆けまわる使用人達の間を、1人の執事が進み出た。
「衣装の準備の程はよろしいでしょうか?」
ハンター達は執事の質問に頷く。
「では、よろしくお願い致します」
いよいよ、仮装大会の会場である屋敷の庭を飛び回るジャック・オ・ランタン型の雑魔退治が始まるのだ。
この雑魔を退治しないことには、仮装大会が開催できない。
●かぼちゃ雑魔退治
屋敷の庭は広く、仮装大会の舞台がある以外は、なにもなく、ただ、かぼちゃ雑魔が三体、ふわふわ飛び回っていた。
ハンター達はかぼちゃ雑魔を逃がさないために、包囲する様に近付く。
こうする事で、宙を飛び回るかぼちゃ雑魔の機動範囲を狭める意味もあった。
「気持ち良くふわふわしてるとこ、わりいけどさっさと終わらせて美味しいも……じゃなかった……仮装大会開かせてもらうぜ」
ルリの頭の中では、美味しいものが、ふわふわとしている様だ。
自身の身長を超える両手剣を構えると、前に進み出る。雑魔がまとまっていたら、まとめて狙おうと思ったが、三体ともバラバラだった。
ルリの向かい側に立つのは、ティラだ。
一番手前のかぼちゃ雑魔との間合いを一気に詰めると、輪切りにしようと剣を振るう。
だが、当たる直前で、ふわっとかぼちゃ雑魔が上昇して、その攻撃を避けた。
「当たらないじゃん!」
見た目はとろそうに見えるのだが、ただのかぼちゃではないようだ。
Jはその様子を見ながら、魔導機械からマテリアルを自身に流入させる。
かぼちゃ雑魔に、特殊な能力があるのか、どんな風に攻撃してくるのか、こちらの攻撃をどの様に避けるのかと、雑魔の動きを注意深く見つめた。雑魔とはいえ、油断できない。
キヅカが放った射撃を、かぼちゃ雑魔がスーと降下して避ける。
それは、フィーネルの炎の矢も同様だった。
ふわふわと飛んでいて当て易そうなのだが、簡単にはいかない。
ハンター達の攻撃は当たらなかったものの、かぼちゃ雑魔は攻撃されていると感じた様だ。
二体のかぼちゃ雑魔がそれぞれ、前衛のルリとティラに襲いかかってきた。
ふわふわしているのが、突如として体当たりしてきたのだが、その緩急な動きに、二人の反応が遅れた。
「このぉ!」
体当たりされた衝撃の痛みに耐えつつ、ルリが両手剣を振りかぶり反撃する。
が、ふわっと上昇して両手剣を避けるかぼちゃ雑魔。
ティラの方も同様だった。かぼちゃ雑魔の攻撃に耐え、反撃を試みるも、上昇して剣を当てる事ができない。
フィーネルが放った二発目の炎の矢は、攻撃してこなかった雑魔に向けられたが、ササっと降下し避けられる。
炎の矢が虚しく宙を飛んで行った。
「ふわふわと!」
キヅカが苛立ちの声をあげた。フィーネルの魔法に合わせて放った彼の銃撃も当たらなかったからだ。
「前衛の動きに合わせて、私達後衛は火力を集中させましょう」
Jが、ここまでの雑魔の動きを分析して、その様に仲間に告げる。
どうも、前衛が攻撃したら上昇し、後衛が攻撃したら下降しているようだと。
フィーネルとキヅカが頷く。
「なら、あたしに任せて!」
ティラが素早い動きでかぼちゃ雑魔の下に潜り込み、剣を突き立てる。
かぼちゃ雑魔が、ふわっと上昇した。その瞬間を見逃さず、後衛三人が一斉に攻撃を放つ。
炎の矢と銃撃、そしてマテリアルの光がかぼちゃ雑魔に交差する。
ボトっと音を立てて、ティラの目の前に落下した。
「もらったじゃん!」
嬉々として、かぼちゃ雑魔を文字通り切り刻むと、塵となって崩れ去った。
「おっと、危ない」
ルリがかぼちゃ雑魔の体当たりを両手剣で受け止める。
そして、返す刀で、ぶおんと音を立てて巨大な刀身を振り回した。
悠々と上昇して避けるかぼちゃ雑魔。
そこに、後衛の攻撃が集中した。
「あと一体です」
後衛の攻撃が集中し、地面に落下したかぼちゃ雑魔がルリの両手剣によって叩き潰されたのを見て、Jが、ふわふわと浮かぶ最後の一体を武器で指した。
突然、その最後の一体がキヅカの方に突進してくる。
それを紙一重で避けると、くり抜かれているかぼちゃの中に銃口を突き付けて、引き金をひいた。
鈍い音と共に、宙をくるくると回転しながら、今度は、フィーネルの方へ向かう。
彼女は杖を構えていた。まるで、ヤキュウと呼ばれるリアルブルーのスポーツの打者の様に。
カコーン!
と、かぼちゃ雑魔をティラの方へ打ち返した。
「こういう時って、『た~まや~』とか言ったほうが良いんでしょうか?」
「それでも、いーじゃん!」
彼女の疑問にティラが笑顔で返事をすると、向かって来たかぼちゃ雑魔をノーモーションで斬り付けた。
文字通り、輪切りになりながら、かぼちゃ雑魔は塵と化していく。
「討伐完了だ! さぁ、屋台の美味しい……じゃなくて、仮装大会だ!」
ルリの頭の中では、戦闘が終わっても、まだ、美味しい食べ物が浮いているようだった。
●仮装大会
ハロウィンの様々な衣装を着たモデルが舞台の上を行きかう。
それを招待された近隣の一般市民や、衣装関係の商人達が楽しみながら見ていた。
「お待たせ致しました。これより、仮装大会ハンター枠の開始です」
アナウンスと共に、会場が拍手に包まれた。
最初に舞台に現れたのはルリだった。
着物を着て黒髪ロングのカツラをつけ、頭にはかんざし。
「こういう時じゃねえと可愛い格好とかできねえからなぁ……ほらほら、リアルブルーのお姫様だぜ!」
口調が衣装の雰囲気と離れている様な感じもしたが、それはそれで、可愛くもあった。
クルクルっと、その場でまわり、扇を開く。
流し目を観客席に向けながら、扇の端を口に当てる。
「佳きに計らえ」
と台詞を決めると、会場から「おぉ~」と歓声と共に拍手が巻き起こった。
次に舞台に上がったのは、フィーネルだ。
彼女の衣装は、首から下を首・手首・足首部分と大事な部分に、申し訳ない程度のフワモコの付いた黒い全身タイツだ。
ちょっとサイズが小さく透け具合はかなり際どく、エロい化け猫とも思われてしまいそうだ。
猫耳のカチューシャ、尻尾、肉球が付いたグローブとブーツも身に付けて、仮装としての完成度も高い。
フィーネルの名の紹介と共に、採点者たる観客達に向けて、前屈みになると、片手を突き出し、
「トリック・オア・トリート! お菓子をくれないといたずらしちゃうにゃ~」
と甘ったるい声をあげた。
会場からの歓声を聞きながら、次に、背を観客席に向けると、身体を捻り、腰と胸に手を当てる。
「トリックを希望する人も受け付けてるにゃ~」
と誘惑する様に、舞台から退場した。
観客席の野郎共からひときわ大きな歓声と拍手が、会場に響き渡る。
Jが舞台にあがる。
その姿はこの衣装屋の執事……の服装によく似ている。
清楚、そして、礼節なイメージの通り、舞台の中央で、深く頭を下げる。
会場からは、「あんな美女執事なら、絶対にウチで雇う!」「いや、俺の店に来てもらう!」等と、主に商人達の声があがった。
Jは、かつて総合商社の秘書課勤務で磨かれたであろう、営業スマイルを観客席に向けると、丁寧に一礼し、退場した。
商人達から惜しみない歓声を拍手が沸き起こる。
三角帽子にマントを身体に纏った魔女の格好をしたティラが舞台に上がった。
「ハロウィン王道モンスターコスプレ早変わり!」
着込んだ状態から、衣装を脱いで色々な仮装をしようと工夫したのだ。
三角帽子を投げ飛ばし、マントを広げる。そこには、牙の作り物をはめ込んだ貴族風シャツにスカート姿、口の端にルージュで赤い血のラインを引いている女吸血鬼が現れた。
妖艶な笑みを浮かべると、今度は、シャツとスカートを脱いで、包帯ぐるぐる巻きの身体を露出した。ミイラ女だ。
包帯が全身に絡まった様な仕草を見せると、包帯をむしり取って水着姿になり、猫耳カチューシャを被った。
「にゃお」と声を上げると、サっと兎耳カチューシャに付け替え、ピョンと跳ねながら、ウィンクと投げキッスを観客達に向けた。
次々に変わる衣装と色気のある演技に、会場全体から、大きな歓声と拍手が響き渡った。
最後に舞台に上がったのはキヅカだ。
普通の仮装ではインパクトに欠けるかなと思い、記憶を頼りに大きいお面と藁のミノを再現した。
手には、金棒ではなく、釘バットを持つ。
「大丈夫。バレないバレない」
ナマハゲをイメージしているのだが、その姿はツッコミ処が満載だった。
ごつい外見からは想像もできない、力強い踏み込みとアクロバティックな動きで、舞台と観客席の間に釘バットを振り下ろしながら着地する。
地面を凹ませ、土煙りの中、ゆっくりと顔をあげた。
「わ゛る゛い゛こ゛は゛い゛ね゛ぇ゛か゛」
ギラついた目を会場に向けると、恐怖のあまり、子供達が一斉に泣きだした。
だが、それをかき消す様に、大人の歓声と拍手も同時に響く。間近で見るアクションが斬新だった様だ。
とりあえず、最前列にいた子供がマジ泣きしている様子を見て、仮装が終わったら、あれは僕じゃないと言い張ろうかとも思うキヅカであった。
さっそく、採点が行われる。
評価方法は、主催者主観の仮装点、演劇点に加え、会場の観客達による評価によって決められる。
「皆さん、お待たせしました。これより、仮装大会ハンター枠の優勝者を発表します!」
大げさな身振りで、主催者である衣装屋の主が発表する。
「ハンターの皆様の仮装は、優劣付けにくく、誰しも優勝する可能性がありました」
実際、会場での反応も似たり寄ったりだった。
僅差であったのは事実だ。
「仮装点、演劇点。そして、皆様の評価……その結果、わずかな差でしたが、一位が決まりました」
会場内に太鼓の音が響きわたる。
「優勝者は……ナマハゲを仮装したキヅカさんです!」
観客達から歓声と拍手の両方がこれほどかという程、巻き起こる。
一度、主がそれを制した。
「他の方もとても良かった。ですが、その中でもナマハゲは皆様の心を掴んだのです。知り合いの転移者に聞いた所によると、ナマハゲは、災いを祓うといった意味もあるそうです。歪虚という災いに立ち向かう今の時勢にはまさしく相応しいものなのです」
力の入った主催者の台詞に、再び会場が拍手に包まれる。
「今日それを仮装したキヅカさんと、そして、素晴らしい仮装をしてくださったハンターの皆さんに、もう一度大きな拍手を!」
割れんばかりの歓声と拍手。
それは仮装の結果だけではない。
歪虚という災いを祓うハンター達に、市民達から向けられた期待と祝福でもあるのだった。
おしまい。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 鬼塚 陸(ka0038) 人間(リアルブルー)|22才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/10/14 01:20:05 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/10/13 08:58:55 |