• 初心

【初心】猟師の少年を救助せよ

マスター:貴島春介

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
LV1~LV20
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2017/01/20 15:00
完成日
2017/01/28 03:41

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●少年を襲う災難と、雑魔の発生経緯
 クリムゾンウエストの森林地帯に点在する村には、何名かの猟師が住んでいる事が一般的である。
 冬の森では、越冬のために栄養を蓄えた獣が出没する。それを捕獲するのは、村の猟師の仕事だ。
 この秋に、一人前の狩人として認められたばかりの15歳のヘンリクは、一人で森に入っていく機会を待っていた。
 短く切りそろえた麦わら色の髪。くるくると好奇心旺盛によく動く瞳を持った少年で、もの覚えがよく、村の者からも好かれている。
 本格的に雪が入る前に森へ狩猟に入るのが本人の希望で、年嵩の猟師たちも経験を積ませた方がいいと考えていたのだ。
 村の狩人たちの決まりに従い、森に入るものが必ず持っていくことになっている野営装備を携えて、ヘンリクは森へと入っていった。家族をはじめ村人たちは意気揚々と出発していくヘンリクをほほえましく見守っていたのである。
 しかし、1日が過ぎ、2日が経過し、ヘンリクが帰ってくる気配がない。
 そして、3日目の夜がやってきた。日がすっかり落ちたが、ヘンリクが戻らない。想定日を過ぎたが帰ってこないのだ。村に不安な空気が漂う。
 4日目、異変が起きた。森で雑魔が発生した兆しが村近辺でも確認されたのだ。ツタ植物の雑魔は村まで押し寄せた。村ではかがり火を焚いて雑魔の接近を防いだが、何日も続けられるものではない。
 ツタ植物型の雑魔が森に発生したということが、さらなる危機感を招いた。これは以前、森の中でさらに強力な大鹿型の雑魔が発生した兆候だったからだ。
 ヘンリクは、森の中で帰還できない状態になっているのだろう。そこを雑魔に見つけられたらひとたまりもない。
 ヘンリクの救出と、雑魔を撃退。ハンターへ依頼。

●依頼の内容
 ハンターオフィスに、救助の依頼が入りました。
 雑魔が発生した森の中にいまだ取り残されている、猟師の少年ヘンリクを探して見つけ出してください。
 彼は想定の2日分の装備を所持していきましたが、4日目の本日では、食料などが残っている可能性は少ないでしょう。
 また、山林内で雑魔の発生が確認されています。植物の雑魔の妨害が予想されます。
 加えて、大鹿型雑魔の発生も放置できません。救助対象者の安全を確保したのち、大鹿型雑魔の討伐をお願いします。

リプレイ本文

 ハンターたちが村にやってくると、村人は救助が来たことに、一時緊張を解く事ができたようだった。少年の安否が不明のまま、雑魔の対応に追われたため、人々の表情に疲労が色濃く残っている。村の周辺に、前日に焚いた篝火がそのままになっていた。
「……狩りにはいい時期だったかもしれないけど、歪虚にも時期があるのねえ。森はいつも味方してくれるとは限らないから、気を付けないといけないわね」
 イリアス(ka0789)は森の方角を見て、目を細める。エルフである彼女は森については十分な知識を持っている。その分、慣れない者にとっての森がどれほど危険かということも。
「雑魔の為か、怪我なのか、他に理由があるのか……とにかく心配ですね」
 ソラス(ka6581)が同意する。村人と同じように表情を曇らせている。
「山の捜索、猟師の救出、複数の雑魔討伐……中々忙しい仕事だ」
 心配が顔に出るソラスとは対照的に、ジーナ(ka1643)は今回の仕事の内容を冷静に分析している。引き受けた以上は全力を尽くすと決めている。問題はない。
(強敵と相対して心が踊らないと言えば嘘になる。けれど、今俺が刀を振るうのは命を護るため)
(人の命は簡単に喪われてしまう……だから護らなければ)
 アーク・フォーサイス(ka6568)は心中で呟き、得物の刀を握りしめた。言葉よりも、命を守るという決意がにじみ出る。
「……」
 アークと同じように無言を通しているフィーナ・マギ・ルミナス(ka6617)だが、村人の気持ちは痛いほど分かった。家族ともいうべき存在の安否が分からない不安は、どれほどだろう。
「雑魔……今度は、絶対に犠牲者なんて出させない……あの時とは違うんだから……」
 天宮 結愛(ka6622)は、歪虚に襲撃された際の記憶を思い出し物思いに耽る。自分と同じ悲劇を、村の人々に繰り返させるわけにはいかない。

 人命がかかっているとあり、ハンターたちは森に入る前に打ち合わせを行っておいた。
 ソラスから、少年を先に見つけた時の対応を予め仲間と相談して決めておこうという発案がきっかけだった。
 ジーナもうなづき、作戦の事前打ち合わせに協力して応じる。
「今一番の危険要素は大鹿だと思う。倒せればヘンリクだけでなく村の安全も確保できるはず。先にこちらが雑魔に遭遇していれば、ヘンリクの危険は減るかもしれない」
 普段無口なアークだが、こういうときは発言に加わる。コミュニケーションが嫌いなわけではないのだ。
「できれば鹿雑魔を先に倒したいが、少年の居場所が分からないと知らないうちに巻き込む可能性も……衰弱していることを考えると、救出を急ぎたい気持ちもある」
 ソラスの意見はなかなか煮え切らない。ヘンリクへの心配がある。
「少年は恐らく隠れているはず。なら、見つけてもらって呼子笛でも吹いてもらうほうが早い、と思う」
 フィーナが推察を交えた意見を述べる。ヘンリクも呼子笛を持っているはずだから、闇雲に探索するよりも時間の短縮になる。
「もし、遭難者の探索に時間がかかりそうなら、呼子笛を吹きながら合図を待ってみるのはどう? 見つかる可能性は出ちゃうけど、時間には代えられないから」
 イリアスが条件を付加して、一つの意見を全体の方針に作り替えた。
 こうして方針が決まった。

 結愛とフィーナを中心に、村で状況の確認と共に野営や遭難者に必要な物資を聞いて集める準備が行われた。
「私はサバイバルの知識はないので現地の方に教えてもらう方が良いと思うんです」
「可能であれば弁当なども用意してもらいましょう。2日分の装備で4日過ごしているのですから、空腹になっているはず」
 村人たちから、ぜひ持っていってやってくれ、と心づくしのメニューがフィーナの用意した弁当箱に詰められた。
 アークは、ヘンリクの状態が衰弱、怪我をしていた場合に備えてヒーリングポーションを荷物に加えた。
 仲間内の荷物の重さを調整していたソラスは、ジーナが重い『毛布』を持ち込んでいるのに気がつく。
「これは?」
「猟師の寒さを少しでも和らげようと思う」
 ジーナは端的に返答して、重みのある荷物を軽々と担いだ。仲間が猟師の衰弱に備えた食料や薬品は十分と確認済みだ。

「私も森育ちだけど、他所の森って違うものだから」
 森を知るイリアスは、率先して情報収集に当たった。村長やヘンリクを指導した年嵩の猟師たちに話を聞く。
「この時期は、森の植物は冬枯れしているものが多いからね。その中で、妙にみずみずしく茂った紫色のツタがあったら、例のツタ雑魔だと思って間違いない」
 雑魔の見分け方を教えてくれた猟師は、予備の野営装備から呼子笛を貸してくれ、彼らの間で使っている合図を指導してくれた。
「もちろんヘンリクのやつも合図の方法は知っとります。どうか、無事に助けてやってください」
 猟師たちはハンターの面々に頭を下げ、彼らが仲間内で共有している手書きの地図を提出してくれた。
 狩りに使うルート、気をつけておく地形、水場の場所、狩猟小屋などの情報が書き込まれている。
「管理してる猟師小屋はあるが、ヘンリクにはそこまで教えちゃおりません。本当に、新米慣らしの散策だったんで……」
 ヘンリクを直接指導したという猟師は痛恨の表情を浮かべる。
「獲物を追ってつい深入りした可能性もあるか」
 ソラスが思い当たる。
「行かないよう言われた場所にも行っている可能性はありそう」
 アークが同意する。
 ヘンリクにそう伝えた場所がないか? それを聞き、猟師は手書きの地図上で森の中を大きく横切るルートを示す。
「このルートには入るな、と伝えました。凶暴な大鹿が発生したとき通るルートだから、と。以前仕掛けたままの罠もある、近づかん方がいいと言い含めたんですが……」
 自分の忠告が徒になったか、と恐縮している。
「私たちは、ヘンリクはどこかに隠れているのではないかと考えています。どこか、適当な場所に心当たりはありますか?」
 ソラスが重要な質問に切り込むと、猟師ははっと何かに気づいた表情をして、答える。
「水場の近くに、かなり大きい広葉樹が群生しとります。ヘンリクぐらいの体格なら隠れられるかもしれません」
 ヘンリクからコンタクトを取ってくる手段を準備し、彼が隠れていそうな場所も見当を付けた。
 加えてソラスは、村長から、ヘンリクの両親の名を聞いておく。少年に会えて声かけする時に安心させるためだ。
 ジーナも同席し、ヘンリクと特に親しいと思われる村人の名前を把握しておく。迅速な救助と助けた後の安心感を補佐できるように。

「私達もはぐれないように、気を付けてね」
 イリアスが仲間に声をかける。遭難者の足取りを追いながら、歪虚の気配を同時に探る。
 大きな獣の形をしてるなら、植物の傷とか、移動した痕跡はある、と踏んでいたが、はたして森の奥に進むほどに大鹿型雑魔の動き回った跡が見受けられた。
 結愛が率先して邪魔な枝葉を切り払って道を作って進んでいく。
「雑魔の気配を感知とかできれば襲撃も分かって良いんですけどね……一応やってみよ……」
 むむむと一応頑張ってみる結愛。
 イリアスも、草が深い所ではツタの雑魔が潜んでいないか、見てから進むようにする。注意して見るときは、直感視を使って敵が潜んでいないかを確認した。
 結愛とイリアス、2人が感覚を総動員したおかげで、進んでいる間に見つかったツタ雑魔は苦労なく撃退する事ができた。群れていない小型の個体ばかりだったことも幸いした。
 ヘンリクの名前を呼び、呼子笛の合図を挟む。足跡や獲物の痕跡を頼りに、少年の辿ったと思われるルートをたどっていくと、水場の方角からかぼそい呼子笛の返答が返ってきた。

 村の猟師が予想したとおり、ヘンリクは水場に近い広葉樹の大木の洞の中にいた。うずくまり、薄い毛布にくるまって震えていた。
 ヘンリクを見つけると、フィーナがまず周囲の安全の確保に走った。ツタ雑魔は見つけては先んじて撃退していたため、水場には危険な雑魔の影はない。
 ソラスは真っ先にヘンリクが怪我を負っていないかを確認した。左足に自分で処置をしたらしき包帯が巻かれている。怪我のの処置を優先する。
 ヘンリクの唇はかさかさに乾いていた。ソラスは、すぐには食事ができないと判断し、簡易水分補給として蜂蜜水を作って飲ませる。
 少しむせつつも、ヘンリクはゆっくりと蜂蜜水を飲んだ。アークが所持していたヒーリングポーションも処方する。
 ジーナが担いできた厚い毛布で少年の体を手早く覆う。
「……お、おれ、野ウサギを追ってたんだ」
 落ち着いてきたヘンリクは、おどおどと少しずつ話し始めた。
 入るなと言われていた雑魔の通り道に入ってしまったこと。古い仕掛け罠を発動させてしまい、飛んできた矢で左足に怪我をしたこと。自分で手当てをしたが、この水場で動けなくなってしまったこと。聞いたことのない獣のうなり声が聞こえ、恐ろしくなって木の洞に隠れて救助を待っていたこと……
「怖かった……怖かったよ……」
 結愛がヘンリクを抱きしめるようにして言葉をかけている。
「もう大丈夫です。あとは私達に任せてください」
 ヘンリクの容態が落ち着いたところで、フィーナが申し出る。
「私が送り届けておきましょう」
 まだ大鹿型雑魔の討伐を終えていない。森の中にヘンリクを1人残しておくのはあまりにも危険だ。
 マジックアローの弾数はあるから、自分一人でもそう簡単にやられはしない、という目算があった。
 ヘンリクをフィーナに任せ、5人のハンターたちは大鹿型雑魔を探すため、森のさらに奥へと分け入る。

 シュルシュルとうごめく音が聞こえるほどのツタ雑魔の群れ。脚を狙い、絡みついてくる。
 大鹿型雑魔の吠える声が空気を震わせる。
 アークは無駄のない動きで刀を抜き「さあ、やろうか」と声をかける。
 ツタ型にも自身の行動が制限されないように注意を払いつつ、大鹿に狙いを定める。
 防御が疎かになるが、一之太刀から技を繰り出す。多少の怪我は想定の内とする、必殺の構え。
 マテリアルを全身に行き渡らせた鋭い斬撃が大鹿型雑魔の首筋に打ち込まれる。
 一撃で落とす、とまでは行かないが、首へのダメージは、角による攻撃の効果を幾分か減じるだろう。
 相手の攻撃範囲から一度退き、相手の出方を伺いつつ、味方との連携が取れるよう動く。
 後方に陣取ったソラスは、周りを取り囲むツタ雑魔の数を確認し、空間に手で一筆書のマークを描く。マテリアルが形を得て、炎の矢となり炸裂する。
 ツタ雑魔は直撃を受けて燃え尽きるもの、潮が引くように炎から遠ざかるもの、火の粉でダメージを受けるものと様々だ。
 イリアスは、鹿に気を取られ過ぎないように、周りを直感視で確認しながら応戦する。
「草刈りお願い!」
 仲間に近づくツタ雑魔の位置を指示しながら、弓を引き絞る。
 結愛が応え、槍を短く持ち軽い斬撃で対処する。
 ジーナは、相手取るなら大物狩りは後に回してでも搦め手から潰す、という作戦だ。
 ソーブレード「レギオ・レプカ」の刃を回し、白き鷹の祖霊の力を乗せて絡みつくツタごと強引に切り伏せる。
 ばっさばっさと斬り裂かれてゆくツタ雑魔たち。ハンターたちに致命的な損害を与えることなく全滅する。
 大鹿型雑魔が怯むことなく突進を行う。攻撃目標は比較的近い位置にいるアーク。アークは標的になったと判断すると防御の構えを取った。そこにイリアスの拳銃による威嚇射撃が放たれ、突進の勢いがわずかに減じる。アークは吹き飛ばされるも、予想よりダメージは少なく、即座に立ち上がる。
 そのまま流れるように攻撃に移るアーク。大上段に振りかぶり、一撃目と同じく首を狙う。連続して手痛い斬撃を浴びた大鹿型雑魔は、首から血を吹きながらよろける。
 たたみ掛けるようにソラスがふたたび空間に一筆書を描く。先ほどとは異なる書き順。氷の矢が現れた。大鹿型雑魔の固い毛並みに着弾し、空中に霜が舞う。低温によって、雑魔の動きが鈍る。
 攻撃の好機と見た結愛が長槍を攻めの型に構えた。あえて側面よりも正面に位置取りし、フェイントを交えて頭部の急所を刺し貫く。
「雑魔であるという事実。それだけであなたは万死に値します。いえ、万死では済まない、済ませない。何度でも、何度でも刺し貫き苦痛を味わえばいい……」
 憎悪を共に敵に死を望む。これが結愛の抱える激情だった。
 身体だけでも相当の大きさだが、こちらは背の低さを活かして懐に飛び込む。足や腹を掻っ捌くように攻撃。柔らかい腹からばっと血がしぶく。
 大鹿型雑魔が、断末魔の声を上げた。脚が、がくがくと揺れたあと突然がくりと折れ、巨大な体がゆっくりと地面に倒れた。

 大鹿討伐後、大鹿を相手にしたハンターたちは無事村へ向かっていたフィーナと合流した。フィーナが肩を貸していたヘンリクを、背におぶって帰ることにする。
「さぁ、家族の元へ帰りましょう」
 結愛がヘンリクが口にできそうな食料等を与える。少しでも元気になってもらいたい。
 村中が安堵のため息をつき、家族は涙ぐんで、ヘンリクの無事を喜んだ。
 仕事が完了し、ジーナは帰還した後の酒の味に思いを馳せる。
 仕事を成し遂げた後、浴びるほど飲む酒は美味い。
 少年を無事救い出し、凶悪な雑魔を仕留めた、今宵の酒の味は、また格別であろう。

依頼結果

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重体一覧

参加者一覧

  • 金糸篇読了
    イリアス(ka0789
    エルフ|19才|女性|猟撃士
  • 勝利への開拓
    ジーナ(ka1643
    ドワーフ|21才|女性|霊闘士
  • 決意は刃と共に
    アーク・フォーサイス(ka6568
    人間(紅)|17才|男性|舞刀士
  • 知るは楽しみなり
    ソラス(ka6581
    エルフ|20才|男性|魔術師
  • 丘精霊の絆
    フィーナ・マギ・フィルム(ka6617
    エルフ|20才|女性|魔術師

  • 天宮 結愛(ka6622
    人間(蒼)|18才|女性|闘狩人

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談用
イリアス(ka0789
エルフ|19才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2017/01/19 00:13:04
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/01/16 14:07:20