ゲスト
(ka0000)
温泉観光地(予定)に沸いた雑魔の退治依頼
マスター:秋月雅哉

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/10/11 19:00
- 完成日
- 2014/10/12 14:35
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●温泉観光地(予定)に雑魔が沸いちゃいました
温泉開発が進む中、ある地域で良質な湯の源泉が発見され、当然のようにそこにも温泉と、周りの景色を生かした温泉観光地化の計画がたったのが夏頃。
紅葉や桜の木が多く生えていることから春と秋は桜と紅葉を。冬になれば雪が降るだろうし夏は蛍の存在が確認できた。
あまり人の手は入れずに自然の中で日常の疲れを癒すタイプの観光地を、と考えていた土地の所有者と開発担当者はその当時は思いもしなかっただろう。
予想外の珍客のせいで開発がとん挫しかける事態が発生するなどとは。
●雑魔を祓ってついでに温泉に浸かってくるだけの簡単なお仕事です
「なんかねぇ、温泉開発が進んでて、あとは宣伝して客を呼んで、って辺りまで進んだ場所に雑魔が沸いちゃったんだってさ。流石に危ないから今は一般人の出入りは禁止されてるみたい」
またしても【何か】もしくはダークマターとしか形容できない物質の異臭を放つ物を食べながら青年がやる気なさげに説明する。
「敵はそんなに強くないからちゃちゃっと倒して、温泉自体の設備は整ってるからセルフサービスでいいなら浸かってくればいいんじゃないかな。炎・水・風・土。四元素、だっけ。それをもとに歪曲の影響でうまれた雑魔で外見は人魂っぽいよ」
あぁ、でも物理攻撃は通じるみたいだから攻撃については特に注意しないといけないことはないと思う。
「開発担当者と地主からの要請は『できるだけ早く利用できるようにしたいのであまり場所を荒らさないでほしい』だって。雑魔は露天風呂の辺りをふわふわ浮いてて移動は滅多にしないし他に人魂っぽいものはその周囲にはないから見間違ったりはしないでしょ、流石に。攻撃はそれぞれのエレメンツに対応した自然のエネルギーを凝縮したような攻撃。火の玉とか水の矛とか風の刃とか土砂崩れとかね。開発関係者にとって一番ありがたくないのは土砂崩れだろうけど倒す順番は君たちに任せるよ。属性が違うだけで能力的にはどんぐりの背比べだしね」
ぐるり、とダークマターをかき混ぜると部屋に充満していた異臭がより一層強まった。湯気が紫色を帯びているのは気のせいだろうか。気のせいだと思いたいところである。なにせ目の前の人間はそれを食べているのだから。
「ま、ちょっと運動して汗流して温泉でさっぱりしてきたら?」
そう軽く言うとひらりと手を振って青年は最後まで匂いと戦って耐え抜いた覚醒者たちに情報の提供を終えたのだった。
温泉開発が進む中、ある地域で良質な湯の源泉が発見され、当然のようにそこにも温泉と、周りの景色を生かした温泉観光地化の計画がたったのが夏頃。
紅葉や桜の木が多く生えていることから春と秋は桜と紅葉を。冬になれば雪が降るだろうし夏は蛍の存在が確認できた。
あまり人の手は入れずに自然の中で日常の疲れを癒すタイプの観光地を、と考えていた土地の所有者と開発担当者はその当時は思いもしなかっただろう。
予想外の珍客のせいで開発がとん挫しかける事態が発生するなどとは。
●雑魔を祓ってついでに温泉に浸かってくるだけの簡単なお仕事です
「なんかねぇ、温泉開発が進んでて、あとは宣伝して客を呼んで、って辺りまで進んだ場所に雑魔が沸いちゃったんだってさ。流石に危ないから今は一般人の出入りは禁止されてるみたい」
またしても【何か】もしくはダークマターとしか形容できない物質の異臭を放つ物を食べながら青年がやる気なさげに説明する。
「敵はそんなに強くないからちゃちゃっと倒して、温泉自体の設備は整ってるからセルフサービスでいいなら浸かってくればいいんじゃないかな。炎・水・風・土。四元素、だっけ。それをもとに歪曲の影響でうまれた雑魔で外見は人魂っぽいよ」
あぁ、でも物理攻撃は通じるみたいだから攻撃については特に注意しないといけないことはないと思う。
「開発担当者と地主からの要請は『できるだけ早く利用できるようにしたいのであまり場所を荒らさないでほしい』だって。雑魔は露天風呂の辺りをふわふわ浮いてて移動は滅多にしないし他に人魂っぽいものはその周囲にはないから見間違ったりはしないでしょ、流石に。攻撃はそれぞれのエレメンツに対応した自然のエネルギーを凝縮したような攻撃。火の玉とか水の矛とか風の刃とか土砂崩れとかね。開発関係者にとって一番ありがたくないのは土砂崩れだろうけど倒す順番は君たちに任せるよ。属性が違うだけで能力的にはどんぐりの背比べだしね」
ぐるり、とダークマターをかき混ぜると部屋に充満していた異臭がより一層強まった。湯気が紫色を帯びているのは気のせいだろうか。気のせいだと思いたいところである。なにせ目の前の人間はそれを食べているのだから。
「ま、ちょっと運動して汗流して温泉でさっぱりしてきたら?」
そう軽く言うとひらりと手を振って青年は最後まで匂いと戦って耐え抜いた覚醒者たちに情報の提供を終えたのだった。
リプレイ本文
●温泉は浸かるものであって戦場になるべき場所ではない
周りの自然を生かした温泉。あとは宣伝して客を呼んで口コミも含めて広がっていけば良質な泉質であるしある程度の集客効果はあるはず。そう踏んでの温泉開発は思わぬ横やりが入って頓挫中である。
横やりとは歪曲が影響で自然派生した人魂のような形状の雑魔が四体。
四元素、即ち火、水、風、土の特徴を持った攻撃を仕掛けてくるというその雑魔たちのせいで開発は最後の最後で仕上げを行えずにいた。
このままでは赤字になるだけでなく一般人も危険ということでハンターオフィスに退治の依頼が舞い込んだのはある意味当然ともいえるだろう。
「さっさと倒して一風呂浴びたいわあ」
冬樹 文太(ka0124)の素直すぎる一言に思わずうなずいてしまったメンバーが何人か。
『セルフサービスでいいなら退治の後無料だし浸かってくれば』と斡旋者の青年が言っていたのがきっかけでこの依頼を受けることを決めた覚醒者ももしかしたらいるのかもしれない。
「折角の行楽地……予定、なんやからここはさっさと問題解決を目指さなな。しかも雑魔倒したらタダで入れるとか天国やん。温泉とかリアルブルー思い出すなあ」
とりあえず雑魔たちが出るという混浴の露天で物陰に隠れる文太。彼の得意な間合いは物陰、あるいは適度な距離を保った中~長距離からの射撃なので。
「いいのう温泉。仕事帰りに一風呂。リアルブルーの文化が着々と浸透しておる」
レーヴェ・W・マルバス(ka0276)も仕事終わりの一風呂を楽しみにしているクチらしく口調がどことなくはずんでいる。
「さっさと温泉に入りたいところじゃし被害甚大で要修理になっては骨折り損じゃ。さくっと倒すよう努力したいところじゃな」
レーヴェもまたタイプ的には後方からの支援射撃を得意とするタイプだ。文太とは別の物陰に潜んで機をうかがう。
「依頼を終えても、入浴できませんでした……ということにならないようにしないと、ね」
三姉妹で参加しているレインフォード家の長女、フローレンス・レインフォード(ka0443)は妹たちの頭をなでながら意気込んだ。
「依頼を終えても、入浴できませんでした……ということにならないようにしないと、ね」
「皆で温泉に入るために頑張るのだ♪」
ネフィリア・レインフォード(ka0444)は姉妹で参加できたということでとても上機嫌のようだ。頭をなでられながら機嫌のよさがにじむ声で返事をする。
「そろそろ、寒くなってきたし、温泉も良い……。姉さまたちと、いっぱい楽しむ」
三女のブリス・レインフォード(ka0445)は言葉少なげに宣言した後頭をなでる姉に向かってコクリと頷きを返した。
「火遊びや水遊び……って感じじゃないわね、流石に」
リリア・ノヴィドール(ka3056)の言葉にミィコ=クレアスター(ka3103)が頷く。
「雑魔はさっさと倒して温泉楽しむよ~」
「あーあ、ちゃっちゃと済ませてゆっくりお湯に浸かりたいもんだねぇ~」
鵤(ka3319)はその言葉を聞きながら咥えた紙巻煙草に火をつけた。
そのためにも、と鵤はブリスに攻性強化を付与した。
「やっぱり作戦的に強いの一点強化でしょ。弱点属性で更に倍々だしぃ?」
不思議そうに首を傾げたブリスに向かって軽い調子で説明を済ませる。
彼も後方支援型だ。
人魂――否、雑魔たちが覚醒者に気づいたらしくそれぞれが攻撃の準備を取りはじめる。
開拓者たちがまず狙ったのは土属性の雑魔だ。土砂崩れで温泉が汚れては依頼主の「できるだけ早くオープンさせたいからあまり汚さないように」という要望を叶えられないし何より自分たちが温泉に浸かれなくなる。
混浴の露天以外に入ればいい話ではあるがどうせなら手早く、かつ依頼主の要望も叶えて討伐してしまいたいところだ。
土色の人魂が揺らめき、地形が歪む前兆をみせたところで後方からの射撃組の狙いすました一撃とブリスのウィンドスラッシュが炸裂する。
攻撃力を上乗せしたウィンドスラッシュが特に堪えたらしく土属性の雑魔が痛みをこらえるように明滅しながら風属性の雑魔へと近づいた。
「回復も連携もさせないよ、っと」
風属性の雑魔はダメージの回復能力と土属性との連携攻撃を持っているというのは事前に情報として聞いていたので鵤が手早くとどめの一撃を撃ちこむ。
「早く倒せばきっとその分沢山温泉に入れるのだー♪ とりあえず動きやすいよう水着でゴーゴー♪」
ネフィリアが次のターゲットである火属性の雑魔に向かって地を駆けるものを使いつつ近接戦闘を仕掛ける。
目標に一気に近づき爪で切り裂くように攻撃。時折クラッシュブロウを交えると火属性の雑魔は反撃と言わんばかりに火の矢をネフィリアに向かって放つ。
「姉様に、危害を加えるのは、許さない……」
ブリスの放ったウォーターシュートが火の矢を飲み込み鎮火、若干勢いは衰えたがそのまま火属性の雑魔へぶつかる。
「ナイスフォローなのだ、ブリスちゃん♪ 助かったぞ♪」
姉の無事な様子と褒め言葉にわずかにブリスが表情を緩める。
「ネフィ、無茶をし過ぎたら駄目よ? ブリスは落ち着いて、確実にね」
中衛に位置取り仲間たちの様子に気を配りながらヒール、プロテクション、レジストを使い分けて支援と援護をするフローレンスの言葉に妹たちがそれぞれ頷く。
敵の射程外を予測し常にその位置から射撃と移動を繰り返すレーヴェの一撃で火属性の雑魔は無念そうに消え失せた。
これで折り返し地点。残るは風属性と水属性の二体だ。
その内水属性の雑魔は最後に倒すという方針だったが横やりが入らないようにとリリアが抑え役に回り、鵤が適宜援護射撃に入っているので弱り始めている。
「回復させる間なんて、やると思ってるんか?」
水属性を回復させようとした風属性に向かって攻撃の瞬間にマテリアルを強く込めることで射撃武器の威力を瞬間的に高める強弾を使用した文太の一撃が風属性を射抜く。
レーヴェは射線上に味方がはならないよう、そして施設破壊をできる限り避けるために高台や傾斜を利用しての射撃を行っていた。
「攻撃は食らいたくないものじゃ。切り傷火傷で温泉に入れないというのも嫌じゃからの。……おぬしら、その力で温泉にでも貢献すればいいのに。そうすれば討伐されることもなかったし環境保護にもなったのにのぅ」
精霊ならばともかく雑魔に言っても仕方ないとわかっていつつ場所が場所だけにそんな言葉を漏らさずにいられない。
「ふふん、隙ありなのだー♪ これで終わりにしちゃうのだ♪」
「こっちも終わり、なの」
ネフィリアが風属性を、リリアと援護射撃をしたレーヴェの一撃がほぼ同時に水属性を消滅させた。
「完全勝利ってところかね。じゃあ、あとはお楽しみの温泉タイムと行きますか」
鵤の言葉に歓声が上がった。
温泉に入る前に一応建物に被害が出ていないか確認をしたが敵の攻撃を封じつつ跳弾にも気を付けて攻撃していたこともあって戦闘の生々しい傷跡はないと言って差支えないレベルだったことも一同を安心させた。
「温泉、楽しみなの」
●温泉は寛ぐための場所
「全部終わったし温泉だ温泉! もー腰とか痛くてさぁ、早くゆったり浸かりたかったんだよホント。あ、おっさん普通に男湯入るから。混浴とか若い人たちにお任せですよ」
まくしたてるように言い切った後男湯の更衣室で腰タオル一枚になった鵤はかけ湯をしたあと広い湯船で足を伸ばしてのんびりする。
女湯の方から聞こえてくる三姉妹のはしゃぎ声にいやぁ~若いっていいねぇなどと呟いたのは聞こえていたらセクハラ扱いされるかどうか微妙なところかもしれない。
「風呂上がりのビールもまた楽しみだけど今はもうちょっと浸かってたいかなぁ。折角の温泉だし腰痛に効くって話だしね」
混浴では文太が案外人少ないしのんびりできるかも、と水着を着て入っていたが人口密度的にはどっこいどっこいだったかもしれない。
「は~、風呂は命の洗濯ってほんまやな。気持ちええわ~」
広い湯船でぐいーっと体の筋を伸ばすのは温泉ならではの贅沢だ。
むしろ混浴の方が安全かもしれない、と混浴を選んだリリアも離れた場所で温泉を満喫している。
マイペースにリラックスしていたがだんだんと水着が煩わしく感じられてきたのと女湯から楽しげな会話が聞こえてくるということで女湯に移動することにした。
そんな賑やかな女湯はと言えば一番人口密度が高い。
「ほら、二人共綺麗になったわ。ふふ、何時もよりも綺麗で可愛くなったかしら?」
甲斐甲斐しく妹たちを洗ってやっていたフローレンスだったがお礼に姉様を洗ってあげる、という妹たちの言葉に大慌て。
しかし妹にとことん甘い性格から強く出ることもできずなし崩しに洗ってもらうことに。
フロー姉、ありがとうなのだ♪ それじゃあ、今度は僕達が身体洗って上げるー♪ 僕は下でブリスちゃんは上ねー?」
「ん……ブリス、頑張って姉様洗う……」
「え。あ、あの、二人共? ちょ、ちょっと、コラ。擽ったいわ……!」
「いやぁいい光景じゃの」
レーヴェのセリフが差すのは外の景色か仲睦まじい三姉妹のくり広げる景色か。知るのは本人のみである。
「これでリアルブルーの酒があれば格別じゃがないものねだりしても仕方なしエールで我慢するとしようかの」
覗きは撃つ心算だったがそういう不埒者は幸いにもいなかったようだ。
「男のロマンはわからんでもないし私は気にしないがの。みたいなら堂々と、といったところか。いないならそれに越したことはないがのぅ」
なお、「見たいなら堂々と」とは言っているが見せるとは言っていないのがミソである。
「ぷはぁー! やっぱ風呂上がりの一杯は最高やわあ。」
風呂上がりに脱衣所で用意していた缶ビールのプルタブを開けて一気に呷る文太。
もちろん手は腰に当てている。
男湯では鵤が着替えた後同じくビールを呷っていた。
「やっぱ風呂上りはビールだねぇ。ほろ酔い気分で帰れる依頼とか幸せで平和でいいなぁ。温泉も気持ちよかったし」
でもちょっと飲み足りないかな、と思いつつ手持ちの酒は尽きたので足りない分はおとなしく家で飲むか、と思っていれば脱衣所に近づいてくる足音。
「混浴の方にいたんやけど乾杯できる相手がほしゅうなってな。いけるクチならどうや、一杯?」
「それは嬉しいお誘いだな。ちょうど少し飲み足りなくてね。有難う、文太君」
「温泉の未来と今日の勝利に乾杯!」
「カンパ~イ」
コツリと缶ビールを合わせた後二人でこれが礼儀とばかりに一気に呷る。
炭酸ののど越しが戦闘と入浴で渇いた喉に心地よかった。
「折角開発進められるように雑魔退治引き受けてほぼ建物は無傷で済ませたんやし賑わってくれるとえぇなぁ」
「そうだねぇ。こればっかりは選ぶ人次第だけど。ま、依頼の話になったら温泉気持ちよかった、くらいは話しておくさ」
「せやな。俺らが後できることっつったらそれくらいやし。さて、と。俺はそろそろ帰るわ。お疲れさんー」
「はいはい、お疲れ様。ビールご馳走様でしたっと」
「また縁があったらよろしゅうな」
ひらり、と手を振って去っていく文太を見送った後鵤もその場を後にする。
賑やかだった女湯の利用者たちも一人また一人と帰路について開発予定地に静けさが戻った。
次に覚醒者たちがこの場所を訪れるとしたら純粋に湯治や観光を楽しむためだと思いたいところである。
こうして観光地(予定)を騒がせた雑魔は退治され開発は滞りなく進められるのであった。
周りの自然を生かした温泉。あとは宣伝して客を呼んで口コミも含めて広がっていけば良質な泉質であるしある程度の集客効果はあるはず。そう踏んでの温泉開発は思わぬ横やりが入って頓挫中である。
横やりとは歪曲が影響で自然派生した人魂のような形状の雑魔が四体。
四元素、即ち火、水、風、土の特徴を持った攻撃を仕掛けてくるというその雑魔たちのせいで開発は最後の最後で仕上げを行えずにいた。
このままでは赤字になるだけでなく一般人も危険ということでハンターオフィスに退治の依頼が舞い込んだのはある意味当然ともいえるだろう。
「さっさと倒して一風呂浴びたいわあ」
冬樹 文太(ka0124)の素直すぎる一言に思わずうなずいてしまったメンバーが何人か。
『セルフサービスでいいなら退治の後無料だし浸かってくれば』と斡旋者の青年が言っていたのがきっかけでこの依頼を受けることを決めた覚醒者ももしかしたらいるのかもしれない。
「折角の行楽地……予定、なんやからここはさっさと問題解決を目指さなな。しかも雑魔倒したらタダで入れるとか天国やん。温泉とかリアルブルー思い出すなあ」
とりあえず雑魔たちが出るという混浴の露天で物陰に隠れる文太。彼の得意な間合いは物陰、あるいは適度な距離を保った中~長距離からの射撃なので。
「いいのう温泉。仕事帰りに一風呂。リアルブルーの文化が着々と浸透しておる」
レーヴェ・W・マルバス(ka0276)も仕事終わりの一風呂を楽しみにしているクチらしく口調がどことなくはずんでいる。
「さっさと温泉に入りたいところじゃし被害甚大で要修理になっては骨折り損じゃ。さくっと倒すよう努力したいところじゃな」
レーヴェもまたタイプ的には後方からの支援射撃を得意とするタイプだ。文太とは別の物陰に潜んで機をうかがう。
「依頼を終えても、入浴できませんでした……ということにならないようにしないと、ね」
三姉妹で参加しているレインフォード家の長女、フローレンス・レインフォード(ka0443)は妹たちの頭をなでながら意気込んだ。
「依頼を終えても、入浴できませんでした……ということにならないようにしないと、ね」
「皆で温泉に入るために頑張るのだ♪」
ネフィリア・レインフォード(ka0444)は姉妹で参加できたということでとても上機嫌のようだ。頭をなでられながら機嫌のよさがにじむ声で返事をする。
「そろそろ、寒くなってきたし、温泉も良い……。姉さまたちと、いっぱい楽しむ」
三女のブリス・レインフォード(ka0445)は言葉少なげに宣言した後頭をなでる姉に向かってコクリと頷きを返した。
「火遊びや水遊び……って感じじゃないわね、流石に」
リリア・ノヴィドール(ka3056)の言葉にミィコ=クレアスター(ka3103)が頷く。
「雑魔はさっさと倒して温泉楽しむよ~」
「あーあ、ちゃっちゃと済ませてゆっくりお湯に浸かりたいもんだねぇ~」
鵤(ka3319)はその言葉を聞きながら咥えた紙巻煙草に火をつけた。
そのためにも、と鵤はブリスに攻性強化を付与した。
「やっぱり作戦的に強いの一点強化でしょ。弱点属性で更に倍々だしぃ?」
不思議そうに首を傾げたブリスに向かって軽い調子で説明を済ませる。
彼も後方支援型だ。
人魂――否、雑魔たちが覚醒者に気づいたらしくそれぞれが攻撃の準備を取りはじめる。
開拓者たちがまず狙ったのは土属性の雑魔だ。土砂崩れで温泉が汚れては依頼主の「できるだけ早くオープンさせたいからあまり汚さないように」という要望を叶えられないし何より自分たちが温泉に浸かれなくなる。
混浴の露天以外に入ればいい話ではあるがどうせなら手早く、かつ依頼主の要望も叶えて討伐してしまいたいところだ。
土色の人魂が揺らめき、地形が歪む前兆をみせたところで後方からの射撃組の狙いすました一撃とブリスのウィンドスラッシュが炸裂する。
攻撃力を上乗せしたウィンドスラッシュが特に堪えたらしく土属性の雑魔が痛みをこらえるように明滅しながら風属性の雑魔へと近づいた。
「回復も連携もさせないよ、っと」
風属性の雑魔はダメージの回復能力と土属性との連携攻撃を持っているというのは事前に情報として聞いていたので鵤が手早くとどめの一撃を撃ちこむ。
「早く倒せばきっとその分沢山温泉に入れるのだー♪ とりあえず動きやすいよう水着でゴーゴー♪」
ネフィリアが次のターゲットである火属性の雑魔に向かって地を駆けるものを使いつつ近接戦闘を仕掛ける。
目標に一気に近づき爪で切り裂くように攻撃。時折クラッシュブロウを交えると火属性の雑魔は反撃と言わんばかりに火の矢をネフィリアに向かって放つ。
「姉様に、危害を加えるのは、許さない……」
ブリスの放ったウォーターシュートが火の矢を飲み込み鎮火、若干勢いは衰えたがそのまま火属性の雑魔へぶつかる。
「ナイスフォローなのだ、ブリスちゃん♪ 助かったぞ♪」
姉の無事な様子と褒め言葉にわずかにブリスが表情を緩める。
「ネフィ、無茶をし過ぎたら駄目よ? ブリスは落ち着いて、確実にね」
中衛に位置取り仲間たちの様子に気を配りながらヒール、プロテクション、レジストを使い分けて支援と援護をするフローレンスの言葉に妹たちがそれぞれ頷く。
敵の射程外を予測し常にその位置から射撃と移動を繰り返すレーヴェの一撃で火属性の雑魔は無念そうに消え失せた。
これで折り返し地点。残るは風属性と水属性の二体だ。
その内水属性の雑魔は最後に倒すという方針だったが横やりが入らないようにとリリアが抑え役に回り、鵤が適宜援護射撃に入っているので弱り始めている。
「回復させる間なんて、やると思ってるんか?」
水属性を回復させようとした風属性に向かって攻撃の瞬間にマテリアルを強く込めることで射撃武器の威力を瞬間的に高める強弾を使用した文太の一撃が風属性を射抜く。
レーヴェは射線上に味方がはならないよう、そして施設破壊をできる限り避けるために高台や傾斜を利用しての射撃を行っていた。
「攻撃は食らいたくないものじゃ。切り傷火傷で温泉に入れないというのも嫌じゃからの。……おぬしら、その力で温泉にでも貢献すればいいのに。そうすれば討伐されることもなかったし環境保護にもなったのにのぅ」
精霊ならばともかく雑魔に言っても仕方ないとわかっていつつ場所が場所だけにそんな言葉を漏らさずにいられない。
「ふふん、隙ありなのだー♪ これで終わりにしちゃうのだ♪」
「こっちも終わり、なの」
ネフィリアが風属性を、リリアと援護射撃をしたレーヴェの一撃がほぼ同時に水属性を消滅させた。
「完全勝利ってところかね。じゃあ、あとはお楽しみの温泉タイムと行きますか」
鵤の言葉に歓声が上がった。
温泉に入る前に一応建物に被害が出ていないか確認をしたが敵の攻撃を封じつつ跳弾にも気を付けて攻撃していたこともあって戦闘の生々しい傷跡はないと言って差支えないレベルだったことも一同を安心させた。
「温泉、楽しみなの」
●温泉は寛ぐための場所
「全部終わったし温泉だ温泉! もー腰とか痛くてさぁ、早くゆったり浸かりたかったんだよホント。あ、おっさん普通に男湯入るから。混浴とか若い人たちにお任せですよ」
まくしたてるように言い切った後男湯の更衣室で腰タオル一枚になった鵤はかけ湯をしたあと広い湯船で足を伸ばしてのんびりする。
女湯の方から聞こえてくる三姉妹のはしゃぎ声にいやぁ~若いっていいねぇなどと呟いたのは聞こえていたらセクハラ扱いされるかどうか微妙なところかもしれない。
「風呂上がりのビールもまた楽しみだけど今はもうちょっと浸かってたいかなぁ。折角の温泉だし腰痛に効くって話だしね」
混浴では文太が案外人少ないしのんびりできるかも、と水着を着て入っていたが人口密度的にはどっこいどっこいだったかもしれない。
「は~、風呂は命の洗濯ってほんまやな。気持ちええわ~」
広い湯船でぐいーっと体の筋を伸ばすのは温泉ならではの贅沢だ。
むしろ混浴の方が安全かもしれない、と混浴を選んだリリアも離れた場所で温泉を満喫している。
マイペースにリラックスしていたがだんだんと水着が煩わしく感じられてきたのと女湯から楽しげな会話が聞こえてくるということで女湯に移動することにした。
そんな賑やかな女湯はと言えば一番人口密度が高い。
「ほら、二人共綺麗になったわ。ふふ、何時もよりも綺麗で可愛くなったかしら?」
甲斐甲斐しく妹たちを洗ってやっていたフローレンスだったがお礼に姉様を洗ってあげる、という妹たちの言葉に大慌て。
しかし妹にとことん甘い性格から強く出ることもできずなし崩しに洗ってもらうことに。
フロー姉、ありがとうなのだ♪ それじゃあ、今度は僕達が身体洗って上げるー♪ 僕は下でブリスちゃんは上ねー?」
「ん……ブリス、頑張って姉様洗う……」
「え。あ、あの、二人共? ちょ、ちょっと、コラ。擽ったいわ……!」
「いやぁいい光景じゃの」
レーヴェのセリフが差すのは外の景色か仲睦まじい三姉妹のくり広げる景色か。知るのは本人のみである。
「これでリアルブルーの酒があれば格別じゃがないものねだりしても仕方なしエールで我慢するとしようかの」
覗きは撃つ心算だったがそういう不埒者は幸いにもいなかったようだ。
「男のロマンはわからんでもないし私は気にしないがの。みたいなら堂々と、といったところか。いないならそれに越したことはないがのぅ」
なお、「見たいなら堂々と」とは言っているが見せるとは言っていないのがミソである。
「ぷはぁー! やっぱ風呂上がりの一杯は最高やわあ。」
風呂上がりに脱衣所で用意していた缶ビールのプルタブを開けて一気に呷る文太。
もちろん手は腰に当てている。
男湯では鵤が着替えた後同じくビールを呷っていた。
「やっぱ風呂上りはビールだねぇ。ほろ酔い気分で帰れる依頼とか幸せで平和でいいなぁ。温泉も気持ちよかったし」
でもちょっと飲み足りないかな、と思いつつ手持ちの酒は尽きたので足りない分はおとなしく家で飲むか、と思っていれば脱衣所に近づいてくる足音。
「混浴の方にいたんやけど乾杯できる相手がほしゅうなってな。いけるクチならどうや、一杯?」
「それは嬉しいお誘いだな。ちょうど少し飲み足りなくてね。有難う、文太君」
「温泉の未来と今日の勝利に乾杯!」
「カンパ~イ」
コツリと缶ビールを合わせた後二人でこれが礼儀とばかりに一気に呷る。
炭酸ののど越しが戦闘と入浴で渇いた喉に心地よかった。
「折角開発進められるように雑魔退治引き受けてほぼ建物は無傷で済ませたんやし賑わってくれるとえぇなぁ」
「そうだねぇ。こればっかりは選ぶ人次第だけど。ま、依頼の話になったら温泉気持ちよかった、くらいは話しておくさ」
「せやな。俺らが後できることっつったらそれくらいやし。さて、と。俺はそろそろ帰るわ。お疲れさんー」
「はいはい、お疲れ様。ビールご馳走様でしたっと」
「また縁があったらよろしゅうな」
ひらり、と手を振って去っていく文太を見送った後鵤もその場を後にする。
賑やかだった女湯の利用者たちも一人また一人と帰路について開発予定地に静けさが戻った。
次に覚醒者たちがこの場所を訪れるとしたら純粋に湯治や観光を楽しむためだと思いたいところである。
こうして観光地(予定)を騒がせた雑魔は退治され開発は滞りなく進められるのであった。
依頼結果
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相談卓 鵤(ka3319) 人間(リアルブルー)|44才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/10/11 07:43:47 |
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![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/10/09 12:36:41 |